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December 23, 2010

日本のママさん、感激?!

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今日、イギリス人の友達と日本とイギリスの違いを話していて、ふと思い出したことがある。
あれは私がまだイギリス3年目で、はじめての教育実習先で悪戦苦闘していたころ。
なにせ、その実習先はかつてロンドンでも一二を争う「rough school」(rough=荒れてる)だったという北ロンドンの男子校(その二年前から共学になったので、8年生まで女子もいた)。
私がいたときでも、内情はそれほど知らなかったものの、掴み合い・殴り合いのけんかが目の前でおこったり、女子のクラスで机に突然、ライターで火をつけた子がいたりと、まぁ、ラフといえばラフだった。
でも、そんなラフでタフな実習で6年以上経った今も忘れなれないエピソードがある。
あれは7年生(11-12歳)のクラス。
実習が始まって間もない私は、20人くらいの男の子たちに囲まれながら、教師のサポートみたいなことを授業中にしていた私。
生徒の一人に、ギリシャ系の将来イケメンになること間違いなし(というか今頃絶対イケメン)な男の子がいた。名前もラテン系の名前でかっこよかった。
たまに悪ぶれるけど、なかなか頭脳明晰だったことを覚えている。結構リーダー的な存在になるタイプ。
私がそんな彼のノートをふと見たとき、、、。
ある言葉が目に飛び込んできた。
「Mum’s birthday」
授業ノートには必ず、日付を書くのが習慣なのだけれど、その子は日付の隣に「お母さんの誕生日」と記していたのだ。
そのときの私の感情を日本風(秋葉原風?)に表現すると、「萌ぇ~」だろうか。
それについて言及してみたら、嬉しそうに「そうなんだよ、ママの誕生日なんだよ。何あげようかな~~~」なんて、可愛い笑顔。
再び「萌ぇ~」な私。
こんな、ちょっと生意気言って、かっこつけちゃうような12歳の男の子が、ママの誕生日を大切にしてる。
日本では、こんなことありえないでしょう。中学生の男の子がこんなこと書いているのをみられたら、からかいの対象になること間違いなし。いや、「マザコン」というレッテルを貼られるかもしれない。
でも、日本のお母さんたちがこの話を聞いたら、感動の涙を流すかもしれない、、、。
私の家庭でも、兄が思春期に母親とまともに口なんて聞いているのを見たことがなかったし。私もそれが普通だと思っていた。反抗期がないことのほうがおかしいと思っていた。
それがイギリスに来て実際に、母親の存在を本当に大切にしている子供たちを多くみて、よく見聞きするような日本の子供の異常なまでの反抗期のほうが、もしかしたらおかしいのかもと思うようになった。
まぁ、もちろん、親を一人の人間として見るようになり、反抗心を感じることは自立への自然な道かもしれないし、全ての子供をひとくくりにすることはできないと思う。実際、イギリスでも親に反抗しまくるティーンエイジャーもたくさんいるわけだし。
それでも、信頼と愛情の笑顔を交し合える親子関係がもっともっと生まれたら、そして、それを表に出すことが恥ずかしいことでもなんでもないという感覚が生まれたらどんなにいいことか。
あの子の笑顔を思い出すと、今でもそう望まずにはいられない。

投稿者 lib : 02:56 PM | コメント (0)

December 21, 2010

イギリスのサービス業 配達編 その2

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暫くしてから時計を見ると1時だがまだ届かない。今までの経験上、配達物は大抵午前中に届く。午後になっても届かない場合は心配した方が良い。

嫌な予感がして、PCワー○○のカスタマーサービスに電話した。

例によってテープ音で、「営業時間についてのお問い合わせは1、配達についてのお問い合わせは2・・・」と言うので2を押すと
「配達についてはウエブサイトを見てください。(初めに言っておくが)配達の時間にはお答えできません。(それでもどうしてもというなら)オペレーターと話したい方は1・・・」というのでめげずにオペレーターと話そうとしたが、「現在込み合っております・・・」というナレーションと呼び出し音が響くだけであった。

こんな事を20分毎に繰り返し、気が付けば息子を学校に迎えに行く3時前になっていた。
最後のチャンスとばかりにもう一度かけなおすと、奇跡的にオペレーターに繋がった。

「今日パソコンが配達される筈なんだけど、何時頃になるかしら」

オーダー番号を告げると、電話の向こうでキーボードをカタカタたたく音がした後、

「その注文はキャンセルされました」

と言う。

「・・・パ~ドン?」

「その注文はキャンセルされました」

「キャンセルした覚えはありませんが???」

「品切れで・・・キャンセルされました。」

男のオペレーターは流石にバツが悪そうだった。

「キャンセルって・・・私は聞いてないよ、今日だって今朝から配達を待っていたのに」

「代金は返金します」

「そりゃお金は返すだろうけど、品切れなら品切れってどうしてもっと早く連絡してくれないの。」

「コンピュータの不具合で・・・」

「ていうか、そもそも品切れの商品をどうしてウエブサイトに表示して注文を受けたの?ちゃんと受注のメールももらったよ。えーい、品切れは百歩譲って良いとしても、こっちは一日潰して配達を待っていたのにどうしてこっちが連絡するまで何もしてくれなかったんだあ・・・・・・」

先の冷蔵庫の事もあって不満が爆発した。大人げないとは思ったが、次から次へと相手を責め立てた。

日本ではこういう場合、店側はただただ平謝りをするだろう。
しかしここはイギリス。相手が逆切れした。

さっきから何度も言うが、商品は、無い。金は返すと言っている。これ以上、俺に何をしろと言うんだ!」

・・・・わかったよ。正論だ。

‘Thank you for your help’
と言って、電話を切った。

時計を見ると、息子のお迎えに遅れそうだ。置き去りにされた冷蔵庫に頭をぶつけそうになりながら家を飛び出し、走って学校に向かうと空が青い。

古い大きな冷蔵庫は廊下に鎮座し、体を横にしてカニさん歩ききしなければ通り抜けができない。
心待ちにしていた新しいパソコンは勝手にキャンセルされていた。

しかしなぜか唐突に笑いがこみ上げ、

「・・・まあ、家族がみんな元気で生きているんだからいいか・・・」

と思った。

生きていることに感謝するという基本的な事を忘れそうになったら、イギリスへ来てみましょう。
究極のポジティブ志向になれます。

「間違いだってあるよ。人間だもの。」 by みつこ (←古いか)

投稿者 lib : 11:53 AM | コメント (3)

イギリスのサービス業 (配達編) その1

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前回、長々と授業料値上げについて語ったが、なぜ選挙権もない一介の外国人の私がそんなに熱くなっているかというと、愛する大英帝国の行く末を危惧し憂いている訳では勿論なく、フェアな競争により選ばれた人達が国や役所や企業の要所についたり、起業したりして、優秀な頭でいろいろ考えてくれれば、イギリスのサービスの質が改善され効率的になり、私も少しは暮らしやすくなるのでは、という極めて私的な理由からである。
もちろん「ウチの息子がオックスフォードに行く機会が奪われたから」とかでもありません。(経済力以前に学力がアレですから)

(素敵なイギリスのサービス業についてはここここをご覧下さい)

1ヶ月程前の話になりますが、また一つそんなイギリスのサービスに接する機会があったのでご報告します。

家の冷蔵庫があまり冷えなくなってしまったので、買い替え時かと新しい冷蔵庫を買おうと思った。

オックスフォードストリートに本店のあるデパート、JLに行き気に入ったモデルがあったのでこれが欲しいと言うと、ネクタイを締めた店員は
「これはメーカーから直接配達することになります・・・・配達日は一番早くて11月19日です」
と言う。

その日は10月の中旬だった。なぜ冷蔵庫1つ届けてもらうのに1ヶ月もかかるのか謎だが、ここはイギリス、1ヶ月かかると言われれば1ヶ月かかる。現役の冷蔵庫が全く壊れてしまった訳ではないので了解した。
配達の際に、古い冷蔵庫を引き取ってもらう事も確認し、冷蔵庫の代金と引き取り代金をその場で支払った。

それとは別に、愛用しているパソコンも老朽化し、いつ逝ってもおかしくない状態になりつつあった。
こちらも買い替え時かと色々検討した結果、とても気に入ったモデルがあったのでインターネットで注文した。
パソコン関連製品の大手、PCワー○○のサイトだ。
別料金を支払えば配達日を指定できるそうなので、冷蔵庫の届く11月19日に指定した。

イギリスでは「時間指定」と言っても「9時から1時の間」とか4~5時間のタイムスロットは当たり前。
待っている時間は身動きがとれず結構なストレスになるので、冷蔵庫とパソコンの配達日を同日にまとめるのは良いアイデアだと思った。

配達日の前日の11月18日、冷蔵庫のメーカーから連絡があり

「明日、朝7時から11時の間に届けます」

と言われた。

朝7時?随分早いなと思ったが、普段より早起きして冷蔵庫を待った。
途中、息子を9時に学校に送り届けるために家を20分程空けなければならなかった。その間に配達が来たときのために、玄関のベルに「ちょっと外出してます。すぐに戻ります」とポストイットを貼って行った。

イギリスでは配達の際、家が留守なら待ってくれるなんてことはありえない。「約束通りに来たのにお前がいなかった」と次回の配達をまた1ヶ月先にされかねない。家を空けている間は気が気でなく、急いで戻ったが配達はまだのようだった。

結局4時間半が経過し、冷蔵庫が届いたのは11時半だった。タイムスロットを30分遅れたが、まあそれでも約束通り配達されたのだから良かったと思った。

しかし配達の兄ちゃん二人は、いきなり冷蔵庫をキッチンに運び込もうとしている。

「古い冷蔵庫がキッチンにあるから、それをまず外に運んでからの方がいいと思うけど」

と親切のつもりでアドバイスすると、

「古い冷蔵庫?聞いてないな」

と言う。

「冷蔵庫を買ったとき、回収も頼んだのだけど」

「聞いていない。冷蔵庫を配達する様に頼まれただけだ」

の一点張りだ。

「ちょっと待って。JLに確認するから」

電話をとろうとする私に兄ちゃんは

「JL?JLには何の関係もないよ。」

と言い放った。

私はJLで冷蔵庫を買い、その冷蔵庫を兄ちゃんは届けているのだから、JLが「何の関係もない」筈はないのだが、私とJLと配達の兄ちゃんの関係を図で表すと、

私    →     JL   →      メーカー   →    配達会社   →  兄ちゃん
  冷蔵庫を注文     冷蔵庫を注文      配達を注文       配達を注文

という事になる。(おそらく兄ちゃんは配達会社の社員ではなく、契約で働いている)

この関係図のどこかで連絡ミスが起きた事は明白であり、日本人なら、瞬時に関係を遡って考えるのが普通だ。しかしイギリスでは自分と、自分に業務命令した人の関係までしか考えられない人が多い(この場合は 配達会社 → 兄ちゃん)
                                 
「でも、JLに確かに引き取りも頼んでお金も払ったの。レシートもあるよ。ちょっと待って、電話すればはっきりするから」

「JLには何の関係もないんだよ。この後も何件も配達が入っていて俺は忙しいんだ。冷蔵庫を置いていって欲しいのか欲しくないのか。YOU MUST MAKE A DECISION NOW.」

思い切り迷惑そうな顔をされ、これはまた随分と大きく出られた。

朝の7時から4時間半も待たされた挙句、店に電話する時間も与えられず、配達人に「冷蔵庫が欲しいのか、欲しくないのか、さあ、さあ、さあ」と決断をせまられる消費者の私。

JLに電話したところで、「開店時間のお問い合わせは1、商品についてのお問い合わせは2をお選びください・・・・」と録音テープに従い、空しく何十分も呼び出し音を聞かされた後、「オペレーターは現在大変込み合っております、後でお掛け直しください」と言われるのが関の山である。

奇跡的にオペレーターと話せたとしても、たらい回しにされるのは目に見えている。

JLに電話をかけたとしても、超多忙(らしい)配達兄ちゃんの迷惑にならない程度の短時間で問題が解決する訳がない事は在英12年の経験から火を見るより明らかだ。

兄ちゃんが、「JLと俺は何の関係もない」と信じているのなら、それ以上議論をしても無駄なだけだろう。(確かにJLと配達人とは契約関係はないだろうから、厳密に言えば兄ちゃんの言っていることは正しいとも言える)

しかたない。私は戦略を変えた。

「じゃあさ、お金は払うから、せめて玄関先にまで古い冷蔵庫を運んでくれないかしら。」

古い冷蔵庫があった場所に新しい冷蔵庫が入るわけで、新しい冷蔵庫の入った後は古い冷蔵庫の置き場所など我が家にはない。とりあえず家の外に運び出してもらわなくては。

我が家のフラットは1階(日本で言う2階)なので、冷蔵庫を運ぶ階段の上り下りはプロに頼むしかない。

しかし兄ちゃんは
「仕事で怪我をしたときの保険が、冷蔵庫を運び入れるときしかカバーしないんだ。」

とつれない。まあこれは理解できる。イギリスの保険屋も難癖つけてそりゃー払わないからな。

お情けでキッチンを出たところの廊下までは古い冷蔵庫を運んでもらい、配達人達はそのまま去った。

古い冷蔵庫は持って行ってもらえなかったが、少なくとも新しい冷蔵庫は手に入った。
気をとりなおして、次はパソコンを待たなければ。

パソコンは無事に届くのか?! つづきます

投稿者 lib : 01:29 AM | コメント (2)

December 13, 2010

イギリスの大学の学費が2~3倍に

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*前々回から続いてます

気になるのは、学費値上げに反対の人達(彼らも結局はミドルクラス)も、卒業するまでに借金が幾らになるとか、「貧乏人にも機会を」みたいな「上から目線」の議論ばかりな事だ。

その貧乏人の中に、将来の英国社会や経済を救う事になるような輝く頭脳の持ち主がいるかもしれない、なんて想像力は階級意識の染み付いたこの国の人達にはないのかもしれない。

大学への予算をどうしても削るなら、国の大学の半分以上を私立にしても、オックスブリッジの様なトップ大学こそ学費を安く抑えるか無料にし、優秀な頭脳を幅広く集めるべきだと思う。
そのために不透明な面接重視の受験方法を改善するべきだろう。

大学入学者は「お金の有無」ではなく、「学力」によって選抜されるべきだという、最も基本的な事をキャメロン首相は忘れてしまったみたいだ。

「うちはお金持ちじゃないけど、教育のためにはお金を惜しまないよ」というお父さんやお母さんが多いではないか。国も同じであるべきだと思う。

こんな前時代的なことをして階級社会を固持しようとするなんて、イギリスって、これからも「さえない国」なんだろうなあ。


追記:
先日の学生デモの逮捕者の中に、ピンクフロイドのギタリストの義理の息子が含まれていた。
戦没者記念碑によじ登りユニオンジャックにぶら下がっていた彼、逮捕後「戦没者記念碑だとは知らなかったんだ。恥ずかしくて死にたい気分だよ」と泣いて謝ったそうである。(骨のないプロテスターやね笑)

金銭的に何の不自由もない彼がデモに参加するのはNothing wrongだが、「デモに参加していた人たちは、本当に学費をアフォードできずに怒る層の人たちだったのだろうか」という疑問が湧いた。

前政権の労働党が作った‘Sure start’というスキムがある。「全ての子供により良いスタートを」
がスローガンのこのスキムは、就学前の子供を連れて遊べる場所や、音楽教室やダンス教室などを無料か1回一ポンド程度の料金で提供するものだ。
息子が小さい頃は私も有難く利用させてもらっていた。

お金のある家に生まれた子供は国に心配してもらわなくても「より良いスタート」が切れるわけで、労働党
の想定した利用者は貧しくて子供を連れて外にも出られない、または家に籠り子育てに煮詰まっているような人たちだっただろう。

しかし、実際にはそれらの場所は「ミドルクラス然」とした母親の社交場となっており、政府が子育て支援しようとしている層の人たちはあまり来ていなかった。本当に国が助けようとしている母親に、声は届いていないようだった。

結局は、ミドルクラス間の議論になってしまうのだろうか。
助けが必要な人達の声は国に届かないし、国の声は助けようとする人達に届かない、そんなシステムになってしまっているのかもしれない。だからこそSocial mobilityを(以下略)

今回の学生デモも暴徒化したのは一部だし、お祭り気分で参加した学生(とニセ学生)も多いのかもしれない。
20年後、保守党の党首が
「妻とはあの学生デモで知り合ったんだ」
とか言ってたりしてね(笑)

投稿者 lib : 09:37 PM | コメント (2)

イギリスの大学の授業料が2~3倍に その2

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*前回からの続きです

パブリック・スクールに選りすぐりの頭脳が集まっているなんて、本気で信じている人はいない、と思っていたが、今回の法案を聞いたときに、「本気で信じている人がいたんだな」と思った。

他でもない、パブリック・スクールを卒業した人たちである。

大学の学費を一気に3倍にまで値上げ、という正気の沙汰とは思えない政策は、勿論財政難を救うための予算削減が一番の理由だろうだが、その裏に「大学は行くべき人だけが行くところ」という、キャメロン首相の考えがあるような気がしてならない。

「行くべき人」というのは、彼の後輩であるイートン校の生徒や、その他のパブリック・スクール、または親に財力のある「それなりの」家の子弟だろう。大学っていうのはもともとそういう所だった。

イートンの先生に
「君たちは国の将来を背負って立つ選ばれた者たちだ」
なんて言われた純粋なデヴィット少年は、その言葉を真に受け選民思想を植えつけられてしまったのかもしれない。

イギリスはいまだに、日本では想像もつかないような階級社会の国である。階級社会というのは平たく言えば、ブルーカラーの親の子供はブルーカラーの職業につくしかない社会だ。

そういった社会を変えようと、前政権の労働党がSocial mobilityを促進した。Social mobilityというのはこれまた平たく言えば、ブルーカラーの親の子供もホワイトカラーの職業につけるような社会である。そのために労働党は大学の数を増やし、多様な学部を作った。(その学部の中には「ジュエリーメーキング」とか職業訓練的なモノも多々あって、それはそれで賛否両論だが、とりあえずより沢山の人に学位を持つ機会を与えた)

労働党が頑張ってSocial mobilityを促進しようとしても、英国に強く根付いた階級社会はそう簡単に変わるものではなかったが、それでも時代の当然の流れとして、階級格差は少しずつでも狭まっていくのだろうと信じていた。

キャメロン首相は、そのSocial mobilityを阻止しようとしているように私には思える。「だって、そんなに大学卒が増えてもそれだけの仕事もないし。世の中には肉体労働も必要だし」「みんな、居るべき場所に居るべきだし」と。

私の心に深く残っている光景がある。息子のサッカー仲間、A君のお父さんと何かのイベントでパブで同席した時の事だ。A君のお父さんはScaffoldingを組み立てるのが仕事だ。(Scaffolding とは、家の修復やビルの建築現場などの足場。鉄パイプや板材を組み立てて作る。)その数週間前に彼は足場から滑って落ち、腰を痛めていた。

「スカフォルディングは俺の代で終わりだ。キツイ仕事だよ。Aには大学に行って欲しいと思っているんだ」

何杯目のパイントだったのだろう。シャイなA君のお父さんが、大きな体を揺らしながら珍しく能弁になっているのが印象的だった。

思うに昭和の日本にも、A君のお父さんの様な人が沢山いたのではないだろうか。そして日本のA君達は親の願いに答え大学に入り、ネクタイを締める仕事に就いたのだろう。

北野武のお父さんはペンキ屋だったが、教育ママのお母さんによって兄弟皆大学に行かされたそうだ。日本がSocial mobilityを許す国でなかったら、大学教授になったお兄さんの北野大さんも足立区のペンキ屋さんになっていたのかもしれない。(ペンキ屋さんになる事が悪いとは言ってませんよ、進路を選択できる社会が良いという意味です)

どうして日本のSocial mobilityは成功したのか。それは、日本の公立高校と大学受験のシステムがとてもフェアだからであると思う。

日本にはどの都道府県にも、必ず一つは東大への入学者を多数輩出するような「公立進学校」が存在する。

学費の安い公立の進学校を各県に設置する事で、親の経済力や地理的な事に左右されず、優秀で努力した人間が国のトップの大学に入れるシステムだ。(東大卒でも実社会で使えない人が多いとか言う話は別の話ですよ。あくまでも競争を勝ち抜いて最も難しいとされる大学に入り、卒業後の選択がより豊富になる、といった意味でのトップ)

戦後の日本が急成長したのは、このフェアな教育システムによって皆が競争に参加できるようになったから全体のスタンダードが上がり、その高いスタンダードのトップに立った人たちが国や企業の要所に配置されたからの様な気がする。

最近は「東大の学生の親の年収は○○千万円以上」みたいな調査もあるようだが、それでもイギリスに比べたらまだまだフェアな受験制度だと思う。

話が逸れるが、息子がサッカーをするようになって「サッカーって凄いスポーツだなあ」と思う様になった。だって健康な2本の足があれば誰でも参加できるのだもの。経済的余裕が無いとできないポロやクリケットとは競技人口が違う。競技人口が多いからしのぎを削り、スタンダードが高まった。プレミアリーグで活躍しているような選手は、本当の意味での「世界のトップ」だと思う。ポロやクリケットの「世界一」がそのスポーツをアフォードできる限られた層の中の「一番」であるのと意味が大きく違うと思う。

大学だって、限られたグループの中からよりも、より多くの人を競争させてその中の選りすぐりを集めた方がよりよい頭脳を集められる、いうのは容易に想像できることだ。

個人の財布の中身が云々の問題ではない。将来の国の力に関わる事だ。

も少し続きます。

投稿者 lib : 09:25 PM | コメント (0)

December 11, 2010

イギリスの大学、授業料が2~3倍に

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一昨日イギリス議会では、連立政権による大学の授業料値上げ法案が可決された。

これにより、講義を休んで抗議する(オヤジギャグです)学生のデモ隊が大暴れ。

たまたま通りかかったチャールズ皇太子とカミラさんの乗った車もペンキを投げかけられ、とばっちりを受けるなど大変な騒ぎとなった。

一夜明け、騒動の原因をつくった張本人のキャメロン首相は
「デモをする権利はあるが、器物を破損したりすることは許しがたい」
と学生を叱る先生の様な顔をして憤慨していた。

デモの権利は認められているが、あくまでも「ピースフル(平和的に)」しなくてはならないそうで、それでは皆でにこやかに談笑しながらプラカードを持って行進すれば良かったのだろうか。それじゃあ怒りが伝わらないよなあ。

もちろん、何の関係もないTop Shopのウィンドーを壊したり、通りすがりのチャールズ夫妻を攻撃したりしたことは良くないが、私はそれほどに怒る人たちの気持ちも分かるような気がする。

5月の連立政権発足以来、彼らの福祉や公的機関への予算削減案は非常に効率的なものに思え、「いいぞ、いいぞー」と思っていた私だったが、大学の授業料を最大3倍にまで値上げする法案が出たときには「え・・・ちょっと待てよ???」とクエスチョンマークが何重にもなった。

現在の授業料は年間3千ポンド強(約45万円)だが、2012年からは6千ポンドを上限として各大学で設定してもよく、オックスフォードやケンブリッジの「優良」大学に至っては9千ポンドが上限になるという。
イギリスの大学は1校を除いて全部国立だが、9千ポンドといえば135万円だ。(今は円高なので135万円になるが、10年近く1ポンド=200円で換算していた私には180万円くらいの感覚)

なぜオックスブリッジの上限が高いかというと、
「よりよい教育(サービス)を提供するのだから、それなりの値段の差があって当然」
とのことで、市場原理に乗っ取っているということか。事実上の、大学の私立化である。

イギリスにも私立大学があって別に悪いとは思わないが、ひっかかるのは、連立与党のキャメロン首相もクレッグ副首相も、とってもお高~い「パブリック・スクール」出身だということ。(キャメロン首相の卒業したイートン校は授業料が年間3万ポンド=1ポンド150円として450万円)
ちなみにクレッグ副首相は選挙前に授業料は値上げしないと公約していたにも関わらず、それを反故にする形となった。
(この人、副首相となってからの苦労を物語るように半年の間にかなり老けた。なんてことはどうでもいいのだが)

キャメロン首相はオックスフォード卒、クレッグ副首相はケンブリッジ卒だ。彼らの学んだ「パブリック・スクール」では、オックスブリッジへ長年、多数の卒業生を送り込んでいる。イートンからは3分の1がオックスブリッジに進学するそうだ。

大学が「限られた人の行く場所」であった時代から続いており歴史も長い。

イギリスの受験制度は日本のそれと全く違うが、オックスブリッジでは長年の批判にも関わらず面接重視。ペーパー試験の成績が良いだけでは入れない。
しかし面接点なんて極めて主観的なもので、パブリック・スクールでは「面接官に好まれる」議論の仕方を徹底的に指導されるらしい。

ちなみにこの様な指導は、公立校では行われない。

当然これらの学校からは、オックスブリッジへの入学者が多数出るが、金にモノをいわせた(笑)少人数制授業や受験テクニックのトレーニング、大学との長年の繋がりを考えれば、当然だという気がする。
パブリック・スクールで学んでいる生徒達が他と比べて特別優秀なのかと言えば、疑問が残る。

最近は、パブリックスクールもイギリス人だけでなく、中国やアフリカ諸国や石油の出る国の(金持ち)外国人の子弟も積極的に受け入れており、「国の将来を担うエリート養成期間」なんてコンセプト自体が古い事は学校自体も承知していると思う。
まあ、有名なイートン校に息子を入れれば知り合いに見栄をはれるとか、本気で学校の教育方針が好きな親達の需要がある限り「文化」や「観光名所」としてパブリックスクールは存続すれば良いだろうと思うが、これらの学校に国の将来を担うような、選りすぐりの頭脳が集まっているなんて本気で信じている人は誰もいないのではなかろうか。
(実際、日本から旅行に来た私の友達は喜んで生徒たちの写真を隠し撮りしていた。生徒たちもこの様な不躾観光客には慣れているらしく、私達を見るなりそそくさと足早に過ぎ去った)

書きたいのはパブリックスクールのことではなかった。長くなったので続きます。

投稿者 lib : 02:02 PM | コメント (2)

December 07, 2010

恐怖のミーティング

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イギリスでは冬になるともともと天気が悪い上に日照時間を短くなるので、どうしても気分が滅入ってしまう人がたくさんいます。

さすがに在英10年目にはいった私は、冬の過ごし方も上手くなり、正月明けの仕事も難なくこなせるようになってきたのですが、かつては正月を日本で過ごした後のロンドンへの帰還は本当に苦痛でした。

ところが、、、大丈夫と思っていても仕事のストレスは確実に脳に蓄積されるものなのか、先日とんでもない夢を見ました。
そこはどうやら私の勤務校の教室(でも、不思議なことに並べてある机は日本のような茶色の木の机)。

私はあるミーティングに呼ばれます。

行ってみれば、そこには校長と同僚数人、そして、謎のアフロカリビアン系の
女性(40歳くらい?)二人がいました。

その女性と私に何の接点が、、、と思っていたら、一人がしゃべりだしました。

「去年一年、彼女(私のこと)と仕事をしましたが、、、」(え、そうだっけ?と心の中で思う私)

何せ夢の中なので会話の内容を全てを覚えてはいないのですが、どうやら、私の英語の問題点を指摘しているようです。

しかも、問われているのは私の書く能力。どうやら、彼女は私のスペルミスが多いと言いたいらしいのです。うーん、普段から自分の語彙のなさにあきれていますが、スペルには結構自信がある私(ネイティブは結構間違えます、スペル)。

なんでこんな夢を見たのか。それは私の心の片隅に常にある、自分の英語力への自信のなさの現われでしょうか。やっぱり、心の中で常に英語をネイティブと同じように使えないことに恐怖を感じているんですね。

もちろん、夢の中では夢と思っていませんから、そのときの私の心は奈落の底でした。あぁ、教師人生終わりだ、、、と思ったのです。今考えたら、スペルミスの多さで解雇の心配かい?って感じですが、夢の中ではまるでこの世の終わりでした。

で、不思議なことに夢を見ながら必死に「こ、これが夢であってほしい、夢であってほしい」と祈ってました。そしたら、本当に夢だった(笑)目覚めたときは本当に嬉しかったですよ。

それにしても、この国で生活し、教師を続ける以上、英語力向上は私の一生の課題です。私は中学から英語を勉強し始めましたが、会話を習い始めたのは大学3年で留学準備を始めたころ。それまでは、英語は興味あるくせに常に苦手でした(まぁ、勉強を怠けていたからなんですけれど)。大学受験のときも、実は憧れの某大学には英語力がネックとなって行けなかったというトラウマが。

日常会話をまともにしゃべれるようになってきたのは、たぶんイギリスに渡って修士課程の途中くらいから。それでも限られた語彙を駆使してやっとのことです。最初のころは専門用語の難しさも加わって、授業もちんぷんかんぷんでした。

あれから10年。今でも私の英語力はやっぱりまだまだだなと思う場面があります。さすがに日本語を英語に直すということはしなくなりましたが、頭の中にあることをもっと自由に表現できたらと思うことも多いし、「ネイティブの感覚」で文章の良し悪しを自由に判断できたらと思うことも多いです。

授業中でも的確にわかりやすく指示する、思っていることを伝える、生徒の思考を高めるような問いをする、、、どれもこれも経験の中で向上していると思いたいですが、上を見ると本当に果てがないのです。もちろん、こういうジレンマは母国語で教師をしてもあるとは思うのですが、やっぱり、ネイティブじゃないコンプレックスはいつまでも消えないんですよね。まぁ、いつまでもコンプレックスなんて言い訳をして勉強を怠けるのが一番悪いのは分かっているのですが。

私の場合、過去6年は仕事上「必要に迫られて」英語を吸収してきました。それがここへ来て、もっと違う方法で英語力を伸ばすことは出来ないかなぁと考えています。

語彙力増強のために前よりも本を読むようにしていますが、いかんせん、大好きなジェーン・オースティンは語彙自体が現代語と違うことが多いようで、あまり参考になっていません、、、。彼女の時代の英語を鵜呑みにしたら、ちょっとおかしなしゃべり方をする人、になってしまうかもしれませんし(汗)語尾が「~ですわ」みたいに。

と、考えていて、ふと思い出しました。かつて、マンガ「北斗の拳」で日本語を勉強した私のイギリス人友達のことを。彼は「お前ら」「俺様はなぁ」「貴様ぁ」って、今でも普通にマンガ口調でしゃべれます(笑)

こうなったら、私は(ちょっと古いけど)Bridget Jones’s diaryで英語を勉強するべき?!

、、、いえ、真剣に、英語上達のヒントがあったら皆様からご教示に預かりたいと思っています。

投稿者 lib : 11:50 AM | コメント (4)

December 03, 2010

雪の中でアーセナル観戦

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11月なのに雪が降った。

なぜかこの日に限って・・・アーセナルの試合のチケットをとってあった。
楽しみにしていた、息子のアーセナル観戦初体験だ。雪などで中止するわけにはいかない。(正確には以前、彼は友達のお父さんにユースの試合を見に連れて行ってもらったり、スタジアム見学ツアーにも参加した事があるが、普通の試合は始めて)

超寒がりの私だ。上は7枚重ね(ババシャツ、ヒートテック2枚、フリース、厚手のセーター、カーディガン&ダウンコート)、ニットの帽子にマフラー2枚、(1枚は首用、1枚は目から下の顔用)、足元はUggのムートンブーツの完璧な防寒対策で臨んだ。

雪の降りしきる中、最寄のバス停から10分ほど歩くと、赤の‘Emirates Stadium’の文字が光り輝くスタジアムに着いた。
外から上を見上げると、2階のガラス張りのレストランで優雅に食事をしている人たちの姿が見える。
ほう、これが某日系旅行代理店で売り出している「アーセナル観戦ダイニングパッケージ・300ポンド也」のチケットを買うと行けるレストランか・・・。
「負けるもんか」と自分に言い聞かせ、20ポンドのチケットを握り締めゲートを入る。

エミレーツ・スタジアムのショップには入った事があるが、実際に中に入ったのは始めてである。(というかイギリスのフットボール観戦自体が生まれて2度目だ)
一応、ユース観戦と見学ツアーで2度の来訪経験がある息子は「ここから入るんだよ。僕についてきて」としたり顔で私を案内している(つもり)。

席に座ると、ピッチが遠い!金持ちエミレーツが新しいピカピカのスタジアムを作ったとは聞いていたが、これほど大きいとは。収容人数が6万人だそうで、どうりで試合のある日は道路が混むはずだよ。今年のイースターに、フラムの試合を見に行ったが、フラムのスタジアムは古くこじんまりしていて、選手がすぐそこに見えた。かなりの違いである。なんだか外タレのコンサートに来たようである。(普通、外タレのコンサート会場は元々スポーツ施設として作られたものなのだが、私は本来の目的よりもコンサートで訪れる事が多いので、このような錯覚が起こるわけだが)

それはそうと息子の影響で私もフットボールの知識が豊富な今日この頃。
お気に入りの選手だってちゃんといる。オランダ出身の、ロビン・ヴァン・パーシーである。(理由:格好いいから)

「マミー、ロビン・ヴァン・パーシー」が出てるよ。

「えっどの人?あの10番か。いつも顔しか見てないから背番号を覚えてなかったよ。ところでアシャビンはどこ?(知ったかぶり)」

「アシャビンは今日は出てないよ」

「なにい?相手が弱小ウィガンだからってアシャビンを出さんのか。アシャビンが出ないアーセナルなんて、海老蔵の出ない京都顔見世興行のようなもんだ。殴られたって言っても許さん。金返せー。」

「マミー、落ち着いて」

気が付くと日本語でまくし立てる私の隣で、大柄なアーセナル・ファンの男が怯えた目をしてこちらを見ている。

「ごめんごめん、そういえばシェリル・コールの元ダンナは?」

「・・・彼はチェルシーの選手だよ」

そんなこんなで1時間45分、思ったほど寒さも感じずに初のアーセナル観戦を楽しんだ。途中かなり雪が降っていたが、エミレーツのピカピカスタジアムは観客席の屋根も立派であまり影響がなかった。
息子の解説によると、雪が降るとピッチには熱が入り雪が積もらない仕掛けになっているそうである。
それでも選手たちは雪の中プレーしていた。
テレビでよく顔を見るヴェンゲル監督も雪の中、ずっと立ちっぱなしだ。

「やっぱりテレビで見るより大変な仕事だねえ。」

私がそういうと、夫は

「僕だってあれだけの給料もらえるなら雪の中に何時間だって立ち続けるよ」

立ってるだけで給料を貰えるわけではないだろうが、まあそうだね。

ところで試合は2-0でアーセナルの勝ち。試合内容について知りたい方は、どこか他のサイトを見てください。

投稿者 lib : 01:57 PM | コメント (4)