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May 24, 2006
NHS(国営医療サービス)
自転車で通勤しているダーリンの同僚が、帰宅途中に車と軽く接触し
病院に運ばれたというメッセージが留守電に残っていた。
その病院は、我が家から車で20分程度だ。
夕食を軽く食べ、彼女の分も持ちさっそく病院に向かった。
噂どおりに、 救急の入り口付近には待ち疲れた人々がいる。
彼女に会うと意外に元気だ。
どうも足の膝を折ったらしく、レントゲンを撮ったのが1時間前。
そして、いまだに治療もされずに放置されている。
さすが、NHSだ。
命に別状がなければ、後回しされると聞く。
とのかく待たされるので有名だけど、待つ身になるとやっぱりイヤだなー。
日本食が大好きなイタリア人の彼女。
持ってきたおにぎりを嬉しそうに食べ、ちょっと一息ついたようだ。
やっと彼女の診察の番が来たので、我々も同行した。
レントゲンを見た医師は、
「これは複雑骨折で手術が必要だな。今晩はできないのでこのまま入院して、明朝に予約をいれよう。いいね!?」
と優しく彼女に言った。
すると彼女は、
「いいえ、私は帰れます。帰って明日また来ます!!」と言った。
ドクターは
「じゃあ、立って歩いてごらん。」という。
さすがに折れた足では、歩けない彼女。
しかし、ここは頑固者のイタリア女性。
「支度もあるし、友人に連れて帰ってもらいます。」
えっ。それってもしかして、私たちのこと??
そんな自信ないよー。だって折れているんだよ。
トイレどうするの?それにあなたの家は、3階でエレベーターもないよ。
その足では登れないし、ダーリンもおぶうには覚悟がいる体格だ。
ここは、やっぱり入院したほうがいいとことを必死に勧めるダーリン。
なぜ入院したくないか理由を聞けば、彼女は悪評の高い英国の病院で入院なんて考えられないらしい。
その気持ちは、よ~くわかる。
しかし、しかし今回は仕方がないよ。
となだめても納得しない。
「帰る。帰る。」と叫びだす始末だ。
ともかく骨折した足を固定するために、別の部屋に連れていかれた。
包帯を巻いている間でも悪態をつく有様。
さすがに1時間もすると疲れたのだろう、静かになって渋々病室に連れて行かれた。
その時刻は、なんと0時。
彼女が運ばれてから、約5時間は経過していた。
我々は、ぐったり疲れて帰宅した。
数日してお見舞いに行くと、とても元気な彼女。
この時は、すでにあの晩のことは笑い話になっている。
しかし、彼女の気持ちはいまでも同じで、早く退院するための歩行練習に励んでいるそうだ。
なんと驚いたのだが、手術の次の日から歩行練習をするらしい。
そして、彼女が見せてくれたのは、ベットの端にかけられている彼女の情報ノート。
看護婦などの申し送りのためにあるのだろう、血液型、飲んでいる薬や今の状況などとともに、
備考欄に“扱いに注意。頑固者。”と書かれてあった。
「まったく失礼よね。」と笑って答える彼女。
うーん。うーん。しかし、我々は事実を見ている。
このメッセージを書いた人の気持ちもちょっとわかる。
いろいろ叩かれているNHSだが、働く人に同情した出来事でもあった。
投稿者 lib : May 24, 2006 08:20 AM