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May 17, 2007

キッチンの攻防

career2.gif 
夕方、家の電話が鳴った。この時間にかかってくるのはセールスが多い。電話会社、ブロードバンド、ガス会社等々の勧誘である。
玄関に人が来ても基本的には無視することにしている。ま、そのせいで配達物を受け取りそこなったりすることもあるのだが・・・。電話はそうもいかないし。

「こちらはキッチンXXです。リーズナブルな価格で高品質のキッチンをお客様にお届けします。一度お伺いして、見積もりを出させていただきたいのですが」
キッチンの改装は考えていなかったが、いくらかかるものなのか興味はある。
週末の午前中にアポイントを入れた。

と、友人や同僚に言うと全員に 「えー、大丈夫なの?」と心配された。
「セールスマンがからむから割高になってるよ」
「ものすごく強引なセールスで断れないよ」
「いつまでもしつこく勧められて、うんざりして契約しちゃうよ」
・・・まずかったかしらん。

さて、土曜日だ。
ちっ、人が来るならキッチンを掃除しなければならない。
が、こんなときに限ってクリーナーのおばちゃんは休みである。
えー、私がキッチンを掃除するの? (当たり前だ) 土曜日の朝っぱらから? (アポに同意しただろ) と自分で自分につっこみを入れながら、イヤイヤ掃除する。

約束の時間にぴったり、南アフリカ出身という白人のおばちゃんがやってきた。

私は人を見る目はないのだが、いかにも 「強引」が 「サイズ18」の服を着て歩いているという雰囲気のおばちゃんの押しの強そうな性格はさすがの私にもわかる。
安請け合いしたのをちょっと反省した。

「今日の見積もりはね、今日だけしか有効じゃないの。だから、今日中に契約書にサインしてもらうわね」
「いいな、今日中にカタをつけてもらうぜ」って、まるで借金の取立てのような雰囲気だ。
「今日中に耳をそろえて借金を返さないと、女房と娘を女郎屋に叩き売るぞ!」と脅迫されている気分である。
じゃ、私の立場もはっきりしておきましょうね。で、
「高いものだから、今日中に契約するつもりはないわよ」とあっさり宣言しておく。
カウンターパンチを受けたセールスのおばちゃんはちょっと沈黙したが、とりあえず見積もりを出すことにしたらしい。

「どんな色がいいの?」とおばちゃん。
「無難なところで白かしらね」と私。
「白なんかダメよ。他の色にしなさい」
おい、いったい誰のキッチンだよ?
「でも、白がいいなあ」とねばる。
「うちのカタログに白はないのよ。クリーム色でどう?」

「ここにカウンターのテーブルをつけましょう」とおばちゃん。
「いや、そこはがらんとした空間がいい」と私。
「つけたほうがバランスがいいわ。本当よ。私を信じなさい」と設計図に勝手にかきこむ。
もう一度聞く。いったい誰のキッチンだよ?
「ううん、いらない」と譲らない私。しぶしぶ、かきこみを消すおばちゃん。

おばちゃんは見積もりを出すのに3時間もうちにいた。途中で 「コーヒーちょうだい」と飲み物までねだる始末だ。長く時間をかけることで (いまさら断れないかな・・・)という効果を狙うのだろう。「急がないとストックは品切れ寸前よ」と言ってみたり。
そんな小細工は効かないよ、私には。

「本当は9000ポンドだけど、会社には内緒で6500ポンドまで値引きするわ。もし、今、決められないなら、100ポンドの手付金でストックを押さえておくわよ」
―――9000ポンドの根拠はどこに?
「100ポンドの手つけ金だけでもしてよ。 契約が不成立の場合は返金するから」
―――このオババから、すんなり手つけ金が返るとは思えない。
「する気はないわ。今日中に電話する」
と、なんとか無事に追い返した。後から 「悪いけど、いらないわ」と短いメッセージを送る。余計な言い訳をしないほうがいい。

私はああいう強引なタイプは苦手だし、逆に反発してしまう。でも、気の弱い人ならうまく断れず、設計の内容にも納得できないまま契約してしまうかもしれない。
あの手の会社から見積もりを取るのは、きちんと反論できない人にはお勧めしない。

で、相変わらず、私のキッチンはボロのままだ。土曜の朝から掃除して損したな。

投稿者 lib : May 17, 2007 09:08 AM

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