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February 08, 2008
Gang Culture
この国に私が来たのはちょうど6年半前。それから現在まで日本では体験したことのなかったようなことが多々ありました。
もちろん、すばらしい経験となったもの方が大半なのですが、なかにはあまり思い出したくないものもあります。その中で一番ショックなものは引ったくりの被害にあったことでしょうか。人間気が動転すると思わぬ行動に出るもので、私の場合、ひったくり犯と取っ組み合いをしてしまいました。今考えると恐ろしいですね。刺されたりしなくて本当に良かったと思います、、、。
日本でもこういう犯罪はたくさんありますけれど、ここへ来る前はどこか遠い国の出来事のように思っていた節があります。そんな感覚でいた私がこういう経験をしてしまったわけでして、今では「犯罪をより身近に感じる街」というのがロンドンの正直な感想です。
小さな子供や若者を巻き込む犯罪も多いのが現状です。特に最近では立て続けにギャングの闘争に巻き込まれて若者が命を落としたりと悲しいニュースを目にすることが多くなりました。
ナイフを持ち歩く若者が増えていて金属探知機を導入した学校もあると聞きます。私が実習生だった時にも研修先で教員から目の前で殺傷沙汰があった話、自分自身生徒に脅されてナイフを向けられた話などを半ば信じられない気持ちで聞いていたこともあります。その学校はかつてロンドンで1,2を争うほど荒れているということで有名だったそうですが。
さて、私の勤務校はというと、幸いなことに女子校ですので日常的に暴力を目にすることはほとんどありません。小突いたり、顔を引っかいて喧嘩をして処分を受けたという話はちらほら聞いたことがありますが。女の子同士はむしろ悪口の言い合いなど、隠れた場所での言葉を使った暴力が多いように思います。
ただ、これも過去の話になりつつあることを最近実感しています。実は、この「Gang culture(ギャングカルチャー)」とでもいうのでしょうか、若者たちがグループを作り、暴力を使って闘争を繰り返すという文化の兆しは女子校でも少しずつ見られるようになってきました。
というのも先週のある日の放課後に学校のすぐ外で何十人もの生徒が関わったある事件が起こったのです。翌日、10年生のL組の生徒RとAが警察に捕まり停学になったという話をその生徒たちを担任として受け持っている同僚から聞きました。その時点では彼も学校からまだ詳細を聞かされてなかったのですが、どうやらその生徒二人を含む10数人が体育科のある建物からバットとはさみを持ち出して他の生徒に攻撃しようとしたというのです。
すぐに警察が介入し、誰一人として怪我を負うことは無かったようですが、一歩間違えば流血沙汰になったかもしれません。そして数日後に事の真相が明らかになるにつれ、さらに10数名に渡る生徒が退学・停学処分を受けていたことがわかりました。事の発端は前日の昼休みに9年生と10年生の生徒の間で生じた口論だったらしいと聞かされたのは今週に入ってからです。
私が歴史を教えている9年生のクラスからも何人も処分を受けていました。私の学校では授業の出欠をコンピューターで入力するのですが、画面に「E(Exclusion)」つまり停学・退学のマークがついた子供が何人もいて、この子達にも何かあったとは思っていましたがまさか彼女らも関わっていたとは。
その中には普段のクラスではおしゃべりで注意されることはあっても特に態度が悪いわけでもない子も含まれていました。毎週接していた子達ばかりなだけに信じられない気持ちです。教室で話をしたり、笑ったり、時に失礼だったりやんちゃだったりで叱ることもあるけれどなんとなく憎めない彼女たち。今回の事件で彼女らの持つ違う一面を知ってしまい、その子達が急に別人のように思えたことは否めません。
コミュニティ、親、学校の三者が協力して子供たちをそういう文化から遠ざけることが必要と政府もマスコミも言います。そんな中で今の私に一体何ができるのでしょうか。少なくとも停学処分を受けた彼女らが戻ってきたら私は彼女らの良心を信じて接し教え続けていくしかない、そう心に決めていますが、、、。
投稿者 lib : February 8, 2008 11:03 AM