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November 29, 2007

いつか来た道

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9月から新学年が始まり、早いもので今学期もあと3週間で終わりというところまできました。

そして気が付けば、学科主任である同僚が産休・育休に入って早くも10ヶ月が経ちました。実は、彼女の代理を務めていた教員が夏で辞めたので、九月からは新しい同僚(以下、Aと呼びます)が私の学科で働いています。彼はNQT(Newly Qualified Teacher)といって、夏に一年間のトレーニング(PGCEといいます)を終えて教員資格を得たばかりの教師です。

イギリスではトレーニング期間中の実習生をTraineeとは言わずに、BT(Beginning Teacher)と呼び、学生というよりも教員として扱われます。教員生活の中でBTの年が一番つらい年という人が多いですが、私自身はあの頃は必死でやっていましたから、辞めたいほどつらいと思ったことはありませんでした。

私はNQTの一年間の方がはるかにハードだったと思うのです。なぜならば、PGCE期間中の授業数は普通の教師の半分、それがNQTになると一気に90パーセントになります。つまり、担当するクラスがほぼ倍増するのです。その学校のカリキュラムに慣れること、授業準備をすることはもちろんですが、その上にBTだったころはそんなに関わることのなかった成績評価や様々な事務処理などももちろんこなさなければならず、学級運営も生徒指導も自分が中心となってやることになります。

人によって感じ方はそれぞれですし、NQTなのにまるで今まで様々な経験を積んできたかのように卒なく堂々と仕事をこなす人もいます。ただ、大半の人は慣れない環境で新しい生徒に接し、自分のスタイルを確立し、自信を持ってやっていくのに苦労するようです。私ももちろんその一人でした。子供は正直で新任の教師にチャレンジするようなことをしてきます。最初にどのくらい自信を持って厳しくそういう子供たちに接することができるかどうかが鍵になります。慣れている先生はそういうのが非常に上手で始めに厳しさを見せると子供は学び、それ以降わざと困らせるようなことをしないものです。もちろん厳しいだけではそれがまた反抗を助長するのですが。とにかく、メリハリのある対応がきっちりできないと一人一人は良い子達でも集団化すると子供たちは普段以上に反抗的な態度でクラスを支配しようとします。その時の子供の持つエネルギーは凄まじいものです。

同僚Aは一学期も残り少なくなってきた今、そういう子供たちに接して大変な苦労をしているようです。悩みの中心ははやり授業中の生徒指導。私たち教員の間ではBehaviour managementやPupil managementと呼ぶものです。どうやってクラスをコントロールして授業をスムーズにおこなうかという問題なのですが、3年間教えている私ですらクラス全体を見つつ、生徒個人個人の問題行動に細かく迅速に対処していくのに苦労することがあります。一つの対処の誤りがその日の授業をめちゃくちゃにすることだってあるのです。特に感情の起伏が激しかったり、多動行動が見られる生徒がクラスに4人も5人もいると難しいです。

昨日、同僚Aの授業を観察したのですが、やはり色々な場面で子供がやりたい放題という状況がはっきりと見える状況でした。同僚Aも「生徒が言うことを聞かない」→「ストレスが溜まる」→「心の余裕がない」→「子供の行動に余裕を持って対応できない」→「子供がそれを察知してさらに増長する」→「さらにストレス」という悪循環に陥っていました。そういう時って、クラスで生徒の行動が全てネガティブに思えてしまいます。本当はクラスの半分が教師のいうことを聞いて取り組もうとしている状況であってもです。実はクラス運営の鍵は「子供の良くできたところをタイミングよく上手に褒めて、学級の雰囲気をポジティブにして生徒の意欲を高める」なのですが、教師自身が授業を余裕を持って楽しめない状態だとそういう部分が悲しいことに見えないんですね。まるで生徒と教師が敵対関係に陥ってしまうのです。特に女子校ですから頭ごなしに叱ることがさらなる反発を呼ぶ結果となり逆効果という場合がほとんどなので。

4年前の自分の状況を見ているようで、同僚Aには同情・共感の念が絶えません。私自身、放課後に何度も「なぜ生徒にあんな態度を取られなければならないのか」と屈辱を感じながら涙し、教師にあれほどなりたいと思っていた情熱が吹っ飛んでいくくらい悩んだのを今も鮮明に覚えているからです。「学校に出てくるのが苦痛」。そう言った同僚Aの気持ち、痛いほど分かります。

昨日は同じく歴史教員である人文学部主任の同僚K(教師暦14年ほど)も交えて3人でこれからどういう対処をしていくか話し合いました。まずは同僚Aが生徒の前で(例え演技であっても)余裕を見せられるようになることが大切であるという合意に達しました。それでも経験してきた私にはそれがどれほど難しいか分かるのですが。

これから同僚Aが生徒ともっとポジティブな関係を築いていけるために何ができるのか、私も自分の来た道を思い返しながら考えていきたいと思います。

投稿者 lib : November 29, 2007 10:46 PM

コメント

「教育実習」に行ったときのことを思い出しますね。実習生がみんな 「白いブラウスと紺のスカート」なのに、 初日の私は「赤いサマードレス」を着ていって、しっかり浮いてしまいました。何を考えていたのだか。
友人は自分が卒業した高校で実習。休憩室で煙草をスパスパ吸っていたら、昔の担任が入ってきて、22歳だったとはいえ、気まずい雰囲気になったそうです。
お互いに教職の単位は取ったものの、 「先生には向かないようだ・・・」と確認しあいました。

投稿者 十貴川 洋子 : December 6, 2007 06:18 PM

洋子さん、コメント有難うございます。

そう、日本の教育実習って独特ですよね。大学生が突然制服(私も実習は白いブラウスにスカートでした)着て母校に帰るみたいな感覚でしょうか?

赤いサマードレス、イギリスの実習ではきっとOKですよ。っていうかよーっぽど露出が激しかったりしなければ何着ても大丈夫ですね。学校にもよるかもしれませんが。

ちなみに私の同僚達は実に様々な格好してます。夏だとキャミ一枚の人や谷間ばっちり見せ見せの人も、、、。

投稿者 月子 : December 8, 2007 01:32 PM

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