March 08, 2007
消防士
今日もまたオフィスの非常ベルが鳴る。
ロンドンでは法律で決まっているのか、やたらと避難訓練がある。仕事の途中でもビルから出なくてはならない。
以前はみんな面倒がって、ベルが鳴ってもそのままデスクに残ったりしたものだが、テロ事件が増えてからというもの、きちんと指示に従っている。
うちの会社のビルは地下鉄であったロンドンのテロ事件の現場のひとつに近い。
午前9時ごろに爆発があった頃、同僚のひとりはもう出社していて、爆音と揺れを感じたらしい。それほど衝撃は大きくなかったので爆弾だとは気がつかなかったという。
しばらくして、警察がやって来てビルを出るように言われた。
クライアントと電話中だったので「この電話が終わってからね」と追いやったが、消防士が来て避難勧告すると、すぐに従ったらしい。
そうか、警察官よりも消防士のほうが 「格が上」ということだな。
現場に近かったので2日間はビルに立ち入り禁止 (会社も休みだった)。2週間ばかりは立ち入り禁止の青と白のテープが張られて、警官のガードが立つ中で、会社の身分証明書を見せ、テープの下をくぐって出社。
「おっ、山さん、ご苦労」
そう言いながら、警察のテープで囲まれた現場に入るという経験を一度してみたいと思っていたが、こんなことでかなえられるのはちょっとね・・・。
おまけに、正面玄関は封鎖され、毎回ぐるりと裏口に回らなければならず、面倒だった。
去年、非常ベルに何か問題があったらしく、一度、間違って作動すると1日の間に何度も繰り返して鳴り響き、ビルの外に出なければならなかった。
で、そのたびに消防車が来るのである。
「もしも」を考えれば、非常ベルの装置を切るわけにもいかず、消防署もベルを無視してしまうわけにはいかないのだろう。
しかし、日に何度も呼び出される消防士はいやだろうな。
内心、「ちっ、また、あのビルか。どうせ、ガセネタだろうな。でも、行かないといけないし。一度、ボヤでいいから燃えてくれないかな」などと思われていたのではないか?
ベルが鳴るたびにビルの外に出されるのもたまらない。毎回、消防車が来るのを待ち、消防士によって内部の安全が確認されるまで中に入れないのだ。
で、つい 「パブやワインバー」に 「避難」する連中もいる。一度、何度目かに鳴ったとき、同僚に誘われてワインバーに行ったら、そこのおねえさんが、
「あら、また来たの?」と言っていた。
非常ベルごとに酒を飲んでいるのか、君たちは?
さて、「消防士」というのはイギリスでは「たくましい男」の代表格である。自らの危険も省みず、炎の中に飛び込んで人命救助するヒーローなのだ。また、消火活動を行うためにトレーニングをかかさず、鍛えられた身体をしていると思われているらしい。
で、消防車がやってくると女性はいっせいに彼らに注目する。
「ねえ、あの3番目の消防士、悪くないわよね?」
「そうかしら? ちょっと背が低いわよ」
「もう少し若いのを揃えればいいのに」
「この消防署、イマイチいいのがいないね」
といってガセネタで呼びつけられた上に、品定めまでされる。
悔しそうな男の同僚にこっそりと聞かれた。
「日本でも消防士はああやって女性に騒がれるの?」
江戸時代の 「火消し」は大人気だったと思うが、 「消防士」はどうなんだろう?
小さな男の子にはヒーローかもしれないが、日本女性の憧れナンバーワンの職業とは思えない。
「さあ・・・イギリスだけじゃないの」と言うと、
「ふーん、そうなの」とうれしそうだった。
しかし、一日中デスクについて、コンピューターを見ているような運動量のせいで 「丸い体型」をしている同僚と軽やかに階段を駆け上がって行った消防士では 「勝負は明白」。
女の子にもてたいのだったら、スポーツジムに通って筋肉でもつければ? と思ったが、ま、その辺の判断は本人にまかせることにする。
投稿者 lib : March 8, 2007 11:50 AM
コメント
英国女性は”制服の職業に弱い”らしいですね。
私も、英国男性から「日本女性も、制服を着た職業の男性が好きかい?」と聞かれたことが数回あります。
消防士や警察官、確かに制服を着ている男性って、なんだか颯爽としていて格好よく見えてしまいます。私は日本女性ですが…。
投稿者 chisa : May 27, 2007 06:07 AM
アンケートによると、英国男性も看護婦とスッチーが好きらしいです。この職業が男性に人気なのは万国共通の気もしますが。
同じように制服を着ていても 「不法駐車罰金徴収係」のトラフィック・ウォーデンは 「憧れる」よりは 「殴りかかりたくなる」タイプですかね。
あ、サディストならそれでいいのか・・・。
投稿者 十貴川 洋子 : June 1, 2007 01:35 PM