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November 04, 2005

そして退院

mama.gif    病院には結局2泊した。病院側では一泊で退院して欲しかったらしいが、ドクターが子供の目の検診に回ってきたとき、息子がてこでも目を開かなかったので、「仕方ない、明日もう一度挑戦しましょう」ということでもう一泊できることになったのだ。

初めは一泊や二泊で退院させられてしまって大丈夫だろうか、と心配だったが、一日目にはもう、早めに退院した方がいいかな・・という気になってきた。というのも、NHSの病院では子供が生まれた瞬間から、母親の側に寝かされる。日本でいう「母子同室」というやつだ。日本では母と子のふれあい、と言う事で病院のウリにもなっているようだが、こちらでは、つまり「自分の子供の面倒は自分で見ろ」という事だ。

日本にいる頃、出産した友人のお見舞いに行くと、「新生児室」という部屋の中に生まれたての赤ちゃんがずらりと並んでいた。無菌室のようなものなのかと思っていたが、あれは出産を終えた母親を休ませるために存在する部屋だったのだ。こちらには、もちろんそんなものはない。疲れ切った体で、出産後の夜も眠れず、(産後の入院その2参照)慣れない手つきでお乳をやったりおむつを替えたりしながら、日本の新生児室を思い、恨めしく感じたりもした。

他の赤ちゃんが泣けば自分の眠りが妨げられるし、自分の子供が泣けば周囲に気を遣う。結局、自分で何もかもやらなければならないのなら、家にいる方が気がラクなのではないか、とも思った。

早く退院したいと願うまでも無く、2日目の昼過ぎ、文字通り「追われる様に」退院した。次の人がベッドを待っているからとナースに宣告され、一刻を争うようにあたふたと身支度をして病院を後にした。

退院後はミッドワイフ(助産婦)が10日間、自宅を訪問、指導してくれるので安心だと言われていたが、結局、様々な理由のため来たのは3日だけだった。まあ、イギリス式の、「朝9時から夕方5時の何時かに来ます」という約束なので、10日間も、いつ来るかとどきどきしながら過ごすよりはその方が良かったが。こちらでは家具のデリバリーでも電気製品の修理でもこういった時間約束が普通だ。実際これをやられると、うかうかトイレにも行けず、非常に心臓に悪い。ちょっとドアを開けるのが遅れようものなら「留守だ。仕事しなくてよくてラッキー」とばかりに帰ってしまう輩が多いのだから。(医療関係者はそんな事ないと思いますが。)

もうひとつ。息子は生まれた時、産湯には入らず体を拭かれていただけだった。入院1日目、ナースに「お風呂の入れ方を教えてもらえますか」と頼むと、「今日は入れなくていいわよ。」という返事が笑顔とともに戻ってきた。2日目、「今日は入れますよね?」と聞くと、「まだ大丈夫よ」とさらなる笑顔で返された。生後3日目の退院した夜は、私も疲れきっていたしお風呂に入れるのが怖かったしで、また入れなかった。・・・・・哀れ我が子は生後4日目にして、やっと産湯につかれたのだった。ごめん、息子よ。今は毎日入れてます、念のため。

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以上が私の出産ドタバタ記です。初めは出産エピソードは2,3回でさっくり流そうと思ったのですが、書き始めるとあれもこれもと書きたいことが次々と出てきて、10話以上続いてしまいました。改めて、出産が私の人生の中でいかに大きなイベントだったかを感じます。

書いたことは全て事実とはいえ、イギリス医療のイメージが悪くならないといいなと思っています。基本的にはスタッフは皆、協力的でいい人でした。結局は病院の人手不足、ベッド数の不足などの問題なのかと思います。現に、15年ほど前に出産した義姉は、1週間入院できたと言っていました。

良かれ悪しかれ、NHSのサービスは出産サービスを最小限にデザインしたようなもので、それで大多数の母親も子供も大丈夫なのです。ということは、日本の出産医療が少々過剰サービス気味なのか?との疑問も湧いてきます。また、私と子供は幸運にも何も問題なく出産を終わらせることができましたが、なにか問題があったり、相談したりした場合は、こちらのスタッフは非常に誠意を持って対応してくれるし、心のケアに重きを置いている印象が残りました。

なにはともあれ、息子は先日3歳の誕生日を迎えました。この3年間、休み無く育児のドタバタは続き、新聞もニュースも見る余裕がなく、すっかり世間に疎くなりました。もちろん自分の身なりに構っている余裕などありません。人は、おばさんに生まれるのではない、おばさんになるのでした。

息子はこの3年間で身長は2倍近く、体重は約3倍になりました。毎日の家事、育児に追われ時間が矢のように過ぎましたが、ずいぶんとしっかりしてきた彼の体を見て、ああこれが、私がこの3年間やってきたことなんだと感じます。母親は報われない稼業だと言う人もいますが、どっこい、頑張った事の結果がこれほどよく目に見える仕事はなかなか無いのではないでしょうか。私が毎日、髪を振り乱しながら息子にご飯を食べさせたり、遊びに連れて行ったり、本を読んでやったりしたひとつひとつの事が、彼の血や肉や、言葉となったのですから。

次回からは、ブログらしく日々経験したことや感じたことを綴っていきたいと思います。これからもどうぞよろしくお願いします。

投稿者 lib : November 4, 2005 12:20 AM

コメント

libさん、初めまして。同じくロンドン在住のmirabelleと申します。私は妊娠を希望しているもののなかなか時宜が定まらないようですが、もしも授かることができたらlibさんと同じようにNHSで出産することを考えています。
無事出産されるまでの記録、本当にご苦労が伝わってきました。参考になりましたし、またとても楽しく読ませていただきました。これからは毎日の育児の様子を綴って下さるんですよね?今後のエントリも心待ちにしています!

投稿者 mirabelle : November 4, 2005 07:56 AM

はじめまして!はること申します。
ここのブログを楽しみにしています。
以前イギリスに住んでいたので、NHSの病院や、イギリスの行動の遅さやルーズさは痛い程わかります。 今は息子さんが成長され元気にやっているようで安心しました。
でも本当に大変でしたねぇ・・・これからも大変だと思いますが、本当にがんばってください!応援しています。

投稿者 はるこ : November 5, 2005 08:19 PM

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