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February 28, 2006

チャンピオンズリーグ

football.gif  決勝トーナメントが始まった。
アーセナルの相手は調子を上げてきているレアル・マドリー。しかもアウェー。
この日を心待ちにしていた私は朝から落ち着かず仕事を早く切り上げて帰った。
そしてその甲斐あってこの男、ティエリ・アンリがやってくれた。

序盤からアウェーとは 思えない程アーセナルにチャンスがあった。
特にアンリのスルーパスは絶妙だった。
手足の長い彼から繰り出されるインサイドキックはその芝の深さや硬さを読みボールの回転やスピード、コースが絶妙に計算されている。
勿論彼は当たり前に難なくそれをやってみせる。

私が小学生の頃、近所の会社所有の芝生のグランドがありよく皆で忍び込んで遊んだものだった。
“スススーッ”と滑るように転がるボールが快感でワンツーパスを何度も繰り返し、それに対して相手も必要以上にスライディングをしたり。
得点を決めたら普段出来なかった(笑)ガッツポーズをわざと芝生を滑ってしたり。。。

そんなことまで頭をよぎりアンリのパス1つに何とも言えないドキドキ感を覚えた。
もしかしてこの感じだといけるかも…と思わせる程最近国内リーグでは見る事が出来ない手応えの良さだった。
戦術など細かい事をあげれば分析できるのだろうがこの日は明らかにアーセナルの方が勢いのオーラに包まれていた。

そして後半開始2分、ロナウドがコントロールミスをしたボールをファブレガスが奪いアンリにパス、ハーフウェイライン辺りから途中二人をなぎ倒すようにドリブルで持ち込み左足のインサイドキックで綺麗にゴールへ流し込んだ。

正直、リーグではあまり見ることの出来ない集中力と気迫が画面を通じて伝わってきた。
この1点で勝利したアーセナルは3月8日にホーム、ハイバリーでレアル・マドリーを迎える。
今シーズン取れるタイトルが事実上これしかないアーセナル。
しかしこの一戦は期待が持てる試合だった。
 
ティエリ・アンリ!!
そのプレーを継続して魅せ続けてくれ!!


チェルシーVSバルセロナの試合はパブで観戦。
ロナウジーニョのプレーもさることながらこの日は18歳のアルゼンチン人、メッシのプレーが圧巻だった。
日本だったらユースの大会、高校選手権に出ている年代。
4万数千人の観衆の前で、しかもアウェーでこのプレー。
左足でカーブをかけループ気味にGKチェクの頭越しに逆サイドを狙い済ましたシュートがクロスバーに当たって外れた時は舌を出しておどけていた。
ますます今後が楽しみな選手だ。


荒川静香選手、金メダルおめでとう!!
以前の演技を見たのは大分前だった気がするが、今回笑顔で滑っている彼女を見てその“ゾーン”に達したのだと思った。

専門的には解らないが技術のレベルは本当に均衡しているのだと思う。
その中で彼女は「楽しむ事が出来た。」と口にしている。

スポーツは本来楽しむもの。
それを実行出来てさらに観客を魅了した。
本当に素晴らしい金メダルだと思う。
日本のスポーツ界に新しい風が吹くことを切に願う。

football_28feb06_small.jpg
イングランド勢が初の白星を挙げたサンチャゴ・ベルナベウ
(写真をクリックすると拡大写真が表示されます)


投稿者 lib : 07:56 AM | コメント (2)

February 27, 2006

イギリス人のホンネ オリンピック編

mama.gif  冬季オリンピックが終わった。
オリンピックおたくの私としては、楽しい2週間だった。

閉会式で登場したリッキー・マーティンも観たぞ。
久々に見たリッキー、何歳くらいになったのだろう。
さすがの彼も寄る年波には勝てないのか体型も崩れ、昔の美少年ぶりの見る影もなかった。
あんなにピカピカだったお肌もくすんでいてショックだった。私に言われたくないだろうが。

まあリッキーのことはどうでもいいのだが、フィギアスケートである。

フィギアスケートは最も好きな種目なので、気合を入れて観た。
荒川選手、美しいっ。
顔がまた、欧米人の大好きなタイプのオリエンタル顔。
そのうち、ハリウッドからスカウトされそうだな。

で、いちいち突っ込みたくなったのがBBCのキャスターやコメンテーターのコメント。
イギリスには色々な人種の視聴者がいるので、人種差別ととられるような発言をしないよう、テレビ局はすごーく気を使っている。
しかし、スポーツとなるとつい血が騒いでしまうのか、ポロッとホンネをもらしてしまうようだった。
イギリス人を応援するのは当然だが、それがだめなら白色人種に勝ってほしい!という気持ちがびんびんと伝わってくる。

まずは女子ショートプログラムが終わった後。
優勝はアメリカのコーエンかロシアのスルツカヤの二人の争い、と決め付けているかのような報道だった。
3位の荒川のことは頭になかったようだ。
上位3名の得点差は小数点以下で、誰が勝ってもおかしくなかったのに。

荒川選手の金メダルが決定した後も、

「誰もがスルツカヤかコーエンが勝つと思っていた。(二人とも転倒したのは)金を意識しすぎたのね。」

「誰もが」って、誰のことやん。その部分、「白色人種は」に変えてもらえません?

「その点、荒川は3位でプレッシャーが無かったのが良かったわね。」

プレッシャーが無い?ご冗談でしょう。日本と言う国を知らないね。
それに3位と言っても、1ポイント以下の僅差なのだから、当然金を意識したはず。

番組の締めでは女性キャスターが、

「大会13日目の今日、日本にとってラッキーな日となりました。」

ラッキー?9点の大差で勝ったのに、ラッキーって言うか?

その点、元金メダリストのロビン・カズンスの発言はフェアだった。

「長い間、フィギアスケートではヨーロピアンが支配していたけど、僕達は気をつけないといけないよ。ぼやぼやしていたら、日本や中国に追い抜かれてしまう。ジャパニーズボーイの演技もラブリーだったし。」

ジャパニーズボーイって、高橋選手のことだよな?
さすが元金メダリスト、現実を直視しているぞ。ぱちぱち。

荒川選手の演技については、もちろん皆褒め称えているのだけど、やっぱり心の底では
「白人が勝って当たり前。他が勝ったらただの運。」
と思いたいらしい。

2年前の夏のオリンピックでもこういったアンフェア発言はたびたび感じた。

しかし、ニュースキャスターやドラマの登場人物に、白人以外の人種をバランスよく配置して視聴者に配慮を見せる、意識の高いBBCでさえこれだもの。日本はもっとひどいんだろうな。

オリンピックの時期に日本に帰る機会があったら、外国人になった気持ちで観戦してみよう。

投稿者 lib : 09:52 AM | コメント (3)

February 23, 2006

通勤電車 化粧事情

career2.gif  毎朝、同じ時間の電車に乗り込むとおなじみの顔の乗客がいる。

学生の通学時間には少し遅いので、乗客はほぼ全員が勤め人風である。女性のうち、そのメイクが気になってしかたがない人たちが数人いる。

全工程パブリック公開型
席に着くとすぐに化粧ポーチの中身を膝の上にしっかりと広げる。メイクの基本はまず乳液から、 (イギリスではあまり化粧水や下地クリームを見かけない。なぜだろう?) というわけで、乳液を顔にのばし、ファンデーション、パウダーと進む。慣れた手つきだ。

が、見ているほうは、電車が揺れるたびに膝の上のコスメが落ちないか、マスカラのブラシを目の中につっこんでしまうのではないかと、いつもハラハラしていてしまう。

「使用前」 に 「使用後」 とか 「ダイエット前」 に 「ダイエット後」 の写真をよく見かけるが、彼女の場合は 「乗車前」 と 「乗車後」 である。 刑事が尾行していても、あれだけ顔が違えば降車駅で見失ってしまうだろう。


舞台化粧型
60歳前後だろうか? 白髪の長い髪をカチューシャでまとめている。通勤電車に乗っているイギリス人には珍しく、ブランド物のバッグを持ち、高価そうだが有閑マダム風ではない、しゃれたデザインの服装をしている。
品の良さそうなおばちゃまで、日本語を話せば (話さないとは思うが) 「あたくしはね・・・」 なんて口調が出そうである。

しかし、ものすごい厚化粧、というか舞台化粧のメイクである。黒々としたアイラインが上下に入り、真っ青なアイシャドー、眉の下のハイライトはなんと、オレンジ色だ。日によっては、ピンク色のときもある。
朝っぱらから、ロイヤル・バレエのプリマドンナを目の前で見ているようで、目がチカチカする。
この大げさなメイクで出勤するとは、いったい何をする人なのか気になっている。


ハリウッド女優型
マレーネ・ディートリッヒという往年のハリウッド女優がいる。たしか北欧出身のクールビューティで、みごとな脚線美と細い弓形の 「おもいっきり不自然な眉」 で有名だ。
この 「ディートリッヒ眉」 をした女性がふたりいる。

よく 「目鼻立ちのはっきりした、外人みたいな顔」 なんて言い方をするが、イギリス人のなかには、白人らしからぬ、平面的でインパクトの薄い顔が存在する。
ひとりはそういった典型的 「洋風 こけし顔」 をしている。もし、この人の髪と瞳が黒ければ、日本のひなびた温泉宿の売店でおせんべいを売っていても、まったく違和感がない雰囲気である。

で、もうひとりはものすごくエラが張った顔で、野球のベース、将棋の駒、アメリカ国防省の建物である 「ペンタゴン」 という名詞が頭に浮かぶ。そのなかにちいさな目、みごとな団子鼻とおちょぼ口がおさまっている。
彼女もよく、電車内でメイクのしあげをしているのだが、その真剣すぎるまなざしに、胸が痛む。

この 「地味顔」 のふたりが何ゆえに、あえて 「ハリウッド女優眉」 を選んだのか???

やはりこれが、 「女のサガ」 というものだろう。もって生まれた目鼻立ちはどうしようもないが、顔の中に何か華やかさをとりいれたい。きっと、そんな思いが、過激な 「ディートリッヒ眉」 に二人を走らせたのだ。
女心に国境はない、と、いたく心を動かされる通勤電車である。

投稿者 lib : 07:51 AM | コメント (1)

February 22, 2006

掃除 <番外編その2>

darling.gif  先週に引き続き、「それぞれのダーリンはイギリス人」第2弾!
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イギリス人の夫の母は、完璧主義者の上、きれい好きである。
しかも人に指図するのが、3度の飯より好き、という人でもある。
こういう人が姑だと、嫁は眉間にシワが2,3本余計に増えることになる。

彼女が訪ねてくる前日は大変である。

結婚した当初、
「カジュアルな訪問だし、普段の生活をお見せする方がいいんだわ」と、かなり勘違いしていた私は、
居間にざっと掃除機をかけただけでお迎えした。
と、彼女は薦めたソファーに座りもせず、「キッチンはどこなの?」とずいずい奥へ入っていく。
「まあ、何このレンジは?ちゃんと掃除してるの?冷蔵庫の中も汚いわねー。それにこんなに詰め込んだら冷えなくて食品が傷むでしょ。あらあら、それに床も・・(以下略)」

言い忘れたが、彼女は歯に絹を着せない人でもある。

こんな調子でバスルーム、寝室まで点検され、しっかり「だらしのない嫁」のレッテルを貼られてしまった私は、次の彼女の訪問の前日、大掃除を決行した。

とりあえず前回指摘されたところは全てきれいにして、「ふふ、これで汚名挽回」と挑んだ2回目だったが、彼女は部屋に入るなり「この部屋、カビ臭いわ」とおっしゃった。
あまりのフェイントに石像のように固まる私を眼にして我に返った夫が、
「何言ってるんだよ。全然カビ臭くなんてないよ。」と一応反論するが、
「あなた達は毎日生活してるから気が付かないんでしょ。ああ、たまらないわね。ちょっと窓開けていい」と主人を押しのけ、窓をお開けになった。
「あのね、カビは健康に悪いのよ。こんなところで生活してたら、あなた達も体壊すでしょ。ちゃんと毎日部屋の風通しして・・(以下略)」

彼女が帰宅した翌日、私は日本の母に電話して、カビ防止用品を山ほど航空便で送ってもらった。
タンスの中に積んであった洋服も(風通しが悪かったので、確かにすこしカビ臭かった)、
泣く泣く半分ほども処分し、残った洋服は全て洗濯した。
家中の壁を、カビ取り洗剤で拭きまくった。
しかもその上、トイレ掃除はもちろん、蛇口のまわりも専用の洗剤でピカピカにし、
台所のレンジも磨き粉で磨き、床は手で拭いてつやをだし、
嫌がる夫を動員して窓ガラスまできれいにした。

「これで勝負よ・・・」

万全の体制でお迎えした3回目。
彼女は、いつものように、家中をお回りになった。
が、コメントがない。
静かだ・・・。
「こ、これは、ついに勝ったか・・?」
思わず口元がほころびかけた私に、彼女はおもむろに言った。

「あのね、私、今まで完璧主義で掃除とかもきっちりしないと気がすまなかったんだけど、もうそういうの止めたの。ストレスが溜まるだけでしょ。だから汚くても平気でいられるようになったわ。私、そういう自分をほめてやりたい。」

ま、負けた・・。

この人にはもしかして一生勝てないかも、と悟った嫁であった。

投稿者 lib : 07:46 AM | コメント (1)

February 20, 2006

バレンタインデーのメッセージ

mama.gif 2月14日には、各新聞にバレンタインデーのパーソナル・メッセージが掲載された。
個人広告のさかんなイギリスらしい。

「親愛なるテレサ、 君は僕の人生を全く違うものにしてくれた。いつまでも愛しているよ。 チャーリー」

「ローラ、 世界で一番美しい君。海よりも深く愛しているよ。デビッド」

王道ともいうべき、古典的メッセージは健在だ。

ユニークなものでは、

「アナ、 僕の可愛いスウィディッシュ・ミートボール! 君と一緒にサウナに入ったり、チーズフォンヂュを食べるのがこんなに楽しいなんて! ピュア・イングリッシュより×」

金髪の、ご自慢のスウィーデン人ガールフレンドなんだろうな。

「ソフィー、ニッキー、キャロル、バーバラ、フランキー、アリソン、 働き者の君達なしに、どうやって僕は毎日を過ごせたというんだろう? この特別な日に、愛を込めて。 スティーブン×」

一瞬、一夫多妻おとこ?と思ったが、上司が部下の女性達に贈ったのだろう。
ただし、これを見たソフィーやニッキーが喜ぶか、気味の悪い思いをするかは、上司スティーブンの顔かたち、腹の出具合、体臭などによる。

職場関係では、イギリスらしいブラックユーモアも。

「ダニエラ、 僕のセクシーなセクレタリー。 あのバルコニーから、イアンを蹴り落としちゃおうぜ!」

3人だけの職場なのだろうか。
気の毒な、邪魔者イアン。

この場を借りてプロポーズする人も。

「Chacoliades、 君の名前のスペルを書くのは難しいよ、小切手にサインするのも面倒だろう。『ミセス・ブラウン』の方がずっと簡単だと思わない?子供も持とうよ!G」

女性からもトライする。

「ジャック、 私と結婚してくれる? 今夜返事して! ルーシー」

私がジャックだったら、あまりのプレッシャーに耐え切れず、夜を迎える前に国外逃亡するかもしれない。
ルーシー、急いては事を仕損じるぞ。

すでに結婚している人が相手に贈るメッセージも目立つ。

「ミセスB、 素晴らしい妻、そして母でいてくれてありがとう。毎日のように愛が深まるよ。 ミスターB」

「キャサリン、 結婚してから3日がたった! 奴らは絶対に長続きしないって言ってるけど、君を永遠に愛するよ。アレン」

結婚3日目ならまだ熱いよな、と思いきや、

「エレノア、 30年間の愛と幸せをありがとう。30年後はもっと愛しているよ。 マーティン」

いいなあ。言われてみたい。

最後に、今年一番気になったメッセージ。

「スーザン、 それでも僕は君を愛しているよ。・・・全ての事にかかわらず・・・・。××× オールド・マン」

いったい二人の間に何があったのだろう。
ま、まさか、あんな事やこんな事が・・・。
それにも関わらず愛し続けるなんて。

オールドマン、立派である。

投稿者 lib : 09:49 AM | コメント (1)

February 16, 2006

バレンタイン・ディ

career2.gif  会社にバレンタイン・ディのカードが送られてきた。

差出人の名前が書いていない。
例の 「シークレット・アドマイヤー (心ひそかに君に恋する者) より」 である。 イギリスのバレンタイン・ディは男性が女性にプレゼントをしたり、カードを送る。カップルならカードを交換したりする。

私も昔はどーんと大きな花束が届けられたもんだが・・・ (遠い日の思い出)

さて、 「シークレット・アドマイヤー」 とはいえ、普通はボーイフレンドとか、最近、親しくなりかけている男性からがほとんどである。受け取った女性は、 (彼ったら、お茶目ね) と微笑む。ちゃんと身元はわれているのだ。

しかし、今回は違う。 私の頭に浮かんだのは、大きなクエスチョンマークであった。
・・・すみませんが、どちら様でしょう? どこかで、お目にかかったことがある方ですか?

イギリスでの疑問は、イギリス人に聞け。
というわけで、ボスや同僚などを動員して、 「犯人」 ではなかった、この 「シークレット・アドマイヤー」 を見つけることにした。

郵便の消印の地区を光にすかしてみる者 (これが消えていた)、 印刷されたあて先の印字を調べる者 (科学捜査班)、 カードの雰囲気から性格を推測する者 (行動心理学者)。

で、ち密なる分析から浮かび上がったプロファイル (人物像) は 「イギリス国内に住む、25歳から50歳までの、白人男性」 になった。
・・・全然、絞り込まれてないじゃない。

ところで、メッセージの手書きの文字。これがわかるのは私だけ、のはず。
「知り合いに違いないんだから、筆跡でわからない?」
「まったく」と首をひねる私。
この頃の連絡はEメールか携帯のテキストで、生文字 (?) の手紙など受け取ることはない。

「身に覚えがありすぎて、どの男だか、見当もつかないんだろう」
「自分でカードを書いたんじゃないのか」
「実は誰かから恨まれているとか?」
などと、人格を否定されるような発言がつぎつぎと飛び出してくる。

「シークレット・アドマイヤー」 がすっかり、 「差出人不明」 扱いになってしまった。いくら 「心ひそかに」 といっても、どこの誰だかわからないんじゃ、意味がないのではないだろうか? 

差出人に告ぐ。いまからでも遅くはない。名乗って出なさい。悪いようにはしないから。

投稿者 lib : 08:18 AM | コメント (0)

February 15, 2006

金銭感覚 <番外編 >

darling.gif  今週は「番外編 - それぞれの「ダーリンはイギリス人」として、私の友人版「ダーリンはイギリス人」をお届けします。

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一昔前だったか、「アメリカの黒人などは、借金しても平気の平左。クレジットカードで買い物しまくって、返済のことなんて考えもしないでケロッとしている」とコメントし、大ヒンシュクをかった日本の某大臣がいましたが、その時はまさか、自分がその「ケロッとしている」人と結婚することになるとは夢にも思っていませんでした。

彼はイギリス人のサラリーマン。
イギリスのことですから、日本の終身雇用のような安定感はないにしても、毎月そこそこのお給料をもらい、そこそこ安定した生活を営んでいました。

そんなある日、某クレジットカード会社から手紙が届きました。
普段は夫宛の手紙は開封しないのですが、私も同じ会社にクレジットカードを持っていたため、つい自分宛のだと勘違いして中身を見てしまったのです。

「あなた様の借入金が5000ポンドを超えましたので、返済計画をご相談できればと思います。できるだけ早く下記の番号にご連絡ください・・・」

がびょーん!!!

なに、なに?これは何!!
何度見直しても、夫宛の手紙です。
すぐ会社に電話することも考えましたが、
「いやいや、何かの間違いかもしれないし。会社にまで電話して下手にことを荒立てては・・」という誠に日本人的な気配り発想で、彼が帰ってくるのをじっと待つことにしました。

「ただいまー」
いつものように呑気に帰ってきた彼に、私は努めてさりげなく手紙を見せました。
「こんなのが来てたんだけど・・。これなんかの間違いだよね。こんなに借金するほど買い物もしてないし。ね、間違いだよね」

「ああ、これ、ホント。うるさく言ってきた時に、ちょこっと返しておけば大丈夫だから、心配することないよ。ドント・ウォーリー。」

がびょーん!!!がびょーん!!!

な、なにがドント・ウォーリーだー!!
いきなり般若のような顔になった私に怯えた彼は、
「だ、だって、これは無駄遣いじゃないよ。去年のホリデーの費用でしょ。それとクリスマスプレゼントとか両親や君への誕生日プレゼント。あと、おととしのホリデーも入ってるし。それと、それと・・・」

お前は「返済」という言葉を知らんのかー!。

「あのね、使ったら返さないとダメでしょ。ちょこっと返したって、利子分にもなってないじゃない。これ放っといても増えるだけだよ。」

「えっ・・?」

今ひとつ納得していない彼に無理やりクレジットカード会社に電話させ、毎月口座引き落としで返済することにしました。
クレジットカード使用禁止命令も出しました。

そうして3ヶ月。
少しはほとぼりが冷めたと思ったのか、
「最近テレビの調子が悪いよなー。これも古くなったし、この辺で新しいの買いたいよなー」
と、大きな独り言が聞こえてきます。
うるさいので、
「で、どんなのが欲しいの?」
とつい聞いてしまいました。
そして「こんなの」と見せられたカタログには、
“最新プラズマTV 特価£980.00”
の文字が・・。

「あのね、給料決まってるんだから、使えるお金も決まってるでしょ。大きな買い物をする時は、お金を貯めてからしないと。急に言われても買えないんだよ。」

「えっ・・?」

もし子供が産まれたら、絶対に「おこずかい帖」をつけさせようと心に誓った私でした。

投稿者 lib : 08:09 AM | コメント (2)

February 14, 2006

アーセナルVSボルトン

football.gif  11日の土曜日、ハイバリーへ。

この日は観る楽しみが2つあった。
1つは中田選手、もう1つはモナコから1月に移籍してきたアデバヨール。
アデバヨールはトーゴ代表で身長190cm。
長い手足を巧みに使いワールドカップ・アフリカ予選で得点王となる11ゴールを挙げ初出場に貢献した。
現WBAで稲本選手と共にプレーするナイジェリア代表で私が好きな選手の一人である197cmのカヌーと プレースタイルが似ていることから、“new  Kanu”と呼ばれているほどだ。

試合は1-1のドローだった。
ボルトンはその週にドュバイでトレーニングを行ったようだ。
結果だけ見るとその効果は出たのではないだろうか。
しかしながら中田選手は、ボールを持った時の何人かに囲まれても崩れないボディバランスは素晴らしかった。
ウエットなピッチ上は相当滑り易いはずだが、彼の重心の低いドリブルは見応えがあった。

初めて見たアデバヨールは期待通りの強さ・速さ・しなやかさを兼ね備えていて、彼にボールが渡るとドキドキした。
その彼のプレーの中で私が強く感じたのはファーストタッチの精度の高さだった。
その時のパススピードやコースに合わせ、自分のスピードを殺さずに相手との間合いを上手く取ったファーストタッチのその角度に何度も感心した。

アーセナルは例のごとく素晴らしいパスワークで“Beautiful Football”を披露していた。(本当はもう少しシュートがあれば面白いのだが…)
ティエリ・アンリのトラップやここぞという時のドリブルも圧巻だった。
彼の今後の動向は?アンリのいないガナーズ(アーセナルの愛称)なんてあり得ないな……と感じてしまった。

この日は首位チェルシーが3-0でホームのミドルスブラに完敗した。
試合は見ていないが珍しい負け方である。
一方リーガエスパニョーラでは首位のバルセロナがバレンシアに0-1で敗れ今季初の2連敗。バレンシアは2位に浮上。
ベストメンバーではないのかもしれないが流石に独走のこの2チームも疲れが出てきたのであろうか。
22日にチャンピオンズリーグの決勝トーナメントではこの両リーグの首位チーム対決が行われる。
またアーセナルは21日、調子を上げてリーガ3位に浮上してきたレアル・マドリーとの対戦。
プレミアVSリーガエスパニョーラ。どちらも目が離せない!!
そんな訳で、うちの妻はいつもFootball未亡人。。。

football_14feb06_small.jpg
選手入場
(写真をクリックすると拡大写真が表示されます)

投稿者 lib : 08:27 AM | コメント (2)

February 13, 2006

バレンタインデー

mama.gif バレンタインデー、である。

ロンドン中が赤やピンクのハートで溢れかえっている。
店先には可愛く包装された小さなハート型のチョコレート、その隣には巨大なハートのバルーン。

このファンシーさ、何もかもが大ざっぱなこの国で異彩を放っている。
もちろんバレンタインデーは、昔から「恋人の日」だったが、もう少し落着いていた様な気がする。
そもそも、「バレンタイン用チョコレート」というものが存在しなかった。
チョコレートを恋人に贈る人はいたが、普段から売っているベルギー産チョコレートなどだっただろう。

どうやら日本のバレンタイン商戦の逆輸入らしい。
バレンタインデーが大きな市場となっている日本に続け、というところだろうか。
商売のタネになれば他所の国の習慣でも節操なく取り入れ、記念日ビジネスにするのは世界的な傾向なのかもしれない。
この分だと、ホワイトデーはもちろん、ひいては桃の節句や端午の節句が世界中に定着する日も近いだろう。遠いか。

日本のバレンタインデーはどんな事になっているのだろう。やはり義理チョコ主流なのだろうか。
普段お世話になっている人に「季節のご挨拶」的なプチお歳暮とかプチお中元の感覚なのかもしれない。
しかし忘れてはならない。
日本式バレンタインの元々の意義は、、
「年に一度だけ、女性から男性に告白できる」
日なのであった。
ということは、あとの364日は女から告白してはいけなかったのか。
今にして思うと、えらい男尊女卑なコンセプトだったのだな。うーむ。

我が家のバレンタインの歴史はというと、私が渡英した7,8年前、その頃婚約者だったダンナからチョコをもらった。
しかし日本の様に「バレンタインデーにはチョコレート」という絶対的なルールがあるというよりも、チョコレート位しか贈るものがないというのが理由のような気がした。(人の家を訪問する時も、日本の「菓子折り」に相当するものがチョコレートしかないのだ。ああつまんない)
ダンナは香港チャイニーズだが、こちらでの生活が長いせいか、日本人男性よりはロマンティックなところがあり、赤いバラの花束も添えられてあった。

「この国では女がプレゼントしてもらえるのか。ラッキー」と素直に喜んだ。

しかしその後、赤いバラの花の価格がバレンタインデーには急騰し、一本8ポンドなどという法外な値段が付けられている事を知り愕然とした。5本買えばそれだけでもう40ポンドではないか。私の頭は40ポンドあれば何が買えるかと、セコイ換算で一杯になった。

「バレンタインデーにバラの花なんて買わなくてもいいからね!もうどうせ夫婦なんだからそんな演出は不要!」
私は「釣った魚にエサ禁止」を自ら宣言した。
ダンナも夢のない魚・・・いや女を、妻にしたものである。

2001年のエサ禁止令の発布により、その後のバレンタインプレゼントは比較的、相場の変動の少ないチューリップなどの花にとって変わられた。妥協案である。チョコレートはそのまま存続された。

しかし、また問題が起こった。

2002年に子供が生まれると、家に花を飾ることが難しくなった。
息子は超アクティブで、どこにでもよじ登る習性を持っていたため、花瓶に花を生けて飾ったりすればたちまち息子の標的となることは目に見えている。花瓶もろとも粉砕するだろう。

墓穴を掘るような事はしたくない。
よって、2003年には切花を全面禁止とした。「切り花ご法度の令」である。

ダンナも納得し、その後はチョコレートとカードだけのプレゼントで、数年間は安定した。

しかし先日、ある疑惑が湧いてきた。

元々私は、チョコレートなどの甘いものがあまり好きでない。
そのため、バレンタインデーに一箱もらうと、それを食べ終わるのはイースターの頃になってしまう。
箱にいつまでも残るチョコレートを見て、苦痛に感じることさえある。
ダンナだって一緒に住んでいるのだからそれは知っているはずだ。

それなのになぜ、彼はチョコレートを私に贈り続けるのだろう。
私のため、というより彼の自己満足を満たしたいからなのではないか。

そこで先日バレンタインデーのことには触れずに
「私ダイエットすることに決めた。もうチョコレートは一切食べない。」
と言ってみた。

ダンナは読んでいた新聞から目を上げず、「そう。」とだけ興味のない様子で答えた。が、瞳の奥に一瞬暗い影がよぎったのを、私は見逃さなかった。

さて明日、バレンタインデー。

ダンナがどんな法の抜け穴を探すのか、楽しみである。ていうか、少しは感謝しろよ自分。

投稿者 lib : 09:20 AM | コメント (0)

February 09, 2006

LIB ブラックキャブ

career2.gif  少し以前の話だが、ブラックキャブの運転手と口論になった。

親戚の子が彼女の友人とロンドンに来た。まず、ロンドンアイの大観覧車に乗せ、その後、チャイナタウンでランチという日程だった。ロンドンアイで客待ちをしていたブラックキャブに乗る。
もろ、観光客コース。

チャイナタウンに到着した。5ポンド20ペンスという料金だったので10ポンド札を出す。
と、キャブの兄ちゃんが、
「なんで、たった5ポンドなのに10ポンド札を出すんだよ」
ん? 一瞬、聞き違えたかと思った。
「なあに?」
「非常識だよ。おつりがないよ」
はあ? いったい何を言っているんだろう?

日本で両替してきた高額紙幣50ポンド札で払おうとしたのなら、理解できる。50ポンドなんて、たかが1万円札だが、イギリスでお目にかかることは少なく、大きな店でないと受け取るのをいやがるからだ。

「5ポンド20ペンス払うのに10ポンド札で、どこが非常識なのよ。おつりの準備くらい当たり前でしょ? なけりゃ、 『つり銭がいらないようにご準備ください』 と書いて、フロントガラスに張っておけばいいじゃないの」 と私。
運転手は舌打ちをすると、しぶしぶ、つり銭を渡す。
なんだ、持ってるんじゃないの。

で、ふと気がついた。
東洋人のご一行が観光コースで乗ってきた。服装から見ると日本人観光客らしい。
ちょっと、文句をつければ、おとなしい日本人のこと、
「じゃ、おつりはいいです」
とか言って、4ポンド80ペンスは丸儲け。
そう思ったに違いない。

甘いぜ、兄ちゃん!

カモになりそうだと、私たちを日本人と判断したのはほめてやろう (ほめなくてもいいけど)。 ただし、観光客の中にロンドンの住人が入っていたのに気づかなかったのが、敗因だな。

「もちろんチップはあげないからね。ナンバープレートの番号も控えたから、監督局に報告しとく。こんな商売のしかたをしてると、ライセンスを取り上げられるよ。わかった?」

そう言って、私は運転手に二本指を立てたのでした。 (この部分、よい子は決してマネをしてはいけません。相手がなぐりかかってくる恐れがあります)

さすがの私も、年中ブラックキャブの運転手とケンカしているわけではない。 (時たまです、時たま)
でも、悪徳運転手には言うべきことは言っておかないとね。

投稿者 lib : 09:50 AM | コメント (4)

February 08, 2006

日本食

darling.gif ダーリンの好きな日本食は、豆腐のほか、寿司、蕎麦、天ぷら、焼き肉、しゃぶしゃぶだ。
日本に行くときは、寿司を食べる日を決めているし、店も決まっている。
2週間滞在で同じ店に2回も行く!!
だから、その計画が狂うとかなりショックだ。
昨年、私のせいで計画が壊れてしまい、いつもの寿司屋に行けなかった。
だから、うらめしそうに
「ああ、○○のおいしい寿司がたべたいなー。」と時々嫌がらせを言う。

私は、ラーメンが好きだが、ダーリンは嫌い。
ラーメンは下品な味だと言う。
下品??フィッシュ&チップスみたいなものなのに。
ラーメンこそが、日本の大衆食文化よ!
日本を知りたければラーメンを食べなきゃ。と言っても、
ラーメン屋には入らない頑固者だ。
だから、ラーメンはいつも一人で楽しむしかない。

それにおでんも嫌いだ。おいしくない食べ物と言う。
濁った色と歯ごたえのない具が、どうも感触が悪いようだ。
同じ理由で、野菜の煮物も具によって一切食べない。
牛蒡やレンコンなどの歯ごたえがあるものは、パクパク食べる。
だからといって、自分が嫌いなものを目の前で食べている私に、
文句は言わないが、決して自分の箸は動かさない。

友人が、英国人のボーイフレンドと大げんかしたときに、
腐った食べ物を食うやつとなんてつき合えない!!
(おでんのことらしい)と言われ、プチっと切れて、
それで終わりになったそうだ。
だから、食べ物の恨みは、怖い。


ダーリンのもう一つの大好物は、蕎麦。
特にざるそばは、上品な味でうまい、うまいと絶賛する。
これは、意外に英国人に共通していて、あの甘くて濃いつゆが好きなようだ。
日本に行く際は、もちろん蕎麦屋に行くプランも入っている。
最近は生意気にも出雲蕎麦に凝っている。

そんなダーリンでも、泣き所がある。
日本酒だ。
大好きなのに、どうも体質があわないようだ。
飲み合わがいけないのか、量なのか、
大して飲んでいないのに、
いきなりトイレに行ったっきり戻ってこない。
これが、朝まで続くのだ。つき合うのは、大変だ。
見ていても辛そうで、ハァ、ハァ、いいながら震えている。
これまで何度も痛い目にあっているのに、
やめられず最近は私が飲まないで!!と止めているのに、
こっそりと隠れて少しだけ飲んでいるようだ。

英国も日本食ブームのなったおかげで、
手軽に日本食を買えるようになったし、安くもなった。
でも、やはり何処何処の寿司が食べたい!!という希望はかなえられない。
ダーリンの欲求は、すでに日本人化していて、
「ねえ。日本のあの寿司屋で食べて帰ってくるには、3日あればいいかな?」
なんて馬鹿なことを言い出す始末。

まあ、日本に住んでいながら、英国のママから送られてくる英国製のチョコレートと
ピザ、イモしか食べられない英国人BFを持つ友より、ずーと幸せな私かしら??

投稿者 lib : 09:49 AM | コメント (0)

February 07, 2006

メンタリティー

football.gif  確か中学か高校で柔道場などに「心・技・体」と書かれたものが掲げられていた。
当時は武道があまり好きではなかったので気にも留めてなかったが色々と学んでいくうちにその意味がとても重要な事だと気が付いた。
漢字で書くと仰々しいがそれぞれ「Mentality・Technique・Physique」といった聞き慣れた言葉になる。
さらに一番初めに“心”がきている事が大きい意味を成す。
この“心”が安定していないと“技”や“体”も持ち味を発揮できないという事であろう。
スポーツ界ではメンタルトレーニングは当たり前であるが、特に科学的に取り入れて無くても一流選手はその術を自ら身に付けている場合が多い。
試合前、集中力を高める為に音楽を聴いたり高見盛の様に頬を叩き鼓舞したり体内にアドレナリンを放出する為に色々な方法がある。

勿論Footballをはじめスポーツに共通して言える事であるがこうして100%の力を出す事によって“メンタリティー”の“超回復”が起きるのではないか。。。

またこの“心”は人生に於いても同じ事が言えると思う。
これを強くするという事は人間的にも強くなれるものと私は信じている。

プレミアリーグで何億と稼ぐ選手でさえも失敗は起こりうる。
プライベートでの理由もあったのかもしれないがアーセナルのソル・キャンベル選手が自らのミスで失点を招き前半で退いた後、試合途中にも関わらずスタジアムを後にした。
ベンゲル監督も容認しているようだがまた逞しくなって帰って来て欲しい。

一度の人生、 私なりに逞しい“メンタリティー”を発揮したい。

Craven Cottage 2006.jpg
フルハムVSトッテナム。試合前のウォーミングアップの様子。

投稿者 lib : 09:51 AM | コメント (3)

February 06, 2006

スピーチ・セラピー その4

mama.gif いよいよ、スピーチセラピストは息子に簡単なテストをすると言う。お受験を見守る母親の気持ちはこんなだろうか。「テスト」という言葉を聞いただけで急にびびってしまった。

テストの内容は息子にパズルをさせたり、絵の書いてあるカードをいくつか見せて、犬はどれ?女の子はどれ?などと質問するものだった。私が質問役なので、いつも使っている日本語で聞いて良いと言う。こういった遊びは普段から息子としていたので、これは難なく通過。

次に、同じカードを、名詞を使わないで動詞で質問してみて、と言われた。例えば「飲んでいるのはどれ?」「走っているのはどれ?」など。こういった遊びはしたことがなかったので、息子、分かるかなーと半信半疑で質問したが、正解を言えた。正解できたのが意外で、私の方が驚いた。面白いやり方だなと思った。

後日、送られてきたリポートを見ると、言葉を習得する上で重要な、注意力、聴力、遊び方、言葉(名詞、動詞)の理解力などは問題ないが、言葉を表現することに若干遅れがあるとのことだった。
レポートの中に、「観察によると、’ke’という一貫した発音を使い、個々の品目の名前を母親に聞く行動が見られた。」と真面目に書いてあったので笑えた。「け?」がキーワードだったのだな。
両親は一貫した言語で話しかける事、子供に質問して答えさせるように心がける事、などのアドバイスがあり、これはこれで役に立った。

その後、こんな事があった。

日本語の子供向けビデオを見ていた息子が、主人公が車のおもちゃで「ブー、ブー」と言いながら遊んでいるのを見て、自分も「ブー、ブー」と繰り返していた。そのように正確に発音を繰り返すことは初めてだったので、はっとした。

以前、「子供は言葉をそのまま吸収するので、幼児語を使っても正しい日本語を使っても同じように覚える。よって幼児語を使う必要はない。」というような話を聞いた事があった。
幼児語を使わせたくないと思っていた訳ではなかったが、私自身、今まで子供との接点があまり無く幼児語が出にくかったのと、この説が頭に残っていた事があり、特に積極的に幼児語を使っていなかった。

息子は車の擬音語として「ブーブー」と言っていたのだが、試しに
「このブーブーが好きなの?」
と名詞として使ってみた。

息子は一瞬、はっとした様な表情をした。そして、嬉しそうな顔で、
「ブーブー!ブーブー!」と大きな声で連呼した。
まるで、
「『くるま』じゃなくて、『ブーブー』って言ってもいいんだ。」
と確かめて、ほっとしたかのように。

それから、外でも車を見るたびに自信を持って「ブーブー」と言うようになり、彼の3つ目のボキャブラリーになった。幼児語でも言わないよりは言った方がいいに決まっている。

子供は動物的に言葉を覚えるものと思い込んでいたが、実は思っているよりもずっと複雑な心の動きがあるのかもしれない。私だって自信のない英語の発音は避けて、他の言葉で言い換えようとする様に、2歳児にだってプライドがあり、自信のない発音は口に出したくないのかも知れない、と目から鱗の思いだった。

今はスピーチ・セラピー体験から約1年が過ぎ、息子もそれなりに話せるようになった。とはいえ、同年齢の子に比べるとまだまだ下手だが。

それでも、少しでも意思の疎通ができるようになると、息子が何を考えているのか知りたくなる。

で、常々「子供になんてバカなことを聞くんだろう」と思っていた質問を、ついしてしまった。

「ダディとマミィ、どっちが好き?」

息子はすかさず答えた。

「ボール。」

質問と噛み合っていないが、母親がボール以下の位置付けであることは分かった。

知らなかった方が良い事も、ある。

投稿者 lib : 09:33 AM | コメント (2)

February 02, 2006

女子トイレ 日本編

career2.gif   トイレというものは、その国の文化や習慣を如実に表すものである。

女子トイレ文化のユニークさにおいて、日本はかなりの水準ではないだろうか? 10年以上もロンドンで働いていると、日本の会社の女子トイレに行くのは 「海外出張」 における 「異文化との出会い」 になってしまった。

まず、化粧ポーチがトイレに置いてある。
さっと、マイポーチに手が届く効率のよさ。化粧品を公共の場に置いても盗まれない犯罪の少なさ。イギリスではとても考えられない環境である。イギリス人でも同僚のポーチに手を出す連中はいないと思うが、外部の人も入ることのできるトイレに私物を置くのは無理だろう。

OLが、昼食後にいっせいに歯磨きをする光景も、久しぶりに見ると感激する。
ランチ後は、白い歯とさわやかな息で午後の仕事を開始するのか。
なんと、感心な心がけだ。
イギリスの女の子がランチタイムに、パブやワインバーまでクィックドリンクに出かけて、酒臭い息でオフィスに帰ってくるのとは少し違う。 (まるで他人事のように言う)

壁には、山ほど標語が張ってある。
「トイレはきれいに使いましょう」
「髪の毛をシンクに流さないでください」
「ペーパータオルはしっかり丸めてから捨てましょう」
「使用中は水を流さずに 『音姫』 のボタンを押してください」

「音姫」 といえば、イギリス人の女性が日本に出張に行き、これは何なのかと首をひねったと聞いた。下手にボタンを押してとんでもないことになり、日本語もできないのに面倒に巻き込まれると困る。でも好奇心は抑えられず、彼女はトイレ内のひと気がなくなるのを、じっと個室で待ったらしい。

いざとなったら、誰にも見られないように逃げるつもりだったと思われる。

ちなみに、彼女は三十代半ばで高学歴、高収入のキャリアウーマン、おまけに美人の人妻である。そんなイギリス人が、日本の女子トイレの個室に息をこらしてこもり、胸をドキドキさせながら、そっと 「音姫」 のボタンを押したかと思うと笑える。
運命の一瞬、 「音姫」 からはさわやかに水の音が流れ出た。 ただ、それだけ。
さぞ、拍子抜けしたに違いない。

「・・・で、何のために水の音がするの?」
おもむろに彼女は聞いた。
「音姫」 の設置目的がまったく理解できていないのだ。

これがいつもの私なら、
「トイレはご不浄といって、悪い 『気』 がこもる所だから、使用のたびに呪文をとなえて、悪魔を退散させなければいけない、そう日本では信じられている。その手間をはぶくために、川のせせらぎが録音してあるものが備えつけられていて・・・」 と、もっともらしい話でからかうのだが、彼女は重要な取引先で働く人である。 ちょっと、まずい。

というのは、彼女には他にも日本人のクライアントがいるので、私のボケ嘘がばれる可能性が大きいからだ。

「使用中の音を他人に聞かれるのがはずかしい」 という日本人女性の心理を説明したのだが、当たり前の生理現象の何がいけないのか、いまひとつ納得していないようだった。
「水がもったいないから」 という日本的な公共道徳観にも、不思議そうな顔をしていた。

日英女子トイレ文化の溝は深い。   イギリス編もそのうち紹介したい。

投稿者 lib : 08:39 AM | コメント (1)

February 01, 2006

オバタリアン・キラー

darling.gif 外国人に弱い、日本のオバタリアン。
その上、女性っぽい柔らかい日本語を話せたら、外見なんて関係ない、
“ハンサムな?ガイジンさん”ということで、みんなが可愛がってくれる。

ダーリンも日本にいるときは、それで随分得をしたな。
豆腐屋のおばさん、叔母、母、大家さん。

大家さんは、目の前に住んでいた。
よくお裾分けをくれた。そのときに窓越しに呼ぶのは、ダーリンの名前。
きっと私の名前は最後まで知らなかったし、覚える気もなかっただろう。
でも、そのおかげで、3年目の部屋の更新時、すごーくまけてもらえた。

祖母が近所に住んでいたので、よく週末に遊びに行った。
私が先にいくと、同居の叔母が「あら、ダーリンは?」必ずと聞く。
後から来まーす。というと、2階に上がって口紅なんて、塗ってくる始末。
その上、寿司が一番好きだ。と何度言っても、
ガイジン=ステーキという概念が抜けず、おいしいお肉があったから、
と霜降りのステーキ肉を焼いてくれる。
そして、お年玉までくれる、いい叔母だ。

母にしても、
「ちょっと!!いつも同じ服を着ていて、かわいそうね。何か買ってあげようかしら?」という。

一番うれしかたのは、豆腐屋のおばさんだ。
日本に住んでいた間に、
あるときスーパーマッケットと豆腐屋で買う味の違いに気づき、
自ら近所の豆腐屋に出かけていた。
ある日、頼んだ豆腐以外にべつの物がはいっていたので、
「どうしたの?」と聞くと、豆腐屋のおばさんがくれたという。
それ以来、少し崩れて売れない豆腐だからとか、
今日は油揚げがあまっているからとか、
買いに行く度におまけを貰ってきてた。

豆腐屋では、同じ外人がよく買いにくるのでうれしかったのだろうな。
だから、豆腐屋へのお買い物はダーリンの仕事だった。
ある日、タケノコご飯を作ろうと思い、油揚げを買いに行ってもらった。
豆腐屋のおばさんは、
今日は豆腐でない油揚げを買いにきたのでちょっと興味本意に
「この油揚げをどうするの?」聞いたらしい。
ダーリンは「タケノコごはんを作ります。」と言った。
おばさんはえらく驚き、そして感心したようで、またおまけに豆腐をくれた。
作るっていったって、私がつくるんだけど。。。
おばさんの頭の中では、きっとこの外人さんが作るんだ!!感心!!と思っていたようだ。

まったくこのオバタリアン達は、ダーリンのことなんて思っていたのだろうか?
下町のヨン様??なんだろうか。

私は、いつも遠目でみながら、
ダーリンが貰ったものをピンはねする役を楽しんでいた。
しかし、ロンドンにきてしまっては、その恩恵はない。
さびしいなー。

投稿者 lib : 09:55 AM | コメント (0)