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May 08, 2008
嵐のあと。
ついこの間春休みが終わり、夏学期が始まったと思っていたらあっという間に3週間が過ぎてしまいました。
実は先週までの2週間は11年生のGCSEコースの必修課題(Courseworkと呼ばれています)の成績提出を試験機関にするための作業に追われていたのです。
GCSEは日本でいう高等学校レベルの二年間コースなのですが、歴史コースでは最終学年である11年生の夏に行われる4つの試験の受験に加え、二年間の間にエッセイなどの個人課題を2つ終わらせて提出することが必須です。
試験と課題、両方の成績から最終的なグレード(A*から下はGまで。それ以下の成績だとU-Ungradedとなる)が決まるのです。課題が占める割合は25パーセント。結構な比重ですね。
イギリスの教育制度は日本とかなり違い、それを分かりやすく説明するのは難しいのですが、国の定める基準をもとに、OCRやEdexcelなど複数ある試験機関がそれぞれカリキュラム・シラバスを作成し、試験問題も作成します。
それぞれの学校・それぞれの学科がどの試験機関を選ぶかは自由で、特に歴史教科ではどの時代・トピックを教えるか、我々に比較的広い選択肢が与えられています。学校が違うと教えている内容が全然違うなんてことはよくあるのです。
課題のエッセイトピックなども選択肢の中から学校が選ぶのですが、Edexcelを使っている私の学校ではVotes for Women(イギリスの女性参政権運動)とIndian Independence(インド独立)の二つを課題のトピックとして選んでおり、それに合わせて生徒の指導しています。
さて、去年・今年と今の11年生に課題を提出させるまで色々ありましたが、それもようやく済み(といっても結局提出できなかった生徒もいるのですが)、いよいよそれを評価する時期が来ました。課題の評価をするのは私たち教師の仕事です。
まず、それぞれの生徒の課題をマークスキームと呼ばれる採点基準をもとに評価し、点数を出します。それから、採点に関わった教師全員でModerationという作業をします。
Moderationというのは、一人の教師が採点した課題を他の教師が読み直し、与えられた評価が妥当なものかチェックする作業です。評価の均質化とでもいえばいいでしょうか。
歴史の課題はすべてエッセイなど生徒がそれぞれ書いたものですから、もともと教師にとって点数を出すことは決して容易ではありません。それに加え、自校で評価が行われるわけですから評価の公平さが非常に重要なのです。
同じ課題を採点しても評価をする教師が違えば評価自体に多少の差が出てくることがたくさんあります。評価の偏りや不公平さを限りなくなくすためにModerationをしっかり行うことが大切なのです。教師が自分の生徒の課題を贔屓目で評価することはあってはなりませんから。
ですから、Moderationが終わると生徒全員の点数をEdexcelに提出すると共に、我々の評価の公平さを証明する目的で、Edexcelに無作為に選ばれた何人かの生徒の課題をサンプルとして外部の採点官に送らなければならないのです。
そこで再度評価さて、我々の評価に問題がないと判断されて初めて提出した評価が認められるわけです。
そういうわけで、5月上旬の締め切りに間に合うように、今年も春休み後の一週間の間、授業の合間や放課後、週末の時間を使って課題の採点をおこない、二週目の最初に丸一日使って同僚とModerationをおこなったのです。一日中エッセイを読み続けなくてはならないので毎年これはとても疲れます。
この作業が終わると、一日でも提出が遅れてはならないので、Edexcelに送る成績表と、外部の採点官に送る課題とそれに添付して送る書類や、Moderationをおこなった証拠となる文書をチェックします。不備があると大変なので緊張する作業です。全て整ったことを確認し、先週半ばやっと私の学校の試験オフィスに持っていくことが出来ました。
放課後にそのオフィスで働く同僚から「ちゃんと郵送しておいたよ」といわれたときは本当にほっとしました。まさに嵐が過ぎたといった感じ。毎年毎年繰り返すことなのですが、何度やっても緊張する作業です。
お世辞にも要領がいいといえない私はきっと来年もどたばたすることでしょう。
投稿者 lib : May 8, 2008 11:21 PM
コメント
月子先生、おひさしぶりです。私も今がGCSEの仕上げの時期で、同じく緊張しています。GCSEはどちらかといえば中学卒業資格、GCE(ASとかA2とか)が、2年間ですけど、高校卒業かなあ、って考えてました。いずれにしてもGCSE日本語のばあいはコースワークがないので、Moderation というのをやらなくてすみます。そのかわり、スピーキングテストの試験官をしなければならないのですが。いずれにしても、試験というものの重みがある、ということはいいことではないでしょうか。これがないと学校全体がどんどんダラクというか、学習効果を失ってしまうような気もするんですが・・・。とにかく、月子さんのコースワーク評価が終わってよかったですね。おつかれさまでした。あとは指をクロスして、いい結果を待つのみ、でしょうか。いいことがいっぱいありますようにお祈りしています。
投稿者 dekoboko : May 11, 2008 10:14 PM
>Decobokoさん
ありがとうございます。
ご指摘の件、私も色々考えたのですが、日英の比較は制度が違いすぎて難しいですよね。
たしかに二年間の勉強で日本の高校卒業程度とみなせるのか、という疑問はありますが、私自身、歴史教育に関しては一般的な概説しかほとんど触れない日本の授業よりも高度なことを要求していると思っています。
そしてA-levelになるとさらに教えている内容は歴史事件の諸学説の理解、一次史料・二次史料解釈にも及びます。これは日本の学生が大学のゼミ(演習)で初めて触れるような分野なので私の中でA-levelは大学一年くらいのレベルではあると思っています。
理科や数学など他教科に関してはわかりませんけれど、、、。
GCSEの試験、いよいよスタートしましたね。歴史は6月6日が一つ目の試験です。日本語の試験官をされるとのこと、頑張ってください!そしてお互いよい夏休みが迎えられますように!!
投稿者 月子 : May 17, 2008 10:58 PM