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December 03, 2012

手袋を買いに

最近の息子のお気に入りのCMがある。

ジョン・ルイスというデパートのクリスマス用CMである。


子供達が庭につくった、スノーマンとスノーガール。

翌朝起きると、スノーマンが消えている。

寂しそうにうなだれるスノーガール。

スノーマンはどこへ行ったのか?

スノーマンは、野を超え山を越え、街に行ったのだった。

旅路でのあらゆる困難を乗り越え、ちょっと薄汚れたスノーマンが街の灯りの中で微笑む。

危険を冒してまでまぜ街に?

スノーガールへのクリスマスプレゼントを買いに…


このCMがよほど気に入ったらしく、息子は

「マミー、すごくSweetなCMがあるんだよ」

と私にYoutubeで見せてくれた。


TVでこのCMが流れるたびに見入っている。

よっぽど感動したらしく、

"Snowman going to the town.......getting a present....."

昨日はそうつぶやいていた。

スポーツやゲームばかりだと思っていた息子の、とても柔らかい感性を見せてもらった気がして、とても嬉しい。

ちなみに私は日本の童話、「手袋を買いに」を思い出しました。

(さすがに、「あ~クリスマス商戦のCMはどこも気合入れてお金がかけて作ってるからね。このCM費用が商品の値段に跳ね返ってきてるのよ」

などの、いつもの毒舌は純粋に感動する息子の前では封印しました。)

投稿者 lib : 01:21 PM | コメント (0)

October 21, 2012

親知らずとピザ

数日間体調が悪く、GP(家庭医)に行ってきた。

アポイントが息子が学校から帰ってきてからの時刻だったので、

「一緒に来てもいいけど家で待っていてもいいよ。どうする?」

と聞くと

「一緒に行く」

と言うので、息子つきそい?でお医者さんへ。


名前を呼ばれ、診療室に入る。息子は外の待合室にいるかな?と思っていたら、後を着いて来たので彼も診療室の片隅の椅子にちょこんと座る。

お医者さんに症状を説明した後、

「実は先週親知らずを抜いたんです。その後、化膿止めとして抗生物質を処方されたんですけれど、それを飲んでからどうもふらふらするような気がして。関係あると思いますか?」

と質問。

医者は、うーん、あるかもしれないけど最近ウィルスも飛び交っているし、もう少し様子を見ましょう、と言う事で診療は終わり。

問診だけでは不調の原因は分からなかったがまあNHSなのでこんなもんだ。
でもお医者さんに相談しただけでなんとなく気が軽くなった。

診療室を出たところで息子が

”Mummy, I would say 'wisdom tooth'"

と小声で一言。

抜いた親知らずは一本なので、Wisdom tooth(単数形) と言うべきだが、無意識のうちにお医者さんに’Wisdom teeth'(複数形)と言っていたらしい。

言われればそうだそうだ、と思うのだが、こう言う小さな事って、間違っていても意味は分かるので大人はなかなか指摘してくれない。

ありがたく息子の指摘に感謝。それも

「マミー、間違ってるよ!」

じゃなくて

「僕なら ○○と言うよ」

なんて、なかなか優しい言い方ではないか。
息子の成長がちょっと嬉しい。

その後、診療所の片隅にあった血圧計を見て、息子がやってみたいというので、子供じゃ正確な数値は出ないだろうと思いつつやらせてみる。

そのとき

「もしや。。。」

と思い、自分の血圧も測ってみると、なんと上が72、下が33だった。

確かに普段から血圧は低いが、これはかなりの低血圧なのでは。

「血圧がこんなに低くなっていたのでふらふらしていたのね…」

なんとなく不調の理由が分かり、気分的にほっとして診療所を出る。


外に停めてあった車に向かいながら、息子が

「マミー、今日は具合が悪くてご飯の支度ができないでしょ」

とニコニコしながら言う。

以前、やはり体調が悪かった時に夕食の支度ができなくてピザをとった事があるので、今回もピザを食べられると思ってるのだな、と思い

「マミーが具合悪いとピザが食べられると思って嬉しいいんでしょ… 」

と言うと


「そうだけど…… マミー、具合が悪いなら無理しないほうがいいよ。ピザをとろうよ、僕がお金出すから


「……」


今月が誕生日でいろんな方面から現金でのプレゼントをいただいた息子、懐具合が暖かいらしい。


ここ数日間、元気のなかった母を気遣ってくれてるのかな、と思い、有難くごちそうになった。

すごく美味しいピザだった。ありがとね。(*^_^*)


投稿者 lib : 06:02 PM | コメント (4)

September 17, 2012

ロンドン2012 祭りのあと

楽しかった2012年の夏が終わった。

街からピンクと紫の見慣れたボランティアのユニホームが消えて、すっかり普段のロンドンに戻った。


この夏は、

「地元でオリンピックが開催されるなんて滅多にない機会だから、ロンドンでオリンピックを楽しもう」

と決めていたので日本にも帰国せずオリンピック漬けの毎日となった。

7月25日のなでしこVカナダのオリンピック予選を皮切りに、28日(オリンピック大会初日)の柔道、8月1日の男子サッカー(日本Vホンジュラス)、そして8月6日にはウェンブリーでの女子サッカーの準決勝を観戦。

ウェンブリーでの試合はオリンピック・チケットが売り出された昨年、「きっとなでしこが来る」と信じて購入したものだった。

「どうよ?私の読み?」

と家族に鬼の首とったように自慢した事は言うまでもない。

(ただ、購入時、「決勝は無理でも準決勝なら。。。」と中途半端に弱気で決勝のチケットは買わなかった事は内緒)

手持ちのチケットを全部消化してからは、チケット無しでも観戦できるオープンウオーター10K競泳、男女マラソンにも潜入した。

オリンピックが終わってしまい、魂が抜けたようにようになりそうだったが、

「いやいや、まだパラリンピックが残っている」

と気を取り直し、9月1日にはパラリンピック陸上を観戦。
憧れの(?)オリンピック・スタジアム入場も果たした。

観戦した一つ一つの試合には、胸に響くそれぞれのドラマがあり、ここでは書ききれない。

上記したイベントには、女子マラソンを抜かして全て息子(ときどき夫も)と出向いた。

息子は9歳になり、学校のある日はテニス、サッカー、卓球などで放課後は毎日忙しい。

週末もサッカーやテニスの試合、友達と遊ぶなどで、一緒に外出する機会がめっきり減ってしまった。

なのでこの夏は、息子と共通の体験をし、一緒の時間をできるだけ過ごそう、というのも目的だった。

「オリンピックの雰囲気だけでも味わえれば」

くらいの気持ちでいたが、いざ蓋を開けてみればロンドン中が熱気にあふれ、親切なボランティアの人達との触れ合いがあり、声を上げて応援した2012年の夏は、息子にとって忘れられない記憶となることだろう。

真夏日に日本の旗や応援グッズを持ってコベントリーまで行ったり、沿道のすごい人ごみのなかマラソンを応援しに行ったり、私にとっても予想以上に息子と濃厚な時間を過ごすことができた。

10年以上も生活をしていると、この国の嫌なところばかりが目についてしまいがちだが、オリンピック&パラリンピックが開かれた事でイギリスやロンドンの「良いところ」に再び気づく事ができたと思う。

急に肌寒くなったが、地下鉄構内にまだ残っているピンク色のオリンピック会場の案内表示を目にしたりすると、なんだか暖かい気持ちになる。

(普段通りのロンドンに戻ったということは、これらの表示もあと10年位は取り外されないのかもしれないが)

パラリンピックも終わろうとする頃、息子が言った言葉。

「オリンピック・パークはロンドン2012パークって名前にするべきだと思うよ」

「どうして?」

「だって、オリンピックだけでなく、パラリンピックも開かれたよ。オリンピックとパラリンピック、二つ合わせてロンドン2012だもの」

そしてパラリンピックの閉会式を観ながら、寂しそうに

「次にロンドンで開かれるのは50年後くらいかなあ…マミーはその頃何歳?」

と聞くので、50年後にまた連れて行けと言われるのかと思い

「100歳に近いと思うよ~。なんで?」

「100歳か…マミーを連れて行ってあげたいけれど、そんな年じゃ無理かなあ」

この二つの発言を聞けただけでも、息子を連れました甲斐があった。

Thank you London2012!


投稿者 lib : 11:16 AM | コメント (0)

August 11, 2012

フットボール

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日本にいる時には気づかなかったのですが、イギリスに来てから「サッカーって本当にいいスポーツだなあ」と実感しています。(プロレベルの事は分からないけど趣味として楽しむレベルとして)

私の息子はテニスとサッカーをやっています。テニスのレッスンに行くと、そこにいるのは殆どが白人のミドルクラスの子供達です。子供のためにラケットやレッスン代を支払える層が限られているのです。

だけどサッカーの練習には、肌の色やバックグラウンドに関係なく文字通りいろいろな子供が集まって来ます。息子と一緒にボールを持って公園に行けば、知らない子供達がわらわらと集まってきて即席マッチが始まります。なんたって健康な2本の足とボールが一つあれば、20人位の子供達が誰でも参加できるのですから。

肌の色やバックグラウンドだけじゃない、国籍や年齢の壁も越えます。数年前、スペインの島に滞在したとき、ホテルの庭の一角にあったピッチにはいろんな国のいろんな年齢層の人たちが毎日集まって草サッカーを楽しんでいました。メンバーの最年少は当時8歳だった息子、最年長はドイツ人の50代の方でした。皆1週間から2週間位滞在するので息子はホテル内でもすっかり顔が広くなり、「僕のフットボールフレンド」なんて最年長の方に呼ばれていましたW

門戸が広いということは、それだけ競争も激しいということ。競争を勝ち抜いて世界の檜舞台でプレーしている選手達は、真の意味でのヒーローと言えるのでしょう。今日の五輪決勝に出場した選手を見ながら「彼ももしかしたら、テニスラケットは買ってもらえなかったけどボールを蹴るのだけは誰にも負けない程好きな子供だったのかもしれないなあ」なんて勝手な妄想をしています。(日本人には当てはまらないでしょうけど^^;)

メキシコの元少年たち、おめでとう!

投稿者 lib : 07:58 PM | コメント (0)

July 17, 2012

アーティスト

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まだこのブログを見に来てくれる人がいるかわかりませんが、久しぶりに映画を観て感動したので思わず出てきました(笑)

映画「アーティスト」を観た。白黒でサイレントなのに、こんなに心に残った映画は久しぶり。

以前、大好きだった絵本がTVアニメ化され、登場人物が動いたり話したりするのを観た途端、なんだかすごくつまらなくなってしまったなあ、と感じたことを思い出した。

あるべき色がつけられ、聞こえるべき音が聞こえ、飛び出すところは飛び出して、映画は観客にとって至れり尽くせりの発展をしたけれど、それはある意味、観客が「想像」する自由を奪ってしまったのかも。

3D全盛のハリウッドに、こんな形でメッセージを送ったおフランス人は流石。それに答えるように、何世代も逆行するような(そして映画人達の努力の結晶である技術発展を否定するような)この映画にオスカーを5つも贈ったアメリカ映画界も、まだまだ捨てたもんじゃないなあ、と思った。

投稿者 lib : 11:03 AM | コメント (2)

March 17, 2011

日本の震災報道を見る子供の心のケア

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日本のニュースが連日報道されていますが、小児科医の方 https://twitter.com/turubaba が災害時に後回しにされがちな、子供の心のケアについてアドバイスをTwitterに書かれていました。

この大変な時に私のブログなんか見に来る人もいないかもしれませんが、一人でも多くの子育てママとパパに読んでいただきたくて転載させていただきます。

************ **

子供さんのいるご家庭はニュースを見るのはやめましょう。子供たちの顔を見ていてあげて、話しかけてあげてください。

今は大丈夫でも、後で熱を出したりおなかを壊したりするかもしれません、ストレスで。

今日の診療中、ストレスを抱えている子供たちが多数受診。

皆さん、テレビを消しましょう。 せめて、楽しい番組の録画を見せてあげましょう。みんな目がきょろきょろして落ち着きがなかったです。

診察中、個室でお気に入りの映像を楽しめるのでみんな目がきらきらしていました。うれしそうにビデオを見ていました。 診察終わっても帰りたがらない子が多いのです。

おうちでは楽しいビデオを見せてあげましょう。情報はインターネットでどうぞ。 。

************* ***

(ここから下は私(子育てママ)の文章です。)

子供は大人よりもストレスによる抵抗力が弱いそうです。衝撃的な映像を繰り返し見ることにより、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に近いものが出る可能性もあるそうです。

日本や世界の将来を担う子供たちを、大人がしっかり守ることも大切な支援だと思います。
ぜひ子供さんとは楽しい話をしたり、子供番組などを見せてあげてください。

投稿者 lib : 08:13 PM | コメント (4)

December 21, 2010

イギリスのサービス業 配達編 その2

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暫くしてから時計を見ると1時だがまだ届かない。今までの経験上、配達物は大抵午前中に届く。午後になっても届かない場合は心配した方が良い。

嫌な予感がして、PCワー○○のカスタマーサービスに電話した。

例によってテープ音で、「営業時間についてのお問い合わせは1、配達についてのお問い合わせは2・・・」と言うので2を押すと
「配達についてはウエブサイトを見てください。(初めに言っておくが)配達の時間にはお答えできません。(それでもどうしてもというなら)オペレーターと話したい方は1・・・」というのでめげずにオペレーターと話そうとしたが、「現在込み合っております・・・」というナレーションと呼び出し音が響くだけであった。

こんな事を20分毎に繰り返し、気が付けば息子を学校に迎えに行く3時前になっていた。
最後のチャンスとばかりにもう一度かけなおすと、奇跡的にオペレーターに繋がった。

「今日パソコンが配達される筈なんだけど、何時頃になるかしら」

オーダー番号を告げると、電話の向こうでキーボードをカタカタたたく音がした後、

「その注文はキャンセルされました」

と言う。

「・・・パ~ドン?」

「その注文はキャンセルされました」

「キャンセルした覚えはありませんが???」

「品切れで・・・キャンセルされました。」

男のオペレーターは流石にバツが悪そうだった。

「キャンセルって・・・私は聞いてないよ、今日だって今朝から配達を待っていたのに」

「代金は返金します」

「そりゃお金は返すだろうけど、品切れなら品切れってどうしてもっと早く連絡してくれないの。」

「コンピュータの不具合で・・・」

「ていうか、そもそも品切れの商品をどうしてウエブサイトに表示して注文を受けたの?ちゃんと受注のメールももらったよ。えーい、品切れは百歩譲って良いとしても、こっちは一日潰して配達を待っていたのにどうしてこっちが連絡するまで何もしてくれなかったんだあ・・・・・・」

先の冷蔵庫の事もあって不満が爆発した。大人げないとは思ったが、次から次へと相手を責め立てた。

日本ではこういう場合、店側はただただ平謝りをするだろう。
しかしここはイギリス。相手が逆切れした。

さっきから何度も言うが、商品は、無い。金は返すと言っている。これ以上、俺に何をしろと言うんだ!」

・・・・わかったよ。正論だ。

‘Thank you for your help’
と言って、電話を切った。

時計を見ると、息子のお迎えに遅れそうだ。置き去りにされた冷蔵庫に頭をぶつけそうになりながら家を飛び出し、走って学校に向かうと空が青い。

古い大きな冷蔵庫は廊下に鎮座し、体を横にしてカニさん歩ききしなければ通り抜けができない。
心待ちにしていた新しいパソコンは勝手にキャンセルされていた。

しかしなぜか唐突に笑いがこみ上げ、

「・・・まあ、家族がみんな元気で生きているんだからいいか・・・」

と思った。

生きていることに感謝するという基本的な事を忘れそうになったら、イギリスへ来てみましょう。
究極のポジティブ志向になれます。

「間違いだってあるよ。人間だもの。」 by みつこ (←古いか)

投稿者 lib : 11:53 AM | コメント (3)

イギリスのサービス業 (配達編) その1

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前回、長々と授業料値上げについて語ったが、なぜ選挙権もない一介の外国人の私がそんなに熱くなっているかというと、愛する大英帝国の行く末を危惧し憂いている訳では勿論なく、フェアな競争により選ばれた人達が国や役所や企業の要所についたり、起業したりして、優秀な頭でいろいろ考えてくれれば、イギリスのサービスの質が改善され効率的になり、私も少しは暮らしやすくなるのでは、という極めて私的な理由からである。
もちろん「ウチの息子がオックスフォードに行く機会が奪われたから」とかでもありません。(経済力以前に学力がアレですから)

(素敵なイギリスのサービス業についてはここここをご覧下さい)

1ヶ月程前の話になりますが、また一つそんなイギリスのサービスに接する機会があったのでご報告します。

家の冷蔵庫があまり冷えなくなってしまったので、買い替え時かと新しい冷蔵庫を買おうと思った。

オックスフォードストリートに本店のあるデパート、JLに行き気に入ったモデルがあったのでこれが欲しいと言うと、ネクタイを締めた店員は
「これはメーカーから直接配達することになります・・・・配達日は一番早くて11月19日です」
と言う。

その日は10月の中旬だった。なぜ冷蔵庫1つ届けてもらうのに1ヶ月もかかるのか謎だが、ここはイギリス、1ヶ月かかると言われれば1ヶ月かかる。現役の冷蔵庫が全く壊れてしまった訳ではないので了解した。
配達の際に、古い冷蔵庫を引き取ってもらう事も確認し、冷蔵庫の代金と引き取り代金をその場で支払った。

それとは別に、愛用しているパソコンも老朽化し、いつ逝ってもおかしくない状態になりつつあった。
こちらも買い替え時かと色々検討した結果、とても気に入ったモデルがあったのでインターネットで注文した。
パソコン関連製品の大手、PCワー○○のサイトだ。
別料金を支払えば配達日を指定できるそうなので、冷蔵庫の届く11月19日に指定した。

イギリスでは「時間指定」と言っても「9時から1時の間」とか4~5時間のタイムスロットは当たり前。
待っている時間は身動きがとれず結構なストレスになるので、冷蔵庫とパソコンの配達日を同日にまとめるのは良いアイデアだと思った。

配達日の前日の11月18日、冷蔵庫のメーカーから連絡があり

「明日、朝7時から11時の間に届けます」

と言われた。

朝7時?随分早いなと思ったが、普段より早起きして冷蔵庫を待った。
途中、息子を9時に学校に送り届けるために家を20分程空けなければならなかった。その間に配達が来たときのために、玄関のベルに「ちょっと外出してます。すぐに戻ります」とポストイットを貼って行った。

イギリスでは配達の際、家が留守なら待ってくれるなんてことはありえない。「約束通りに来たのにお前がいなかった」と次回の配達をまた1ヶ月先にされかねない。家を空けている間は気が気でなく、急いで戻ったが配達はまだのようだった。

結局4時間半が経過し、冷蔵庫が届いたのは11時半だった。タイムスロットを30分遅れたが、まあそれでも約束通り配達されたのだから良かったと思った。

しかし配達の兄ちゃん二人は、いきなり冷蔵庫をキッチンに運び込もうとしている。

「古い冷蔵庫がキッチンにあるから、それをまず外に運んでからの方がいいと思うけど」

と親切のつもりでアドバイスすると、

「古い冷蔵庫?聞いてないな」

と言う。

「冷蔵庫を買ったとき、回収も頼んだのだけど」

「聞いていない。冷蔵庫を配達する様に頼まれただけだ」

の一点張りだ。

「ちょっと待って。JLに確認するから」

電話をとろうとする私に兄ちゃんは

「JL?JLには何の関係もないよ。」

と言い放った。

私はJLで冷蔵庫を買い、その冷蔵庫を兄ちゃんは届けているのだから、JLが「何の関係もない」筈はないのだが、私とJLと配達の兄ちゃんの関係を図で表すと、

私    →     JL   →      メーカー   →    配達会社   →  兄ちゃん
  冷蔵庫を注文     冷蔵庫を注文      配達を注文       配達を注文

という事になる。(おそらく兄ちゃんは配達会社の社員ではなく、契約で働いている)

この関係図のどこかで連絡ミスが起きた事は明白であり、日本人なら、瞬時に関係を遡って考えるのが普通だ。しかしイギリスでは自分と、自分に業務命令した人の関係までしか考えられない人が多い(この場合は 配達会社 → 兄ちゃん)
                                 
「でも、JLに確かに引き取りも頼んでお金も払ったの。レシートもあるよ。ちょっと待って、電話すればはっきりするから」

「JLには何の関係もないんだよ。この後も何件も配達が入っていて俺は忙しいんだ。冷蔵庫を置いていって欲しいのか欲しくないのか。YOU MUST MAKE A DECISION NOW.」

思い切り迷惑そうな顔をされ、これはまた随分と大きく出られた。

朝の7時から4時間半も待たされた挙句、店に電話する時間も与えられず、配達人に「冷蔵庫が欲しいのか、欲しくないのか、さあ、さあ、さあ」と決断をせまられる消費者の私。

JLに電話したところで、「開店時間のお問い合わせは1、商品についてのお問い合わせは2をお選びください・・・・」と録音テープに従い、空しく何十分も呼び出し音を聞かされた後、「オペレーターは現在大変込み合っております、後でお掛け直しください」と言われるのが関の山である。

奇跡的にオペレーターと話せたとしても、たらい回しにされるのは目に見えている。

JLに電話をかけたとしても、超多忙(らしい)配達兄ちゃんの迷惑にならない程度の短時間で問題が解決する訳がない事は在英12年の経験から火を見るより明らかだ。

兄ちゃんが、「JLと俺は何の関係もない」と信じているのなら、それ以上議論をしても無駄なだけだろう。(確かにJLと配達人とは契約関係はないだろうから、厳密に言えば兄ちゃんの言っていることは正しいとも言える)

しかたない。私は戦略を変えた。

「じゃあさ、お金は払うから、せめて玄関先にまで古い冷蔵庫を運んでくれないかしら。」

古い冷蔵庫があった場所に新しい冷蔵庫が入るわけで、新しい冷蔵庫の入った後は古い冷蔵庫の置き場所など我が家にはない。とりあえず家の外に運び出してもらわなくては。

我が家のフラットは1階(日本で言う2階)なので、冷蔵庫を運ぶ階段の上り下りはプロに頼むしかない。

しかし兄ちゃんは
「仕事で怪我をしたときの保険が、冷蔵庫を運び入れるときしかカバーしないんだ。」

とつれない。まあこれは理解できる。イギリスの保険屋も難癖つけてそりゃー払わないからな。

お情けでキッチンを出たところの廊下までは古い冷蔵庫を運んでもらい、配達人達はそのまま去った。

古い冷蔵庫は持って行ってもらえなかったが、少なくとも新しい冷蔵庫は手に入った。
気をとりなおして、次はパソコンを待たなければ。

パソコンは無事に届くのか?! つづきます

投稿者 lib : 01:29 AM | コメント (2)

December 13, 2010

イギリスの大学の学費が2~3倍に

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*前々回から続いてます

気になるのは、学費値上げに反対の人達(彼らも結局はミドルクラス)も、卒業するまでに借金が幾らになるとか、「貧乏人にも機会を」みたいな「上から目線」の議論ばかりな事だ。

その貧乏人の中に、将来の英国社会や経済を救う事になるような輝く頭脳の持ち主がいるかもしれない、なんて想像力は階級意識の染み付いたこの国の人達にはないのかもしれない。

大学への予算をどうしても削るなら、国の大学の半分以上を私立にしても、オックスブリッジの様なトップ大学こそ学費を安く抑えるか無料にし、優秀な頭脳を幅広く集めるべきだと思う。
そのために不透明な面接重視の受験方法を改善するべきだろう。

大学入学者は「お金の有無」ではなく、「学力」によって選抜されるべきだという、最も基本的な事をキャメロン首相は忘れてしまったみたいだ。

「うちはお金持ちじゃないけど、教育のためにはお金を惜しまないよ」というお父さんやお母さんが多いではないか。国も同じであるべきだと思う。

こんな前時代的なことをして階級社会を固持しようとするなんて、イギリスって、これからも「さえない国」なんだろうなあ。


追記:
先日の学生デモの逮捕者の中に、ピンクフロイドのギタリストの義理の息子が含まれていた。
戦没者記念碑によじ登りユニオンジャックにぶら下がっていた彼、逮捕後「戦没者記念碑だとは知らなかったんだ。恥ずかしくて死にたい気分だよ」と泣いて謝ったそうである。(骨のないプロテスターやね笑)

金銭的に何の不自由もない彼がデモに参加するのはNothing wrongだが、「デモに参加していた人たちは、本当に学費をアフォードできずに怒る層の人たちだったのだろうか」という疑問が湧いた。

前政権の労働党が作った‘Sure start’というスキムがある。「全ての子供により良いスタートを」
がスローガンのこのスキムは、就学前の子供を連れて遊べる場所や、音楽教室やダンス教室などを無料か1回一ポンド程度の料金で提供するものだ。
息子が小さい頃は私も有難く利用させてもらっていた。

お金のある家に生まれた子供は国に心配してもらわなくても「より良いスタート」が切れるわけで、労働党
の想定した利用者は貧しくて子供を連れて外にも出られない、または家に籠り子育てに煮詰まっているような人たちだっただろう。

しかし、実際にはそれらの場所は「ミドルクラス然」とした母親の社交場となっており、政府が子育て支援しようとしている層の人たちはあまり来ていなかった。本当に国が助けようとしている母親に、声は届いていないようだった。

結局は、ミドルクラス間の議論になってしまうのだろうか。
助けが必要な人達の声は国に届かないし、国の声は助けようとする人達に届かない、そんなシステムになってしまっているのかもしれない。だからこそSocial mobilityを(以下略)

今回の学生デモも暴徒化したのは一部だし、お祭り気分で参加した学生(とニセ学生)も多いのかもしれない。
20年後、保守党の党首が
「妻とはあの学生デモで知り合ったんだ」
とか言ってたりしてね(笑)

投稿者 lib : 09:37 PM | コメント (2)

イギリスの大学の授業料が2~3倍に その2

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*前回からの続きです

パブリック・スクールに選りすぐりの頭脳が集まっているなんて、本気で信じている人はいない、と思っていたが、今回の法案を聞いたときに、「本気で信じている人がいたんだな」と思った。

他でもない、パブリック・スクールを卒業した人たちである。

大学の学費を一気に3倍にまで値上げ、という正気の沙汰とは思えない政策は、勿論財政難を救うための予算削減が一番の理由だろうだが、その裏に「大学は行くべき人だけが行くところ」という、キャメロン首相の考えがあるような気がしてならない。

「行くべき人」というのは、彼の後輩であるイートン校の生徒や、その他のパブリック・スクール、または親に財力のある「それなりの」家の子弟だろう。大学っていうのはもともとそういう所だった。

イートンの先生に
「君たちは国の将来を背負って立つ選ばれた者たちだ」
なんて言われた純粋なデヴィット少年は、その言葉を真に受け選民思想を植えつけられてしまったのかもしれない。

イギリスはいまだに、日本では想像もつかないような階級社会の国である。階級社会というのは平たく言えば、ブルーカラーの親の子供はブルーカラーの職業につくしかない社会だ。

そういった社会を変えようと、前政権の労働党がSocial mobilityを促進した。Social mobilityというのはこれまた平たく言えば、ブルーカラーの親の子供もホワイトカラーの職業につけるような社会である。そのために労働党は大学の数を増やし、多様な学部を作った。(その学部の中には「ジュエリーメーキング」とか職業訓練的なモノも多々あって、それはそれで賛否両論だが、とりあえずより沢山の人に学位を持つ機会を与えた)

労働党が頑張ってSocial mobilityを促進しようとしても、英国に強く根付いた階級社会はそう簡単に変わるものではなかったが、それでも時代の当然の流れとして、階級格差は少しずつでも狭まっていくのだろうと信じていた。

キャメロン首相は、そのSocial mobilityを阻止しようとしているように私には思える。「だって、そんなに大学卒が増えてもそれだけの仕事もないし。世の中には肉体労働も必要だし」「みんな、居るべき場所に居るべきだし」と。

私の心に深く残っている光景がある。息子のサッカー仲間、A君のお父さんと何かのイベントでパブで同席した時の事だ。A君のお父さんはScaffoldingを組み立てるのが仕事だ。(Scaffolding とは、家の修復やビルの建築現場などの足場。鉄パイプや板材を組み立てて作る。)その数週間前に彼は足場から滑って落ち、腰を痛めていた。

「スカフォルディングは俺の代で終わりだ。キツイ仕事だよ。Aには大学に行って欲しいと思っているんだ」

何杯目のパイントだったのだろう。シャイなA君のお父さんが、大きな体を揺らしながら珍しく能弁になっているのが印象的だった。

思うに昭和の日本にも、A君のお父さんの様な人が沢山いたのではないだろうか。そして日本のA君達は親の願いに答え大学に入り、ネクタイを締める仕事に就いたのだろう。

北野武のお父さんはペンキ屋だったが、教育ママのお母さんによって兄弟皆大学に行かされたそうだ。日本がSocial mobilityを許す国でなかったら、大学教授になったお兄さんの北野大さんも足立区のペンキ屋さんになっていたのかもしれない。(ペンキ屋さんになる事が悪いとは言ってませんよ、進路を選択できる社会が良いという意味です)

どうして日本のSocial mobilityは成功したのか。それは、日本の公立高校と大学受験のシステムがとてもフェアだからであると思う。

日本にはどの都道府県にも、必ず一つは東大への入学者を多数輩出するような「公立進学校」が存在する。

学費の安い公立の進学校を各県に設置する事で、親の経済力や地理的な事に左右されず、優秀で努力した人間が国のトップの大学に入れるシステムだ。(東大卒でも実社会で使えない人が多いとか言う話は別の話ですよ。あくまでも競争を勝ち抜いて最も難しいとされる大学に入り、卒業後の選択がより豊富になる、といった意味でのトップ)

戦後の日本が急成長したのは、このフェアな教育システムによって皆が競争に参加できるようになったから全体のスタンダードが上がり、その高いスタンダードのトップに立った人たちが国や企業の要所に配置されたからの様な気がする。

最近は「東大の学生の親の年収は○○千万円以上」みたいな調査もあるようだが、それでもイギリスに比べたらまだまだフェアな受験制度だと思う。

話が逸れるが、息子がサッカーをするようになって「サッカーって凄いスポーツだなあ」と思う様になった。だって健康な2本の足があれば誰でも参加できるのだもの。経済的余裕が無いとできないポロやクリケットとは競技人口が違う。競技人口が多いからしのぎを削り、スタンダードが高まった。プレミアリーグで活躍しているような選手は、本当の意味での「世界のトップ」だと思う。ポロやクリケットの「世界一」がそのスポーツをアフォードできる限られた層の中の「一番」であるのと意味が大きく違うと思う。

大学だって、限られたグループの中からよりも、より多くの人を競争させてその中の選りすぐりを集めた方がよりよい頭脳を集められる、いうのは容易に想像できることだ。

個人の財布の中身が云々の問題ではない。将来の国の力に関わる事だ。

も少し続きます。

投稿者 lib : 09:25 PM | コメント (0)

December 11, 2010

イギリスの大学、授業料が2~3倍に

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一昨日イギリス議会では、連立政権による大学の授業料値上げ法案が可決された。

これにより、講義を休んで抗議する(オヤジギャグです)学生のデモ隊が大暴れ。

たまたま通りかかったチャールズ皇太子とカミラさんの乗った車もペンキを投げかけられ、とばっちりを受けるなど大変な騒ぎとなった。

一夜明け、騒動の原因をつくった張本人のキャメロン首相は
「デモをする権利はあるが、器物を破損したりすることは許しがたい」
と学生を叱る先生の様な顔をして憤慨していた。

デモの権利は認められているが、あくまでも「ピースフル(平和的に)」しなくてはならないそうで、それでは皆でにこやかに談笑しながらプラカードを持って行進すれば良かったのだろうか。それじゃあ怒りが伝わらないよなあ。

もちろん、何の関係もないTop Shopのウィンドーを壊したり、通りすがりのチャールズ夫妻を攻撃したりしたことは良くないが、私はそれほどに怒る人たちの気持ちも分かるような気がする。

5月の連立政権発足以来、彼らの福祉や公的機関への予算削減案は非常に効率的なものに思え、「いいぞ、いいぞー」と思っていた私だったが、大学の授業料を最大3倍にまで値上げする法案が出たときには「え・・・ちょっと待てよ???」とクエスチョンマークが何重にもなった。

現在の授業料は年間3千ポンド強(約45万円)だが、2012年からは6千ポンドを上限として各大学で設定してもよく、オックスフォードやケンブリッジの「優良」大学に至っては9千ポンドが上限になるという。
イギリスの大学は1校を除いて全部国立だが、9千ポンドといえば135万円だ。(今は円高なので135万円になるが、10年近く1ポンド=200円で換算していた私には180万円くらいの感覚)

なぜオックスブリッジの上限が高いかというと、
「よりよい教育(サービス)を提供するのだから、それなりの値段の差があって当然」
とのことで、市場原理に乗っ取っているということか。事実上の、大学の私立化である。

イギリスにも私立大学があって別に悪いとは思わないが、ひっかかるのは、連立与党のキャメロン首相もクレッグ副首相も、とってもお高~い「パブリック・スクール」出身だということ。(キャメロン首相の卒業したイートン校は授業料が年間3万ポンド=1ポンド150円として450万円)
ちなみにクレッグ副首相は選挙前に授業料は値上げしないと公約していたにも関わらず、それを反故にする形となった。
(この人、副首相となってからの苦労を物語るように半年の間にかなり老けた。なんてことはどうでもいいのだが)

キャメロン首相はオックスフォード卒、クレッグ副首相はケンブリッジ卒だ。彼らの学んだ「パブリック・スクール」では、オックスブリッジへ長年、多数の卒業生を送り込んでいる。イートンからは3分の1がオックスブリッジに進学するそうだ。

大学が「限られた人の行く場所」であった時代から続いており歴史も長い。

イギリスの受験制度は日本のそれと全く違うが、オックスブリッジでは長年の批判にも関わらず面接重視。ペーパー試験の成績が良いだけでは入れない。
しかし面接点なんて極めて主観的なもので、パブリック・スクールでは「面接官に好まれる」議論の仕方を徹底的に指導されるらしい。

ちなみにこの様な指導は、公立校では行われない。

当然これらの学校からは、オックスブリッジへの入学者が多数出るが、金にモノをいわせた(笑)少人数制授業や受験テクニックのトレーニング、大学との長年の繋がりを考えれば、当然だという気がする。
パブリック・スクールで学んでいる生徒達が他と比べて特別優秀なのかと言えば、疑問が残る。

最近は、パブリックスクールもイギリス人だけでなく、中国やアフリカ諸国や石油の出る国の(金持ち)外国人の子弟も積極的に受け入れており、「国の将来を担うエリート養成期間」なんてコンセプト自体が古い事は学校自体も承知していると思う。
まあ、有名なイートン校に息子を入れれば知り合いに見栄をはれるとか、本気で学校の教育方針が好きな親達の需要がある限り「文化」や「観光名所」としてパブリックスクールは存続すれば良いだろうと思うが、これらの学校に国の将来を担うような、選りすぐりの頭脳が集まっているなんて本気で信じている人は誰もいないのではなかろうか。
(実際、日本から旅行に来た私の友達は喜んで生徒たちの写真を隠し撮りしていた。生徒たちもこの様な不躾観光客には慣れているらしく、私達を見るなりそそくさと足早に過ぎ去った)

書きたいのはパブリックスクールのことではなかった。長くなったので続きます。

投稿者 lib : 02:02 PM | コメント (2)

December 03, 2010

雪の中でアーセナル観戦

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11月なのに雪が降った。

なぜかこの日に限って・・・アーセナルの試合のチケットをとってあった。
楽しみにしていた、息子のアーセナル観戦初体験だ。雪などで中止するわけにはいかない。(正確には以前、彼は友達のお父さんにユースの試合を見に連れて行ってもらったり、スタジアム見学ツアーにも参加した事があるが、普通の試合は始めて)

超寒がりの私だ。上は7枚重ね(ババシャツ、ヒートテック2枚、フリース、厚手のセーター、カーディガン&ダウンコート)、ニットの帽子にマフラー2枚、(1枚は首用、1枚は目から下の顔用)、足元はUggのムートンブーツの完璧な防寒対策で臨んだ。

雪の降りしきる中、最寄のバス停から10分ほど歩くと、赤の‘Emirates Stadium’の文字が光り輝くスタジアムに着いた。
外から上を見上げると、2階のガラス張りのレストランで優雅に食事をしている人たちの姿が見える。
ほう、これが某日系旅行代理店で売り出している「アーセナル観戦ダイニングパッケージ・300ポンド也」のチケットを買うと行けるレストランか・・・。
「負けるもんか」と自分に言い聞かせ、20ポンドのチケットを握り締めゲートを入る。

エミレーツ・スタジアムのショップには入った事があるが、実際に中に入ったのは始めてである。(というかイギリスのフットボール観戦自体が生まれて2度目だ)
一応、ユース観戦と見学ツアーで2度の来訪経験がある息子は「ここから入るんだよ。僕についてきて」としたり顔で私を案内している(つもり)。

席に座ると、ピッチが遠い!金持ちエミレーツが新しいピカピカのスタジアムを作ったとは聞いていたが、これほど大きいとは。収容人数が6万人だそうで、どうりで試合のある日は道路が混むはずだよ。今年のイースターに、フラムの試合を見に行ったが、フラムのスタジアムは古くこじんまりしていて、選手がすぐそこに見えた。かなりの違いである。なんだか外タレのコンサートに来たようである。(普通、外タレのコンサート会場は元々スポーツ施設として作られたものなのだが、私は本来の目的よりもコンサートで訪れる事が多いので、このような錯覚が起こるわけだが)

それはそうと息子の影響で私もフットボールの知識が豊富な今日この頃。
お気に入りの選手だってちゃんといる。オランダ出身の、ロビン・ヴァン・パーシーである。(理由:格好いいから)

「マミー、ロビン・ヴァン・パーシー」が出てるよ。

「えっどの人?あの10番か。いつも顔しか見てないから背番号を覚えてなかったよ。ところでアシャビンはどこ?(知ったかぶり)」

「アシャビンは今日は出てないよ」

「なにい?相手が弱小ウィガンだからってアシャビンを出さんのか。アシャビンが出ないアーセナルなんて、海老蔵の出ない京都顔見世興行のようなもんだ。殴られたって言っても許さん。金返せー。」

「マミー、落ち着いて」

気が付くと日本語でまくし立てる私の隣で、大柄なアーセナル・ファンの男が怯えた目をしてこちらを見ている。

「ごめんごめん、そういえばシェリル・コールの元ダンナは?」

「・・・彼はチェルシーの選手だよ」

そんなこんなで1時間45分、思ったほど寒さも感じずに初のアーセナル観戦を楽しんだ。途中かなり雪が降っていたが、エミレーツのピカピカスタジアムは観客席の屋根も立派であまり影響がなかった。
息子の解説によると、雪が降るとピッチには熱が入り雪が積もらない仕掛けになっているそうである。
それでも選手たちは雪の中プレーしていた。
テレビでよく顔を見るヴェンゲル監督も雪の中、ずっと立ちっぱなしだ。

「やっぱりテレビで見るより大変な仕事だねえ。」

私がそういうと、夫は

「僕だってあれだけの給料もらえるなら雪の中に何時間だって立ち続けるよ」

立ってるだけで給料を貰えるわけではないだろうが、まあそうだね。

ところで試合は2-0でアーセナルの勝ち。試合内容について知りたい方は、どこか他のサイトを見てください。

投稿者 lib : 01:57 PM | コメント (4)

October 29, 2010

おててつないで

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息子の学校は大人の足で15分程度、子供と一緒だと20分くらいの微妙な距離。
主に車で送り迎えしているが、ちょっと前に車の故障のため、1週間ほど歩いて登校した。

息子と歩き出すと、彼の方からさっと手をつないでくる。
いつも近所の公園に行くにもつい車で行ってしまうので、普段息子と歩く機会が殆どない。あれ、まだ手をつないでくれるのか、と私の方がびっくりした。

学校からピックアップした後も、ごく自然な動作で彼から手をつないでくる。
周りを見渡すと、彼と同じ年齢の子で親と手をつないでいる子はいないような気がする。
子供が手をつないでくれるのはもちろん嬉しいが、8歳の男の子としては友達の手前、格好悪いと思わないのかな、とこちらが心配になった。

今の学校にはレセプション(4歳)の時から通い始めている。考えてみたら、その頃から移動は大抵車だ。その前、もっと近い幼稚園に通っていた頃は当たり前の様に手を繋いで道を歩いていたものだが、もしかしたら息子の中では「歩く」動作に関してはその頃から時が止まっているのかも。

いつまで手をつないで歩いてくれるのかな。来年までかもしれないし、来週かもしれない。
とりあえず、周りの友達が誰も母親と手なんか繋いでいないと息子が気づくまで、この至福の時を楽しませてもらうことにしよう。


投稿者 lib : 12:03 PM | コメント (2)

July 29, 2010

カラテ・キッド

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息子が行きたいというので、カラテ・キッドを観て来た。

ウィル・スミス(実は好きだったりする)の息子、ジェイデン・スミス君も可愛かった。

老練したジャッキー・チェンもいい味を出していた。(おやじ愛好家の私としては、若い頃よりも油の抜けた今のジャッキーの方が好ましい)

演出もスピーディで、2時間以上の長い映画だったが親子共に飽きずに最後まで楽しめた。

主題歌は、あのジャスティン・ビーバーだ。(弱冠16歳の彼の事は息子に教えてもらった。初めに名前を聞いたとき、『え?シンガーのジャスティン・ビーバー? それを言うならジャスティン・ティンバーランドでしょ』と二重の間違いを私に犯させた憎いヤツだ。 ← ジャスティン・ティンバーレークと言いたかった)
このジャスティンも、映画には出ないが可愛くて大変よろしい。最近、若い男は可愛ければなんでも良い。(知らない人はYoutubeで見てみましょう。本当に可愛いから)

というわけで、まあ良かったんだが。ひとつだけ言ってもいいですか?

「カラテ・キッド」じゃなくて、「カンフー・キッド」やん・・・

投稿者 lib : 12:36 AM | コメント (0)

July 26, 2010

イギリスのキャラバン・ホリデー

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息子が3泊4日のキャラバン・ホリデーから戻ってきた。

学校の友達のご家族がカントリー・サイドにキャラバンを持っていて、そこに一緒に連れて行ってもらったのだ。

キャラバンというのはプレハブの様な四角い箱の中にキッチン、シャワー、ベッドルーム、リビングルームなどがついていて、そこで寝泊りできるものだ。

もともとはキャラバンそのものに車がついていたり、車で引いたりして移動し、森の中や空き地で寝泊りするものだったのだろうが、最近は「キャラバン・サイト」にキャラバンを常置しておいて、普通の車でサイトまで移動するやり方が主流のようだ。

「キャラバン・サイト」はキャラバン利用者の共同スペースで、サイト内にはプール、ミニゴルフ、カフェなどが設置されている。

森でキャンプをする根性も、別荘地に別荘を買う余裕もないが、「安全で便利な場所でちょっとだけアウトドア気分を味わいたい」軟弱な、いや合理的なイギリス人たちに愛されているホリデー形態である。
キャラバン・サイトの近くには大抵、大型スーパーマーケットもあるので夕食用のソーセージや朝食用のベークドビーンズ、ビールやワインの調達もばっちりだ。

そんなキャラバン・ホリデーに連れて行ってもらった息子。友達の家に1泊のお泊りくらいは経験があるが、3泊4日も両親と離れるのは生まれて始めての経験である。

家に戻るなり、4日間の楽しかった思い出を次々と話してくれた。キャラバン・サイトは家族連れが多いので、現地でたくさんの友達もできたようである。

「マミーのこと思い出した?」

「(きっぱり)No。」

・・・マミーの事を微塵も思い出さなかったってことは、それだけ楽しかったってことだもんな。いいよ、許す。

「マミーはとっても寂しかったよ~」

と一応言っておいたが、実は私も子ナシ生活を満喫した。

いやー、子供がいないってことがこんなに楽だとは思わなかった。
お迎えの時間に間に合わなくなりそうになり走って出先から戻る必要もないし、子供の食事の心配もいらないし、夜はいつまでだって起きていられるし・・・まあ満喫したってその程度だけど。でも貴重なリラックス・タイムだった~。


しかし大きくなったなあ。


投稿者 lib : 11:07 PM | コメント (0)

July 25, 2010

イギリスのサービス業 Hの巻 2

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*最後に素敵なイベントのお知らせがあります。

一脚買うのに随分苦労したが、やはりもうひとつ欲しくなった椅子。

しかし、またゲイ1やゲイ2に会うのが嫌だったので、(彼らは可愛いし、それなりに一生懸命対応してくれたが、なにぶん非効率である)駐車場のあるFロード店に車で買いに行った。

目的の椅子を見つけ、お喋りしている店員に助けを求め、この椅子が欲しい、今日持って帰りたい、と告げる。
「オーダーになります。7~10日かかります」

「そんな事言っても、もしかして在庫があるんじゃない~?」

と無理やりコンピュータをチェックさせると、やはり無いとの事。

1週間後にはホリデーに行く予定だったので7日~10日も待ちたくない。ホリデー後に受け取りに行ったら無かったことにされていそうだし。やはり在庫のあるトッテナム・コート・ロード店に戻った。

前回と同じ場所に同じ椅子がディスプレイされていたが、ゲイ1は見当たらなかった。

近くにいた女性店員に同じ事を聞き、同じ返事をされ、同じ様にコンピュータをチェックしてもらうと、

「あ、4つ在庫があります。今ウエアハウスに確認します」
と言われた。

彼女はゲイ1と違い、電話でウエアハウスに確認した。

「カスタマーが椅子を今日持って帰りたいと言っているんだけど・・・椅子の名前は・・はい?椅子はひとつもない?全部オーダーになる?」

ウエアハウスのいかつい兄ちゃんから、椅子の名前や商品番号も告げる前に「こんなところに椅子など一つも無い」と宣言されたようだった。椅子がひとつもない家具屋のウエアハウスってなんなんだよ。

「でも、コンピュータによると4つある筈だよね?」

「そうなんですけれど・・・あ、もしかしたら4つディスプレイされているのかも。上の階にいるマネージャーがいいと言ったら売ってもらえるかもしれません。でもその場合、ディスカウントはしませんけど」

でたー。客が「売ってください」と懇願して売っていただく、イギリス小売業の真骨頂。

パン一切れを買うために吹雪の中、長蛇の列に並ばなければならなかった旧ロシア政権下の人々に思いを馳せながら、上の階のマネージャーに 
「不特定多数の誰のお尻が座ったかもわからない傷だらけのディスプレイ商品を、値下げなしで売ってください」
と頼みに行く。

メガネをかけた誠実そうなゲイ定員3(以下ゲイ3)に事情を話し、マネージャーに聞いてもらっている間に初老のカップルが同じ椅子を気に入った様子で見ていたのが気になったが、案の定ゲイ3は申し訳なさそうな顔で戻ってくると、
「やはり同じ椅子を欲しいお客さんがいて、たった今二脚売ってしまったんだ」

「そうなんだ。でもまだ二脚残っているはずだよね?現にそこにあるし。」

「この商品は製造中止になっていて、後からもっと欲しいと思ってももう買えないけどそれでもいい?」

「いいよ。」

「マネージャーに聞いてくる」

-10分経過ー

「ごめんね、マネージャーがこの椅子は売れないっていうんだ。」

「なんで?」

「このテーブルとコーディネートしてディスプレイしてあるから、ディスプレイのコーディネート上、コーディネートが不完全になるディスプレイはなんのかんの・・・・」

「でももう製造中止って言ったよね?もう売らない椅子をディスプレイする意味があるの?」

「意味が通らないって思うかもしれないけど、マネージャーが、ディスプレイがコーディネートでコーディネートがディスプレイだからディスプレイのバランスが崩れるとコーディネートがディスプレイで・・・・」

誠実そうなメガネゲイ3が申し訳なさそうに必死で言い訳するのを聞いているうちに、彼が可愛そうになってきたので

「いいよ、世の中には不思議な事がたくさんあるものね」

とその場を去った。

長々と書いたが、私はHの店員に文句を言いたいわけではない。彼らはそれなりに誠実に、一生懸命(注: British standardによる)対応してくれた。私が驚愕したのは、21世紀の今、こんなInefficientなビジネスのやり方をして、それでも尚人々の支持を受けるHの存在である。
スエーデン家具のIや、カタログショッピングのAの効率的なサービスに加え、アパレルメーカーや最近はM&Sまで家具市場に参入して競争は激化しているようだがそれでも淘汰されるどころか、支店数を増やしているようだもの。

大体、たかが椅子一脚買うのに7日~10日も待たなければならないって何なんだ。
偶然同じ頃、日本で買ったビデオカメラが壊れたので次の帰国時に修理してもらおうとメーカーのサービスを調べたが、家に引き取りに来てくれて、修理して、また家に届けてくれて通常5日間だそうだ。

精密機器を修理してデリバリーを2回が5日間でできるのに、なぜセンターに在庫があると分かっている椅子一脚を受け取るのに7~10日かかる。そしてもう一度足を運んで取りに来いだと。しかもデリバリーを頼んだら50ポンド。(ビデオカメラメーカーの引き取り&お届けサービスは1000円台)

つくづく、イギリスのアッパーミドルクラス文化っていうのはお気楽というか呑気というか、前時代的というか、いまだにこんな殿様商売が成り立っているというのが、久々にブログを更新するほど(エヘ)びっくりした出来事でした。
コンラン、いつまでもこんなやり方で済むと思うなよ。覚えてろよ。

皆さん、Hで買い物するのは「なんちゃって日本茶碗」位にしておいて、家具は買わない方がいいですよ。まあ大きな家具ならどうせデリバリーだからいいかもしれないけどね。

*一気にHの悪口を書いたので、埋め合わせにHの集客に協力するイベントを企画しました。
 トッテナム・コート・ロード店にて、夏休みスタンプラリーを開催します。
 店内で、本文のヒントをもとにゲイ1・ゲイ2・ゲイ3店員を見つけましょう。
 全員見つけて3つスタンプを集めたら、「H特製・なんちゃってどんぶり」を貰えるかもしれません。
 もし貰えなかったら、店員に連絡が行き届いていないためでしょう。
 
 

投稿者 lib : 01:52 AM | コメント (7)

July 24, 2010

イギリスのサービス業 Hの巻 1

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私は椅子が欲しかった。

シンプルで、場所をとらず、とびきり座り心地のいい椅子だ。

ひとつでいいのだ。いくつかの家具店やオンラインで探した結果、ミニマリストのミドル・クラスの御用達、Hのオンラインで理想的と思える椅子を見つけた。

椅子は座り心地が命。トッテナム・コート・ロードのショップで実際に座り心地を確かめ、購入を決めたが、買い物帰りで荷物が多かったので、オンラインで注文しようとその日は家に帰った。

オンラインで目当ての椅子をバスケットに入れ、支払いをしようとしたが、椅子の値段は100ポンド位なのに、なぜかTotalが150ポンドになっている。
内訳を見ると、デリバリーに50ポンド請求されていた。

100ポンドの椅子一つに50ポンドのデリバリー代? 
言っておくが私はロココ調装飾な椅子とか、取り扱い要注意のガラスの椅子を注文したわけではない。いたってシンプルな軽い椅子、たった一脚だ。

トッテナム・コート・ロードは自宅からバスで一本で行けるし、現に以前、折り畳みの椅子を買ってバスに乗って帰ったことがある。
今回の椅子は折りたたみ椅子ほど軽量ではないにしろ、空いている時間帯なら椅子ひとつ位楽勝だ。

店に行き、目当ての椅子のそばに立って店員の助けを待ったが、客もそれほどいないにもかかわらず誰も来ない。しかたなく遠くの方でお喋りしているゲイっぽい店員2人に近づいて、「ちょっといいかしら」とヘルプを求める。

外国人アクセントのゲイ店員1(以下ゲイ1)に、
「この椅子が欲しいんだけど、今日持って帰れるかしら?」(もちろんYesだろ。椅子ひとつだもの)
と聞くと、
「No, オーダーして、7日~10日後に受け取ることができます」
と言われた。

「えええっこんな椅子ひとつ、在庫がないのお?」
と派手に驚くと、
「ちょっとチェックしてきます」
と彼は消えた。

うん、イギリスの店にしてはチェックに行くだけ感心、と思って待ったが、待てども待てども戻って来ない。
15分ほどして、やっと戻ってきたゲイ1は
「何も在庫がないんだ。」
と申し訳なさそうに言った。

「他の店にないか、チェックしてみるよ」
一生懸命コンピューターをたたくゲイ1。
うん、他の支店の在庫を確認するとは、イギリスのサービス業にしては気がきいている。感心感心。

「うーん・・・Rストリート店にもFロード店にもひとつもないな・・・。でも大丈夫。オンラインで注文できるよ。」

「そうしようと思ったんだけど、たかが100ポンドの椅子ひとつに50ポンドもデリバリー代とられるのよ。だからここに来たのよ。」

「ええ?オンラインでも50ポンドもとられるの?うちの店からデリバリーすると50ポンドかかるけど、オンラインでもそんなにかかるとは知らなかった。」

「・・・・・」

「あっ、この椅子、もう製造中止って書いてある」

「ええ?そうなの?じゃあ、本当は茶色が良かったけど、黒は?」
 
「(カタカタカタ)・・・・うん、黒ならうちに在庫がある。」

「じゃあそれでいいよ。座り心地がいいから色は妥協する。」

「ちょっと待って。今倉庫に在庫確認してくる」

-再び15分経過-

小躍りしながら戻ってくるゲイ1。
「あったよ、あった。茶色があった。」

「さっき無かったのがなんで突然現れたのかわからないけど・・・まあラッキーだね。じゃあそれをもらうよ。で、どこに?」

「デリバリーする?持って帰る?」

「(話聞いてなかったのかよ) 持って帰る・・・・」

「一度店を出て、ウエアハウスに行って。」

「は?ここでくれないの?」

「申し訳ないけど、ウエアハウスで受け取ることになっているんだ。はい、これが地図。」

やれやれ、時間がかかったけどやっと買えた、と額縁売り場を横目に見ながら出口に向かっていると、チャイニーズ系のゲイ定員2が、’May I help you? My friend?' とお尻をくねくねさせながら近づいて来たので’I'm fine' と早足で店を出る。

店から数分歩いたところのウエアハウスは、重たそうなシャッターが閉まっていた。先ほどの店内とは打って変わった雰囲気だ。
ゲイ1の指南通りに、シャッターの隣のブザーを押して、「椅子を受け取りに来たんだけど」とインターホン越しに告げる。

そのまま真夏の太陽が照りつける路上で待たされた。

-10分経過ー

ガラガラとシャッターの開く音がすると、先ほどのゲイ店員とは打って変わった雰囲気のいかつい男性スタッフが椅子をぽん、と渡してくれた。なんだか不機嫌そうだ。レシートをちらりと確認すると、またガラガラとシャッターを閉めた。
店のシステムに従ってオーダーしていれば彼の手を掛ける必要もなかったのだ。「うちはア○ゴ○とは違うんだよ」とでも言いたかったのだろうか。それとも彼の昼寝の邪魔をしてしまったのだろうか。

-椅子ひとつ買うのに随分な苦労だったな・・・・

それでも家に持ち帰った椅子はやはり座り心地が良く、もうひとつ欲しくなった。

つづく

投稿者 lib : 11:39 PM | コメント (0)

March 30, 2010

アーセナル V バルセロナ 潜入大作戦

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今日3月31日はフットボールの、「アーセナル対バルセロナ」の試合があるそうだ。

「屈指の好カード」だそうで、息子やその周辺でもかねてからその話題で持ちきりだった。
(しかし、なぜイギリスのチームであるアーセナルと、名前から察するにスペインのチームであろうバルセロナが戦うのかよく分からない私には、蚊が飛んでいるのと同じ位どうでも良いことである。)

息子 「A(息子のフットボール友達で家族で大のアーセナルファン)のお母さんが、どうにかしてチケットをとりたいって言ってたよ」

私 「そうー。とれるといいねえ」(訳:そろそろセールの季節だな、でもその前に着ない服を処分しなくては。いや、セールで無駄買いしないと心に決めたはずではなかったか。)

息子「ボクも行ってみたいなあー」

私 「そうだねえー。行けるといいねえー。」(訳:ちっ、もう5時半だ。夕飯の支度にとりかからないと。ていうか冷蔵庫の中に何もないじゃないか。どうするんだよおい。)

という具合に、我が家でもそれなりにホットな話題であった。

しかしある日、日系の旅行代理店のウエブ広告に、「アーセナルV バルセロナ戦 チケット入荷!」の活字が躍るのを偶然目にした。

「あれ、これ息子が行きたがってた試合じゃん。なーんだ、チケットって結構簡単にとれるんだね。あんなに好きなんだから、たまにはフットボール観戦にでも連れて行ってあげるか・・・・」

早速クリックしてみた。

「たったの」 (とは書いていなかったが)

「550ポンド!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

無言でサイトを閉じた。

しかし息子の、アーセナルV バルセロナ戦を観戦したいという夢はつきない。

昨晩は寝る前に、

「マミー、明日はいよいよバルセロナ戦だよ。ボク待ちきれないよ。どうにかして観られないかなあ。」

「TVでやるんでしょ?TVで観られるよ」

「スタジアムで観たいんだよ。そうだ、キックオフが7時半だから、5時頃に行けば誰もいないよ。その時にフェンスをよじ登って観覧席に入れば誰にも気づかれないよ」

「・・・・・・・気づかれると思うけど・・・。マミーは牢屋でお泊り会はしたくないから、やるなら一人でやってね」

「それじゃあ、スタジアムの周りで、誰かのポケットからチケットを盗めばいいかなあ?」

「・・・・・・・・・・よくないです・・・。その場合は牢屋に行く前に、その人から強烈なパンチをくらうね。マミーはこれでも一応女だから、顔は、顔はやめて欲しいのよね。」

「うーん、それじゃあ、これはどう?前に試合を観た時のチケットがあるでしょう?」

息子は1年ほど前に、A君の両親にスタジアムに連れて行ってもらったことがある。ユースの試合だったが、一応アーセナル対マンチェスターUだった。その時の半券を記念に大切にとってあるのだ。ちなみにチケットは2ポンドだった。

「あのチケットの『マンチェスターユナイテッド』の部分を横線で消して、バルセロナに書き換えるんだ。」

「はあ。」

「日にちも横棒で消して、31.03.2010に書き換えるんだよ。」

「値段も2ポンドを横棒で消して500ポンドに書き換える?」

「うん・・・・・でも・・・・」

「でも?」

息子の顔が急に曇る。

「・・・・でも、バルセロナってどう書くのかスペル知らないよ、マミー。一文字でも間違えたら偽チケットだってばれちゃう。」

バルセローナのスペルはBarcelonaですが、どうもそういう問題じゃないような気がするよ、息子。

学校の勉強もこれくらい頭をつかってくれたらいいんだけどねえ。とりあえず、やるなら一人でやってね。

投稿者 lib : 11:49 PM | コメント (3)

February 17, 2010

バリアフリー

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突然だがうちのダンナは、健康だけが取柄のような男だ。

決してけなしている訳ではない。
私は若い頃から身体がそれほど強い方ではなかったので、「健康だけが取柄です」なんて言える人を羨望と憧憬のまなざしで見てしまう。(それを恋愛感情と間違えた、という説もある。まあそれはそれとして)

ダンナがどんなに健康かを説明しよう。
50歳をちょっと越した彼、数年前まで肩こりも頭痛も経験したことがなかったという。
(友達が『頭痛がする・・・』などと言っているのを聞くと、いったいどんな感覚なんだろう・・・と未知のものに対する憧れに似た気持ちを持ったらしい)
風邪も殆どひいた事がなかった。
つまり生まれてから40年以上、人生の殆ど絶好調、という体調だ。(体調以外はたいして絶好調でもないですが)

「数年前まで」と書いたが、今は人並みに頭痛も肩こりも経験した、という事である。
私と結婚してからと時期が重なるが、あくまでも「偶然」の一致、「年のせい」だと信じたい。

しかし依然として体力や運動神経は若いものには負けないらしく、テニスや卓球でも20代の若者にも勝つらしい。

50歳前までの半生が健康すぎて、少しでも体調に不備があると大騒ぎしていた彼だった。
例えば冬に乾燥した空気が原因でドライスキンになった時、この世の終わりのように悲惨な顔をしていた。(ドライスキンですよ、ドライスキン)

そんなダンナがヘルニアになった。

仕事柄、いつも重いかばんを持って歩くのでそのせいかもしれない。
職業病とでも言うのだろうか。

どんなに大騒ぎをするかと思えば、私に不調を訴える前に自分でGPに予約をとってヘルニアの診断をされてきた。

「へ?全然騒がなかったし、どうして言わなかったの?」

「友達が同じ症状になったばかりだし、GPに言われなくても分かってたし」

などと、妙に冷静で気味が悪いほどだ。
私に不調を訴えてもどうせ優しくなんてしてくれないということを学習したのだろうか。それとも何か心境の変化でもあったのだろうか。

そんなある日、仕事から帰った彼がポツリと言った。

「ロンドンの地下鉄の駅は障害者に優しくないよなあ」

「え?そうなの?リフトもあるし、ロンドンは日本よりずっと障害者に優しいと思っていたけど」

「いや、実際、リフトやエスカレーターがない駅もある。あったとしても、電車から降りて外に出るまでのどこかに段差があるんだ。車椅子やお年寄りの人はその一段を上れなくて苦労するんだよな」

ロンドン地下鉄がDisabled friendly でないという事実にも驚いたが、「お年寄り」や「障害者」の気持ちをダンナから教えられるとは夢にも思わなかった。
どうやらヘルニアのせいで、重い鞄を持ち上げながら上がる階段が相当辛いらしい。

健康の権化だったようなダンナがお年寄りや車椅子の人と同じ目線になっている。
そのことで、いかに彼の症状が重かったのかが始めてわかったような気がした。

バリアフリーは大切だ、健康は大切だ。


投稿者 lib : 12:12 AM | コメント (3)

July 14, 2009

Britain's got talent への道 2

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Creativeで Imaginativeで Innovative な振り付けを考えようとするも何もアイデアが浮かばず、夢のお告げからも見放された息子。
しかしその日は学校で、来年の Britain's got talentへ出場する抱負を皆の前で発表したらしい。(意気込みだけは立派)

「へえ、どうだった?」

「クラスのみんなが応援してくれた。」

「そうなの、良かったじゃない。Zは笑わなかったの?」

「Zも励ましてくれた」

とりあえず、応援団は万全だ。

「レセプションの子も誘ったの?」

「それなんだけどね・・・・K(もう一人のメインメンバー)が、Lはナーバスになりがちだから適していないんじゃないかって言うんだ」

・・・年長者として、人選にもいろいろご苦労がおありのようで。

「それでね、Tが、『Britain's got talentに出るなら出場登録しないと』って言ってた」

げ・・・・いらん知恵をつけて本格的になってきたな。

「マミー、登録するにはどうしたらいいの?Tはインターネットから登録できるって言ってたけど」

そんなことに本当にかかわるなんて御免なので

「うーん、マミー、パソコンに弱いからどうやるのか分からないわ~。自分でやってみたら?」 (訳: さっさと諦めて早く寝てくれ)

と適当にお茶を濁してほおっておいた。

パソコンの前で、しばらく孤軍奮闘していた息子だったが、そのうち

「だめだ~。どうやって登録したいいのか分からないよ~」

と諦めたようだった。

息子が寝た後、私がパソコンを使おうとすると、グーグルのサーチ欄に 

来年のBritain's got talentの出場者登録方法

を懸命に調べようとした痕跡が残されていた。

"can you register bridalins got talent in 20010"

スペルミスはご愛嬌としても、20010年か・・・・・・まだ練習時間はたっぷりありそうだ。

いろいろな意味で、息子のBritain's got talentへの挑戦は、長く険しい。

投稿者 lib : 01:06 PM | コメント (4)

June 30, 2009

Britain's got talent への道 1

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さまざまなドラマを生んだ素人オーディション番組、Britain's got talentもファイナルが終わって数週間経つが、我が家ではブームはまだ終わっていない。

嗜好がバラバラの我が家で、家族3人が揃って楽しみにしている珍しい番組だった。
ファイナルが終わった時には
「ああ、これでBritain's got talentが終わってしまった。これから何を楽しみに生きればよいのやら・・・」
と息子と嘆きあったが、それは私が甘かった。

セミファイナルから毎晩録画していたものを、息子が毎日毎日再生して繰り返し観るとは・・・・。
あんなに楽しみだったBritain's got talentだが、今はオープニングの音を聞くのもTortureになった。

しかし息子は飽きずに視聴を繰り返し、
「う~ん、彼女は今回選曲がまずかったね、オーディションのときの方が良かったよ」
などとしたり顔で批評している。
・・・・・おい、それはサイモンが言っていたのを300回くらい聞いたぞ。

予想通りといおうか、
「マミー、僕は来年のBritain's got talentに出場するよ」
と言い出した。

彼の目指すのは、今年優勝のストリートダンス集団、Diversityのようなパフォーマンスらしい。
Diversityの様な素晴らしいチームワークを創り出すために、メンバー選定は最重要課題である。

「同じクラスのKと一緒にチームを作ろうって約束したんだ。あとはAと、Cと・・・・・」

「Zも仲良しじゃない、彼はチームに入らないの?」

「Zに話したら笑われた。だから入れない。」

子供の世界もいろいろあるようである。

「えっと、だから僕とKとAとCと・・・・Tもいいな、明日誘ってみよう・・・(指で数えながら)でも15人は必要なんだ、まだ足りないよ、あとは誰がいるっけ・・・・・・えっと、えっと・・・・マミ~~、僕の友達って誰だ?」

この年(6歳)で友達不足に悩むとは。不憫な事である。

「レ、レセプション(一つ下の学年)の子は?Year 1だけから選ばなくてもいいじゃない」

「そうか、レセプションではLならできそうだな、あとはGと・・・・・それでもまだ7人だ、半分しか集まっていないよ~」

それ以前に、彼らからOKの返事をもらっていませんが。

チーム編成も大切だが、振り付けも重要なポイントである。
息子はDiversityのダンスを繰り返し再生して、動きを学んでいる。

「見て盗めとは言うけどね・・・・Diversityと同じダンスを踊っても優勝できないよ、自分でダンスを考えないと」

「えっそうなの。」

息子は自分なりに、

「ここで回って、ここで地面に倒れて・・・」

などと振り付けを考えていたようであったが、

「マミ~!!ダメだ、思いつかないよ~」

と本気で困り、泣きそうになっている。

「アイデアがわかないときは、寝るといいんだよ。夢の中で急に閃くことがあるよ」(訳:めんどくさくなってきたから早く寝ろ。)

「えっ?夢で?分かった、今日は寝るよ」

次の日、目覚めた息子は開口一番、絶望の表情で私に訴えた。

「マミー・・・・・ダメだった、何の夢もみなかったよ・・・・・」

目の下にうっすらクマを作り、こころなしかやつれたように見える息子であった。

つづく

投稿者 lib : 03:39 PM | コメント (0)

June 04, 2009

イギリスの税金が高いワケ

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内務大臣のジャッキー・スミスがついに辞職しましたね。

英国議員の経費乱用スキャンダルの発端ともなった彼女。
イギリスにお住まいの方はとうにご存知でしょうが、英国の議員は自分の地元と、議会の開かれるロンドンの二箇所に家を持つことが多く、そのロンドンの二件目の家については経費として請求することができるのです。

スミス内務大臣はロンドンに滞在する時はいつも妹の家に泊まっていたにもかかわらず「二件目の家の維持費」を上限いっぱいまで請求し、過去に夫の観た「ポルノビデオ代」まで経費として請求していたことまで分かって赤っ恥をかいた上に、国民の顰蹙を買いまくりました。

その後もでるわでるわ、他の議員の経費の内訳。「プールの掃除代」とか「バスルームの改装代」「高級カーペット代」「フラットTVとDVDプレーヤー代」「ネコの餌代」「ビスケット代」etc・・・・
「B&Qで買った電球1コ59ペンス」なんてのは正当な請求なのかもしれませんが、大英帝国議員の皆様がそんな小額レシートまでせこせこ集めていたと思うと笑える。豚インフルはどこへやら?といった、連日の報道でした。

いや、笑っている場合じゃない。スミス内務大臣のようにはっきり不当とわかる場合は別として、「経費」として何を請求できて、何を請求できないのか、その線引きをはっきりできないことが問題なんですよね。
例えば「家の掃除費」はよくて、「プールの掃除費」はだめなのか。それじゃ「庭の掃除費」はどうなんだ。

線引きがはっきりしていないから、議員の皆さんはとにかくいろんなレシートを集めて、認められたらラッキーとばかりに請求できる上限まで力の限り請求する。
上限いっぱいにする努力が内訳の行間から伝わってくるようです。
上限に満たなかったら、必要なくても冷蔵庫を新しくしてみたり、「そういえば照明を変えたかったのよねー」なんて言ってシャンデリアを新しくしてみたりするんじゃないですかね。それがまたあっさりと認められちゃうから(笑)。認めた人もこの前辞職していましたけどね。

とにかく血税の乱用ということだけははっきりしていて、国民の怒り心頭なワケですが、なんというか地位や教育に関係なく、人間の本性っていうのはこういうものなんだなあ、という気がします。

この国はベネフィット(福祉)のお世話になっている人もすごく多いです。
すごく簡単に受給資格を得る事ができる上、内容も手厚いので、働くよりも保護を受けている方がずっと優雅な生活ができる人もいるワケです。
本当に困っている人を福祉でヘルプするのは全く構わないのですが、制度を悪用する人ももちろん出てきます。

例えば、国から住宅を無料や格安で与えられている夫婦が、離婚したふりをして住宅を2つゲットするなんてことはよくあるらしいです。(与える方もまた、簡単に与えちゃうんだこれが)そしてその1つを人に貸して賃貸収入を得るとか・・・。
十代のカップルが子供をつくって、結婚はせずにシングルマザーとして申請すればベネフィット生活で一生安泰、なんて図もよく見られます。(こういうのを無計画な妊娠というのか計画的な妊娠というのか、よくわからん)
子供を二人つくって父親と母親で一人づつ面倒をみることにすれば、父親もシングルファーザーとして一軒獲得~なんてのもあるんじゃないでしょうかね。ちょろいもんです。

国も自治体も、福祉を受けている人たちに甘いよなー、もっと厳しくチェックすればいいのに、と思っていましたが、自分達が同じ事をしていたのなら甘くなるのも当然です。
国のトップ「とされている」人たちも、経済的に最も恵まれない「とされている」人たちも、やっていることは同じ原理。
上の方の人達と下の方の人達に家を2コづつあげていれば、そりゃ国も財政難になるってもんです。

そして、特権を受けるほどエラくもなく、福祉を受けるほど貧しくもない、真面目な勤労者である一般庶民の私達が、上と下から搾り取られるように税金を払ってます。

税金が高いはずだわ・・・・。ふうーっ。

投稿者 lib : 11:22 AM | コメント (2)

May 17, 2009

にほんごビギナー

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息子が日本語の学校に通い始めて1ヶ月が過ぎた。
1ヶ月といっても週に一度だけなので授業は4回受けただけ。

話には聞いていたが、日本の学校で一週間で習う内容を、土曜日の午前中だけでカバーするということなのでなかなかハード。1年生の初めから宿題を沢山もらってくる。

まずはひらがなの練習ということで、「あいうえお」「かきくけこ」のひらがなの書き取りの宿題。
懐かしの「こくごノート」(四角の中に点線で十字が入っているアレ)で文字の始まる位置、とめ、はね、はらいなどに気をつけながらお手本の様に書かせていく。

実を言うと私は、文字なんて読み手が認識できればいいのではないか。皆が皆、ペン字の様な字を書く必要があるのか、加えて今はワープロの時代、手書きする機会自体が少ないのだから、お手本にこだわって綺麗な文字を書くことにどれだけの意味があるのだろう・・・・と思っていた。

しかし私の意見なんぞ聞かれちゃいないし、とりあえず先生の指示通りにお手本にならって(もちろんお手本の通りとは程遠いが、少しでも近づくように)書けるように息子の隣で指導しながら宿題をこなさせる。

すると、私自身に変化がおきてきた。
まず、ひらがなの美しさに気がついた。
息子に練習させるため、嫌でもひとつひとつの文字をよく見ると、あら不思議、それ自体が芸術作品に見える。
平仮名ってなんて繊細で柔らかくって表情豊かなんだろう。

そして、息子がアルファベットを書き始めたときや英語の単語を読み始めたときも勿論嬉しかったが、息子が「日本語」を読み書きできるようになりつつある、それを見守る嬉しさは、心に温かいものが流れ込んでくるような、英語の時よりもずっと格別な喜びだった。
自分自身、あまり「日本人」であることにこだわっていない方だと思っていたので、これは我ながら驚きだった。

平仮名はアルファベットに比べてかなり複雑だが、アルファベットでさえミミズの這ったような字を書く息子が、それなりに「人が読める」ひらがなを書いている。
・・・・・不器用な息子が平仮名を練習することで、少しは手先の器用さを得られるかもしれない。

今まで私が日本語をあまり教えていなかったので、息子にとっては学校の日本語環境にもプレッシャーを感じるらしい。
「マミー、学校で先生の言っていることよく分からないよ。学校行きたくない」(←In English)
と言い出した。

実は私は今、大学に通っている。
うんうん、「先生の言っていることがよく分からない」気持ちは私にもよーく分かるよ。
まあ言語以前に内容が分からない、って話でもあるんですけど(涙)

「そうかー、でもね、マミーも学校で先生の言ってることなんかよく分からないんだよ」

目をまるくする息子。

「ええ?そんなの嘘だ。だってマミーは大人だし、英語も話せるじゃないか」(←In English)

ああそうか。これくらいの年の子供って、大人は困ったりしないし悩み事なんて何にもないと思ってるんだよな。

「マミーは大人だし英語も話せるけど、マミーにとっては日本語がもともとの言葉で、英語は習った言葉だからよく分からないことも多いんだよ」

親子で傷を舐めあう私たち。
ともあれ、これを聞いて彼も少しは気持ちが軽くなったようだった。

ちなみに息子に「マミーの学校」について質問されるトップ3。

1.マミーの学校にプレイグラウンドある? ← ないよ!
2.マミーの学校のプレイグラウンドは大きい? ← ないんだってば!
3.マミーの学校のプレイタイムは何分? ← だからないっつーの!

私は本当に大人だと思われているのか。

投稿者 lib : 11:24 AM | コメント (0)

February 18, 2009

SNOW SNOW SNOW 2  人々編

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多くの人が会社を休んだ18年ぶりの大雪の日、うちのダンナは悪天候に挑戦する「燃える勤労者」と化した。
マンチェスターへ、どうしても外せない日帰り出張が入っていた彼、列車が動いているかも分からなかったが、とりあえず列車の出るユーストン駅めざして6時半に自宅を出発した。

自宅からユーストンまではバスで15分程だが、もちろんバスは動いていない。
最悪の場合はユーストンまで徒歩で行く覚悟で降りしきる雪の中を歩いていると、奇跡的に1台のタクシーが止まったと言う。ドライバーによると、
「君は運がいいよ。いままでに何人も止めようとしたお客がいたけど、雪が深すぎて歩道につけることができなかった」
との事。
奇跡的にユーストンに到着した夫は、これまた奇跡的に遅れも無く動いていた列車に乗ることができ、無事にマンチェスターでの仕事を終えてロンドンに戻ってきた。

ロンドンでは大雪の影響で仕事にならないと、家に3時頃には生還した彼、
「ハムステッドヒースにソリ(Sledge)をしに行こう」
と言う。
「そり?そりなんて無いよ」
と私が答える間もなく、彼はキッチンや押入れからプラスティック製のお盆や、衣装ケースの蓋、空気を入れて膨らませるゴムボートなど「滑りそうなものなら何でも」ゴソゴソと取り出している。

「ええ~?そんなんでやるの?貧乏くさいなあ」
と思いつつ、息子と息子の友達を連れてハムステッドヒースにたどり着くと、いるわいるわ、みんな手に手にそり(の代用品)を持って丘を目指している。
商品として売られている「そり」を持っている人は極少数派で、大多数の人は
「ダンボール」
「不動産屋の立て札」(”To let”とか書いてあるアレです)
「黒いビン(ゴミ箱)の蓋」
など、「家の中や外にあった滑りそうなもの」
なら何でも持参して来ていた。
私達の「プラスティック製のお盆」などはそこではポッシュな部類だった。

初めのうちは下の方でちょこちょこと滑っていて子供達もそれなりに喜んでいたが、夫が
「もっと上に行こう」
というので丘の頂上まで登ると、そこには狂喜乱舞するイギリス人たち(主に大人)が思い思いのソリの代用品で滑降していた。
なんだかよく分からない大きな板の上に10人位乗って歓声とも叫び声とも聞こえる奇声を上げながら落ちていくグループや(滑っていくうちに他人もどんどん乗っかって行った)、止まらなくて木に激突している人など、積雪を見慣れない人々がはしゃぐ姿はまさにカオス。
「危ないなあ・・・」と思ってみていると、夫が
「20年くらい前までは毎年、これくらい雪が積もったんだ。ここへ来て友達と遊んだものさ」
と言う。
私がイギリスに来てからはこんな大雪が無かったので知らなかったが、「そこらにある適当なものですべるソリ遊び」どうやらイギリス人のトラディションらしかった。
家に戻ってニュースを見ると、各地でソリ遊びに興じる子供達の映像が流れていたが、ハムステッドヒースはそれよりもかなり激しかった。怪我がなくて良かったわ。


投稿者 lib : 03:23 PM | コメント (0)

February 04, 2009

SNOW SNOW SNOW ニュース編

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皆さんご存知の通り、2月2日の月曜日は18年ぶりの大雪で、ロンドン(だけじゃないけど)は大混乱だった。
混乱振りは大変だけど面白く、2日は家で大雪情報を見たり外に出て人々の様子を偵察したりした。(日本でも台風が来るとわくわくして、一晩中台風情報を見ていた私なもので)

前日の夜から降り始めた雪。
天気予報通り、みるみるうちに積もっていく。
朝、カーテンを開けると一面の銀世界。
「おおっ」と心が弾むが、喜んでばかりもいられない。
息子の学校には車で送り迎えしているのだ。
スタッドレスタイヤもないし、運転はかなり危なそう。

TVのニュースをつけると、かなりの学校が休校を決定したらしい。息子の学校にも電話してみると、やはりお休みとの事。

息子も私も急にホリデー気分になり、雪を見ながらへらへらしていると、近所の友達のお母さんから電話。

「学校はどこも休みよ。うちの庭で雪合戦をしに来ない?」

というありがたいお誘いだ。息子を置いてきて、私は家に戻って暖かいココアを飲みながら大雪情報の鑑賞(?)をする。

ロンドンの交通機関の混乱はひどく、特にバスは全休となった。

ロンドン市長のボリス・ジョンソンが、
「これは20年に一度の大雪だ。できる限りの対応をするがそれにも限度がある。20年に一度の事のために、大雪に対応するインフラを整えるのも税金の無駄遣いだ」

と強風の中、必死で交通麻痺の言い訳をしていた。
(部屋の中でインタビューに答えても良さそうなものだったが、わざわざ屋外で髪を振り乱しながら話していた。『悪天候の中で頑張る市長』を演出したのだろうか。それにしては場所がどこかのテラスの様な所で、一歩先には暖かい部屋がありそうな場所だったが。)

それに対して、BBCはわざわざ前市長のケン・リビングストンの電話インタビューもとっていた。

「金曜日から雪が降ることは予報されていたのに何も策をとらないで、この様な交通麻痺に陥るとはなんたる無能。私が在職中だった2001年にも大雪があったが、交通機関ははスムースに回っていた」

と、鬼の首をとったようにボリスの無能ぶりを批判していたケンだが、繰り返し言われている「18年ぶりの大雪」という箇所は無視し、ひたすら己の在職中の2001年の大雪を引き合いに出していた。
それに2001年だってかなり混乱した記憶が・・・・。まあ新旧ロンドン市長のパフォーマンス合戦で笑わせてもらったのでいいのだが。

雪のために仕事を休んだ人は600万人以上だったらしい。
(学校が休みになれば親も自動的に仕事を休まなければならないし)
夜のニュースでは、
「この程度の雪のために、今日1日で経済損失は10億ポンドだ。」
と、キーキーしている人がいたが、18年に一度の悪天候による経済損失を嘆くならば、

「同僚とのお喋りが忙しすぎて接客するヒマのないショップアシスタント」や、
「実働時間よりティータイムの方が長いビルダー」や、
「インターネットばかりして家事をおろそかにする主婦(あたしだよ!)」

などによる、人災ともいえる日々の経済損失を心配した方がいいと思うのだがいかがなものか。

(次回は、実際に見た『大雪に見舞われたイギリス人の狂喜乱舞ぶり』をご報告します)

投稿者 lib : 03:53 PM | コメント (0)

January 19, 2009

日本語

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皆様、お元気でお過ごしですか。
いやいや、更新を随分さぼってしまいました。すみません。
最近なんだか忙しくてなかなか余裕がなかった次第です。
何をそんなに忙しくしていたかというのは、またの機会にお話するとして、何事もなかったように語り始める私ですが、最近日本語が出てきません。

先日、息子の日本語補習校の願書提出の締め切りが迫っている事をママ友Rさんに教えてもらい、(息子のナーサリーの願書提出もぎりぎりで間に合ったのもRさんのお陰です)願書をダウンロードして早速記入した。

「日本語のフォームに記入」という行為自体が数年ぶりで、なんだか履歴書を書いているみたいで緊張したがなんとか終了。
(日本語のフォームってすごくフォーマルな感じがしません?『綺麗な字で書かなくてはならない』『誤字脱字があってはならない』・・・・などと、『私、試されている、私、試されている・・・・』と日本語フォームに記入するたびにプレッシャーを感じてしまうのは被害妄想だろうか)

さて、封筒に入れて住所を記入。
日本語補習校は普通のイギリスの小学校を土曜日だけ借りているらしいので、住所の一番上に
’The Japanese Saturday School'
と書くことも忘れない。じゃないと、イギリスの学校宛ての郵便とごっちゃにされちゃうもんね。ふっ完璧だわ。

ついでに日本語で、願書が入っている旨を書いておけば間違われることはないだろうと思い、封筒の下の方に

「入学願書御中」

と書いた。

・・・・・なんか違うな。

あっ。「オンチュウ」じゃないよ、「ザイチュウ」だよな。

「御中」を二本線で消して下に訂正しておこうかな、と思ったが、それでは私が漢字を間違えた事がバレバレである。
私自身はどう思われても構わないが、これから日本語学校で新しい生活を始める息子が、
「漢字の書けない親の子供」
という印象をしょっぱなから持たれてしまってはどうにも不憫である。

仕方ないので新しい封筒に書き直すことにした。

「入学願書存中」

・・・・・・・・あれ、まだなんか違うな。

はっ。これでは「ゾンチュウ」だ。「ザイチュウ」だよ、ザイチュウ。

新たに書き直し、やっと「入学願書在中」と正しい日本語で書かれた封筒を投函したのであった。
封筒2枚無駄にした。

漢字が書けなくなっているだけではない。
日本語の微妙なニュアンスも、忘れかけている。

先日、某スーパーで冷凍の「アラスカン・レッドサーモン」を発見した。
スコットランド産のサーモンは安いが、アラスカ産のレッドサーモンは生で買うとお高い。
冷凍ものは安く、味もまあまあだったので、早速、日々の夕食のメニューに悩む同志の主婦友に報告のメールを送った。

「テ○コで冷凍のアラスカ産の赤鮭を発見したよ・・・・」

彼女は返信メールをくれ、

「教えてくれてありがとう。アラスカ産の紅鮭は美味しいよね・・・・」

とさりげなく、私の間違いを訂正してくれた。

ああっ。「レッドサーモン」をそのまま「赤鮭」と翻訳していたが、日本語には「紅」という美しい表現があるんだったあ!

思わずパソコンの前で「紅面」してしまった私です。あ、これは「赤」でいいのか。


投稿者 lib : 11:55 AM | コメント (7)

September 02, 2008

こうもり親子

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このところバタバタしていて、何かと話題になった北京オリンピックの開会式も閉会式もリアルタイムで観る事ができなかったが、友人のmixi日記に閉会式のビデオがリンクされていたので、次回開催地ロンドンへバトンタッチするショーの模様を観ることができた。
見逃した方のために、私もリンク貼っておきます。こちらから。

赤いダブルデッカーを中心に、音とダンスと光によって構成されたショー。
ダブルデッカーの横を、サイクリストが疾走する。(サイクリストの一人が、初めボリス・ジョンソン市長に見えて目をこらしたが違った。ボリス、もうちょっと頑張って自転車こげば良かったのに。)
ダブルデッカーに、いろいろな肌の色をした人が乗り込もうとする。
車椅子の人もいる。子供もいる。
横断歩道を渡る子供を、ロリポップ・レディ(イギリス版緑のおばさん)が手を引いて助ける。

ああ、これがロンドンなんだよなあ。
日本の様に皆が一斉に同じ方向を向いている統一性はないが、それぞれが違う方を見ながらも、身障者や子供に優しい社会。(その分税金は高いけど)
それぞれが好き勝手な格好をし、好き勝手な主張をもつことをゆるされる社会。
(仕事をしていない人も楽しく暮らせるのでその分税金は高いけど)

見慣れたロンドンの風景を客観的に見せられることによって、ロンドンに住み始めたばかりの頃に持った感慨がよみがえってきた。

北京の開会式は観られなかったけど、評判をきくと非常にお金をかけて「非日常」的な世界を創り出したのかな、という気がする。
それに対して「日常」のロンドンをフィーチャーしたこのミニ・ショー、自分もロンドンにいて見ているのに、なんだかとても懐かしい様な気持ちになった。そうか、ロンドンは日常がドラマになる街なのかもしれない。
前回イギリスの悪口を書いた舌の根も乾かぬうちだが、なかなかやるな、とロンドンに住んでいることを誇りに思わせてくれる様な、良いショーだったと思う。

しかし、変わり身が早いのは私だけではなかった。

5歳の息子は最近、
「僕はチャイニーズでもジャパニーズでもないよ、イングリッシュだよ」
とよく言うようになっていた。

中国語や日本語を教えようとする時にこの台詞が出るので、単に言葉に対するアレルギー(他の友達が1ヶ国語だけでいいのに、一人で3ヶ国語覚えろと言われるのは確かにつらい)だと思ってはいたが、少し気になっていた。

それが、オリンピック終了後には
「僕はチャイニーズだよ」
と胸を張って言うではないか。

理由は簡単、中国が100個のメダルを取ったかららしい。

こんなコウモリ少年的な理由でも、息子が半分中国人であることに誇りを感じ始めてくれたことは喜ばしい。
先日、私が学校で日本の話をしたことで日本に対しての意識も良い方向に変わったようだし、英・中・日、彼を生み、育ててくれる3カ国を自然に愛することができるようになるといいなあ。

「ロンドンでオリンピックをやったら、もっと人や車が増えて混雑するし、物価も更に高くなりそうだしー」
と後ろ向きな要素ばかりを考えていた私だが、ビデオを見た後はちょっと明るい気分になった。

ロンドンオリンピックが開催される4年後には息子は9歳になっている。
少なくとも彼にとっては忘れがたい、素晴らしい経験になるんだろうな。

投稿者 lib : 01:03 PM | コメント (2)

August 12, 2008

イギリスの情報操作 オリンピック編

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今週はホリデー休みのはずでしたが、どーしても言いたいことがあって、書くことにしました。

オリンピックが始まった。
英国生活が長くなると、よく友達から
「日本とイギリス、どっちを応援するの?」
と聞かれることがあるが、そんなものは決まってる。日本に決まってるでしょうが!

で、開催中はオリンピック漬けになりたいのに、どうしてこ~もTVのCoverageが少ないの?イギリスは!!!

日本みたいに、猫も杓子も一斉に同じ方向を向く過熱報道も行き過ぎだとは思うが、それにしても放送が少ない。
確か日本では民放も放送していたと思うが、イギリスではBBCだけ。
そのBBCでもごく限られた競技しか放送しないし、民放にいたっては「オリンピックなどこの世には存在しません」とでも言うように、黙々と普段通りの放送を流す不気味な静けさである。
BBCのオリンピック放送では自分の国がメダルをとったら最後、延々とその場面を何度も再放送し、他の競技には触れようともしない。
ああ、今まさにヤワラさんが柔道をやってるのにい~!見せて~!!

イギリスがメダルをとらなかった日は、何故か「過去のオリンピック名場面集」とか「過去のメダリストインタビュー」などを放送している。
まさにこの瞬間、2008年のオリンピック競技が行われているのに、「なつかしのオリンピック」をなぜ今ここで放送する必要がある?
いいから北島の水泳見せて~!見せろったら見せろ~!

オリンピックチャンネルをつけると、60%の確率で乗馬ばかりやっているのも気に入らない。
乗馬はイギリスが強い、数少ない競技だものな。

4年前のオリンピックの時から思っていたが、そもそも「乗馬」と「100メートル走」のメダルの重さが同じって、どう考えてもおかしくないか?
乗馬はごく限られた国の、ごく限られた階級のみ(最近は裾野が広がったとはいえ、まだまだやっている人は少ないぞ)ができる競技、片や100メートル走(200メートルでも400メートルでもいいが)は健康な2本の足さえあれば世界中の誰もが参加できる。
この競技人口の差を考慮せず、メダルが同じ意味を持つって、どう考えても不公平だとは思いませんか?
「西洋式乗馬」が認められるなら、日本の「流鏑馬」だってオリンピック競技に加えるべきである。アン王女も流鏑馬に種目替えするかもしれないぞ。
競技者はもちろん、戦国武将の格好をしなければならない。
他国の選手が着替えに手間取っている間に、日本がメダルをかっさらうと言う算段だ。うーん、完璧。

という訳で、日本に比べてオリンピックに対する温度が非常~に低いイギリスである。
(フットボールのヨーロピアンカップの方が皆がエキサイトしているように見えるのは気のせいか?)
自国が勝てないものには「興味ないもんねー」とあえて目を向けず、無関心を装っていることで大英帝国の面目を保っているのだろうか。

イギリスの勝った競技だけ放送し、その他は「無かったこと」にするようなメディアによる情報操作により、誇り高いイギリス人の皆さんは
「オ~、ブリタニア♪、イギリスってグレートだなあ♪」
と今日もパブでご満悦なのであった。

(と、悪口を書いた後でニュースを見たら、イギリス人がメダルを取った日なのにグルジアのニュースがトップだった。そういえば、ロンドンテロの時も、騒いだのは当日だけで、翌日はTVも新聞も他のニュースがトップに来てたな。日本だったら何日間も延々と、怪しげなコメンテーターの皆さんがあーでもない、こーでもないと引きずるだろうに…。こういった冷静な報道姿勢は、日本のメディアも見習うべきかもね)

と考える、自国贔屓にならないとっても公正な私でした。


投稿者 lib : 10:44 PM | コメント (0)

August 05, 2008

Keep Your Mouth Shut

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2年ほど前は言葉の発達が遅れていて、望んでもいないスピーチセラピーやヒアリング・テストに送られてしまった息子だったが、最近は
「ちょっと黙ってくれない?」
と思うほど、一日中喋っている。

親も遣わないような自然なネイティブ表現を遣ったり、私の発音を直してくれることもある。
無料の発音矯正だと思って、有難く直していただく。

親としては嬉しい限りだが、口が達者になってくると、困ることもある。

息子はレセプションクラスの友達の影響で、「小さなフットボールファン」になっている。
特に友達の一人のお父さんが筋金入りのアーセナル・ファンで、彼の息子の私服はいつも「アーセナル・シャツ」だ。

ちなみにイギリスにおける、「フットボールシャツ」の位置づけだが、ある日本語のガイドブックには

「フットボールシャツを着ているのはワーキング・クラスの人です。ミドル・クラスはまず着ません」

と書いてあった。

この定義が100%正しいかどうかは別として、まあ大阪で虎キチの親父が息子にタイガースのユニフォームを着せているようなもので、微笑ましいと思うことはあっても、「お洒落」とか「トレンディ」とか「洗練」いう世界とは別物である。
確かにフットボールシャツを着ている大人には、パイントのビールと怒声がよく似合う。

とまあ、要するにそういうものだし、フットボールにまるで興味のない私としては、まさか自分の息子にフットボールシャツを着せようとは夢にも思わなかった。

「僕もA(友達の名前)みたいにアーセナルのシャツが欲しい」

と言われても、

「はいはい、じゃあ今度探しておくからね~」

「お店で探したんだけど、見つからなかったわ~」

といつも適当にあしらっていた。

しかし先日、久しぶりに息子とセンターのショッピング街を歩いていると、スポーツ用品店を見て息子の足が止まった。

「このお店、見たい」

と言う。まあいいかと思って中に入っていった。

店内を一通り見回して、特に欲しいものも見当たらなかったので帰ろうとすると、息子がはっと気づいたように言った。

「ここならアーセナルのシャツを売っているかも」

やばいっ。確かに売っていそう。

「え~、売ってないと思うよ、ほら、どこにも見あたらないし…」

といつものようにごまかそうとすると、息子は勝手に店員のところに歩み寄って

“Do you have Arsenal Tops?”

などと聞いている。

(売ってないように、売ってないように…)と祈っていると店員は、

“Basement”

と答えているではないか。

嬉々としている息子に引きずられるようにして地階に行くと、売り場の一角に子供用のフットボールシャツのコーナーがあった。

(あちゃ~)

と思いながらも見てみると、一番下のサイズで7才用だ。

しめたとばかりに、

「ほら、大きいサイズしかないよ、君のサイズは無いね、残念だね~」

さっさと退散しようとしたが敵もさる者、息子はまた近くの店員に歩み寄って、

“Do you have Arsenal Tops for me?”

と勝手に聞いている。

(売ってないように、売ってないように…)とまたもや祈ったが、店員は息子のサイズの売り場に連れて行ってくれてしまった。

そこにはまさに、息子の捜し求めていた一品が…。
サイズもちょうど良さそうだ。

目を輝かせて私を見る息子。

うう…。フットボールシャツなんて着せたくないと思っていたが、息子が自分で店員に聞いて、探し当てた努力は買ってあげたい。
もう買わない言い訳も見つからないし逃げられそうにない。仕方ない、努力賞と思って買ってあげるか…


……と、シャツを手にとって、値札を見たとたんに気が変わった。

29.99ポンド?(約6千円)

自分の今来ているシャツより高いぞ。ワーキングクラス御用達(By日本語ガイドブック)のフットボールシャツってこんなに高いのか。いくらなんでもこんな金額を出したくない。

急に方針を変更して、息子に(半分)真実を伝えることにした。

「ちょっと高いね…マミー、今日お金持ってないから買えないわ。」

「カードは?」

(ちっ、小賢しくなりおって)「…カードも今日、忘れちゃったの、おほほ~」

と今度こそ本当に店から引き上げようとした。

出口に向かう途中、さっきフットボールシャツの場所を教えてくれた店員に会ってしまった。
手ぶらの息子を見て、

“You didn’t like it?”

と聞いてくる。

「サイズが合わなかったから~」と私が言うより先に、息子が

“Too expensive……”

と答えていた。言うなよ、おい!!!

明らかに失望した様子の息子、少し可愛そうかな、と思いつつ店を出て通りを歩いていたが、一難去ってまた一難。
フットボールシャツを売っている露店を息子が発見してしまった。
(あっ……)

と思った時には息子が

“Do you have Arsenal Tops?”

と聞いていた。

露天商は満面の微笑みで、息子のサイズを出してきた。
ハウマッチ?と聞くと、10ポンドだと言う。

“Mummy!!  It's Only 10pounds!!  It's Cheaper!!!!

オックスフォードストリートの真ん中で息子に叫ばれた。

…もう面倒くさくなって買いました…。

露店で買ったシャツのラベルには、大きく“UNOFFICIAL”と書いてあった。

「フットボールシャツ」しかも「バッタもん」という、考えられる限り最悪のアイテムを購入するという結果になってしまったが、息子は嬉々として着ている。
しかも友達や親戚に会う時には特に、
「このシャツ見せたい」
と着たがるので、20ポンド程度をケチったがために私は
「バッタもんのフットボールシャツを息子に着せている母親」
として人々の脳裏に深く刻み込まれるのだ。


…息子が言葉を話せなかった頃が、少しだけ懐かしい。


(次週からホリデーのため、2週間お休みさせていただきます)


投稿者 lib : 01:16 PM | コメント (0)

July 29, 2008

5歳児に、「日本」について語る その3

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軌道を修正して、食生活だ。
「日本人は鯨を食べますが、それが国際的に大きな顰蹙をかっています」

などのControversialな話題は当然避けるとしても、図書館で借りてきた本の中の写真の、朝食風景らしい日本人家族の食卓には、なぜかソーセージと目玉焼きとオレンジジュースがのぼっていた。
なぜ、味噌汁とご飯とアジの開きのトラディショナルな朝食でなく、ソーセージと目玉焼きなのか。
編集者の意図が分からないが、とりあえず

「……こ、このように、日本人もソーセージや卵を食べます…」

と写真を見せながら言うと、先ほどの「10ミニッツ」の子が、

“Just like us?”

とナイスな、合いの手を入れてくれた。

「そう!Just like you! でも、その他に魚も沢山食べます…」

と日本食につなげる。

本には、日本の古い木造の家と高層ビルの立ち並ぶ新宿の写真も載っていたので、それも見せた。
なんだか意図せずに、食、住の「古い日本」と「新しい日本」の対比のような進行になっている。
(子供達が分かってくれたかは怪しいが)

「古い木造住宅」の方は、私でも
「もう少しましな家はなかったのか…」
と思うほど古い「あばら家」で、何人もの子供達から

「そこに人が住んでるの?そこに人が住んでるの?」
と質問された。

「(多分)住んでる、(と思う)よ…」
と自信のない返事をした。

さて。
突然だが、私は昔から
「西洋人の木造住宅についての偏見」
について、不本意に思っていた。

絵本「三匹の子豚」では、木造とわらぶきの家は吹き飛ばされてしまい、レンガの家だけが残る。
(木造の家は怠け者の作る弱い家 by西洋人)

イギリスに来た頃通っていた英語学校のテキストには、
「レンガの家はコストがかかるけど頑丈である。木の家は安いけれど長持ちしません」
という、驚きの一文が載っていた。
(木造の家は貧乏人の安い家 by西洋人)

各地の気候や地形などの自然条件を無視し、レンガの家=最高と決め付ける、これぞ西洋至上主義。
無垢な5歳児達が洗脳される前に、真実を伝える良いチャンスだ。

「日本の伝統的な家は木でできています。なぜなら日本には地震があって、大きい地震が起きた場合、レンガの家ではとっても危ないからです…」(他の理由もあるだろうけどとりあえず)

ここぞとばかり熱弁をふるっていると、子供達が退屈したような顔になってきた。おかしいな。
ここで秘密兵器、ポケモンに登場してもらうことにする。

「という訳で、日本は遠いけれど、イギリスでも日本のものは身近にありまーす」

と、ポケモンの絵を見せた。
子供達の顔が急に輝く。

「ポーキモン!」
と今までおとなしかった子も叫びだす。

「ポーキモンだけじゃありません、じゃ~ん」

とパワーレンジャーを見せると、男の子たち大興奮。すでに戦いポーズをとっている子もいる。
ふっふっふ。まんまと手の内にはまったな。

「女の子の好きなものも持ってきたよ~」
最後にキティちゃんを見せると、
「Hello Kitty~」
女の子たちがとろけそうな顔を見せた。

きゃー、女の子って可愛いー。
普段息子や、息子の友達の野郎どもとばかりと接しているので、この女の子たちの反応に私が萌えた。

と、少し子供達の目を覚ました後に、
「こんにちは」をお辞儀の実演つきで教えたり、数を1から5まで教えた。

ちなみに数の数え方は、以前大人に教えた時に、
1(itchy=痒い)、2( knee=膝)、3( sun=太陽)、4( sheeh!=シー!)、5( go=行く)
と教えたら覚えやすかった。
今回もその方法で行こうかと前夜に息子の前で予行練習をすると、どうも彼が腑に落ちない顔をする。

「日本語を教えるのに、何で英語なの?itchyは英語だよ」

そうか、子供はへたな語呂合わせをしたらかえって混乱するかも。
そのままの音をストレートに受け止めてくれるだろうから、語呂合わせ作戦は無しにした。

子供達は「コニーチワ」ではなくて「こんにちは」と、1,2,3,4,5もスムーズに繰り返してくれた。
いい感じなので「6から10もやる~?」と聞くと、先生だけが大きな声で
“Ye-s!!”子供たちは流石に飽きてきたのか首をふっていた…。とほほ。

時間もいい頃だと思って、お開きにした。

次の日、同じクラスの子のお母さんに会うと、
「家で、日本の話をしていたわよ。数の数え方とか覚えていたわよ~」
と言ってもらえた。

後日先生と話した時も、朝の出席のとき、それぞれ好きな言語で「おはよう」を言うのだが、クラスの大半の子供がお辞儀つきで「コンニチハ」と言うとのこと。うれし~。

私自身の感想としては、子供達が質問をするときに必ず手を挙げるように言われているのが印象的だった。
イギリスで自分が何かのクラスに通ったときには、皆自由に発言していたので、手を挙げて指されなければ口を開いてはいけないのは「日本式」かと思っていたが、最近は変わったのだろうか。
それとも小学校の頃にそのように仕込まれても、年齢が上がるにつけてコントロール不可能になっていくのだろうか。
どなたか詳しい方がいたら教えてください。

私自身も気づかされる事が多く、新鮮な体験をさせてもらったし、今まで日本に興味のなかった息子もこれをきっかけに
「日本もそれほどBoringでもないのかも」
と前よりは興味をもってくれたような気がする。

それにしても、「言葉の通じない人々」と毎日接している先生は本当に大変な仕事だな~と実感。
低学年には低学年なりの、高学年には高学年なりの難しさがあると思うが、いつも笑顔で子供達と接している先生方に頭が下がる思いでした。


投稿者 lib : 10:49 AM | コメント (2)

July 22, 2008

5歳児に、「日本について語る」 その2

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息子の学校で「日本のことについて話す」日の前日、担任の先生と話した。

「明日はよろしくお願いします。ベーシックな事でいいので…。天気とか、何を食べているとか…」

ピカチュー以外にも何か話さなければ…とは思っていたが、何に絞るか決めかねていたので、先生が言っていた「天気」と「食生活」をそのまま採用。
他にネタはないかなと思い、近所の図書館に行くと、その名も“JAPAN”という小学生向きの本があった。
写真も豊富なので、これは良い小道具になりそうだ。
他に、日本の位置を説明するために、世界地図(こちらのものなのでイギリスが真ん中)も持ち込むことにした。

前夜、息子と夫を前に予行練習。
寿司好きの夫は、「日本人は生の魚を食べます」のところで目を輝かせていた。
予定通りの15分くらいで収まったが、夫に感想を聞くと、
「寿司のところが良かったな…」
と涎をたらしながら、まだ目を輝かせていた。
どうもチェックのしどころが、間違っているような気がする。

「たまに子供達にこっちから質問したらいいんじゃない?日本のことについて何か知ってる?とか。インタラクティブな方が飽きないし」
と言うので、
「へ~い」
と素直に助言を聞く。

当日の朝は、息子を学校に連れて行き、そのまま子供達と一緒に教室に入り出席をとった後に私の出番となった。

夫の助言通り、まず子供達に
「日本のことについて何か知ってる~?」
と聞いてみる。(インタラクティブ、インタラクティブ…)

子供達、シ~ン。

先生が、助け舟を出してくれた。
「日本のことについて、習ったでしょう?日本は遠いの?近いの?」

と子供達に聞くと、一斉に
「ファ~~~!!!」

なるほど、大人だって質問があまりにも漠然としていると答えにくいものな。
質問をするときは、Yes,Noで答えられたり、的をしぼった質問の方が良さそうだ。

「そう、遠いんだよ~。イギリスから飛行機でどのくらいかかるか知ってる?」

と「具体的に」聞くと、何人かの子供が手を挙げた。

その中で一番早く手を挙げ、自信満々だった男の子を指すと、

“テン……”

というので、おっ、10時間か、いい線いってると思っていると、

“ミニッツ…”

思わず、椅子から転げ落ちそうになった。君、間のとり方うますぎます。

そして世界地図で日本の位置を見せた。
イギリス中心の地図だと、日本は東の一番端っこにちょこんと浮かんでいる。
次に日本地図を見せて、東西南北に長い日本の天気などを説明。
地図をじっと見ていた男の子が手を挙げ
“Where do you live?”
と聞く。

私がまだ日本に住んでいて、毎朝息子をロンドンの学校まで送り届けていると勘違いしている節もあるが、とりあえず
「Tokyoに住んでいたのよ(本当は近県だけどTokyoと言っておくのがわかりやすい)」
と答えた。

すると、他の子が手を挙げた。その子を指すと
“Where do you live?”
と同じ事を聞かれた。

「Tokyo」
と答えると、今度はクラスの半分位の子が手を挙げた。

その中の一人を指す。またもや
「あなたはどこに住んでいるの?」

「ト、トーキョー……」

このままクラス全員一周するまで同じ質問に答えなければならないのかな、と思っていると、傍らで聞いていた先生が
「みんな、ちゃんと聞きなさい!トーキョーって言ってるでしょ!」
と怒っていた。

すると、他の子がめげずに
“Where do you work?”
と質問を変えて攻めてきた。

日本から息子をロンドンの小学校に送り届けた後、また日本に戻って仕事をしていると思われている節もあるが、とりあえず
「Tokyoで働いていたのよ」
と答えると、また他の子が手を挙げて
「あなたはどこで働いているの?」


……先生に怒られていた。

ああ、5歳児ってこんなもんなんだなあ。
他にも、こちらが何か聞いた後、自信満々で手を挙げる子がいるので指すと黙りこくってしまったり、ジャパニーズアクセント云々以前に、「ネイティブの言葉もよく通じない人々」なのだ。

ところどころで脱線してリハーサル通りにはいかないが、素でコントをやっているみたいで笑ってしまった。
でも先生は私に気を遣ってくれてか、
「もう質問はいいから、お話をきちんと聞きなさーい!」
と質問禁止令を出していた。

つづく

投稿者 lib : 11:28 PM | コメント (2)

July 09, 2008

5歳児に、「日本」について語る その1

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息子が学校から1枚のレターを持って帰ってきた。

普段の印刷されたレターと違って、表に私の名前が手書きで書いてある。
なんだろう?と思って開くと、中も手書きだった。

「今週、我が校では『日本』について学んでいます。そこで、お時間があったら学校に来て、子供達に日本について話をしてもらえませんか?短い時間で結構です、30分以下で。」

というような内容だった。

息子の学校では毎週テーマを決めて、それに沿って学年毎に学んでいるらしい。
それで今週は『日本』がテーマなのだとか。

ふ~む。
5歳児に「日本について話す」か…。
テーマが広すぎて、何を話していいのやら。
どっちにしろ30分なんて話せん。子供の集中力も私の記憶力も持たない。
それより何より、私でいいのか。
在英10年を迎えて、私の中にチャイニーズ文化とイギリス文化が入り混じり、「エセ日本人」的になってきているぞ。
その割りに、英語は相変わらず上達しない。私のバリバリのジャパニーズ・アクセントを5歳児が理解してくれるだろうか。

などとレターを手に考え込んでいると、夫が帰ってきた。
事情を話すと
「それはぜひ引き受けるべきだ。普段、お世話になっている学校に協力しなくては」
と言う。
私は普段から積極的に学校行事などに参加するタイプでもないし(多分日本にいても、そうだったと思う)、ご指名で頼まれた時くらいは協力するべきだろう、とは確かに思う。
それに、日本の事について学んでくれている、というのも嬉しかったりもする。
そうよねー、断る理由もないし…と背中を押された気持ちになり、引き受けることにした。

翌朝、学校に息子を連れて行ったついでに先生に了解の旨を話すと、彼女(手紙をくれた先生とは別の先生)は
「ありがとう。簡単な事でいいのよ。数の数え方とか…15分位でいいのよ。」
と言ってくれた。
一晩で30分が15分に短縮された。これはいい感じだ。

約束した日は2日後だ。
さて何を話そうかな。
やっぱり話を聞いているだけじゃ飽きるよな。
参加型ということで「折り紙」を折らせるとか…と一瞬思ったが、考えてみれば我が息子でさえ、折り紙なんて折ったことがない。
前に教えようとしたことがあったような気もするが、全く興味を持たれなかった。
泥沼化しそうなので、これは却下。

ステレオタイプの日本像(着物とか、寿司とか)を見せて話をしてもいいが、何かもっと、今の「ありのままの日本」を知ってほしいな。
だからと言って、秋葉原のメイド喫茶の写真を見せるわけにもいかん。先生をドン引きさせてどうする。


…やっぱり日本の誇る世界のアイドル、ポケモンかな…。

うちの息子を見ていればわかるが、15分も座らされ、未知の文化を押し付けがましく語られても、5歳児には苦痛なだけだ。
子供にも馴染みの深い「日本のもの」から入ってもらおうと思い、イギリスでも人気のあるポケモンの絵を見せて、興味を引く作戦にした。

インターネットで適当なピカチューの絵を見つけ、A4の紙にプリントアウト。
ピカチューだけでは寂しいので、やはり男の子に人気の「パワーレンジャー」、女の子受けするキャラも欲しいな、ということで「キティちゃん」も見つけダウンロード&印刷。(なんだかんだ言って私、やる気満々?)

ふっふっふ。これで子供達のハートはがっちり頂きだわ…。
(先生の意図するところから離れていっているような気もするが、トークの結果は次回で)

つづく


投稿者 lib : 04:01 PM | コメント (1)

July 02, 2008

スポーツジム その2

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以前から、たまにプールや、ピラーテスのクラスに単発では行っていたが、今回は友人が「効果てきめん」と言っていたエアロビクスのクラスに参加するのが第一の目的だった。
しかしエアロビの時間になかなか都合がつかなかったので、代わりに「Step(台)を使ったエアロビクス」とパンフレットに書いてあった、Stepというクラスに参加してみた。

インストラクターはドレッドヘアの黒人の兄ちゃんだ。
クラスが始まるやいなや、私のところに来て
「このクラスに参加するの初めて?」
と聞いてきた。
そうだと答えると、
「これは中級クラスだから…きついかもしれないけど、まあ様子を見ながらやろう」
と言われた。

しかしこれはなかなか楽しい。
ポップでファンキーな(もう少しましな表現はできないのか)音楽にのって、レゲエ兄ちゃんの動きを真似していると、10分過ぎた頃には汗がどっと噴き出してきた。
私は普段、あまり汗をかかない方だが、1時間のクラスが終わる頃には汗だく&すごい爽快感。
その日は一日中、体が軽くなったような気がした。

こんないいもん、なんで今までやらなかったんやろー。
(日本でもイギリスでも、スポーツクラブのメンバーになっていたことはあったが、当時は仕事をしていたこともあって時間に制約されるエクササイズクラスには殆ど参加しなかった。
それも週に一度泳ぎに行けばいい方で、しかも水泳よりジャグジーに漬かっている時間が長く、スポーツジムというより健康ランド状態だった。最後の方は月一回ペースになって退会、というお決まりのパターンだった)

この他に、ダンベルやバーベルを使うクラス(これはStepほど楽しくはないけど、わき腹や足の肉をとるのにはよさそうだ)や、プールで、週3~4日はスポーツクラブ通いをした。

これくらいのペースで運動をすると、運動しない日があると気持ちが悪くなってくる。
よく中毒のようにジムに通い詰める人がいるが、気持ちが少し分かるような気がした。
先週は夫が午後から仕事すれば良い日があったので、午前中テニス、午後は水泳のダブルセットなど、それまでの運動不足人生40年を覆すような日々となった。

で、3週間過ぎた。
体重はあまり変わっていないが、ぷるんぷるんの二の腕や、たるんでいた腹も、すこしは引き締まったような気がする(当社比)
貧乳、ずん胴の二重苦だったボディにも、ほのかに「くびれ」の様なものが…。(当社比)
「せっかく運動したんだから」と暴飲暴食もしないようになった。(当社比)

年をとればお肌も水分不足になるし、皺もシミもできる。それについては自然には逆らえないと思っている。
でも、体重(体型?)だけは唯一、努力すれば自分で管理できる部分なので、なんとか林真須美にならないように頑張ろう…!

ミック・ジャガーはしわしわだけどあんなにカッコいいじゃないか。(黒木瞳をめざすんじゃなかったのかよ)

ちなみに、ダンベルを使うクラスに、息子のナーサリーでよく見かけたお母さんも来ている。
いつもいるので、殆ど毎日来ているのだろう。
話した事はなかったが、背がとっても高く(180cm近くありそう)、筋肉質で、目立つ人なので覚えていた。
しかも顔立ちがはっきりしていて化粧も濃いので、実は初めて見た時、一瞬、「ドラッグクイーン???」と思ってしまったことを告白しよう。
(それだけ贅肉がなくて、引き締まってるって事ですが…具体的に言うと、エイミー・ワインハウス系の顔に、アンジェリーナ・ジョリーをもっとムキムキにした感じのボディ。)
やはりそれなりの人は、隠れた努力をそれなりにしているのだなあ…とドラッグクイーン、いや(心の)ママ友を熱く見つめながら、たるんだ二の腕をぷるぷるさせつつバーベルを持ち上げる私であった。

ジム友もできたし(勝手にジム友にしているが)頑張って、会費の元をとるぞ~。
(実はこれが一番の原動力であるような気もする)


投稿者 lib : 04:09 PM | コメント (0)

June 24, 2008

スポーツジム

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去年の暮れから訳あって、数ヶ月間忙しかったが、5月の半ばで一段落ついた。

息子の夏休みが始まるまで、約2ヶ月ある。
息子は学校の後、アフタースクールに毎日通っているので、9時前に家を出てから6時過ぎまで家に戻ってこない。5歳ですでにサラリーマン並みの生活である。
よって私は息子を学校に送っていった後は、6時まで自由時間になる。
この貴重な2ヶ月間をどうやって過ごそうか…と考え、「スポーツオタク」になることに決めた。

40を過ぎ、中年体型になる恐怖と日々向き合っている今日この頃である。
イギリスで暮らしていると、周りの方々がナンなので、ついつい、自分は「細い」と勘違いしてしまう環境もいけない。
先日、何も考えずにそこいらにあった服を気、何気なく鏡を見て、鏡に映った自分を見て驚愕した。
「私って、林真須美みたい…」(日本にしばらく帰っていないため、例えが数年前に世の中を騒がせた人物になっております。ご了承ください)
コーディネートの問題もあるが、その時の私は、たぷっとしたチュニックに、バギーパンツを合わせていた。
何も考えていなかったとはいえ、あんまりだ。
「上にボリュームのあるトップスを着たら、下は細めのジーンズやレギングで引き締めて、逆にバギーパンツなどボトムスがたっぷりしている場合には、ピタTシャツなどで上はすっきりと、引き算の法則よ」(byピーコ)
という、基本中の基本さえ忘れていた。
今まで、漠然と「おばさん臭い」と認識していたファッションだったが、林真須美ルックは、上も下もタップリした服を着たときに完成するのだということを偶然にも論理的に悟り、目からうろこが落ちた。(それほどのもんでもありませんが)

悟っている場合ではない。
いくら上下ダブダブでも、10代や20代の女の子が着れば、林真須美にはならないだろう。
アウターの重要さもさることながら、やはりその下にたるんだ皮下脂肪があってこそ、林真須美は完成するのだ。
ああ、本当は黒木瞳系の、素敵な中年に憧れていたのに(顔もスタイルも違いますが。まあイメージってことで)。
現実は厳しい。私はこのまま林真須美系へと、ごろごろと坂をころげおちてしまうのか。

前置きが長くなったが、そんな時、日本の友達が
「スポーツジムに入会して週5日エアロビに通ったら、ダイエットに成功した」と言う。

その言葉にも触発され、さっそく地元のスポーツジムの会員になり、2ヶ月間運動漬けになることにした。

つづく

投稿者 lib : 02:00 PM | コメント (0)

June 11, 2008

地下室に続く謎のドア 

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今、うちでは玄関先の工事をしている。

イギリスにお住まいの方にはお馴染みだと思うが、こっちの家は、門から敷地に入り、階段を上った所にドアがある家が多い。(3~4Floor ある、比較的古い建物の場合)
なぜ地面と同じレベルに玄関を作らないかと言うと、Basementという半地下の階があるので、Basementの天井(つまりGround Floor-日本で言う一階の床)の地点まで階段を上り、Ground Floorから家の中に入る仕組みだから(だと思う)。

という訳で、Basementの部屋に住んでいる人は、半分地中で暮らしていることになる。
なぜ、シンプルに地上に建物を建てず、こんな複雑な構造にしたのかはよく分かりません。(ご存知の方は教えてください)
ちなみに家は4階建てで、下の2Floors(Ground floor とBasement)には他の家族が住み、私達はその上の階に住んでいる。
下に住んでいる家族は引越しして出て行き、今現在は空き家となっている。

何はともあれ玄関の話に戻すと、門から階段までの3メートル位の通路(ドライブウエイというのか?)と階段がひび割れてきて危ないので、表面のコンクリートを外して新しく作り直しているのだ。

工事の人は、階段を少しずつ壊していって、今は階段の姿は残っているが、側面に穴の開いた形になっている。
(説明するの難しいですねー)
で、毎日の様に昇り降りしていた階段の「中身」をその側面から初めてのぞいた。

階段の「中」ってどうなってると思います?

中は空洞で、鉄の支柱でドアの前の踊り場(というのか?)を支えてあった。
「へえー、中は空洞だったんだ」
素人には小さな発見だった。

先日、近所のニッキーが遊びに来ていた時、家の中で遊ぶのにも飽きて、玄関先で息子と二人、遊び始めた。

職人さん達は帰った後だったが、「工事現場」は子供達にとってはとっても面白く発見の多い遊び場だ。
「危ないかな…」とは思いつつ、二人で喜んで遊んでいるので、そのままにさせておいた。

するとしばらくしてから、ニッキーが興奮した様に家の中に入っていて、

「ねえ!階段の下に、Trap Door があるよ!」

と報告しに来た。

「Ah?Trap door? そんなもん、ある訳ないじゃん」

と相手にしなかったが、あまりにニッキーが本当だ本当だとうるさいので、私も外に見に行った。

膝を曲げて、側面の穴から中を見ると…
確かに、ある。
てっきりただの空洞だと思っていた階段の「中」に、Basementの部屋から続くと思われる「ドア」がある。
しかも、割と新しそうである。

一瞬血の気が引いて、先月オーストリアで発見された「実娘監禁事件」を思い出した。

「ほ…ほんとにあるよ…」
「僕達の言ったこと、うそじゃないだろ?」

ニッキーと息子と私、3人通りに向かってお尻を突き出す形で、穴から内部のドアを観察していると、夫が仕事から帰ってきた。

「3人で何してるの?」

「お、おかえりなさい。この中にね、地下から続くドアがあるのよ…(顔面蒼白)」
「ええ?ちょっと見せて」

夫もお尻を突き出して、中を見る。

「確かに、あるな…」

「ね?あるでしょ?そういえば、下からなんか臭い匂いが漂ってきたことあったよね…(顔面さらに蒼白)」

「しかし、これは物置として使うのでは?」

「はい?」

というわけで、「監禁部屋疑惑」は夫の一言により、あっけなく払拭された。

「なんだーニッキー、驚かさないでよねー」

とやんややんやと家に入ったが、また数分すると、ニッキーが家に上がってきて、

「脇の小窓から、Dead Bodyが見えたよ!中にDead Bodyがあるよ!」

と報告しに来た。

「事件」でなくてがっかりしたのは分かるけど、人の家(性格には階下の家)を勝手に「監禁部屋」にしないでよね。

とりあえず、

「あの家の地下にはTrap doorがあって、中にDead Bodyがあるのを見たよ」

とか近所で言いふらさないでよね…と硬く口止め…いや、注意し、ニッキーを家に返した。

もし「北ロンドンのある家の地下に、監禁部屋に続くドアがあり、中では実の娘とその子供達を監禁している鬼畜夫婦がいる…だが妻はその事実を知らないと言い張っている」

とか尾ひれがついて噂が周っていたら、それ、嘘ですから。信用しないでくださいね。


投稿者 lib : 12:55 PM | コメント (0)

June 03, 2008

「セックス・アンド・ザ・シティ」

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映画「セックス・アンド・ザ・シティ」の全米興行ランキングが、「インディ・ジョーンズ」を抜いて第一位になったそうだ。

「セックス・アンド・ザ・シティ」のTVドラマの人気があるのは知っていた。
でも、私は一度も見たことがない。

だって……、サラ・ジェシカ・パーカーの顔がどーしても、どーしても、好きになれないんですう!

イギリス人にも‘Horse-faced’(馬ヅラ)とか言われているが、私はどうしても渋谷駅待ち合わせ場所に鎮座していた(今でもあるのか?)「モアイ像」を思い出してしまう。
庶民としては、やはりスクリーンやブラウン管の中では、「美しい女優」を見て、非日常の世界を感じたい。 (まあこれは主観的な問題ではありますが)
この手のごっつい顔を、どうも鑑賞する気になれないのだ。

「登場人物が身にまとう華やかなファッションや靴も見所のひとつ」
であるらしいが、40過ぎてミニスカートを履き、NYの街中で白昼堂々、ロイヤル・アスコットみたいな帽子を被って張り切っている姿は、どうしても「痛いおばさん」としか私の目に写らない。(それとも「馬」にかけたのか?)
何でも、サラ以外の3人の中の誰かは50歳を過ぎているそうで、まあそれはそれとして、お見事ではありますが。(誰なのかわからないけど)

という訳で、ドラマや映画のパブリシティがいくら氾濫しようとも、見て見ぬフリをしてきた私だが、「インディ・ジョーンズ」を抜くほどの人気だったととは知らなんだ。
(どうも興行的に、「セックス…」と「インディー…」の一騎打ちのような話になっているらしい。「中年女」と「初老男」の戦いか。私なら、中年女がHの話ばかりする映画よりも、初老男が体に鞭打って演ずる、夢と冒険の物語を観たいなあ)

「セックス・アンド・ザ・シティ」がターゲットとする観客は、25歳以上の女性だそうである。
私はターゲットに当てはまるばかりでなく、登場人物と同世代でもある。

世の女性にこれ程までに支持されている「セックス・アンド・ザ・シティ」。
その魅力が分からず、単なる「チンドンヤ四人衆」としか写らない私の目は、女として失格なのか。
それとも、
「どうせ外反母趾の私の足にはあんな靴は履けないしぃ、あんなドレス着ていく場所もないしぃ…」
と現実から目を背けているだけなのか。
もしくは、
「彼女たちの着てる服のセンスがちっとも良いと思わない」
と思う事自体、私自身がファッション音痴の「おばさん」になってしまった証か。

少し心配になって、夫に
「ねえ、ゴツ美…いや、サラ・ジェシカ・パーカーって可愛いと思う?」
と聞くと、
「馬ヅラだと思う」
と、典型的な男性視聴者の答えが返ってきたので、その人気の秘密に迫ることはできなかった。

という訳で、「セックス・アンド・ザ・シティ」ファンの方がいたら、その魅力をぜひ教えて下さい。

投稿者 lib : 03:10 PM | コメント (4)

May 29, 2008

また、やられた その2

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※子供のハーフターム中につき、更新が遅れてすみません。


先日、近所のプールに泳ぎに行くと奇遇にも、マダムココとダーリンに遭遇した。
プールの隅で水につかりながら3人、しばらく立ち話(?)をしたが、そのうち私の「盗まれた楓」の話になった。

マダムとダーリンの話によると、「植木泥棒」の被害にあった話はよく聞くとか。
「鉢植えならまだしも、掘ってまで持っていくなんて…」
と憤慨していた私だったが、どうも、この国ではよくあることらしい。

そういえば、盗まれた当日、夫が
「これは植物に詳しい者の犯行だな…。なぜなら、BONSAI TREE (夫は楓をこう呼んでいた)の値段が高い事を分かっているのだから… 」

と探偵にでもなったかの様な推理をしていた。

普段はモノに執着しない夫が、流石に今回は気の毒だと思ったらしく私を慰めるつもりで出た言葉だっただろうが、盗まれたショックと怒りの収まらない私は、

「植物に詳しい者の犯行って、犯人はロイヤル・アカデミー・オブ・プラント(注・そんなものありません)の卒業生だとでも言うの!?植物の値段なんて、そこらへんのガーデンセンターに行けば一目瞭然よ!!」

と夫の説を一蹴した。

しかしマダムココとダーリンの話を聞いた後、改めて考えると、確かに「植物『専門』の泥棒」が存在するのかもしれない。
盗んだ植木を道端で売るわけにはいかないが、どこかに植木を買ってくれる場所があって、各地から集まった戦利品を、一括して卸す「闇の流通経路」があるのかも知れない。

盗む植物は当然、市場で「商品」として通用する品でなくてはならない。
「植物に詳しい者の犯行」というのも、あながち間違っていないかも。

ということは、私の楓は小さいながらも

プロの目に選ばれた一品

ということになる。

盗まれた当日、他の家も被害にあっていないか、念のため近所の家の前庭を一軒一軒チェックして回ったが、(私の行動の方がよっぽど怪しいという説もあり)、穴の開いている場所は見つからなかった。

隣のフィオナ邸も、お向かいのガーデニングが趣味の退職夫婦の庭も無傷である。

ということは、去年に引き続き、私の植物が近所の

プラント・オブ・ザ・イヤー」(選考委員:植物専門ドロ)

に輝いたってことか?

連続二冠ということで、「自分を褒めてやりたい」気持ちになった。

まあ考えてみれば、犯罪の被害の中でも、植物泥棒は最も軽くて笑い話にできる位の事だし、これで厄払いをしたと思えばいいか。

(あまりにも前庭が荒れ果てているので、単に「空き家」だと思われたのでは、という心の声は封印しておきます。)

投稿者 lib : 01:07 PM | コメント (1)

May 20, 2008

また、やられた

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先日の朝、玄関を出て前庭を見ると、直径40センチ程の穴が掘られているのが目に入った。

(あれ?何だろう、この穴……)

今まで、こんな穴はなかった。
5秒ほど考えて、気がついた。

無い!無い!
その場所に植わっていたはずの、「楓」の植木がない!!!

最近、イギリスでも日本の赤い葉をつける楓が人気で、ガーデンセンターでは”Japanese Maple”とか “Acer”とかいう名で売られている。
「指」の部分が細くて長い、繊細な葉が美しい。
割と高い値段が付けられているが、見るたびにノスタルジックな気持ちになるので、昨年、小さな苗木を買ってみた。

前庭の、空いている部分に植えた。
(一応、植物によって適している土だとか日当たりだとかがあるらしいが、私はそんな細かい事を気にする性格ではないので、ただ単に『空いている』場所に植える。はたして育つかどうか、ギャンブルの様なものである。)

こんな大雑把な植え方でも、一応、新しい場所で、植物が落ち着くかどうかは気になる。
「この場所は気に入った?ハッピーかい?」
と人目を盗んで楓に話しかけたりもしつつ、(近所の人に見られたら、とうとうホームシックで頭がおかしくなったと思われるので要注意である)苗木の新生活を気にかけていた。

そのうち冬が来て、赤い葉が全部落ちて、枝だけになった。
枯れてしまったのか、寒いから単に落葉しただけなのか、素人目にはよく分からない。
長い長い冬の間、じっと固まったように前庭の隅にぽつんと植わっていた。

少し暖かくなってきた頃。
一冬越した楓を見ると、枝の間から、小さな赤い芽が吹き出していた。
「おおっ生きていたか」
小さな芽はどんどん広がり、あっという間にまた綺麗な赤い葉をふさふさとつけた。
「新しい住処を気に入ってくれたみたいだな」
まだ小さいが、去年よりは一回り大きくなったような気もする。
家に出入りする度に、楓の姿を見るのが楽しみになっていたところだった。

そういえば、去年の今頃も、「丹精こめて育てた…という訳でもないが、それなりに愛着のあった鉢植え」(手のかけかたが微妙)を2鉢、玄関の前から盗まれた。

盗まれた時の気分が悪いので、それ以来、玄関に鉢植えは置いていないが、まさか土に直接植えてある植物を掘ってまで持ってかれるとは思わなかった。

恐るべしイギリスの泥棒。何でも持って行きます。
それはそうと、私の楓ちゃんは、新しい場所できちんと根付く事ができるんだろうか。

つづく

投稿者 lib : 01:18 PM | コメント (2)

May 06, 2008

男のプライド 2

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親が知らないうちに、5歳の息子にも「男の小さなプライド」の様なものが芽生え始めているようである。

息子と友達を遊びに連れて行った帰り、車の中で2人でTVの話などをしていた。
運転しながら後ろの話を何気なく聞いていると、始めはパワーレンジャーの話で盛り上がっていたが、その内友達が
「Little Britainて観たことある?超クールだぜ」
みたいなことを言っている。

息子は
「うん、知ってるよ」
と答えている。

あれ、Little Britainなんか観たことないと思うけどな…と思いつつ、黙って聞いていると
「家で、マム(友達の前ではマミーじゃなくて、マムと呼ぶ、これもプライド?)がいない時に見たんだ。本当だよ」
と、運転席の私を意識して、アリバイ作りまでしている。

この友達は息子と同じ年だが、お兄ちゃんがいるのでちょっと早熟だ。
たかがTV番組でも
「知らない」
というのは子供ながらに男のプライドが許さないのかな、とこれまた笑えた。

そういえば、自分の周りの人を考えると、知らないことを素直に「知らない」と言えるのは、女性の方が多いような気がする。

例えば私の夫と一緒に歩くと、初めての場所に行く時もどんどん歩いていくので
「あ、道を知っているんだな」
と思ってついて行くも、しばらくたったところで
「道に迷った」
と言い出すことがある。

車を運転している時も同様で、自信ありげに運転しているのですっかり安心していると、突然
「道に迷った」
と宣告される。
気づいたときにはもう遅い、Middle of nowhereから帰り道を探すのが大変である。

道が分からないなら「どっちだと思う?」と聞くなり、ナビゲーターを頼むなりしてくれた方がかえって助かるのだが、どうも「わからない」というのが言えないらしい。
これはいったい何なんだろう、と思っていたが、やっぱり男のプライドか。
「わからない」=「相手に弱みを見せることになる」と本能的に思うのかも。
戦国時代じゃないんだから、「わからない」と素直に言った方が物事が合理的に進むのに、と思うのは女の発想なのだろうか。

ロンドンに来たばかりの頃、街で人に道を聞くと、自信満々で教えてくれるのでその通りに歩いていくと、全く違う方向だった事が良くあった。
これも男性に聞いたときによく起こったような気がするが、知らないなら「知らない」と言ってくれた方がよっぽど親切なんですけどね。

ちなみに夫に、
「道が分からないとき、どうして素直に『分からない』と言わないの?」
と聞いてみると、
「どうしてなんだろう。分からない…」
とこれは素直に悩んでいた。

投稿者 lib : 09:14 AM | コメント (0)

April 28, 2008

男のプライド 1

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近所に住むニッキーは、息子より2才年上の男の子だ。
学校が休みの日は、いつも暇そうに家の前でぶらぶらしている。

彼のぶらぶらテリトリーがだんだん拡大して、最近は徒歩5分ほどの我が家にまで一人で来るようになった。
(ニッキーは7才。一応、11歳以下は一人で外出してはいけないことになっているが、まあこの位の年齢になれば気にしない親子もいるのだろう)

イギリス人は「アポ無しで人の家に来るなんて、ありえない」人種だが、やはり子供は
「あ~そ~ぼ」
と気軽に遊びに来るのだな。物騒なロンドンでも牧歌的な気持ちになる。
一人っ子の息子も遊び相手が来ると大喜びで、ふたり仲良く遊んでいる。
(ただし、日本の様に子供だけで外で…と言うわけにはいかないので、大抵家の中で遊ぶことになる)

でも、いつでも突然の来訪なので、こちらの都合が悪いこともある。
先日、息子の友達のバースデーパーティーにさあ出かけよう、というところで
「ピンポーン」
とニッキーがやってきた。
「ごめんね、今からパーティーに行くから…」
と言うと、この世の終わりの様な顔をされてしまい(実話)なんだか気の毒になってしまった。
会場を借り切ってのパーティーだったし、お母さんとも仲が良かったので、まあ一人増えても変わらないか、と一緒に連れて行ったこともあった。
(Invite myself ってやつですな。イギリスのオキテ、無視しまくりのニッキーと私である。)

この春休みの間、息子は毎日ホリデークラブ(いつも行っているアフタースクールクラブが終日面倒を見てくれる)に通っていた。
ある日、私が外の用事から戻ってくると、我が家の前でニッキーが待っていた。

どれくらいここで立っていたのだろう。
息子を待っていたのは火を見るより明らかだが、私が一人で戻ってきたのでお目当ての息子はどこかに行っていると瞬間的に察したのだろう、
「僕、今から友達の家に行くところなんだ」
と私に言う。

「そうなんだ、いいねえ~」
などと私も合わせると
「でも…明日なら○○(息子の名前)と遊べるかな…」
と言う。

「ごめんね、明日もホリデークラブに行くのよ」
と私が言い終わるか言い終わらない内に、
「ああ、忘れていたけど明日も友達と遊ぶ約束しているんだった。ん~、多分週末なら遊んであげられると思うよ」
と言い去っていった。

息子が不在だった気まずさに加え、毎日スケジュールが真っ白みたいに思われるのは7歳児でもプライドが傷つくんだろうか。
面白いなと思っていると、最近、息子にも同じような言動が見られるようになった。

つづく

投稿者 lib : 10:19 PM | コメント (2)

April 08, 2008

新学説発見

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先日、新聞を読んでいたら
「男の子の母親は、女の子のみを産んだ母親よりも男性ホルモンが多い」
という研究結果が発表されたという。
異性である男の子を育てるのは、どの母親にとっても多少のカルチャーショックを伴うが、性格が男性的な母親の方が男の子を育てるのに適しているので、そのようにプログラムされているのでは、というような話だった。

・・・・・・・

私は「男の子の母親」である。

「こんなに女らしい(そりゃ貧乳ではあるけど)アタクシに、『男性ホルモン』が多い?なんて失礼な…」

と一瞬憮然としたが、よく考えれば、貧乳であることが女性ホルモンの欠如を語る何よりの証拠であるような気もする。

そんな事はどうでもよいのだが、とりあえず、
「あなたは男の子を育てるためにプログラムされた母親である」
と言われれば、何となくそんな気がしてくるから不思議だ。(流されやすいだけか?)

「カルチャーショックが少ない」という事に関して言えば、確かに私には二つ年上の兄がいる。
物心ついた頃から、小学生くらいの男子がどんなにおバカか、どうでもいいような下らないことにどんなに情熱を注ぐか、ということを自然に目撃しつつ育ってきた。
親戚の家に遊びに行ったとき、あまりに兄が走り回ってうるさいので、伯父に縁側の柱に縛り付けられてしまった事がある。
これで静かになる…と思いきや、逆効果だった。
かえって喜んで、ますますエキサイトする兄を見て、墓穴を掘ってしまっただけの伯父を、幼心に気の毒に思ったものである。

子供の頃の兄の影響は強く、私は小学生の頃は「マーガレット」よりも兄の「少年ジャンプ」を、高校生になれば「セブンティーン」よりも兄の「ホットドックプレス」を愛読していた少女であった。
「ホットドックプレス」で勉強して得た知識のお陰で、息子が思春期になってからの体と心のケアもばっちり(な筈)である。

そう考えると、男兄弟がいたことが、知らず知らずのうちに男の子を育てるのに役立っているのかもしれない。

ここでひとつの仮説が浮かんだ。

A. 自分に男の兄弟がいる母親 → 男の子を産む確率が高い。
B. 姉妹のみがいる、もしくは一人っ子の母親 → 女の子のみを産む確率が高い。

(男の子も女の子も産んだ母親は、Aに属します。 母親自身に兄弟も姉妹もいる場合も、A。)

ロンドンのママ友や日本の友達のことを考えると、なんと一人を除いて全てこの法則に当てはまった。

しかし、なにぶん私の狭い交友関係の中のみのサンプリングなので説得力に欠ける。

皆さんや、周りの方はどうですか?この法則に当てはまりますか?
サンプル数が集まり合致率が85%を超えたら、学会に発表しようと思います。(うそです)

何はともあれ、今日も息子は彼の中の「マイブーム」の
「ウィリー・ボトムダンス」
を披露してくれた。
(私がソファに座ってTVを観ていると、おもむろに私の前に立ち、「ウィリー・ボトム、ウィリー・ボトム」と歌いながらズボンをずり下げ、腰を振って踊りだす。座っている私の顔の位置と、立っている息子のお尻の位置がちょうど一緒なので、代わる代わる彼のお尻とお○ん○んを目前で鑑賞しなければならない仕掛けである)

「おバカな男児」を生まれた時から見ている私は、こんな5歳男児の行動にも…決して……動じない。


……だけど…うちの兄は…ここまでバカじゃなかった様な気がする…という事実は、あえて考えないことにしている。


投稿者 lib : 11:11 PM | コメント (2)

April 01, 2008

ジャンクフードの甘く危険な香り 2

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子供は誰でもそうかもしれないが、息子も御多分にもれず、ジャンクフード大好きである。
なるべくジャンクフードを与えないようにはしているが、以前、私が風邪をひいて買い物に行けなかった時に、禁断の、秘蔵ラーメンをあげてしまったことがある。
うすらぼけた味の母の手料理に慣れていた息子は生まれて初めて出会った味に目を輝かせ、すごい勢いで平らげていた(涙)。

先々週のイースターの初日、日本食料品店に行くと、息子がインスタントラーメンのパッケージを見つけた。
「マミー、これ…欲しいな…」
見ると、半額お得セールである。
「そうね~。じゃあ、少しだけね~」
と言いつつ、
「息子が学校に行っている間に、また矢野顕子が来るかもしれないしな…備えあれば憂いなし」
と夫の目を気にしながら、すばやく数袋、かごの中に投入した。
その上を納豆でカバーし夫からの視線を遮断する。

家に帰ってから日本食料品店で買ったお刺身で遅めの昼食をとった後、夫と息子は外に遊びに出かけた。

夕方になり、少しお腹がすいた。
私の頭の中では、先ほどから矢野顕子が歌いまくっている。
家にひとり…。オーガニック信者の夫も息子もいなく、絶好のチャンスである。
インスタントラーメンを調理し、幸せな気分で「パンチの効いた味」を堪能した。
ラーメンのパッケージも破棄し、鍋や食器を洗い、証拠隠滅も完璧だ。
夫には、やはり先ほど購入した「おから」と野菜を煮て、「ヘルシーな一品」を作った。

夫と息子が帰宅すると、夫は
「お昼が遅かったから、あんまりお腹すいてないな」
と言う。

「そう思ったから、おから作っておいたよ。」

「う~ん、もっと軽いものでいいな…」

「軽いもの?なんかあったかな。」

すると夫は言いにくそうに、
「あのさ、君、さっき、インスタントラーメン買ってたよね…」


……あんたも食べたかったんかい!


息子ももちろん、滅多に食べられない「ごちそう」インスタントラーメンへの期待で目が輝いている。
(言っときますが、珍しいご当地ラーメンとかじゃなく、単なる出○一丁みそ味)
というわけで、その夕食は家族3人、インスタントラーメンのパンチの効いた味に舌鼓を打った。

…この夜、家族3人(息子は強制的に参加させられてるだけだが)の中で、「プチン」と音を立てて何かが弾けた。

「オーガニック教」のしがらみを振り切ったように、次の日もお昼はケンタッキーフライドチキン、夜はピザ、と3人でジャンク生活を楽しんだ。
勢いは留まるところを知らず、スーパーでクリスプの大袋を購入し仲良くシェア、翌日はバーガーキングで昼食をとった。
そしてとどめは近所の「ガストロパブ」ではないパブで、定番メニュー冷凍ラザニアの夕食だ。

私は「まあ、イースターだもん、いいよね~」
と自分に言い聞かせつつ、息子にもジャンクフードを解禁。
息子はいつもは食べさせてもらえないクリスプやハンバーガーのお許しが次々と出て、盆と正月が一緒に来たような喜びようだった。
家族3人、「ジャンクファミリー」となり果て(ジャンク‘フード’って意味ですよ)、イースターは終わった。

このままジャンクフードの甘い罠にはまってしまうのだろうか。
一年後の私達の姿を想像した。
スーパーで、トローリー一杯に炭酸飲料やクリスプや冷凍食品を買い込み、「あーはなりたくないよね~」とスリムな人々に指差され笑われる、横3倍増幅のデブデブ一家に成り果てた私達…。
一家の行く末を心配したが、ジャンク生活を謳歌したイースターが終わったら、なぜかまた「間の抜けた味」の私の料理が恋しくなった。

次のジャンク生活は、クリスマスかな。

投稿者 lib : 12:34 PM | コメント (3)

March 26, 2008

ジャンクフードの甘く危険な香り 1

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私の夫は「オーガニック信者」である。

私は元々、それほど気にしない方ではあったが(普段の食生活にお金をかけるくらいなら、洋服を買ったりホリデーにお金を回したい)、やはり一緒に暮らしていれば夫の教義に知らず知らずのうちに洗脳されてくる。

加えて、5年前に子供が生まれた事と、昨今の食品の安全性が信用できない風潮も重なって、我が家のオーガニック嗜好に拍車がかかった。
ちなみに最近、日本で中国産食品の危険性が重ね重ね報道されているが、実は我が家では何年も前から、
「中国産の食べ物は買うな」
と夫からのお達しにより、中国製品は締め出されていた。
自分が中国人なのに、中国産の食べ物が信用できないというのも悲しい話だが、身内だからこそ分かるということもあるのかもしれない。
中国製品締め出し政策は調味料まで及び、我が家の豆板醤はリ●ンキではなく、キッコーマン製である。オイスターソースもキッコーマン製である。日中逆転現象が起こっているといっても過言ではない(何のこっちゃ)

しかし、やはりオーガニック食品は高い。
毎日のこととなると、それなりの出費となり家計に響く。
というわけで、私が買い物するときは、オーガニック以外の肉や野菜も適当に織り交ぜて購入する。
夫が帰宅する前に料理をすませ、「オーガニック」の文字の見えないパッケージはゴミ箱に放り込んで証拠隠滅を図ることも忘れない。

化学調味料も極力使わないようにしている。
…こんな風に書くと、なんだかとってもヘルシー嗜好の奥様のようだが、実は夫にも息子にも言えない秘密がある。
たまにむしょ~に「インスタントラーメン」が食べたくなるのだ。

化学調味料の味が嫌いなのは嘘ではないが、たまに、その化学調味料の味にまみれたラーメンがとても恋しくなり、
「ラーメン食~べたい、今すぐ食~べたい」
と矢野顕子の歌が頭の中をぐるぐるまわり、一秒も待てないほどの、狂おしいほどのラーメンへの恋慕で心が一杯になる。
(私はこれを『矢野顕子現象』と名づけている)

息子がもっと小さかった頃は彼の手前我慢していたが、最近は息子が学校に行っている間に矢野顕子が現れると、ひっそりと禁断の果実(麺だけど)を味わっている。
オーガニックに洗脳され、塩分控えめで化学調味料も使わない、うすらぼけた様な味の料理(自覚あり)に慣れた舌には、「インスタントラーメン」のパンチの効いた味は鮮烈だ。

夫にも息子にも秘密の、白昼の密かな楽しみである。
ああ、人に隠れて何かをするってどうしてこんなに楽しいのだろう。
若い頃、親に隠れてした○○なことや●●なことを思い出す…。(遠い目)


だからどうした?って感じでもありますが、
つづく

投稿者 lib : 12:26 PM | コメント (2)

March 18, 2008

ゴールド・ディガー

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ポール・マッカートニーと元妻ヘザー・ミルズの離婚調停に決着が着いた。
ポールからヘザーに2430万ポンド(約47億3000万円)を支払うことで同意したという。
ヘザーが提示していた金額は1億2500万ポンドだったから、約5分の1に大幅値引きだが、なぜかヘザーも今回は「ハッピーよ」と合意したという。

一人娘のベアトリスちゃんへの養育費は年3万5000ポンド。これも予想よりかなり少ない。
今年の9月から小学校に上がるべアトリスちゃん、私立の学費が平均1万ポンドだから、これだけで約3分の1が飛んでいってしまうな、パチパチ。(そろばんを弾く音)

ヘザーもポールも、離婚した当初から「ヘザーはポールのお金目当てで結婚した訳ではない」と主張しているので、他人が金額についてどうこう言う問題ではないでしょう。(と言いながら思いっきりどうこう言ってますが)
そう、ヘザーはポールのお金目当てで結婚したわけではないのです。
年齢が25歳も離れていようと…。
そして「二人の結婚生活を出版やテレビ出演によって口外する権利」にあれだけ固執しようと…。
だって本人がそう言っているのだから…。

なので、ヘザーには全く関係ない話ではありますが、先日、新聞に
「ゴールド・ディガー(お金目当ての女)に捕まらない方法」
というのが載っていた。

なぜか記事の横には裁判所へ向かうヘザーの写真が添えられていた。
「写真は本文とは関係ありません」
と注釈を付けてあげたくなった。
だって、ヘザー本人がお金目当てではないと言っているのだから…。

それはそうとして、その「ゴールド・ディガーの見分け方」
を読むと、

1. 初めてのデートでレストランの支払いの時、自分も払う仕草をするかをチェックせよ
2. まだ付き合って間もないのに、洋服や宝石などをおねだりしてきたら要注意
3. あなた自身や両親の資産をさりげなく聞いてきたら、かなりゴールド・ディガーの要素あり

などなど、「資産家の男性読者の皆さん」に近づいてくる女のチェック事項が事細かに書かれている。 

あの……、これって、わざわざ記事にする様なことか?
そのまんますぎるんですけど…。
大体、プロの(?)ゴールド・ディガーの皆さんはもっと巧妙に男性に近づくんじゃなかろうか。ヘザーがポールにしたように……(おっと失礼、ヘザーはお金目当てでポールに近づいたんじゃなかった、だって本人がそう言ってますから。)

その記事の最後には、
「上記の様な、ゴールド・ディガー撃退法をマンツーマンで指導してくれる、資産家のあなたに最適なクラスがあります。魅力的な女性が1日あなたと模擬デートをして、状況別に個別サポート。ポールの二の舞を踏む前に、女性を見る目を養って、本当の愛に満ちた結婚をしましょう!(そしてあなたの財産を守りましょう!)料金はお手頃な475ポンド!(プラス実費)」

一日475ポンド(プラス実費)…あの……これって……。この会社が「ゴールド・ディガー」なのでは?
それとも「資産家の男性読者の皆さん」にとっては、自身の資産を守るためなら、475ポンド(プラス実費)の出費など屁のようなものなのだろうか。
貧乏人にはよく分からない世界だが、こんな講座に、ほいほい出かける時点で「ゴールド・ディガーの餌食候補」の要素満点なような気がする。
講座が終わるや否や、
「おめでとうございます!これがグレード1の修了証書です。更なる飛躍を目指して、グレード2の講座の予約を今すぐに!あ、更にパワーアップした講座内容となっておりますが、受講料はたったの800ポンドです!」
さらに、どこからか登場した「関係会社」の面々に、
「ぜひお勧めしたい株があります。まあここにお座りになって…」
「イタリーに良い別荘地が…」
と、一日が終わる頃には身ぐるみ剥がされ会場を去る「資産家の男性読者」の姿が目に浮かぶ。

そしてしつこい様だけど、ヘザーはゴールド・ディガーじゃないんだってば、だって本人がそう言ってますから…。

投稿者 lib : 11:28 AM | コメント (5)

March 11, 2008

マザーズ・ディ

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先週の日曜日(3月2日)はイギリスの「母の日」だった。

その前の週、学校から戻った息子は、私の顔を見るなり
「来週の日曜日は母の日だよ、知ってる?」
と聞いてきた。

そして息子は、
「ヒヒヒ……」
と企んだような顔つきをして、傍にいた夫に耳打ちした。

「母の日のために、学校でプレゼントを作っているんだ、でもマミーには言っちゃだめだよ・・・」

……あの、全部筒抜けなんですけど…。

言い終わると、こちらを向いて、ニカーっと笑い、再び夫に

「あのね、カードとバスケットを作っているんだ……。でもマミーには言っちゃだめだよ…」

……3メートル先まで聞こえそうな声で「内緒話」をしている。

どうやら、人の耳の側で話せば、どんな大音量で話しても音は全て耳に吸収される仕組みだと思っているらしい。

こちらを見て、ニヤニヤしているので、なんか言わないといけないかなと思い、

「何話してたの~?マミーも聞きたいな~」

などと、わざとらしく息子に聞いてみると、

「I’m not telling you~♪ Because Mrs ○○(担任の先生の名前) told not to tell Mummy~♪ 」

君……全部言っているようなものなんですけど……。

5歳児がこんなにバ…、いや無邪気だとは思わなかったが、気持ちは嬉しい。ここは私も大人、何も知らない振りを通すことに決めた。

それにしても、カードは分かるが「バスケット」まで手作りしていると言ってたな…
バスケット… よく観光地に売っている「手作り工房」とか書かれた札がついているようなバスケットだろうか?
「竹細工」や「籐細工」のバスケットは、マレーシアのお婆さん達がせっせと青空の下で作っているイメージがある。
5歳児たちがあんな高度なスキルを一週間で習得できるものだろうか。

いや無理だ…。少なくとも、自分の名前さえもミミズの這ったような字を書くうちの息子には到底無理だろう。
「バスケット」の謎を残したまま、母の日が近づいてきた。

ちなみにその間も息子は、毎日学校から帰ると夫に
「今日も学校で母の日のバスケットを作ったんだ~」(筒抜け)
と耳打ちした後で、私に向かって
「I’m not telling you~♪ だってミセス○○がマミーには言っちゃだめだって言ったも~ん♪」
とご丁寧に報告してくれた。

ここまで焦らされれば(?)否が応にも期待が高まるというものである。

母の日前の金曜日。息子を学校に迎えに行き、いつもの様に何気なく息子のランチバックを持つと、はっとした息子は

「マミー!中を見ちゃだめだよ! だってミセス○○がマミーは日曜日まで見ちゃいけませんって言ったもん!!」

と私から奪還した。

……何が入っているか言っているようなもんなんですけど……

家に着いてから、息子は「謎のバスケット」を家のどこかに隠したらしい。
夫が帰宅すると、またもや耳打ちした後、夫の手を引いて「隠し場所」に連れて行き、「ブツ」を見せているらしかった。

「お~すごいな~。マミー、きっと喜ぶよ~」

夫の声が聞こえた。(注:私の夫も声が大きい)
親子ともに、全くの「ネタバレ」状況だが、「大人の私」はまたもや知らない振りをして
「何を隠したの~。マミーも見たいな~」
などと言ってみた。

「だめ、あとふたつネンネしたらね!」
いつもはこっちの台詞をぴしゃりと返されてしまった。

さて、日曜日当日…

息子がくれたバスケットは竹細工でも籐細工でもなく、↓の様なものでした……


        


                    「写真」 

※ 巷のブログの技術革新の世界から著しく取り残されている当ブログ。今回初めて写真を入れようと、「きっとやってみればわかるわ~」などと軽く考え試みたところ、どうやるのか分かりませんでした…(涙)。(バスケットを文章で描写するのが面倒だったという噂もあり)というわけで、「写真」と文字で代用し、気持ちだけ表現してみました。どなたかやり方教えてやってください…。

投稿者 lib : 04:28 PM | コメント (0)

February 25, 2008

アカデミー賞

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この原稿を書いている2月25日は、第80回アカデミー賞の授賞式である。

さっきニュースで報道されていたので、ちらっと結果は知ったが、授賞式の模様そのものを私はTVで観ることはできない。
……なぜなら、衛星放送のスカイだけで放送して、BBC1などの地上波では放送されないから。

夫が不満そうに言う。
「オスカーだよ?オスカー。TVライセンス(イギリスの受信料のようなもの)に年100ポンド以上払っているのにオスカーも放送しないなんて、BBCは全く使えないよな。」

以前は我が家もスカイと契約していたが、大して見る番組もないので、数年前に止めてしまった。

「BBC、高すぎて番組の放映権を買えなかったのかな。」

「ニュースキャスターに年間、何百万ポンド(数億円)も払っているからオスカーも買えなくなるんだ。それでとばっちりを受けるのは、いつでも我ら庶民だ。年100ポンドも払っているのにオスカーも観る権利がないなんて……この国に、平等な富の配分はないのか……」

ニュースキャスターの年棒、数百万ポンドに触れた直後に受信料100ポンドをいつまでも根に持つのもせこい気がしたが、確かに夫の言い分にも一理ある。

「それか、スカイが放映独占権を買ったとか。ほら、買い占めるの好きだから」

「またマードックか……。新聞の「タイムズ」も、あいつの傘下に入ってから質が落ちた。」

などとアカデミー賞を観る事ができない憤りを、腹立ち紛れに富の配分やマードックのせいにして気を晴らしていると、息子が話に入ってきた。

「オスカーって何?」

「え、えーっと、映画館に行って映画を観たことあるでしょ、どの映画が一番良かったか決めて、一番の映画にプライズをあげるんだよ」

「ベスト・フィルム?それなら『ウォーター・ホース』だね」

そういえば、ハーフターム中に通ったホリデー・クラブで映画に連れて行ってもらって、そんな映画を観たとか言っていたな。

「ウォーター・ホースは本当にいい映画だったよ…。モンスターの話なんだ、でも怖いモンスターじゃないよ。僕は、本当に本当に、ウォーターホースが世界で一番の映画だと思うね。」

オスカー選考委員も君の意見は聞いちゃいないであろうが、まあそんなに楽しかったのなら良かったね。
なぜか片肘をつきながら、熱っぽく語る息子であった。

「マミーはどの映画がベストだと思う?」

「え……最近映画なんて観てないからわからないよ」

「僕と一緒に映画館に行ったじゃないか。『ウォーター・ホース』は観られなかったけど、他の映画を観たじゃない」

確かにここ数年、映画館なんて息子の付き合いでしか行っていない。
「踊るペンギン」とか「料理をするネズミ」とか「人間の言葉を話す蜂」の映画は観たけどな…。
予告によると、これからも、空を飛ぶ「スーパー・ドッグ」とか「カンフー・パンダ」とか子供向け映画は容赦なく封切される予定らしい。(実話) 
十二支を考えるだけでも、まだキャラクター化されていない動物が沢山いるので、身体的不利を乗り越え縄跳び選手権に挑戦する「スキッピン・スネーク」とか、エキセントリックな性格の「マッド・カウ」(主演は英国産の牛でぜひ)など、製作側はまだまだ素材には事欠かない事だろう。(予測) 恐ろしいことである。

ちなみに、「The Water Horse」はネス湖のモンスターの話で、ピク●ーやディ●ニーの作品ではないので、観てもいいかも、という気になった。息子の批評を信じる方はギャンブルのつもりでぜひ。

それにしても、先週はフットボール評論家だったと思ったら、今週は映画評論家気取りの息子である。
来週は何の評論をするのやら。
(私の料理の評論だけはしないでね。)


投稿者 lib : 11:05 PM | コメント (0)

February 19, 2008

2008年のフットボール

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夫も私もフットボールには全然興味がなく、試合中継も見ないし知識もない。
が、もう一人の住人が、最近なぜかフットボールにはまっている。

レセプションに通い始めて約半年、学校では他の2人の男の子といつも3人組で遊んでいるらしい。
この2人の親友、揃ってフットボールファンらしく息子もその受け売りで、家でもああだこうだとフットボールの話をするようになった。

とは言え、あくまでも友達の「受け売り」なので、ところどころに「認識の誤り」が生じる。

「マミー、マンチェスター・トゥナイテッドって知ってる?」

今夜、マンチェスターで?…… 何かあるのだろうか。

とりあえず細かい事は指摘せず
「マンチェスター・トゥナイテッドって強いの?」
と聞くと、
「うーん、マンチェスター・トゥナイテッドはToo Oldだね。」
としたり顔で言う。

「マンチェスター・トゥナイテッド」は人だと思っているらしい……。

かと思えば、
「スティーブン・ジェラードはいいチームだね。」
などと「評論」したりする。

フットボール選手といえば、ベッカムとルーニーくらいしか知らない私でも、「スティーブン・ジェラード」が人名であることくらいは分かる。どうやら「チーム」と「選手」の区別がついていないらしいが、それでも
「マミーはどのチームをサポートする?僕はイングランドをサポートする」
などと愛国心のあるところを見せたりもする。

「チーム」というのは、「アーセナル」とか「リバプール」とかの事なのではないのかな、と思い
「アーセナルは?」
と聞くと、
「アーセナル?rubbishだね。」
とこれまた生意気なコメント。

しかしその後、その頃にヨーロッパでの親善試合だか何だかが行われていたことを知り、この場合の「チーム」は息子の言う「国名」が正しかったことを知る。これは息子に一本とられた。
……どうでもいいが、低レベルのフットボール知識合戦だな。

せっかくなので
「ジャパンは?いいチーム?」
とご意見を伺って見る。

「ジャパン?Rubbish! Legs are too short!!」
と間髪入れず返答される。ガーン。

足が短いと言われても激しく否定できないところが悲しいが、
「に、日本だって最近は頑張っているんだよ、日本だって強くなってきてるんだよ…」
としどろもどろに反論するも、「足が短い」は明らかに友達2人の受け売りだろう。

その友達の意見も、彼らのお父さんの受け売りだろうから、
「一般的な英国人フットボールファンの日本人選手に関する見解」 = 「足が短くて、まるでダメ~」
と言う事が、図らずも分かってしまった。

ワールドカップの頃は、近所のイギリス人に
「日本、なかなかやるね」
とか言って貰ったが、やっぱり社交辞令だったのだな…。Too shortだもんね…。

とりあえず息子の話についていけるように、今まで全然興味のなかったフットボールの試合結果なども、ニュースで流れると注意して見るようになった。

来年の今頃には、フットボールライターとして記事を書いているかもしれない……筈ありません。

投稿者 lib : 05:01 PM | コメント (2)

February 11, 2008

子供と宗教 後日談

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先週、
「息子の通っている学校は英国国教会の学校なので、祝うのはキリスト教の祭ばかりで、チャイニーズ・ニューイヤーや他の宗教の祭事には触れてもくれない。寂しい~」
と書いた舌の根も乾かぬうちですが、前言、撤回させていただきます。

なんと、チャイニーズ・ニューイヤーの日に先生は
「今日はチャイニーズ・ニューイヤーです。」
と言い、息子の名前を呼んで皆の前に立つように言ったそうだ。

「家で、新年を祝った?」
と彼に聞いたという。そういえば、クラスの中でチャイニーズの血が入っているのは息子だけだ。

「…はい、新調した赤い服を着て、皆でご馳走を食べました。長いヌードルを食べるのは長寿を願う意味からです。お母さんは、花や新年の飾りつけをして、家の中は赤や金のお飾りでいっぱいです…」

みたいな答えを先生は期待したのかもしれないが、生憎「お母さん」はクリスマス、1月のお正月に酒池肉林の宴を経た後で、間髪いれず旧正月を祝うほど、そこまで私の頭もめでたく出来てはいない。

今年のチャイニーズ・ニューイヤーは平日だったこともあって、(大体日にちも間違えていた…来週だと思っていた)正月らしいことといえば、学校へ行く前に夫が慌しくレッド・パケット(日本のお年玉に相当するもの)を渡した位だった。

そういう訳で、「祝った?」と聞かれて返答に窮した息子は、何を思ったか

「中国では、天気が悪くて人々が家に帰れなくて大変です」

と質問から大幅にずれた回答をしたらしい。(確かにその少し前、中国では悪天候で交通機関が麻痺し、人々が立ち往生している様子がニュースに映し出されていた)

まあそれはそれで、先生は感心してくれたらしい。結果よければ全て良しである。よかったよかった。

偶然だがその日、目から鱗が落ちるような事がもうひとつあった。
学校から帰ると息子は
「ベイビーは皆、生まれてから教会でおでこに水をつけるの?」
と聞いてきた。

学校で洗礼の話でも聞いてきたかな、説明するの難しいな…と思いつつ、
「うーん、教会のゴッドを信じている人のベイビーはおでこに水をつけるけど、他のゴッドを信じている人もいるんだよ。そういう人のベイビーは教会でおでこに水をつけないね…」
と私が言い終わらないうちに、

「うん!エイミーやクシュは、他のゴッドを信じてるよね!」

と元気に言い放った。

はっとした。確かに、いつも遊びに行くエイミーの両親はベトナム人で家には仏陀が飾られているし、幼稚園で一緒のクラスだったクシュはインド人で、ヒンズー教のお守りをいつも身につけている。

息子はダメ押しで、
「マーマ(夫の母のこと)も、他の神様を信じてるよね」

そうだった…。うちにも義母の部屋に仏陀の置物があった…。これぞ灯台もと暗し。

自分の家の中に「他の宗教」のサンプルがあったのに、
「キリスト教の学校に行ったら、その宗教を絶対だと思ってしまわないだろうか」
と心配していた私こそ視野が狭かった。いやーすいません。

しかし子供ってすごいな。
誰に教わるわけでもなく、世の中にいろんな宗教があることを疑問も持たずに肌で理解していたのだな。

というわけで、私なんぞが心配するまでもなく、英国国教会の学校も、子供も、皆柔軟です。
(柔軟すぎて、英国国教会のエライ人は大変な事になってますが)

投稿者 lib : 10:50 PM | コメント (0)

February 04, 2008

子供と宗教

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来週からチャイニーズ・ニューイヤーなんだそうである。

イースターと同じでチャイニーズ・ニューイヤーも毎年日にちが変わる。
その日暮らしで先々の予定を立てるのが苦手な私は、毎年夫に
「来週からチャイニーズ・ニューイヤーだよ」
とリマインドしてもらい初めて、
「ああ、今年も、もうそんな時期か」
と気づく。

それを聞いていた息子も話に加わった。
「去年は幼稚園で、Tのお母さんがライオン・ダンスをしたね。」

ああ、そうだったな。
息子が去年まで通っていた幼稚園では、チャイニーズ・ニューイヤーを学校ぐるみで祝っていたので、中国出身の父兄の一人が、中国の獅子舞を子供たちに披露した、と聞いていた。

この幼稚園は公立小学校の付属だったが、高級住宅地の隣にカウンシルフラット(公営住宅)がある、という地域柄、父兄もイギリス人のミドルクラス&ワーキングクラス、バングラディシュやソマリア、東欧からの移民、インド人のビジネスマンetc、と雑多で、「これぞロンドンの縮図」といったような学校だった。

私はいろんな人種や文化が混沌とひしめきあっているのがロンドンの魅力の一つだと思っているし、様々な肌の色の子供たちが一緒に遊んでいるのを見るたびに、なんだか「オリンピックの入場行進」を思い出し微笑ましい気持ちになった。
まだ偏見のない子供のうちから、いろんな国から来たいろんな人種の子供と一緒に学べる息子は、なんてラッキーなんだろうと、思ったりもした。
その頃、まだ日本語で10まで数えられなかったのに、ベンガル語で数の数え方を覚えてきたときは思わず笑ってしまった。

さまざまな文化背景をもつ子供達を抱える、この学校の努力も素晴らしかった。
クリスマスはもちろん、ヒンズーのディワリ、イスラムのイード、そしてチャイニーズ・ニューイヤーも同等に敬意を表し、子供達と祝っていた。
そういえば去年の今頃、息子のクラスの先生に
「壁に中国語を貼りたいから、書いてもらえない?」
と頼まれて、いくつかの漢字を書いてあげた。
借り物のようにこの国に暮らしている外国人の私だが、この時ばかりは自分の文化が脚光をあびて(正確に言えば中国の文化だけど、まあ近いってことで)誇らしい気持ちになった。
きっと、インド人も、バングラディシュ人も自分の文化が学校で祝われる時、同じ気持ちになったのではなかろうか。

この学校を息子も私も大好きだったのだが、残念ながらレセプションの席は得ることができなかったので、第二希望の英国国教会の学校に昨年から通うことになった。

私は無宗教だが、夫は8年近く、近くの教会に通っている。
教会系の学校に息子が通うことになって夫は喜んでいたが、私はどうも複雑な思いがした。
現代のようにいろいろな価値観が混ざり合っている中で、ひとつの宗教だけを子供に教え込むのはどうなんだろう。
大人になってからどの宗教を持っても持たなくても勝手だが、無垢な子供に大人の選んだ宗教を「洗脳」するのは、どうも腑に落ちない気がした。

ためしに息子に
「学校の先生、チャイニーズ・ニューイヤーの話する?」
と聞くと、
「ううん。今は、イースターの話してる。」
との事。そりゃそうだよな。でもなんか寂しいな。

教会の学校に願書を出したのは親である私達だし、納得した上で通わせることにしたのだから、こんな御託を並べるのが筋違いであるのは百も承知の上だが、なんとなく、一神教を教え込むよりも、
「世界には色んな文化や宗教があります、皆でそれを理解し祝いましょう」
と子供に教えるほうが、今の世の中に合っている様な気がする。

まあ教会系の学校が「ゴッド」や「ジーザス」の話をするのは当然だし、いい学校ではあるんですけどね。


投稿者 lib : 11:15 PM | コメント (0)

January 29, 2008

チキン・ラン

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日本では、みのもんたが
「奥さん、ブルーベリーが目にいいんだってよ。旦那や子供に食べさせなさい」
と発言すると、次の日スーパーの棚からブルーベリーが消えるらしい。

このような現象は日本だけかと思っていたら、ここイギリスでも、
「すわ、みのもんた現象!?」
と思うような事が起こった。

年が明けてすぐに、チャンネル4は一週間にわたり「イギリスのチキン産業」に関する特別番組を放送した。

仕掛け人はセレブリティ・シェフ(この言い方もなんだかねえ)のHugh Fearnley-Whittingstall。
英国南西部ドーセットで自給自足に近い生活をし、その暮らしぶりはRiver Cottageという番組で紹介されている。
(夫も私もこの番組の大ファン。ちなみに昨年の夫へのクリスマスプレゼントは、ヒューの“Fish”という本だった。)

私もかねがね、スーパーにずらりと所狭しと並ぶチキンを見て、不思議に思っていた一人である。
(イギリスのスーパーは魚売り場が小さい代わりに、肉売り場の面積がとても広い。特にチキンは英国民の好物で、消費量も日本の比ではないと思われる)
いくら国民食だとは言っても、毎日、イギリス国内全てのスーパーマーケットにこれだけの数のチキンを供給できるって、すごいことだ。
しかも安いものは2羽で5ポンドとか、これまた信じられないお値段。
いったいどうすれば可能なのか。

疑問に思いつつも、からくりは分かるような気がした。
狭い場所にできるだけ押し込められ、最も安い化学飼料を与えられ、効率性を最優先した「チキン・ファクトリー」で大量生産された鶏たちが毎日毎日、市場に出回るのだろう。

という訳で、4夜連続でヒューがイギリスのチキン産業の実態に迫る番組を、興味深く観た。
大方は、予想したとおりのものだったが、「動物」ではなく、「商品」として扱われているチキン生産の実態は想像を超え、思わず目を覆いたくなるような場面も。

通常、チキン・ファクトリーはスーパーマーケットとの契約農家が経営しており、ヒューの「チキン・ラン」キャンペーンは結果的にスーパーマーケットの方針に批判的な要素を帯びることとなる。

番組の3日目に、ジェイミー・オリバーが登場した。
自己の名声を上手に利用し、プロセスフードばかりだった学校給食を変えたり、イギリス人の食に関する意識改革に成功している「社会派シェフ」ジェイミー。
オーガニック好きでもあるし、ヒューの運動に賛同するのは当然だとしても、問題がある。

ジェイミーは大手スーパーマーケット「センズベリーズ」の広告塔であること。

センズベリーズから彼には、毎年数百万ポンド(数億円)の契約金が支払われているに違いない。
美味しいクライアントを捨ててまで、ヒューの運動に賛同するのだろうか。下世話な私は興味津々。
大量生産用のチキン小屋を見学したジェイミーは、
「これはひどいな・・・ 君に協力するよ」
と約束し、現場を去った。

で、金曜のジェイミーの番組に続くわけだが。
月曜から木曜まで、ヒューの「チキン・ラン」が放送された後、金曜はジェイミーの司会で、スタジオに視聴者や業界関係者を招き、「イギリスのチキン産業改革」に関する大プレゼンテーションが行われた。

これが凄かった。
2時間(くらいだったかな)、時折ビデオを織り交ぜたり、現物のチキンやひよこを見せたりしながら、ジェイミーがしゃべるしゃべる。“Naked Chef”の時と同じ弾丸トーク。
しゃべくっていたと思っていたら、気がつくと鬼のような包丁さばきで料理までしている。おい君、さっき生きている鶏を触っていたが、いつ手を洗ったんだ。

あまりに密度の濃さに、テレビを見ているだけでも疲れたが、あれだけの仕切りを見せたジェイミー、見事という他ない。

ちなみに、スーパーのチキンにもヒエラルキーがあり、一羽2.5ポンドのものからフリーレンジ、オーガニックと値段が当然のごとく高くなる。
最高値のチキンは安いものの3~4倍、下手すれば5倍くらいの値の開きがある。

ヒューの番組が放映されている間、新聞では
「安いチキンを市場から追い出して、フリーレンジやオーガニックチキンだけになったら、それを買う金銭的余裕のない家庭はどうなる。チキンを食べるなということか。またチキン農家を廃業に追いやるのか。」
と批判的な意見も書かれていた。

確かにそれもそうだな…と思っていたが、私が感心したジェイミーの折衷案は、
「ぎゅうぎゅうに詰め込まれた飼育小屋ではなく、ある程度運動ができる位のスペースがある小屋」で育てたチキンを市場の主流にする、という事だった。
確かに動く隙間もない鳥小屋よりも、遊ぶスペースのある小屋で育っているチキンはずっと幸せそうだった。
このように育てたチキンは、もちろん現在の最安値のチキンよりは高くなるが、それでも一羽1ポンド程度の上乗せで販売できるという。(実際、すでに多くのスーパーマーケットがこの方法で育てたチキンも販売しており、チキン・ヒエラルキーの下から2番目位の位置だろうか)
会場にいた多くの人が、
「1ポンド高くても、ハッピーなチキンを選ぶ」
と答えていた。

そしてクライマックス。ジェイミーは、スーパーマーケットの代表も会場に招待していた。
あえてスーパーマーケットの罪には触れず、各代表に、より健康的な鶏や卵を販売しようとする取り組みを語らせるあたり、出来試合という感じもしたが、まあこれだけキャンペーンをすれば十分ということだろう。
結果的に、スーパーマーケットも自社のポジティブな姿勢を宣伝し、「イギリスの食生活を改善する一員」として世間にアピールすることができた。
ああジェイミー、誰も敵に回さず、なんという如才なさ。

10代でレストラン修行を始め、ワーキングクラスの英語を話すジェイミー。片やイートン校、オックスフォード大卒で、「インテリ」のイメージが強いヒューとは対象的なイメージもあるが、ジェイミーの企画力、実行力、プレゼン能力があれば大学に行ったとしても、ビジネスを始めていたとしても、それぞれの世界で大成功していただろうな、と思わせる、今回も凄い手腕だった。

結果的にジェイミーに全部美味しいところをもっていかれた感じのヒューだったが、それでもヒューの朴訥とした雰囲気、私は大好きなんですけどね。

この番組の後、スーパーに行くとなんとオーガニックの卵が品切れになっていた。
まさか番組の影響で?と思ったが、他のスーパーもチェックしてウラをとる根性はなかったし、その後は安定供給が続いているので、ただの偶然かもしれません、て中途半端なオチですいません。

投稿者 lib : 12:51 PM | コメント (2)

January 21, 2008

羊とロバ 3

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という訳で、思いっきり間延びしましたが、昨年の話の続きです。


インターネットで羊のコスチュームを探すと、思いの他いろいろと見つかった。
その中で、納得できるデザインと値段のものがあったので、それを注文。

カードで支払いをし、無事完了。しばらくして注文の確認メールを受け取った。

「この度はご注文ありがとうございます」

はいはい、定型通りの確認メールだな。

「カード決済の支払先は、‘Wild★Night’と記載されます。」

…はい?

羊コスチュームを探すのに夢中で会社名までよく見ていなかった。
子供用品を売る店かと思っていたが、どうやら「大人のコスチューム」が専門の店だったらしい…。

ふと心配になった。
私の夫は会社員でないので、税金の申告は毎年、会計士にまかせている。という事は、申告時には会計士に一年間の銀行明細を全て預ける。

夫の銀行明細に記載された‘Wild★Night’という支払先を見て見ぬふりをしつつ、プロフェッショナルとして仕事に徹する会計士と、その横で
「ち、違うんだ、これは子供の劇で… 息子が羊になって…」
と聞かれてもいないのに、あたふたと墓穴を掘る夫の姿がまざまざと浮かんだ。
しかしもう後戻りはできない。
会計士に夫婦の趣味を誤解される位で、可愛い息子の羊役を応援できるのなら安いものだ、ええどうぞ誤解してください、と一人PCの前で開き直る私であった。

まあ、そんなこんなでいろいろあったが数日後、無事に羊コスチュームが自宅に届いた。
送り主が、なぜか‘Fancy★dress’となっている。
そんな、いらん気遣いをするのなら、銀行引き落とし用の社名も変えんかい、と小包につっこみを入れつつも、学校にコスチュームを持参するように指定された日にはあと4日ある。
やれやれと、ほっと胸をなでおろした。

なでおろしたのも、つかの間。
次の日、息子が学校から帰るなり

「僕、羊じゃなくてロバになったんだ」

と明るく宣言するではないか。

「え?ひ、羊じゃなくなったの?どうして」

「ロバ役の子がロバじゃ嫌だって泣いたんだ。それで先生が、『誰か代わりにロバになりたい人いる?』って聞いたから、僕が手を挙げたんだ。ロバの方が面白いよ」

息子は上機嫌で、“Carry Mary all the way~”と歌を歌いながらロバ役の踊りをし始めた。
どうやら、妊婦マリアをベツレヘムまで運ぶロバ役らしく、短時間だが脚光をあびる場面があるらしい。
確かに草を食べているだけの(決め付けているが)羊よりも面白そうだ。

息子もやる気満々になっているし、まあロバならロバでもいいのだが、問題はコスチュームだ。
学校に持参するように指定された日まで、あと3日しかない。
もう一度ダメ押しでWild★Nightに注文しようかとも思ったが、まあとりあえず先生に確認するのが先決と、次の日を待つことにした。

翌朝、先生に聞くと、先生は
「ああ、コスチュームのことがあるものね。○○、(元祖ロバ役の子の名前、以下、元ロバ)本当にやりたくないの?」
と元ロバに聞いた。元ロバは少し考えた後で
「僕、ロバやる~…」
と、また泣き出した。

息子は先生と元ロバのやり取りをじっと聞いていた。
まずいな…ロバ役をゲットし、あんなに喜んでいた息子がゴネるかと思ったが、意外にも
「OK…」
とポケットに手をつっこみながらあっさりと引き下がった。
家にいる時とは違う、そのあまりの諦めの良さに驚いた。ぬか喜びをして可愛そうだったな、という気持ちと、でも外では割と大人の対応をしているんだな、と少し誇らしい気持ちが微妙に入り混じり、学校を去った。

さて劇の当日。
ステージの上で、息子はきちんと羊になっていた。

これが親ばかというものだろうか。
単なる「その他大勢」の息子にスポットライトが当たっているかの様に、彼しか目に入らない。
劇には全学年の子供達が参加していて、確か45分くらいの長さだっただろうか。
一番年下の、5歳の子供達にとっては長丁場だ。
予想通り、羊はあまりやることがなく、息子は後半はかなり飽きてきてだれてきているのが分かった。
活発な彼にとってはTortureの様なものだったかもしれない。

しかもイギリスの学校は暖房がかなりきいていて、冬もただでも暑いのに、フリースで覆われた羊コスチュームと帽子をかぶった息子の頬は真っ赤になってきている。
ホール内は子供を見に来た両親達で埋め尽くされ、満員御礼。熱気でむんむんしている。
ふと気がつくと、息子の隣にいる「牛」役の子は、牛のコスチュームの前を全開にはだけていた。団扇を持たせたら立派な「真夏の宵の縁側おやじ」状態だ。
それでも息子は帽子も脱がず、顔を真っ赤にしながら殆どただ座っているだけの「羊役」を全うした。
ばか親の私は、涙が出てきた。


…それにしても、あまり考えたこともなかったが、聖母マリアは大変だったな。
今まで、
「キリストは、馬小屋でお生まれになりました」
と言われても、
「はあ、そうでしたか」
くらいにしか思わなかったが、身重の体で長い旅路を連れ回され、ベツレヘムでは宿屋という宿屋に断られ、あげくのはてに馬小屋で出産…そんな衛生状態の悪い場所で…
出産を経験した今は、別の見方をして涙がちょちょぎれそうになるのであった。

ちなみに他の子のコスチュームはそれぞれ工夫しており、「羊飼い」役の子は頭にティータオルをのせて紐で縛るのがお約束の様だった。他の羊役の子は白い長袖Tシャツに白いズボン、耳だけお手製らしきものを付けていたが、きちんと羊になっていてお母さんのイマジネーションに感心した。
とはいえ、やはり動物役には手作りの限界があるらしく、大方の子は既製品のコスチュームを着ていた。特に先述の牛くんの頭は異常に大きくできており、(本体からつながったフードをかぶり、頭の上に牛の顔がのっかる様にできている)牛くんの苦労が偲ばれた。前をはだけてあぐらをかきたくなる気持ちも分かる。

息子は劇が終わった後はその満足感からか、絵本などで羊の絵を見ると
「あ、僕だ」
などと言い、遅ればせながら羊としての自覚に目覚めてきたようである。

そして、泣き虫の「元ロバ」くんとは、その後親友になったらしい。

投稿者 lib : 11:23 PM | コメント (1)

January 08, 2008

Something New

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新年明けましておめでとうございます。

去年の息子のクリスマス劇の話がまだ終わっていませんでしたが、新年最初から去年の続きで始めるというのもなんなので、(笑)続きはまたの機会ということで、この年末年始に私はいくつか「初めて」したことがあるので、つれづれなるままにつづろうかと思います。

・初めてクリスマスツリーを飾った!

お子さんのいないご家庭でもクリスマスツリーは飾るものなのでしょうか。私は何事もなるべくシンプルに済ませたい性質なので(ただの面倒くさがりやという説あり)夫婦二人の頃はツリーがありませんでした。息子が生まれてからも、0歳から2歳頃まではクリスマス休暇は日本に帰国、3歳から4歳の頃は海外で休暇を過ごしていたのでやはりツリーは飾りませんでした。(飾っても息子にすぐに破壊されていただろうし)

今年は夫の姪の21歳のバースデーを祝うために(彼女の誕生日は12月26日)彼女の両親からクリスマス&バースデーパーティーに招待されていたので、数年ぶりにイギリス国内でクリスマスを過ごすこととなりました。息子もツリーが欲しいというので、イギリスに来て初めて本物のモミの木を買ってみました。
家の居間でぐるぐる巻きにされていたツリーの紐を解いてあげると、ぱあっと周りに森の匂いが広がりました。お店で、2番目に小さいサイズを買いましたがそれでもすごい存在感(笑)

今の子供はクリスマスプレゼントはサンタと両親、その他諸々の人々から複数もらえて当然と思っているようですが、それでも「この煙突は小さすぎてサンタさんが通れないんじゃないかな?」
「無事に通過したとしても、床のおもちゃやツリーがじゃまで家の中に入ってこられないんじゃないかな?」
と、チムニーの構造上の心配をするあたり、男の子だなあと笑えました。
サンタ以外からのプレゼントはツリーの下に置き、クリスマスまで空けないのが慣わしですが、息子はプレゼントが届くたびに即開封。でも、クリスマス当日のサンタからのプレゼントを見つけた時の興奮して目が輝いていた様子を見て、親が子供に幸せをもらう時というのはこういう瞬間なのだなあと実感しました。

・重曹で大掃除をする!

某SNSのコミュニティで盛り上がっている、「重曹掃除」。すごーくおおまかに言うと、汚れは大きく分けてアルカリ性と酸性の汚れがあり、アルカリ性の汚れには酸性のお酢(クエン酸)を、酸性の汚れにはアルカリ性の重曹をかけて中和させて汚れを落とす、という理屈らしいです。
主にバスルームやキッチンなどで威力を発揮し、水垢などにはお酢、油汚れには重曹が効果的との事。

確かに「ケトルの石灰はお酢で落ちる」とか聞いたことがありますが、なんとなくお酢臭くなるような気がして今まで実行していませんでした。しかしコミュニティのあまりの盛り上がりに触発され、初挑戦。お酢はホワイトビネガーを使うと確かに匂いも気にならず、効果ありました。そしておなべの焦げ付きも重曹を溶かして沸騰させたお湯の中に数時間つけておくと、汚れがぺろっととれるではないですか!なによりも、環境や人体に優しいので気持ちが良く、これからはまってしまいそうです。

・初めておせち(もどき)を作った!

おせちと言っても、お煮しめ、栗きんとん、かまぼこ(買っただけだっつうの)、お雑煮くらいですが。

特に、栗きんとんは同サイト「英国食いしん坊日記」のおちゃ子さんのレシピを見て、これなら私でも作れそう、と思い挑戦してみました。実は私はおちゃ子さんのレシピの大ファンです。栗きんとんのレシピも、栗はWaitroseで、さつま芋はSainsbury’sで入手せよ、と親切に書かれてありましたので、その指示通りに両スーパーに出向き購入。さつま芋がいい例ですが、イギリスで料理する場合、何が難しいって、素材が日本のものと何気に違うんですよね。だからレシピ通りに料理しても、どうもイメージと違うものができてしまったり。お料理上手な方は代用品などを上手に利用するようですが、私のように料理のセンスがない者にはなかなか困難です。

今週の「キッシュ」も前から作ってみたいものの一つでしたが、レシピに「パイ生地 ○グラム」と書いてあっても、スーパーに行って、数あるパイ生地の中からどれを選べばいいのか分からなく、その時点で挫折してしまうことの多い私です。おちゃ子さんのレシピにはちゃんと写真入りでどの商品を買えばいいのかまで説明して下さっているのでイメージがつかめて非常に助かります。栗きんとんは大成功、ベジタリアンの友人にも”Japanese New Year Food” としておすそ分けしました。
おちゃ子さん、これからも楽しみにしています!

・七草粥(もどき)を食べる
親戚の家での3日間に渡るクリスマス&バースデーパーティーですっかり食べ過ぎてしまい、新年の抱負はいきなりダイエットとなりました。年が明けてからは野菜中心の食事に切り替えていましたが、1月5日の夜にレストランで新年会があり、そこでまた暴飲暴食。1月6日の朝、激しい胃痛で目が覚めました。マイルドな食事に慣れていた胃に負担がかかったようです。その日は水分以外は何もとることができず、プチ絶食状態。7日になってやっと野菜入りのお粥を食べられるようになりました。ふと気がつくと、7日は七草粥の日ですよね。というわけで、意図せずに結果的にトラディションに従った過ごし方をしました。。。と言えば聞こえがいいですが、年を感じました。
昔はいくら食べても、何を食べても、あっという間に消化する強靭な胃だったのに。。。

というわけで、今年が2008年ということは分かっているけど自分の年齢はちょっと考えなければ分からなくなっている今日この頃ですが(今が平成何年にあたるのかはとうの昔に分からなくなっています)今年も頑張ろうと思います。

いつもブログを読んでくださっている読者の皆様、他のブログ執筆者の皆様、編集部の皆様、今年もよろしくお願いいたします。

投稿者 lib : 10:47 AM | コメント (0)

December 19, 2007

羊とロバ 2

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不用意な一言で「羊役」の息子の気持ちを傷つけてしまった。
「そんなことないよ~。Sheep最高~」などと息子をなだめながらも、翌日の日曜日、朝イチで最寄のWoolworthsに羊のコスチュームを買いに行く。
私がイギリスに来た頃は、日曜はどの店も閉めていたが、最近は大抵の大手小売店は営業している。感心、感心。

家を出た時から空模様が怪しいとは思っていたが、バスで目的地に到着した時は大雨になっていた。
傘も持たずにバス停から走ってWoolworthsに行くと...

...閉まっていた。

店の前に貼られた「営業時間のお知らせ」を見ると、日曜は11時からとなっている。
時計を見ると、時間は9時半。
失言の失敗を挽回するためにと焦るあまり、早く着きすぎた。
仕方ない、近くの店で時間をつぶすか...と思い歩くと、隣のBootsも11時から、その隣のMarks & Spencerは12時から!!!どこも閉まってるやん!!!
ずぶ濡れになりながら大雨の中をさ迷い歩き、やっと一軒のカフェが開いているのを見つけた。
やれやれと思い店内に入り、コーヒーを注文。
支払いをするべく財布を見ると..

...現金が入っていなかった。

小銭をかき集めてもコーヒー代に達しなかったので、ダメもとで「カード使える?」と聞くと、「No」との返事。そりゃそうだよな。
ずぶ濡れ、文無しの二重苦の私を気の毒そうに見送るカフェの店員の顔が忘れられない。

幸いなことに銀行のキャッシュマシーンは近くにあったので現金をおろし、他のカフェに入り開店を待つことにする。
「Woolworthsに 羊の服を 買いに来るとは これいかに...」
などと詠んでいたら11時になったので再び店に駆け込んだ。

コスチューム売り場に直行するも、無い!無い!スーパーマンもパワーレンジャーもお姫様もあるけど羊が無い!

店員に聞くと、店頭には置いていないがインターネットで注文できるとの事。
くう...とんだ時間の無駄遣いだったと家に帰る。

家でWoolworthsのサイトを見ると、羊だけでなくマリア、ヨセフ、羊飼いなど総出演者のコスチュームが揃っていた。
羊もいた、いたが...

...可愛くない。

顔が妙にリアルで、可愛くない。
気に入らなかったので、他のサイトも探してみた。

Ebayには「一度着ただけです」と去年の羊コスチュームが多数出品されていた。
......同じWoolworths製でも去年のバージョンの方が可愛いな。
私と同じ境遇の「羊役の子供の親」がイギリス全国、津々浦々にいるようで、多数入札が入っていた。
商品説明に「去年、Nativity playのために12ポンドで買いました」と書いてあるのに、なんと19.5ポンドまで値がつりあがっている。

く、狂っている...

「羊役の子供の親」たちの戦いに参加する気にはなれなかったので、他のサイトを探すことにした。

つづく

投稿者 lib : 01:01 PM | コメント (0)

December 10, 2007

羊とロバ

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先日、息子が学校から一枚のレターを持ち帰った。
学期末に披露する学芸会(?)のお知らせだった。教会系の学校なので、Nativity Play(キリスト降誕の劇)をすると言う。

「あなたの息子さんは、クリスマス劇で羊役に選ばれました。」

ふむふむ。

「したがって、来週の月曜日までに羊のコスチュームを用意してください」

・・・・・・・・・ ・・・はい?

羊のコスチューム・・・・そんなに普通に言われても・・・・。しかも来週までにって。
親が作れということだろうか。しかしど、どうやって・・・。

インターネットで調べると、「羊コスチュームの作り方」が見つかった。
どうもこちらでは割と普通の(?)モノらしい。
白かグレーのフード付スウェットシャツに、コットンを両面テープで全面に貼り付け、フードにフェルトの耳を付けろと書いてある。割と簡単そうだが、「完成図」の写真を見ると、「羊」と言うより「出来そこないのマシュマロマン」の様である。本当にこれでいいのか。学校の求めているものはこれなのか。
大体、時間がないのに「白かグレーのフード付スウェットシャツ」探しから始めなければならない。そんなに都合よく見つかるものなのか。

困り果て、先輩ママ友に電話してみた。
「ああ、教会系の学校ではお約束なのよね。羊のコスチュームもそれ様に売っているはずだから、Woolworthsに行けばあるんじゃない?」

さすが先輩ママTさん。お悩み一気に解消だ。Woolworthsはおもちゃや文房具を売っている、ハイストリートに一件はあるチェーン店だ。確かにコスチュームも売っている。なぜかイギリス人はコスプレ(?)の好きな人達で、よく店先でTVのキャラクターやプリンセス系のコスチュームを見かける。正直言ってなるべく購入したくないものの一つだったが、学校からの指令とあれば仕方ない。

翌日が日曜だったので、朝イチでお店に見に行こうと一安心。
・・・しかし、羊か。「蛙の子は蛙」と言うが、やはり息子も芸無しの両親に似たのかな、と微笑ましいような、おかしいような気持ちになり、仕事から戻ってきた夫と「息子が羊役をゲットした件」について無駄話をした。

「人間役もあるのに『羊』なのよね~。動物なら馬役もあるのに『羊』なのよね・・・」
「『羊』は草食べてればいいからな。」
「そういえば、キリストは馬小屋で生まれたのよね。馬小屋はあっても羊小屋って聞かないね。羊は外で寝なきゃいけないのかな・・・・」

気づいた時は遅かった。息子が背後で聞いていたとは夢にも思わなかった。

黙って聞いていた息子、しばらくしてから
「僕、羊はやりたくない。草を食べてるだけで面白くない。外で寝たくない」
と言い出した。

傷つけてしまった息子の心をどう癒すのか!?
次回につづく


投稿者 lib : 10:02 PM | コメント (0)

December 04, 2007

教育方針

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先日新聞を読んでいたら、政府は3歳からのナショナル・カリキュラムを設定し、来年から法律として施行する予定だという。つまり幼稚園などでは、政府の定めた方針に従って子供達に「アカデミックな」教育をしなくてはならなくなるらしい。

イギリスの公立小学校では4歳からレセプションというクラスに入り、実質的に小学生となる。4歳でも読み書き、発音などを教わるのも早いなあと思っていたが、更に年齢引き下げか・・・。

私は教育の専門家でも何でもないので早期教育をしてどんな良い事があるのかよく分からないが、素人の考えとしては、「イギリス政府は、なにをそんなに躍起になっているんだろう」という感想である。

私の息子が3歳だった頃のことを考えると、その頃までは文字通り「静止している」ということが寝ている時以外無かった。
ママ友とピクニックに行き、他のお母さんと子供たちがブランケットを広げてラブリーにお弁当を食べている時でも、息子は決して座らなかった。結果、私は動き回る息子の後をついてまわらなければならず、いつも飲まず食わず(ついでに休憩知らず)だった。

お弁当の時に座らない息子が、お絵かきや絵本読みで座るはずがない。
結果、彼は同じ年頃の子供よりも運動能力は高いが、絵は描けないし言葉の発達もかなり遅れていた。

どの国の、どの育児本にも「本を読み聞かせる事は良い事です」と書いてあるが、本人が嫌がるのだから仕方ない。
その頃、仲良しの日本人ママ友は、「ナーサリーに入ってから、日本語を全然話さなくなってしまって・・・」と心配していた。この娘さんはナーサリーに入る前には本当に上手に日本語をお話していたので、勿体無いとママが思う気持ちはよく理解できたが、うちの息子はもともと英語も日本語もヘタだし、日本語を話さなくても全然気にならなかった。

本読みにしてもお絵かきにしても日本語にしても、親が強制することによって、本人が「嫌なもの」というイメージを持ってしまうことの方が怖いと思っていたので、別に本人がやりたがらない事はしなくていいよ、というスタンスをとっていた。
机に座ってする勉強は大きくなってからいくらでもできるし。

でも「今しかできない」ことは積極的にやらせた。外で遊ぶことは好きだったので、これは積極的に遊ばせた。
冬は寒くて暗くてなかなか外で遊べないイギリスだが、天気の良い日はなるべく外に出た。
外に出る事によって、季節や自然を感じ取って欲しかった。夏は暑い、冬は寒い、そういう当たり前の事を知っている子になってほしかった。

日本は四季の豊かな国なので、私は子供の頃を思うとき、夏を思えばもくもくとした入道雲や、ひまわりの鮮やかな黄色や、スイカの冷たさが心に鮮やかに浮かんでくる。冬を思えば、吐き出す息が白くなるのが面白かったことや、朝、庭の土の上に降りた霜を踏むサクサク、という感覚・・・大人になってわざわざ霜を踏む人はいないから、こういう経験こそ子供時代にしかできない経験だと思う。中学だか高校だかの古典の授業で、「枕草子」の冒頭を習ったとき、「こんな昔の人も自分と同じ感じ方をしていた!」と驚いたこと・・・。

こういった感覚が大人になってから何の役に立つのかは分からないが、私の中ではすごく重要なことの様な気がする。私が今まで出会った中で「強い人だな」と思った人は、皆、子供の頃自然の中で遊んだ経験を生き生きと話すことが共通点なので、知らず知らずの内に息子にも「子供時代に、へとへとになるまで遊んだ思い出を作って欲しい」と思うようになったのかもしれない。幸せな子供時代の記憶があれば、社会で生き抜く強さが身につく筈、と何の根拠もないけど信じているような気がする。

だから手抜き母の私が、息子がもっと小さかった頃に心がけた事と言えば
「ハッピーでいてほしい」という事だけだった。
長い人生、気の進まないこともしなければならないし、嫌な事もあるだろう。
だからこそ、人生の最初の3~4年くらいはストレスフリーで自分の好きな事だけをしてもらい、
「生きるって楽しいことなんだな」
という印象を抱いてくれれば、私の幼児教育方針(?)は成功だったと思っている。

と言うわけで、少し時期がずれて息子がこのカリキュラムの下で生活しなくてはならなかったら、もしかしたら彼なりにプレッシャーを感じていたかもしれない。でも5歳の今は学校で発音や文字を習うのを、楽しんでいるようなので、子供って分からないからもしかしたら3歳から始めてもそれなりに楽しく適応したのかもしれないけど・・・。
で結局何を言いたいかというと、「子供は外で遊ばせましょう」ってことでしょうか(笑)

投稿者 lib : 10:34 AM | コメント (0)

November 28, 2007

パーティー・アニマル

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5歳の誕生日パーティーを終えて、息子は既に「6歳のパーティーはどこでやろうかな・・・」と来年のバースデーに思いを馳せている。

実は私の誕生日は息子の誕生日の一ヶ月後。
自分のパーティーの興奮さめやらず、
「マミーの誕生日はどこでやるの?トランポリン・パーティー?バウンシーキャッスル・パーティー?」(いずれも息子のパーティーを開いたレジャーセンターで開催可)
と私のバースデーの会場選びで張り切っていた。

一瞬、自分と友人達が、ボヨ~ンボヨ~ン、とトランポリンをしている風景が頭をよぎった。こわい、怖すぎる・・・・
「マ、マミーは大人だからトランポリン・パーティーはしなくてもいいんだよ・・・」
「ふ~ん、じゃあ家でやるんだ・・・僕の友達も招待していい?」

いけません・・・・・・・・。

イギリスではこうして「パーティーは楽しい」と幼少のうちからしっかりと刷り込まれて、ティーンエイジャーになる頃にはパーティー・アニマルが大量生産される仕組みなのだな。

さて私の誕生日当日。トランポリン・パーティーも開催せず、息子の友達も招待せず、家族3人で近所のレストランでささやかなお祝いをし、帰りにケーキを買って帰った。
家でケーキを開けようとすると、
「マミーの誕生日だから、座ってていいんだよ」

言われる通りに居間に座っていた。部屋の電気が消えたかと思うと、
「Happy Birthday to you・・・♪」
と歌いながら、息子がキャンドルを立てたケーキを運んでくるではないか。

暗闇の中、キャンドルの灯りに照らされる息子の顔を見て、少しじ~んとした。
「Happy Birthday・・・」と歌に参加すると、
「今日はマミーの誕生日なんだから、マミーは歌わなくていいんだよ~」

く~~、大きくなったねえ! 泣かせやがってえ!・・・幸せな○○歳の誕生日でした。

その後もパーティーに対する情熱は相変わらずで、TVのニュースから
「レイバー・パーティーが・・・コンサバティブ・パーティーが・・・・」
などと聞こえようものなら、
「パーティー!??パーティー!??どこ??どこ??どこで???」
とエキサイトするのでなだめるのに苦労する。

ついでに、首相「ゴードン・ブラウン」にも敏感で、彼の名前を聞くと
「ゴールデン・ブラウン?イエロー・ブラウンじゃダメなの~?」
と得意の親父ギャグを飛ばす、政治にも興味ある(?)5歳児である。

将来、呼ばれもしないのに首相官邸にプレゼントを持って
「パーティーがあるって聞いたんだけど・・・・」
と不法侵入し、警察に捕まるような怪しい青少年にだけにはならないように願う今日この頃。

投稿者 lib : 09:47 PM | コメント (0)

November 20, 2007

5th バースデー・パーティー その2

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ソフトプレイ・ルームを借り切って行なう事にした息子の5歳のバースデー、招待客の中には、隣のフィオナの息子のハリーも含まれている。(ご近所のモテモテ未亡人、フィオナについては2006年6月26日の記事を参照)
隣家の電気が消えているので外出中かな、と思いフィオナの携帯に電話すると、そこは

・・・・ブラジルだった。

CMプロデューサーの彼女、撮影でブラジルに出張中だという。
急いで用件を話すと、パーティーの前日にロンドンに戻るので出席できるとのこと。

フィオナの出席を確認すると、俄然夫のやる気が出てきた。
「子供と大人含めて客は30人位になるな。僕がヌードルを作ってあげるよ。」
と提案。
子供のバースデーパーティーでは、サンドイッチやフルーツなどのスナック類がお決まりだが、チャイニーズ・ヌードルはイギリス人にも馴染みがあるし、好きだと言う人が多い。面白いかな、と思い(そして私がラクだし)即可決。

それにしても、場所を借りることに決めてしまうと、すごーく気が楽だ。
4歳までのパーティーはずっと少人数の人を招いていたが、それでも家で行なっていたので掃除やら何やら、何かとプレッシャーがかかった。

パーティーの前日に食材や飲み物、ケーキ(これも昨年までは手作りしていたが、今回は人数が多い事を言い訳にお店で購入)などを買い込み、子供達に配るパーティーバックの仕込みをし、用意終了。
ちなみにパーティーバックは息子と一緒に作ったが、数が多いので
「はあ~、Hard work・・・・」
と本当に大変そうに手伝っていたのが笑えた。君、人生は楽なことだけじゃないんだよ。

当日、料理(メインは夫のヌードルと私の海苔巻き。そしてフルーツやクリスプなど)を車に積み込んで、いざ出陣。
急用で来られなくなった一人を除いて、17人の子供達が集まってくれた。

後は子供はひたすら遊ぶ、同伴の大人は暇そうにそれを見守る、お決まりのパターン。
ケーキカットも無事終了し、パーティーはお開きの時間になった。

いつもの癖で料理を沢山作りすぎた夫、今回もヌードルが大量に余ってしまったので、小分けにして皆さんにお持ち帰りしてもらうことにした。

フィオナは
「チャイニーズのパーティーでは、ヌードルを食べて、テイクアウエイまでつくのね・・・イギリス人のパーティーとは違うわ・・・・」
と感心(?)していた。全てのパーティーでテイクアウエイが着く訳じゃないんですけどね。

後片付けは紙皿や紙コップを捨てるだけで、これもラクだ。
時間通りに会場を後にし、無事終了。
場所を借りると確かにお金はかかるが、この精神的な気楽さには変えられないな・・・とつくづく実感。
(それにしても私、文章の中に『ラク』という言葉が何回も出てきてますね。自分のプライオリティーを自覚するような気がする。)

ちなみに息子のFavorite characterは、3歳→機関車トーマス、4歳→スーパーマン、そして5歳の今はパワーレンジャー。プレゼントを開くとパワーレンジャー・グッズの大集合だった。皆さんありがとうございます。

イギリスの、過度に思える誕生日パーティーの風潮に呆れていた私だったが、結局自分もその一端を担ってしまった。まあクラウンは呼ばなかったけど。
他の子供達が派手なパーティーを開けば自分の時も同じようにしたい、と思う子供の気持ちは自然なことで、結局どの親も「子供のために」せざるを得ないのかな。

まあパーティー好きなイギリス人は自分たちも楽しんでいるようでもあるが。
(でも子供のパーティーではアルコールが出ないことが多いからか、大人たちはイマイチ乗りきれていないことが多いような気がする。どこのお父さん、お母さんもご苦労さまです。)

投稿者 lib : 10:29 AM | コメント (2)

November 12, 2007

5th バースデー・パーティー その1

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早いもので10月で息子も5歳になった。

すくすく元気に成長してくれて、大変ありがたいし、めでたい。だが、ここイギリスで子育てをしている者には、そんな感慨にふけっている暇はない - 
-そう、バースデーパーティーを開く試練を避けては通れないのだ。(6月19日『バースデーパーティー』を参照)

昨年までは、親しい友人だけを招いて自宅でパーティーを開いていたが、今年はもう通用しない。
5歳前にして、既に人の誕生日パーティーに呼ばれ慣れしている息子、数ヶ月前から「誰と誰を招待して・・・・会場は何処で・・・」と、やる気満々である。
ああ、本人は「誕生日」なんて概念が分からず、周りの大人だけで「ハッピーバースデー♪」と祝っていた1歳、2歳の誕生日が懐かしい。

彼の頭の中の「招待者リスト」にはナーサリー時代の友達、今の学校の友達、近所の友達が名前を連ね、軽く10人は超えそうだ。ただでさえ2人以上集まれば野獣と化す5歳男児たち、狭い我が家での開催は到底無理だろう。

息子の希望の会場は自宅近くのレジャーセンター内にあるソフトプレイエリア、「サファリ」。(野獣たちにふさわしい巧いネーミング。座布団一枚)親友のK君が6月に借り切ってパーティーを開いたので、自分の時もここで・・・と心に決めているようだった。
家から近いし、招待する人も来易いし、何よりも自宅よりも気が楽だ。親と子の思惑が一致し、会場が決定した。

「サファリ」は平日の5時半~と、週末の4時~と6時~の2セッションを、パーティー用に貸し出している。土曜の4時を予約しようと予定日の3週間前に電話すると、その週末は日曜日の6時からのセッションしか空いていないとの事。
「たまたまキャンセルがあったのよ。普通は3ヶ月前に予約するものよ」
とレセプショニストの声。

そういえば自分の結婚前にも、
「普通は1年、2年前から予定を立てるものよ。式の一週間前に駆け込む人なんか他にいないわ」
というセリフをいたる所で言われたような気がするが、まあ何とかなるものである。

息子の誕生日パーティーが来年の1月にならなくて、とりあえず良かった良かった。

場所が決まったら、次は招待者リストの作成である。
学校の友達や近所の子供にはインヴィテーション・カードを渡し(これも外せないお約束)、離れているママ友にはメールで招待した。
集計すると、18人の子供が来てくれる事になった。

つづく

投稿者 lib : 05:18 PM | コメント (0)

November 05, 2007

嗜好錯誤 その2

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前回、他人の秘められた嗜好を勝手に公表してしまった以上、私自身の嗜好をお知らせしないわけにはいかないだろう。
(本人が言いたいという噂もあり)

実は私は自分で「声フェチ」ではないかと思っている。

結婚前に付き合っていたボーイフレンドも、まあ見た目は別として(涙)、声だけは良かった。
結婚7年目になる夫も、まあ見た目は別として(涙)、声だけはめっぽう良い。

どうも私は低音でよく通る声(例えるなら伊武雅刀系の声)が好きらしい。(ちなみに森本レオ系はパスです)
声が良いと、それだけでその人への好感度2割アップ、いや3割4割は当たり前である。

声フェチは男女問わず、声の良い女性も大好きである。
鈴を転がすような声を持つ女性に出会うと、それだけで「ごろにゃ~ん」とその人の足元にじゃれつきたくなるような衝動にかられる。
日本で社会人になりたての頃、仕事を教えてくれた先輩の女性がそれはそれは美しい声の持ち主だった。
彼女の澄んだ声で仕事の指示をされる度に、「この人の為なら何でもしたる・・・この人に一生ついていったる・・・」と若い私は思ったものだった。(一生ついて来られたら彼女が迷惑だっただろうが)
たかがコピーをとってくるにも目をぎらつかせていた私を、彼女はさぞや気味悪く思ったことであろう。

と言うわけで、ベッカムなんて、いくら容姿が貴公子だろうが、契約金が300億円だろうが、あの声を聞いてしまったら私的にはランク下の男だ。悪かったわね、ディヴィッド。(負け犬の遠吠えに聞こえますか、そうですか、そうでしょうとも)

たかが声、されど声である。
例えば、以下のセリフを伊武雅刀の声で想像してみてほしい。

「洗濯物がたまってるね。履いていく靴下が無いんだけど・・・・」
「たまには焼魚以外のおかずも食べたいな・・・・」
「棚に埃が積もってるなあ・・・・最後に掃除したの、いつ?」

というような生活感あふれる会話も、伊武雅刀(勝手に同一化しているが)の低音の魅力で語られれば、まるで美しい詩を聞いているようである。マンネリ化した結婚生活にも潤いが生まれるというものだ。
私は夫のこの低音を聞きたいがために、あえて洗濯物や埃をためているのである。家事を手抜きしているわけでは決してない。(きっぱり)

かのセクシー料理研究家、ナイジェラ・ローソンは「毛深い人が好きなの」と激白したとか。(大衆紙サンによる)
フェロモンがにじみ出ているような彼女の嗜好、「さもありなん」という感じである。

皆、自分ならではの秘めた嗜好(サンやLibブログで公表している人もいるが)が、生活を彩るエッセンスになっているのかも。

皆さんにも特別な嗜好がありますか?

投稿者 lib : 09:17 PM | コメント (3)

October 23, 2007

嗜好錯誤

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好きな異性のタイプは十人十色で面白い。
中には、「これだけはゆずれない」という嗜好を持つ人も多いようだ。

男性の、「巨乳フェチ」「足首フェチ」「鎖骨フェチ」などは極めて一般的だが、中にはちょっと珍しい嗜好を持つ人もいる。

夫の親友、ベン(ホワイト・ブリティッシュ)は、昔から「黒」が大好きな男だったそうだ。
服は黒、愛車も黒、コーヒーはもちろんブラック。
そして女性のタイプは・・・・もちろん黒い肌を持った人。

聞くところによると、ベンの嗜好は幼稚園の頃からすでに確立されており、黒人の女の子にしか興味がなかったらしい。
小学校に上がっても、ティーンエイジャーになっても、黒人の女の子ばかり追い掛け回していたそうだ。

彼の両親は二人とも白人、親戚にも黒人は一人もいなかったそう。
脳外科医だった彼の父親は、息子の突然変異(?)に戸惑うと共に非常に興味を持ち、彼の頭を切り開いてみたい衝動にたびたび駆られたが何とか思いとどまったそうだ。(当たり前だ)

大学入学後は割と遊び人だったらしいベン。
魚心あれば水心ありというか、需要と供給の一致というか、大学寮の彼の部屋の前には、いつも黒人の女子学生が列を作って彼に会いに来ていたという。(本人談)

その後、彼の夢かない、黒く光る美しい肌を持つ、ナイジェリア人の女性と結婚した。
ミルクとブラックコーヒーを足して2で割ったような、カフェオレ色の肌を持つ可愛い子供達にも恵まれ幸せに暮らしている。

知り合いの日本人妻、T夫人もちょっと変わった嗜好の持ち主だ。
彼女は知る人ぞ知る、「もみあげフェチ」。
フランス人の旦那様と幸せな結婚をしているT婦人だが、ある日、キッチンの修理に来たポーランド人の「もみあげ」に心を奪われてしまい、同時に自分が「もみあげフェチ」であったことを自覚したそうだ。

「フレンチ夫とポーランド人ビルダーの間で揺れる女心」と言えば、一昔前ならハーレクインロマンス、今ならデスパレート・ワイヴスの世界の様だが、分別あるT夫人と彼の間はもちろんクライアントとビルダーの関係以上には発展せず、T夫人の淡い恋心はキッチンの完成と共に終わりを迎えたそうだ。

しかし彼女のもみあげに対する熱意はそれで終わる訳ではなかった。
T夫人はその後もロンドン在住のポーランド人を対象に独自の調査を実施、ポーランド人には「ナイスなもみあげ」率が高いことを発見した。
いつか夫婦で「もみあげ天国」ポーランドを旅することを夢見ている。

「ポーランドはこんな貴重なリソースを観光事業に利用しない手はないわ。日本の旅行会社も、『ポーランドのもみあげを巡る旅、8日間(全旅程添乗員付)』とか、『魅惑のポーランド~もみあげ紀行6日間(全食事付)』とかのパッケージを作れば、きっと売れると思うんだけど。」
と熱っぽく語るT夫人であったが、商品化するには「もみあげ愛好者人口」が少し足りないような気がする。

なによりも、こんな旅に付き合わされるフレンチ夫の心情を思うと、涙が頬をつたって止まらない私である。(うそ)


投稿者 lib : 10:14 PM | コメント (4)

October 15, 2007

アフタースクール・クラブ

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用事のために週2日、3時半のお迎えに間に合わない日ができたので「アフタースクール・クラブ」に息子を入れることにした。

アフタースクール・クラブは息子の通う学校と向かい合うような形で建っている。
広々としたグラウンドには遊具やフットボール・ピッチがあり、建物の中にはゲームやテレビ、食事用のテーブルなどが用意されている。
3時半になるとスタッフが学校に子供を迎えに行き、6時まで遊ばせ、面倒を見てくれる。
カウンシルが運営しているので学校とは別団体だが、ここに来る子供の半分は息子と同じ学校の子、あとの半分はもう一つの近所の小学校からの子で占められているようだ。

料金は一日3ポンド。
政府から助成金が出ているのだろうが、驚きの安さである。
ウエイティング・リストなどもなく、簡単に入ることができた。

息子は5歳になったばかり。
必要に迫られたとは言え、「5歳の子が学校+クラブで9時間も家から離れて大丈夫なんだろうか・・・」と実は心配だった。(9時間といえば、フルタイムの仕事並みではないか。ただでさえ、イギリスの小学校は長い。9時から3時までの6時間半。日本はもっと短くなかったっけ?)

ポリシー、と言うほどではないが、息子が赤ちゃんの頃から、私はなるべくチャイルドマインダーやベビーシッターの手を借りずに育てたいと思っていた。
(もちろん、子供を預けて働くお母さんには本当に頭が下がりますが)

学校に通うようになっても、放課後はなるべく子供と一緒にいてあげたいと思っていた。
学校に迎えに行った時、顔色や表情から彼の健康状態や、心の状態も読み取れるような気がしていたので、必要に迫られてアフタースクールクラブに入れることになったものの、実はなんとなく罪悪感のようなものがあった。

ところがどっこい、息子は「毎日でも行きたい」と言い出すほどクラブが大好きになった。
クラブに行く予定でない日でも、学校に迎えに行くと、「家に帰りたくない。クラブに行きたい」というので、「今日は本当は来る日ではないんですけど・・・」とそのままクラブに置いて来ることが多くなった。

放課後、一緒にいて「あげたい」などというのは親の勝手なお節介だったらしい。

ロンドンでは放課後、近所の子供が誘い合わせて外で遊ぶ、ということがないので、習い事などのある日の他は家にいることが多い。
家でテレビを見ているよりは他の子供たちと遊んだ方がもちろんいいし、彼も気に入っているし、私もラクだし(ここ大事)彼の言うとおり、月曜~木曜までクラブに入れることにした。

「アフタースクールクラブは色んな子が来るから・・・・悪影響を受けるかもしれないし」と毛嫌いするお母さんもいるが、今のところそういう問題は感じられない。

学校には、朝早く仕事に出かけなければならないお母さんのために、8時から子供を預かってくれる「ブレックファーストクラブ」というシステムもあるらしい。

子育てを支援する体制が整っているのは本当に有難い。
NHSでの無料出産以来、子育てするようになって、やっと高い税金の一部を取り返せることができているな。
(それが一番嬉しかったりして)

投稿者 lib : 09:43 PM | コメント (0)

October 09, 2007

スクールディナー

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息子が小学校のレセプションクラス(1年生になる前の準備クラス)に入学してから早1ヶ月。

前に行っていたナーサリーでは制服がなくて、皆自由な服装をしていたが、今度の学校は制服を着なければならない。
制服と言っても、学校のマーク入りのポロシャツ、トレーナーに紺か黒のズボンとカジュアルで動きやすい格好だが、何となく「制服がない方がのびのびしている感じでいいなのになあ」と思っていた。

いざ始まってみると、小さな子供たちがお揃いのユニフォームを着ているのは可愛いし、ニートな感じがしてなかなか良い。私も「ユニフォーム派」に変わった。いいかげんなものである。

ナーサリーで集団生活には慣れていたせいか、息子は新しい学校にもすっと溶け込んだようだ。
ただ、たまに朝、「学校に行きたくない・・・」と訴える。
理由を聞くと
「スクールディナー(給食。ランチなのになぜかディナーと呼ぶ)、食べたくないから・・・」。

息子の学校は、基本的には給食を食べるか、お弁当を持参するか選べるのだが、最初のハーフタームは「ソーシャライズのため」皆スクールディナーを食べなくてはいけないことになっている。

息子は前から、あまり食に興味のあるほうではなく、見たことないもの、得体の知れないものは絶対に食べない。
特にたんぱく質系が苦手で、魚や肉を分からないように調理して食べさせたり、私も苦労している。

おのずと食べられるメニューが決まってしまうのだが、そんな彼にとって、スクールディナーで「未知の食べ物」を、「先生の監視の下で」「強制的に」食べさせられるのはかなりつらいことだろうと想像される。

思い返せば、私も同じタイプで、小学校の給食ではかなり苦しい思いをした(牛乳も嫌いだったし給食のおかずも手をつけられなかった)ので息子の気持ちはわからないでもない。

でも好き嫌いが多かった私も、6年生になる事には給食のお陰で、一通り何でも食べられるようになったので、好き嫌いを無くすためには給食はいいかもしれない。

しかし、学校自体は好きなのに、スクールディナーのために「学校に行きたくない」というのも本末転倒な気がする。
先生に「ウチの子は日本食になれているもので・・・あまり強制しないでください」とでも言ったほうがいいのか、このままスクールディナー期間が終わるまでなんとか息子に頑張ってもらう方がいいのか、迷うこの頃である。

投稿者 lib : 09:31 AM | コメント (2)

October 01, 2007

中国の農村の子供 2

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地元の女の子を道連れに歩くことになった私達、せっかくなので「中国の今」をレポートしようかと思い、夫を通訳にして彼女にインタビューしてみた。

まずは、中国の一人っ子政策は国民に浸透しているのか。
「兄弟は何人?」と聞くと、
「8人。私は上から2番目。」
と答える。

・・・・中国の人口は、まだまだ増えそうである。

近くに商店なども見当たらないので
「いつも何を食べてるの?」と聞くと、
「芋。昨日も一昨日も、芋。今日も多分芋。」
と言う。道端でお婆さん達が売っていた紫芋が主食であるらしい。
ちょっと胸が痛む。
(それでも、栄養バランスの良い食事を取っている筈の日本の子供よりもずっと健康的に見えたが)

彼女からも
「どこから来たの?」
「子供はいるの?」
など、たまに質問されたが、「ガイドしてあげる」と言った割には総じて大人しい子だった。

そんなこんなで30分程歩いただろうか。
あたりがざわざわとし始めたと思うと、彼女と同じ位の年恰好の子供たちが一つの方向に向かって興奮した様子で走っていく。その一団の中に友達を見つけた彼女は、私達に何か叫んで、皆と一緒に駆けて行ってしまった。

あっという間に彼女の姿が見えなくなる。
「あれ・・・?お金は・・・・?まだ払ってないのに」
と後に残された夫と私。

しばらくして、渓谷での綱渡りショーが始まった。
こんなショーがあるとは知らなかったが、地元の子供たちはこのショーを見るために興奮して席取り(観客席があるわけではないが、良いスポットがあるのだろう)をしていたらしい。

この綱渡りショーはすごかった。
渓谷を挟む形で両端の崖と崖に綱が張ってある。
上は空なので、もちろん命綱はなし。
もし落ちれば、数十メートル下の谷底にまっさかさまである。

その綱の上で曲芸をしたり、バイクで端から端まで渡ったりしている。
屋外で行われているので観客はショーを見るために特別お金を払うわけでもなく、たまたまそこにいれば誰でも見ることができる。
おそらく団体客を連れてくる旅行会社から料金が支払われているのだろうか。だとすれば、彼らに入るお金は雀の涙だろう。
ああ、命の値段の安い中国。(涙)

「命を大切にしろよ・・・」とつぶやきつつも、息を呑むようなショーが終わると、いつの間にかさっきの「ガイドさん」が私たちの隣にちょこんと立っていた。
走って戻ってきたのだろうか、息が弾んでいる。

「ああ、お金を取りに戻ってきたんだな」とこちらもほっとした様な気持ちになり、
「ありがとう」と言って財布を出すと、びっくりしたような顔をして拒否するしぐさをする。

お金を受け取る代わりに彼女が両手に持っていたものは、小さな水晶のかけらだった。
そういえば、紫芋を売っているおばあさんの隣で、これも売られていた。
この地方の特産品なのだろうか。小さくて売り物にならないものをどこからか手に入れてきたのかもしれない。

この期に及んでも私たちは、
「そうか、この水晶を売るのか」
と思っていたが。

両手に大事そうに乗せていた水晶を、彼女は夫と私に一つずつ、嬉しそうに「はい」といった風に渡し、「さようなら」と笑顔で言うと、こちらが何か言う隙も与えずまた走り去っていってしまった。

「お金目当てじゃなかったんだ・・・お土産までくれて・・・」
狐につままれたように、立ち尽くした私たちだった。

水墨画のような、仙人が出てきそうな現実離れした場所での思い出。

あれから5年半。彼女にもらった水晶は今でも家に飾ってある。
あの子は今でも村にいて、学校に行ったり農作業を手伝ったりしているのだろうか。
それとも町に出て、観光ガイドになる勉強をしているかな。

投稿者 lib : 10:18 PM | コメント (2)

September 25, 2007

中国の農村の子供 1

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息子のバリカンヘアを、「中国の農村の子供ヘア」と名付けて喜んでいたら、本物の「中国の農村の子供」の事を思い出した。

あれは2002年の2月、香港に行ったついでに夫とふたりで中国本土まで足をのばした。
私のお腹の中には小さな小さな息子の心臓が動き始めていた(はず)。

広東省にある、広大な渓谷が有名な観光地を訪れた。
渓谷は美しく、その周りに作られたウオーキングコースでは、お婆さん達が地元でとれるらしい紫芋を七輪のようなもので焼き、観光客目当てに売っていた。たしか一本10円くらいの値段だったが、涙が出るような美味しさだった。
電気もガスも通ってなさそうである。

公衆トイレに入った。一応男女別には分かれているものの、女子トイレには個室はおろか何の仕切りもなかった。
床に掘られた一本の溝を人々が一列に並んでまたぎ、前の人がぺろんと出したお尻を見ながら用をたすという、生涯忘れられないトラウマ・・・いや、貴重な経験もした。

ウオーキングコースを夫とふたりで歩いていると、いつの間にか、私たちの横に12歳くらいの女の子が並んで歩いている。
地元の子らしく、日に焼けて健康そうな肌色をしていた。
「将来、観光ガイドになりたいの。一緒に歩いて案内してもいい?」
と言う。

その前の年にモロッコを旅行した私たちは、行く先々で「頼んでもいないサービス」に小銭を要求された記憶がまだ新しかった。
(一番怖かったのは、レンタカーを運転していたときに信号待ちで急に車のドアを開けられ勝手に車内に座られ、『案内してやる』と強引に車から降りなかった男。ガクブルしている夫に代わり『すぐに降りろ、降りないと警察を呼ぶ前に私の鉄拳が飛ぶわよー!アチョー!』と叫びつつカンフーの真似事をして、何とか撃退したが、それ以来発展途上国を旅するときは自分では運転しないことにしている)

そんな記憶がまだ新しかった私たちは、少女の申し出を、「お小遣い稼ぎだな」と直感した。
まあ罪のなさそうな可愛い女の子だったし、地元の子供と話すのもいいかなと思い、そのまま一緒に歩かせることにした。

つづく

投稿者 lib : 10:56 AM | コメント (0)

September 18, 2007

クールな俺。をプロデュース 3 言葉編

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狙っているのかいないのか分からないが、言葉でも笑わせてくれるようになった。

身長計で背を測った時、夫が
「おっ高くなったな。3フィート(約90センチ)は軽く超えてるな」
と言うと、
「3フィート?僕2フィートしかないよ。でなきゃ靴が3つ必要だよ」
と言い放った。

夫と顔を見合わせて、大爆笑。
当の息子はきょとんとしていたので、冗談のつもりでなく、本当にそう思ったのかもしれない。
ただし、その後はウケをねらって、同じギャグを繰り返すようになった。
ああこうして、だんだん姑息な大人になっていくのね。(←知恵がつく、と言ってあげてください、お母さん)

お昼にラーメンを作って
「ラーメン食べる?」というと、
「ラーメン」という単語がわからないらしい。
(それまでは、ヌードルといっていたかも知れない)

「ラーメン?それは、教会のもの?」
と聞くので、なんで教会を連想したんだろう・・・と私も謎解きの心境になった。
(私は無宗教だが、夫はクリスチャンなので息子も小さな頃から教会に通っている)

しばらく考えて、「ラーメン」→「アーメン」に行き着いた。
日本のオヤジギャグにもなりそうにないが、何気にイギリス人の好きなRhyme(韻)になってるな。
でも学校で先生に
「Rhymeの例を挙げてみましょう~」
と言われて発言しても、誰にも分かってもらえないのが悲しい。
(いや、最近は「ramen」とメニューにあるレストランも増えてきたし、もしかしたら日英両国で通用する初の駄洒落・Rhymeの第一発見者かもしれない。でも結局は両国で「駄洒落オヤジ」程度の扱いしか受けなさそうだが・・・。)

「オヤジ」といえば、大人の様な性癖も現れてきた。
日本人でよく、本屋やCD屋に行くと便意を催すという人がいるが、息子もまさにこの傾向がある。
息子と一緒に図書館やDVDレンタルの店に行くと、必ず
「マミー・・・・プー・・・・」
と緊迫した顔で訴えられる。

よりによって、DVDレンタル屋にも図書館にも利用者用トイレがない。
DVDレンタルの場合は隣のマクドナルドに駆け込み、図書館の場合は家がすぐなので、あわてて家まで駆け戻っているが、先日一緒にCD屋に入ると、やはり同じ現象が現れ、トイレ探しに疾走した。

私自身にはこの経験がないのだが、これってどうしてなんでしょう?
本屋→トイレの関連性、メカニズムについて、知っている方がいたら教えてください。

投稿者 lib : 10:19 AM | コメント (3)

September 11, 2007

クールな俺。をプロデュース2

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「トドラー」から「少年」へと脱皮しつつある息子、笑える言動がまだあった。

3歳の頃から、車で出かける時以外は、いつもキックボードに乗っている息子、まさにキックボードは彼の体の一部となった。
近所でも、キックボードで疾走する息子の姿は目立つらしく、たまに歩いていると知らない人から
「あら、今日は乗ってないの?」
と聞かれるほど、切っても切れない関係となっていた。

最近、キックボードに片足乗りしたり、ボードの上でジャンプしたりしている。

・・・スケボーのつもりで格好つけているらしい。(特に、周りに人が多いと荒業の挑戦率が高い。)

(ちなみに「どこで買ったの?」と聞かれることの多いキックボードは、スイス製のこれ(http://www.micro-mobility.com/)です。軽量で操作性が良くて超お勧めですが、幼児用のキックボードは生産中止になったのかも。心ならずもレア物になってしまった。)

「When I was a baby….」と昔話を語るのは相変わらずだが、
「When I grow up……….」と、将来の夢にも言及するようになった。

将来なりたいものは、「バスの運転手」「医者」「料理人」「道端でDVDを売っている人」とその時の気分で変わるが、先日季節はずれのクリスマスもののDVDを見ていると、
「大きくなったら、サンタになりたい」
と言い出した。

普段は物をねだるばかりなのに、与える立場になりたいとは珍しく殊勝なことだと思い、
「いいねえ、サンタになって皆にプレゼントをあげるんだね」と言うと
「でも、大きな袋と、ベルと、トナカイが必要だから買ってくれる?」
ときた。

サンタになっても、設備投資はすねかじりかい・・・・・。

将来の夢を語るだけでは飽き足らず、
「マミーは大きくなったら何になりたいの?」
私にも聞いてくる。

そう聞かれると、
「私って、大きくなったらいったい何になりたいんだろう・・・」
と一瞬、真剣に悩んでしまい、少し切なくなる自分がいる。
マミーもまだ、脱却の途中なのよ。

投稿者 lib : 06:09 PM | コメント (4)

August 24, 2007

お知らせ

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コンピュータ故障のため
ブログの更新をしばらくの間、休まさせていただきます。

                         子育てママ

投稿者 lib : 08:46 PM | コメント (0)

August 14, 2007

クールな俺。をプロデュース

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冷夏のイギリスだが、家の中でうろうろしている息子を見ると、「夏休みの子供」だなあ、という感じで微笑ましくなる。

息子の「赤ちゃん期」は非常に短く、生後5ヶ月位で「トドラー顔」になった。
10ヶ月で歩き始めたころもあって、その後は成長に合わせて体のサイズこそ大きくなるものの、顔や全体の印象は殆ど変わらなかった。

と言うわけで「トドラー期」が長かった息子だが、ここ最近「第三次変換期」(勝手に命名)に突入しているみたいだ。
背も伸びて(計ってないので正確にはわからないが印象的に←いいかげんな親)急に少年ぽくなった。

それに伴い、性格も赤ちゃんぽさが消えてきた。
今まで着る物にもこだわりがなかったのが、自分で洋服を選びたがるようになった。

お気に入りの組み合わせは、大き目のTシャツ(単に年齢の大きいサイズを買っただけ)に、スポーツタイプのだぼっとした七分丈ズボン。
ポケットに手を入れて、すかして歩いている。

・・・ストリート系のつもりらしい。

街を歩いていたり、TVを見ている時にヒップホップ系の音楽が聞こえてくると、どこで覚えてきたのかブレイク・ダンスの真似事のような事もする。

なんとなく、息子の目指している方向がわかる気がする。

おかしいのが、家族だけでいるときは「マミィ~」「ダディ~」と甘えてくるのに、友達と話をする時は
「マイ・マムが・・・・」「ダッドが・・・」
と、言い方を変えていること。
「マミィ」「ダディ」は赤ちゃん言葉みたいで、友達の前では恥ずかしいのだろうか。

本人も、「もう赤ちゃんではない」という自覚があるようで
「When I was a baby………」
と、昔話を語り始めることもある。
「When I was a baby・・・」の後に続くのは、何処何処へ行ったとか、何を食べたとか、たわいのない事で1年前のことも「俺が赤ちゃんだった頃」として語られているのだが、たまに親も忘れているような、2~3年前の事の詳細を覚えていたりするので驚かされる。

息子の手がもっとかかる頃は「早く大きくなってくれないかな~」と思っていたが、いざ大きくなると「もっと赤ちゃんでいて~」と感じてしまう。

でも、たまに息子が赤ちゃん化して、「だっこ~」などと言って抱きついてくると、あまりの重さに投げ飛ばしたくなるのだが。


投稿者 lib : 11:06 AM | コメント (7)

July 31, 2007

ロンドンの理容室 (2)

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すたすたと店に入っていく息子の後に続いて、床屋さんに足を踏み入れた。
考えてみれば、日本だろうがイギリスだろうが「美容室」でなくて「理容室」に入るのは始めての体験だ。

ヘアドレッサーは二人。(推定アルジェリア人)
先客の仕事中の彼らに、
「予約していないんだけど、この子お願いできますか?」
と聞くと、一人が黙って椅子を指差した。
予約制ではなく、来た順番に椅子に座って待つシステムらしい。

既に待っている客がひとり。
その隣に座り、改めて店内を見回すと、壁のペンキは剥げ落ちてるし、ソファにも穴が開いているし、「場末感」が非常に漂ってくる。
「タオルはちゃんと洗ってあるのだろうか、ハサミを通じてシラミが移ったりはしないだろうか」
とだんだん不安になってくるが、隣に座っている息子は初の床屋体験にやる気満々の様子。
ここは彼の意思を尊重することにする。

彼の順番が来て、椅子に座る。
「どういう風にする?」
とヘアドレッサーA。

そういえば、自分以外の、それも男の子の髪型を注文するなんてこれも初めてだ。
漠然と、短くすっきりしてもらおうと思っていたが、なんと言って良いのか分からず、
「み・・・短くしてもらえる?」
と言ってみた。
(床屋で髪を短くするのは当たり前だと心の中で自分に突っ込みをいれつつ、これ以外の表現が見つからなかった。)
「どの位短く?」と聞き返され、
「う・・・なんて説明したらいいのか分からない」
と答えると、A氏は
「彼くらい?」(同僚のヘアドレッサーBを指差す。彼は殆どスキンヘッドの上に後頭部が禿げ上がっている)
「それとも僕くらい?」(A氏の髪は2,3センチの長さに刈ってある)
「それか彼くらい?」(同僚B氏が切っている、筑紫哲也風の長めのロマンスグレーの客を指差す)

写真などではなく、「生きた人間サンプル」を目の前に提示され、一瞬たじろいだが
どうやらここでは、「長・中・短」の3種類のメニューしかないらしい。
「うーん、じゃああなたくらい」
と無難な「中」を注文。

A氏はうなずくと、おもむろにバリカンを取り上げ、慣れた手つきで息子の襟足から思い切りよく刈って言った。

今まで「ヘアカット」というものは、その人の頭の形や髪質に合わせて切っていくものだと思っていたが、私の常識を覆すようなバリカンさばきだった。
がんがんがんがん、後ろから、横から何のためらい無く刈って行く。
その姿、芝刈りのごとし。
トップは少し長めに残し、ハサミで処理して終了。

近所でよく見かけるフットボールシャツを着ている男の子のヘアスタイル、一丁上がりである。
なんとなくその足で、アーセナルのシャツを購入しに行きたい衝動にかられた。

途中から様子を見に来た夫がB氏のハサミ捌きをじっと見ていたかと思うと
「彼、いい仕事してるな。僕も切ってもらおうかな・・・」
と言い出した。

「そうね、やってもらえば」
と投げやりな気持ちで勧める。

B氏は夫の髪も基本はバリカン、トップはハサミで仕上げていた。
普段は彼も日系の美容室に行っているが、驚いたことに仕上がりは普段と何の変わりもなかった。

料金は2人で15ポンド。驚きの安さである。大人8ポンド、子供7ポンドの内訳だろうか。
夫は普段は35ポンド払っているはずだが、4分の1以下の値段。
日系サロンではハサミを中心に、1時間程かけてカットしてもらっているらしいが、工程がどうあれ仕上がりは同じという結果となった。
頭髪がかなり寂しくなってきている夫、お金や時間をかけても限界があるらしい。
薄々感づいてはいたが今回、それが図らずも証明された形となった。

しかし息子は印象が随分変わってしまった。
「ハンサムね」とか「将来はジャニーズ?」とお世辞でもたまには言ってもらえた彼だが、坊主頭寸前にされ、「フットボールファンのオヤジの息子」というより、「中国の農村地帯の子供」みたいになってしまった。
まあ本人は気にいっていて、ご満悦の様子だが。

今後は息子は引きずってでも、もう少しまともなヘアサロンへ、夫はこのバーバーに送り込み、家計の均衡を保つこととする。
バリカン刈りの父と子、そして金髪まじりの母は家路についたのだった。

投稿者 lib : 11:31 AM | コメント (6)

July 24, 2007

ロンドンの理容室 (1)

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4歳と9ヶ月にして息子が床屋さんデビューした。

3歳位までは一瞬たりともじっとしていなかった息子、床屋さんで椅子にじっと座っているなんて不可能だったので、彼が生まれてから約5年間、私が散髪していた。

彼の髪は直毛で、ごまかしのきかない髪質である。
量もあるので、梳いて毛量調整もしなければならない。
ビデオなどを観ているすきにすばやくカットするが、そうは言っても頭は動くし、彼の集中力もそう長くは続かない。
限られた条件の中で、いかに迅速にハサミを動かすか、時間との戦いでもある。
大抵、時間切れになってしまい、翌日、翌々日に持ち越すのは当たり前。
クリケットの試合のように、数日間にわたって結果を出す長期戦であった。

このような過酷な条件下でも、私のヘアカットは好評で、「ありがちなザンギリになっていない」とママ友にはよくお褒めの言葉をいただいた。
「しまった・・・道を間違えたかも・・・カリスマ美容師(死語?)になれたかもしれないのに・・・」
と歯ぎしりしても後の祭りである。

息子も、ものがだんだん分かるようになり、4歳半のころから大人は「ヘアサロン」へ行って髪を切るものだということが分かり、興味を持ち始めたようだった。
「床屋さんごっこしよう」と誘うと息子も乗り、家のバスルームの鏡の前にケープをつけて座らせ、初めて20分程で仕事が完了した。
4年半のヘアカット歴で大きな転機だった。

そして先日、彼の髪の毛が伸びてきたのでまた切らないとなあ・・・と思っていると、なんと息子の方から
「ヘアサロンに行きたい」
と言い出すではないか。

今まで何度こちらから誘っても嫌だと言っていたので、彼の気が変わらないうちに連れて行くことにする。

「マミーの行っているジャパニーズ・サロンに行こうか。格好よくしてもらおう」
と提案すると
「そこじゃ嫌だ。」
と言う。

ならば近所に中国系の美容師さんが経営しているサロンがあるので、(息子がもっと小さくて時間が無い頃、私も切ってもらった事があった)そこではどうかと言うと
「あそこも嫌だ。」
と言う。

「じゃあどこに行きたいの」
と聞くと、息子の胸にはすでに心に決めた店があるらしい。

言われるがまま息子に着いて5分ほど歩くと、いつも行くニュースエージェントの隣にある、
「場末の」
「地元のビルダーやプラマーの皆様に愛される」
「バーバー」
といった風情の「床屋さん」の前で彼の足が止まった。

つづく

投稿者 lib : 10:47 AM | コメント (2)

July 17, 2007

ロンドンの美容室

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髪を切るのが好きである。

イギリスに来てから、いまいち気に入った美容師さんが見つからないが、それもあって、日系の美容室がオープンすると「今度こそ運命の美容師さんに会えるかも・・・」と淡い期待を抱き門をたたく。
数回通ったところで、「まあ悪くはないんだけど・・・・運命の人ではないわ」と他の美容室に乗り換える、というサイクルをここ数年繰り返している。

私は短い方が好きで、セミロングにしたこともあるものの、この10年程は基本的にショートボブにしている。
若い頃は色々試し、失敗もしたが、それなりに経験を重ね、どのスタイルが自分に似合うか、どういう風に注文すれば良いかも分かっているつもりでいる。
そのせいか、大人になってからは美容室に行って「失敗した」と思った記憶はない。

先日、セントラルに新しくオープンした美容室に行ってみた。
日本人の美容師さんは1時間半もかけて、注意深くカットしてくれた。
仕上がりは上々で、我ながら「おっ。いいねえ」と気に入った。
カラーもお願いしていたのだが、カラーで今まで失敗したことはなかったので、カットを気に入った事で、今回は限りなく100%に近く成功したと思ってしまった。

この慢心(?)が悲劇を招いた。
日本人の美容師さんが、「カラーは日本人でなくてもいいですか?」と聞いてきた。
日本の美容室でもカットはメインの美容師さんがして、カラーはアシスタント(?)の人がすることは良くあることなので、「いいですよー」と深く考えずに答えた。

「カラー担当の者です」と紹介され、女性の美容師さんにバトンタッチした。
私は基本的に地毛の色を残し、ポイント的にハイライトを入れるのが好きなのだが、日本人の美容師さんだと、すぐに分かってくれるので、ここでもまだ余裕でいた。

「どういう風にしたい?ナチュラルな感じがいい?」と聞かれた。
日本人にカラーを入れてもらうと、「全然変わってないやん・・・」と思うことが多いので、「うーん、ハイライトを入れて少し明るめにしたいかな」と答えた。
前回のハイライトがまだ残っていたので、「これくらい?」と聞かれる。
「もうちょっと明るめかな。」
彼女は少し考えて、「あなたの目はブラウンよね。(確かに私の目は日本人にしては茶色い)でも髪の毛は黒よ、黒。(まあそうなんだけど、日本人にしては茶っぽい)だから、あなたの目の色に合わせたらどうかしら?地毛を残しつつ、ライトブラウンとダークブロンドを入れるのはどう?」

彼女は「カラー専門」ということで自分の仕事に自信をもっていそうだったし、私ももともとがアバウトな性格だし、髪の毛はカット98%、カラー2%と思っているので「良さそうね。それでお願い」と適当に答えた。

彼女の話す英語はとてもロンドンアクセントだったので、「イギリス人?」と聞くと、「トルコ人だけど、2歳の時からロンドンに住んでるの」と言う。
彼女がカラーを入れている間、美味いケバブ屋の話などで盛り上がり、仕事完了。

髪を洗い流して鏡の前に座ると、そこには
「限りなくブロンドに憧れているが、顔はどう見ても東洋人の女」
がいた。

誤算だった。
カットが成功したのですっかり安心していたが、「ロンドン育ちのトルコ人」にはやはり日本人の感覚は伝わらないのだということを痛感した。

「ちょっと明るくしたいの」 → 「ブロンドにしたいの。だってその方が可愛く見えるし、男にはもてるし。これが終わったら青いコンタクトレンズを買いにいくつもりよ」
と彼女の中で脳内変換されていたらしい。

日本人の髪は「黒」だとは言っても、私たちから見れば「赤味がかった黒」「緑がかった黒」「漆黒」「マットな黒」「シアーな黒」「天使の輪ができる黒」(後半は何のことか私もよく分かりませんが)など微妙な違いがあるのが分かるが、そのような日本人の繊細な感覚を理解してもらえる訳もなく。彼女から見れば「黒」は「黒」。それ以外のなにものでもないのだろう。
文化的差異をなめていた。

どうみても不自然だが、だからと言って暗い色に染め直すのももったいないし(貧乏性)悔しいので(面倒くさい)、とりあえず人々の反応を見てみることにした。

まず家に戻って息子の第一声。
「ワ~オ!モンスターヘア!」
はいはい、やっぱり子供は正直だな。

その後、近所のニュースエージェントの娘(7歳)に会う。
「オー!Your hair is fantastic!」
子供だが、営業トークも入っているかもしれないので当てにならない。

夫の意見を聞くと
「人にはいろいろ好みがあって、良いと思う人もいれば良くないと思う人もいるよ」
「あなたの意見を聞いているのよ」
「・・・・君には黒髪の方がよく似合う・・・・」

息子の幼稚園の友達のお母さん達やママ友は
「髪の毛切ったのね!いいわね!」
と髪の「長さ」を褒めてくれるが、「色」に触れる人はいない。

という訳で、美容室にはやはり「以心伝心」などは期待せず、雑誌の切り抜きなどを持っていくのが良いでしょう。

投稿者 lib : 12:01 PM | コメント (7)

July 03, 2007

イギリスこの一週間

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先週は忙しい一週間でした。(別に私が忙しかったわけではなく世間が、ですが)

ブラウン政権の発足で週が明けたと思ったら、翌日にはピカデリーで爆破未遂、続いてグラスゴー空港には車が突っ込み炎上。イギリス北部では大洪水。
そんな合間にもウインブルドンでは杉山愛ちゃんがシャラポワと、森上亜希子選手はヴィーナス・ウイリアムスと対戦。
そしてとどめは日曜日のダイアナ追悼コンサート、と、それぞれは何の繋がりも無い事ですが、普段あまりテレビを見ない私もテレビに釘付けの一週間でした。

グラスゴーはブラウン首相の出身地ということもあり、テロ未遂は暗雲ただようブラウン政権の前途を象徴するような事件だったといえるでしょう。

BBCを通じて国民に警戒を呼びかけたブラウン首相でしたが、テロ未遂以上に私に衝撃をもたらしたのは、紺色のスーツに白シャツ、結び目のひん曲がった紺のネクタイという、「ヨレたおっさん」そのものの、彼のいでたちでした。
V&Aミュージアムで「21世紀のBoring Fashion展」が開かれたら、そのまま展示できそうです。今時公務員でもこんな格好をしている人はいないでしょう。

メディア映りに細心の注意を払っていたブレア前首相にはスタイリストがついていたようですが、ブラウンさんにはいないのでしょうか。
国が苦難を抱えている時でも、前向きなイメージのブレア前首相に目玉が飛び出しそうになって語りかけられると、いかにそれが空々しい言葉の羅列であろうが「まあ明日はいいことあるかな・・・」と一筋の光が見えたような気がしましたが、ブラウン首相に辛気臭い顔で「英国民よ、一丸となって立ち向かおう」と励まされても、なんだかかえって落ち込みそうな気がします。
今の時代、政治家にとっていかに「ルックス」が重要な位置をしめるかを、改めて思い知らされた気がします。

そこで災難続きのブラウン首相に応援の意味をこめて、私なりに「ブラウン改造計画」をたててみました。
大きな顔のイメージの割には肩幅が狭いようなので、詰まって見える紺などの寒色系よりも、薄いブラウンやグレーの膨張色のスーツを選び、包容力あるイメージを演出されてはいかがでしょう。シャツは意外にピンクなどがお似合いになりそうです。
見ようによっては子供や女性に人気の「くまさん系」キャラにもなりうる素材なので、慎重なイメージを残しながらも大らかで柔らかい印象をアピールすると国民に幅広く訴求できるのではと老婆心ながらご忠告いたします。

話はがらりと変わってウインブルドン。森上選手は惜敗したものの、あの小さな体でウイリアムスから1セット奪う大善戦、日本の星です。
しかしなんなんでしょうあのフリフリウエアは。ブランドはフィラでしたが、まさかとは思いますが日本人のデザイナーが「メイド服」をイメージしてデザインしたのではないことを祈ります。
スポンサーが「ミキハウス」なのでラブリーなイメージを演出したのかもしれませんが、それにしても森上選手の凛々しいお顔に似つかわしくありませんでした。サンバイザーにはフリルがついていなかったことが、せめてもの救いです。
(そういえばシャラポワもフリルのウエアを着ていましたが、なんというか真剣な勝負の場に、フリルのようにスィートなものがそもそも似合わないような)

と言うわけで、一国の首相が交代しようがテロ未遂が起ろうが、結局は人の着ているものしか見ていないような気もする私ですが、「女ドン小西」の汚名をきせられる前に、このくらいで止めておこうと思います。

(あ、明日はシェリー・ブレアのインタビュー番組が控えてる。明日もテレビに釘付けになりそうです)

投稿者 lib : 02:22 PM | コメント (0)

June 26, 2007

Trance ロンドン公演

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鴻上尚史さんの舞台、「トランス」を観て来た。

実は以前、鴻上さんがパーソナリティーを務めているラジオ番組のスタッフの方から、番組内でこのブログを紹介したいというメールを頂いた事があった。結局その話は潰れてしまったが、それ以来一方的に、なんとなく鴻上さんに親近感を持っていたので今回ロンドン公演するという話を聞き、駆けつけた。

開演時刻ぎりぎりにシアターに着くと、小さな劇場は殆ど埋まっており、最上列の席だけが空いていた。ちなみにお客は殆どイギリス人。階段を上り、空いている席に座ろうとすると、角の暗闇からこちらを見ている日本人の顔が突如としてにゅっと浮かび上がり、ぎょっとした。
ほぼ同時に、それが鴻上さんご本人だと分かり、二度ぎょっとした。

なんとなくただならぬ雰囲気を漂わせていた鴻上さん、一度目の「ぎょっ」の時には
「うっ。危ない人(アルコール入り)がいる」
と咄嗟に感じたのだが、二度目の「ぎょっ」で鴻上さんだと分かってから、
「きっと開演前で気持ちが張り詰めているのね」
と、好意的に解釈することにした。

鴻上さんも一人で座っていらしたので、
「話しかけてみようかな~。でも緊迫感漂ってるような気もするしな~。機嫌が悪かったら灰皿投げられるかもしれないし(それは別の人か)・・・・」

などと思いつつ、ふと足元を見ると、ラジオで話していた通り、MBTのシューズを履いている。(MBTはこういう靴です)
「おっ。履いてる履いてる・・・・」
などと考えているうちに、スタッフらしき女性が来て、彼と私の間に座ったが、その女性との会話を聞くと、TVなどで見る通りの「人の良―い」鴻上さんだったので、がくっと来た。

舞台は3人だけの俳優さんによって進められ、約2時間の間、長台詞の応酬が続いた。
全くとちらないでこれだけの台詞を記憶して言えるだけでも、アクター・アクトレスってすごいー。
オカマアーティストのSANZO役の人がなぜか出ていなくて、代役の役者さんが台本を持ちながら健闘していたが、舞台の進行に影響を与えず、これにも感心。
(ちなみにこの人は、オカマの格好をしている時は「ちょっと勘弁・・・」といいたくなるような容姿に見えたが、医者の白衣を着た途端、素敵なナイスガイに変身し、こちらから擦り寄りたくなった。これが「白衣効果」というものか。「ゲレンデ効果」と同じくあなどれない)

ストーリーは古今東西、共通するテーマで、「トランス」はもともと日本で演じられた作品だというが、イギリスでイギリス人が演じても何の違和感もなし。面白かった。

舞台が終わってから、鴻上さんに「とても面白かったです」と声をかけてみた。
鴻上さんは腰の低い感じで「あ、ありがとうございます。○%#×@×・・・」(後半は聞き取り不可だった)と答えてくれた。

鴻上さんの後ろから退場しようとすると、客席の階段を下りながら、ちょっとコケそうになっていた。

やはり酔っ払っていたのか、MBTシューズのせいなのかは、分からない。

The Bush Theatre  で 30日まで公演するそうです。

投稿者 lib : 11:34 PM | コメント (0)

June 19, 2007

バースデーパーティー

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6月は息子の友達のバースデーが多く、3回御呼ばれした。

息子が生まれる前は「ベッカム夫妻が長男のバースデーパーティーにクラウンを呼んでお祝い」などという新聞の見出しを見て、「お金持ちだから派手にやるのね~」と思っていたが、実はイギリスでは割と普通にそういう事が行われていることが、子供を産んで分かった。

郊外に住んでいるママ友によると、学校に入ってからは毎週の様にバースデーパーティーが入るらしい。

パーティー好きなイギリス人だから子供のパーティーにも力が入るのか、ここ最近の傾向なのか知らないが、子供のパーティーに貸し切りできる施設なども多い。(親同士の見得合戦という噂もあり)
おもちゃ屋にはプレゼント用の、安くて大きく見栄えのするおもちゃ、カード、ラッピング類、パーティーグッズなどが所狭しと並んでいる。

友人の「お金持ちの友人」は、一人娘の誕生日にリムジンを借りてドライブ、夜はヘリコプターで夜景をみせたとか・・・・娘にプロポーズでもするんかい?

というわけで、地味パーティーだろうが派手パーティーだろうが、子供を持つ親にとって「バースデーパーティー」の開催は必須、何気にプレッシャーを感じるイベントでもある。

我が家では、息子の4歳の誕生日までは、親しい友達を呼んで自宅で行っていた。
しかし年々招待する人数も増えるし、子供は大きくワイルドになるしで、今年からはどこか場所を借りなければならないだろう。

6月の第一週、Sちゃんのお誕生会は公園で行われた、ピクニック・バースデー。
夏生まれの子は、この手があるからいい。
お金もかからず、子供も走り回れ、大人もそれなりに楽しめる。
イギリス人のお母さん(仮名キャシー)と話しをすると、
「この公園の木の遊具、20年前と変わってないわ。私も4歳の頃よくここで遊んだのよ・・・」
という。
一同、瞬時に彼女の年齢を計算し、つかの間の静寂が広がる。
この様に、普段話さない人と会話ができるのもバースデーパーティーの醍醐味である。

第二週は学校の友達、K君の誕生日だった。
近くのスポーツ・センターの中にあるソフトプレイルームを借り切ってのパーティーだった。
これは適当にスナック、飲み物、ケーキを用意すればいいくらいなので楽だ。
招待された子の親は、子供を連れてきて、パーティーが終了する時間に迎えに来る人が多くて、これも都合がよいだろう。
ただ会場に残っていた親は「もう飽き飽き・・・・」という表情でひらすら時間が過ぎるのを待っている風で、興奮する子供達と倦怠感漂う親の表情の落差がとてもシュールだった。

第三週はC君のパーティー。
これはC君宅で行われた。
主催者側は大変だが、やはりホームパーティーは落着けて楽しい。
ふと見ると、息子が年下の男の子に幼稚園で習った手遊び歌を教えていて、息子の新たな一面を発見できたようだった。

と言うわけで、どこの子供も「お姫様、王子様」な今日この頃だが、この子達が大人になった頃、社会がどうなるんだろうとちょっと心配でもある。

「お姫様のように育てられた女」と「王子様のように育てられた男」の結婚生活ははたして成立するのか。

「王子様のように育てられた上司」の下で、「お姫様のように育てられた部下」が働く職場ではたして円滑な意思疎通ができるのか。

なんだかちょっと不安。(そして親はいつまでシモベでいればいいのか。その前に、何歳までバースデーパーティーは続くんだ。)

投稿者 lib : 02:28 PM | コメント (4)

June 12, 2007

イギリスのプライベートスクール見学記

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「子供の教育は公立校(でもGood schoolね)で十分」と思っている私達も、私立校を見学した事がある。

息子が現在通っている幼稚園の付属小学校に行けないと分かった時、他の公立校にLate applicationを出すと共に、家から通えそうな私立校のリサーチも始めた。

授業料は安いところで年間6千ポンド程度(約120万円)、高いところで1万5千ポンド程度(約300万円)。まあ平均して1万ポンド(200万円)というところか。ちなみにウィリアム王子やハリー王子が通った名門イートン校などは、年間2万ポンド(約400万)以上だが、このようなパブリック・スクールは大抵全寮制なので部屋、食事込みの値段なのだろうか。とすると何気に割安感も漂う。いや、やっぱり高いか。どちらにしても、こんな細かい事を気にしている時点で父兄の資格なしだろう。

しかしこれはあくまでも公称(?)価格であり、この他に制服代、遠足代、特別講師代などその他もろもろの諸経費が上乗せされる。

とりあえず手始めに、家から徒歩5分の場所にある私立小学校の見学に行った。

約束の時間に行くと、校長先生(学校のオーナーでもある)が出てきた。
背が低くてぽっちゃり気味だが、なんだか野心が服を着て歩いているような女性だった。

この校長先生が誰かに似ている。喉まで出掛かっているのになかなか分からなくて気持ちが悪い。
彼女が学校の説明をしてくれている間、誰だろう誰だろうと必死に考えて、やっとそれがアンパンマンに出てくる「ドリアン王女」だと分かった。(ドリアン王女をご存知ない方はこちらから)

胸のつかえはとれたが、お陰で先生の話を殆ど聞き逃してしまった。
遅れを取り戻すために、あわてて話に集中する。

ここはモンテッソーリの提唱した教育論を実践している幼稚園・小学校で、子供達はそれぞれの進度に合わせて個別に学習しているとのこと。そういえば以前、モンテッソーリの幼稚園に子供を通わせているお母さんが、「モンテッソーリでは子供がそれぞれ別の事をするんです」と話してくれたことがあったが、「公立幼稚園でもみんなめいめい勝手なことしてるけどなあ・・・」と思った覚えがある。やっぱり違うんだろうか。

先生の案内に従って学校内を見学したが、校庭をみせてもらった途端、「こりゃダメだ」と早くも心の中でダメ出しした。
狭い、狭すぎる。並外れてアクティブな息子、しかも「おバカでもいい、たくましく育って欲しい」と願っている親としては学校を選ぶうえの最優先事項は教育方針云々よりも、校庭の広さである。

だからと言って「これで帰ります」という訳にもいかないので、一応教室の中も見せてもらうことにした。
見ると息子と同じ位の男の子が算数の計算問題に取り組んでいる。
ノートをのぞくと、

90 – 27 =
35 + 13 =
48 – 20 =

なんと2桁の計算問題だ。驚いて彼の年齢を聞くと、ドリアン王女、いや校長先生は
「彼はたったの4才です」
と胸を張って答えた。

こりゃ凄い、やっぱり私立は高いお金を取るだけあって違うな・・・と感心し、彼が解答を書き込むのを見守った。

90 – 27 = 30
35 + 13 = 2
48 – 20 = 9

全部違ってるやん・・・・

Prospective customer(未来の父兄)に見せるためにできもしない問題をやらせていたのか(実際の中身とは異なる場合がございますってやつだな)、本当にこの子が学習中だったのかは知らないが、どちらにしても全くそのレベルに達していない問題を子供に解かせる意味があるのか。

なんだかなあ。
まあどっちにしても、私たち親子の最大チェック事項は「校庭の広さ」なので小さな事ではあるが。

しかし「ドリアン王女」にも会えたし、なかなか面白い体験だった。(息子も連れてくればよかったなあ・・・喜んだだろうに)
結局この後、他の公立校からオファーをもらえたので他の私立校は見学に行かなかったが、また機会があったら他の学校も冷やかしに行き、「プライベートスクール荒し」をしてみたいものだ。結局校庭の広さしか見ないような気もするが。

投稿者 lib : 10:41 PM | コメント (0)

June 05, 2007

Good School, Bad School

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息子が通っている幼稚園は、エリアの人々に「Good School」と呼ばれる公立小学校に付属している。

毎年公表される「League Tables」と呼ばれる全国共通テストの結果と、Ofsted(教育機関の査察団体)のレポートにより学校の良し悪しの判断が下されるのだが、お陰でうちの近所の公立小学校はそれぞれが「Good School」「Useless School」と地元の人からはっきりと色分けされてしまっている。

人口密度の高いロンドン、Good Schoolの席取り争奪戦はすさまじく、子供のために学校の近くに引越ししたりする親も珍しくない。(学校に入れる優先順位は①すでに通っている兄弟の有無、②スペシャルニーズ、③学校からの距離)当然学校の近所のプロパティ相場は上がる。

当然の結果としてGood Schoolには定員以上の願書が集まり、Useless Schoolは定員割れとなる。(これも公表されている)

息子は今年の9月からレセプションクラス(1年生の下のクラス)に入る。レセプションは、小学校に属するので、幼稚園に通っていても、願書を出し直す。で、出した。

その結果、学校から徒歩10分の我が家は「遠すぎる」ために息子はレセプションクラスの席を得る事ができなかった。

今年は60人の定員に対し180程の願書があったそうだ。一方この学校から1Km位しか離れていない「不人気校」は60人の定員に対し、願書が40だったそうな。

息子は幸運にも、別の「Good School」に入ることができたが、「Useless」と烙印をおされてしまっている学校が人事ながら気になる。
成績もダメ、Ofsted reportもイマイチ、毎年定員割れでは教員や生徒のモチベーションはどうなってしまうんだろう。
結果的に「子供の教育に関心のない親」の子供が集まることになり、Good Schoolとの格差はますます広がるばかりだろう。
夫によると労働党が政権をとってからLeague Tablesの公表が始まったそうだが、今のところ弊害の方が大きいような気がする。

しかし「Good School」に何の苦も無く入れる人たちもいる。
それは学校を取り巻く「カウンシルフラット」の住民たち。
私の住んでいるエリアは人種も階級も、貧乏人も金持ちも、ごっちゃになって住んでいる地域だが、この学校の周りにはもともとカウンシルフラットが多い。

昨年、学校の隣が再開発されて、高級フラットが建てられた。
以前、冷やかしで見に行くと、「80万ポンド(1億6千万円)の部屋しか残っていません」と言われた。そういう高級フラットだ。

しかしこの高級フラットにソマリアからの移民の人たちが住んでいる一角がある。

数年前、政府が「民間業者が新たにフラットを建設する場合は、その30%を政府に引き渡さなくてはならない」という法律を作った。その結果、普通に働いている我々には手の出ない、いわゆる「億ション」(でもカウンシルフラット)に難民の方々が優雅に暮らしているのだ。

難民や、生活保護を受けているイギリス人に厳しい目を向ける人もいるが、私はまあシステムが許すのならばそれを利用するのは構わないのではないかと思っている。悪いのは、穴が開きまりで簡単に不正のできるシステムを作っている人たちであって、責められるべきは政府なのではないか。

と、普段はカウンシルフラットの住人に割と寛大な私であるが、息子が学校に入れないことが分かって以来、彼らを見るたびに少し複雑な気分になるようになった。

彼らは私たちの税金で高級マンションに住み、子供は徒歩2分のGood Schoolに通わせている。ミドルクラスの親が必死になって近所に家を買い求める学校だ。少子化の傾向はイギリス人にもあるが、なぜか難民の人達は子沢山が多い。5人、6人当たり前。(=他の人にとって学校がますます狭き門となる)
税金を払っている私の子供はその学校に入れなかった。今でも難民の人々を責める気はないが、まあCrazyな事態である。

投稿者 lib : 12:56 PM | コメント (0)

May 30, 2007

ガールフレンド

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以前のブログで、一度は相思相愛になったアリスの存在を重く感じ始めた息子の心境をお知らせしましたが、その後新たな動きがあったのでご報告します。(芸能レポーター風)

息子の新たなガールフレンドの名前はノラ。
髪はブロンドで、確かに可愛い。

家でもノラの話をする事が多いので、夫がふざけて息子に
「アリスとノラと、どっちが可愛い?」
と聞くと、息子は
「ノラ・・・・・Don’t tell anyone」
と小声で答える。こんなやり取りがよく見られるようになった。ああ男って・・・・。

ある日、幼稚園にお迎えに行くと、ちょうどノラと息子が遊んでいるところだった。
ノラが、「あと5分だけ、遊んでもいい?」と流暢な英語で(当たり前か?)懇願するように私に聞いてくる。
青い瞳でまっすぐに見つめられて、息子ならずとも私もよろめきそうになってしまった。

しかしアリスも負けてはいない。

先日、幼稚園でとった集合写真を見ると、胸をはり自信たっぷりに微笑むアリスの隣で、息子が小さくなって写っていた。
「アリスがいつも隣に来るんだ・・・」という息子の訴えは本当だったらしい。

しっかり者のアリスに対して、ノラは守ってあげたくなるような可憐なタイプ。
アリスは今から将来の成功が保障されていそうな感じだが、ダンナさんを尻に敷きそうにも見える。

「確かに、嫁にするならノラかなあ・・・・」

などと親バカ(バカ親?)妄想をする私であった。

それにしても息子の幼稚園にはイギリス人の他にも、バングラディシュ、ソマリア、ギリシャなどの国々から来た子供達がいて、さながらUNサミットのようなのだが、ガールフレンドが二人ともホワイト・ブリティッシュか・・・・・

世界の男の、最も優勢な好みがすでに4歳時において確立されるということだろうか。
ちょっと複雑な気分でもあった。
「男は母親に似た人を好きになる」というのは嘘だったのか・・・。

あ、息子のクラスにオリエンタルの女の子はいないんだった。とりあえず、ほっ。


投稿者 lib : 09:51 AM | コメント (0)

May 15, 2007

帰ってきたスピーチセラピー 4

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スピーチセラピーの当日、息子のクラスはミュージアムへ遠足に行く日だ。
皆がバスに乗り込む中、息子だけ取り残されるのも可哀相かな、と思いその日は幼稚園を休ませる事にした。(親ばかだとは思うが)

ちょうど夫もその日は仕事が休みだったので、親子3人で約束の時間に学校に行った。
スピーチセラピストに、これまでの息子の言葉の発達状態を説明した後、息子がアセスメントを受けることになった。

これは隣で見ている親の方が緊張する。
セラピストは息子に絵を見せて、その名前を言わせた。

息子は、KやCの音を上手く発音できない癖があり、例えば「カップ」なら「アップ」と言ってしまう。
セラピストは、息子の答えを彼が発音した通り、発音記号で記入していた。
ふむふむ、これで弱点がわかるという訳だな。

その後、似た発音を聞き分けられるかのテストをした。
例えば「Mouth」と「Mouse」、「Glass」と「Grass」など。

これには息子は苦労していた。
しかしこれはちょっと・・・・親でも難しい。
ネイティブの親を持たない子供としては、聞き分けられないのも当然ではないかと思った。
(スピーチセラピストもそれは十分に分かっているのだろうが、なんとなくそれを言ったらこの人たちの存在意義の問題にまで発展してしまいそうでお互いに『親がネイティブでない』ことの不利については最後まで触れなかった)

アセスメントは30分続いた。息子は流石に最後には
「幼稚園に行って遊びたい・・・・」
と弱音を吐いたが、なんとか最後まで持ちこたえた。
この年齢が持続できる集中力は5分程度だと聞いたことがある。それにしてはよく頑張ったぞと息子を褒めてやりたい(親ばか発言その2)

ふと横を見ると、夫が、息子よりも更に疲れ切った顔で座っていた。
前回のスピーチセラピーには私一人で付き添ったので、今回が初体験だった夫にはストレスが過ぎたのだろうか。

定期的なスピーチセラピーを受ける必要はないでしょう、今回のアセスメントに関するレポートは後で送ります、との言葉を聞いてほっとし、部屋を後にした。

幼稚園の側を通ると、スタークラスの子供達が庭で遊んでいるのが見えた。
息子はいてもたってもいられなくなったらしく、
「一緒に遊びたい」
と訴えてきた。残り時間1時間位だったが先生に頼んで参加させてもらい、夫と二人で家に戻った。

普段は滅多に「疲れた」と言わない夫だが、息子がテストを受ける姿を見て疲労困憊したらしく、その後ベッドで寝てしまい、そっちの方が心配だった。

私自身は息子の言葉の発達をそう心配もしていないし、かねてから「○○セラピー」とか「カウンセリング」の類のものには少々懐疑的な気持ちも持っているので、「まあ先生への義理も果たしたし、良かったかな」といった感想程度しかもたなかった。ユルい親である。

来週はホリデーのため、お休みさせていただきます。


投稿者 lib : 02:19 PM | コメント (0)

May 08, 2007

帰ってきたスピーチセラピー 3

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ランゲージ・センターから予約の確認の手紙が届いた。
アセスメントは、息子の通っている学校で行われるという。
その日は普通に幼稚園に行き、一時間ほど抜ければ良いらしい。なかなか便利だ。
面倒くさいことには変わりが無いが、これなら行ってやってもよいか。(傲慢な態度)

それからしばらくして幼稚園からプリントが配られた。
サイエンス・ミュージアムに遠足に連れて行ってくれるという。(フムフム)
その日はバスも出るとの事。(息子喜びそ~)

日付をみると・・・なんとスピーチセラピーと同じ日ではないか。
一年365日あるというのになんでよりによってこの日に・・・。
プリントが配られたのが木曜日、遠足が次の週の火曜日だ。

学校も、もう少し早く知らせろよな~と思いつつ、ランゲージ・センターに電話をかけ予約の変更ができないか聞いてみる。
しかし、変更は難しく、ウエイティングリストも長いため、おそらく夏休み後になってしまうし、セラピストも学校には来られないだろうとの事。
スピーチセラピストは、思っていたほどヒマではないらしい。

しかしながら、私の中での優先順位は
遠足>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>スピーチセラピー
だったので、
「じゃあ一度キャンセルして、その後の事はまた考えます」
とセラピーを迷いもなく切り捨て、電話を切った。

その日、息子を迎えに行った時に幼稚園の先生に
「実は遠足とスピーチセラピーの予約の日が重なってしまって・・・」
と話をした。

「OH,NO……..!」
と大袈裟に頭を抱える先生。セラピーのアレンジをしてくれたのは彼女だ。

「予約の日を変えてもらおうと思ってさっき電話したのですけれど、難しいみたいで・・・」

先生は
「そうよ、そうだと思うわ。」
と神妙な顔つきで考え込む。

「・・・・という訳で、セラピーの方はキャンセルしましたから~」
と言おうとしたところで、急に先生の顔が輝いた。

「そうだ、いい考えがあるわ!スタークラス(もう一つのクラス。ちなみに息子はムーンクラス)は別の日に行くから、その日に入れてもらえるように頼んであげる!私に任せて!」

え・・・・。
クラスによって別の日に行くなんて知らなかった・・・。

彼女の表情から、「多少無理をして息子のために予約を入れてくれたのかも・・・」と感じ取った私は、「キャンセルしました」とは言えなくなってしまった。

彼女はその足で隣のクラスの先生に話をしに行き、スタークラスの先生も快く了解。
「Everything is alright!!!!」
と私は二人の先生から満面の微笑を投げかけられた。

「B……Brilliant……..」
と私はあやふやな微笑を返しつつ、息子を引きずる様にして猛ダッシュで帰宅、センターに
「さっきのキャンセルを取り消しにしたいんですけど・・・」
と、冷や汗をかきながらキャンセルのキャンセルをする電話を入れたのだった。

つづく

投稿者 lib : 03:24 PM | コメント (0)

May 01, 2007

帰ってきたスピーチセラピー 2

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もし息子が日本で育っていて、言葉の発達が同じ様な状況だったらどうだっただろう、とたまに考える。

日本の育児サイトなどにも子供の発育の遅れについての色々な相談が寄せられているが、質問の内容が「まだ歩きません」だろうが、「まだオムツがとれません」だろうが「言葉が出てきません」だろうが、結局は「個人差があるので大丈夫です」と専門家が回答するパターンが多い気がする。

私もその通りだと思うし、日本にいたら親はもちろん、幼稚園も医療関係者も、息子の言葉の遅れは注目する程度のものではなかったのではなかろうかと思う。

思い返してみると、息子がまだ赤ちゃんだった頃から、ベイビー・クリニックやプレイ・グループに行くと「How to Help your child’s speech development」といった類の小冊子がラックに並べられていた。
「子供が間違えた言葉遣いをしたら、正しく言いなおしてあげましょう」とか、
「絵本や童謡は、言葉の発達に効果的です」
とか、子供の言葉の発達に役立つヒントが並べられていて、その頃はふむふむ、と素直に読んでいたが、考えてみるとイギリスでは日本より、幼児の言葉の発達に関して非常に意識的に取り組んでいるらしい。

日本には「沈黙は金」とか「不言実行」とか、黙っていることも良しとする価値観があるが、こちらは喋ってなんぼの社会である。そういった文化の違いもあるのだろうか。
(とここまで書いたところで、ふと「沈黙は金」を広辞苑で調べてみると「西洋の諺から」と書いてあり椅子から転げ落ちそうになった。私の仮説はもろくも崩れ去った)

確かにイギリスは幼児教育についての研究が日本よりも進んでいると思う。しかし、研究も進みすぎると、従来はとるに足らなかったことも、問題にしてしまったりする弊害もあると思う。

親バカとは思いつつ、自分の子供がスピーチセラピーなどの特別なサービスにお世話になる事態になると、ついこのように考えて、子供を正当化(別に誰も悪いとは言っていないが)したくなってしまう。夫に
「きっとスピーチ・セラピストの数が増えすぎて、仕事がないのよ。彼らを失業させないために片っ端から子供をスピーチセラピーに送り込んでるんじゃない?」
「ありうるな・・・。」

とスピーチセラピスト大量失業救済説まででっちあげ、憂さ晴らしをした。
スピーチセラピストもいい迷惑である。

とりあえず親としては別に心配していなかったのに、息子の言葉の発達について問題を大きくしてしまったイギリス社会に妙にに反逆的になる私であった。(単にスピーチセラピーに行くのが面倒でやけになっているという噂もある)

つづくよ! ←(反逆を表現)

投稿者 lib : 12:32 PM | コメント (1)

April 25, 2007

ブロードバンドシステムダウン & スピーチセラピー

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プロバイダーのシステムダウンとのことで、まる2日インターネットに繋げなくなってしまった。
プロバイダーに電話をすると、
「ただいまシステムダウンのため繋げなくなっています。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。これ以上の情報はこちらでは分からなくなっております。」
と、「クレーム回答集」を棒読みしているような答え。

おまけにどこのアクセントか知らないが非常に分かりにくく、何度も聞きなおさなければならなかった。
聞きなおす度に同じ事を言っていることは分かるが、内容がわからない(涙)
ようやく意味がわかり、こちらが何か言っても
「ただいまシステムダウンのため(以下同文)」
と繰り返すだけで、
「いつ復旧するの?ところで問い合わせはこの番号でいいの?」
などと想定外の質問をしようものなら
「・・・・・・・」
と30秒ほどの沈黙の後、
「ただいまシステムダウンのため(以下同文)」
と糠に釘で、らちが明かない。

こういう時、下手に状況説明できるオペレーターだとかえってユーザーの怒りをまともに受け止める結果になってしまうので、わざと誰も聞いたことのないアクセントを話す、何も事情がわからない(つまり使えない)人員を配置して、こちらの戦意を喪失させる作戦だろうか・・・。

まあそれでなくても、こんな時は下手に怒ったり、他に電話をかけても労力の無駄になることは経験でわかっているので(「電話会社との仁義なき戦い」参照)大人しく復旧を待つことにする。
幸い、急ぎでしなくてはいけないことはこのブログの更新くらいだったし(毎週心待ちにしている方もいないと思うので)悟りの心境で心静かに待っていると、先ほどやっと復旧したようだった。

こんなことが日常的に起きる国、イギリス。関係者の方にはご迷惑かけました。


そしてもう一つの話題、長らく忘れていたスピーチセラピーに、また行く事になってしまった。

息子は彼なりの言葉の発達を見せているし、他の子(特に両親がネイティブの女の子などはすごく喋りが上手)より下手だとはいえ、私自身は全く心配していなかった。

しかしある日、幼稚園に迎えに行くと、先生が
「聴力の検査をした方がいいんじゃないかしら・・・・」
と遠慮がちに言ってきた。

息子の言葉の遅れの事を心配しているのだな、とは思ったが、彼は蚊の飛ぶ音も聞き分ける耳の良さなので
「聴力には何の問題もないと思いますけど・・・。まあちょっと様子をみます」
とのらりくらりと返事をし、そのままにしておいた。

数週間後、他の先生に
「聴力検査には行った?」
とまた聞かれてしまったので、聴力には問題がないと思っていることを伝えたが、もしかしたら遠まわしにスピーチセラピーを勧めているのかと思い、
「聴力は大丈夫だと思うんですが・・・スピーチセラピーにでも連れて行った方がいいのかしら?」
と言うと、
「スピーチセラピーについてはよく分からないけど・・・・」
と言う。

なんだ、本当に耳が聞こえないんじゃないかと心配していたのかと、何度も言われるのも面倒なので先生をハッピーにするためと思い、GPを予約し息子を連れて行った。思ったとおり、聴力は問題なし、言葉の遅れも心配するほどのことではない、という事だった。

先生にその事を報告すると、
「そうよね、聴力は心配ないわよね。で、スピーチセラピーをアレンジしておいたから。」
と言う。

なんだ、この前言ってたことと違うな、と思いながらも
「心配することはないと思うんだけどね、どうせ無料だし、使えるものは使った方がいいわよ」
と先生が言うので、まあせっかく親切でしてくれたことだし、また行くか・・・面倒くさいけど・・・と思いつつ、2年ぶりにスピーチセラピーを息子に受けさせる事になった。

つづく

投稿者 lib : 10:33 PM | コメント (0)

April 17, 2007

ロンドン版 タイムカプセル

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我が家の居間の、コーヒーテーブルの下に四角いバスケットが置いてある。

毎日、読み終わった新聞や雑誌をその中に入れている。
(イギリスの新聞は特に週末はいろんな付録が入っていて分厚い。その上、夫が週一回買うチャイニーズの新聞、息子が生まれる前は日系新聞社に勤めていたのでその頃は私が毎日持ち帰る日本の新聞、最近は街頭で配るフリーペーパーなども加わり、ウチは異様に古新聞の多い家庭となっている)

週に一度のリサイクルの日に、一週間分まとめて捨てるシステムになっているが、たまに「これっていつか役にたつかも」と思い、そのままバスケットの中に残るものがある。
大抵は新聞の付録についてきた、「ベスト・ホスピタルガイド」とか夫の愛読書「フォーチュン誌による、世界の富豪ランキング」とか日本語のフリーペーパーの類である。
子供が生まれてからは何かのおまけについてきたシールとか、とりあえず「紙製」で「どこにしまってよいか分からないもの」はとりあえず、このバスケット行きとなっている。

先日ふと気がつくと、一週間分の新聞を捨てたにもかかわらず、バスケットの中身が一杯になっていた。
「こんなにたまっちゃった・・・・整理しなくては」
と一念発起し、古紙の山を上からどんどん崩していった。

前述の「ホスピタルガイド」や「富豪ランキング」はもちろん、なぜこんなものを?と保存しておいた意味が全く分からない古新聞や古雑誌をどんどん捨てていくと、バスケットの底にいきついた。

そこでひっそりと眠っていたのは。

「LONDONZOK」(ロンドン族)という日本語の雑誌だった。
「おおっ。そういえば昔、こんな雑誌があったな!」
(ロンドン在住5年以上の人ならピンとくるはず)
懐かしさで手にとると、なんと発行日は2002年4月となっている。
息子が生まれるちょっと前だ。・・・て、約5年前だよ。

最近見ないので、いつの間にか廃刊になったらしい。
中をみると「ロンドンの行方」というロンドンの近未来についての特集記事があった。

「ロンドン地下鉄の未来、『スマートカード』システム。チケットに変わるものとして、黄色い円盤の上にかざすだけでゲートを通ることができるようになります。」(オイスターカードという名称はまだ決まっていなかったらしい)

「トラファルガー広場の北側の道を閉鎖して、その一体を歩行者天国にしようという計画がある。これが実施されると、広場でコンサートが行われるなど、人の動きが変わってくるだろう」

など、たかが5年で「予測」や「計画」が「当たり前」の事になっている。
ちょっとした、タイムカプセルのようだった。
それにしても息子の生まれた2002年の雑誌が出てくるなんて・・・・出産してから子育てで忙しく、バスケットの整理もする時間もなかったのねー・・・と自分のだらしなさを棚に上げ、一人で和んでいると、夫からもっと小まめに整理しろと一蹴された。

それにしても改めてLONDONZOKを読んでみると、アート系の傾向なのだろうが全編自社取材、記事も個性的で面白く、なかなか優良な雑誌だったことが分かった。廃刊が惜しまれます、ってタイミングを大きく外しているが。

それにしてもこのLONDONZOK、捨てられなくて再びバスケットの底にひっそりと保存することになってしまいそうだ。

「大掃除 捨てる技術という本を 捨てられなくて困ってる」

という一句をサラリーマン川柳に応募したい気分の今日この頃である。


投稿者 lib : 01:27 PM | コメント (0)

April 10, 2007

イギリスの海

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イースターの4連休、海辺の町Bournemouthに行ってきた。

私の思い描く典型的な「イギリスの海辺」の風景は、灰色の海を背に、ゲームセンターや遊園地がガチャガチャと騒々しく設置されている(ああ考えるだけでげんなり)イメージ。
いわゆるTackyなイメージしかなかったイギリスの海辺だが、以前、他の場所に行ったついでに日帰りで立ち寄ったBournemouthは珍しく明るい雰囲気だったので、きちんと見てみたいと思い、今回はホテルに3泊した。

しかし・・・。
イースターホリデー真っ只中、しかも夏日が続いたボーンマスの海辺は湘南海岸を彷彿とさせるイモ洗い状態。
(泳いでる人は流石に少なかったが、ビーチの人口密度がものすごかった)
しかもホリデー中だからか、私の忌み嫌う海辺の遊園地も小規模だが出現し、前回は気付かなかったがゲームセンターもきちんと設置されていた。

どうも居心地が悪く、ライフ・ガードのおじさんに「いいビーチはないか」と穴場情報を聞くと、隣のPoole という町のSand Bankというビーチが最高だという。ハーバーもあり、彼いわく、「パール・ハーバーに続いて、世界二位の大きさ」だと真偽の分からない情報も提供してくれた。世界2位にしては、聞いたことない名前だな。日本人が攻撃しなかったから有名にならなかったのだろうか。

などと夫と洒落にならない冗談を言いながらSand Bankに向かう。10分ほどのドライブで目的地に着くと、おおっ。確かにここは良い。
ゲームセンターも遊園地もなく、あるのはただ白い砂浜とどこまでも続く青い海。(なぜか海の色まで違った)
隣のボーンマスほど混んでもいない。
案内板を見ると、「イギリスで最も綺麗な水質」の海岸だという。納得。
周辺には大きなお屋敷が立ち並び、(それも建築家がデザインしたような洗練された新しい家が多かった)ハーバーには沢山のヨットが停泊していた。
「イギリスにもこんな場所があったのか~」と目から鱗。

どこでも狩猟をしたがる夫は早速Crab Line という蟹を釣り上げるための器具を売店で購入し、岩場で挑戦したが惨敗。隣では大きな蟹を2匹も捕獲したイギリス人の男の子がいて、私たち親子に恵んでくれた。
息子はそのうちの一匹を他の子供にあげ、ビーチで友達も沢山つくった。
子供達は、勝手に遊んでくれていたので私は思う存分ビーチで昼寝ができた。

ナーサリーで子供達と遊ぶのに慣れたせいか、息子は非常に社交的な性格になっていた。
夕食にレストランに入った時に、塗り絵とクレヨンをウエイターが渡してくれた。
後から入ってきて隣のテーブルに座った子供のために、すたすたと歩き出してウエイターの所に行ったかとおもうと、
“Excuse me, Have you got paper and pen?”
とその子のために塗り絵とクレヨンを入手してきたのには驚いた。 

ちなみにそのレストランはビーチで知り会った、とても綺麗な英語を話すご婦人から「ファンタスティックよ!」とお勧めされたイタリアン・レストランだった。とってもチャイルドフレンドリーなお店だったのだが・・・・


やはりイギリス人の味覚は当てにならないということを再確認した。

投稿者 lib : 12:44 PM | コメント (2)

April 03, 2007

チャイニーズ・バンケット

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夫の親戚の結婚披露宴に招かれた。
新郎新婦はイギリスで生まれ育ったBritish Born Chinese(略してBBCというのだそう)である。

親戚といっても遠縁で、私は新郎新婦に会った事もない。
特に気合を入れる必要もなく、手持ちのスーツを着ていけばいいかなと思っていたが、前日に着て見ると、肩幅が微妙に大きくてOut of date の印象だった。別に私を見る人なんかいないだろうから何でもいいのだが、まあせっかくだし(何がせっかくなんだか)服を新調しようかなという気になった。

という訳で、日本人も多く見かけるブレントクロス・ショッピング・センター、略してブレクロに駆け込んだ。

いくつかの店を回った後、ウィリアム王子のお妃候補ケイト・ミドルトンさんのお気に入りと言われているブランドのひとつ(Hello! Magazine参照) LK Bennettに入ると、シルクのプリント柄のラップ・ドレスが目に入った。
試着してみるとサイズもぴったり、なかなか良い。
おまけに30パーセントオフ、更に「今日はここから更に10%オフになっております」という店員の甘い声も後押しし、即購入。

久しぶりに綺麗めの服を買ったぞ、とルンルン(死語)しながら家で手持ちのパーティー用の靴と合わせると、どうも面白くない。
「そういえば、チャールズ皇太子とカミラさんの結婚式の時、ザラ・フィリップス(アン王女の娘 = クイーンの孫娘)がプリント柄のワンピースとロングブーツを合わせていたな・・・結婚式にブーツもありか。」
と思い(必要な事は忘れるのに、こんなどうでも良いことは妙に記憶力の良い私)やはり手持ちのロングブーツを合わせてみると、ちと今風になった。

何となく王室関連の人々の助けを借りて服装が決定した様な気分になり、一瞬ロイヤル・ウエディングにでも出かけるような錯覚に陥ったが、行き先はチャイナタウンのチャイニーズ・レストラン。

チャイニーズ・ウエディングには今までに何回も出席したので私も慣れたものである。
1・まず会場に着くと、受付の人に、赤いポチ袋に入れたご祝儀(相場は日本よりずっと安い)を渡す。
2・空いている席を見つけ、適当に着席する。(日本やイギリス式のように、招待客の席が決まっていない)
2.乾杯の音頭などはなく、いつの間にか各テーブルに置かれたワインやソフトドリンクが空けられ、各自勝手に飲み始める。
3.料理が運ばれ始める。内容は(注:ここから先は、お腹が空いている方は読まないほうがいいかもしれません)
 
① サックリング・ピッグ(子豚の皮をカリカリに焼いたもの)
② ホタテとアスパラガスの炒め物
③ フカヒレのスープ
④ ロブスター
⑤ アワビと椎茸のオイスターソース煮
⑥ 小鳩のロースト
⑦ 蒸したシーバス
⑧ ヌードル
⑨ 蓮の葉に包まれて蒸されたまぜご飯(中華風ちまき?)
⑩ デザート(この日はゴマのまぶされた揚げ団子、ロータスケーキ、フルーツ)

今回も、チャイニーズ・ウエディングの典型的なメニューだった。

新婦は最初は白のウエディングドレス、途中で赤のチャイニーズドレスにお色直しした。
スピーチや余興はなし。ひたすら食べる。
新郎新婦も、基本的には隅のテーブルで客の一人のような顔をして、食べている。
途中、家族と共に乾杯をしに各テーブルを周るが、うっかりその時にトイレに立ったりしていると、見通しの悪いレストランの場合は最後まで誰が主役なのか分からないこともある(実話)。

若いチャイニーズ・カップルはこの様な伝統的な披露宴を嫌い、教会→ホテルで披露宴、の英国式ウエディングを別に開いて友人はこちらに呼び、中国式披露宴は親のために義理で行う人も多いようだ。

とりあえず、今回の料理は今まで出席したチャイニーズ・ウエディングの中で一番美味しかった。
(会場となったレストランのオーナーが新郎の親戚なので、格段の注意が払われたらしい。さすが家族主義のチャイニーズ)

気がつくと3時間、午餐を貪り続け、もちろん夕食はいらない。
息子も従兄弟たちのニンテンドーDSに興じ大人しくしていたので、幸せな午後を過ごした。

美味しかったー。また誰か結婚しないかな。

投稿者 lib : 10:50 AM | コメント (0)

March 27, 2007

息子 近況 3

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先日キッチンにいると、息子がふざけて、椅子から飛び降り始めた。

我が家の狭いキッチンでそんなことをされては非常に危険なので、少しきつく叱った。

居間に退散した息子は少し泣いていたようだが、しばらくするとキッチンに戻ってきた。
手にはその日、幼稚園から配られた「レッドノーズデーのお知らせ」(イギリスのチャリティーの日、レッドノーズデーへの寄付のお願いとか、その日は仮装してきましょう、とかそんな事が書いてあった)のプリントが握りしめられている。

何事かと思って息子を見ていると、プリントを両手で目の高さまで持っていき、おもむろに歌い始めた。

♪ I love you mummy
You make me happy
When I am sad
I want to tell you
I love you mummy……..♪

ぐわーん。晴天の霹靂とはこの事だ。
未だに言葉があまりはっきり話せない息子だが、この歌詞はすべて聞き取れた。

その週末に控えていた「母の日」(イギリスでは3月)に向けて、幼稚園で習ったのであろうことは容易に想像できたが、こんな歌を歌ってくれるなんて想像してもいなかった。

ふと昔のことを思い出した。
仕事をしていた頃、「家族愛」をテーマにした広告の企画があった。
会議で
「ああ、家族が幸せそうに食事していたり、犬連れて公園を散歩したりするイメージですよね~。ああいうのって、好感度高いんですよねー。安易で私は大ッ嫌いですけど。」
と発言すると、同じ席上にいた人に
「世の中の人は山口さんみたいに心がすさんでないんですよ・・・」
と申し訳なさそうに言われた事があった。

「心のすさんだ女」の烙印を押されてまで自分の意見を主張した私が、息子のこのような安易な手法に易々と心を動かされてよいものか・・・という葛藤が一瞬、体中を駆け巡ったが、4歳児を相手に意地になるのも大人気ないと思い直し、ここは素直に感動する事にした。

「わ~!ありがとう!いい歌だね~!マミー嬉しい!」
と息子を抱きしめたものの、彼は予想以上の私の「熱烈歓迎」なリアクションにおじけついたのか、
「もう一度歌って」
とリクエストしても、頑として歌ってくれなかった。

(ちなみに息子の性格を知る私としては、叱られた後にこの歌を歌い出したのは別に仲直りしようとした訳ではなく、たまたまそのプリントを見て、脳内が「歌うモード」にカチッと変換されただけだと思う)

あの歌をもう一度聞きたい、もう一度聞きたい・・・
しかし、元「心のすさんだ女」の人並みの親の願いは受け入れられなかった。

しかし数時間後、無造作にテーブルの上に置かれたプリントを見た息子は両手でそれを持ち上げ、突如としてまた歌い始めた。
♪ I love you mummy……♪

このプリントは保護者への連絡事項で、もちろん歌詞は書いてないのだが、どうやら歌を習った日とプリントを配られた日が同じだった事から、このプリントを見ると息子は、パブロフの犬の様に反射的に歌い出す仕組みらしい。

となれば話は早い。
プリントのコピーをとりまくり、居間のテーブル、キッチンの椅子の上、おもちゃ箱の上、冷蔵庫の中など、家中の息子の目につきそうな場所に「さりげなく」置いた。

「さりげなく」置いたつもりだったが敵もさる物、母親の姑息な作戦をすぐに感じ取ったらしく、易々と歌ってはくれない。

素晴らしいと(思われた)心理作戦も徒労に終わり、再び歌を聞けたのは、その週末の金曜日だった。

息子を幼稚園に迎えに行くと、先生が
「今日はサプライズがあります」
と言って、子供達が皆で
♪I love you mummy…..♪

と例の歌を歌い始めたのだ。

ここで初めて、この歌が“You are my sunshine”の替え歌だったことが判明した。
(息子が歌ってくれた時は歌詞は分かったがリズムは判別不明だった)

元「心のすさんだ女」の心も溶かした天使の歌声、(実際には強制的に歌わされる子供達はダレきっていたが)先生&子供達、ありがとう。
(こんな歌を教えてくれる幼稚園はいい所だ。息子がキッチンで始めて歌ってくれたのは本当のサプライズだった。感動しましたよ~!)

投稿者 lib : 12:34 PM | コメント (2)

March 20, 2007

息子 近況 2

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息子は最近、「海の生物」にハマっている。

海の中がテーマなら何でも良いらしく、「ファインディング・ニモ」や「リトル・マーメイド」などのアニメからBBCの自然番組「プラネット・アース」、人食い鮫の映画「シャーク・アタック」まで、各種DVDをとり付かれた様に観ている。

特に鯨、イルカ、鮫などが大好きだ。
中国人が半分入っている彼らしく、彼らの食生活に特に興味があるらしい。

「シャーク・アタック」を観た後で、

「ねえねえ、鮫は人間を食べるんだよね」と言う。

(別に鮫だって人間を主食にしているわけではないけど・・・)「うーん、人間を食べる事もあるかもしれないけど、普段は魚を食べるんじゃないかなあ」と答えておく。

「イルカは?イルカは人間を食べる?」

「イルカ?イルカはフレンドリーだから人間は食べないよ」(ステレオタイプのイメージだが仕方ない)

「ふーん・・・・じゃあ、鯨は?鯨は大きいから人間を食べる?」

(だんだん答えるのが面倒くさくなってくる)
「鯨?鯨は海水を一気に飲んでその中にあるものを食べるから、もし人間がたまたま近くを泳いでたら食べられちゃうこともあるかもねー。」

「ほんと?鯨は人間を食べるの?」

「だからあー。(なんでそんなに食べられたがるんだよ)普段は人間を食べないよ・・・・まてよ。」

はたと気付いた。
「それどころか逆に、日本人は昔、鯨を食べていたんだよ」

予想外の展開に目を丸くする息子。

「え・・・・?」

「マミーは昔、スクールディナー(給食)でよく鯨を食べたものさー」(遠い目)

「ス、スクールディナア~!?」

「そうだよ。そういえばじーじは、ビールを飲みながらよく鯨ベーコンをつまんでいたなあ。くっくっく。懐かしい昭和の風景だわ~」

驚愕の事実を知り、息子は言葉を失った。
「日本人が鯨を食べる・・・・マミーも・・・・じーじも・・・ばーばも・・・」
目は宙を泳ぎ、独り言の様に繰り返している。

お陰で静かになったけど、ちょっと可哀相だったかも。
小さいうちは、鯨やイルカ=人間の友達、鮫=悪役 というステレオタイプのイメージを植えつけとけばいいのかな、と少し反省した。

が、さすが適応性の高い幼児。「日本人は鯨を食べる」という事実をすぐに受け入れたようだった。

「ジャパニーズは鯨を食べるんだよね、ジャパニーズは鯨をベーコンにするんだよね?ね?ね?」

と、所構わず聞いてくる。

息子よ、お願いだから人通りの多い場所と、幼稚園ではこの話題に触れないでね。
(特に先週書いたアリスのママは、タイムズ紙のジャーナリストだ)
地元で日本人排斥運動が起こったら困るし。

とりあえず、「中国人はフカひれスープが好き」という事実を、どのタイミングで告白したらよいか悩む今日この頃である。

投稿者 lib : 01:52 PM | コメント (0)

March 13, 2007

息子 近況

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「子育てママ」という属性?を頂いておきながら、このところ、日英のゴシップに気をとられ子供のことを書くのをすっかり忘れていた。
ゴシップ記事を読む合間に(?)子育てもそれなりにしていたが、息子はそんな母親にもめげずスクスク育ち、幼稚園で友達も沢山できたようだ。

ある日、幼稚園にお迎えに行くと、イギリス人のお母さんが「ハロー!」と息子の名前を呼び、親しげに話しかけてきた。
彼女の娘のアリスは栗色の巻き毛が可愛い女の子だ。
お母さんは、
“Alice always talks about him, she loves him!”
と言ってくれた。

男の子の友達の話は息子からよく聞いていたが、女の子の話題は聞いた事が無かったので、「へー、そうなのか。」と思った。家に帰ってから
「アリスと仲いいの?アリスが君のこと好きだって言ってたよ」
というと、心なしか照れながら、
「・・・・イエス」
と答えていた。

その日を境に、息子の関心はアリス一色となり、彼の脳内は「ザ・アリス祭」の様相を呈してきた。
大人でも、誰かが自分に好意を持っていると分かると、その人を好ましく思えてくる事があると思うが、息子も「好き」と言われて突如として意識しだしたらしい。

家族で海辺に行ったときにも、
「ああ、アリスも一緒に来られたら良かったのに」
とかつぶやきながら、砂浜に自分の名前を書き、その横にアリスの名前を書いてくれという。
その真ん中にハートか相合傘(死語?)でも書き出して、打ち寄せる波がザッパーンと二人の名前を消してゆく・・・と言うようなオチを想像してひやひやしたが、まあそこまでの知恵はないようだった。

ある晩、ベッドに入ると、急に「クスクス」と思い出し笑いを始めた。
「どうしたの?」と聞くと、
「アリスがね・・・・」と言う。
「アリスがどうしたの?」
息子は「ククク・・・」と笑いをかみ殺し、
「アリスがね・・・お風呂に入っている時、おしっこしちゃうんだって・・・」
と衝撃の事実を告白した。

再び声にならないような声で「クック・・・」と苦笑する表情が、
「参っちゃうよなあー、オレにそんな事言われてもなあー」
と言っているようで、息子にちょっと「男」を感じた。(一瞬です)
ナーサリーでそんなキワどい事を話していたなんて、恐るべし幼稚園児。
「秘密」を共有する事で、親密度はますます増したようだった。(とはいえマミーにすぐにばらしている息子だが)

そんなこんなでアリスと息子の蜜月の時はしばらく続いたが、気がつくと最近はまた男の子の友達の話ばかりで、彼女の話を聞かなくなった。

「アリスは元気?仲良くやってる?」
と聞くと、浮かぬ顔をして
「・・・・ノー」
と答える。
「どうしたの?アリスのこと好きなんでしょ?」
と言うと、しばらく考えた後で、息子は堰を切ったように話し始めた。

「だってね、アリスったらいつも僕の隣に座るんだ。いつも、いつもだよ」

真剣な表情で私に訴えてくる。

「どうして?アリスの事好きなんでしょ?いいじゃない」と言うと、彼はうつむき、絞りだすような声でつぶやいた。

「・・・・・Too much だよ・・・・・」

・・・・・存在が重くなったか・・・・。

息子よ、女の子の方から寄って来てくれることなんて、人生のうちで何回あるか分からないのだから、有難く気持ちを受け取った方がいいと思うんですけど。

そんな母の含蓄あふれた助言を人生経験の浅い(4歳児)彼が理解するはずもなく、彼らのラブラブ期は終焉を迎えたようであった。

今日もアリスママは
“Oh~~!Alice loves you!!”
と声をかけてくれたが、聞こえないフリをして無言で立ち去る息子であった。君、もったいないよ。

投稿者 lib : 11:39 AM | コメント (3)

March 06, 2007

ロイヤルファミリー

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映画「クイーン」で主演を務めたヘレン・ミレンが、イギリスのオスカーと言われるBAFTAに続き、本家アメリカのオスカーでも主演女優賞を射止めた。
私はこの映画を観ていないが、英米で二冠に輝いたほどだから、きっと素晴らしい演技だったのでしょう。(←他力本願な言い方)

しかし、TVでヘレン・ミレン演じるクイーンの映像が部分的に出たりすると、ど~も違和感を覚えずにはいられない。
なんだか薄っぺらいのだ。
(普段、口先のみで世間を渡っている「薄っぺらさ紙のごとく」の私に言われるとは、ヘレンさんも心外であろうが)

勿論、ヘレン・ミレンは綺麗だし、実際に見たらオーラ出まくりの大女優なのだろうが、いざクイーンを演じるとなると、やはりニセモノ臭さが隠せない。

ニセモノなんだからニセモノ臭くて当たり前、と言われればその通りなのだが、彼女がドレスを着て王冠を被っても、本物の女王様が醸し出す、その風格とか気品とか、背負われている歴史とか、女王であるが為の苦悩はやはり伝わってこない気がする。先祖代々受け継がれた?これらのものは、一朝一夕では出せないのだろう。
本物の女王様の住居がバッキンガム宮殿ならば、へレン女王様はディズニーランドのシンデレラ城に住んでいる印象だ。
(フォローする訳ではないけれど、授賞式の彼女は彼女自身を演じていたので、本物感が漂っていた)

なんて事を考えていたら、奇しくも時を同じくして、日本でも同じ現象が起こっていた。

女優のF原N香さん(伏字にする必要性が全然見当たりませんが)が、ご成婚、いやご結婚されたというニュースを、日系新聞が伝えていた。

一面に大伸ばしされた写真を見て、思わず「コント?」と思ってしまった。
スタイルの良さで有名なN香さん、「究極の花嫁衣裳はこれよ!」とひらめかれたのか、なんと十二単をお召しになるというご狂乱、いやご英断を敢行されたのだ。

私が十二単をまじまじと見たのは、(割と長い)人生の中でも4回位しかない。
百人一首の絵札を初めて見た時、皇室の二人のお妃様のご成婚の時、そして今回のN香さんだ。

一般人が十二単を着てはいけないという決まりは無いだろうが、なんというか生地がペランペランのテロンテロンに見えるし、品のないけばけばしい発色。化粧も現代メークでちぐはぐだしカツラは(以下略)

N香さんのお着物もお高いのだろうが、どうしても「成田空港の土産物屋で見かける外国人向けの化繊キモノ(商品名Geisha Dress)」に見えてしまうのは、皇室の方々が着ていた「本物」の十二単を基準として比べてしまうからだろう。

普段は大変がさつな私だが、実はロイヤルウエディングの時だけは自分の中の「女の子」が目覚めるらしく、ダイアナ妃の豪華なウエディングドレスや、平安絵巻の様な日本のお妃様達をうっとりと眺めたものだ。息子の友達の女の子を見ていると思うが、女の子は皆、プリンセス好きなのだ。(カミラさんについてはあえて触れませんが)

紀香さんに恨みはないし、お二人の幸せを心から願うばかりだが(←白々しいですね)、たまに庶民に本物の皇室、王室の底力?を見せ付けてくれるだけでも、ロイヤルファミリーの存在意義ってあるのではないかなあ、と思った日英同時多発の出来事でした。

投稿者 lib : 11:40 AM | コメント (2)

February 27, 2007

イギリスのサービス業 バンク編

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先週のある昼下がり、家に一人でいると電話が鳴った。

電話をとると、「ハロー・・・」とテープで録音された声が聞こえた。
瞬時に「セールスだな」と思い、すぐにガッチャンと受話器を置いた。

15分後、再び電話が鳴ったのでとると、先ほどと同じテープの声だった。
もう少し聞いてみると
「ハロー、こちらは××銀行です。ミスター○○(夫の名前)に重要なメッセージがあります。あなたがミスター○○の場合は1、違う場合は2を押してください。」

××銀行は夫が口座を持っている銀行だ。
でも銀行からの連絡でテープが使われる事は今まで無かったし、「これは新手の詐欺?こんな風に私が呑気にテープを聞いている間にも、一分10ポンドとか法外な料金を取られているかも!」と心配になった。(キャリアウーマンのヨウコさんのちょい詐欺ブログを呼んだ直後だった)
騙されてなるものか!と再びガチャンと切った。

切った後で、「でも重要なメッセージと言ってたな・・・。もし本物だったら気になる・・・」とどうも薄気味悪い思いをしていると、再び電話が鳴った。

同じテープだった。今回はもう少し突っ込んでみようと、同じメッセージを聞いた後、「本人でない」との2を押してみる。
「ミスター○○は今電話に出られますか?その場合は1、15分後に掛けなおす場合は2、さもなければミスター○○に繋がる他の電話番号を入力してください」

ときた。
おお、個人情報を聞いてきたな!ますます怪しいぞと疑惑は高まり、再び電話を切った。

折しも新聞で、銀行口座がマイナスになった場合にオーバーチャージされた手数料(違法)を取り戻すためのノウハウを教えてくれる記事が掲載されたばかりだった。ここには銀行に返金を求めるレター、それを銀行が拒否した場合のレターの書き方まで詳しくのっており、それを読んだ読者が怒涛のように銀行にレターを送っていたらしい。

常々、銀行の一方的な手数料の取立て(&バンカーの法外な収入)に不満(&嫉妬)を感じていた私には胸のすくような思いだったが、次の日の新聞には「銀行がリベンジを開始!」という大見出しが踊っていた。
オーバーチャージされた事を証明するための過去の明細を請求すると、それにまたオーバーチャージ(これも違法)したり、ひどい場合には口座を閉じてしまったり、というケースもあるという。

このような、ヤク○と紙一重のイギリスの銀行なので、仮にこのテープが本当に銀行からのものであっても油断はできない。
返金を請求された分、ウチのように大人しい(ザル勘定で細かい事に気がつかない)預金者から損失分を取り返そうという戦略かも。騙されてなるものか・・・と鼻息を荒くしていると、再び電話が鳴った。

今度は無視して受話器をとらずにいると
「××銀行からミスター○○への重要なメッセージです。このメッセージをお聞きになったら○○―×××まで折り返しお電話ください」
とテープ音が留守電に録音されていた。

ほどなく夫が帰ってきた。
メッセージを聞き、やはり
「この番号へかけたらすごい料金がチャージされたりして・・・」
と半信半疑ながらも指定された番号に掛けなおすと、やはりテープで
「あなたがミスター○○の場合は1、そうでない場合は2・・・」と同様の指示。
その後誕生日などを入力し、本人であることを確認した後、
「あなたは今日、ドイツで138ポンド相当を引き出そうとしましたか。イエスの場合は1、ノーの場合は2を押してください」
と言うではないか。
夫はドイツなどには行っていない。
2を押すと、
「オペレーターにお繋ぎします」
とテープの声の後、ようやく人間の肉声と話す事ができた。

オペレーターによると、何者かがドイツで夫のカードを使ってキャッシュポイントから現金を引き出そうとしたらしいが、怪しいと察知してブロックしたとの事。

夫は2年程前にスリに財布をすられたことはあるが、何故今頃・・・と腑に落ちない点はあるが、まあ銀行のお手柄だった。

夫が喜んで
「お手柄、お手柄。でもどうして僕じゃないって分かったの」
と聞いたが、それは答えられないという。

銀行もたまにはいい事をするなー、と見直したが、こういう重要な連絡の場合は、やはりテープでなく、肉声で電話をかけて欲しいものである。
いくら銀行業務が詐欺と紙一重(私の独り言です)だとは言っても、預金者への連絡まで詐欺と区別がつかないような方法でされては、紛らわしくて仕方ない。

「効率化という名目で人員削減して、その分、残った人間ががっぽがっぽ儲けてるのよねー」と、結局はバンカーへの批判(嫉妬)で盛り上がる私たちであった。

投稿者 lib : 11:32 AM | コメント (0)

February 20, 2007

チャイニーズ・ニューイヤー

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2月18日はチャイニーズ・ニューイヤーの元旦だった。

日本にいた頃は「旧正月」は知らない間に過ぎる事も多かったが、ロンドンの「チャイニーズ・ニューイヤー」は、あちらこちらでフェスティバルが開かれ、存在感が大きい。

今年も朝一番に、香港の義理の両親に新年の挨拶の電話をかける。
義理の母に「新年快楽、恭喜發財」と、これだけは言える広東語で挨拶すると、あちらからも広東語でいろいろと返される。
意味が分からないので、いつもの様に「ハイヤー、ハイヤー」と適当に相槌を打ったが、後から夫が訳してくれたところによると
「いつも孫(私の息子)の世話をしてくれてありがとう。元気に育っていて、皆喜んでいますよ」
という意味の事を言ってくれていたという。じーん。

義母の優しい言葉に感動し、「(チャイニーズ)新年の抱負は、広東語マスターだ!」と一念発起するも、3時間後には何事も無かったかのように忘れるのも、ここ数年の恒例となっている。埃をかぶった「ビギナー向け・カントニーズテキストブック(CD付き)」がもの悲しい。

朝食後、チャイナタウンに出かける。
例年、もの凄い人出になるので、混雑のピークを迎える前に「早く行って、さくっと帰る」戦略だ。
10時過ぎに家を出て、家の近くからチャイナタウンまで直通で行けるバスに乗ったが、なぜか手前のトッテナム・コートロードまでしか行かないと言う。
仕方ないので途中で降りて、地下鉄のノーザンラインに乗ってチャイナタウンのあるレスター・スクエアまで移動する事にした。
しかし駅に入った時点で、電車がレスター・スクエア方面には走っていない事が判明。

「これだけチャイニーズ・ニューイヤーをPRしておきながら、ロンドン交通局は乗客がチャイナ・タウンに行く事を阻止するつもりか」
とブーブー言いながら2回ほど地下鉄を乗り換え、ようやくレスター・スクエアにたどり着いた。

駅を出ると、沿道はすでに人だかり。
11時からパレードが始まるらしい。
それで道路が通行止めになっていてバスが来なかったんだ・・・と何の下調べも無しに動く私達は初めて気付く。

運の良いことにパレードがすぐに始まり、龍の山車(?)をいくつか見たが、息子が
「ドラゴンこわい~、ドラゴンこわい~」
と泣きそうになるので、そそくさと離れる。
(前の週に、幼稚園でも中国人のお母さんが、ドラゴンダンスを披露してくれたらしいが、クラスで一番怖がっていたと先生に笑われた)

チャイナタウンのスーパーで、夕食の買い物をして、予定通りさっさと引き上げることにする。
湯葉、大根、蓮根、ライスヌードル、そして冷凍の牡蠣を買った。

ちなみに「机以外の4本足のものは何でも食べる」と言われる肉食中国人も、普段殺生している生き物に感謝の気持ちを示し、元旦だけは肉も魚も食べない。
普段は原始人並みに肉の塊に喰らいつく夫も、この日ばかりは修行僧のような神聖な気持ちになるらしい。
元旦の夜には、「今日一日、肉を食べずに過ごしたぞ・・・」とまるで24時間テレビのエンディングの様な達成感と共に、満足そうにつぶやくのも毎年恒例である。毎日がベジタリアンの人もいるんですけど。
(でも牡蠣は生き物と認められていないらしく、元旦も食べられてしまう。「私は貝になりたい・・・」という牡蠣の叫びが聞こえるようである。あ、元々貝なんだった。という訳で牡蠣にとっては身も蓋もない日ではある。)

とりあえず牡蠣の成仏を祈りながら(牡蠣入りの)精進料理を食べ、今年一年の健康を祈った。
今年も良い年でありますように。

投稿者 lib : 08:32 AM | コメント (0)

February 13, 2007

ロンドンの雪

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ロンドンに雪が降った。

大雪だ。朝起きてカーテンを開けると、一面の銀世界。
息子とキャーキャー言って喜んでいたが、幼稚園に送る時間になっても、大粒の雪がまだ降り続いていた。

幼稚園までは徒歩10分の距離だが、この雪の中じゃ歩いて行くのは大変だな・・・。息子はいつもはスクーターに乗って行くのだが、今日はスクーターも使えないし、歩くの嫌がるだろうな・・・。
車で送ろうかな、と思ったが、雪の中の運転は怖いし、どうせ停める場所もないだろうから、息子に長靴と手袋の完全装備をさせて、エイヤと家を出た。

寒いだの歩きたくないだの文句を言うかと思ったが、息子は雪の中をぴょんぴょん跳ねながら、とても嬉しそうだった。
新しい雪の上を歩くとキュッキュッと鳴る音や、溶けかかっている部分を踏むとべチャサクッとする感覚、私も久しぶりに思い出した。
そういえば子供の頃、大人にとっては大雪や台風は大変だっただろうけど、子供にとってはエキサイティングなイベントだった。そんな感覚すっかり忘れてた。
(たまに土いじりをする時にも、体の中の普段使っていない感覚が呼び起こされる様な気がするけど、この時も同じ感じ)

降り続く雪を気にする事も無く、息子は雪のボールを作ったり、フェンスに積もった雪を片手で落としてみたりして、なかなか前に進まない。
こんな天気だもの、幼稚園も少しくらいの遅刻は大目に見てくれるだろう。
急かさずに、息子の気が済むまで遊ばせながら向かう事にした。
結局普段の2倍の時間かかって幼稚園に到着した。

ずっと暖かい冬が続いていたが、やっぱり季節が「あるべき姿」なのはいいなあ、と思った。
お正月(イギリスではクリスマス)にもスーパーマーケットが開くようになって、便利になった分、その時期特有の空気を感じにくくなって久しいが、地球温暖化で気温まで暖かくなって、季節感がますます感じられなくなっている。

TVでは北極の様子もカリブの海の中も見ることができるようになったが、自分の肌で自然を感じる機会は減ってきているように思う。
私自身が「今の子供は自然に触れる機会が少なくて可哀相」と言われて育った世代なのに、今、自分の子供に同じ事を感じている。
息子が大人になった頃、やはり「今の子供は可哀相」と思うのだろうか。だとしたらちょっと怖い。

外が寒ければ暖かい家の中に入れて、雨が触れば濡れない様に車で移動して、と私もいつの間にか過保護ママになっていたのかな、とちょっぴり反省。
「自然」ていうのは、天気の良い日の公園や、ホリデー先のビーチばかりじゃないものな。

車を出さなくて良かった。

(息子を迎えに行く頃には雪はやんでいたが、幼稚園から配られたプリントに『今朝、スタッフに雪を投げつけた保護者がいました。子供の悪い見本なのでやめましょう。』と書いてあった。大人は、はしゃぎすぎに注意しましょう。)

投稿者 lib : 11:01 AM | コメント (0)

February 06, 2007

その後のシルパ

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すでに過去の話題になっていると感じつつも、今週も懲りずにビッグ・ブラザーの話題で引っ張ります。

と言っても、番組が終わってから、メディアからは「人種差別」の「じ」も聞かなくなってしまった。
つい2週間前に「メディアが騒ぎすぎ」と言った舌の根も乾かぬうちに、ビッグ・ブラザー騒動が全く忘れ去られてしまった事に、一抹の寂しさを覚える私である。

と思ったら、土曜日のタイムズ紙で懐かしいシルパの顔写真を見つけた。
番組が終わったのは1週間前のことなのに、すでに「あの人は今」の風情である。
シルパが登場したのは、My Week というコラムで、毎週、有名人の一週間を日記風に綴ったものだ。(ライターが書いたもので、もちろん架空)
要約してご紹介すると、

月曜日 自由になった初日。召使が持って来た新聞を読むと、一面に私の名前が。私は高貴で文化的なイギリス人に愛されているのね。なんて素晴らしい事かしら!インドから飛んできたエージェントが言う。「シルパ・シェティの時代が来たぞ!」

火曜日 エージェントが言う。「本物のブリティッシュ・セレブリティの様に振舞えるようにしなくては。」「プリンス・チャールズへのお辞儀の仕方とか?」「いや、バカルディ・ブリーザーを酔いつぶれるまで飲んで、カメラマンの前で失態を演じられるようにするんだ。」

水曜日 「グッド・ニュース!いい仕事が来たよ。」エージェントの声で起こされた。「エリザベス一世?高慢と偏見?」「いや、パントっていうんだけど、ボーンマスで演るんだ。馬の足の役だよ」

木曜日 ジョーダンという女性とナイトクラブで喧嘩したり、ラッセル・ブランドと寝たと言い触らすと良いと、エージェントにアドバイスされる。私のキャリアのためになると言うけど本当かしら?

金曜日 「雑誌で脱いだり、フットボーラーとデートしたり、車から降りるときに下着を見せなければ、本当にイギリス人に愛されることができないの?」エージェントの答えはイエス。「でもここは、世界一教養高いとされている国じゃないの?シェークスピアやジェーン・オースティンの生まれた土地よ!だけど国民はアホだらけだわ!退化した俗物の単なる大酒飲みじゃないの!犬の方がまだましだわ!」
エージェント曰く、私の言った事は人種差別にあたるとか。知った事じゃないわ。

最後のオチで笑った。
支配した側と支配された側、という歴史が勿論あるけれど、有色人種が白色人種の悪口を言っても、人種差別にはならないんだよなあ。

人種差別かそうでないかの線引きって難しいけれど、同じ事を言っても、その対象や自分の置かれている立場によって、微妙にニュアンスが違ってくると思う。
イギリスにいる日本人は差別される側、する側どちらにも成り得る可能性があるだろう。

例えば「イギリス人て仕事遅いよねー」と言っても、皆笑って同意するだけだけど、「インド人て仕事遅いよねー」と言ったら差別発言ととられるだろう。(実際に数年前、問題発言の多い某王室メンバーがこの発言をして騒がれたことがあった)

イギリスに長く住んでいる日本人からも、割と不用意な発言を聞いて驚く事がある。
以前、初対面の日本女性と話していた時に、夫はチャイニーズだと言うと、
「え?本土から?」と聞く。香港だと言うと、
「ああ、それなら香港チャイニーズと言った方がいいわよ。でないと、本土からの人と勘違いされちゃうわよ」
と、非常にビミョーなご助言を頂いた事が合った。

また、他の、イギリス人と結婚している女性からは
「中国人は日本人を上だと思っているから楽でいいわね。イギリス人は日本人を下に思っているから大変よ」と言われたことがある。彼女の経験から出た本音だったのだろうが、かなりびっくりした。

中国人同士でも差別はあるようで、香港で現地の友人と話していると、何気に本土からの人たちを見下しているような雰囲気を感じた。(本土からの人が道に唾を吐きすてるなどのマナーの問題も確かにあるのだが。)

そういう私も、日本にいた頃、フィリピンパブで働くお姉さんの口真似をして、(実際にそう言うのかも知らないのに)「シャチョさん、シャチョさん」などとふざけた事があった。自分がマジョリティだった頃、マイノリティの人たちの気持ちを考えようともしなかった。無知のなせる業である。今になって反省する。

そういえば、英国でのイジメの犠牲者シルパのお国インドは、カーストで明確な階級分けをしていた国だ。

人を差別したいと思う気持ちが人間の本能ならば、差別されたと感じた時に無視して受け流せる強さと、自分の気持ちの中にも潜む、他者を差別したくなる気持ちに打ち勝つ強さが必要なのかな。

投稿者 lib : 09:58 AM | コメント (0)

January 30, 2007

「ビッグ・ブラザー」をインド人ファミリーと鑑賞

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国内外に論争を巻き起こしたセレブリティ・ビッグ・ブラザーの優勝者が決定した。
ベスト2に残ったのは、インド人女優シルパと黒人のジャメイン・ジャクソンということで、どっちに転んでもポリティカリー・コレクトな結果ではあったが、大方の予想通り、優勝したのはイジメの被害者、シルパだった。

彼女が優勝したことで、ほっと胸をなでおろした人が沢山いるだろうが、結果によっては人種差別国家という烙印が押されてしまいかねない、イギリスの沽券に関わる一大事だった。
ブレア首相やブラウン財務大臣はもちろん、クイーンまでもが執務室の柱の陰で、こそこそとシルパに投票していたに違いない。

なんだかんだ言っても、イギリス人は自国に非常に誇りをもっている国民だ。
トニーとゴードンが「差別なんてない公正な国、オーブリタニア♪」と手に手を取り合い喜んだかは知らないが、クイーンはじめ(決め付けているが)イギリス国民が一丸となってシルパに投票したおかげで、大英帝国の面目はひとまず保たれた。
イギリスもハッピー、インドもハッピー、チャンネル4もハッピーで、英国らしからぬハッピーエンディングは、「ボリウッド女優主演、イギリス人監督がメガホンを握るハリウッド映画」を観ているようだった。まあいいんですけど。

話は変わるが、このファイナルの二日前、インド人の友人宅のパーティーに招かれた。
私たちの他には、インド人ファミリーが2組来ていた。
彼らの番組に対する意見を聞くチャンス、と思い出かけたが、タイムリーな事に、気がつくと居間のTVがビッグ・ブラザーの画面を映し出していた。(後から知ったところによると、ホステスである私の友人が欠かさず観ていたらしい。)

いきなり人種差別の話もナンなので、
「ねえねえ、シルパってインドではすごく有名なの?」
と差しさわりのない質問を振ってみた。
A氏 「うーん、10年前は有名だったけど、今は落ち目かな。でも僕、この番組、観た事ないんだ。ここに出ている人達って、家の中にカメラがあること分かってるの?」

あまり参考にならない。次にB婦人に話を振ってみる。

「やっぱりシルパを応援してる?」
B婦人 「そうせざるを得ないわね。でもこの番組で一ついいことがあったのよ。私の名前もシルパっていうんだけど、今までは名前を聞かれるたびに何度も聞きなおされたけど、今じゃ英国中に私の名前が知れ渡ったわ。」

ふむ。

最後にホステスである友人に聞く。
「ジェイドが出て行った時には嬉しかったでしょう?」
友人「そうよー。でも私、クレオにも出て行って欲しいのよね。」
私 「どうして?クレオはシルパに親切じゃなかった?」
友人「彼女は二面性があるわよ。シルパに親切にしていたのは本心じゃないわ。それからジャック、あの男が未だになぜ残っているのか分からないのよね、何にもしゃべらないじゃない。ジャメインは温和でいいわね、ナイスガイだわ。あとダニエル、あの子は顔は可愛いけど性格が終わってるわね・・・・(以下30分続いたが略)」

彼女は出演者一人一人について評価を下していたが、その中には人種差別騒動になる前に退去した出演者も含まれていた。
彼女がこんなに熱心なビッグ・ブラザーウォッチャーだとは知らなかったが、まあ印象としては、インド人の人たちも、特別シルパのファンと言うわけではないけど彼女を応援している、という感じだった。

まあ私だって、ビッグ・ブラザーハウスの中に日本人が一人だけいて、文化やアクセントで虐められていたとしたら、その人のことを特別好きじゃなくても応援したくなるものな。

しかし存続の危機が噂されたビッグ・ブラザーも、番組の最後に一般人編のオーディションの告知をしていたところを見ると、まだ続くらしい。
実を言うとこの騒ぎの前は番組を観たことがなかったが、これを機に、はまってしまいそうな予感の低俗日本人な私である。

投稿者 lib : 11:21 AM | コメント (0)

January 23, 2007

ビッグ・ブラザー騒動に思う

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前回「外国人を国に受け入れることに関して、イギリス人は懐が深い」と書いたところでビッグ・ブラザーの人種差別騒動だ。
ジェイドのお陰で私の書いた事にまったく信憑性がなくなってしまった。
私もチャンネル4に苦情を寄せたい気分である。

先週一週間は新聞もテレビもこの話題がトップニュースだったし、ブレア首相やゴードン・ブラウン財務大臣までコメントを出すなど、外交問題にまで発展しそうな勢いだった。
ジェイドごときの発言でこの大騒ぎ・・・イギリスも平和なのね・・・。

イギリスは国レベルでは外国人にとても寛容だけど、個人レベルでは、そりゃーいろんな人がいる。
外国人の経営する商店のシャッターは落書きだらけだし、学校で非白人の子供がイジメられるのは定番だという。

今回の事が、こういった悪ガキ(なんて可愛いもんでもないが)を再教育する機会になればいいとは思うが、反社会的な行動をしたりイジメをしたりするのは、大抵最低クラスの生活をしている子供達だ。(生活レベルから見たイギリスの「最下層」は、移民ではなく、ホワイト・ブリティッシュなんだそうだ。)

ジェイドはイギリスの最下層から伸し上がり、その奇行が面白がられてメディアに持ち上げられ、一気にセレブ入り?したはいいが、この事件により殆ど国賊扱いだ。
有名になってから800万ポンド(約16億円)を稼いだらしいが、今後メディアから干されても、資産を計画的に運用して一生安穏に暮らすようなキャラクターにはとても見えないし、一度脚光を浴びた芸能人が落ちぶれてたどる典型的なルート(酒びたり→アル中→ヤク中→更正施設を入ったり出たり)で、別の意味でゴシップ誌を賑わしそうな気もする。
ジェイドの生い立ち(生まれた時から父親はム所暮らし、母親はドラッグ中毒)や今回の騒動を見ていると、彼女もまた英国社会の犠牲者、という気がしないでもない。

ジェイド自身も「私は人種差別主義者じゃない」と言っていたが(リオ・デ・ジャネイロをサッカー選手の名前だと思っていた彼女も、『人種差別は悪い事』というアイディアはあるらしい)、TVを観ると、単なる3バカ娘が、女王様キャラのインド人女優シェルパを「ウザい」と思いつつ、容姿、育ち、教養などではかなわないので、彼らが優位に立てる唯一の英語や、アクセント、文化の違いを持ち上げてイジメていたように見える。

「インドでは、あ、中国だっけ?手で食べるんでしょう?どこを触った手か分からないわよね~」とか、
「あの子の苗字、覚えられないのよね~。シェルパ・ポッパダム(インドのクラッカー)だっけ?」とか、はっきり言って小学生が、「お前の母ちゃんデ~べ~ソ~。」と言うのと同レベルである。こんなデベソ発言にトニー・ブレアが(以下略)

ちなみに、今回の番組への出演で、シェルパに支払われるギャラは、30万ポンド~35万ポンド(6千~7千万円)だと言われている。そんな金額が貰えるのならば、私だって
「あの中国人・・・え?日本人?だって日本は北京の首都でしょ?まあ、どっちでもいいんだけど~、あのコの苗字覚えられないのよね~。ケイコ・テリヤキだっけ?」
などと陰口を叩かれても全然こたえないな~、と事の本質から全然ずれた妄想をする私だが。

イギリス政府は、もう少し公平な富の分配に努めてほしいものである。
セレブに払う金が、どこかにそんなにあるのなら、底辺にいる人たちがその生活から抜けられるようにできる工夫をすることに回してほしい。そうすればウチの車の窓ガラスが割られる確立も減るってもんです。


投稿者 lib : 11:34 AM | コメント (2)

January 16, 2007

イギリス人て、なんだ

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前回も書いたが、年末にポルトガルに行ってきた。
一週間のホリディを終え、ポルトガルを出国する時のこと。

パスポート・コントロールで家族3人分のパスポートを渡した。
EU内ではイギリスのパスポートは殆ど見ないが、日本のパスポートは割とじっくり見られる。
見られても普段はノー・クエスチョンで通してもらえるのだが、この時は違った。

係官は、私のパスポートを何度も何度もめくり、腑に落ちない顔をし、私にこう聞いてきたのだ。

“Is your husband English?”

この質問にはぶっ飛んだ。
「あなたの夫はイギリス人ですか?」・・・・・・
極めてシンプルな質問だが、人が「イギリス人」という場合、二つの意味がある。

① 国籍がイギリスの人
② 人種がイギリスの人

出国係官が興味あるのは普通に考えれば①の意味だろうが、彼は私のパスポートと共に、夫と息子のブリティッシュ・パスポートも握りしめているのだ。
夫がイギリス国籍であることは火を見るより明らかだ。

ならば②の意味?
だけど・・・私の横には、どこから見てもオリエンタル顔(夫は中国人、あ、人種的には)の夫がやはり言葉を失って立っている。
彼を見て、どうしたらて
「あなたは(人種的に)イギリス人ですか?」
という質問がでるのだ。

到底Yes、Noでは答えられず、予想外の質問にただただ絶句し立ち尽くしていると、

“Is your husband English?”

ともう一度聞かれた。

「ええと・・・彼は香港で生まれて13歳の時にイギリスに来ました。イギリス生活が長いので、英語は流暢だしイギリスで仕事をし税金も払っていますが、気持ちはいつまでもチャイニーズです。その証拠にチャイニーズ・ニューイヤーはかならず祝うし、勝負ネクタイは必ず赤です・・・。あ、好きな食べ物はダックです。」

と長々と説明したくなったが、彼がそんなことに興味もないだろうと思い直し、

“Uh….He is a British Citizen”

と答えた。

彼は「フム」と小さくつぶやき、そのまま私たちを通してくれた。

自分も普段怪しげな英語を話していて、ネイティブでない係官の英語を責めるつもりは毛頭ないが、こういう時、イギリス人ならば
“Is your husband a British citizen?”とか
“Does your husband have a British passport?”
とか聞くだろう。

夫もその一人だが、イギリスには、イギリス人(②の意)に見えないイギリス人(①の意)が沢山暮らしている。
中国系、インド系、アフリカ系・・・皆①の意味ではイギリス人だ。

日本語では「イギリス人」と一括りにするが、イギリス国内では①の意味と②の意味を分けて考えるので、例えばアジア系の人に“Are you English?”という質問はあり得ない(と思う)。

まあ、一般的にイギリス人と呼ばれる人たち(先住民)だって、歴史を見れば色んな人種の混血なのだから「純粋なイギリス人」なんていないのだろうが、先住民の人達は移民がイギリス国籍をとろうが、彼らを「イギリス人」だとは思っていない。

移民だって自分達を「イギリス人」だとは思っていない。
夫も、イギリス国籍になってン十年だが、自分を「僕はチャイニーズです」と当たり前の様に言う。

日本語の「国籍」という言葉には、「身も心も日本に捧げます」というニュアンスが漂うが、イギリス「国籍」を取得した人達は、「たまたまイギリスの場所を借りて住んでいるだけ」という感じがする。
だから「ブリティッシュパスポートを持っている」という表現になるんだろう。
先住民も同じ様に思っているから、二重国籍を当たり前の様に認めているんだろうな。

②のイギリス人は、①によりイギリス人になった人をイギリス人だと思っていないが、(ああややこしい)それでも異質なものを受け入れる懐の深さを持っている、と思う。

投稿者 lib : 01:46 PM | コメント (0)

January 09, 2007

霧のロンドン

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年末に家族でポルトガルに行って来た。

出発は、英国全土に濃霧が立ち込めた12月21日。
前日から、各空港でフライトキャンセルのニュースが引っ切り無しに続いていたので、こりゃ、ダメかなーと諦めムードを漂わせつつも、荷造りを終え、床に就く。
当日の朝、ロンドンの我が家の窓の外も深い霧、ニュースでも相変わらず空港の混乱を報じている。
インターネットでフライト情報を調べてみると、意外にも私たちの飛行機は、通常通り運行とのこと。

半信半疑で、霧で見通しの悪いノース・サーキュラーをルートン空港まで車を走らせる。
チェックイン・カウンターで確認すると、「今のところ、遅れの予定はありません」とオレンジ色が目に眩しい制服のお姉さんが言う。これまた拍子抜けするほどスムーズにチェックインできた。

早めにゲートをくぐり、朝食をとりつつ時間を潰したが、予定時刻になってもスクリーンに搭乗ゲートの表示が出ない。
他のフライトも同様で、待合スペース内は混雑してきた。
人々の表情に疲れが見え始めた。泣き出す子供やカメラを抱えた報道陣も現れ、ニュースでお馴染みの「空港で立ち往生する人々の図」が目の前に繰り広げられた。
それまでおとなしくしていた息子も「早く飛行機乗ろうよ、早く飛行機乗ろうよ。」とぐずり出す。

「これは数時間待ち、いやキャンセルも覚悟しなければならないかも・・・・」
と思い始めた頃、突如スクリーンに私たちの飛行機の搭乗ゲートが燦然と表示された。

後光が射して見えたものの、「ゲートでまた待たされるかも・・・」とまたもや半信半疑で移動。驚いた事に、すぐに搭乗が開始された。
飛行機に乗ってからも相変わらずの外の霧を見て、「なかなか動かないかも・・・・」と心配しているうちに、機体は
「ゴゴゴゴゴー!」と爆音を上げ、濃霧の中を飛び立ったのだった。
時計をみると結局、45分の遅れですんだ。

ポルトガルはカラッと晴天、ホテルに着いてTVをつけるとBBCニュースが流れていた。
依然としてフライト・キャンセル続出でカオス状態の空港の映像が流れている。
疲れ切った人々の表情が痛ましい。
私達もこの中の一人になってもおかしくなかったのに・・・なぜか今は青い空の下。

狐につままれたようで、
「どうして僕~は~、ここにいるのだろう~。」
という布施明の歌(古すぎ)が脳裏にうずまく私であった。

ニュースでは、ヒースロー、ガトウィック、スタンステッドの映像が写っていたが、なぜかルートンのことには触れていなかった。ルートンは小さい空港なので、あまり混乱がなかったのだろうか。それとも業界ぐるみで私たちの飛行機が飛んだ事実は闇に葬ろうとしているのだろうか。(そういえば『逃げるように』離陸していたな)

兎にも角にも、濃霧をものともせず果敢にフライトを決行したオレンジ色の憎い奴、eジェットの英断に心より拍手を送りたい。(賠償責任を避けたかっただけと言う説もあるが。でも本当に危険な時は飛ばないでね)

=================
さて、社長さんも書かれていたとおり、年末に編集部が忘年会を開催して下さいました。
僭越ながら私も、他のブログ執筆者の印象を伸べさせていただきます。

ダーリンは英国人 - とてもお洒落で、素敵なお洋服と着こなしのセンスの良さにいつも感心します。働く女性+主婦の二役を華麗にこなしていらっしゃる印象。

キャリアウーマン - 巧みなトークで皆を抱腹絶倒させてくれる間にも、他人への細やかな気遣いが垣間見えます。芸術的センスと常識、豪快さと繊細さを併せ持った素敵な女性。

社長5年生 - くだけたお人柄で、少年の様な笑顔が印象的でした。IT社長で文才もあるって凄いですね。機械音痴の私にプチアドバイスをありがとうございました。

現役駐在員 - イラストよりもずっと若い、若いけれど落着いていて貫禄があり、誠実そうで、さすが日本経済を背負う駐在員。家庭では愛妻家、良きパパであると思われます。

私 - 脳がヌカ味噌化しつつある、ぐうたら主婦ですが、社会で活躍されている皆さんとお会いできてヌカ味噌に少し風が通りました。今年もよろしくお願いします。

投稿者 lib : 10:39 AM | コメント (0)

December 19, 2006

イギリスの公立学校 3

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スプリングタームの後、イースター休暇に日本に里帰りする予定をたてた。
先生に春休みの後2週間程お休みさせたい旨を伝えると、彼女はちょっと複雑な顔をして、
「私自身は子供が他の国を見ることは賛成なんだけど、最近マスコミがうるさいでしょ。学校から許可を貰わないといけないのよ・・・オフィスにフォームがあるから提出してね。でも理由欄に『ホリデー』って書いちゃダメよ。」と言う。

学期中にホリデーに連れて行くために子供を休ませる親が多い事が社会問題になっていることは知っていたが、その影響が幼稚園にまで及んでいたとは。
とりあえずアドバイス通り、理由欄には「母親が日本に行かなくてはならないから」と微妙に理由にならない理由を書いた。

そこまでしたのに・・・・。
日本から戻り、約束通りの日に息子を幼稚園に連れて行くと
「一体どうしたの?2週間も来ないから、何度も電話したのよ。他の子を入れようか考えていたところよ。」
と他の先生に言われてしまった。

そんなこんなで2学期間、息子はこの幼稚園に通った。
仲の良い、女の子の友達が出来た様だったが、朝、その子の姿が見えないとぐずった。
息子は公園などではすぐに他の男の子と仲良くなるのだが、幼稚園で男の子の友達ができないのが不思議だった。

息子もよく「他の男の子に叩かれた」と言うし、夫から見ても男の子がラフだと言うし、先生はともかくアドミンのいい加減差が目につくしで、幼稚園はともかく、小学校は他を考えなくては・・・と思い始めていた。

「裏ワザ」の出番だ。家から少し離れたところに、英国国教会系のE校がある。
車での送り迎えになるが、近所の人も子供を通わせていて絶賛していた。
幸い夫はクリスチャンで、近所の教会に通っていて神父さんもよく知っている。
E校のオープン・デーに行き、校長先生に会ってその旨を話すと、感触の良い返事だったので、とりあえずはほっとした。
もしE校に入れないかった場合は私立を考えるしかないだろう。(今さら間に合うのか知らないが)

しかし、大どんでん返しが起こった。
2ターム目が終わりに近づいたある日。
すっかり忘れていたA校からレターが届いた。
9月から息子を受け入れるというオファーだった。

俄かに信じがたく、「なぜ?なぜ?」と狐につままれたようだったが、とにかく学校の気の変わらないうちにと、すぐにオファーを受け入れる返事をした。
(息子が受け入れられた理由については諸説あり、私が有力とするのは、リトルマン・テイト説 →
ジョディ・フォスターが監督・主演したリトルマン・テイトという映画で、フォスターの息子の天才少年が、英才教育施設でもずっと一位だったのが、ラスト・シーンで「転校生のヤマグチ」に抜かれた、というオチで終わる。きっと「ヤマグチ」という姓=ブライトだと職員に刷り込みされていたのではないか、という説だ。
しかし夫はこれに反論を唱え、「ヤマグチ姓はマフィアとしてのイメージの方がずっと大きい。」と言う。
彼の主張する理由は「僕がハンサムだったから」。そんなはずはないと思うんですが)

9月からA校幼稚園に通い始めた息子は、初めの数日こそぐずったものの、すぐに慣れ、友達も出来、自分の「居場所」を得たようだった。
学校のシステムもC校よりしっかりしているが、何よりも本人がC校に通っていたときよりもずっとハッピーに見えることが嬉しかった。

普段、「世間の評判には惑わされず、自分の目で確かめたものだけ信じよう」と心がけている私だが、やはり「評判」というのはそれなりに理由があるものなんだなあ、と自分にとっても目からうろこが落ちる経験だった。

A校の小学校に入るにはまた願書を出さなくてはならないが、このまま上に進めることを願うばかりである。

追記・C校を辞める時、先生に口頭でお礼をいい、オフィスには文書でその事を伝えたが、A校に通い始めて数週間たったある日、C校から留守電にメッセージが入っていた。
「9月に入ってからナーサリーに来ないけど、どうしたんですか?」
アドミン、もうちょっとしっかりしてくださいよ。

投稿者 lib : 11:28 AM | コメント (2)

December 12, 2006

イギリスの公立学校 2

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「確実」と思い込んでいた、そこそこのB校から「残念ながら・・・」のレターを受け取った時点で、「優良校」A校、「イマイチ」C校からも何も連絡が来ていなかった。
息子の生まれた2002年は前年の9.11の影響でベビーブームだったと聞いたこともあり、「もしかして子供の数がすごく多いのかも・・・まさか全滅!?」と慌てまくった。
近所の私立幼稚園に駆け込み、ウェイティリング・リストに息子の名前を載せた。
その翌日、C校から「あなたの子供を受け入れます」という旨のレターを受け取った。

C校はイマイチの評判だが、急に貴重なものに思えてきた。
とりあえずは席を確保して、通わせてから様子を見ようと、オファーを受け入れることにした。
レターの下についているスリップにサインして幼稚園に送り返すのだが、よく読むと、レターが家に着いたのが金曜日なのに、週明けの「月曜日までに送り返す事」と書いてある。
何かの事情で週末、家を空けている人はどうなるんだろう・・・と思いつつ、「ぼーっとしてたらこんな時期になっちゃったー。レター送るの遅くなっちゃったからあー、返事は早くしてよねー。」と気だるそうにつぶやく事務員の顔が透けて見えた。

どちらにしてもC校は徒歩5分の距離なので、その日のうちに学校に直接手渡ししに行った。

レセプショ二ストは同僚とおしゃべりしていたが、スリップを笑顔で受け取ってくれた。
一緒に行った夫が、
「レシート貰った方がいいかなあ・・・?」
と小さな声で私に言ったが、まさかこんな単純な作業に間違いがあるはずもなかろうと思い、
「まさかあ。ここ学校よ。大丈夫よー。」
と、そのまま帰った。夫は
「君はイギリスの公務員を知らないから・・・」
と不安そうに呟いた。
私だってイギリスの公務員が仕事が遅いとか、それくらい知ってますよー。

・・・しかし、私はまだ知らなかった。
1週間程してから、C校から「なにも連絡をもらっていないけど、辞退するということですか?」と電話をもらった。
既に返事した事を伝えた上で、念には念を入れてスリップを再び手渡し&郵送&ファックスした。今度は(どれかが)受領された様だった。

不安な気持ちをかかえつつも、幼稚園が始まった。
先生達は思ったよりも良いと思ったが、息子は朝、泣く日もあれば、スムーズに登園する日もあれば、という感じでバラツキがあった。

つづく

投稿者 lib : 01:47 PM | コメント (0)

December 05, 2006

イギリスの公立学校 1

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息子は今年の一月から、公立小学校の付属幼稚園に通っている。
実は一度、幼稚園を変わったのだが、幼稚園選びにもちょっとしたドラマがあった。

のんびりしている私も、息子が2歳の頃から周りで幼稚園の話題が多くなったので、「幼稚園はどうしよう・・・」と考えるようになった。とりあえず私立は考えず、公立小学校の付属幼稚園でいいだろうと思い、我が家から徒歩で通える学校4つに絞った。(うちの近所は学校の数だけは多い。)

・評判がとても良く、成績も良い人気校A小学校
・そこそこの成績、そこそこの評判のB小学校
・成績不振、ちょっと暗い雰囲気の不人気校C小学校
・同上、D小学校
である。

学校の評判はプレイグループで出会うお母さん達からの口コミの他、Ofstedのインスペクション・レポートwww.ofsted.gov.ukやナショナルカリキュラムと呼ばれる全国一斉テストの結果が公表されるwww.dfes.gov.uk/performancetablesなど、誰でも閲覧できるウエブサイトから情報を仕入れた。(考えてみれば、小学校の成績が公開されてしまうってちょっと怖い)
それぞれの学校に見学にも行った。

入学試験などはなく、一般的な学校で子供を採る優先順位は
1. 兄か姉がすでにその学校に在籍している子供
2. メディカル、またはスペシャルニードのある子供
3. 家が学校から近い子供の順

となっている。
明確な「学区域」などはないが、事実上この「席取りゲーム」で一番の争点となるのが、3の「学校からの近さ」である。
そのため、わざわざ人気校の近くに引越してきたり、家をもう一件買ったりして(!)子供の席を確保する親も少なからずいるそうだ。(公立校でも結局はお金次第なのか・・・と思わざるをえないエピソード)
その他、まめに学校に顔を出して熱心さを見せるといいとか、カウンシルの実力者に紹介状を書いてもらうといいとか、まことしやかな噂がプレイグループには流れていた。
私立じゃなくて、公立の小学校ですよ・・・。

しかし「裏ワザ」もある。

教会の運営している小学校(これも公立)では、上記に挙げた優先順位の最上位に、
1. 子供の家族が教会に通っている事
が挙げられるのだ。

一般的に教会系の学校は評判の良いところが多いので、子供を学校に入れるために入学前だけ熱心なクリスチャンに変貌する家族も数多い。(日本で教会で結婚式を挙げたいがために数週間だけ教会に通うカップルを彷彿とさせる)

プレイグループで知り合ったお母さんは、バリバリのイスラム教徒なのに、子供はなぜか英国国教会の学校に通っていた。
子供の教育のためなら宗教なんて二の次か。
(ああ、世界の人々が皆こんな節操のない、いや柔軟な精神の持ち主だったら、数々の戦争が回避できただろうに・・・。)

幼稚園に在籍していたとしても、付属の小学校にそのまま上がれる保障はない。(もう一度願書を出して仕切りなおし)
しかし評判のいい学校の付属幼稚園に入れたいと思うのが親の情だろう。

息子のためには、人気校A校、そこそこのB校、イマイチのC校に願書を出した。
もちろんA校に入れたがったが、徒歩10分の道のりには家が立ち並んでいて、かなり狭き門と思われた。ほとんど望みはないだろうと思ったので、まあB校に入れればいいかな、と思っていた。
B校に見学に行った際も、校長先生に我が家の住所を告げると「まず大丈夫」という返事で好感触だったので、息子はB校の幼稚園に通うものと思い込んでいた。
息子とB校の前を通る時も「このナーサリーに1月から通うんだよ~」なんて言っていたので・・・・

B校から「残念ながら・・・・」というレターを受け取った時には一瞬パニックになった。

つづく

投稿者 lib : 12:52 PM | コメント (0)

November 28, 2006

ジェイミーのジャージ

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のっけから白状しますが、2週前の「外国語のああ勘違い」で、ジェイミー・オリバーの着ていた学校ジャージに書かれていた文字、実はよく覚えていなくて適当に「北三中」などと書いてしまいました。
しかしその後、このジャージについて根気強く、深い検証をされている方がいることを知りました。

シャオさんという方のブログ、Brits on TV(勝手に紹介させていただきますがbontv.web.infoseek.co.jp/nishinari.htm、写真も見られます)によると、問題のジャージには「西成東部」と書かれており、ヨーロッパのセレブ達の間で流行しているそうです。気になる購入元ですが、なんとロサンゼルスの超高級百貨店、「サックス・フィフス・アベニュー」で250ドル(約3万円)で販売されているとの事。(発見者は原つとむさん、flyingworks.com/blog/007/2006/07/post_26.html) 

しかも、実際に愛知県に西成東部中学校という学校があり、このジャージと同じものを生徒さんたちが着ているそうです。
やはり「食パンという名の大福」と同様、本物のジャージをどこからか入手した業者が、勝手に文字の部分だけコピペしたのでしょうか。だとすれば、意匠登録の件で問題がありそうですが・・・。チャイナタウンで売っている、ちゃちな「なんちゃって商品」とは規模が違います。ちなみにジェイミー愛用の緑ジャージの他、オレンジ、紺バージョンもあり、豊富なカラー展開。かなり荒稼ぎしている模様です。

この一件で思い出しましたが、その昔、日本でも「UCLA」と書かれたトレーナーが流行したことがありました。UCLAとは言わずと知れたカリフォルニア大学のことですが、日本を訪れた外国人が、「日本には、UCLAで学んでいる学生がこんなに多いのか」とびっくりしたという話を聞いた事があります。古今東西、人は同じことをする、ってことでしょうか。愛知県西成東部中学校がUCLAほど知名度が高くないのが惜しまれるところです。

この無許可(と思われる)コピーを「意匠権の侵害」と騒ぎ立てるか、「無料の広告」と喜ぶか、(広告されても西成東部中学校にはなんのメリットもなさそうですが)学校の出方が気になるところです。というか、どうでもいいでしょうね。

それにしてもあれがジャージという名の「セレブ服」だとは思いもよりませんでした。ebayしか思いつかなかったなんて、我ながら貧乏人の発想の限界を知りました。でもセレブ向けのジャージ市場が存在するならば、一般ピープル(死語?)向けの市場も存在するはず・・・と、まだebayでの荒稼ぎの夢を諦めきれない私。ていうか、もう学校ジャージなんてないんだってば。

と言うわけで長くなりましたが、「北三中」は間違いで、「西成東部」が正しいロゴ(?)でした。訂正して、お詫び申し上げます。
(今回は反省の意味も含めて従来の「である」調をやめて「ですます」調で書きました。来週もこの謙虚な気持ちが持続しているかは不明。)

投稿者 lib : 11:27 AM | コメント (2)

November 21, 2006

息子の名言集

mama.gif この連載を始めた頃、「単なる親バカ日記には、ならないようにしよう」と密かに思ったが、息子も4歳の誕生日を迎え、ここ最近、言う事が面白い。
と言うわけで、親バカ全開「息子の名言集」。

(私の妊娠中の写真を見せて)
私 「お腹大きいでしょう?中に赤ちゃんがいたんだよ。」
息子「・・・・・どうして赤ちゃんを食べたの?」
・・・以後、事あるごとに疑惑に満ちた目でこの件について追求される。返答に困る。

(私の誕生日の前日)
私 「明日はマミーの誕生日だよー。何かプレゼントくれる?」
息子「いいよ。どんなおもちゃが欲しいの?」
・・・子供のおもちゃを貰ってもなあ・・・だからと言って大人のおもちゃを貰っても困るが。

(お風呂に入れている時、息子にうっすらと胸筋がついているのを見て)
私 「すごーい。胸筋があるー。」
息子「マミーにもあるよ。」
・・・息子よ、こんな貧乳でも認識してくれてありがとう。ていうか、胸筋なみってか?

(新聞に掲載された世界の大学ランキングで、東京大学が13位だったのを見て)
夫 「日本でトップの大学も世界では13位かー。(息子に)おい、トーキョーユニバーシティになんて行かなくていいぞ。」
息子「うん、トーキョーディズニーランドに行く。」
・・・そうね、そっちの方が楽しそうね。

番外編
(エルダーフラワージュースを飲みたかった息子、一生懸命訴えるが『エルダーフラワー』の部分が上手く言えず、どうしても私に通じない。)
息子「:*@×?ジュース飲みたい」
私「何ジュース?オレンジ?アップル?」
息子、少し考えて自分の鼻を指差す。
・・・鼻=はな=フラワーで、エルダーフラワージュースだと気付いた。
日本語と英語を利用した連想ゲーム、上手いぞ。

また何かあったらご報告しまーす。

投稿者 lib : 11:55 AM | コメント (1)

November 14, 2006

外国語の「ああ勘違い」

mama.gif 夫が香港出身なので、チャイニーズの人達と接する機会が多い。

彼らは、ほぼ例外なく、日本食や日本のお菓子が大好きだ。
お呼ばれした時などは日本のお菓子を持っていけばまず間違いない。
味はもちろん、美しいパッケージにも驚嘆の声を上げて喜んでもらえる。

で、商魂たくましいチャイニーズ商人がこの需要を見逃すはずがない。
巷では、チャイニーズの経営する「なんちゃって日本食」レストランや、チャイニーズの会社がつくった「なんちゃって日本菓子」が席巻している。

とりあえず、漢字と漢字の間に「の」の字を挿入すれば日本っぽくなるらしい。
「優の良品」とか「味の覚」とか、意味不明なブランド名が付けられているが、チャイニーズの人々は「の」が入っていれば、日本製品だと識別するらしい。
夫もよく間違えて、「日本のお菓子見つけたよ~」とこれらのなんちゃって製品を買ってきてくれる。
包みに書かれた意味不明の日本語を見つけて一人でつっこむのが、私のささやかな楽しみとなっている。

先日のお土産。
「ほのかな甘みと風味豊かな食パンです」
日本人でも本物かと間違えそうな、美しいパッケージの上に、コピーライターが書いたような商品コピー。
「チャイニーズ日本食も腕を上げたな・・」と感心したが、惜しいかな、一つだけ決定的な間違えがあった。
中身が大福なんですけど・・・・。

また、ある時はドライプルーンを買ってきてくれた。
「新製法により、梅が本来持っている有機酸を封じ込めました。
天然の風味が生きています。」
なかなか素晴らしいコピーではないか。
プルーンは梅ではなくスモモだと思うが、まあ中国では梅というのかもしれない。細かいツッコミは辞めておこう。
と思ったところで、肝心の商品名が「プルーソ」になっているのを発見した。惜しい!

香港では逆に、漢字を利用した、なかなか上手いネーミングも見かける。
虫さされの薬「ムヒ」は「無比膏」。
「他に比を見ない」ってか。上手い!

昔、ギリシャのある島に行ったときは、日本の中古車をよく見かけた。
車体には、「ゆっくり走ろう北海道」とか「トヨタカローラ府中」とか、日本語のステッカーが貼られたままになっていて、非常に郷愁をそそられた。
彼らに言葉の意味は分からなくとも、「日本で走っていた」という事を物語るステッカーが、ある種のファッション、またはステータスとなっていたのかもしれない。

まあ日本でも、意味不明の英語が書かれたTシャツなどはよくあるし、お互い様だろう。
イギリスでも訳の分からない漢字や日本語が書かれたTシャツを嬉しそうに着ている人を見かけるようになって久しい。
そういえば少し前、ジェイミー・オリバーが「北三中」と縦書きに書かれた、明らかに学校ジャージと思われる上着を着てTVに出演していた。

押入れで眠っている学校指定ジャージをebayに出せば、高く売れるかもしれない。
残念ながら私には昔のこと過ぎて、とっておいてないけれど・・・。


投稿者 lib : 10:54 AM | コメント (2)

November 07, 2006

ケイト・モス

mama.gif ケイト・モスがイギリスの「モデル・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた。

コカインを吸入している写真を撮られた一年前よりも広告契約している企業は14社と増え、推定年収も倍以上(数十億円?)になったそうだ。

私が言うまでもなく、モデルとしてのケイトは逸材だ。
瀕死の老いさらばえたブランドが、ケイトを広告に使い、クールで旬なブランドに生まれ変わった例は数多い。
バージン・モバイルのCMの動くケイトはそれほど良くないな、と思ったが、やはり彼女が一番映えるのは写真、それもモノクロ写真だろう。
あの半開きの口で、上から見上げているような表情が、とてつもなくドラマティックな世界を創り出す。
その切り取られた一瞬のために、企業が彼女に何億円も払うのも分かる。

現にある企業は、彼女を広告に使ってから毎年20パーセントの売り上げ増だそうだ。
へたな広告代理店に高いお金を払って、CIやら何やらで散々いじくりまわされた挙句、何の効果も得られないよりはケイトを使った方がよっぽど手っ取り早くて安全だろう。元広告代理店勤務の私が言うのだから間違いない。(って関係者の皆様ごめんなさい)
代役のいないモデル、ケイトを復活させたいのは、よーく理解できる。

しかし。
いいんだろうか?これで。

コカイン騒動は、わずか一年前である。
一年間のみそぎを終えて、「さ~、反省もしたことだし、これで無かった事にしましょう♪」で、いいのか?
本当に、若者にドラッグを使用して欲しくないのなら、せめてもう少し、数年間は表舞台から遠ざけるべきでは?
道徳や正義は、やはり経済の前には消えうせるのか。

薬物使用したモデルは使わない、という頑なな態度を貫いた方が、長い目で見ればその企業イメージは良くなるんじゃないかな・・・と思うのは私だけだろうか。

広告主は英国企業だけではないけれど。

イギリスというのはヘンテコリンなところも沢山あるけれど、Justiceという事に関しては、理想主義じゃないかと思えるほど信頼できる国という印象があっただけに、なんだか残念な「なあなあ主義」の顛末だ。


好きなんだけどね、ケイト・モス。

投稿者 lib : 11:55 AM | コメント (0)

October 31, 2006

アフタースクール 2

mama.gif 次の日、ナーサリーから戻った息子と家で遊んでいると、5時頃玄関のチャイムが鳴った。

エイミーに連れられたハリーだった。
またうちで遊びたいと言うので、どうぞどうぞと招き入れた。
母親はまだ帰っていないという。
息子も大喜びで二人でしばらく遊んだ後、ハリーの家で遊ぶというので、隣に連れて行った。

隣家で遊んでくれれば私は楽だが、ふと心配になった。

以前、フィオナが「いつでもベビーシッターしてあげるわよ」と言ってくれたことはあるが、「お茶飲んでいきなはれ」と言われてお茶を飲みに上がったら「あの人アホや」と言われる京都人気質も入っていそうなイギリス人ミドルクラス。
言葉をそのまま受け取っていいものか。
イギリスでは子供にもきちんきちんとスケジュールを立てて生活させている家庭が多いし、息子と遊ぶことで生活スケジュールが狂う事もあるだろう。
前日、エイミーが迎えに来たのが6時前だったので、ハリーの食事の時間が6時頃なのかもしれない。
6時がリミットかな、と思い、6時5分前に隣に行き、まだ遊びたい二人を無理やり引き離し、家に連れて帰った。

翌日もハリーはチャイムを鳴らした。
隣家で遊ぶ場合は、私は「6時リミット」を死守し、迷惑をかけないように迎えに行った。

金曜日。
7時頃になっても、ハリーはまだウチで遊んでいた。
あれ、ご飯の時間6時じゃなかったのかな・・・と思っていると、仕事から戻った夫が、二人をプールに連れて行ってあげると言い出した。
狂喜乱舞する二人。
隣に許可を取りにいくと、フィオナも戻っていて、よろしくお願いしますとの事。
プールで二人は思い切り遊んできて大満足だったが、戻ったのが9時頃になってしまったので、遅くなりすぎでは・・・とまたもや少し心配になった。

翌土曜日。
また5時頃、ドアのチャイムが鳴った。
こんな時間に誰だろう・・・と窓から外を見ると、ハリーがドアの前に立っている。
ウィークエンドはちょっと都合が悪いなあ・・・と思い、夫にそう言ってもらうように頼むと、子供好きの夫は
「僕には言えない。君から言って。」
と懇願するので、仕方なく私がドアを開けた。

すると、ピンクのバラの花束を抱えたハリーが
“For you”
と言って、それを私に差し出すではないか。

予想外の展開に驚き、「私に?」と聞くと、
「色々とありがとう。プールにまで連れて行ってくれて感謝してるわ。」
と門の外に立ったフィオナが言った。
遊びの誘いを断る口実を探していた自分が恥ずかしくなった。

日曜日は秋晴れのいい天気だった。
息子がまたハリーの家に遊びに行きたがるので、夫が
「いい天気だし、隣に預けて僕達はテニスしに行こう」
と言う。隣に聞きに行くと、
フィオナは
「No Problem! 都合の悪い時はそう言うから、心配しないでね。お互いにそうしましょう。」
と言ってくれた。

彼女は思っていたよりも、ずっとシンプルな性格なのかもしれない。
どうも難しく考えすぎていたのかも。

それにしても、私が小学生の頃は、学校が終わった後ランドセルを置いて、近所の子と遊びに出かけたものだったが、ロンドンで子供達が誘い合わせて遊んでいるのなど見たことがない。
ロンドン子は学校が終われば家にいるしかないのかなあ、可哀相だなあ、と思っていたが、まさか外国人である自分の息子に、放課後の遊び友達ができるとは思っていなかった。
それも隣なので、何につけてもとても便利で安心。
(いざという時にはベビーシッターも頼める。有り難や~。)

でも徒歩30秒の隣にも、必ず大人同伴で連れて行くところがロンドンらしいといえばロンドンらしいが。

投稿者 lib : 11:50 AM | コメント (0)

October 24, 2006

アフター・スクール

mama.gif   先週、息子はナーサリーが終わった後、隣家の6歳の息子、ハリー(仮名)と殆ど毎日遊んだ。

ちなみに、ハリー(仮名)とする訳は、隣の子供の名前を本名で書いて個人情報漏洩で訴えられるのが怖いから・・・とは思っていませんが自分の子の名前も公表していないので、何となく申し訳ない気がするので。

始まりは火曜日だった。
息子と部屋にいると、窓から隣の庭で遊ぶハリー(仮名)と友達らしい女の子が見えた。

息子が窓を開け、
「ハリー!(仮名)」と呼ぶと、ハリー(仮名、以後鬱陶しいので略)は
「うちに遊びにおいでよ!」
と誘ってくれた。

「お母さんはいるの?」
と聞くと、いないけどお姉さんがいると言う。
息子はすっかりその気になっているし、他にも子供が遊びに来ているようだからいいかな、と思い玄関を出たところで、ちょうどタクシーから降りる仕事帰りのフィオナと鉢合わせした。

これこれしかじかと事情を話すと、
「ノープロブレム!後で連れて帰ってあげるわ!」
と言ってくれたので、有難く隣家に置いて来た。
これが5時頃のこと。

20分程過ぎた頃、庭から「マミ~!」と呼ぶ声がするので窓から顔を出すと、フィオナとハリーと息子がこっちを見ている。
息子がおもちゃを見せたいから、ウチで遊びたいと言っているという。
勿論問題ないので、ハリーと息子を招きいれた。
さっきの女の子はもう帰ったという。

うちで30分程遊ばせていると、ドアのチャイムが鳴った。
ハリーの姉の14歳のエイミー(仮名、以後略)だった。おそらくフィオナに言われて、迎えに来たのだろう。
時間は6時10分前。いい時間だと思い、ハリーに「お姉さんが迎えに来たわよ~」と言うと、
「まだ帰りたくない~!」と大抵抗の嵐。
てこでも動かない様子だったので、
「後で私が送っていくから」
と、とりあえずエイミーを家に返した。

息子も夕食がまだだったし、隣家も食事の都合があるだろうと、それから15分後にハリーをなだめて隣に連れ戻した。

時間は6時5分。
まあ常識的な時間にお開きになったかな、と思った。

つづく


投稿者 lib : 09:44 AM | コメント (0)

October 17, 2006

The naughtiest boy 2

mama.gif  自己主張が強くやんちゃな息子に日々振り回される日々だったが、とりあえずは有難い事に、身体の発育だけは何の心配もなかった。
近所のプレイグループで知り合った、年の近い子供を持つ日本人ママ達といつも遊んでもらっていたのだが、彼の運動神経を皆から褒められるのを、正直誇らしい気持ちでいたのも確かだ。

形勢が逆転してきたのは、息子が1歳になった頃だった。

息子より4ヶ月お姉さんのSちゃんが、言葉を話し始めた。
それも”I’m fine, thank you” とか、いきなり高度な文章だ。
「女の子は言葉が早いと言うし、すごいなあ。」
と、素直に感心した。

それから数ヶ月して、Kくんが簡単な単語を発し始めた。
Kくんは息子より2ヶ月お兄さんなので、
「この子もあと2ヶ月位したら話し出すのかな」
と楽しみに思った。

それから2ヶ月たっても、3ヶ月たっても、4ヶ月たっても、息子は相変わらず「ぶばぶば」と赤ちゃん言葉しか発しなかった。
とうとう2歳の誕生日を迎えたが、「マミー」とも言ってくれなかった。
そんな間にも、周りのお友達はどんどん語彙を増やしていった。
比べても仕方ないとは分かっていても、どこかで焦る気持ちがあった。

私がもっと意識的に言葉を教えるべきなのだろうかと、たまには家で落着いて絵本を読み聞かせようとしても、息子はあまり興味を持たず、相変わらず外に出て遊びたがった。
確かに彼が一番びのびする場所が公園だったし、私もそんな彼を見ているのが好きだった。
お気に入りの公園は家から少し離れていて、車も駐車できない場所だったが、片道30分の道のりをバギーを押し押し頑張って歩いた。

ある時、公園で走り回る彼を見ながら、ふと思った。

ああ、こうやって息子が外で体を動かすのが面白くて仕方無くて飛び回っている頃、SちゃんやKくんはお家でお母さんに絵本を読んでもらったり、お話をしてもらったりしていたのだろう。
重ねた時間の分だけ彼らは言葉を覚えたし、息子は皆より早く走れるようになった。
これが「個人差」ってものなんだ。

息子が始めて言葉を発したのも、やはり公園だった。

いつもの様に最後の一人になるまで遊び続け、抵抗する彼を無理やりバギーに押し込め、家路へ向かうべく歩き出した。
と、私たちの前を、一匹のリスが横切った。

それを指差して、息子が「りす」と言った。
突然のことに、耳を疑った。
「え?何て言ったの?あれの事?あれなあに?」

「りす」

夕暮れの公園で、私は不覚にも涙を流してしまった。
息子は2歳と2ヶ月になっていた。

先日4歳の誕生日を迎えた彼は、他の子に比べればまだ下手くそだが、言葉も随分話せるようになった。
少しは落着いて、家の中でも遊べるようにもなった。
ナーサリーもフルタイムになり、週末くらいしか公園に連れて行けなくなってしまったが、二人で過ごした公園通いの日々が宝物のように思い出される。

投稿者 lib : 12:08 PM | コメント (5)

October 10, 2006

The naughtiest boy 1

mama.gif  息子は運動神経だけは良いらしい。生まれた時からその兆候は見えていた。

生後2週間目から、掛けていた毛布はいつも足で蹴り飛ばし、オムツ替えのときも私の顔面にキックが飛んだ。(たまに水鉄砲も飛んできた)
他の赤ちゃんがバギーにアーチ状にとりつけられたおもちゃを触って遊んでいる姿を愛らしいと思い我が子にも・・・と購入したが、取り付けた途端、彼の足蹴りの格好の標的となり、5秒後に破壊された。

はいはいもつかまり歩きも異常な速度で動き回り、階段の多い我が家ではまさに一秒も目の離せない状況だった。
離乳食を食べ始めるようになると、わざと口の中のものを私の顔面に逆噴射した。
ケラケラと笑う息子とご飯粒だらけの顔で呆然とする私は、はたから見れば漫画の様だっただろう。

平均的には1歳の誕生日の後に歩き始めるところを、息子は10ヶ月で歩き出した。
喜ばしいことだったが、大変さに拍車がかかった。
こちらの言う事が理解できないのに、体だけは一人前に動くのは、○○老人と同じ状態。
寝ている時以外は一秒たりとも静止することのない息子を追いかけて、私も家の中にいても座ることさえもできなかった。

12人の孫の成長を見守ってきた義母からは、”The naughtiest grand child” という称号をいただき、彼女は「こういう子は香港でもベビーシッターに断られるのよね・・・」と遠い目をしてつぶやいた。
しかも、「私の息子はこんなに腕白じゃなかった。いったい誰に似たのかしら・・・」
と不本意そうに私の顔をじっと見つめた。
お義母さん、それは濡れ衣です。

家の中でじっとしていられない息子に付き合い、一日に4回は外に連れ出した。
滑り台なども、一緒に付いて遊んでやらなくてはならない。
40近くの中年女が、大きなお尻をむりやり滑り台に押し込め、両手を挙げて「わ~い」などと滑り落ちる姿は、もし息子が透明人間だったらただの変質者である。
息子は自分の実力以上の遊具にも果敢に挑戦したがり、ちょっと目を離すと2メートル位の高さの場所から、両手だけでぶらぶらとぶら下がり絶体絶命の危機に陥っていた。
公園でもプレイグループでも他の子の持っているおもちゃを片っ端から奪い取った。
1歳くらいだと、「誰の所有物」とか「貸し借り」の概念がまだ理解できないと何かで読んだ事があったが、他の親の手前、たしなめなければならない。
いつもは日本語で話しかける私も ”You have to share it” とか “It’s not yours”とか、その度にわざとらしく英語でアピールした。
そんな事の繰り返しにも疲れ、時には息子がトラブルを起こしても他人のフリをしたい気持ちになる事もあったが、公園内でオリエンタルの親子は私たちだけなのですぐに面が割れてしまう。
(その点、日本人親子のグループ『なかよし会』に参加した時は、つかの間のオアシスだった。ごめんね。)

プレイグループでは、外用の三輪車で屋内に入ろうとして怒られたり、一角に設けられているベビースペースの囲いによじ登り、中にダイビングし新生児の真横に着地して、新米ママたちを恐怖のどん底に陥れた。

彼の度重なるオキテ破りの行動の度に人々に謝り、息子を叱るのにも疲れ切り、プレイグループから足が遠のいた事もあった。公園に行っても、誰もいないとほっとしたりした。

そんな息子を小さい頃から見ている日本人のママ友は、ある時
「親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしている・・・・」
と「坊っちゃん」の冒頭をいきなり暗唱し始めた。

確かに私も「立ち入り禁止」と書いてあると立ち入りたくなる性格ですが・・・。

つづく

投稿者 lib : 01:30 PM | コメント (0)

October 03, 2006

公営のプール

mama.gif  公営のスポーツ施設をよく利用している。

以前、プライベートのジムのメンバーになっていたこともあったが、初めこそ熱心に通ったものの、お約束通り、だんだんと行く回数が減り、気がつくと一回当たりの単価がえらい高くついていた。
その点、公営のジムは利用する時に一回分だけ払えばいいので単価は劇的に減少した。

主にプールで泳いでいる。
建物は古くてくたびれているが、プール自体はプライベートのものよりも大きいし、金曜の夜やレディス・ナイト(女性専用日)などはガラガラに空いているので快適だ。
(そういえば、レディス・ナイトは初め、『レズビアンの方たちの社交場では』とためらったが、行ってみれば色目を使われる事もなかった。皆純粋に水泳を楽しんでいるのか、私に魅力が足りなかったのかは不明)

私の公営プールデビューはイギリスに来て間もない頃だった。
その頃、付き合っていた夫に「プールに泳ぎに行こう」と誘われた。
日本のプールは私営であれ公営であれ、スイミング・キャップの着用厳守だったので、それに慣れていた私は
「困ったな・・・・水着は持っているけどキャップを持っていないの。」
と言うと、夫は、
「あはははは、君は面白い人だなあ。じゃあ僕は、ラケットもシューズも持っているけど白いシャツを持っていないからテニスができないんだ。」
と大笑いされた。

ジョークだと思われたらしい・・・その頃ジョークを飛ばせるような英語力はなかったのだが。

半信半疑で行ってみると、スイミング・キャップなど被っている人の方が少なく、セクシー系のビキニだの、水着の上になぜかTシャツを着たり、皆思い思いの格好で泳いでいた。

利用者も老若男女、多種多様。
子供用のプールで歩きもせず、肩まで温水に浸かり、じっと目を閉じている老婦人(推定年齢70歳)がいた。
妙に懐かしい風景だなあ・・・と思っていると、彼女はスイミング・キャップの変わりに水玉模様のシャワー・キャップを被っていた。
子供プールは水温も高いので、その姿はまさに温泉で「極楽極楽」と幸せに浸るお婆さん。
非常に郷愁をそそられた。
また先日、一人で泳いでいると、前から平泳ぎで悠々と向かってくる人がいた。
顔を水に付けないでこちらに向かってくる。非常に普通の光景なのだが、何かが違う。
「間違いをさがせ」とばかりに必死でその顔を観察すると、間違いは、「ゴーグルのあるべき場所に、普通の眼鏡がかかっている。」だった。
水に顔を付けないので不便はないのだろうが。度付きゴーグルってものもあるんですけど。

日本だと、プールサイドから飛び込んだりしてもすぐに「ピーッ」と笛を吹かれるが、こちらではよっぽど危なくない限り監視員も放し飼い状態である。

しかし、「規律の国日本」のオキテが染み付いている私でも、一度だけ笛を吹かれたことがあった。
息子を初めてプールに連れて行ったとき、はしゃぐ姿があまりに可愛かったので、思わずデジカメを取り出した。
プールにカメラを向けた途端、「ピーッ!」とやられた。

写真撮影に関しては、非常に神経を使う国という事を忘れていた。
各国、いろいろなオキテがあるようで。

投稿者 lib : 10:59 AM | コメント (2)

September 26, 2006

オーガニック・フードの謎

mama.gif 子供が生まれてから、なるべくオーガニック・フードを購入するようにしている。
どこのスーパーでもオーガニック・コーナーがあるし、近所にローカルのオーガニック・ショップもあるので(チェーン店ではない)よく利用している。

このオーガニック・ショップで買った野菜は確かに美味しい。
ただ、日持ちはしないので、少量ずつ買ってさっさと消費しなくてはならない。
玉ねぎなんか、店にある時点で腐りかけているようなこともあるので、痛んでなさそうなものを必死で選別する。

以前、知り合いに自家菜園で採れたブロッコリーを頂いたことがある。
とても有難かったのだが、房を切り分けようと思ったら、中からゴニョゴニョと青虫が現れた。
卒倒しそうになりながらも、なるほど無農薬野菜というものは、こういうものかと妙に感心したりもした。

しかし市場に出回っているオーガニック野菜には、虫食いのあとさえもない。
特にスーパーの物はピカピカで、ノン・オーガニックの物と見た目も遜色ない。
もちろん虫はいない方がいいのだが、なんでだろう?
環境と野菜に優しい「オーガニック農薬」とかを使っているのだろうか。
どなたか、ご存知の方いたら教えてください。

ちなみに、私が今まで生きてきた中で一生忘れられないと思うほど美味しかったものは、
1. 中国本土の農村地帯で食べた紫芋の焼きいも。
地元のお婆さんたちが道端で売っていた。
ほかほかで甘くて、涙が出るほどうまかった。
2. モロッコの山中の村で食べた、タジン。(ラムのシチューのようなもの)
じっくり時間をかけて煮込んであり、まろやかで心に染み入る味だった。

どちらも日本の七輪のようなもので調理していた。
別に「炭火焼の味!」の看板を立てている訳ではなく、その土地にガスが通っていないので当然の料理法だった。
化学肥料が出回っているとも思えない程の僻地なので、正真正銘のオーガニック・フードだったのだろう。

日本で働いていた頃は食べ歩きが趣味で、パリの三ツ星レストランにまで攻め入ったバブリーな日本人だった私だが、紫芋とタジンに勝る味にはまだ出合った事がない。

今は食の選択が豊富で、何でも食べられる時代だが、実は昔の人の方がずっと美味しいものを食べていたのかも。


投稿者 lib : 11:46 AM | コメント (2)

September 19, 2006

イギリスの典型的ホームパーティ(ミドルクラスの、ミドルエイジによる)

mama.gif 隣のフィオナからバースデーパーティーに招待された。

天気の良い週末、隣の庭では朝から準備に余念がなかった。
(我が家は2階なので窓から隣の庭がよく見える)
大きなマーキー(テントのようなもの)が張り出され、その隣にはドリンク・バーになると思われるテーブルが置かれている。そのテーブルの下には、おびただしい量のワイン・・・・ダンボール5,6箱はあった。

イギリス人の典型的なパーティーは
「飲んで、会話する。」
日本ではこれに「食べる」が加わり
「飲んで、食べて、会話する」というところか。
ラテン系の国々もこれが当てはまる様な気がする。

ちなみに香港人のパーティーは
「食べて、食べて、食べる。」
チャイニーズの人々は食に情熱を傾けるあまり、一般的にはあまりアルコールには興味がないらしい。
そのせいか、チャイニーズの酔っ払いを街中で見かけることも殆どない。
「会話を楽しむ」という概念もないが、もちろん全く無言なわけではない。
「何処の誰は月に何千ポンド稼いでいる」
「何処の誰はビジネスで稼いだ金で○○ポンドの家を建てた」
など主に銭金の話題を中心に、よく話に花が咲いている。

それはともかく、パーティーのスタートは8時。
30分程過ぎた頃おじゃますると、門とドアの間の前庭にランタンがつるされている。
キッチンと、そこから続く広い庭がメイン会場だ。
庭にもランタン、キャンドル、たいまつ(っていうのか知らないが)で明りをとり、ここらへんの演出はさすがにイギリス人はうまい。

おつまみは生ハム、上等のチーズ数種類、サラダ数種類、チョコレートフォンデュ、フルーツなど、イギリス人のパーティーとしては上の上の上の上である。
客もわらわらと集まり、6、70人はいた。

しかし所詮、メインは「飲んで飲んで飲んで話す」イギリス人パーティー。
しかも彼ら、何時間でも立って飲み続ける。
私はお酒はあまり飲めないし、家のソファが恋しくなり始めた頃、息子がたいまつを振り回して遊び始めた。
すると何かの拍子に、火が服の袖に燃え移ってしまった。
普段は息子が多少危なっかしい事をしても、「怪我をして、痛いと思うことから学ぶのだ」と割と放任主義の私だが、「火だるまになっても自己責任」と言えるほどの鬼母ではない。
すぐに消す事ができたが、しゃれにならない状況になってきたので、10時頃退散した。

しかしベッドに入っても隣から聞こえてくる音楽と話し声のざわめきでタイミングを逃してしまい、寝付けなくなってしまった。

なので、2階の窓からパーティーを観察するストーカー行為をすることにした。

23:00 宴たけなわ。
24:00 宴たけなわ。 音楽が80年代ポップスへと変わる。やはり同世代だったか。
1:00  ぽろぽろと帰る人が出始めた。しかし相変わらず皆、立って飲んで話している。
2:00  やっと音楽終わる。でもまだ人がかなりいる。
3:00  お開きになったらしく関係者の数人だけがマーキーの中でまったりとしている。

日本なら、住宅街で朝の2時まで大音量で音楽を鳴らしていたら隣近所から苦情が出るだろうが、イギリスではごくごく常識の範囲内。
近所もお互い様、ということで文句も言わない。 

そういえばイギリス人のパーティーは、色々な国の人が交じり合って招待されているものと、ロンドンの外国人人口比率を全く無視した「イギリス人だけ」のパーティーの2種類に分かれる気がする。
今回のパーティーは後者で、日本人どころか外国人は私たちだけだったと思われる。
    
しかしモンゴロイドの私には、やっぱり日本のビールを飲みつつ着席して美味しいものをつまむパーティーが懐かしいなあ。
なんだか妙に日本語で話したくなり、日本の妹に電話して朝の5時までしゃべった。(こういう時、時差は便利)

投稿者 lib : 10:51 AM | コメント (2)

September 12, 2006

初体験

mama.gif 子供が生まれて最初の年は、「初めて笑った」「初めてはいはいできた」「初めて歩いた」など初めてづくしの一年間だったが、大きくなるにつれて、そういったエキサイティングな出来事が少なくなる。

だがここ最近、4歳を前にして息子の「初めて」がいくつか続いた。

1. 初めてジョークを飛ばした
ある休日、夫が「Fruit picking(果物狩り)に行こうか?」と言うと、間髪いれず息子、
「How about picking nose?」。
Picking noseは「鼻をほじる」という意味である。
Pick という動詞にかけた高レベルなジョーク・・・なんて感心している場合ではない。
できれば、初めてのジョークはもう少し上品なものにしてほしかった。

2. 初めて泳いだ。
体育会系の息子、プールが大好きだが先日初めて自力で泳いだ。
見てる間にどんどん上達し、あっという間に3メートルくらいは泳げるようになった。
プールの底に落としたゴーグルをとりに、潜ることもできるようになった。
私自身は小学校時代、逆上がりができずに残されて特訓されたタイプなので、運動神経のいい人間というものは特に教えてもらわなくても、こうして体が本能的に習得するものなのか・・・と感心。
ちなみに彼は10ヶ月で歩き、2歳で補助つき自転車にのり、3歳で前転ができるようになった。

いい気になり「未来のフットボーラー?」の夢を託してフットボール教室に連れて行ったこともあったが、どうやらチームプレイは苦手らしい。
インストラクターの指示を無視し、一人で勝手にボールを蹴っている。
「協調性がないわね~。これじゃ未来のミリオエナは無理じゃない」とイライラする私だったが、横で見ていた夫、ぽつりと
「僕も個人プレーの方が好きだからなあ・・・」。
はっ。そういえば、私もチームプレイはできないタイプだった。
子供を責められない・・・。

次の「初めて」は何だろう。
ティーンエイジャーになったら、「ガールフレンドができた。」「初めてお酒を飲んだ」くらいは微笑ましいが、「ガールフレンドを妊娠させた」「始めてドラッグに手を出した」などはないといいんだがなあ・・・。

投稿者 lib : 10:58 AM | コメント (1)

September 05, 2006

父兄デビューの心得 ロンドン編

mama.gif 一昔前に日本で「公園デビュー」という言葉が流行った。

子供を連れて初めて公園に行く時に、既に出来上がっているソサエティにスムーズに参加するために、正しい服装や振る舞い方など、万全の体制で臨むことを現した言葉だった。
間違った行いをしようものなら、その後公園内で母子共に村八分になる可能性もあり、公園デビューは非常に重要な儀式である、という事が、まことしやかにささやかれていた。

あの頃、子供のいなかった私は、マスコミの作り出したネタにしか思えず
「こんな事あるわけないだろー、ガハハー。」
と笑いとばしていた。
もし多かれ少なかれ事実だったとしても、「足並みを揃える」事が大好きな日本の独特の現象だと思っていた。

しかし新聞の日曜版をなにげにめくっていたら、
‘A guide to surviving playground power politics’
というコラムが目に付いて、ぎょっとした。
イラストは、こちらをちらりと見ながらひそひそ話をする母親たちを、子供の手を引いて遠くから見つめる新米ママ。
その背中には誰かに張られた‘Kick me’の紙。

初めは
「日本の現象をパロったライターのネタか?」
とも思ったが、読んでみるとイギリスの学校の親社会でも多かれ少なかれ権力闘争があるらしい。

筆者は息子の入学式の日に早速失敗したという。
「息子には制服を着せていた。だけど自分が着ていなかった・・・。」
正しい母親の服装は、ストレッチジーンズにコンバースのハイカット、そしてストライプのオフショルダーのトップだったそうな。
(日本だったら「紺かベージュなどの基本色で清潔感ある服装を心がけましょう」てなところだろうが。)

またクラスの母親の中にも序列があり、一番エライのは
1. 子供のために仕事を辞めたPTAママたち。お迎えの前にテニスで汗を流す。
以下、
2. 時により学校行事の手伝いをするママたち。勢力を拡大してはいるが、重要度では1にかなわない。
3. パートタイムで働いているママたち。必要な時のみ、こそこそ出入りする。
4. このような権力の構図に全く無関心か、気がついてさえいないワーキングクラスママたち。(私はこれに属しそうだ)
と続くらしい。

服装がヘン(日本で言うヘンとはティストが違う、念のため)だったり学校行事にあまり協力的でなかったりすると、1のグループのママから強烈な嫌味を言われたり子供が村八分にされたりする危険性もあるという。

これがロンドンの、「高級住宅地化しつつあるが、まともな学校が少ない地域」(リアリティありすぎ)の公立小学校の話。
私立になるとこの傾向はもっと過熱するらしい。
知り合いは、送り迎えが高級車の4WDばかりなので彼女もそれまでのセダンをレクサスの4WDに買い換えたそうだ。
主な用途は子供の送り迎えとスーパーへの買い物だというが・・・って一昔前のどっかの国みたいだな。

ロンドンに来て以来、「あ~服装も気にしなくていいし、余計なしがらみもないし楽だわ~」
と思っていたが、結局は外国人として生活していたってことなんだろう。
やはりプロパーの社会に組み込まれれば、どこの国だろうがしがらみはあって当然か。

しかし苦手だなあ・・・どうにか「外国人枠」ってことでカンベンしてもらえないだろうか。
今から黒髪をまっすぐに伸ばし、前髪は眉の下でパツンと切って「謎の東洋人キャラ」でも演じる用意をするか。

投稿者 lib : 10:48 AM | コメント (0)

August 29, 2006

墓穴

mama.gif  ゲームボーイを見事にゲットした息子。
喜び勇んでゲームに興じるものの、ファーストステージをクリアしないと次のステージに進めないので、代わり映えしない同じサーキットをうろうろしているだけ。
その内飽きてきて、ゲームボーイを手に取る回数も減ってきた。
しめしめ。

しか~し。
「ちょっとだけ」と私自身が試してみたのが運のつきだった。
次々と難関を突破し、新たなレースをアンロックしてしまった。
知らない間に新しいゲームが出来るようになっていて、喜ぶ息子。
またしてもはまっていきそうな予感・・・。

日本にいた頃、友達の持っていたゲームにハマり、道を歩いてまで効果音の音楽が聞こえ、夢にまで出てきた経験を持つ私。
ゲーム狂の素質をもっていることを十分分かっていたので、それ以来、ゲームというゲームには一切手を出さなかったのが、こんなところでその禁断の果実をかじってしまうとは・・・。

自分が嫌いになりそうな母、晩夏の出来事。

投稿者 lib : 10:20 AM | コメント (2)

August 22, 2006

宿敵 ディズニー

mama.gif ディズニーが嫌いだ。
「子供が嫌い」「花が嫌い」というのと同じく、ちょっと人前では言いにくい。
ファンの方々にとっては「ディズニーが嫌い」なんて人間は鬼畜以下、人非人に見えるらしいので不注意な発言には要注意だ。

人に媚を売るねずみが大体いやだし。
人並みにディズニーランドに行った事はあるが、感動して涙ぐむ人もいるというエレクトリカルパレードを見ても、
「過ぎたるは猶及ばざるが如し」
という諺が思い浮かんだだけだった。

イギリスに来て、日本やアメリカよりはディズニーの植民地化が進んでいないような気がした。
自分がアンチ・ディズニーであることも意識しなくなった。

しかしこの夏、知らず知らずのうちに、ディズニーが我が家に侵略を始めたのだった。

それは‘Cars’という映画。
(ほら、あの赤い車に顔がついているやつですよ!)
子供の好きな絵が分かってるよな~。
初夏を迎えた頃から、いたるところでこの赤い車を見るようになった。
息子は一目ぼれしてしまったらしい。
同じく顔のついた機関車、トーマスは哀れにもおもちゃ箱の最下位に追いやられ、ライトニング・マックィーン(て名前です、赤い車)命になってしまった。

スーパーに行けばマックィーンのキャラクター商品が氾濫している。
シリアル、チョコレート、雑誌その他もろもろ・・・。
メーカーにキャラクターの使用権を売り、映画の宣伝も兼ねるという、一粒で二度おいしいディズニーお得意のキャラクター戦略だ。

お陰でいらない物をどれだけ買わされたか。
ハッピーミールのオマケもCarsなのを息子は鋭く嗅ぎ沸け、この夏はマクドナルドの前を通り過ぎるのが難しかった。
映画館の前を通ればポスターを見て、訳も分からずこれが欲しいと泣き叫ぶので、生まれて初めてシネマデビューもさせた。
半分も見ないうちに飽きて、後は映画館の中をスクーターで滑走しまくっていたが。(すいてて良かった)

というわけで私の人生と財布を苦しくさせたディズニーの逆襲。
しかしこれだけでは終わらなかった。

ゲームソフトを息子が見逃すはずが無い。
「もう少しお兄さんになってからね。」と適当になだめ透かしていたのだが、ある時義理の母が一緒にいて、孫可愛さに「これで買いなさい!」とその場で現金を渡してしまったのだ。
お金の問題よりも、ゲームを与える時期はなるべく遅くしたかったのだが、予想外の義母の行動で、結局ゲームボーイを買わざるを得ない展開になってしまった。

思ったよりもハマっていなくて一安心しているが、実はゲームをねだられる度に、息子としている遊びがあった。

息子「ブーブーのゲーム欲しい」
私 「Big boyになってからね」
息子(その辺の椅子に駆け上り)「見て、ぼくBig boy」
私 「あ、ほんとだ。そんなに大きいなら買ってあげようかなあ。でもどういう風に使うのかマミィに教えて」
(息子、しかたなく椅子から下りて私のそばに来る)
私 「あれ、やっぱり小さいじゃないの~!こんなLittle boyにはまだ早いよ~」
(息子、「しまった~!」という顔で笑い転げる)

ちゃんちゃん。

というお約束のやり取りなのだが、息子も私もこのゲームを楽しんでいた。
ゲームボーイが手に入ったので、この遊びもできなくなってしまった。

親子の触れ合いを奪ったディズニーめ・・・・やはり憎し。て逆恨みか。

投稿者 lib : 11:53 PM | コメント (7)

August 15, 2006

イギリスの森でファミリー・ホリディ 

mama.gif  夫方の親戚と、ファミリー・ホリディに行って来た。

4世代から成る、総勢27人の大所帯である。
最年長は義理の両親(80代)、最年少は夫の姪の子供2歳。
(ちなみに先週書いた、メイドさんもこの中に含まれる。
ホリディ先でも子守、料理、自転車に乗れない義理姉を後ろに乗せての移動など、相変わらず大活躍だった)
年寄りも子供もいると言う事で、行きやすい国内旅行となった。
行き先は、ケンブリッジの近くのElveden Forestという「森」。
ここで貸別荘を3件かりた。

森の中を歩くと、ウサギや雉をよく見かけた。
「脱兎のごとく」という表現があるが、ここのウサギは人に慣れているらしく、人間を見ても逃げ出しもしない。

イギリスに来て思ったが、「森」が人々の生活のとても近いところにある。
さすがにロンドンの中にはないが、ちょっと都市の外に出ると、フクロウの住む広大な森が広がっていたりする。
イギリス映画に森が多く登場するのも分かるような気がする。
「ピーターラビット」や「くまのプーさん」は、日本にいた頃はお伽話でしかなかったが、イギリスの森を見て、これらのお話がまさに日常生活の延長線から生まれたことを知った。

そんな事を考えながら歩いていると、
「あのウサギ可愛いなあ。」
「オーブンに入れて、お皿の上に乗った姿はもっと可愛いと思うよ。」
「あのキジ、今日のバーベキューにちょうどいいじゃない。誰かつかまえて。」

などと、親戚達のはしゃぐ声が聞こえた。

そういえば夫と付き合い始めの頃、日本人にも人気の観光地、コッツウォルズに行ったことがあった。
うららかな日差しの中、小川で泳ぐ鱒を見て
「あ、お魚がいる~。かわいい~。」
となごむ観光客達。

その隣で、
「この魚、獲ってもいいのかなあ?獲ってもいいのかなあ?しまった、フィッシュガン持って来れば良かった。」
と騒いでいたのはわがパートナー。

なごやかなイギリスのカントリーサイドが、一気にホラーとなる情景が目に浮かんだ。
夫の狩猟により血の海となる小川、絶叫する他の観光客たち・・・。
お願いだから止めてくれと懇願したあの頃。

しかしチャイニーズの嫁となり、早6年。
これくらいの発想の違いには動じない私である。
適当に黙殺することにする。

カルチャーギャップはいまだにあるが、大家族のいいところは、一人っ子の息子も沢山の人達に可愛がってもらえることだ。
夫方の従兄弟がイギリスに8人、香港に3人。
すでに子供のいる従兄弟もいるので、その子供からみれば3歳の息子はすでにおじさんだ・・・ややこしいが、とりあえず沢山の遊び相手がいて有難い。

おそらく息子に兄弟はつくってやれないので、従兄弟達とずっと仲良くしていてくれればよいなあ・・・と思いつつ、大チャイニーズ・ファミリーの中で頑張る母であった。

投稿者 lib : 09:00 PM | コメント (0)

August 08, 2006

メイド その2

mama.gif もちろんいとこだって家事、育児を放棄しているわけではなく良き妻、良き母だ。

日本では家事や育児を誰かに託す事に何となく罪悪感があると思うし、否定的な目で見られることも多いが、主婦が疲れ果てた顔でいるよりは笑顔でいた方が、家族だって幸せだろう。

100%に投げる訳ではないにしても、部分的な家事やベビー・シットのサービスを受ける事が一般的になればいいのに。
日本ではクリーナーやベビー・シッターは業者に託す事が多いと思うが、イギリスでは個人が広告を出していることが多い。
料金も安く済むし、学生や主婦、ニートの方たちのアルバイトとして需要も供給もあると思うが・・・。

しかしひとつだけ問題があった。

1歳の甥、メイドさんが抱かないと泣き止まない。
母親であるいとこが抱き上げると、メイドさんの方に戻りたがり、ますます火がついたように泣き叫ぶのであった。

これは母親としてちょっと悲しいかも・・・。

普段、髪を振り乱して家事と育児をしている私だが、少なくとも息子のFavorite personでいられることは、それなりに頑張っていることへのご褒美なのかな。

(しかしそれ以前に、『クリーナーが来るから掃除をしなきゃ』って性格の私。やはり人を使いこなせないかも・・・)

投稿者 lib : 10:33 AM | コメント (3)

August 01, 2006

メイド

mama.gif  香港から夫のいとこが遊びに来た。

彼女は、6歳と1歳の二児の母だ。
第一子が生まれた後も頑張って仕事を続けていたが、下の子の誕生を機に仕事を辞めた。

彼女の両親はイギリス在住なので、じじばばに頼る事ができないのは私と同じ。
専業主婦になったとはいえ、二人の子供の世話は大変だろうなあ・・・と思っていた。

ところが。

久しぶりに会った彼女はとっても優雅だった。
きちんとお化粧をし、ブランド物の服を着、育児やつれなどは無縁のようだった。
彼女がロンドンに来てから、子供の食事の世話をしたり、オムツを換えたりするのも見たことがない。

なぜか。

それは「メイド」も香港から一緒に連れてきたから。

香港にはメイドビザが認められているので、フィリピンやインドネシアなどの近隣国から多数の女性が出稼ぎに来ている。
エージェントで家事、料理、語学(広東語)などのトレーニングを受けた上で「即戦力」となり各家庭に派遣されるのだ。
香港の雑誌をめくると、メイド専門の人材派遣会社の広告をよく見かける。
(日本のメイドカフェの様な格好はしていません、念のため。)

彼女達の仕事は「家庭内で発生する家事・育児全版」。
「私の仕事は炊事、洗濯ですから、子供の世話は範疇外です」
「契約書によると9時から5時までが労働時間ですから7時に子供が泣いても私の関与するところではありません」
なんてうるさい事も言わない。
24時間出動態勢の、スーパーヘルパーなのだ。

料金も日本やイギリスの人件費に比べると格段に安いので、香港では普通のサラリーマン家庭でも住み込みのメイドを雇うのは珍しい事ではない。

いとこのメイドはインドネシア出身。この娘さんがまあ、よく働く働く。
食事の用意、(親戚が集まった時も18人分のインドネシア・カレーを涼しい顔で用意した)洗い物、客が来ればお茶出し、その間に子供が泣けばあやしたりと、座るヒマもないのに笑顔を絶やさない。

優秀なメイドさんでもあるんだろうが、何でも自分でやるべきと思い込んでいる貧乏性の私には「誰かが手伝ってくれる事はこんなにも楽なものか・・・」と目から鱗が落ちる思いだった。

つづく

投稿者 lib : 10:09 AM | コメント (2)

July 25, 2006

ロンドンの治安

mama.gif  うちに泥棒が来た。

盗まれたのは、玄関の前に置いてあった寄せ植えの鉢2鉢だけだが・・・。
手塩にかけて育てた、という程でもないが、たまに水をやって、枯れた花はつまんで捨てて・・・くらいの世話はしていてそれなりに愛着はあった。
夏が来て、ちょうど花盛りだった。
ドアを開けて外に出ると、無意識にこの鉢植えの花を見る習慣になっていたので朝、あるべき筈の場所から跡形もなく消え去っていたときは、「がび~ん」と目玉が飛び出そうになった。

「隣の豪邸を素通りして、みすぼらしいうちに来る間抜けな泥棒もいないだろう」なんてタカを括っていたのがいけなかったか。
少なくとも鉢植えだけはフィオナ邸に勝った事を喜ぶべきか。
とはいえ家の中に金目の物がないことは見破られたか・・・・

などと複雑な思いを抱えつつも、家の中にまで入ってこなかったのだから良しとしなければいけないだろう。
それにしても10Kg以上はありそうな大きな鉢植えを2鉢も、よく持っていったものだ。
きっと事前に目をつけていて、夜中に車で収集にきたんだろう。

それにしても、いい気持ちはしない。
外の鉢植えでもこうだから、家の中まで空き巣に入られた人は本当に不愉快だろう。

この事件で、ロンドンに来たばかりの頃なんで?と不思議に思ったが、今は理由がよーく分かることをいくつか思い出した。
      
・街中に自動販売機が無い → ぶっ壊されて、中の現金を盗まれるから。

・地下鉄の中に網棚が無い → 荷物を持っていかれるから。

・カーオーディオやカーナビが取り外し可能 → ウインドウをぶち破られて持っていかれるから。

・携帯電話を購入するときに保険を掛けろと言われる → スリのFavorite itemだから

・ガソリンスタンド内のお店、夜間はシャッターを閉めパチンコ屋の景品交換所のような小さな窓から取引する。 → 襲撃されて商品だろうが現金だろうが根こそぎ持っていかれるから。

ロンドンに来た頃はこれらのことがとても不思議に思えた。

今は逆に、日本に帰るたびに、家族がシートに荷物を置いたまま車を離れるのを見て驚愕したりする。

日本も最近は治安が前ほど良くなくなったとはいえ、電車の網棚に荷物を置いたまま爆睡できたり、24時間営業のコンビニにも(滅多に)強盗が入らない、っていうのは素晴らしい社会だな、と思う今日この頃。

投稿者 lib : 08:47 AM | コメント (5)

July 17, 2006

フィオナ 番外編

mama.gif  ここで勝手に話のネタにしていたら、虫が知らせたのか隣のフィオナから夕食に招待された。

あら嬉しい・・・と思ったのもつかの間、よくよく話を聞くとチャイニーズ・ヌードルが大好物のフィオナの娘たち(16歳と13歳)に、香港出身の夫が作り方を実演して見せる趣向だという。

どっちがどっちに招待されるのか微妙なところ・・・。
それよりも夫、いつの間にそんな話をまとめていたんだ。

フィオナチームは飲み物とデザートを用意するという。
私だけ何もしないのもナンなので海苔巻きを作ることにした。
(ただし実演は自信がないので家で作って持参した)
夫がヌードルを作っている間にスターターとしてつまんでもらえばよいだろう。

鉄火巻とかっぱ巻を見せると、フィオナの娘達にも
「ク~~~~ル!!!」
とお褒めの言葉をいただいた。
(日本のお茶碗や食器などもこちらの若い子に見せると、『クール』と言われることが多い。クールだったのね。)

「チャイニーズ・ヌードルの作り方を教えてもらいたい」と夫に頼んだ筈の娘達だったが、食べる事に専念し料理にはあまり興味のない様子。
(余談だが、うちのダンナは料理が上手い。
特に中華鍋を持たせると、あの周富徳先生(古いか?)が乗り移ったかのような『炎の料理人』と化す)
夫の「チキン炒麺」と「シーフード上海麺」も美味しくいただき、デザートはフィオナ特製「ストロベリーアイスクリーム」。
さすがフィオナ、苺を惜しげなく使い(1Kgも使ったそう)ひじょ~に苺濃度の高いアイスクリームだった。
ああ美味しかった。

食事の間、息子はフィオナの末っ子(5歳)とずっと遊んでいたので全く手がかからなかった。
なにしろ家の中もガーデンも広いので、飽きない飽きない。
息子の存在をこれほど気にせずに食事ができたのって、彼が生まれてから初めてかもしれない。

インテリア雑誌に出てくるような広くて美しいキッチン。
娘達も間近で見ると本当に可愛い。
そして天使のようなフィオナの息子。

どこを見ても「美しい」フィオナ家。
ワインのせいもあって、私はすっかり気分がよくなった。

帰り際に
「本当に美味しいスシだったわ。今度うちでパーティーをするときに作ってもらえるかしら?」
とフィオナに聞かれた私は、気がつくと
気がつくと
「Of course!!」
と答えていた。

はっ。

私も知らず知らずのうちに、フィオナ応援団の中に組み込まれている?

投稿者 lib : 11:37 PM | コメント (0)

July 11, 2006

つわものどもが夢のあと

mama.gif   やれやれ、やっとワールドカップが終わった。
私も4年に1度しかサッカーを見ない人間だが、今回、ひとつ分かった事があった。

サッカーって、格闘技だったんですね。

ボールを蹴っている人(この表現もトホホだが)に守備が、絡みつく絡みつく。
二人で共倒れして、絡みつかれた方がもう一人を蹴ったり殴ったりして退場になる、というのがパターンらしい。
このお約束展開、プロレスのようでもある。
球技と格闘技が同時に見られるのだから、人気のあるのも当然か。

退場になるのは主に、そのチームで一番有名な人らしい。
象男ルーニーが相手を両手で突き飛ばした時の行動と表情なんかもう、プレイグループでおもちゃを取られて癇癪をおこした3歳児と全く同じ。
その後の、レッドカードを唖然と見上げる表情も、なんだか気持ちが顔に素直に現れすぎて可哀相なくらいだ。
(可哀相な場面だったのだろうが)
彼女のコリーンはモデルらしいが、ずどーんとしていてどうも垢抜けない。
モデル契約しているのが庶民派スーパー、アスダというのもうなずける。
チームの「トップレディ」争いでヴィクトリア・ベッカムと不仲らしいが、ゴシップ誌の期待を裏切らないエピソードだ。
この「象さんカップル」、第二のベッカム夫妻となるのか。
ならないだろうなあ。

フランスのジダンの頭突きにも驚いた。
あんな鮮やかな頭突き、なかなか見られるものじゃない。
ジダンもとても有名な人らしいが、もしケバブ屋でシシ・ケバブを焼いていたとしてもきっと私は気付かないと思う。

ファンの方が聞いたら神をも恐れぬことを言っているでしょうか、私。
サッカー馬鹿(別の意味で)の言う事だから見逃してください。
道で会っても頭突きはしないでね。

投稿者 lib : 10:32 AM | コメント (0)

July 04, 2006

ロンドンママ達の人生いろいろ - フィオナの巻 2

mama.gif 下は3歳から上は60歳まで、フィオナのファン層は幅広い。

最年長の60歳は、お向かいのロイだ。

先日、家の前でロイが私を呼び止めた。
何かと思えば、
「駐車バウチャー(客などが車を停める時、これを提示しておかないと駐車違反になってしまう)ない?
フィオナの家にワークマンが入っているんだけど、バウチャー切らしちゃったらしいんだ。」

どうやら自分もバウチャーを持っていなかった彼は、フィオナのために汗だくになり隣人に聞きまくっていたらしい。

たまたまうちにはあったので、
「あるよ」
と言ってバウチャーを取りに行き再び外に出ると、ロイの後ろから悠然と歩いてくるフィオナがいた。
大輪の花の様な笑顔で感謝された。

以前はフィオナとすれ違っても無視されることの多かった私だが、この一件以来、
「ハ~イ♪」
と明るく声をかけてもらえるようになった。
嗚呼、なんて分かりやすい性格。素敵。

(ちなみに昔、夫に『フィオナに挨拶してもらえない』とこぼすと、『彼女は目が悪いんだよ』と擁護していた。
ミステリアスな美人が近眼なのは世界共通か・・・とその時は納得したのだが。)

また、ある時は2件先の大学生の男の子がいそいそとフィオナ邸の生垣を剪定していた。

それを見た夫が
「フィオナはいいなあ、みんなに助けてもらえて。うちの庭の芝も誰かに刈ってもらいたいよ。」
と羨ましそうにつぶやくので、
「あなただってフィオナに何か頼まれたら、喜んで手伝うでしょう?」
と言うと、それだけで
「でへへへへ・・・」
と鼻の下を延ばしていた。

そして最年少サポーターは、3歳の我が息子。
先日、何かの折にフィオナ邸にお邪魔してから、
「ホナナ、ホナナ~」(フィオナと言っているつもり)
と熱病に冒された様に昼も夜もなく叫び続けている。

チャイナタウンで買って来たとっておきのライチ(これがジューシーでプリプリしていてとっても美味しい)をお裾分けするといって聞かないので持っていったら、それからと言うものの、ライチを買うごとにフィオナにあげる、あげないで大騒ぎになる。
何か理由をつけて彼女の家にお邪魔したいらしい。
仕方ないのでライチの購入はご法度となった。
(私の大好物なのに~。しかし2日おきにライチを届けに来る隣人なんて怪しすぎる。)

フィオナにも5歳の男の子がいるので、彼目当てだと信じたいのだが。
それにしても息子よ、「隣のお姉さん」に貢ぐには早すぎる。

美人で超スタイルが良く、その上「未亡人」という甘美な響きが加われば男心を惑わすのも当然といえるかもしれない。
(別に惑わされているわけではなく、単に皆さん親切なだけかもしれないが。)

フィオナの未来は明るい。

投稿者 lib : 10:20 AM | コメント (0)

June 27, 2006

ロンドンママ達の人生いろいろ フィオナの巻 1

mama.gif    以前、「生活保護受給系」シングルマザーの話を紹介した。(12月5日の「マンディの巻」)
しかしさすがに人材(?)の幅の厚いロンドン、人も羨む生活をしているシングルマザーもいる。

うちの隣の未亡人、フィオナがそうだ。
7ベッドルームの豪邸に、3人の美しい子供たちと住んでいる。
大きな庭は定期的にガーデナーが手入れし、生垣は常に美しく刈り込まれている。
誰が見ても「金持ち」と分かるフィオナ邸、これまでに何度も空き巣の被害にあったそうだ。
(お陰でうちは泥棒に入られる心配がない。隣があるのにうちに来る間抜けな泥棒もいないだろう。
金持ちの隣人を持つ事は、最大の防犯対策なり)

ブロンド、美人でスタイルも良いフィオナ、生活感など微塵も感じさせない。
着ている服はカジュアルだが、色使いや細かいデザインが気がきいていて、いかにも高そうだ。
車はほぼ毎年買い換えている。今の愛車はミニ、その前はレンジ・ローバーだった。
車選びからも垣間見える、このミーハーさも素敵だ。

そして、これが一番の謎なのだが、彼女がスーパーの袋を抱えて家に入るところを見た事がない
かと言って、オンライン・ショッピングの車が彼女の家の前に停まる訳でもない。
美人は食べなくても生きられるのか?

仕事は「TVコマーシャル・プロデューサー」だそうだ。
しかし毎日仕事に出ているわけでもなさそうだから、フリーランスなのだろうか。
それにしては生活が優雅だ。
おそらく亡夫が遺産を沢山残してくれたのか・・・下世話で申し訳ないが。

このように嫌でも目を引く彼女だから、当然ファンが多い。
しかも「未亡人」とくれば、近所の男達は、何か彼女の手助けができることはないかと日々、目を光らせている。

つづく

投稿者 lib : 09:54 AM | コメント (1)

June 20, 2006

イギリスのサービス業 カウンシル編 2

mama.gif カウンシルに枝を切る許可を請う電話をすると、なんと剪定の手配もしてくれ費用も持ってくれるという。

自腹を切らないといけないと思っていたので、これは嬉しい誤算だった。

もちろんお願いし、後はカウンシルからの連絡を待った。

しかし。

やはりお役所である。待てど暮せど連絡は来ず2ヶ月が過ぎた。

徒歩10秒の隣から、再び書留が届いた。

内容は言わずもがなである。
プレッシャーをかけられた夫がカウンシルに連絡した。
いつも通りの「順番待ちだからいつになるかわからない」という対応だったが
かなり強い口調で不平を訴えると、電話の相手が上司に代わると言う。

上司に事のあらましを説明すると、
「連絡してくれてありがとう。すぐに対処します」
との事。
お役所でも、上の方の人はやはり話が分かるのか?

具体的な日にちは提示されなかったものの、この上司は信頼できそうな印象だったので一安心し、
私達は買い物のため家を空けた。

2時間ほどして戻ると、家の塀の前で、なにやら例の大木を双眼鏡で見上げている男達がいる。
聞くとカウンシルから派遣されたという。
なんだ随分早いな、やっぱり上に話をすると違うな、などと夫と喜びつつ、
装備も整っているようだしすぐに仕事を始めてくれると思いきや。

男「今、視察をしていたんだが、木の上に鳥がいる」

私「木だから鳥くらいいるよね、それが?」

男「その鳥が巣を作っている。」

私「だから?」

男「条例により鳥が巣作りをしている時は木を切ることができない。だから帰る。」

なにいい~~~!

せっかくここに、作業員と装備が揃っているのに帰るだと?
ここで彼らを帰らせたら、また呼び戻すのに何ヶ月かかるか分からない。
必死で引き止めたが、何を言っても「条例だから」「条例だから」と呪文の様に繰り返し、彼らは去ってしまった。

事前連絡なしの突然の来訪は、うちが留守であることを願っての奇襲作戦だったのだろう。
なんくせ理由をつけて、仕事しないで帰ろうと初めから計画していたに違いない。

夫がカウンシルに電話し再び強く苦情を述べると、またもや
「なるべく早く対処します」
との返事。

具体的な日程は言わないので、また待つしかない。

Xデーは、その数週間後に来た。

ある日の早朝、爆音で目が覚めた。
何事かとカーテンを開けると、目の前に、木の上で枝を切っている男がいた。

またしても予告なしの奇襲作戦。
運悪くその日はゲストが止まっていたのだが、爆音で起こされた彼女も目を丸くしていた。

作業を終えた男たちはさっさと引き上げていった。

まあやる事はやったのだからいいとするが、全く彼らを働かせるのは大変だ。

次回は、木で食事中のミミズ、昼寝をするリス、出産中のアリなどの有無を確認し、避難勧告を出した後、万全の体制で奴らと渡り合う所存である。

投稿者 lib : 10:58 AM | コメント (0)

June 13, 2006

イギリスのサービス業 カウンシル編 1

mama.gif   我が家のフロント・ガーデンに大木がある。

ロンドンの都心に近い場所だが、リビング・ルームの大きな窓から見ると、「小さな自然」のシアターの様である。
リスや鳥が遊びに来たり、夏は緑の葉が生い茂り気持ちをなごませてくれる。
外からの目隠しにもなるし気に入っている。

だが長年ほったらかしにしているので、枝が張り出してきている。
強風が吹くと、ゆっさゆっさと揺れて今にも窓を突き破りそうだ。

剪定をしなければなるまい。

だが緊急でないことは後延ばしにする性格で、「そのうちに」「そのうちに」と思いつつ、数年が過ぎてしまった。
(同じようにそのうちに、と思いながら手をつけていないことが家の中のところどころにある。見ないふりをしているが)

ある日、一通の書留が届いた。

隣家からの手紙だった。徒歩10秒の隣から書留郵便。
何事かと思い読むと、例の木に対する苦情だった。

要するに、我が家の敷地内にある木が、隣家のプロパティにダメージを与えかねない。
即刻しかるべき処置をとるように、そしてこの手紙はコピーをとって保険会社にも転送するように、ということが、えらくフォーマルな文面でしたためてあった。

普段、普通に挨拶を交わしている隣人からだったので驚いたが、まあどうせ、やらなければとは思っていたのでいい機会だと思い、よっこらしょと思い腰を上げることにした。
剪定してくれる業者を探さなければ。
いったい幾らかかるんだろう。

しかし木を切る前に一つ、やらなくてはならない事がある。

我が家のある地域は、コンサベーションエリア(保護管理地区とでもいうのだろうか?)に指定されていて、自分の敷地内の木であってもカウンシル(役所)の許可なしでは、枝一本切ることができない。
ちなみに家を改装するのも許可がいるそうだ。

この手続きが面倒くさいのも剪定を一日のばしにする原因のひとつだったのだが、仕方がないのでカウンシルに許可を請う電話をした。

つづく

投稿者 lib : 10:01 AM | コメント (0)

June 05, 2006

オリ専な人々 その3

mama.gif  怖い話もある。

BBCプレゼンターのジル・ダンドーが数年前に自宅前で射殺された事件があったが、この犯人もオリ専だったらしい。
「僕はフレディ・マーキュリーの従兄弟なんだ。」と言って自宅に連れ込むのが常套手段だったそうだ。
彼の前妻は日本人で、この事件があった頃に新聞のインタビューを受けていた。

またもや友達の友達の話だが、(センターポイントオヤジの件とは別人)この犯人が事件を起こす前、彼に遭遇したことがあるそうだ。
道で声を掛けられ「フレディ・マーキュリーの私物が沢山あるから見に来ない?」と誘われたという。
幸い彼女は、フレディに対して、
「全身タイツのゲイオヤジ」
程度の認識しかなかったので、「そんなもの、見たくないわ、ボケー!」と言って撃退したそうだ。

彼が逮捕されたとき、TVで彼の写真を見て
「あっ。あの時の!」
と驚いたという。

実は私は中学生時代、クイーンファンだった。
声を掛けられていたのがもし私だったら、へらへら付いていってしまったかも。
危ない、危ない。
(一応断っておくと、クイーンの音楽性の高さが好きだったのであって、レオタードが好きだったわけではない。ちなみにルックス的に好みだったのはブライアン・メイです。どうでもいいんだが。)

話はかわるが、そういう訳で、ブリティッシュ・ロック好きだった私にとって、今回のポール・マッカートニー翁の離婚は痛ましい限りである。
メディアも慰謝料の金額ばかり詮索して、なんだかなあ。
おまけにヘザーはTVでインタビューに答えることを考えているそうではないか。
翁もとんでもない女に捕まったものだ。

ポールよ、ブロンド女ばかり追いかけるからいけないのだ。

次は黒髪にしてみたらどうでしょう。オリエンタルはいいよーっ。
て、勧めてどうする。

投稿者 lib : 09:44 AM | コメント (0)

May 29, 2006

オリ専な人々 その2

mama.gif オックスフォード通りで声をかけてきた、その中年のイギリス人オヤジは割と恰幅が良く、服装もスマートカジュアル(きちんとした仕事を持っている風だがスーツではない、いわゆる業界系オヤジの典型的な格好)で、それまでに出会ったオリ専君達とはちょっと毛色が違っていた。

型どおりの会話を2,3言かわした後、

「僕は映画関係の仕事をしているんだけど、あそこのセンターポイントに住んでいるから、いつでも遊びに来て。」

と名刺を渡された。

知らない方の為に説明すると、センターポイントとはオックスフォード通りにそびえ立つ、ロンドンでは数えるほどしかない高層タワーの事である。ある程度リッチでないと住めないだろう。

名刺には、確かにセンターポイントの住所が印刷されてあったが、まあ名刺なんざ幾らでも好きなように作れるし、もちろんその後、彼に会う事はなかった。

その2年後。

ロンドンのある日系企業に勤めていた私は、お昼休みに日本の雑誌をめくっていた。
すると、ロンドンに留学していた女性の体験談が目に入った。いわく、

“オックスフォードストリートで、映画関係者と名乗る男に声をかけられました。センターポイントに住んでいるそうだけど、日本人女性と見ると声を掛けまくっているみたい。皆さんロンドンに行ったら注意しましょう。”

「おおっ。この男、知ってる!」

と声を上げ同僚達に記事を見せると、

「あっ、私も声かけられたことある!」

と一人の同僚が言うではないか。
同席していた、4人中2人が彼を知っていたのだ。
この確率からすると、ロンドンの日本人女性の50%に声をかけていることになる。(ちょっと強引だが)
オヤジ、活動活発すぎるぞ。

それから更に3年後。

再びオヤジの噂を聞いた。
ある友達の友達が、実際に彼の部屋に潜入したという。
確かにセンターポイントの豪華な一室に住んでおり、この彼女、誘われてパリにまで一緒に旅行したそうだ。(もちろん全額オヤジ持ち)

「彼はただ話し相手が欲しいだけだから、パリに一緒に行っても何もされなかったし、いろいろ買ってもらえてラッキーだったよ。」

と彼女は語ったそうだが、皆さんはマネしないようにしましょう。


投稿者 lib : 09:14 AM | コメント (1)

May 22, 2006

オリ専な人々 その1

mama.gif   一部の人々の間では、いまだに

「日本人女性は、従順で、控えめで、可愛くて、夫を立ててくれて・・・・・」

という神話が存在するらしい。

白人男性が仕事などで日本に滞在した際のモテモテ体験(これは容易に想像できる)を自国の友達に話す事で、この神話(または妄想)はいっそう真実味を帯びる。

夫は結婚披露宴で、

「僕のジャパニーズワイフは、例え僕が朝の3時に帰宅しても、何も聞かずに起きて僕を待っていてくれるんだ。」

とスピーチした。(もちろん冗談)

驚いたのは、ゲストの大半がこれを信じた事だった。
夫は男性ゲストからは羨望のまなざしを、女性ゲストからはお叱りの集中砲火を受けていた。

この様な、根強い日本人女性信仰(または勘違い)がベースとなり、オリエンタル女性専門、略してオリ専と呼ばれるイギリス人男性が存在する。

オリ専の彼らは、街で見かける渡英直後の日本人女性に声をかけまくる。
真面目な日本人女性は、怪しいな、とは思いつつ「英語の練習になるし・・・」と、つい話に付き合ってしまう。
無視されたり、渡した電話番号に一生連絡が来なくても、オリ専たちはめげない。
なにしろ、英語学校の生徒の半分は日本人だった、という話も少なくないロンドン。
ターゲットには事欠かないのだ。
(ワーキングホリディ制度の導入は、オリ専達の活動をますます活発化させたことだろう)

私もイギリスに来た初めのころは、道や公園でこのオリ専男性からよく声をかけられた。
(今は一人で歩いていても、とんと声がかからない。
やはり彼らは、渡英直後のウブな娘を嗅ぎ分ける鋭い嗅覚を持っているのだろうか)

大抵はヒマをもてあましている退職後のおじいさんとか、いかにもオタクっぽい(イギリス人にも存在する)若者が多いのだが、ごく稀に、社会的地位の高い(自己申告)人もいる。

その男に声を掛けられたのは、オックスフォードストリートを一人で歩いている時だった。

続く

投稿者 lib : 09:30 AM | コメント (1)

May 15, 2006

3歳児の見たニッポン

mama.gif    前回の帰国は、息子にとっては4回目の訪日だった。

3歳半ですでに4回目だ。
彼も慣れたもので、飛行機に搭乗するとすぐにヘッドフォンの袋を破り、耳に掛けると、「チキンリトル」の鑑賞に熱中した。

過去3回のフライトでの悲惨な体験を思うと、目覚しい向上ぶりだ。

0歳時-初めての乳幼児連れのフライトで、親の方が極度に緊張した。、コットの安全性を確かめたり、万一の緊急事態に備えての避難方法のイメトレに忙しく、まんじりともせず12時間を過ごした。

1歳時-延々と機内を歩き続ける息子に付き合い、乗客の大半と顔見知りになった。お陰でエコノミーシンドロームの心配だけは無かった。

2歳時-離陸直後に私の膝の上で嘔吐された。夫のシャツと、ビジネスクラス客用のスゥエットパンツを借り、非常に怪しげな格好で12時間乗り切った。日本の入国審査で止められなかったのは幸運だった。

息子の訪日の目的はただ一つ、東京ディズニーランドに行く事だった。

飛行機を降りたらそこはディズニーランドだと思っていた彼は、そうではない事を知りショックを受けた。
私の実家に着いてもすぐに行けるものではない。

そのうち、ホームシックが始まった。

「ロンドンおうち、行く」 (=ロンドンのおうちに帰りたい)

「まだディズニーランドに行ってないじゃない!もう少し日本にいようよ!」

となだめていると、そのうち

「あいうえお、ノー。ABC、イエス。」 (=日本語は嫌だ。英語がいい。)

と言い始めた。英語だってそんなに上手なわけではないのだが。
彼なりに言語の違いも含めた環境の変化にストレスを感じているようだった。

TVコマーシャルなどで外国人が英語を話していたりすると、「あ、ABC」と鋭く聞き分けもした。

そんなある日、ついにディズニーランドに行く日がやってきた。

トムソーヤ島で遊んでいると、急に

「チャイナタウン、ヌードル。」 (=チャイナタウンでヌードル食べたい)

と言い始めた。
なんで急にそんな事を言うのかと不思議に思ったが、近くに中国人らしき女性が二人いて、広東語で話をしていたのが聞こえた。

広東語が聞こえる → 近くにチャイナタウンがある筈と推理 → ヌードル食べたい、との三段論法らしい。君はシャーロック・ホームズか。

日本にいれば、がらっと日本語に切り替わって話をするようになるかと思ったが、そんなことはなく彼は相変わらず英語と日本語まじりで話していた。ただ、

「ジュースのみたい」
「これほしい」
「チョコたべたい」

など、なぜかwant系の日本語はうまくなった。これじゃ、分からないふりできないじゃないか。

逆に、滞在中、一緒に遊んでいた従兄弟(5歳)は英語に親しんだようだ。

息子がお菓子をねだる時に、
「ジャストワン、ジャストワン」(一個だけ)

と言い、私が
「(一個だけなら)まあ、いいか。」

と答えるのがお約束になっていたらしい。
それを聞いていた従兄弟達も、

「ジャストワン、マアイイカ」

とお菓子をねだるようになったとのことだった。
「マアイイカ」まで英語だと思っているところがちょっと問題ではあるが。

息子はロンドンに戻ってからは、

「ジャパンいく、ジャパンいく」

と日本を恋しがっている。
こうなることは分かっていたよ。

投稿者 lib : 10:18 AM | コメント (0)

May 08, 2006

プチエイリアンから見たニッポン

mama.gif 日本に一時帰国した。

平均して年に一度は帰っているのだが、その度に、ちょっとした「プチエイリアン」感覚に陥り面白い。

今回の帰国で気がついたことベスト5は、

1.駅や公園などの公共の場の案内板に、韓国語や中国語の表記が増えた。

「出口」「トイレ」などの簡単なものだが、一年半前に帰国した時には無かった。
それほど韓国人が急増したようにも見えなかったのだが。
単に韓流ブームに乗ってみたのか。
それとも韓国語を習う日本人乗客へのサービスか。

2.公共の場に、ゴミ箱が設置されていない。

これは、かなり前からだった様な気もするが、帰国する度に探し回ってしまう。
危険物を回避するためと、「ゴミは自分で持ち帰りましょう」というコンセプトらしい。
驚くのは皆、素直に家庭に持ち帰っているらしく、どこも綺麗なことだ。
ロンドンでは道路や公園、バスの中、そこら中にゴミ箱が設置されているのにも関わらず、紙くずや犬の糞が散乱しているが。
嗚呼、美しき日本人のマナー。

3.子供連れには割と冷たい? 

ゴミのマナーには感心したが、考えさせられる事もあった。
子供と一緒に電車に乗ると、席が一つも空いていなかった。
ロンドンでは、子連れで公共の乗り物に乗れば、即座にどこかの席が空くので席の有無の心配は全くしていなかった。
しばらく立っていたが、席を譲ってくれそうな人はいなかった。
それで気付いた。
日本人は疲れているのだった。
お年寄りや子連れに席を譲らない事を単純に批判する気持ちにはなれなかった。
なぜなら私だって、東京で働いている頃には弱い人たちを視野に入れる余裕がなかったように思うから。
無意識のうちに、「席は譲ってもらえるもの」と思っていた私が甘かったのか。

4.新モードの不在

過去8年間の帰国の度に、ロンドンよりも多い金髪率や、ヤマンバ女子高生の出現で、プチエイリアンを驚愕させてくれたニッポンだったが、今回はこれと言って目立ったモードが見受けられなかった。
全体的にファッションは、更に無難でおとなし目になり、店で買いたいと思う服は見つからなかった。
やはり長引きすぎた不況が暗い影を落としているのか。
次回の帰国には、また何か突拍子もない新モードで、一時帰国者の目を楽しませて欲しいものである。

5.何気に攻撃的

広告や店内放送の騒がしさは相変わらずで、攻撃的な感じさえ受けた。
「癒し」は相変わらずのキーワードだが、
「リラックスしろ」「一息つけ、さあさあ」と攻撃的に言われてもなあ。

投稿者 lib : 09:17 AM | コメント (0)

April 30, 2006

日本語教育

mama.gif  息子がナーサリー(幼稚園)に通い始め、一学期を終えた。

この3ヶ月の間に、いろいろと新しい言葉を覚えてきた。
それ自体は喜ばしいことなのだが、どうも言葉の内容が気になる。

別に汚い言葉を使うわけではないが、
「覚えてくる言葉」 = 「自分が言われた言葉」 
だと思うので、息子の幼稚園での行動パターンが目に見えるようだ。

ちなみに彼は、唯我独尊の「オレ様」タイプである。

覚えてきた言葉の代表的なものとしては、

“It’s my turn!” 
(あーあ、おもちゃを独り占めして、他の子に貸してあげないのかな。)

“Stop pushing !” 
(おもちゃの取り合いになって他の子を突き飛ばしちゃったか。息子よ、頼むから暴力はやめてくれ。)

“Naughty boy!”
(突き飛ばされた子から返された。ごもっともです。)

“Go away!”
(そこまで言われた?お友達を失わないように、みんなと仲良く遊ぼうね。)

以前は日本語の方が分かるような気がしたが、ナーサリーに通いだしてからは英語の方が得意になったようでもある。
私が日本語で何か言っても、英語で返すことが多い。

「ナーサリーに通うようになって、せっかく覚えた日本語を使わなくなった」
と心配するお母さんも多いようだが、息子の場合はもともと言葉が遅かったので、何語でもいいから少しでも語彙が増えてくれるのは喜ばしい。

あと数年すれば、どうせゲームボーイでもねだられるだろうから(彼は3歳にしてコンピューターゲームにハマっている)その時には日本製のゲームボーイと日本語の攻略本を買い与えれば、必死で読むだろう。
それを日本語教育とすればいいかな、と思っている。

何事も、好きこそ物の上手なれ、ですから。

投稿者 lib : 09:37 PM | コメント (0)

April 24, 2006

電話会社の仁義なき戦い 4

mama.gif  電話を切った後、少し考えたが、やはり納得できない。

どうして再接続に一週間もかかるのだ。
そんなもの、外したプラグをはめなおせば良いことではないの?と単純に思う。

プッシュすれば、もっと早くなるかもしれない。
再度電話をかけてみた。

先程と違うオペレーターが出たので事情を説明すると、

「ソーリー、マダム。私どものミステイクで、接続されていない状況になっています。」と言う。

さっきは「アップグレードのため」だったが、今度は「ミステイク」になった。
珍しくイギリス人が自らの非を認め、謝っている。
非常に有利な展開だ。

「さっき一週間かかるって言われたけど、もう少し早くなるでしょう?そちらのミスなんだから努力してよね。」

「ソーリー、マダム。○月×日です。」

「インターネットが使えない状況がどんなに不便か想像できるでしょう?メールも見られないし、仕事のオーダーが来ていても分からないじゃない。被害金額によってはあなたの会社を訴えることも考慮します。」

ありもしないビジネスをでっち上げ、同情作戦、脅し作戦などを駆使し説得を試みたが、再接続の期日は変わらない。

「どうしてもダメだっていうの。そ、それならどうして一週間もかかるのか、説明してもらおうじゃないの。」

「まず、社内の手続きに2日かかります。それからBTに連絡して、BT内の手続きに3日、そして・・・・」

ん?今、BTって言った?
嫌な予感がした。

電話を切り、血眼でブロードバンドの「使用条件」を捜し、必死で読んだ。

すると小~さな字で
「電話回線は、BTラインに限ります」
と書いてあるではないか。

すっかり忘れていたが、電話回線を新しい電話会社に変えたのだった。
インターネットが繋がらなくなったのは、それが原因だったのだ。

まずい。
馬鹿女は私ってか。

先程のオペレーターに散々文句を言ってしまった手前、今さら「間違いでした」とも言えない。
加入希望者のふりをして再び電話し確認すると、やはりBTラインが必須条件であるという。

新電話会社にもインターネットサービスはあるが、今のメールアドレスを変えたくない。
急遽、BTに連絡し電話回線を戻す旨を伝えた。
棚ぼたの顧客奪回に、喜びを隠し切れないBTオペレーターの声。

しかし悲劇は続く。
BT回線に戻るのは、○月×日より更に1週間後だと告げられた。

さすがに誰にも文句をいう気にもならず、2週間インターネット無しの生活を送る覚悟を決めた。

が、よくよく考えればダイヤルアップで繋げるのだった。
初心に戻るとはこのことだ。(何の事だ。)
時間は気になるが、何とかネット隠遁生活は送らなくてすむことができた。

後日、BTから送られてきた請求書を見ると、電話回線だけのつもりだったのに、通話契約まで移行されていた。
もうどっちでも、いいや。

投稿者 lib : 09:02 AM | コメント (0)

April 17, 2006

電話会社の仁義なき戦い 3

mama.gif  突如として接続できなくなったインターネット。
原因の分からないままプロバイダーに電話をかけ、私のアカウントを調べてもらった。

「う、・・・・。」
オペレーターの戸惑った表情が見えるような気がした。

「マダム、マダムのアカウントに接続されていません。」

「接続されていない?どうして?料金はきちんと払っているのに?」

「この度、会員の皆様のブロードバンドをアップデートしています。その手続きのためのアクシデントと思われます。このアップデートは無料で、しかも通信速度が飛躍的にアップし・・・・ぺらぺらぺら」

後半はマニュアル通りの説明と化した。
そんな能書きは聞きたくない。
私が要求するのは、インターネットを再び接続してもらうこと。それだけである。

この時点では、「間違いは誰にでもあるし」とまだ余裕の私であった。

「アップグレードはどうでもいいんだけど。まあとにかく、すぐに再開してくれるんでしょうね?」

「もちろんです、マダム。すぐに手続きを行います。○月×日から使用できるようになります。」

「へ?」

○月×日といえば一週間後ではないか。

聞き違いかと思い確認した。

「○月×日って言った?」

「その通りです、マダム。」

私は狼狽した。
インターネット中毒の私に、一週間もどうやってインターネット無しで過ごせというのだ。
人はあまりに慌てると、本当にろれつが回らなくなるのだという事を、この時知った。

「そ、そんなことって、ウグウグウグ、信じらレロレロレロ・・・・・・」

「ソーリー、よく聞き取れませんマダム。」

「一週間もかかるってどういうことよ!?もう少し早くできるでしょう?」

「残念ながら○月×日が最短です、マダム」

「やってできない事はない」
「成せばなる、成さねばならぬ、何事も」
などの精神論まで持ち出したがイギリス人に伝わる筈がない。
再開期日は頑として変わらなかった。

「じゃ、じゃあ、なるべく早く繋がるようにしてね。」
それでも念を押し、絶望的な気持ちで電話を切った。

も少し続く

投稿者 lib : 11:14 AM | コメント (0)

April 10, 2006

電話会社の仁義なき戦い 2

mama.gif  BTから新しい電話会社への移行は、イギリス人の仕事にしてはびっくりするほどスムーズに行われた。

約束通り新会社がBTへのキャンセル連絡を代行し、新会社からはウエルカムレターが、BTからはソーリーレターが届いた。

電話回線は以前と同様BTのままだったので、BTからは回線使用料、新電話会社からは通話料金の、二種類の請求書を受け取るようになった。

しばらくは平穏な日々が続いた。
数ヵ月後、新しい会社から再び電話がかかってきた。

「今月から電話回線のサービスも始めました。使用料もBTより安いし、請求書も一括化できて便利です。もちろん番号は同じままだし、BTへのキャンセル手続きも弊社が行います。」

安くなるし、請求書も一つになるならいいかな、と思いOKした。

数週間後。

突如として、インターネットが繋がらなくなった。
インターネットプロバイダーは、BTとも新電話会社とも全く別の会社だ。

料金は毎月きちんと支払っているし、思い当たる節がない。
何かの拍子に設定を変えてしまったかなと思い、あれこれいじってみたが原因がわからなかった。

見ると、モデムのライトが点滅しているではないか。
私のアカウントがインターネットに接続されていないという意味だ。

これは私サイドの問題ではない。
急いでプロバイダーに電話をかけた。

続く。

投稿者 lib : 08:56 AM | コメント (0)

April 02, 2006

電話会社の仁義無き戦い 1

mama.gif 先々週のヨウコさん(キャリアウーマン)のお話を読んで、私も安易に電話会社を変えてしまったために身にふりかかった不幸を思い出した。

ある昼下がり。
新興電話会社から電話がかかった。

「BT(ブリティッシュテレコム)を使っているんですか?ウチの方がずっと安いですよ!もちろん電話番号を変える必要はありません。BTには弊社から連絡しますので、お客様は何もする必要ありません。」

いつもなら私もセールス電話は無視することに決めているが、ちょうどその前日、BTからの請求書を前に夫と口論したばかりだった。

私 「なんで毎月こんなに電話代が高いのよ!」

夫 「君がいつも日本語で訳のわからない話を長々としているからだろう。」

私 「私は話は短いわよ。そっちこそ、用件が済んでも子供は元気かい?とか今度一杯やろうぜ、とかお愛想ふりまいちゃってさ。」

夫 「なにおうっ。そんな長話をした覚えはないぞ。」

請求書に通話明細をつけてもらえば済むことなのだが、なぜかその事にはお互いに触れない二人であった。

夫 「二人とも長電話をしないのなら、なぜこんなに電話代が高いんだ。そうだ、BTの料金が高すぎるからに違いない。最近は新しい電話会社が沢山あるそうじゃないか。BTより安いって広告に書いてあるぞ。」

私 「そうよそうよ、そうに違いない。違う電話会社に変えましょう。」

他人に責任転嫁して話を丸く治めるのは私たち夫婦の得意技である。
この時も、この手法で夫婦の危機を乗り切った。

そんなやり取りの後だったので、この新興電話会社のセールスに乗っかり、即座に契約した。

この事が後になって恐ろしい結果を招こうとは、この時は知る由もなかった。

続く

投稿者 lib : 11:14 PM | コメント (0)

March 27, 2006

野球で世界一になったそうだ

mama.gif WBCという野球の大会で、日本が世界一になったそうだ。

なった「そうだ」というのは、私が野球オンチであることに加えて、イギリスで野球とは
「ベースボール?それ何だったっけ?ああ、クリケットから派生した野蛮なスポーツか。」
程度の認識しかない超マイナースポーツなので、試合の中継や報道がゼロに等しいからだ。
アメリカで行われている試合を、日本のインターネットサイトの記事を通して、イギリスで知るという、非常に間接的な情報だったので臨場感に欠けは、した。

そんな私でも、世界の王さんとイチローくらいは知っている。
この二人が中心となり、インチキ審判やアメリカに有利な組み合わせにもめげず、日本が優勝したそうだ。

試合内容のことはよく分からないが、各メディアで散々取り上げられている通り、あのクールなイメージのイチローが良くも悪くも、この大会では非常にエモーショナル(感情的)になっていたらしい。

熱くなったり挑発的な発言をしたり、感激屋さんになったり、愛国心を顕わにしたりの突然の変貌。
いったいどうしたのだろう。

数年間アメリカでプレーしているうちに、里心がついたのだろうか。
チームメイトの雑談に入れなくて寂しい思いをしていたのかな、とつい下世話な推察をしてしまう。

外国語を話す時、一番難しいのは「雑談」ではないかと私は思う。
(仕事の会議などはテーマが決まっているので思ったほど難しくない)
一対一の時は相手がこちらのレベルに合わせてくれたりするのでまだいいが、イギリス人複数の中に日本人ひとりだけ、という状況になると、話はとりとめがないし、早口だし、俗語が入るし、置いてきぼりになってしまいがちだ。

イギリスに来た頃、あるイギリス人の家に遊びに行った。
そこには10人位の人々がいて、イギリス人と日本人が半々だったと思う。
お茶を飲んでいると、テレビで「シンプソンズ」が始まった。

ご存知の様にシンプソンズは、早口、スラングがてんこ盛りで、一話30分の間に、弾丸の様にギャグが飛ばされるアニメである。

その時、偶然にもテレビに向かって右側にイギリス人のグループ、左側に日本人のグループが固まって座っていた。
イギリス人グループは3分おきに吐き出されるギャグに
「がはははははは~!」
と一堂、申し合わせたように爆笑していた。

しかし。

同じ番組を観ていた日本人は、一人も笑っていなかった。
その中には在英20年以上の、日常的にイギリス人と仕事をしている日本人女性もいたが、彼女も笑っていなかった。

涙を流さんばかりに笑い転げるイギリス組と、画面を観つつ固まる日本人組。
最後列で、まさに「明暗」の分かれる様を観た私は、「20年住んでもシンプソンズのギャグを理解できないのか」と衝撃を受けた覚えがある。

察するに、超体育会系のアメリカの野球選手の雑談やジョークなど、シンプソンズ並みの早口とスラングの応酬なのではないだろうか。
イチローの英語力がどの程度か知らないが、日本で育った人間がそうそう簡単に入れるものではないだろう。
もともと多くを語らない人だと聞いたが、「話の内容が分かっていて、輪に入らない」のと「話の内容が分からなくて、入れない」のは精神的に雲泥の差があるとも思う。
チームメイトの「ちょっとした他愛ない話」に入れず、イチローは孤独な思いをしていたのかもしれない。

自国のチームで、母国語でコミュニケーションしながら戦うことはやっぱり嬉しいだろう。
そのことがイチローをリトルリーグの熱血少年のようにムキにさせ、悔しがらせ、喜ばせたのだろうか。

もし、そうだとしたら、同じ異国に住むものとして、とても微笑ましい気がする。

もちろん彼にとってはそんなことは小さな事で、だからこそ偉大な記録を出し続けているのだろうが。

投稿者 lib : 10:06 AM | コメント (1)

March 20, 2006

イギリスの魚

mama.gif  以前、日本から来た友人とスーパーマーケットに行ったら、「魚の種類が少ないねえ!」と驚かれたことがあった。

確かに、肉売り場の占める面積に比べて、魚売り場はとても小さい。昔は、魚といえばサーモンとコッド(鱈)くらいしか売っていなかったような気がする。海に囲まれた国であるのも関わらず、魚を食べない人たちだったのだ。

しかし最近は、健康に良いなどの理由から魚介類が見直されてきて、スーパーマーケットのフィッシュカウンターも種類が豊富になってきた。日本で見かけないものもあるが、新鮮で美味しい魚介類は和食に適したものも多い。
近くに日本食料品店がなくても、近所のスーパーやフィッシュマンガーで美味しい魚が変えますよ!奥さん!

鯖(Mackerel)
日本にいた頃は何とも思わなかったが、イギリスに来てから大好物になった。日本の鯖よりも太っていて油がのっている。大き目のものの方が美味しい。魚屋で「フィレにして」と頼むと、3枚に下ろしてくれる。スーパーでは、すでにフィレの形でカウンターに並んでいることもある。塩焼きが最高。

スケイト・ウイング(Skate wing)
エイヒレ。日本では、居酒屋で焙られて、ひりひりに乾いた姿しか知らなかったが、イギリスのエイヒレは骨の上に肉厚の身がついている。ムニエルで良し、グリルで良し。身は、食感は違うが居酒屋のエイヒレと同じ味がして、心は仕事後の一杯を赤提灯で楽しむオヤジと化す。小骨の心配がないので子供にも安心して食べさせられる。調理済みの身を細かく切ってパスタなどに混ぜると、原型を失うほど崩れるので魚嫌いの子供も騙せて便利だ。

スプラット(Sprat)
小魚。塩、こしょうして、片栗粉と、家にある適当なハーブをまぶし、フライパンで焼く。頭から骨ごとバリバリ食べる。試したことないが、から揚げもいけそうだ。値段も笑えるほど安い。

ハリブット(Halibut)
日本では見た事ないので辞書で引いてみたら、「おひょう」と書いてあった。おひょうと言われても、研ナオコに似ているという事くらいしか知らないのだが、まったりした味の白身魚。グリル良し、ホイル焼き良し。

まぐろ(Tuna)
ツナステーキ用として売っているが、マークス&スペンサーのものは大抵新鮮なので、うちは刺身で食べてしまう。今のところ、お腹こわしたことは、ありません。

ムール貝(Mussel)
日本ではなかなか美味しいものが食べられないが、こちらのスコティッシュ・マッスルはオレンジ色の丸々とした身がジューシーだ。玉ねぎとセロリと一緒に白ワイン蒸しにするのが最高。「ベ○○―」に行かなくても家で美味しいムール貝がたっぷり食べられる。

ドーバーソール(Dover sole)
舌平目。イギリス人は、頭の付いた魚なんて怖くて食べられません!という人が多い。そのため、魚の原型の分からない、切り身で売られている魚(つまり大きい魚)は高価で、頭も尻尾もついている魚は需要が少ないため安いのかと思っていたが、ドーバーソールは例外だった。舌平目は世界のどこでも高級魚らしい。さすがに繊細な風味。

魚食い民族日本人もうなる、イギリスの充実した魚食生活!
ぜひ試してみてください。


投稿者 lib : 09:24 AM | コメント (0)

March 13, 2006

日英幼稚園比較

mama.gif息子が幼稚園(ナーサリー)に入って、2ヶ月が過ぎた。
最初は泣きながら私に別れを告げる彼だったが、今では週末でもナーサリーに行きたがる。親としては一安心。

ナーサリーは家から徒歩3分の公立小学校にある。
イギリスの公立小学校には付属の幼稚園がついていることが多い。

日本にいる妹の子供も幼稚園に通っているのだが、話を聞くといろいろと違いに驚く事も多い。
と言うわけで、日英幼稚園大比較。
(うちの息子は公立、妹の子供達は私立なのでその違いはあるし、個々の幼稚園によっても違うので、あくまでも一例ですが。)

・通園方法
 日本 ― 幼稚園バス
 イギリス - 徒歩、または車でそれぞれ送り迎え

・費用
 日本 ― 入園金、ン十万円、月々数万円(私立)
 イギリス - なし。(公立)しかし私立でも、「入園金」というのは聞いた事がない。

・制服  
 日本 - あり
 イギリス - なし

・昼食
 日本 - 幼稚園によって、給食かお弁当か決まっている。
 イギリス - 給食かお弁当か選択できる。息子の幼稚園では給食の子とお弁当持参の子の割合は、半々のようだ。

・購入するもの
 日本 - ハーモニカ、体操服、クレヨン、粘土、はさみ、カスタネットなど各自購入する。
      (それぞれの持ち物には、クレヨンの一本一本にまで名前を記入しなければならない!
       ちなみに、せっかく名前を入れたクレヨンも、年長組に上がる際に、『クレパス』に買い換えなければいけないそう      だ。・・・幼稚園と業者の癒着を感じるのは私だけ?)

 イギリス - なし(クレヨンやはさみは幼稚園の備品として用意してあり、共同で使う。)

・親が用意するもの
 日本 - 親の手作りで(!)、幼稚園から指定された型紙に従って(!)
       ・箸袋
       ・お弁当袋
       ・コップ袋
       ・ボール袋
       ・ハーモニカ袋
       ・体操服袋
       ・粘土袋
       などの細々した袋物を何種類も作らなければならない。
       今時そんなものは百円ショップにでも売っているだろうに。働いているお母さんは大変だろう。
       なぜ、手作りでなければいけないかと聞くと、「親の愛情を示すため」だそうだ。余計なお世話だと思うが。 

イギリス - なし

なんだか、日本の幼稚園の細かい「きまり」や「お揃い志向」は、書いているだけで息がつまりそうだ。
それに親の負担が妙に大きい。ラクしたいから子供を幼稚園に預ける(のは私だけか?)のに~!

と言うわけで、私のようなズボラな母親には、「なし」「なし」づくしの、イギリスの幼稚園は有難い。
幼稚園に入るときにも、何も買わなくて良かったし、何も用意しなくて良かった。
毎朝、手ぶらで行けるというのは思った以上に気楽なものである。

イギリスの幼稚園に大満足の私だったが、先日配られたレターには、冷感が走った。

「クラスの子供から、Headlice(シラミ)が発見されました。」

シラミ?なんじゃそりゃー!
友人に話すと、イギリスの学校では「ごく普通のこと」だという。

これだけは日本の勝ち!
日本じゃシラミの話なんか聞いた事ない。
戦時中に子供達が集団で頭から白い粉をかけられているビデオを観た事はあるが、とうの昔に絶滅したものかと思っていた。

夏になると地下鉄内がくさいとは思っていたが・・・・恐るべしイギリスの衛生状況。

「みんな、お風呂入ったか?頭あらえよー!部屋掃除しろよー!」
と、思わずドリフ化し、ロンドンの住宅街で絶叫する私であった。

投稿者 lib : 09:27 AM | コメント (14)

March 06, 2006

インフルエンザ

mama.gif 家族でインフルエンザにやられてしまった。

ある雑誌によると風邪とインフルエンザの見分け方は、

風邪 ― くしゃみ、鼻水などの初期症状から、全身症状へとうつる。発熱は37.5~38度程度が1~3日続く。

インフルエンザ - 急な高熱、倦怠感から鼻咽頭症状へと移行する。38~40度の高熱が3~5日続く。

とのことで、どんぴしゃりインフルエンザの症状!。

昨年は、インフルエンザが大流行するというのに恐れをなし、予防接種をした。
GPに頼んだが、ハイリスク郡(高齢者や疾患保持者)以外にはできないと断られた。
Bootsで予防接種してくれるという噂を聞き、問い合わせたが、もうワクチンが品切れとの事だった。

ダメもとでもう一度、GPに当たってみると、今度はワクチンの処方箋を出してくれた。
この処方箋を持って薬局に行き、自費でワクチンを購入し、そのワクチンを持ってGPに戻り注射してもらった。

薬局でインフルエンザワクチンを買う事になろうとは思いも寄らなかったが、その甲斐あって昨年は家族皆、健康に冬を越せた。

しかし、今年は予防接種のことをすっかり忘れていた。
今年だって去年異常に鳥インフルエンザのことも騒がれているし、いったい何故忘れていたのだろう。
去年大丈夫だったことで、恐怖感がすっかりなくなっていたのだろうか。
鳥なみのアタマの私である。

ともかく、親子で病気になるのはつらい。
高熱で寒気がする体で、同じく高熱で苦しむ子供をあやす。
咳もひどかったので、親子3人で「げほっ、げほっ」「ごほっ、ごほっ」の3重唱。
特に子供が咳こむのを聞くのはつらかった。
意識のとびそうな頭の中に、何故か「四面楚歌」、「絶体絶命」などの四字熟語が浮かんでは、消えた。

こんな時、外国人である私には頼れる人がいない。
「ヘルパーを頼もうか」とも考えたが、ウイルスの巣窟のような家に手伝いに来てくれる人などいないだろう。

あー、ひどい目にあった。
体重も3キロ減った。(これは嬉しいんだけど)
外からウイルスを持ち込んだ夫には、手洗い、うがいを徹底させなければ。

風邪の季節もそろそろ終わりですが、皆さんも気をつけてください。

投稿者 lib : 10:06 AM | コメント (0)

February 27, 2006

イギリス人のホンネ オリンピック編

mama.gif  冬季オリンピックが終わった。
オリンピックおたくの私としては、楽しい2週間だった。

閉会式で登場したリッキー・マーティンも観たぞ。
久々に見たリッキー、何歳くらいになったのだろう。
さすがの彼も寄る年波には勝てないのか体型も崩れ、昔の美少年ぶりの見る影もなかった。
あんなにピカピカだったお肌もくすんでいてショックだった。私に言われたくないだろうが。

まあリッキーのことはどうでもいいのだが、フィギアスケートである。

フィギアスケートは最も好きな種目なので、気合を入れて観た。
荒川選手、美しいっ。
顔がまた、欧米人の大好きなタイプのオリエンタル顔。
そのうち、ハリウッドからスカウトされそうだな。

で、いちいち突っ込みたくなったのがBBCのキャスターやコメンテーターのコメント。
イギリスには色々な人種の視聴者がいるので、人種差別ととられるような発言をしないよう、テレビ局はすごーく気を使っている。
しかし、スポーツとなるとつい血が騒いでしまうのか、ポロッとホンネをもらしてしまうようだった。
イギリス人を応援するのは当然だが、それがだめなら白色人種に勝ってほしい!という気持ちがびんびんと伝わってくる。

まずは女子ショートプログラムが終わった後。
優勝はアメリカのコーエンかロシアのスルツカヤの二人の争い、と決め付けているかのような報道だった。
3位の荒川のことは頭になかったようだ。
上位3名の得点差は小数点以下で、誰が勝ってもおかしくなかったのに。

荒川選手の金メダルが決定した後も、

「誰もがスルツカヤかコーエンが勝つと思っていた。(二人とも転倒したのは)金を意識しすぎたのね。」

「誰もが」って、誰のことやん。その部分、「白色人種は」に変えてもらえません?

「その点、荒川は3位でプレッシャーが無かったのが良かったわね。」

プレッシャーが無い?ご冗談でしょう。日本と言う国を知らないね。
それに3位と言っても、1ポイント以下の僅差なのだから、当然金を意識したはず。

番組の締めでは女性キャスターが、

「大会13日目の今日、日本にとってラッキーな日となりました。」

ラッキー?9点の大差で勝ったのに、ラッキーって言うか?

その点、元金メダリストのロビン・カズンスの発言はフェアだった。

「長い間、フィギアスケートではヨーロピアンが支配していたけど、僕達は気をつけないといけないよ。ぼやぼやしていたら、日本や中国に追い抜かれてしまう。ジャパニーズボーイの演技もラブリーだったし。」

ジャパニーズボーイって、高橋選手のことだよな?
さすが元金メダリスト、現実を直視しているぞ。ぱちぱち。

荒川選手の演技については、もちろん皆褒め称えているのだけど、やっぱり心の底では
「白人が勝って当たり前。他が勝ったらただの運。」
と思いたいらしい。

2年前の夏のオリンピックでもこういったアンフェア発言はたびたび感じた。

しかし、ニュースキャスターやドラマの登場人物に、白人以外の人種をバランスよく配置して視聴者に配慮を見せる、意識の高いBBCでさえこれだもの。日本はもっとひどいんだろうな。

オリンピックの時期に日本に帰る機会があったら、外国人になった気持ちで観戦してみよう。

投稿者 lib : 09:52 AM | コメント (3)

February 20, 2006

バレンタインデーのメッセージ

mama.gif 2月14日には、各新聞にバレンタインデーのパーソナル・メッセージが掲載された。
個人広告のさかんなイギリスらしい。

「親愛なるテレサ、 君は僕の人生を全く違うものにしてくれた。いつまでも愛しているよ。 チャーリー」

「ローラ、 世界で一番美しい君。海よりも深く愛しているよ。デビッド」

王道ともいうべき、古典的メッセージは健在だ。

ユニークなものでは、

「アナ、 僕の可愛いスウィディッシュ・ミートボール! 君と一緒にサウナに入ったり、チーズフォンヂュを食べるのがこんなに楽しいなんて! ピュア・イングリッシュより×」

金髪の、ご自慢のスウィーデン人ガールフレンドなんだろうな。

「ソフィー、ニッキー、キャロル、バーバラ、フランキー、アリソン、 働き者の君達なしに、どうやって僕は毎日を過ごせたというんだろう? この特別な日に、愛を込めて。 スティーブン×」

一瞬、一夫多妻おとこ?と思ったが、上司が部下の女性達に贈ったのだろう。
ただし、これを見たソフィーやニッキーが喜ぶか、気味の悪い思いをするかは、上司スティーブンの顔かたち、腹の出具合、体臭などによる。

職場関係では、イギリスらしいブラックユーモアも。

「ダニエラ、 僕のセクシーなセクレタリー。 あのバルコニーから、イアンを蹴り落としちゃおうぜ!」

3人だけの職場なのだろうか。
気の毒な、邪魔者イアン。

この場を借りてプロポーズする人も。

「Chacoliades、 君の名前のスペルを書くのは難しいよ、小切手にサインするのも面倒だろう。『ミセス・ブラウン』の方がずっと簡単だと思わない?子供も持とうよ!G」

女性からもトライする。

「ジャック、 私と結婚してくれる? 今夜返事して! ルーシー」

私がジャックだったら、あまりのプレッシャーに耐え切れず、夜を迎える前に国外逃亡するかもしれない。
ルーシー、急いては事を仕損じるぞ。

すでに結婚している人が相手に贈るメッセージも目立つ。

「ミセスB、 素晴らしい妻、そして母でいてくれてありがとう。毎日のように愛が深まるよ。 ミスターB」

「キャサリン、 結婚してから3日がたった! 奴らは絶対に長続きしないって言ってるけど、君を永遠に愛するよ。アレン」

結婚3日目ならまだ熱いよな、と思いきや、

「エレノア、 30年間の愛と幸せをありがとう。30年後はもっと愛しているよ。 マーティン」

いいなあ。言われてみたい。

最後に、今年一番気になったメッセージ。

「スーザン、 それでも僕は君を愛しているよ。・・・全ての事にかかわらず・・・・。××× オールド・マン」

いったい二人の間に何があったのだろう。
ま、まさか、あんな事やこんな事が・・・。
それにも関わらず愛し続けるなんて。

オールドマン、立派である。

投稿者 lib : 09:49 AM | コメント (1)

February 13, 2006

バレンタインデー

mama.gif バレンタインデー、である。

ロンドン中が赤やピンクのハートで溢れかえっている。
店先には可愛く包装された小さなハート型のチョコレート、その隣には巨大なハートのバルーン。

このファンシーさ、何もかもが大ざっぱなこの国で異彩を放っている。
もちろんバレンタインデーは、昔から「恋人の日」だったが、もう少し落着いていた様な気がする。
そもそも、「バレンタイン用チョコレート」というものが存在しなかった。
チョコレートを恋人に贈る人はいたが、普段から売っているベルギー産チョコレートなどだっただろう。

どうやら日本のバレンタイン商戦の逆輸入らしい。
バレンタインデーが大きな市場となっている日本に続け、というところだろうか。
商売のタネになれば他所の国の習慣でも節操なく取り入れ、記念日ビジネスにするのは世界的な傾向なのかもしれない。
この分だと、ホワイトデーはもちろん、ひいては桃の節句や端午の節句が世界中に定着する日も近いだろう。遠いか。

日本のバレンタインデーはどんな事になっているのだろう。やはり義理チョコ主流なのだろうか。
普段お世話になっている人に「季節のご挨拶」的なプチお歳暮とかプチお中元の感覚なのかもしれない。
しかし忘れてはならない。
日本式バレンタインの元々の意義は、、
「年に一度だけ、女性から男性に告白できる」
日なのであった。
ということは、あとの364日は女から告白してはいけなかったのか。
今にして思うと、えらい男尊女卑なコンセプトだったのだな。うーむ。

我が家のバレンタインの歴史はというと、私が渡英した7,8年前、その頃婚約者だったダンナからチョコをもらった。
しかし日本の様に「バレンタインデーにはチョコレート」という絶対的なルールがあるというよりも、チョコレート位しか贈るものがないというのが理由のような気がした。(人の家を訪問する時も、日本の「菓子折り」に相当するものがチョコレートしかないのだ。ああつまんない)
ダンナは香港チャイニーズだが、こちらでの生活が長いせいか、日本人男性よりはロマンティックなところがあり、赤いバラの花束も添えられてあった。

「この国では女がプレゼントしてもらえるのか。ラッキー」と素直に喜んだ。

しかしその後、赤いバラの花の価格がバレンタインデーには急騰し、一本8ポンドなどという法外な値段が付けられている事を知り愕然とした。5本買えばそれだけでもう40ポンドではないか。私の頭は40ポンドあれば何が買えるかと、セコイ換算で一杯になった。

「バレンタインデーにバラの花なんて買わなくてもいいからね!もうどうせ夫婦なんだからそんな演出は不要!」
私は「釣った魚にエサ禁止」を自ら宣言した。
ダンナも夢のない魚・・・いや女を、妻にしたものである。

2001年のエサ禁止令の発布により、その後のバレンタインプレゼントは比較的、相場の変動の少ないチューリップなどの花にとって変わられた。妥協案である。チョコレートはそのまま存続された。

しかし、また問題が起こった。

2002年に子供が生まれると、家に花を飾ることが難しくなった。
息子は超アクティブで、どこにでもよじ登る習性を持っていたため、花瓶に花を生けて飾ったりすればたちまち息子の標的となることは目に見えている。花瓶もろとも粉砕するだろう。

墓穴を掘るような事はしたくない。
よって、2003年には切花を全面禁止とした。「切り花ご法度の令」である。

ダンナも納得し、その後はチョコレートとカードだけのプレゼントで、数年間は安定した。

しかし先日、ある疑惑が湧いてきた。

元々私は、チョコレートなどの甘いものがあまり好きでない。
そのため、バレンタインデーに一箱もらうと、それを食べ終わるのはイースターの頃になってしまう。
箱にいつまでも残るチョコレートを見て、苦痛に感じることさえある。
ダンナだって一緒に住んでいるのだからそれは知っているはずだ。

それなのになぜ、彼はチョコレートを私に贈り続けるのだろう。
私のため、というより彼の自己満足を満たしたいからなのではないか。

そこで先日バレンタインデーのことには触れずに
「私ダイエットすることに決めた。もうチョコレートは一切食べない。」
と言ってみた。

ダンナは読んでいた新聞から目を上げず、「そう。」とだけ興味のない様子で答えた。が、瞳の奥に一瞬暗い影がよぎったのを、私は見逃さなかった。

さて明日、バレンタインデー。

ダンナがどんな法の抜け穴を探すのか、楽しみである。ていうか、少しは感謝しろよ自分。

投稿者 lib : 09:20 AM | コメント (0)

February 06, 2006

スピーチ・セラピー その4

mama.gif いよいよ、スピーチセラピストは息子に簡単なテストをすると言う。お受験を見守る母親の気持ちはこんなだろうか。「テスト」という言葉を聞いただけで急にびびってしまった。

テストの内容は息子にパズルをさせたり、絵の書いてあるカードをいくつか見せて、犬はどれ?女の子はどれ?などと質問するものだった。私が質問役なので、いつも使っている日本語で聞いて良いと言う。こういった遊びは普段から息子としていたので、これは難なく通過。

次に、同じカードを、名詞を使わないで動詞で質問してみて、と言われた。例えば「飲んでいるのはどれ?」「走っているのはどれ?」など。こういった遊びはしたことがなかったので、息子、分かるかなーと半信半疑で質問したが、正解を言えた。正解できたのが意外で、私の方が驚いた。面白いやり方だなと思った。

後日、送られてきたリポートを見ると、言葉を習得する上で重要な、注意力、聴力、遊び方、言葉(名詞、動詞)の理解力などは問題ないが、言葉を表現することに若干遅れがあるとのことだった。
レポートの中に、「観察によると、’ke’という一貫した発音を使い、個々の品目の名前を母親に聞く行動が見られた。」と真面目に書いてあったので笑えた。「け?」がキーワードだったのだな。
両親は一貫した言語で話しかける事、子供に質問して答えさせるように心がける事、などのアドバイスがあり、これはこれで役に立った。

その後、こんな事があった。

日本語の子供向けビデオを見ていた息子が、主人公が車のおもちゃで「ブー、ブー」と言いながら遊んでいるのを見て、自分も「ブー、ブー」と繰り返していた。そのように正確に発音を繰り返すことは初めてだったので、はっとした。

以前、「子供は言葉をそのまま吸収するので、幼児語を使っても正しい日本語を使っても同じように覚える。よって幼児語を使う必要はない。」というような話を聞いた事があった。
幼児語を使わせたくないと思っていた訳ではなかったが、私自身、今まで子供との接点があまり無く幼児語が出にくかったのと、この説が頭に残っていた事があり、特に積極的に幼児語を使っていなかった。

息子は車の擬音語として「ブーブー」と言っていたのだが、試しに
「このブーブーが好きなの?」
と名詞として使ってみた。

息子は一瞬、はっとした様な表情をした。そして、嬉しそうな顔で、
「ブーブー!ブーブー!」と大きな声で連呼した。
まるで、
「『くるま』じゃなくて、『ブーブー』って言ってもいいんだ。」
と確かめて、ほっとしたかのように。

それから、外でも車を見るたびに自信を持って「ブーブー」と言うようになり、彼の3つ目のボキャブラリーになった。幼児語でも言わないよりは言った方がいいに決まっている。

子供は動物的に言葉を覚えるものと思い込んでいたが、実は思っているよりもずっと複雑な心の動きがあるのかもしれない。私だって自信のない英語の発音は避けて、他の言葉で言い換えようとする様に、2歳児にだってプライドがあり、自信のない発音は口に出したくないのかも知れない、と目から鱗の思いだった。

今はスピーチ・セラピー体験から約1年が過ぎ、息子もそれなりに話せるようになった。とはいえ、同年齢の子に比べるとまだまだ下手だが。

それでも、少しでも意思の疎通ができるようになると、息子が何を考えているのか知りたくなる。

で、常々「子供になんてバカなことを聞くんだろう」と思っていた質問を、ついしてしまった。

「ダディとマミィ、どっちが好き?」

息子はすかさず答えた。

「ボール。」

質問と噛み合っていないが、母親がボール以下の位置付けであることは分かった。

知らなかった方が良い事も、ある。

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January 30, 2006

スピーチ・セラピー その3

mama.gif スピーチ・セラピストは息子の家庭や外での遊び方、他の子供との係わり合いなどについて聞いてきた。

質問に答えていると、傍らで黙々と遊んでいた息子が、大好きな機関車トーマスのおもちゃを持って来た。

「け?」と言いながら私に見せる。

「ああ、トーマスね。」と言うと彼は満足して戻っていった。

話を続けていると、次にトーマスの友達のジェームスを連れてきた。
また「け?」と言うので「ジェームスだね。」と答えると、また安心して戻って行った。

これを数回繰り返した。息子が一つずつ持ってくるキャラクターの名前を私は次々に答えた。

「すごいわ!名前を全部覚えているのね!私にも息子がいるけど、とても覚えきれないわ!」
私たちのやり取りをじっと見ていたセラピストが褒め称えてくれた。

トーマス名前当てクイズに来たんじゃないんだが。私が褒められてどうする。

しかし、私がトーマスと仲間達の名前を完璧にマスターしているのは当然である。
なぜなら、息子は自分で言葉を言えないにも関わらず、なぜかトーマスのキャラクターの名前は全部覚えていて、絵本を見たり、街でキャラクター製品などを見かけるたびに、私にその名前を当てる事を課すのであった。「け?」と言われたら3秒以内に正解を述べなければならない。

これが難しい。
例えば、赤い機関車はジェームスだけなので簡単だ。
しかし問題は青い機関車たちだ。登場頻度の高い、トーマス、ゴードン、エドワードは皆同じ青。横から見れば大きさや形が違うし、車体についている数字で分かるのだが、平面図で、正面を向いている場合はどうやって見分ければいいのか見当がつかない。

で、当てずっぽうに「エドワード」などと答える。しかし、これが外れていると息子が途端に「キーッ!」と不機嫌になる。
「え?違う?じゃあトーマス?」
「キーッ!」
「ゴ、ゴードン?」

・・・・当たったらしい。満足げに微笑む息子。よくよく見ると、確かにちいーさな字で‘Gordon‘と書いてあったりする。こんな小さな、ヨーグルトのフタなどに印刷されている絵で、どうして分かるんだ。つくづく幼児と言うのはあなどれない。

とにもかくにも、このような厳しい訓練を乗り越えてきた私である。
おもちゃのような立体物(=数字も大きさもわかる)はお茶の子さいさい・・・・。
思わぬところでセラピストに優越感を感じ、鼻息を荒くする私に、息子が次の課題を持って来た。

「パーシー。」
私は余裕で答えた。
(パーシーは同じ緑のヘンリーと間違えやすいので要注意だ。)

セラピストがしばらく考えていたようだった。

「ああ、『Percy(プァースィー)』ね!」

「Percy(プァースィー)・・・・・」

思わず反復してしまった。うう、こんなところで詰めの甘さが露呈するとは。
どんでん返しの敗北である。

だから私が勝負に来たんじゃないんですってば。

投稿者 lib : 09:40 AM | コメント (0)

January 23, 2006

スピーチ・セラピー その2

mama.gif  スピーチ&ランゲージ・セラピスト(言語療法士)に会いに行ったのは息子が2歳3ヶ月の時だった。

その頃には、「りす」と「手」の日本語の単語を二つ、言えるようになっていた。
「りす」が最初の言葉というのもロンドンならではだが。

セラピストの女性は、息子が何か単語を言うか聞いてきた。
私は待っていました、とばかりに
「ちょうど言い始めました!英語でHandを意味する『テ』と、Squirrelを意味する『リス』です!」

しかし。
私の言う、「Squirrel」が通じなかった。
彼女は何度か「え?え?」という感じで聞きなおし、やっと
「ああ、Squirrelね!」と理解してくれた。

確かに私の発音と微妙に違う。(向こうにとっては微妙じゃないんだろうが)
「Squirrel・・・」

「Squirrel・・・」

彼女の発音を復唱する私。

私が発音矯正されてどうする。

何度か繰り返した後、「Squirrelって発音、難しいわよねえ」と慰めてくれた。

「なんだか私がスピーチセラピーを受けに来たみたい。」
というジョークが喉まで出かかったが、しゃれにならないので止めておいた。
彼女も、同じことを言いたそうに見えたが、何も言わなかった。

お互いに賢明な判断だっただろう。

私達がこんな不毛なやり取りをしている間、息子は傍らにあったおもちゃで黙々と遊んでいた。
普段は、私の注意が自分に向いていないと怒ったり騒いだりするくせに、この日は不気味なほど静かだった。

そんな彼をしばらく観察した後、セラピストは口を開いた。
「・・・・・いつもこんな感じ?」

その口調に、何か別の可能性を疑われていることを感じ取った私は、
「いいえっ。いつもはすごーくアクティブ!こんなに静かなのは珍しいです!」
と必死に弁明した。別に弁明する必要もないのだが。

(続く)

投稿者 lib : 09:56 AM | コメント (0)

January 16, 2006

スピーチ・セラピー その1

mama.gif  息子は言葉の出るのが遅かった。

平均的には1歳半頃からいろいろ言い出すらしいのに、息子は2歳になっても相変わらず「あー」とか「ぶー」とかの赤ちゃん言葉で、意味のある言葉を全然発しなかった。こちらの言うことは分かっていた様なので、まあ個人差があるものだし、3ヶ国語環境だし、男の子だし?とあまり気にしてはいなかった。

2歳児検診の時、保健婦さんに「なにか気になる事は?」と質問された。体の発育面では特に心配事は無かったのが、それじゃあ愛想がないかな?と思い、
「まだ何も言わないんです。マミーとさえ呼んでくれない。」
と言ってみた。
「個人差があるから気にする事無いわよ」と答えてくれることを期待して。

ところが彼女の反応は私の予想を反するものだった。
「ええっ!2歳になるのに何も言わないの!それじゃ、お腹がすいた時はどうするの?喉が渇いたときはどうやってあなたに伝えるの?」
大袈裟に驚かれてしまったのだ。

お腹がすいた時はどうして分かるんだ、と言われたって、こちとら口を開くどころか目も開いていない時から面倒みてきたのだもの、母親なら自分の子供がお腹がすいてる事くらい分かるだろう。2歳の誕生日が来たその日から、母と子は言葉でしかコミュニケーションできなくなるわけでもあるまいし。

この保健婦さんは息子が新生児の頃からお世話になっていただけに、その突拍子の無い質問に私の方が驚いてしまった。

「え・・・お腹がすいた時には冷蔵庫を指差すし、喉が渇いたときにはミルクを指差すし・・・」などと、またもやしどろもどろの返答をする私だったが、彼女は凛とした声で、
「じゃあスピーチセラピストに紹介するから。日時は後から連絡するわ。」
と声高らかに宣言したのだった。

スピーチセラピスト‐‐言語療法士の話は聞いたことがあった。
言語能力に問題のある子供がスピーチセラピーを受けて、またたく間に向上した例もあるという。

どんな事をするのか少し興味があった。どうせタダだし、話のネタにもなるかなと思い(相変わらず不純な動機だが)まあいいかと了承した。

意味のない愛想を振りまいたお陰で変な展開になってしまったが、私たちはスピーチセラピストに会いに行く事になった。その話はまた来週。

投稿者 lib : 11:18 AM | コメント (0)

January 09, 2006

ポルトガルで、食べてきた

mama.gif  ああ、イギリスを一歩出ると、どうして食べ物がこんなに美味しいんだろう。
年末をポルトガルのアルガーブで過ごした時に思った。

ポルトガルの料理はフランスの様に洗練された美味しさではないけれど、素朴な美味しさだ。
ソースなどで飾るのではなく、素材の味そのものを楽しむ料理。日本人の口にとても合う。

野菜も生きが良かった。
例えばトマト。スーパーには、今、畑から採ってきました、というような大きくて形の不揃いなトマトがごろごろと積まれていた。
なんだか畑で生きていた頃が想像できるような風体だ。
色はそれほど赤くはないのだが、食べてみると、とても甘い。

イギリスのスーパーで、お行儀よく包装されて並んでいる「完熟トマト」からはそういった「畑で生きていた過去」が想像できない。
そして真っ赤なのに味がない。なぜだろう。

オレンジやレモンもノーワックスだった。ぴかぴかしていないレモンを見るのはかえって新鮮だった。

そしてポルトガルといえば、もちろん「焼きイワシ」。
地元の家族が大声で話しながら食事していた小さなレストランで、シーズンではないと言われたが、やはり注文してしまった。
外はパリパリ、中はジューシーで絶妙の焼き加減。どんな高級魚よりも美味しい。
このイワシが5~6尾とサラダ、ポテトがついて6ユーロ程。

オリーブオイルとガーリックで炒めた小さな貝(名前忘れました)も絶品だった。
サラダは愛想のない金属製のお皿に野菜のぶつ切りを大胆に盛ってあった。
「もうちょっと何とかなるだろう」というプレゼンテーションだったが、オリーブオイルとビネガーをかけて食べるといくらでもお腹に入る。

何でもないパンひとつ食べても歯ごたえがあって小麦の香りがする。
もう、絶対的に食に対する文化レベルが違うのだ。
(しかしそれをグルメだなんだと声高に主張したりしないのがこの国の奥ゆかしいところ。)

ひとつだけ分からないのが、街なかのところどころに
「イングリッシュブレックファーストあります」
という立て看板のあるカフェを見ること。

こんな食べ物天国に来てまでも、缶詰のベークドビーンズや、油でべたべたのベーコンを食べなければ一日が始まらないイギリス人が多いということだろうか。

少し前に、フランスのシラク大統領が「あれほど不味いものを食べている国なんて信用できるか」と失言して大顰蹙をかっていた。
確かに「それを言っちゃあおしまいよ」だけれど、私も気持ちは分かります、シラクさん。

(今回は食べ物のことに夢中で、子供のことを語るのを忘れました。)

投稿者 lib : 02:21 PM | コメント (1)

January 02, 2006

クリスマスプレゼントの行方

mama.gif    イギリスのクリスマスシーズンが終わった。

日本にいる友達に「日本のクリスマスは商業的だけど、そっちのクリスマスはロマンティックでしょう?」と聞かれた事がある。夢をこわして申し訳ないけれど、イギリスだってすさまじく商業的である。

10月になると、「クリスマスの用意は早めにしましょう!」というチラシが舞い込んでくる。11月ともなると、街はクリスマス一色になる。
私の住んでいる区は、無料の「クリスマスショッピング託児所」を設置していた。確かにクリスマス前の繁華街に子供なんて連れて行ったら自殺行為だ。
クリスマスの買い物は公的機関も応援する(?)一大行事なのだ。

私は今年も、託児所を利用することもなくマイペースで過ごせた。「国民的プレゼント大交換会」に巻き込まれない幸せをひしひしと感じる季節だ。

義理の両親は香港だし、もとよりチャイニーズは日本人と同じでクリスマスをそう重要視していない。夫の親戚はイギリスにもいるが、息子を出産して以来、年末年始に帰国するようになったのでクリスマスに会う習慣もなし崩しになった。

で、殺人的に込み合うオックスフォードストリートで血眼になってプレゼントを探す必要もない。
遠くにいる親戚にプレゼントを送るため郵便局の外まで続く長い行列に加わり、北風に震える必要もない。

ありがたや、ありがたや。

日本のお歳暮やお中元も儀礼的かもしれないが、一家に一個でよいのでまだ楽だ。しかも食品が中心なので後腐れがなくて良い。我々のこの文化を逆輸入して、「クリスマスには○○の佃煮」「大切なあの人に干ししいたけを贈りましょう」といったキャンペーンをイギリスでも繰り広げてはどうか。東西が融合した新しいクリスマス文化が生まれると思うのだが。なわけないか。

知り合いは毎年30個のプレゼントを用意しなければならないと言っていた。

彼女はご主人の実家に親戚一堂集まるのが慣わしなので、メンバー一人一人にプレゼントを用意しなければならないのだ。ご主人が3人兄弟、それぞれ子供が2人づついるので、義理の両親、兄弟とその配偶者×2、姪、甥が4人で、これだけで10個だ。これに自分のダンナや子供、実家のファミリー、友人などの分も含めて30個だという。

ここで気をつけてほしいのは、30個のプレゼントを贈るということは、自分も30個のプレゼントを受け取るということだ。
ただでさえ家の中にモノが溢れかえっているというのに、30個の不要品が増えるなんて・・・あ、言っちゃった。

しかしはっきり言って、子供の頃は別として、人に「プレゼント」されたもので、本当に役に立ったものや、自分の趣味にあったものがいくつあっただろうか。
綺麗にラッピングされた箱を受け取った瞬間は確かに心が浮き立つが、大抵は包みを開けた途端「ちょっとずれてる」その中身に、がくっと肩を落とすことが多い。

こんな風に思うのは私だけでないらしく、クリスマスホリディが明けた早々の27日、ネットオークションのe-bayがTVコマーシャルを打っていた。

「いらないクリスマスプレゼントは、e-bayで売りましょう!」

なんだかねえ。

投稿者 lib : 12:59 PM | コメント (1)

December 19, 2005

イギリスの公衆トイレ その2

mama.gif   さて先週のお話の続き。

初めて入った男性(Boys)用トイレで、背後を振り向いた私の目に飛び込んできたのは。

一枚の巨大なステンレス板だった。

ステンレス板。それだけ。人はそれを「便器」と呼ぶらしい。仕切りなんてない。そこに男の子達は、並んで滝を打ち付けるのだろうか。

あまりにも原始的なその「便器」に私は気を失いそうになった。中国本土を旅行した時に入った公衆トイレ以来の衝撃だ。

中国のその公衆トイレは、女性用であるにもかかわらず個室がなかった。コンクリートの床に一本の長い溝があり、その溝をまたいで用を足すシステムなのだ。前後に壁はない。つまり、前にいる人がペロンと出したお尻を、嫌でも凝視する格好になる。(和式の姿勢だと人は自然に斜め下を見るのだった。)文句を言ってばかりもいられない。後ろの人はやはり同じように嫌でも私のお尻を見ざるを得ないのだから。見苦しいものをお見せして申し訳ない気持ちで一杯になった忌まわしい過去。

しかしここは中国ではない。18世紀に産業革命を起こした大英帝国だ。あまり関係ないか。ならば、個人主義の発達した国イギリス、という切り口はどうだ。そう、ここは他人と肩が触れ合っただけで「ソーリー」を連発するイギリス人の国なのだ。しかもそこは、ポッシュで有名なHヒース内のプレイグラウンドだ。

どこの国よりもプライバシーを尊重する国民が、どうしてこんな便器に耐えられるのだろう。だって、隣の人のものが見えてしまうではないか。もしかしたら隣の水しぶきが飛んでくるかもしれない。想像するだけでおぞましい。

その後入った別の公園では、Boys用便器も独立型の白い陶器製で安心した。しかし夫に確かめると、ステンレス板仕様も一般的だという。ユーザーである当の男性はどう思っているのだろう。(男性の読者の方、イギリスの公衆トイレにおける陶器対ステンレス板の比率や使用感の違い等々、情報お待ちしております。)

男性だったら常識なのかもしれないが、男の子の親にならなければBoys用トイレに入ることも一生なかったろうし、巨大ステンレス板の便器の存在も知らなかっただろう。いやいや、壁一枚隔てたところに、未知の世界がまだまだあるものだ。


追記1.シモの話のついでと言ってはなんですが、五味太郎さんという絵本作家の代表作に、絵本史上でも類を見ない衝撃的なタイトルと内容の本があります。その名も「みんなうんち」。先日、その翻訳版をピカデリーの書店で見つけ購入しました。いろいろな動物(人間も含む)のうんちする姿がこれでもかこれでもかと登場し、私も初めは「どうかなー」と思いましたが、読めば読むほど味わい深く、今では母子のお気に入りの一冊となりました。一般的にタブーとされている話題を、こんなにラブリーな世界に創り上げる五味さんの自由な発想や技量、すごいです。ちなみに英語タイトルは「Everybody poos」ですが、息子はなぜか日英交じりで「みんなプー」と呼んでいます。

追記2.イギリスの冬は寒いです。で、今年のクリスマスはポルトガルに脱出することにしました。というわけで勝手ながら来週はお休みさせていただきます。皆さん、素敵なクリスマスと新年をお迎えください!来年もよろしくお願いいたします。

投稿者 lib : 12:31 AM | コメント (0)

December 12, 2005

イギリスの公衆トイレ

mama.gif   生まれて初めて男性用トイレに入った。といっても子供用(Boys)の話ですが。

息子のオムツがとれると、どこへ行ってもまず最初に確認するのが、トイレの場所になった。ロンドンのプレイグラウンドには大抵、子供用のトイレが設置されていて、ご丁寧に「Boys」「Girls」と別々に設けられている。(しかし大人が使おうとすると、管理人のおばさんに「大人はダメ!」と宣告され、はるか遠くの大人用トイレまで走らなければならないのが難だ。私はおばさんの目を盗んだり、子供をダミーに使いちょくちょく利用させてもらっているが。)

息子が「ちー!」または「ぴー!」と叫ぶ、もしくは言葉にならずとも、股間をおさえてもぞもぞしているのを見たら、事態は一刻の猶予も許さない。手遅れにならないうちに、トイレに誘導するのが私の役目だ。このために、事前のトイレの位置確認はかかせないのだ。

初めて息子を、Boys用公衆トイレに連れて行った日。

すべり台で遊んでいた息子が「ちー」と言うので、あわててBoys用トイレに連れて行った。今まで自分の用事の時はGirls用に入っていたのだが、その時は息子の用なのでごく自然にBoys用のドアを開けた。そんな自分の律儀さに気づきちょっとおかしかった。

中に入るとすぐに、かわいい子供サイズの便座の並ぶ個室が目に入った。個室のドアは開けたままで子供を座らせて、「ちー」。間に合った。やれやれと思ったその時だった。

私の背後をどやどやと、やや年長(声の調子からして6,7歳だろう)の男の子たちが入ってくる気配がした。大声でふざけあっている。どうも3,4人はいるらしい。入った時には気づかなかったが、どうやら私の背後にスタンディング用?の便器もあるらしい。

子供とはいえプライバシーは大切だ。というかガキの連れションなんか見たくない。水しぶきの音を聞きながら、私は息子を便器に座らせたそのままの姿勢でじっと固まり、彼らが事を終えるのを待った。

彼らが再びどやどやと出てゆくと私は息子のズボンを上げ、おもむろに後ろを振り返った。

そこで私は衝撃的なものを目にしたのだった。

(次回につづく)

投稿者 lib : 01:02 AM | コメント (0)

December 05, 2005

ロンドンママたちの人生いろいろ - マンディの巻

mama.gif  ロンドンに住んでいて有難いと思うことの一つに、チャイルドケアの充実ぶりがある。学校に通う前の子供を遊ばせることのできるプレイグループと呼ばれる場所は、私の家からでも徒歩圏に知っているだけで10はあるだろう。殆どが無料か、有料でも一回50ペンスから1ポンド程度の利用料も有難い。

私のお気に入りのプレイグループは自宅から徒歩10分の場所にある。ナイジェリア出身の女性が主催していて、彼女のフレンドリーで底抜けに明るい性格もあっていつも大盛況だ。(余談だが、「底抜けに明るいおばさん」というのは黒人に多い。日本人にもいる。でもイギリス人では見たこと無い。私が知らないだけか。「底抜けに」明るいイギリス人おばさんをご存知の方は、下のコメント欄からご一報下さい。)

このプレイグループはカウンシルフラット(公営住宅)に囲まれた立地からか、集まるママたちも複雑で謎の多い人生を送っていそうな人が多い。

マンディは、このプレイグループの主ともいえる存在だ。元夫と離婚して以来、女手ひとつで4人の子供を育てている英国版肝っ玉母さんだ。子供は17歳を筆頭に、15歳、13歳、一番下がまだ3歳。皆母親似なのでそれぞれの父親が同じかどうかは不明。余計なお世話だが。

このマンディ、基本的には3歳の末娘を遊ばせるためにプレイグループに来るのだが、謎なのは、17歳の長女も一緒にかかさず付いて来ることだ。それもオープンする9時半きっかりに入り、母娘でおもちゃを出したり場所を整えたり、スナックタイムにはキッチンに入り料理などの手伝いをし、終了する頃には部屋をかたずけ掃除をするなど、まあかいがいしく働く。きびきびしているし、あまりにも場を仕切っているので初めは雇われているスタッフかと思ったほどだ。ある日、本当のスタッフが、気が利かないとマンディに怒られていた。怒られた彼女は次の日から来なくなってしまった。(こういった職場は子供と遊んでいればいいのかと思っていたが、それなりに大変なのかも。)

そして長女だけでなく、2番目、3番目の二人の男の子もかなり頻繁に現れる。15歳の長男はパソコン室にこもってゲームをしていることが多い。次男は子供達と遊んでいる。要するに、一家総出でこのプレイグループに通勤通学(?)しているのだ。

おそらく、17歳の長女はプー太郎(今の言葉で言えばNEETか)、男の子二人は何らかの事情で不登校気味なのだろう。確かに、何もしないでぶらぶらしているよりは通う場所があった方がいいだろう。おそらく、手伝いをする代わりに大きな子供達も通わせてくれ、という事で主催者に了解をとってあるのだろう。一応「4歳以下」のための施設なのだが、この家族については暗黙の了解になっていて他のママたちも何も聞かない。イギリス人の懐の深さを感じる一例だ。

ただ、学校不登校の二人はともかく、長女は義務教育は終わっているし、なかなかてきぱきしているし、十分社会でも通用しそうだ。どうせ9時半にここに通うなら、どんな仕事でもいいから働いた方がいいのではないか。

そんなことをぼんやり思っていると、私の気持ちを見透かしたように、他のママが言った。

「家族全員が失業者でいた方が、ベネフィット(給付金)が多くもらえるでしょ。」

はあ。そういうポリシーか。確かにそんな家族政策も・・・・この国では少なくはなさそうだ。

投稿者 lib : 09:52 AM | コメント (1)

November 18, 2005

家庭内多言語のカオス  

mama.gif   私の夫は英国籍の香港チャイニーズだ。彼は日本語を話さない。私は中国語は分からない。よって、二人は英語で会話する。

さて息子には。
私は日本語で話す。(日本語を覚えて欲しいという気持ちもあるが、何より私がラクだから。)
夫は英語で話す。(母国語は広東語だが、英語の方がラクらしい。)
義理の両親は広東語で話す。(毎年、香港の夏の暑さからロンドンに脱出。半年間同居する。もちろん広東語で話すのがラク)

家族の各々が、それぞれラクな方に流れた結果、息子は日・英・中の3ヶ国語を聞いて育つことになった。恵まれているといえば恵まれた環境なのだろうが、本人にしてみればいい迷惑かもしれない。息子はそれなりに混乱するらしく少し可哀相に思う時もある。

例えば、息子は話し出すのが他の子よりかなり遅かった。だからこそ、少しずつ日本語を発する様になった頃は、それは嬉しかった。しかし、息子が正しい使用法で、絶妙のタイミングで覚えたての日本語を父親に披露したとしても、夫はぽかんとしている。皆が日本語を分かる環境だったらやんややんやの大喝采を浴びる場面であろうに。

また、イギリス生まれなのだから英語ネイティブのはずなのに、彼の英語が妙にジャパニーズイングリッシュに聞こえる時がある。なんというか、一音一音はっきり発音するのだ。

例えばリフト(エレベーター)を見て、「リフト、のる」と言う。それがどうしても「LIFT」ではなく「LI・FU・TO」と聞こえる。それどころか「RIFUTO」かもしれない。アニメの「Bob the Builder」の「BOB」は「BOBU」と「ブ」までしっかりと発音。これって、私がそう言っているってこと?それに気づいた時は少々ショックだった。

それだけではない。チャイニーズアクセントが混じる単語もある。中国にももちろん外来語がある。広東語の場合、外来語の語尾がS-で終わる場合、「シー」と発音する様なのだが、なぜか息子もこの法則をしっかり遵守しているのだ。DNAのなせる業か。例えば、「FISH」は「フィシー」、「BUS」は「バーシー」、アイスクリームが食べたい場合は・・・はい、もうお分かりですね、「アイシー!アイシー!」と元気に訴えてくれる。

日本語はといえば、外国人のようなイントネーションで話す。

こうなったら、チャイニーズ&ジャパニーズアクセントの英語と、日本びいきの外国人が日本語学校で習った様な日本語と、ジャパニーズアクセントの中国語(夫によると、金城武の中国語はこれなんだそうだ)をあやつる怪しい国際人を目指してもらいたいものである。

来年1月からはナーサリー(幼稚園)が始まる。家庭外の社会生活に初めて出会う彼が、日本国内で英語を勉強して始めて海外に出た人が、人の言っていることが分からない、自分の言う事が通じない、という事実に愕然とするのと同じような状況に直面するのではないかと、少々不安なこの頃である。

(あ、ロンドン全体が人種の坩堝だった。どうせ先生も子供も、それぞれのお国のアクセントで話すか。)

投稿者 lib : 11:42 PM | コメント (0)

November 04, 2005

そして退院

mama.gif    病院には結局2泊した。病院側では一泊で退院して欲しかったらしいが、ドクターが子供の目の検診に回ってきたとき、息子がてこでも目を開かなかったので、「仕方ない、明日もう一度挑戦しましょう」ということでもう一泊できることになったのだ。

初めは一泊や二泊で退院させられてしまって大丈夫だろうか、と心配だったが、一日目にはもう、早めに退院した方がいいかな・・という気になってきた。というのも、NHSの病院では子供が生まれた瞬間から、母親の側に寝かされる。日本でいう「母子同室」というやつだ。日本では母と子のふれあい、と言う事で病院のウリにもなっているようだが、こちらでは、つまり「自分の子供の面倒は自分で見ろ」という事だ。

日本にいる頃、出産した友人のお見舞いに行くと、「新生児室」という部屋の中に生まれたての赤ちゃんがずらりと並んでいた。無菌室のようなものなのかと思っていたが、あれは出産を終えた母親を休ませるために存在する部屋だったのだ。こちらには、もちろんそんなものはない。疲れ切った体で、出産後の夜も眠れず、(産後の入院その2参照)慣れない手つきでお乳をやったりおむつを替えたりしながら、日本の新生児室を思い、恨めしく感じたりもした。

他の赤ちゃんが泣けば自分の眠りが妨げられるし、自分の子供が泣けば周囲に気を遣う。結局、自分で何もかもやらなければならないのなら、家にいる方が気がラクなのではないか、とも思った。

早く退院したいと願うまでも無く、2日目の昼過ぎ、文字通り「追われる様に」退院した。次の人がベッドを待っているからとナースに宣告され、一刻を争うようにあたふたと身支度をして病院を後にした。

退院後はミッドワイフ(助産婦)が10日間、自宅を訪問、指導してくれるので安心だと言われていたが、結局、様々な理由のため来たのは3日だけだった。まあ、イギリス式の、「朝9時から夕方5時の何時かに来ます」という約束なので、10日間も、いつ来るかとどきどきしながら過ごすよりはその方が良かったが。こちらでは家具のデリバリーでも電気製品の修理でもこういった時間約束が普通だ。実際これをやられると、うかうかトイレにも行けず、非常に心臓に悪い。ちょっとドアを開けるのが遅れようものなら「留守だ。仕事しなくてよくてラッキー」とばかりに帰ってしまう輩が多いのだから。(医療関係者はそんな事ないと思いますが。)

もうひとつ。息子は生まれた時、産湯には入らず体を拭かれていただけだった。入院1日目、ナースに「お風呂の入れ方を教えてもらえますか」と頼むと、「今日は入れなくていいわよ。」という返事が笑顔とともに戻ってきた。2日目、「今日は入れますよね?」と聞くと、「まだ大丈夫よ」とさらなる笑顔で返された。生後3日目の退院した夜は、私も疲れきっていたしお風呂に入れるのが怖かったしで、また入れなかった。・・・・・哀れ我が子は生後4日目にして、やっと産湯につかれたのだった。ごめん、息子よ。今は毎日入れてます、念のため。

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以上が私の出産ドタバタ記です。初めは出産エピソードは2,3回でさっくり流そうと思ったのですが、書き始めるとあれもこれもと書きたいことが次々と出てきて、10話以上続いてしまいました。改めて、出産が私の人生の中でいかに大きなイベントだったかを感じます。

書いたことは全て事実とはいえ、イギリス医療のイメージが悪くならないといいなと思っています。基本的にはスタッフは皆、協力的でいい人でした。結局は病院の人手不足、ベッド数の不足などの問題なのかと思います。現に、15年ほど前に出産した義姉は、1週間入院できたと言っていました。

良かれ悪しかれ、NHSのサービスは出産サービスを最小限にデザインしたようなもので、それで大多数の母親も子供も大丈夫なのです。ということは、日本の出産医療が少々過剰サービス気味なのか?との疑問も湧いてきます。また、私と子供は幸運にも何も問題なく出産を終わらせることができましたが、なにか問題があったり、相談したりした場合は、こちらのスタッフは非常に誠意を持って対応してくれるし、心のケアに重きを置いている印象が残りました。

なにはともあれ、息子は先日3歳の誕生日を迎えました。この3年間、休み無く育児のドタバタは続き、新聞もニュースも見る余裕がなく、すっかり世間に疎くなりました。もちろん自分の身なりに構っている余裕などありません。人は、おばさんに生まれるのではない、おばさんになるのでした。

息子はこの3年間で身長は2倍近く、体重は約3倍になりました。毎日の家事、育児に追われ時間が矢のように過ぎましたが、ずいぶんとしっかりしてきた彼の体を見て、ああこれが、私がこの3年間やってきたことなんだと感じます。母親は報われない稼業だと言う人もいますが、どっこい、頑張った事の結果がこれほどよく目に見える仕事はなかなか無いのではないでしょうか。私が毎日、髪を振り乱しながら息子にご飯を食べさせたり、遊びに連れて行ったり、本を読んでやったりしたひとつひとつの事が、彼の血や肉や、言葉となったのですから。

次回からは、ブログらしく日々経験したことや感じたことを綴っていきたいと思います。これからもどうぞよろしくお願いします。

投稿者 lib : 12:20 AM | コメント (2)

October 20, 2005

帝王切開の園

mama.gif

入院初日の朝を迎えると、他の人達と話をする機会があった。大仕事を終えて、それぞれのLittle one を抱き、皆、幸せで誇らしげな表情だ。

まずは同室の人。
「おめでとう!私はおとといこの子を産んだけど帝王切開だったから一週間入院するのよ。あなたもやっぱり帝王切開?」

「いいえ。自然分娩だったの。」

「Oh!Well done!!」

へへへ。褒められていい気分。

次に、朝食をとろうと廊下に出ると、やはり昨日産んだばかりという人が話しかけてきた。

「帝王切開だったから痛くて・・・歩くのも一苦労よ。私は途中まで自然分娩のつもりだったんだけど、Babyが5kgもあったから出てこなくて急遽、帝王切開になったのよ。あなたも帝王切開?」

「自然分娩だけど・・・」

「Brilliant!」

ブリリアントはいいのだが、胎児が5kgだったというのはいったい。一瞬、聞き違いかと思ったが、いくら私の英語力でも数字は間違えないだろう。そんなことが可能なのか。大体、そんなに育ってしまうまで、あんたも医者も何をしていたんだ・・・・と気が動転したが、Congratulationとだけ言っておいた。いやいや、無事に生まれて本当に良かった。

朝食をとるカンティーンには、既に何人かの人たちが、やはり出産話に花を咲かせていた。空いている席に座ると、その中のひとりが話しかけてきた。

「帝王切開の後って、きついわよねー。あなたは大丈夫?」

またもや、自然分娩だったと答えると、その場の一同が一斉に、はっとしたように私の方を向き、驚きと羨望の入り混じった表情で、

「すばらしい!」
「よく頑張ったわね!」

などと口々に褒め称えてくれた。更に、どのペインリリーフを使用したのか聞かれたので何も使わなかったと言うと、「はあっ」というため息とともに、彼らは、もはや神を見るような瞳で私を見つめた。

確かに私は頑張ったが、そんなに特別なことだったのか。イギリスでは帝王切開する人が多いとは聞いていたが、まさかこれほどとは。母体も胎児も自然分娩できる状態にあっても、出産時の痛みをおそれて、あえて帝王切開を選ぶ母親が多いと聞く。それに、出産の日時をあらかじめ決められるので日常生活に支障をきたさず便利でもある。病院の方でも、予定がたてやすいので希望を受け入れる、と何かで読んだことがある。確か記事のタイトルは、”Too posh to push"(!)だった。

複雑な気持ちで病室に戻ると、一晩明けてダンナがお見舞いに来た。息子を抱き、
“Welcome to the world” と話しかけている姿を見て、またジーンとする。

昨晩の話で盛り上がっていると、ナースが部屋に入ってきた。

「悪いけど、大部屋に移ってもらえるかしら。昨日は他の部屋が空いてなかったから入ってもらったけど、実はここ、帝王切開した人の病棟だから・・・。」

そりゃそうっすよね。
どうもお邪魔しました。

投稿者 lib : 10:43 PM | コメント (0)

September 29, 2005

産後の入院 その2 出産初夜

mama.gif    しばらく授乳すると、息子は眠りについた。

やれやれと、新生児用のベッドに戻そうとすると、私の手を離れた途端、大きな声で泣き出した。
あわてて再び抱き寄せると、泣き止んだ。

抱いたまま寝るしかないらしい。とりあえず横になろうとベッドの、角度を「元に戻す」ボタンを押した。

動かない。

何度押しても、ベッドは水平に戻ってくれなかった。試しに逆のボタンを押してみると、なぜかこちらは大丈夫でベッドの角度は更に急になってしまった。あわててボタンから指を離した。

さて、どうしよう。ナースコールのボタンを押した。

先ほどの中国系のナースがにこにこしながら、どうしたの?と言って入って来た。

訳を話すと、彼女もボタンを押したり、ベッドを押してみたりと悪戦苦闘してくれたが、やはりうんともすんとも言わない。彼女もやはり逆のボタンを押してベッドは更に急角度に・・・。

「・・・・・もういいです・・・・。今夜はこのまま寝ます・・・・・」

と言うわけで、子供を胸に抱いたまま、上半身を45度起こした姿勢で過ごした私の出産後初夜だった。うつらうつらしながら、日本に帰る時の飛行機の中途半端なリクライニングを思い出した。かと思えば、フラッシュバックのように出産の時の風景が蘇ったりもした。たまに息子がぐずったり、おとなりさんの赤ちゃんが泣いたりした。結局は、ベッドがどうであろうが、興奮で眠れなかったかもしれない。

まんじりともせず夜を明かした私は、病室の窓がしらじらと明るくなるのを見ながら改めて感動していた。

ミッドワイフが使えなかろうが、病院の機器が古かろうが、病院のメシがまずかろうが、今、私の腕の中で奇跡の様にすやすやと眠っている我が子。

生まれてくれて、本当にありがとう。

投稿者 lib : 05:22 PM | コメント (0)

September 11, 2005

産後の入院 その1

mama.gif  無事に出産が終わり、私はシャワーを浴びると、ジュリに病室に案内された。

「ちょうど二人部屋が空いているからそこに入れてあげるわ。大部屋だといつも誰かの赤ちゃんが泣いているし、落ち着かないからね。」本当にいい人だ。

病室勤務のナースとバトンタッチし、「じゃあこれで。私は夜勤だから明日の朝は会わないかもしれないけど・・・」と言い部屋を去ろうとするジュリに、私は百万回でも頭を下げたい気分だった。この人のおかげで母子共に元気に出産ができたのだ。

今度の担当のナースは中国系の人だった。と、だしぬけに「あなたは母乳?それとも粉ミルク?」と聞かれた。

また「あなた次第」だな、と思った。私は今まで、母乳が出るなら母乳で育て、粉ミルクは出ない場合や補足のために使うものだと思っていたが、この国ではどちらで育てるかは、母親が最初に「決定」するものらしい。そういえば病院のあちらこちらに「母乳で育てましょう」というキャッチフレーズのポスターやリーフレットを見かけたが、母乳が出るにも関わらず粉ミルク育児を選択する人が多いということだろうか。

とりあえず「母乳で育てます」と答えた。

赤ん坊は隣の透明なプラスティックのケースの中ですやすやと寝むっている。時刻は夜の12時頃だっただろう。そういえば昨晩は陣痛のため、殆ど寝られなかった。やれやれ、これで少しゆっくりできる。私もベッドに横たわった。

が。

私の試練はまだ終わらなかった。

ほどなくして赤ん坊が泣き出した。おろおろしていると、先ほどのナースがやってきて「私が見ていてあげるから、少し休みなさい。」と赤ん坊を抱き上げて、病室の外に連れ出してくれた。彼女が天使に見えた。

ほっとして、再びベッドに横たわる。

が。

世間はそれほど甘くはなかった。

うとうとしかけた頃、ナースが赤ん坊を連れて戻ってきた。少しぐずっているようだ。「お腹がすいているわ。こればっかりはマミーじゃないとできないから。」

しまった。さっき、「粉ミルクで」と答えておけば、そのまま面倒をみてくれていたのだろうか。しかし後悔してももう遅い。私は慣れない手つきで、赤ん坊に授乳し始めた。

ナースは部屋を出て行ってしまった。赤ん坊は一応おっぱいをくわえているが、母乳が出ているのか出ていないのかも分からないし、どうもコツが分からない。ふと見ると、ベッドの横にいくつのボタンのついたボードがついている。

これでベッドの上半分の角度を調節できるらしい。試しにボタンを押すと、グイーンと低い音を出しながら、ベッドが私の上半身と共にゆっくりと持ち上がった。

45度の位置で止めて再び授乳してみると、なかなか快適でいい感じだ。なんだ、ヴィクトリアンどころか、割と近代的じゃない。乳飲み子におっぱいをあげる自分の図に酔いながら、私は「母」になった実感を味わった。

が。

誤算だった。この後も、試練は続くのであった。(続く)

投稿者 lib : 02:33 PM | コメント (0)

August 26, 2005

出産も「あなた次第」?その3 涙のご対面

mama.gif ジュリのリードは私を励ましつつ、いきむタイミングを的確に指示してくれる素晴らしいものだったが、それでも私はどうしても最後の一押しができなかった。なかなか出てこない赤ちゃん。事態は予断を許さないものになってきた。

後から聞いた事だが、人工的に破水させた後に胎児がうんちをしてしまったらしい。その老廃物を胎児が鼻や口から吸い込んで気管に詰まらせると、窒息したり、重い後遺症が残ったりする可能性があるというのだ。そのため、一刻も早く外に出してあげることが必要だった。

ジュリは夫に言った。「念のため、最新式の機器が整った部屋に移動します。」「えっ?他の部屋に移動?そ、その部屋はどのくらい遠くにあるの?」例によって夫がとんちんかんな質問をしている。「30秒で着くわよ・・・」

ジュリが言い終わるか終わらないうちに、またしてもドアが大きく開き、ガラガラと車椅子が運ばれてきた。私はそれに移された。ジュリは「大丈夫よ。私がついてるわ。」と私を励ましながら、車椅子を押し全速力で病棟の廊下を駆け抜けた。その後に続くのは機器をかかえ、やはり全速力で移動するエマージェンシー隊ご一行。

たまたま廊下に居合わせた人たちは、何事が起こったかと驚いた表情で見ている。注目の先は、大移動隊の先頭にいるこの私だ。人々の驚いた顔が、魚眼レンズを通して見たように次々と私の上を通り抜けていく。

「あああ、なんだかドラマみたい・・・」 朦朧としながら性懲りもなくくだらない事を思う私。ドラマはハッピーエンドで終わるのか。それとも。

「最新式の機器のある部屋」に着いた。ジュリの言った通り、確かに近かった。エマージェンシー隊の面々は、すばやく機器にスイッチを入れたりコードをつないだりしている。

しかし・・・・・。
「ス、スイッチはどこ?!」「どうして電気が入らないのかしら!?おかしいわねえ!」なんだか皆あたふたしている。

私の脳裏に、マドンナ様の「イギリスの病院はヴィクトリアン、ヴィクトリアン・・・・」という囁き声がこだました。部屋はだだっ広かったが、確かに機器は年季が入っている。しかもスタッフが機器の扱いに慣れていないような・・・。しかし、今から日本やアメリカに産みに帰るわけにはいかない。皆を信頼して、どうしてもここで産まなくてはならないのだ。

ジュリが再び私をリードし始めた。「いいわよ!その調子よ!やり方は合っているからもう少し強く押してみて!」機器もどうやら電気が入ったらしい。ほっとしたのもつかの間、それを見た、他のミッドワイフが言った。

「赤ちゃんが弱ってきている・・・・」

「もう時間がないわ!この調子でもっと強く押して!」ジュリが足の方から叫ぶ。

その直後、仰向けになっている私の顔の上に、夫と付き添っていたくれた友人の顔が突然かぶさるように現れ、「お願い、押してーーー!」、「プリーーズーーーーーッ!」とすごい形相で同時に叫ばれた。

戦友ともいえる、この3人からの必死の叫びが、聞いた。

弱くて高齢出産でしょうもないことばかり思いついてしまう私も流石にただ事ではない事を悟った。私は最後の力をふりしぼり、力の限り押した。

産まれた!赤ちゃんが外に出たとたん、不思議なほどそれまでの痛みがすーっと消えてなくなった。10時ちょっと前だった。

へその緒は夫に切らせてもらえる、と聞いていたが、そんな余裕はなかったのだろう。赤ちゃんを取り上げるとすばやく、若いミッドワイフが受け取り、鼻の穴や口を吸引した。そして、産声が上がった。

赤ちゃんの身体をバスタオルで拭いてくれた後、私に手渡す。頭の形がダンナにそっくりだ。先ほどまでの後ろ向きな気持ちはどこへやら、私は誇らしい気持ちでいっぱいだった。ジュリも、「本当によくやったわ!素晴らしいわ!」と褒めてくれる。気がつけばペインリリーフも一切使わず、完全なナチュラルバースをやり遂げた。

スタッフがあれこれと後処理をしている間、ジュリは紅茶とトーストまで出してくれた。

やれやれとベッドの上で紅茶をすする私。

その時だった。カップごと凍りつきそうになる一言が聞こえてきたのは。

「・・・・で、今夜は泊まっていく?それとも帰る?・・・・あなた次第だけど。」


今度ばかりは引き下がるわけにいかない。泊めてくれっつーの!!!


投稿者 lib : 10:37 PM | コメント (3)

August 22, 2005

出産も「あなた次第」?2 怒涛のエマージェンシー・コールLiBホームページへ

mama.gif いよいよ本番だ。夫がミッドワイフに、「あと何時間位で出産できるだろうか?」と聞いたが、彼女は「そんなの私にはわからないわよ。産むのは彼女なんだしぃ~」と気のない返事だった。この時から嫌な予感はしたが、彼女は案の定あまり協力的でなく、いきむタイミングを教えてくれるでもなく、苦しむ私を励ますでもなく、壁の側に立って「まだかしらね~」などと言いながら人ごとのように、ただ傍観しているような人だった。

いよいよ、いつ生まれてもいいという段階になっても、赤ん坊はなかなか出てこなかった。私がうまくいきめなかったのだ。

「なんで出ないのかしら・・・。彼女、ちょっと弱いんじゃない?」

それまでにもいろいろ傷つくことを言われたが、この一言は痛さと疲れで消耗しきっている私にとどめの一撃を見舞った。確かに体力がある方ではないし、40にもう少しで手が届こうというのに、子供を産もうなんて考えた私がいけなかったんだ・・・と自分を責める気分にまでなってしまった。ミッドワイフの嫌気のさした表情と、私の後ろ向きな気持ち、そして何もできずにおろおろする夫で分娩室内は前にも後ろにも進まない、煮詰まった空気が充満していた。

病院入りから3時間が経過した頃。ミッドワイフがマンネリ化した空気を打ち破るように言った。

「そこまで見えてるんだけどねえ・・・破水させようか?」

そういえば痛さで忘れていたが、破水というやつがまだだった。未経験なのでそれがどんなものかもよくわからなかったが。ミッドワイフは、何か針のようなもので、ぷちっと胎児の入っている袋を破ったようだった。

その時だった。

ミッドワイフが何かを早口で叫び、一気に室内に緊迫感が走った。私自身は疲労と痛みで頭が朦朧とし、もはや事情がよく飲み込めない状態になっていたが、何か大変なことが起こったらしい、ということだけはわかった。

「早く!エマージェンシーボタンを押して!」ミッドワイフが夫に指示している。

「えっ。ど、どれ?どのボタン?」

夫は目を白黒させながら、赤のボタンだ青のボタンだと、私の頭上でパニクっている。

「緑のボタンよーーーーーーっ!」

ミッドワイフが雄叫びが部屋中にこだまし、夫も正しいボタンを押せたらしい。

僅かその数秒後だったような気がする。ドアがバタンと大きく開き、エマージェンシー隊の数人が手に手に機器を抱えてどどどーーっと部屋に押し寄せて来た。

その中のチーフらしい女性が私に駆け寄った。「私はミッドワイフのジェリよ!ここから私が引き継ぎます!」

こんな緊急時でも律儀に自己紹介するものらしい。変なことに関心しながらも、私は自己紹介を返す余裕があるはずもなく、「へええ・・・」と力のない声を発するのが精一杯。

「さあ、力いっぱいプッシュして!1,2,3!」

ジュリが私をリードし始めた。その途端、彼女は今までのミッドワイフとは全然違うことに私は気づいた。リードの仕方がまるで違う。「この人となら産めるかも・・・」そう思った。そして、何か大変なことが勃発したらしいにもかかわらず、「これで助かった。」と息もたえだえな私は確信したのである。(続く)

投稿者 lib : 06:57 PM | コメント (0)

August 04, 2005

出産も「あなた次第」?その1 LiBホームページへ

mama.gif 陣痛が始まったのは予定日を3日過ぎた夜だった。夜が明けるのを待ち、早朝6時に夫に病院に送ってもらった。

マタニティワードのドアを叩くと、まず「ペインリリーフ使う?使わない?」と聞かれた。

ペインリリーフと言っても、テンス、笑気ガス、硬膜外麻酔・・・など選択の幅も広い。使うも使わないも、どの方法を選ぶかも、自分次第だ。母親学級でも、このペインリリーフの説明が大半だったのではないかと思われるほど、イギリスの出産は「いかにして痛みから逃れるか」が大きな課題らしい。

「痛い思いをしてこそ母親」のような精神論はむしろ嫌いな方だが、私は一応使わないでトライしてみよう、と思っていた。なぜ、と聞かれるとこれといった理由もなかったのだが、何となく皆が痛い、痛いというので痛みへの好奇心というか挑戦というか・・・。相変わらず意味のないチャレンジをしたがる私である。そのために日本の出産本でスースー、ハーハーの呼吸法も練習したのだ。結局このスースー、ハーハーはよく分からなかったが、まあその時になれば何とかなるだろう、と高をくくっていた。「まず使わないで頑張ってみて、もしどうしても我慢できなかったらお願いします」と伝えた。

ベッドに横たわると、黒人のミッドワイフ(助産婦)が「ハロー。私はミッドワイフの○○よ」と自己紹介して来た。明るくて感じのよい人だった。無事病院のベッドについた安心感からか、なぜか痛みも収まった気がした。私も満面の笑顔で自己紹介をした。

彼女が子宮口の大きさを検査して言った。「う~ん、まだ7,8時間は産まれないわね。その間、ここに居てもいいけど、落着かないと思うわよ・・・。家に一度帰った方が居心地いいんじゃないかしら。もちろん、あなた次第だけど。」

妊娠して以来、幾度となく言われてきた「あなた次第」だが、今回は言葉の裏に「帰って欲しい」という願いをひしひしと感じた。なにしろここは、人種の坩堝、ロンドンのど真ん中の病院。ただでさえ人口が密集している上に、子供をがんがん産む移民も多く、なにしろ混んでいるのだ。

ベッドも人手も不足しているのだろう。私としては病院のベッドでも十分快適だったのだが、なんとなくミッドワイフが気の毒になり「じゃあ、帰ります」と言ってしまった。「そうよね!それがいいわよ。大体あなた、本当に生まれそうな人は、そんなに、にこにこしていられないわよ!」と言うミッドワイフの言葉に笑う余裕さえあった。

彼女の言葉を本当に理解したのは、それから12時間後だった。

次は追い返されないようにと、ぎりぎりまで家で頑張り、再び夫に病院に運び込まれたのは、夕方の6時を過ぎた頃だった。今度は車の中であまりの痛さに泣いていた。涙をぼろぼろ流しながら、再び分娩室のベッドに横たわると、朝とは違うミッドワイフが「ハロー。ミッドワイフの××よ。」自己紹介してきた。この人も黒人だった。

今度は自己紹介を返す場合ではなかった。言葉にならない「ううう・・・・」という意味不明のうめき声をあげながら涙をぼろぼろ流す私を見て、「彼女、英語わからないの?」と聞かれる始末だった。 (続く)

投稿者 lib : 06:43 PM | コメント (0)

July 22, 2005

見せるか、隠すか LiBホームページへ

mama.gif 出産予定日の2ヶ月位前から、病院で開かれる母親学級に参加した。同じほどの大きさのお腹をかかえた母親達が、一堂に会するのは面白い光景だった。が、やはりロンドン、集まった母親たちの人種は多様で、特にただでさえ大柄なイギリス人の妊娠8ヶ月というのはそれはそれは貫禄があった。

特に私の目をとらえて離さなかったのは、チビTシャツを着て、妊娠線ばりばりのはちきれそうなお腹を誇らしげに丸出ししている妊婦だった。イギリス人は彼女の様に、大きなお腹を出して歩いている人が多い。マタニティウエアと言えばチェックのジャンパースカートと思い込んでいたが、彼女の様に、大きなお腹をあえて「見せる」マタニティファッションも面白いと思った。

ずらりと居並ぶ、妊婦達をながめながら、金髪のお母さんのお腹にはやはり金髪の赤ちゃんが眠っているのであろう、黒人のお母さんのお腹には黒くて元気な赤ちゃんが眠っているのだろう、と想像すると感慨深いものがあった。(他から見れば私も、『あの蒙古人からは、同じように平べったい顔の赤ん坊が出てくるのであろう』と観察されていたかもしれないが)
イスラム系のお母さんは夏の暑さにもかかわらず、いつも通り頭にスカーフを巻いていた。お腹の赤ちゃんもスカーフを・・・巻いてはいないだろう。

私がイギリスへ来て間もない頃だったので、かれこれ6〜7年前だと思うが、まだ「スパイスガールズ」がTVで歌を歌っていた頃。メンバー4人の内、2人までが(一人はブルックリンを宿していたヴィクトリアだった)大きなお腹で歌っていたのを見て、目からうろこが落ちた事がある。さすがに派手なダンスはなく、しっとりしたバラードだったが。

この国ではニュースキャスターやお天気お姉さんも臨月かと思われるようなお腹になっても、ごく自然にTV出演している。

日本では、芸能人が妊娠すると、お腹が大きくなる前にすうっとブラウン管から消えてしまう。お腹の大きな期間は人前に出ないのだ。イギリスに来てから、何だかこれがとても不自然に感じるようになった。

そして出産後は、何事もなかった様に再び視聴者の前に現れ、「子供を産んだとは思えない体型」と絶賛されつつ復帰するのがお約束。「子供を産んだとは思えない体型」が褒め言葉であるなら、「子供を産んだ後の体型」、ひいては「子供をこれから産む体型」は見苦しいものなのだろうか。

何事もなく、子供は生まれないのに。観る人も「生」を実感できる、貴重な期間に、まるで隠遁することを強いられるかのような事が業界の慣例だとしたら、悲しい事だ。

仰々しい妊娠会見や復帰会見などをするよりも、TVを見ている人が「あれ、この人妊娠しているんだね」とある日ふと気づく位に、自然に仕事を続けてもいいような気がする。女優や歌手はイメージ先行の商売なので難しいかもしれないが、アナウンサーなどは大きなお腹で、生き生きと働く姿を見せてもいいのではないか。ブラウン管のこちら側の世界では、それが当たり前なのだ。影響力の大きいメディアだからこそ、子供を持とうか迷っている女性を励ますことにもなると思う。

肌の色やファッションは違っても、出産を2ヵ月後に控えた妊婦達は、皆一様に幸せそうな顔をしていた。こんな幸せな表情の人たちを、なぜ日本のTVは排除しようとするのだろう。

投稿者 lib : 05:53 PM | コメント (0)

June 30, 2005

妊娠は、おいしい  LiBホームページへ

mama.gif  私は出産の数ヶ月前まで会社勤めをしていたのだが、念のため初期は妊娠した事を公にしていなかった。幸いなことに、つわりも一切なかったし、見た目は普段と全然かわらなかっただろう。

いわゆる安定期というのは妊娠16週目くらいからのことを言うらしいが、その頃になっても私のおなかは全然目立たなかった。そうなると、記録に挑戦してみたくなった。いつまで妊娠した事を会社の人に隠していられるか。もしずっとおなかが目立たないままだったら、ある日突然「生まれました~」と言って皆を驚かしたりして。

・・・が、5ヶ月目を過ぎた頃、さすがに少しずつおなかが大きくなってきた。手持ちの服がきつくなってくる。そろそろマタニティウエアを買わないといけないかな、と思い始めた。

マタニティウエアを着てみた。ちょっと妊婦っぽくなったか。しかし周りは特に私の変化に気づく様子もなく、いつも通り黙々と仕事をしている。なんだか言わないのもつらくなってきた。誰かが気づいてくれたらいいのに。いや、もしかすると、皆とっくに気づいているのに知らないふりをしているだけかも?騙されているのは私の方かも、という疑念さえ沸き起こってきた。

そんな被害妄想で頭が一杯になりつつも、おなかは日に日に大きくなってくる。なんだか妊娠した事を誰にも言えないティーンエイジャーのような気持ちになってしまった。で、ばかばかしくなって上司に白状、いや報告した。

びっくりしたのが社内に「いやー、実は僕知ってましたよ」という人がいたことだった。彼は私のプライベートの友達の友達なので噂が入ってきたとの事だった。恐るべき狭きロンドンの日本人社会。彼経由で、「オフレコだけど」と実は社内の半分くらいの人は知っていたらしい。やはり私の妄想は半分当たっていた?

しかし、晴れて「妊婦」とカミングアウトすると、得することも多かった。まず、人々が優しくなった。同じ会社にいても今まであまり言葉を交わした事がなかった人まで体調を気遣ってくれる。

おなかが目立ってきて、一目で妊婦と認識される様になると、地下鉄やバスでは必ず席を譲ってもらえた。意外だったのは、いつも行くスーパーの駐車場の子供連れ専用のスペースにMoms to beも停められることだった。ラッキー!と素直に特権を行使した。

ラッキーと言えば、妊娠中は体調もとても良かった。私の場合、冷え性で肩こりがひどいのだが、妊娠中は体温が上がって血の巡りが良くなるのか、こうした不調が嘘の様に消えた。確かに妊婦はいつも暑がっているイメージがある。これは嬉しい副産物だった。

定期健診も問題なしだった。日本では、太り過ぎないようにとか、塩分の取りすぎに注意だとか妊娠中の食生活をあれこれ指導されるらしいが、そういった事は一切言われなかった。物足りなかったので自分の方から聞いてみると、「野菜やフルーツを沢山とるように」とだけ言われた。妊娠前からすでに臨月のような体型だったり、妊娠してもタバコやドラッグをやめられない人が、ざらにいそうなイギリスでは私みたいな妊婦でも(年齢以外は)優等生なのかもしれない。

ちなみに、定期健診はGPに通った。病院に通うか、GPに通うかは選んだ病院によって違うらしい。私の場合はスキャンと母親学級の他には初診以来、一度も病院で診てもらうことはなかった。そして、結局内診も一度もなかった。

おなかの子供が動き始めると、ああ、人間は誰もみな始めはおなかの中にいたんだなあ、と当たり前のことに驚愕するようになった。街を歩いている、あの人もこの人も、皆はじめはおなかの中に裸で眠っていたのだ。人間は、動物だったのだ。

投稿者 lib : 04:44 PM | コメント (0)

June 15, 2005

いざ!NHS   LiBホームページへ

mama.gif 出産予定の病院からレターが届いた。初診とスキャンのために来院するように、とある。

今までにも友達の赤ちゃんのスキャン写真を何度か見たことがある。妊娠12週目位でも、頭や胴体や背骨が写っていて、きちんと人間の形をしているのに驚愕した覚えがあるが、いよいよ来たぞっという感じだ。弾む気持ちでレターを読んでいくと、そこには

「スキャンの1時間前には2パイントの液体を飲み膀胱を満タンにし、スキャンが終わるまで、膀胱は空にしないでください。」

と書いてあった。2パイント飲んでトイレに行くな、って、それって拷問じゃ・・・。

言われるがままに、当日たぷたぷのお腹をかかえスキャン室を訪れた。待合室で、他の人も同じように大量の水を飲んで来たのだろうか、と見渡すと、皆、余裕で雑誌など読んでいる。

ぐるりと一周して隣に目をやると、なんと座っていたのはロンドン市長のケン・リビングストンだった。妊娠した彼女の付き添いで来たらしい。きちんと膝をあわせ、ぴんと背筋をのばし、無言で膝の上の本に視線を落としている。本に熱中していたのか、周りに気づかれたくなかったのかは分からないが、名前を呼ばれるまで一度も顔を上げなかった。その姿は緊張している優等生の小学生の様で、なんだかとても微笑ましかった。(翌日のケン・リビングストンの彼女妊娠のニュースを、イブニングスタンダードに漏らしたのは私です、て、うそです)

他人のおめでたに和みながらも粗相もせず無事スキャンを終え、同じビルの地階の産婦人科検診に移動する。尿を採取し(こんな事もあろうかと、スキャンの後にトイレに駆け込みたい気持ちをぐっとおさえたもんね。)助産婦に見せると、限りなく透明に近いそれを見て、開口一番

「あなた、水を大量に飲んだの!?」

と叫ばれた。だって、それ、あなた達が・・・・・・。

こんな不条理にも気をとりなおして、問診に答える。家族の病歴や、生活習慣について聞かれるのは日本と同じだろう。

「タバコは吸う?」
「吸いません」

「アルコールは?」
「はあ・・・ちょっとだけ。」

助産婦の瞳の奥がきらりと光る。
「ちょっとだけって、どれくらい?」
「えっとお・・・。たまにビール半パイント位・・・・」

「・・・・・」
次の瞬間、診察室中に響き渡る大爆笑。隣にいた研修中の学生まで笑っている。
「あなたね、それ、飲むって言わないわよ。ソーシャライズね、ソーシャライズ!」

ソーシャライズっていうんですか・・・。「お付き合い程度」ってところかな。確かに、ここは水2パイントどころか、ビール5パイント位平気でいけるツワモノがごろごろしてるイギリスだった、私が馬鹿でした、はい。

次は血液検査。HIV検査や、胎児のダウン症の可能性を調べる検査も一緒に出来るとのことで、これらは自分の希望次第。どうしたいか、ひとつひとつ聞かれた。せっかくなので、全部調べてもらうことにした。

この血液検査をはじめ、イギリスでの妊娠から出産は、「あなた次第」と言われる場面が多かった。日本で出産したことがないので比較はできないが、少なくとも病気の時は、お医者さん主導型で患者の希望を聞かれることがあまりなかったような気がする。やはり、こちらの方がインフォームド・コンセントが普及しているということか。いいことなのだと思うが、患者であるこちら側に決定権を持たされるということは責任も感じる。「どうする?」と聞かれた時にすぐに答えられるように、ある程度の事前勉強も必要だな、と実感した。

ちなみに無料が前提のNHSも、スキャン写真の持ち帰りは有料だった。たしか2ポンド位だったか。モニターで見るのは医療行為だが、記念写真?はオプショナルサービス、または嗜好品といったところなのか。ちょっと笑えた。

技師の人が「今、指をくわえていい場面だわ・・あ、撮り損ねた、もう一度」などと言いながら、プリクラのノリで何度も撮りなおしてくれた。お陰さまでいいショット?が撮れました。

投稿者 lib : 10:57 PM | コメント (0)

May 24, 2005

「英国病院はヴィクトリアン?」  LiBホームページへ

mama.gif 妊娠した事を親しい友人に告げると、「日本で里帰り出産するの?」と聞かれることがあった。

そういえば、かのマドンナは長男ロッコ君の出産のために、「イギリスの病院は設備もヴィクトリアンだから」と言い捨てアメリカに里帰りしたという。マドンナ様に「ヴィクトリアン=時代遅れ」との烙印を押された大英帝国ホスピタル。確かに思い当たる節もあるだけに、ちょっとおっかない気もしたが、私はイギリスで産もう、と自然に決めていた。

出産は病気ではないし、何よりも夫のそばで産むのがスジじゃないか、と思った。一番の関係者である夫の手の届かないところで産むのはなんだか申し訳ないように感じた。

2番目に、良くも悪くも、生まれてくる子供はイギリス社会にどっぷり浸かって育つことになる。どの道これから、イギリスのシステムのお世話になるのなら、誕生時からそのシステムの中で生まれてくるのが、これまたスジのような気がした。

イギリスで産むと決まったら、次はNHS(国立病院)か、プライベート(私立病院)かの選択だ。

イギリスのプライベート医療は、とにかくお高い。産婦人科も例外ではない。ヴィクトリア・ベッカムなど英国セレブ御用達の、某有名プライベート病院で産めば最低で総額8000ポンド(約160万円)はかかると聞いた。正常に自然分娩し、2、3日入院した場合でこの額だ。もし緊急の手術が必要になったり入院日数が長引いた場合は、もちろん支払い額がどんどん膨れ上がる。入院費だけでも最初の一泊が1500ポンド位(約30万円)、その後が一泊500ポンド(約10万円)以上だという。そんな計算をしていると、それだけで難産になりそうだ。まあ、そんな心配しなければならないヤツは来るな、ってことだろう。事実、英国女性の90%以上はNHSで出産しているというし、自分のそれまでの経験でもNHSに特に悪い印象がなかったのでこれも迷わずNHSを選んだ。なんといっても無料だし。

それにしても、病院がいい例だがイギリスは価格設定が極端な国だ。プライベート病院はホテル並みの豪華さだというが、費用が高すぎて一般人にはとても手が出ない。となれば、一切無料のNHSにお世話になるしかない。外国人にもお金がない人にも、無料で医療を提供する制度は素晴らしいとは思うが、医者に会うのが予約制で、専門医にかかるには更に数週間から数ヶ月間も待たなくてはならなかったりする。本当に具合の悪い時には、少しはお金を出してもいいから、専門の医者に、予約なしで駆け込める日本式も選択肢にあればいいのに、と思う。

ともあれ、GPにNHSで産むと申し出ると、家から近い3つの病院から、好きなところを選びなさい、と言われた。好きなところを選べと言われても、口コミ評判も知らないし、どうやって選べばよいのやら。悩んでいると、タイミングよく、“Good Hospital Guide”という小冊子が新聞に折り込まれてきた。全国NHS病院のランキング表だ。イギリス人はランク付けの好きな国民だが、情報の乏しい異国人に、これは有難かった。候補の3つの中から、単純に一番ポイントの高い病院を選んだ。ここはロンドンの中心地にあり、その頃勤めていた会社から通いやすそうでもあった。

かくして、産む病院が決まった。なんだか、出産が急に身近なものになった気がした。

投稿者 lib : 04:47 PM | コメント (3)

May 05, 2005

妊娠生活その1<子育てママ編>   LiBホームページへ

mama.gif 「ロンドン生活」がテーマなのに、いきなり香港の話から初めて恐縮だが、私は初めての妊娠を、チャイニーズニューイヤーで湧く、旅先の香港で知った。その前に足を伸ばして行った中国本土では、舗装されていない道路を観光バスで何時間も揺られたり(お尻がぽんぽん跳ねる、トランポリン状態)、ガイドに注意されたにもかかわらず道端で売っていた食べ物を買い食いしてお腹をこわすは、ホテルで何故かお湯が出ず冷水をあびるは等々、散々な思いをした。香港に戻りホテルで妊娠が分った時、知らなかった事とはいえ、妊娠初期の妊婦が避けるべき行動(長時間のフライト、重いスーツケースの持ち運び、無理な日程の旅行、お腹を冷やすetc・・・)を一通りやってしまった・・・・でも何だか大丈夫そうだ。これでもう怖いものは何もない、と妙な自信が胸をよぎったのを覚えている。

ロンドンに戻り、早速GPに行き妊娠したらしい事を告げた。GPでも一応は検査するだろうとは思っていたが、「はいはい、おめでとう」と直ちに私の自己申告を信じてくれた。尿検査も内診もなし。これで正式に妊婦として認定されたらしい。本当にいいのだろうか。自分で言ったこととはいえ、何だか心配になってきた。もし私が、単にボーイフレンドと結婚したいがために妊娠したと言い張っている狂言女だったらどうするのだろう。「あんた、患者が『妊娠しました』と言えばそれが70歳のおばあちゃんだろうがオカマだろうが鵜呑みにするのかいっ?」と突っ込みたくもなったが、まあそんな事をする人もいないのだろう。妊娠初期に飲むといいという葉酸の錠剤と、イギリス版「妊娠のしおり」のような小冊子をもらって、おとなしく帰途についた。

家で早速「妊娠のしおり」をぱらぱらとめくっていると、「避けるべき食べ物」の項ではたと目が止まった。なんと筆頭に上げられているのは、日本の妊婦の定番食品、鉄分豊富なレバーではないか。理由はビタミンAの過剰摂取になるからとのこと。そういえば日本ではお勧めの海藻類も、体を冷やすから食べない方が良いと香港の友人にアドバイスされた。ひじきの煮物、好きなんだけどなあ・・・。どんな食べ物にも一長一短あるのだろうが、国によって、長の部分を重視するか、短の部分を重視するかの違いなのだろう。だとすれば、レバーは嫌いだから英国式に従えば食べなくても済む。ひじきは大好きだから日本式を取り入れることにしよう。うん、なかなか便利だ。

よくよく考えればそんな単純なことではないような気もするが、何はともあれ私の妊婦生活は、こうして順調に?スタートしたのであった。(続く)

投稿者 lib : 05:25 PM | コメント (0)