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January 16, 2007
イギリス人て、なんだ
前回も書いたが、年末にポルトガルに行ってきた。
一週間のホリディを終え、ポルトガルを出国する時のこと。
パスポート・コントロールで家族3人分のパスポートを渡した。
EU内ではイギリスのパスポートは殆ど見ないが、日本のパスポートは割とじっくり見られる。
見られても普段はノー・クエスチョンで通してもらえるのだが、この時は違った。
係官は、私のパスポートを何度も何度もめくり、腑に落ちない顔をし、私にこう聞いてきたのだ。
“Is your husband English?”
この質問にはぶっ飛んだ。
「あなたの夫はイギリス人ですか?」・・・・・・
極めてシンプルな質問だが、人が「イギリス人」という場合、二つの意味がある。
① 国籍がイギリスの人
② 人種がイギリスの人
出国係官が興味あるのは普通に考えれば①の意味だろうが、彼は私のパスポートと共に、夫と息子のブリティッシュ・パスポートも握りしめているのだ。
夫がイギリス国籍であることは火を見るより明らかだ。
ならば②の意味?
だけど・・・私の横には、どこから見てもオリエンタル顔(夫は中国人、あ、人種的には)の夫がやはり言葉を失って立っている。
彼を見て、どうしたらて
「あなたは(人種的に)イギリス人ですか?」
という質問がでるのだ。
到底Yes、Noでは答えられず、予想外の質問にただただ絶句し立ち尽くしていると、
“Is your husband English?”
ともう一度聞かれた。
「ええと・・・彼は香港で生まれて13歳の時にイギリスに来ました。イギリス生活が長いので、英語は流暢だしイギリスで仕事をし税金も払っていますが、気持ちはいつまでもチャイニーズです。その証拠にチャイニーズ・ニューイヤーはかならず祝うし、勝負ネクタイは必ず赤です・・・。あ、好きな食べ物はダックです。」
と長々と説明したくなったが、彼がそんなことに興味もないだろうと思い直し、
“Uh….He is a British Citizen”
と答えた。
彼は「フム」と小さくつぶやき、そのまま私たちを通してくれた。
自分も普段怪しげな英語を話していて、ネイティブでない係官の英語を責めるつもりは毛頭ないが、こういう時、イギリス人ならば
“Is your husband a British citizen?”とか
“Does your husband have a British passport?”
とか聞くだろう。
夫もその一人だが、イギリスには、イギリス人(②の意)に見えないイギリス人(①の意)が沢山暮らしている。
中国系、インド系、アフリカ系・・・皆①の意味ではイギリス人だ。
日本語では「イギリス人」と一括りにするが、イギリス国内では①の意味と②の意味を分けて考えるので、例えばアジア系の人に“Are you English?”という質問はあり得ない(と思う)。
まあ、一般的にイギリス人と呼ばれる人たち(先住民)だって、歴史を見れば色んな人種の混血なのだから「純粋なイギリス人」なんていないのだろうが、先住民の人達は移民がイギリス国籍をとろうが、彼らを「イギリス人」だとは思っていない。
移民だって自分達を「イギリス人」だとは思っていない。
夫も、イギリス国籍になってン十年だが、自分を「僕はチャイニーズです」と当たり前の様に言う。
日本語の「国籍」という言葉には、「身も心も日本に捧げます」というニュアンスが漂うが、イギリス「国籍」を取得した人達は、「たまたまイギリスの場所を借りて住んでいるだけ」という感じがする。
だから「ブリティッシュパスポートを持っている」という表現になるんだろう。
先住民も同じ様に思っているから、二重国籍を当たり前の様に認めているんだろうな。
②のイギリス人は、①によりイギリス人になった人をイギリス人だと思っていないが、(ああややこしい)それでも異質なものを受け入れる懐の深さを持っている、と思う。
投稿者 lib : January 16, 2007 01:46 PM