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June 30, 2005

妊娠は、おいしい  LiBホームページへ

mama.gif  私は出産の数ヶ月前まで会社勤めをしていたのだが、念のため初期は妊娠した事を公にしていなかった。幸いなことに、つわりも一切なかったし、見た目は普段と全然かわらなかっただろう。

いわゆる安定期というのは妊娠16週目くらいからのことを言うらしいが、その頃になっても私のおなかは全然目立たなかった。そうなると、記録に挑戦してみたくなった。いつまで妊娠した事を会社の人に隠していられるか。もしずっとおなかが目立たないままだったら、ある日突然「生まれました~」と言って皆を驚かしたりして。

・・・が、5ヶ月目を過ぎた頃、さすがに少しずつおなかが大きくなってきた。手持ちの服がきつくなってくる。そろそろマタニティウエアを買わないといけないかな、と思い始めた。

マタニティウエアを着てみた。ちょっと妊婦っぽくなったか。しかし周りは特に私の変化に気づく様子もなく、いつも通り黙々と仕事をしている。なんだか言わないのもつらくなってきた。誰かが気づいてくれたらいいのに。いや、もしかすると、皆とっくに気づいているのに知らないふりをしているだけかも?騙されているのは私の方かも、という疑念さえ沸き起こってきた。

そんな被害妄想で頭が一杯になりつつも、おなかは日に日に大きくなってくる。なんだか妊娠した事を誰にも言えないティーンエイジャーのような気持ちになってしまった。で、ばかばかしくなって上司に白状、いや報告した。

びっくりしたのが社内に「いやー、実は僕知ってましたよ」という人がいたことだった。彼は私のプライベートの友達の友達なので噂が入ってきたとの事だった。恐るべき狭きロンドンの日本人社会。彼経由で、「オフレコだけど」と実は社内の半分くらいの人は知っていたらしい。やはり私の妄想は半分当たっていた?

しかし、晴れて「妊婦」とカミングアウトすると、得することも多かった。まず、人々が優しくなった。同じ会社にいても今まであまり言葉を交わした事がなかった人まで体調を気遣ってくれる。

おなかが目立ってきて、一目で妊婦と認識される様になると、地下鉄やバスでは必ず席を譲ってもらえた。意外だったのは、いつも行くスーパーの駐車場の子供連れ専用のスペースにMoms to beも停められることだった。ラッキー!と素直に特権を行使した。

ラッキーと言えば、妊娠中は体調もとても良かった。私の場合、冷え性で肩こりがひどいのだが、妊娠中は体温が上がって血の巡りが良くなるのか、こうした不調が嘘の様に消えた。確かに妊婦はいつも暑がっているイメージがある。これは嬉しい副産物だった。

定期健診も問題なしだった。日本では、太り過ぎないようにとか、塩分の取りすぎに注意だとか妊娠中の食生活をあれこれ指導されるらしいが、そういった事は一切言われなかった。物足りなかったので自分の方から聞いてみると、「野菜やフルーツを沢山とるように」とだけ言われた。妊娠前からすでに臨月のような体型だったり、妊娠してもタバコやドラッグをやめられない人が、ざらにいそうなイギリスでは私みたいな妊婦でも(年齢以外は)優等生なのかもしれない。

ちなみに、定期健診はGPに通った。病院に通うか、GPに通うかは選んだ病院によって違うらしい。私の場合はスキャンと母親学級の他には初診以来、一度も病院で診てもらうことはなかった。そして、結局内診も一度もなかった。

おなかの子供が動き始めると、ああ、人間は誰もみな始めはおなかの中にいたんだなあ、と当たり前のことに驚愕するようになった。街を歩いている、あの人もこの人も、皆はじめはおなかの中に裸で眠っていたのだ。人間は、動物だったのだ。

投稿者 lib : June 30, 2005 04:44 PM

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