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February 03, 2010

依頼退職

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相変わらずの不景気である。

知り合いの A氏が 「リダンダンシー」 を食らった。 「依頼退職」 簡単に言えば 「クビ」 である。 彼の働く業種は比較的安定したものだが、籍を置くセクションの利益率はここ数年、あまりパッとしないとは聞いていた。 

リダンダンシーにも波があり、別の友人の会社でも数ヶ月に一度くらいの頻度で、「きのう、3人、切られた・・・」 と 「辻斬り」 にでも遭ったような嘆きが聞かれる。

マネージャーから 「ちょっと、来て」と呼び出しを受ける。 「君はよくやってくれているんだが、何せ、業績がね・・・」といった言い訳がされ、 「4週間ほど、ゆっくりしてくれ」と 「ガーデン・リーブ」の宣託が降ろされる。

「ガーデン・リーブ」 こと 「庭いじり休暇」 というのは、 「クビ」の美しき別称である。 「しばし、骨休めでもすれば? その間、給料は払うから」 とはいうものの、4週間後に給料はストップ。 実際には庭いじりなんかする暇はなく、求職活動に走り回るはめになる。

「そうだな、働きづめだったから、次の仕事を探す前に旅行でもするか」 とのんびり数週間の旅行や数ヶ月かけて家の改装をする人もいる。 が、下手に間を空けてしまうと次の仕事が見つからず、 そのまま、残りの人生を 「庭いじりをする、金に不自由なご隠居」として過ごすハメになることもあるらしい。

クビにはなるものの、悪いことをしたわけではなく、会社都合での退職だから、それなりに退職金は出る。 勤務1年につき、1週間分の給料が法律で決まっている。ある程度の年齢以上だと、50%増し。 会社によるが、法律よりは多めの退職金が支払われることが多いらしい。 思わぬ大金を手にして、つい、散財してしまうのも無理はないが、それもその先に就職の可能性があればの事である。

さて、A氏、実は数年前にもクビになりかけた。 
そのときは真っ青になり、将来を心配していたものだ。 成人した子供が2人、共稼ぎながらも、かなりの額の住宅ローン、そして、なんとクレジットカードとローンの負債が・・・。
「クレジットカード? ローン? いくら?」
額を教えてもらえるとは思わなかったが、ポツリと、
「2万ポンド」 と答える。
借金が2万ポンド。それに加えて、住宅ローンはいくらあるんだろう? 
いつも休暇にはカナダでスキー、カリブ海で日光浴、家にもお金をかけ、皆で出かければパッとおごり・・・と派手な生活をする人だなとは思っていたが、全部、借金だったのね。

数年前のその時には、A氏はクビにはならず、他人事ながらホッとしたものだが、ついに今回は運が尽きたらしい。 この数年間で住宅ローンを減らし、クレジットカードとローンの負債をクリアしていればいいのだが・・・。心配はしているが、恐ろしくて電話して状況を聞くことができない。 
えー、久しくお目にかかっていませんが、いかがお過ごしでしょうか・・・? 

B氏はここ数年、羨ましいほどの稼ぎぶりだった。 
稼ぎに比例するように華やかな接待が続き、私も彼のクライアントの接待のおこぼれ (ぎりぎりにキャンセルがあったときの、駆けつけ代理出席)にあずかったものだ。 
そうでもなければ、私のような安月給ではランチ前からピンクシャンペンなどを飲む機会はなかなかないものだ。

「この不景気で売り上げ、がた落ち」とB氏は言う。 
「でも、会社から申し渡されるターゲットはぜったいに下がらない」そうである。
先日も彼のセクション全員がマネージャーに呼ばれ、訓辞があったそうだが、
「先月、 XX君と XXさんには辞めてもらいました。 皆さんはがんばってください。 売り上げが達成できない人は・・・」 とドアを指差し、「出口はあちらです」

この脅し、いや、 「叱咤激励」の直後、全員が 「床に崩れ落ちた」そうである。 ま、精神的にという意味だろうけど。 ガタイの大きなイギリス人の男たちが20人も床に倒れて重なっている図を想像すると怖いものがある。

ほんの数年前、南フランスのホテルを借り切った豪華なパーティ会場で社長自らの
「我が社の利益は皆さんのおかげです」などというスピーチを聞いた耳が、こんな厳しい言葉にさらされるとは思わなかったそうである。

とりあえず、私も住宅ローンの残額は今のうちに減らしておこうと思う、今日この頃である。

投稿者 lib : February 3, 2010 10:24 AM

コメント

B氏のセクションの訓示、こわすぎです。 なんだかんだいってもイギリス、やっぱり自由経済主義の競争社会。 厳しいですね。
こういう話を聞くにつけ、イギリスで家を買う勇気がなえるんですが。 でも、異国の地で賃貸暮らしの定年生活ってのもなんだし。

投稿者 ukresident : February 6, 2010 10:09 PM

B氏は2年前、転職しようとしたのを X万ポンドもらって、会社に引き止められたそうです。 それが今は 「ドアはあちら」 ですからねぇ。 私も家を買うときには躊躇したのですが、同僚の 「持ち家でないと、何年支払いをしても、水道の蛇口すら、自分の物にならないよ」 に背を押されて購入しました。 住宅ローンに加えて、家の修理は費用も時間もつらいものがあります。 今年こそ、キッチンの改装、庭のフェンス、カーペットの取り替え、ベッドルームの・・・以下省略。

投稿者 十貴川 洋子 : February 9, 2010 02:16 PM

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