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June 12, 2008

チョコレートの国

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先週は、前回のブログに書いたように歴史旅行の引率で9年生とベルギーに行ってきました。

7時15分にコーチ(大型バス)に乗って出発し、Channel Tunnel のシャトル(ものすごく大きい電車に大型バスがそのまま載るのです)を利用してまずはフランスへ。そして、目的地のベルギーのフランダース地方へまた再びコーチにて向かいました。およそ3時間半くらいの旅だったでしょうか。

今回の旅の目的は第一次世界大戦の戦場をめぐることです。イギリス連邦やドイツ軍の戦没者墓地や保存されている塹壕、博物館などを訪ねます。

イギリスでは膨大な犠牲者が出た第一次世界大戦の追悼が大規模で、特に戦争が終結した11月11日に向けて毎年さまざまなイベントがあります。

その時期に限らず、大戦で亡くなった兵士たちの家族たちや退役軍人たちが年間を通してフランスやベルギーの墓地を訪れるようです。また、現役の兵士たちも軍教育の一環として戦場ツアーに参加することが必須だそうです。

私自身、このベルギー旅行は4年続けて参加していますが、墓地へ献花に訪れている人々を多く見かけてきました。

ちなみにいくら引率する私たちが歴史教師とはいえ、大戦の知識は限られますので、毎回知識豊富なツアーガイドさんに同行してもらっています。私たちがいつもお願いしているのは退役した元軍人の人たちなのですが、今年はなんと現役の軍人さんが担当になりました。

去年はアフガンで任務についていたそうですが、今年はイギリスで待機しており、副業として訓練中の兵士や学校向けのガイドの仕事を引き受けているそうです。

私も生徒も現役軍人と接するのは初めて。イギリスが現在関わっている戦役についてここで詳しく語るのは控えますが、とにかく彼は現在も軍事行動に関わっているわけです。

私自身、第二次世界大戦後、ベトナム戦争も幼少時に終結した世代に生まれた人間ですから、戦争というのはどうも本やテレビの向こう側という感覚が拭えません。それが今回、実際に戦場で自分の命を危険にさらしている人と接し、不思議な気持ちになりました。

たぶん彼は30代後半か40代だと思いますがとても明るい人で、生徒を自分の話に引き込むのが上手。今まで一番子供と接するのに慣れているガイドさんだったと思います。実際、戦闘に出たことのある人物の言葉は子供たちの心にもいつもより響いたようです。私たち教師は「来年もあの人にお願いしたい」と思ったほどです。

周りで人が怪我をし、死んでいく恐怖、悲しみについて、ちらりと語ってくれましたが、とても良かったのは彼よりもずっと若い部下が書いたという詩。

9年生も授業で第一次大戦中に兵士たちが書いた詩(War poem)を勉強しており、かつての兵士たちの気持ちと今も戦っている兵士たちの心の中にたくさんの共通点を見出したようです。

それからこのツアーの目的のひとつに、イギリス連邦のなかでもインドやカリビアンから戦場に送られた中央アジア人・アフロカリビアン、そして男性兵士だけでなく、看護師として戦場に赴いた女性たちについても学ぶこと、というのがあります。

私の学校の生徒は大半がバングラデッシュ系移民の子供たちですから、曾祖父の世代までたどればもちろんインドともつながりがあります。それでも第一次世界大戦が自分たちの祖先と関わっていることをなかなか実感する機会はありません。

どうしてもキリスト教、白人イギリス人の戦争というイメージを強く持っているようです。それがこの旅の中でイギリス軍にシーク教徒やイスラム教徒もいたことを発見し、驚きを隠せないようでした。

さて、ツアーの最後にはYpresという街を訪れます。生徒にとってはお待ちかねの自由行動の時間です。毎年街の中心にあるチョコレート屋に立ち寄って、それから一時間ほど生徒だけで買い物にいそしむのです。その間に私たちは近くのレストランで夕ご飯。

実はその街を訪れる理由は他にあります。そこにはイギリス連邦の兵たちを追悼する大きな門(Menin Gate)が立てられており、1929年から毎年ここで(ナチスドイツ軍が占領していた4年間を除いて)一日も途切れることなく午後8時から10分ほどの追悼式(The Last Post Ceremony)開かれています。

毎年私たちが訪れるときは生徒数人に代表になってもらい、儀式のなかで献花をおこなっています。他にも観光客やイギリス各地から訪れている退役軍人のグループでいつ訪れても人で溢れ返ります。

式が終わると帰りのシャトルに間に合うようにすぐにコーチで帰途へ。イギリスに戻り、学校へ到着したのは11時半ごろでした。全ての生徒が無事保護者に迎えられ帰宅の途についたころにはすでに12時近く。ずっと気を張っていて疲れましたが今回も無事に終わりました。

毎年同じ場所を訪れるとはいえ、参加する生徒も違うし、ガイドさんも変わるので私自身新しい発見が毎回あります。今回もとても充実した旅になりました。来年もまたどんな発見があるのか、、、楽しみです。

投稿者 lib : June 12, 2008 11:21 PM

コメント

なんとためになるツアーだったのでしょう!!
やはり戦争の事は、事実(まあ、国によってどれが真実か違ってきていますが)を伝えて行かないといけないと思います。
その点、日本は教育の現場で臭い物に蓋をしている気がしますが、どうなんでしょうか。
英国に来て、英語学校ですら、歴史(特に戦争)がかかれたポスターが壁に貼ってあったりして、驚きましたわ。
日本の教育に、いい点は取り入れたいですよね。ココ

投稿者 coco : June 26, 2008 04:04 AM

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