メイン

June 17, 2009

涙のカラオケ大会

career2.gif
某金融機関に勤める友人が会社のカラオケ大会に参加したそうだ。

「カラオケ好きなの?」
「いや、社内のネットワーキング」
だそうである。大きな会社なので、時々こうやって社内のイベントに参加し、マネージメントの人とおしゃべりをして、ゴマをすったり、情報を仕入れたり、あわよくば他の部署で良いポジションに移ろうという魂胆らしい。

・・・イギリス人のサラリーマンもそれなりに苦労しているのね。

さて、この会社、かつてのパーティでは数百人を集め、豪華なホテルを借り切り、シャンパンを浴びるほど飲ませ、とバブリーなコーポレートワールド絵巻を繰り広げていたのだが・・・。

「どこで開かれたの?」
「会社の会議室」
「え?」
「おまけに会費制」
「ええ?」

確か自社の株価が四分の一になってしまったと泣いていたが、ついにそこまで・・・。

大きな会議室を開放し、飲み物と軽食が用意されたという。
イギリスの会社ではなく、本国では政府の資金注入もあったらしい。そんな時節柄、会社の金で派手なイベントを組んでいると思われたくなかったのか? でも、時には社内交流会も必要で、というわけで、会議室で会費制のカラオケ大会・・・苦労がしのばれる。
まあ、会費が10ポンドというのは形だけの徴収で、飲食物の費用の大半は会社がまかなったのだとは思うが。

ちなみにこの会社は数ヶ月前に全従業員の10%がクビ、来月にはさらに7%が人員カットとなるらしい。
友人も 「もし、今クビになったら」と退職金を計算している。かなりの額(友人試算による)は貰えるようだが、無税なのは3万数千ポンドまで、それ以上は40%の所得税がかかるらしいので、
「3万数千ポンドは現金で貰い、残りは税金のかからないように年金に組み込んでもらう」そうである。

3万数千ポンドなんてイギリスの物価の高さを考えるとアッと言う間に消える額だ。残りは年金にするなんて、ずいぶん余裕があるなあ。

さて、そのカラオケ大会で挨拶をして回っていると、何人か馴染みの顔に会ったという。

ある女性同僚の夫はミリオン単位(数億円)という稼ぎがあるが、忙しくて結婚生活には不満がいっぱい、という話だったが、この不況で収入は激減。さて、今は?

・・・離婚訴訟中だそうである。   

さて、もう一人の女性同僚。去年までマネーマーケットで巨額のボーナスを稼ぐダンナがいたが、彼は今失業中で、

・・・離婚訴訟中だそうである。

男の同僚は業績が落ちて不眠症になり、家族にやつあたりしていたが、

・・・離婚訴訟中だそうである。

そのカラオケ大会の話を知り合いの家庭問題専門の弁護士にしたら、

・・・たいへん忙しいそうである。

金の切れ目が縁の切れ目というのは万国共通である。

投稿者 lib : 09:51 AM | コメント (0)

June 03, 2009

私をフットボールに連れてって その3

career2.gif
チェルシー・スタジアムのゲスト席の入り口はホテルのチェックインのような感じだ。
「いいゲームになるといいですね。楽しんでくださいねー」
と、スタッフがフレンドリー、それも不自然なまでの愛想の良さである。ゲストパスを機械に通しリフトに乗り込んだ。着いた階もゲストルームが並んだホテルのよう。

各ドアを見るとそれぞれに有名企業の名前が張ってある。銀行・金融関連、広告業界、通信業、このご時世にまだ接待費が使えるなんて、けっこう景気いいのね・・・。

私が招待された接待用の部屋は20人くらいまでのキャパである。ここにも商業用スマイル満面の黒人のおねえさんがふたり。
「ハーイ、私はジェニファー、彼女はミッシェル。このお部屋の担当です。まずお飲み物を用意しますね」
テーブルにはサラダ、コールドミート、キッシュのようなものが並び、ホットミールはラムチョップ、ローストベジタブルが用意された。どれもおいしかったが、ワインは小売価格10ポンド程度のものと思われる。(産地、銘柄に詳しくなくても小売価格の推測は得意)

この部屋のスタジアム側のドアを開けると、ベランダのようなプライベート観客席に出ることができる。一般席より一段高く、フェンスで区切られているので、皆が総立ちになっても、ゲームを見るのに困らなかった。背の低い私はラッキーである。が、ここはお行儀の良さが要求されるらしく、この席での食事は禁止、飲み物の持ち込みもダメ、で、何とフットボールシャツの着用も許されない。
「一般席のほうがゲーム鑑賞の雰囲気はいいよ」と言っていたのはこのことらしい。

さて、グランドでは100人近くが準備に余念がない。  
ゴールキーパーは軽くディフェンスを、選手たちはレギュラー、補欠、準補欠(たぶん)に分かれて、ランニング、ストレッチ、手足を大きく振り上げての「筋肉質の大柄な男たちによる、幼稚園お遊戯風、巨大スキップ」と足のつけ根からグルリと回しながらの 「ひょっとこ踊り」と ジグザグ歩行は「裸足でのアチチチ火渡り風」 である。結構マヌケな動きなのだが、この人たちは年間数億円も稼ぐ選手たちなので、金のかかったダンスステップには違いない。

ヘッディングでぶつかって脳しんとうをおこしたらしい選手を心配すると、
「彼は1週間あたり13万ポンド稼ぐんだ」と聞き、同情する気がなくなった。
13万ポンドもらえるなら、毎週、脳しんとう起こしたって構わないよね。

選手たちの足さばきは複雑、かつ鮮やかで、どんなに緻密な仕事もこなせそうである。
ウォーミングアップ中も、レース編み(かぎ針)、みじん切り(文化包丁を使ったもの)、設計図の書き込み(住宅に限る)等も、軽い足技でさばいていた。 (嘘)

が、何といっても目を惹いたのが、審判3人組の動き。
黒のシャツに黒のショーツ(って言うんだよね?)に黒のハイソックス。襟だけは目にもまぶしい白だ。
まず、フィールドを軽くランニング、で、選手と同じく巨大スキップ、ひょっとこ踊り、裸足で火渡りの後、彼らが特に力を入れていたのが、 「後ろ走り」である。ゲーム中も注意してみていると、確かに審判は後ろ走りが多い。 重要なポイントであるらしい。そういえばタタタタッとすばやく後ろに走るのはむずかしい。(注:試してみようという人は転んで後頭部を打たないようにしてください)

プログラムを貰った。チェルシーの選手が写っている。
「あ、この人知ってる。ガールズ・アラウドのシンガー、シェリル・コールの旦那だよね。去年、ヘアドレッサーと浮気して離婚寸前までいったけど、よりを戻したっけ。へえ、チェルシーの選手だったんだ? この真ん中の人、最近スペイン人のモデルと別れて、新人女優とつき合い始めた、あの彼だね。名前は知らないけど」
とバリバリにフットボール業界に詳しいところを披露した。

友人が肩を落としながら、
「・・・この右の選手、知ってる?」と指さす。
「さあ? ゴシップ欄に出てこない人はちょっと・・・」と知識に偏りがあることを認めざるを得なかった。 ある選手は彼の母親が 「万引き」して捕まったニュースで顔に見覚えがあった。息子は何億と稼いでいるのに、何故? という事件である。ちなみにこの人はチェルシーのキャプテンだそうである。

この発言から友人は私を招待したのは 「猫に小判」だったと思ったらしいが、すでに時遅しである。 ふふ、今度から人選には注意ね。他の招待客には 「猫にかつぶし」だったけど。

フットボールの試合を見に行った、とオペラ友達に言うと、
「あなたがフットボール? チェルシーの試合にあなたが?」とまるでアラスカでフラダンス研修でもしたように驚かれた。
彼女にプログラムを見せたら、
「あ、シェリル・コールの旦那が表紙だ。この人フットボール選手?」と言った。

PS ちなみにこの試合は3-1でチェルシーの勝ち。リーグだかなんかの順位がなんとかで(よくわかっていない)重要な試合だったそうです。提供は 「猫に小判」でした。

投稿者 lib : 09:46 AM | コメント (0)

May 26, 2009

私をフットボールに連れてって その2

career2.gif
フットボールの試合を見に行った。

一度は見てみたいと思ってはいたものの、チケット入手は難しく、しかも100ポンドもするとか。ファンでもないのに興味本位で行くには手間ひまがかかるし高すぎる。

・・・と友人が 「フットボールゲームのチケットがあるんだけど、明日の土曜日ひま?」 と電話をしてきた。翌日の予定は 「庭仕事」だけだ。 ガーデニングは来週に延期しよう。芝には悪いが、もう1週間は勝手に伸びてもらうことにする。

「チェルシーのホームゲームで相手はフラムだよ」
チェルシーといえば、有名なチーム、のはず。相方はフラム(フルハム?)両方ともロンドンの地元チームだそうだ。どうせ行くなら有名チームが見たいと思っていたのでよかった。3丁目かもめ商店街チームなんてよりは、チェルシーとか、マンチェスター・ユナイテッドとか、アースナルとか、えーと、他にもあったっけ? ニューヨーク・ヤンキース? 

さて、重要な質問だ。

「何を着ていけばいいの?」
「何でもいいよ」

ほーら、出た。 「何でもいいよ」って、何でもいいわけないじゃない。
スポーツイベントでも、アスコット競馬とウィンブルドンテニスと着ていくものは違うし、アスコットだって、メンバーズクロージャーなら、一般席とは違うでしょうに。

「で、他のメンバーは?」
それがわかれば、なんとなく着ていくものが決まる。 
「えーとね、ロンドンのクラブのオーナーとファッションハウスの人だよ」
・・・何でそんな派手な商売の人たちと私を一緒の席にするの?
どうしよう、何を着ていこう? 

(うわー、去年のシーズンの服を着てる、この女)とか 
(15センチ以下のヒールとストッキング履いた女なんか、久しぶりに見た。ダッセー。僕のクラブに足を踏み入れて欲しくないね)とか思われたらどうしよう? 
すみませんねえ、ウエストエンドのトレンディでファッショナブルな皆様に比べて、シティの勤め人なんて、スーツに中ヒールとかが定番なんですけど。 

と、心配したが、結局はオーナーの親戚の男の子、とファッションハウスの経理担当の人が来るらしい。よかった。

1時にフルハム・ブロードウェイの駅で待ち合わせる。
他の人たちも思ったよりは地味で胸をなでおろした。「経理担当」の人はいかにも 「経理担当です」という真面目そうな感じで、職業上のキャラは万国共通かも。チェルシーファンという男の子は19歳 「チェルシーが勝つといいな」と興奮している。

駅を出てスタジアムに向かう。ほんの2,3分の距離だ。
選手の名前と背番号のシャツを着てワクワクした顔の少年が父親に手を引かれている。
XX選手が彼のヒーローか。 坊や、将来はフットボール選手ね、とお母さんに言われているんだろうな、と、ほほえましい感じだが。
腹の出た中年男がチームシャツでなく、選手のシャツを着てウキウキしているのは
XX選手が彼のヒーローか。 あんた、フットボールもいい加減してよ、と奥さんに言われているんだろうなあ、と見ているほうが困った気持ちになってしまう。

「・・・チケットあるよ」
「メイト (おにいさん、という感じの呼びかけ)チケット余ってたら買うよ・・・」
とダフ屋のささやき声があちこちからかかる。
なんだか武道館のロックコンサートに向かっている気分である。

「チケット買わない?」というのと、
「お兄さん、遊んでいかない?」というのは、その気のない通行人にとってはドギマギさせられるものだ。(後者は言われたことはないが・・・)

「いくら位で売ってるものなの」と聞くと、
「40-50ポンドで買いとって、80-150ポンドで転売かな。席によるけど」ということらしい。高いのね、フットボールって。オペラより高いなんて。

と、この日はゲストルームへのご招待だ。
15-16人用の部屋代は1ゲームが4000ポンド。年間でホームゲームは約20試合だそうだから、シーズンで8万ポンド? ゲストルームもシーズン契約だそうだ。この階には16部屋ある(つい、数えてしまった)。上の2フロアもゲストルームがあり、スタジアム向かい側にも同じようにあるようだ(これも数えた)。42000人入れるスタジアムで、もし1席を50ポンドとすると・・・(貧乏人はこうやって必ず掛け算したり、日割り計算したりする。私のように)

ビジネスモデルとしてのフットボールはすごい・・・。完全にオペラの負けだ。

投稿者 lib : 04:09 PM | コメント (0)

May 05, 2009

シティの熱い戦い その2

career2.gif
デモ隊が見えない。時おり、デモの参加者らしき人たちが警官にデモの集合場所を聞いているような姿が見える。なんだかねえ、もっと激しい動きを期待してたんだけど・・・。

台風の接近に備え、窓を補強し、食糧備蓄、ろうそくやマッチを買いそろえ・・・てたのに、台風の進路が逸れてしまった様な失望感が広がる。

日本のクライアントと電話で話していると、窓の外を見ていた同僚が声を上げた。
「あ、来たかも」
ううっ、タイミングが悪い。
受話器を持ったまま、背伸びをするが外の様子がわからない。相手の話も上の空で聞いているような状態だ。
なんとか話を早めに切り上げて、窓のそばに直行。・・・いないじゃないの。

「違ったかも」
ええい、人を惑わせるんじゃない。

社内中が窓際でウロウロしていたが、いっこうに動きがないので、だんだん興味を失ってきた。しばらくして、ふと外を見ると・・・いる。集まっている。しかし、集まっているだけだ。それだけ。

オフィスから見えるのはデモ隊の 「しっぽ」の部分。道を通行止めにして最後尾には黄色い蛍光色のベストを来た警官が並ぶ。・・・が、並んでいるだけだ。

デモ隊は集まっているだけ。
警官は並んでいるだけ。

・・・なんて芸のない奴らなんだろう。

インターネットでニュースのライブ中継をつけた (はい。この日、仕事はしませんでした。でも、私だけではありません、念のため)
と、そこには警官隊ともみあうデモ隊が。どうもシティの中でも数ヶ所でデモ行動があり、うちのオフィスのそばのデモは 「比較的地味なデモ行動」のようであった。

「この近くのデモは 『はずれ』だね」と同僚。私もそう思う。
というわけで、ランチタイムには私は同僚と一緒に 「デモ隊の見学」に出かけた。まあ、めったに見れるものではないので、一応、ライブで見ておきたい。

道をはさんだ向こう側はデモ隊と端っこには警官、道のこちらはシティの勤め人が携帯で 「記念写真」を撮っている。ほとんど「見世物」状態である。夕食時の話題にするのかしらん。
ライブ感を求めてデモ隊に近寄って写真を撮っていた人がバスにひかれそうになっていた。こちらの道は交通規制はしていないらしい。デモよりバスが危険であった。

と何事もなく一日が終わった。 (揉め事があったと知ったのは後日テレビのニュース)一部の暴徒が資金注入を受けた銀行の窓から押し入ったが、
「税金を注入した銀行だから、実質、僕らの銀行だし、自分の持ち物を壊すのは・・・」ということで後に続く人もなし。

何年も前にも 「反資本主義」のデモがあった。そのときはオフィスの下を通ったので窓からよく見えた。
「社会革命を! 世の中をひっくり返そう」なんて叫んでいたので、
「そうだ、そうだ。現在のポジションを逆にして、お前らが働け! 私たちが家でダラダラ暮らす」と眺めていたものだ。あの時は結構あちこちが破壊されたっけ。

今回はオフィスの窓から20ポンド札をデモ隊にヒラヒラさせて、
「えーい、貧乏人め。これが欲しいか? 取りに来い!」
挑発する勤め人もいたらしい (うちの会社ではありません)

カジュアルウエアで目立たないように出勤。ターゲットにされないようになんて、メールが飛び交っていたのに、たいした態度じゃないの。

夕暮れ、パブに集うイギリス人。パイントを傾けるデモの帰りのカジュアルウエアのグループの横には 「変装したシティのビジネスマン」がやはりカジュアルウエアでビールを飲んでいる。違いはデモ参加者は遠出しているのでリュックサックが足元にあり、シティの勤め人はそれがないということだけ。
ただし、レデンホールのパブでは酔っ払ったシティの勤め人が、デモ参加者にビール瓶を投げつけたとの情報も。フットボールフリガンか、あんたたちは?

まったく仕事にならなかったけど、なかなかスパイシーな一日でした。
でも、また来てね、とは言わない。

投稿者 lib : 12:03 PM | コメント (2)

April 21, 2009

シティの熱い戦い

career2.gif
サミットG20がロンドンにやってきた。 来なきゃいいのに・・・。

「デモ隊の皆さん、いらっしゃーい!」と招かんばかりのロケーションではないか。 
ポリネシアあたりの小島 (民間便は飛んでいない) に20人が集まり、ひっそりと会議を開いてくれれば、どんなに安上がりだっただろう。

おかげさまで、警備に7ミリオンポンドの経費をかけ、警察総動員だったらしい。 誰の税金だと思っているんだ。

おまけに4月1日はシティにデモ隊が大集合。「経済恐慌の元凶、シティのビジネスマンを街灯につるせ!」などと船頭、ではなくて、扇動する奴らも出てきた。

「なるべくシティに来ない」
「ミーティングは延期する」
「カジュアルな服装にドレスダウンする」

等々の勧告が各社のメールに流れたのだった。

「どうしよう。休もうかな・・・。怖いし」という心配性。
「とりあえず、ドレスダウンして、早めに出勤。デモがある間は外出をやめよう」という、常識派。
「チッ、いつものサンドイッチショップは休みだろうな。お弁当を持ってこよっと」とランチのことしか考えていない現実派 (私はここに属する)

しかし、一部には
「ピンストライプ・スーツに、赤いソックス、赤いサスペンダー、赤いハンカチーフを胸ポケットにつっこんで、シティに来てやる。学生時代はラグビーで鍛えている身体だ。かかってこい!」 という勇ましいのもいた。

そう、シティのビジネスマンは伝統的に競争心が強くて闘争的なのよね。これは年が多いほど、その傾向が強いようだ。若者は軟弱でいかん。

前日まで、ボスや同僚とデモの日の対応を相談。この不安と期待感。何かに似てるな・・・そうだ、台風の接近だ!

知り合いの人は心配した奥さんからシティに行くのをやめてくれと言われたのを断ったら、
「じゃ、もしものために、銀行のキャッシュカードを置いていって」と頼まれたそうだ。

・・・もしもっていうのは、どんな状況を想定していたのでしょうかね? 暴徒に襲われてボコボコにされるとか?

さて、4月1日の朝、シティはやや人が少ないという感じ。休んだのか、早めに出勤したのか? そして、7割がドレスダウンをしていて、ビジネス街には見えない雰囲気だ。 

私の住む郊外からの電車でも、いつも見かけるビジネスマンが数人カジュアルウエアになっていた。 「敵 (攻撃的なデモ参加者)の目をくらます」 ためのドレスダウンでも、いかにも、 
「私は日ごろはスーツ着用のビジネスマンですが、会社の規定に従い、今日はドレスダウンです。どうです、とてもビジネスマンには見えないでしょう?」というのが、あまりにミエミエの姿。 朝の8時半のシティで、 ラルフローレン、ハケット、バーバリーのシャツにアイロンのピシッときいたチノパンで歩く男を見て、

1. カジュアルな服装で働く労働者
2. 変装したシティのビジネスマン
3. 覆面プロレスラー

のどれだと思うだろうか?

私? 私はいつもの時間に、いつもの服装で出勤した。だって、面倒なんだもん。 暴動の可能性くらいでは、このなまぐさな性格は矯正はできないね、って威張ってどうする? 電車が止まることを考えて、靴だけはヒールのないものにしたけど。

11時頃からシティの各駅にデモ隊は集合するとか、ん、もう、みんな仕事になりやしない。
「来た? 見える?」
「いや、まだみたい。来ないなー。何をやってんだろう。早く来ればいいのに」
「遅いなー。どこだろう? お巡りさんしか見えないよ」
「エイプリル・フールで嘘なんてことはないよね?」

まだか、まだかと窓から外を見ることしきり。

12時にバンク・オブ・イングランドの前で抗議行動とか、いやでも、期待は高まる。

続く

投稿者 lib : 09:45 AM | コメント (0)

April 01, 2009

ニナガワ歌舞伎

career2.gif
ニナガワ(と呼び捨て)演出の歌舞伎を見に行った。作品はシェイクスピアの十二夜が原作だ。

場所はバービカンセンターである。この複合施設は迷宮のようで、ちゃんと会場へ行き着けるのか、終電に間に合うように家に帰れるのかといつも余計な心配をさせられる。おまけに今回いっしょに行く友人は 「シティはあまり慣れてなくて」という人。 バービカンをシティと見るかどうかはともかく、 「バービカンもよく知らない」とのこと。 私がこの邪悪な迷宮の案内役?  やだなあ。

そのため、 「じゃ、バービカンで待ち合わせね」というわけにもいかず。 近くの駅のマクドナルドに集合。 ちぇっ、プリ・シアター・ミールはマクドナルドか・・・。
と思ったが、気の効く友人は幕間につまめるスナックを準備してきていた。 
えらいっ! このこまめさ!

ニナガワ(と呼び捨て)といえば、イギリスでの評価も高く、観客も演劇人が多く知名度が高い。今回は歌舞伎ということで外人率もすごく高い。が、席も、ぐっと高い・・・位置にあった。

これを予約したのは2週間ばかり前で、その時点ですでに数席しか残っていなかった。席を選べるような状態ではなかったのだ。
最後尾の端っこの席では英語の字幕も見えない。わたしはともかくイギリス人の友人は3時間の間、一言のセリフも理解できずに観劇した。ごめんね。

そう、210分あったのだ。ワーグナーほどではないが、オペラなみの長さと言える。
のんびりとお弁当でも食べながら一日がかりの歌舞伎鑑賞なら優雅でも、仕事帰りの勤め人には途中で居眠りしたらどうしようという長丁場である。実際、字幕が読めなかった友人はときどきウトウトしていたようである。
いびきをかくか、見せ場になったら起こすね、と約束したが、字幕なしの3時間はきつかったかも。

いやー、豪華絢爛な舞台だった。

出だしから大きな船がどーんとせり出してくる。荒れ狂う波は巨大な布で表現。さすがは 「匠の国の伝統芸能」だわ。シェイクスピアをグローブ座で見たことがあるけど、こんなスペシャルエフェクトはなかったもんね。 グローブ座破れたり、松竹歌舞伎の勝ちですわ! おほほほ、かかってらっしゃい! (私は部外者だが)

目も覚めるようにあでやかな衣装だし、お姫様のキラキラとしたゴージャスな髪飾りはライトを反射して、外人の憧れる歌舞伎町のネオンサインのよう。歌舞伎町ってネーミングはこの髪飾りから来たらしい。 って嘘だけど。

ひさびさに聞いた歌舞伎チックなセリフの数々。

「主善之助殿、かたじけのうござる」とか
「わらわの気持ちをわかってたもれ」だの

いいなあ、 「たもれ」だって。今度使ってみようかしらん。
「そこのホッチキスを取ってたもれ」なんてね。
電車で席を譲られたら、
「かたじけのうござる」とか。あ、これは男言葉か。

私は一緒にいる人の言葉使いがうつってしまうことがある。 大阪弁の人と話していると、ついイントネーションが同じようになって、
「あれ? 大阪出身でしたっけ?」なんて言われることもしばしばだ。 (いいえ、違います)

英語のほうはラッキーだ。ボスは良家出のボンボン(と言っても60歳を過ぎているが)なので、きれいな英語を話す。おかげで私にもいい影響があるようだ。
「ポッシュな発音の・・・・英語を話すね」と言われる。
(・・・の部分はたぶん英文法についてのネガティブな意見だと思う)

女形独特の頭のてっぺんから出るような声にもしびれるなあ。

家に帰って、こっそりと女形風に発声してみた。 
「わらわはワインを飲みとうござりまするー」
・・・ウケル。
なんかの機会に使ってみたいが、日本人には苦笑され、イギリス人には気味悪がられるだろうな。人前でやるのはやめておこう。

また、ロンドンに来てね、ニナガワ (と呼び捨て)

投稿者 lib : 07:56 PM | コメント (0)

March 16, 2009

ベン座の女

career2.gif
家を買って10年以上経つ。
私の安いサラリーで選べたのは 「郊外」「中古」「小さめ」な物件だ。それでも当時は住宅市場がほぼ底値という状態だったので、環境もサイズも悪くない家を手に入れることができた。

が、古い。イギリスの家は煉瓦建てなので建物は頑丈にできているが、内装は古びている。で、見た目だけはなんとかしようと、ペンキをぺたぺたと塗りまくった。実は日本にいるときからペンキ塗りは得意である。ただ、根気がないのと大ざっぱな性格のため 「下準備をして丁寧に仕上げる」みたいなことは不得意で、壁紙とかは無理。

さて、この中古の家、なんといってもバスルームが破滅状態にあった。時代遅れのデザインの浴槽、シンクとトイレ。剥げかかったダサい壁紙 (イギリスでは、なぜ、バスルームに壁紙を貼るのか?) パイプの横には隙間があり、 「ねずみが出てきて、こんにちは」状態である。

長い一日を終え、お風呂に入ってゆっくりとリラックス。
ふー、と息をつき壁やパイプに目をやるとみごとなまでの崩れっぷりだ。リラックスしていた筋肉に緊張が走る。慌てて目を閉じて、何も見なかったことにする・・・こと10年間。

しかし、ついに見て見ぬ振りをするにも限界がきた。

・・・床が崩れ始めたのだ。

私のバスルームはイギリスの家には珍しく一階(グランドフロア)にある。
数ヶ月前、浴槽の栓を抜いて水を流すとジャーという派手な音がした。・・・はて? パイプ内を流れる水音ではない。庭にホースで水撒きをするように 「水が直接、地面に叩きつけられる音」である。

浴槽の横にあるパネルをはずしてみたら、確かに 「水は大地へと流れ落ちていた」パイプがはずれ、浴槽の水はそのまま床下へざあざあとあふれている。
うわー、どうしよう? で、必要は発明の母、スーパーのビニール袋を使い、はずれているパイプをつないで応急処置をする。

この 「スーパーのビニール袋作戦」は数週間ごとに 「ジャー」という水音で修復を余儀なくされる。

そして、ある日、トイレの便座に座っていると・・・。

便座の下から隙間風が感じられた。 あ・・・地面が見える。

パイプからの水漏れは浴槽からだけではなかったらしい。あちこちの水漏れは床下を伝ってトイレを支える支柱まで腐らせていた。便座は前かがみの微妙な角度のまま、やっとのことで床上に残っている。

こうして数週間、トイレは 「使用中に地面に落ちるかもしれない」という恐怖の時間と化した。 ここで怪我なんかして、救急車を呼ぶことになると、かなり恥ずかしい状況だ。

「ロンドン在住の日本人女性。自宅で怪我。床が抜け、便座ごと地面に転がり落ちた模様。さすがの救急隊員も青ざめる凄惨さ。応急処置のスーパーの袋で自業自得か?」
残りの人生、 「便座の女」 とか 「ころびトイレ女」 とか呼ばれる運命となるのだろうか?

しかたなく、イギリスの某大手業者(オレンジ色のロゴでバーベキューみたいな名前のあの店ね)に見積もりを頼んだ。

と、ものすごく高い。明細書を見ると 「浴槽の取り外し費用 XXXポンド」と古い浴槽を運び出すだけでも日本円で数万円もする。 蛇口ひとつで数万円。 「総ひのき」 のお風呂の値段かと思ったね。

おまけに 「工事に取り掛かるのは3ヵ月後」とか。それまでにはトイレは地面に落ちてると思う。 下手すると私と一緒に・・・。

またまた他の業者を探していると、知り合いの人が紹介してくれた。今度は見積もりが半分近い。しかもすぐに取り掛かってくれるとか。

工事中は友人宅に泊めてもらった。約束通り2週間後にはピカピカのバスルームが完成し、やっとバスタイムがリラックスタイムになった。
ああ、落ちなくて良かった・・・。

投稿者 lib : 11:56 PM | コメント (0)

February 22, 2009

ダブル不倫 その3

career2.gif
社内恋愛ダブル不倫も7年目になっていた。 その間にA男とB子それぞれはさらに一児をもうけ、家庭生活もそれなりに安定していると見た。

が、その二人もついに破局を迎えたのか?

その事情はA男の友人C太郎に聞こう。えーっと、この人もイギリス人なので当然 「太郎」なんて名前ではないのですが。

「B子に新しい彼ができたんだよ。それでA男はふられちゃったんだ」とC太郎。

・・・夫の元に戻ったのではないわけね。

「A男はがっかりしてるんだ。ちょっと彼女を恨んでいるのも仕方ないね」
「でも、つき合う前から彼女は人妻だし、彼だって妻子持ちじゃないの。ふられて恨むような立場にはないと思うけど」
「男って、そんなもんじゃないんだよ」

・・・じゃ、どんなもんなんだ? 

「B子は少し・・・浮気性なのかもしれないね」
「そりゃ、浮気性でしょうよ。だって、現にA男と不倫してるじゃないの」
「いや、実は・・・」
とC太郎が告白したのはなんと彼女からフラート(誘惑)を受けたというのだ。
ええー!?

C太郎は同僚ではない。他の会社で働く人だが、A男と仲良しなので、よくパブで一緒になる。彼はすごーーーーーーーーくハンサムなので、初めて彼を見たとき、私なんぞはうっとりとしてしまったものだ。

「きゃー、C太郎ってカッコいい」と私が騒いでいるとA男はすっと寄ってきて、
「誘ってみれば? 彼の家庭は冷え切っていて、奥さんとはほとんど口もきかないみたいだし・・・」と囁く。お前が斡旋してどうする?

チッ、妻子持ちか。 「絵に描いた餅」というのは彼のような男のことを言うんですね。

「きっとチャンスがあると思うよ。仲を取り持ってあげようか?」
「いいえ、結構です。妻子持ちと聞いて、すっかり熱が醒めました」と私。

さて、C太郎によるとA男、B子、C太郎と三人で飲んでいて、A男がトイレに立った際、B子にはっきりした誘いを受けたというのだ。

「友人の彼を好きになってしまいました。気のせいか彼も私に興味を持っているような感じです。私はどうしたらいいのでしょうか? 告白するべきでしょうか?」
「友情にひびを入れるようなことは止めましょう。彼のことはすっきりと諦め、スポーツに打ち込むなどして、気をそらしましょう」

と、よく日本の女子中学生が相談しているが、三児の母親で社内ダブル不倫をしているB子にも浮気相手の友人を口説いたりせずに、 「スポーツに打ち込むなどして」もらいたいものだ。夫の元に戻るという選択も、是非、お勧めしたい。

そういえば、何年も前の話になるが、私の当時の彼と彼のイタリア人の友人、その彼女というメンバーでミュージカルを観にいったことがある。ダブルデートというやつですね。

で、彼女、彼の友人、私、当時の彼という並び方で観劇中、彼の友人の膝が私の太ももに擦り寄ってくる。 (席がくっつきすぎているのかな?)と少し足を離したのだが、また、しばらくするとスリスリと膝が動く。

(うーむ・・・、自分の彼女が隣に座っているのに友人のガールフレンドに誘いをかけるとは、さすがはイタリア人。あっぱれだ)と思った。
・・・思ったが、休憩で席をかわってもらい、イタリア人の野望は敗れた。

友人のパートナーに恋心を抱くというプロットは日本の小説でもあるが、そこでは 「熱い思いを隠したまま、誰にも話さずに悶々とする」というのが小説のキモとなっている。

西洋人はあっさりと行動に移すようだ。 参りました! でも、日本人である私はこのままポリシーは変えないことにしておこう。
だって・・・面倒だもん。

投稿者 lib : 11:26 PM | コメント (0)

February 16, 2009

ダブル不倫 その2

career2.gif
日本の会社で社員同士の不倫がバレたら、どうなるだろう?

厳しい会社なら、 女はクビ、あるいは自分から辞めた形で会社から追い出される。 男は左遷、しかも本州まで手漕ぎボートで10時間、なんて離島に飛ばされるかもしれない。

あまり社員の色恋沙汰にゴタゴタ言わない会社でも、何となく居心地のわるーい雰囲気がかもしだされるのではないだろうか?

さて、うちの会社では・・・。

なんと、あっさりと 「公認カップル」として認可されてしまった。
あのー、いいのでしょうか? 昔なら 「不義」だの 「密通」などと糾弾されるのでは?(時代劇の見過ぎ)

会社の飲み会ならふたりでニコニコと参加。 クライアントの接待も当たり前のように一緒。クリスマスパーティの正式な着席式のディナーでも隣同士で食事。

「結婚」 のモラルはいずこに?

明るいダブル不倫のふたりだったが、A男と話す機会があったとき、
「実はふたりとも真剣なんだ。離婚して一緒になろうかという相談もしたんだけど、子供たちのことを考えると踏み切れなかった」
と、真面目に言っていた。

・・・だのに、A男の奥さんが妊娠した。あれ?

「妻との間は冷え切っている。寝室も別々だ」くらいのことを言って口説いただろうに。 
やっぱり、既婚者の男の言うことと行動は一致しないというゴールデンルールを証明しましたね。

と、数ヶ月もしない間にB子が妊娠。
さすがにみんなは動揺した。いったい父親は誰? 

が、どうやら子供の父親は夫らしい。 これって、既婚者の女の言うことと行動も一致しないという事実の発見であった。

(男と女の関係は謎だらけ。特に既婚者同士の男女関係は理解不能)と小娘の私はしみじみと思いました。

それぞれ三児の親となったA男とB子。さすがに関係を見直すのかと思いきや、そのまま 「社内ダブル不倫公認カップル」としてお天道様の当たる道を何ひとつ問題なく歩いてきた、と思っていたら・・・。

ある日の飲み会でふたりは別々のグループに入っている。 で、お互いを何となく避けているような微妙な空気が流れている。そのときはケンカでもしたのかな、と思っていたのだが、その次のパーティでもふたりはバラバラに行動。

いったいふたりに何が起こったのか?

「B子と一緒じゃないの? どうしたの?」とA男に声をかけた。すると、
「B子? あんな女の名前なんか聞きたくないね」 というとペッと唾を吐き捨てるようなジェスチャーをする。
おまけに彼女を充分に意識しながら、当てつけるように、
「ねえ、それより、素敵なレストランを見つけたんだ。一緒に行かない?」と誘いをかけてくる。

あのねえ、社内恋愛、不倫、なんてことだけでも充分に避けたいのに、 何が悲しくて「社内恋愛でダブル不倫をしているふたり」と 「三角関係」なんて、面倒事のフルコースに巻き込まれなくちゃいけないんだ?


続く

投稿者 lib : 11:22 AM | コメント (2)

February 04, 2009

ダブル不倫

career2.gif
面倒ごとはなるべく避けたいと思っている。

いつもという訳にはいかないが、充分な注意を払ってさえいれば、余計な苦労を背負い込まずにすむというものだ。
が、世の中にはわざわざ面倒なことに首を突っ込んでいく人々がいる。

例えば、不倫、社内恋愛、ピースの数が多いジクソーパズルに取り組むとか・・・。

うちの会社の A男とB子がそうだ。えーっと、イギリス人なので名前に 「男」とか 「子」とかはついてはいないが。ま、仮名ということで。

A男はバツ歴ありの再婚者、息子が2人。 B子も娘が2人いる人妻である。何となくつり合わない感じなのは、A男は40代半ばで平凡な風貌。B子は20代後半の美人というところか。あ、そうでした。 つりあう云々の以前に二人とも既婚者でしたね。

実はこの二人がくっつく以前に私もA男から口説かれたことがある。 仕事がらみのパーティの帰り、会社持ちのタクシーで一緒になった。 「同じ方面に帰る社員が数人で利用」というものだが、なぜか彼と私しか乗っていなかった。

酔っ払ってフニャフニャになっていたA男は 「いつも君のことが気になっていた」だの、 「本当にきれいだよ」といった戯言を言い始めた。 ブラックキャブの中、当然、ドライバーもいるわけで恥ずかしいことこの上ない。

「貴様、いったい誰に向かってボケたことをぬかしているんだ。目を覚まさんかい!」 とビンタのひとつも張ってやりたかったのだが、ま、そこは私も大人。

「まあ、ご冗談を。ところで息子さんはお元気ですか?」と質問。
面白いもので、酔っ払って他の女を口説いていても、家族の話題、しかも子供の話題になると急にシラフになるらしく、
「いや、先週、学芸会があったんだ。僕の息子は羊の役。いや、かわいいのなんのって」と父親の顔になる。

が、しばらくすると、また酒が頭を侵食してくるようで、「手を握っていい?」などと、(ナイフで手首を切り落としたろか?)と思わせる発言。
が、そこは冷静さを失わず、
「下の息子さんが初めてカレー食べたって言ってたよね?」 と、すかさず家族ネタをふる。
「そうなんだ。最初は顔をしかめてたけど、そのうち、カレーが気に入ったらしくてね」と、また父親の顔に戻る。

相手がモヤモヤしてくると、あれこれと家族ネタで気を逸らせ、やっとのことで口説き落とされず、手を握られもせず、無事に家にたどりついたのであった。

翌日は殊勝な顔をして、「ゆうべは、からんで申し訳ございませんでした。二度といたしません」と、きっちり侘びが入ったので、
「まあ、まあ、酒の上でのことで、こちらも気にはしておりません。たくさん水を飲んで二日酔いをお直しくださいませ」と、こちらも鷹揚なところを見せたのだった。

が、その後まもなくA男は同僚のB子とできてしまった。

・・・浮気がしたくてたまらず、誰でも良かったのだろうか? 調べてみると私のほかにも口説かれた女が社内にいるかもしれないな。

しかし、結構美人なB子。 なぜ、それほど取り柄があるとも思えないA男とつき合う気になったのか? 

バースディドリンクでその謎が解けた。 B子のダンナというのも来ていたのだが、つまり、その、あまり、パッとしない感じの男だった。 
おまけにB子が彼と結婚したのは18歳のときだとか。世間知らずのまま、手近なボーイフレンドと一緒になったものの、同じ男と10年も生活していれば飽きも来る。どうやら、彼女のほうにも浮気願望があったらしい。

彼女のほうも誰でも良かったのかもしれない・・・。

しかし、二人の仲が公になった後、私が驚いたのは会社の対応だった。

続く

投稿者 lib : 12:31 PM | コメント (1)

January 26, 2009

大使館でパーティ

career2.gif
日本大使館のパーティに行った。

以前出かけたときには 「地味で質素な雰囲気」と悪口・・・ではなくて、虚無僧が似合いそうなまでの控えめなたたずまいを描写したのだが、最近はいかに?

ここ数年のイギリスのバブリーなパーティシーンはすごかった。 大使館に近いメイフェアあたりのクラブでも夜毎に狂乱騒ぎが行われていたはずだ。
さすがに質実剛健な日本大使館も昨今のイギリスの風潮に感化されて、華美になっているのではないか?

・・・もちろん、私は間違っていた。

地味なビジネススーツ姿のイギリス男と薄化粧の日本人の女性が中心。
ちょっと見目には 「パーティ」というよりは 「小学校の保護者会」のような集まりだ。 数人だけ着物姿の人もいて花を添えていたが。

まずは、飲み食いに集中することにした。 が、レッドワインは (たくさん飲むと悪酔いするかも・・・)というシロモノであった。意外とXXXワインをお飲みになっているのね、おほほ。 これなら貧乏な私のほうがもっとXXXなワインを飲んでいるわよ。日本大使館に勝ったわ! (注:勝ち負けに意味はありません)

さて、歌い文句には某日本食料品店がパーティフードを用意ということで期待していた。
フライドチキンがトレィで回ってくる。 ジンジャーがキリリときいたチキンはおいしい・・・が、冷えている。
(揚げ物は熱くないとねえ・・・)と友人とボソボソ言いながら食べる。
「今度のは熱いかも」とトレィが回ってくるたびに繰り返し食べた。が、どれも冷えていて、パーティの終わりには冷えたフライドチキンでお腹がいっぱいという、満腹ながらも精神的にはやや不満の残る状態であった。
大使館には電子レンジがないのかもしれない。

寿司はさすがの人気で、テーブルに置かれるとトラファルガー広場でパンくずに群がる鳩の勢いでむさぼり食われていた。
一緒にいったイギリス人の友達が、紅しょうがをそのままごっそり摘み上げたのには驚いた。
(ちょっとお行儀悪いんじゃない?)と思ったので、「そんなに生姜が好きなの?」と聞くと、「え? 生姜なの? これ?」と動揺している。
バラの形に模った寿司の一種だと思ったらしい。 口に入れなくてよかったね。

日本食に慣れた人は増えたものの、まだまだギョッとする行動に出る人は多い。
クライアントをジャパニーズレストランに連れていくと、わさびをそのまま食べてしまい目を白黒させているので、慌てて水を飲ませたりとか、
「えーっと、このガイジンさんが大根おろしをお味噌汁に入れちゃったので、すみませんが取り替えてください」なんて頼むこともあった。

さて、お腹が落ち着いたところでまわりを見回すと、なかなかユニークな人たちが来ている。かぐや姫のような髪をしている人とか、昔のヒッピー風な「サイケデリックメイク」をしている人とか。
長年外国に住むと日本人離れしてくると言う。が、イギリス人的な風貌になるわけでもなく、何かこう国籍不明、謎の東洋人という存在感に圧倒される。

あ、コスプレみたいな若い子もいた。長手袋をしているのだが、そのまま手づかみで寿司を食べていた。
ご飯粒、のり、刺身、ごま、しょうゆ、といった諸々のアイテムが次々と手袋についていくのだが、平気な顔をしている。私のような小心者には洗濯が気になってとてもそんな豪気な行動は取れない。

「どくだみ小町」という女性二人組が飴細工の実演をやっていた。 イルカ、うさぎ、と熱々の飴がきれいに形作られていく。それをひとりが三味線を弾きながらはやし立てる。頼んだらかわいい天使の羽根を生やしたキティちゃんを作ってくれた。

横に座っていた上品な老婦人に感想を聞くと、
「あれは沖縄の音楽ですね。本来なら蛇味線でしょうね。ヘビ皮でないのはきっとワシントン条約にひっかかって、イギリスに持込ができなかったのでしょう」と専門的な答えが返ってきた。

ただの日本好きなおばあちゃんではなく、東洋アフリカ研究所の教授かなんかだったのかしらん?

投稿者 lib : 09:45 PM | コメント (0)

January 06, 2009

ポルチーニの会

career2.gif
ポルチーニの食事会のお誘いを受けた。(2008年秋)

去年は白トリュフの会を開いてくれた A嬢である。 
あの時はディナー帰りなのに 「小腹が空いた」などと言って、インドネシア料理店に寄り道し、ガドガドサラダやヌードルを食した。 あれがバレれば只事ではすまないと思っていたが、どうやらA嬢の耳に入らなかったらしく、今年も無事に 「秋本番、きのこの会」に招待してもらえた。

ポルチーニがどういうものかはよく知らなかった。
ただ、以前に読んだ 「負け犬の遠吠え」の中に、 「生のポルチーニと乾燥ポルチーニの味わいの違いを話す三十女とアニメの美少女に 『萌えー』としているおたく君との組み合わせは無理」という記述があったことを覚えている。

なるほど、生のポルチーニと乾燥ポルチーニは味わいが違うのか・・・。

さて、私はポルチーニというものを今までに食べたことがあるだろうか?

例えば、ポッシュなレストランに行く。 
で、マネージャーが出てきてニコニコしながら、
「本日のお勧めディッシュは XXXのXXX風でございます。このXXXは今がシーズンで、XXXな風味をお楽しみいただけます。 XXXと言えば、昔々、お爺さんは山に芝刈りに、お婆さんは川に洗濯に行ったとき、XXXがXXXであり、またXXXに対する・・・(以下省略) これに合ったワインはXXXをご用意させていただいております。このワインというのはXXXな香りで舌の上でころがしていただきますと、XXXがXXXということを納得いただけるはずです・・・(以下省略)」

フランス語なまりの英語で得々と料理を説明するマネージャーに微笑みながら耳を傾けるが、これを実際に理解できる人はどのくらいいるのだろう? なぜ、その料理をお勧めするのだろう? 頭に浮かぶのは以下である。

1. 本当においしい。
2. メニューの中で一番高い。
3. 昨日の材料の残りを早く処分してしまいたい。

「あら、おいしそうね。じゃ、それをいただくわ」と適当に注文する。
で、出てきた料理に
(あ、野菜スープだったのね・・・)とがっかりすることもある。

ポルチーニもどこかで食べたことあるかもしれない。自分でも知らない間に・・・。

ま、とりあえず一杯、と適当なワインのボトルを頼む。 まずくはなかったが、特においしくも思えないワイン。グラスが半分からになったあたりで、レストランの人が
「今日は特別なワインをご用意しました」と挨拶。ちっ、少し待てばよかった。

当日のメニューは

トマトのプルスケッタ 
サボイキャベツで包んだホタテとポルチーニ (ボタンエビとキャビア添え)
ポルチーニの香り、バターナッツスクオッシュスープ
野生のイノシシとポルチーニのプレゼ
ドライポルチーニの入った半生チョコレートケーキ

というものであった。

トマトのプルスケッタというのはトーストしたバケットにトマトをのせたカナッペみたいなものだった。これが一人に一切れ(4 X  5センチ四方)出た。
これが小さかったので、(今年も帰り道で別のレストランに寄るはめになるかも・・・)と不安がよぎった。

ちなみに私はグルメ(美食家)ではなくて、グルマン(大食家)である。

小量なのを心配していたが、他のディッシュはたっぷり出て、充分にお腹がいっぱいになった。やはり、去年別の店に寄ったのがバレてたのか?

さて、この日、私は生のポルチーニと乾燥ポルチーニの違いがわかったでしょうか?

答えは・・・・です。(・・・内に正解を入れよ。制限時間は30秒)

投稿者 lib : 10:05 AM | コメント (0)

November 10, 2008

バブルの崩壊 その2

career2.gif
シティだけではなく、巷にも不況風が吹く今日この頃である。

私が住んでいるのは 「中流住宅地」だが、数年前から、ところどころにポルシェだのフェラーリが駐車してあるのを見るようになった。成金サラリーマンがボーナスで買ったのだろうか。大きな家の車庫にあるのではなく、「貸家」という風情の家の前に停めてあるのを見ると、景気のいいボーナスやお手軽ローンで高い車は買えるが、さすがに家は高すぎて手が出ないというアンバランスな世情そのまま。

ずいぶん違和感があったが、いつのまにかそんなスポーツカーも消えてしまった。いったい、どこに行ったんでしょうねえ? 

と思っていたら、ポルシェの中古車がずいぶん安値でマーケットに出回っているそうである。
ローン返済ができず泣き泣き手放された車だったりすると、なんとなく世間への恨みの怨念が車に漂い残っていて、運が悪そうな感じがする。お払いのひとつもして、交通安全のお守りをつけてから乗ったほうがいいかもしれない。

ポルシェの車内に交通安全のお守りがユラユラ揺れているのを想像すると楽しいねえ。

「何でポルシェにお守りなんかぶら下げてるの?」
「前のオーナーが某投資銀行のディーラーだったんだって。ちょっと気になって・・・」
「なるほどね。で、ブレーキの横にある白い粉は何?」
「お清めの盛り塩。 投資銀行みたいにブレーキが利かなくて暴走すると困るからね」

友人は米系の金融会社に勤めているのだが、数週間前に 「今年のクリスマスパーティは中止」のアナウンスがあったそうである。毎年、500人以上が集まり、会場も豪華で家が遠い人にはホテルの部屋も用意されるというバブリーなパーティである。

友人は 「スレた勤め人」なので、今さらクリスマスパーティが嬉しいお年頃でない。
しかし、新入社員はがっかりしているそうだ。会社の金で飲み食いできるのはもちろんのこと、目をつけていた 「受付嬢」だの 「ハンサムな総務課のニューフェイス」に話しかけるチャンス。少々大げさにドレスアップしても、
「仮装行列?」と糾弾されることもなく、 「勝負服なのね。がんばれ」と励ましてもらえる。

この日ばかりは酒で勢いをつけ、同僚にダンスを申し込んでも許される雰囲気。何ヶ月も胸に秘めた思いを打ち明ける・・・はずだったのに。

さて、しばらくすると彼の会社はかなりの割合の従業員に対して 「依頼退職」の発表をした。クリスマスパーティの廃止で経費節減はもちろんだが、クビにした人たちをパーティに出席させるわけにもいかず・・・との考慮だったと思われる。

憧れの彼女にパーティで声をかける機会も仕事も失い・・・という人たちも多かったのでは。 (涙)

セレブなシェフの店がつぎつぎ倒産。お手軽な食事として外食のかわりにピザの宅配便が売り上げを伸ばしているそうだ。

イギリスといえばまずい食事でお馴染み。
離乳食のようにグニャグニャに茹でられたパスタだの、小麦粉をのばしただけみたいにとぼけた味のソースだの、つい最近まで野山を自由に駆け回ってましたーという牛の筋肉ガチガチのステーキだのがレストランで出されていたのは昔の話。
金のあるところに腕のいいシェフは集まる。レベルも上がったが、メニューの金額も上がった。

さらにワインも・・・。

「4人の同僚(これはB銀行のトレーダーらしい)がゴードン・ラムジーの店でランチをした。その勘定は5万ポンド」 というのは有名な話。そのうち食べ物は 「たったの数百ポンド」 (充分高いけど・・・)で、 残りの請求額はワインだったらしい。

ワインに情熱を傾けるソムリエも、(ワインの味もわからないくせに、がぶ飲みする成金の小僧ども)と思いながらサーブしていたのでは?

噂によるとこの4人は請求書をそのまま会社に回して首になったとか。山ほど稼いでいるんだから、ひとり1万ポンドくらい自分達で払ってしまえばよかったのに。

お金の流れを読み違えたということで、トレーダーとして失格ですね。 

投稿者 lib : 12:50 AM | コメント (0)

October 28, 2008

バブルの崩壊 その1

career2.gif
リーマンブラザーズとメリルリンチとAIGの経営危機。

経済に興味のない人には馴染みのない名前で、 「マンチェスター・ユナイテッド・フットボールチームのスポンサー、AIGという会社がヤバイ」という新聞記事もあった。そういえば、赤いユニフォームにデカデカとAIGの文字。あれをそのまま、 「マンチェスターユナイテッドが身売り」と受け取ったフットボールファンも多いのでは。

リーマンは「買収の話が流れた」のニュースの後、あっという間に 「イギリス国内で従業員5000人が解雇(自宅待機?)」である。

新聞には私物を入れたダンボール箱を持った社員がカナリーウォーフのオフィスから出てくる写真が載った。アメリカ映画でよく見かける、首になったり、ボスと喧嘩して辞表を叩きつけた主人公がデスクまわりを片づけて、ダンボール箱を抱えて憤然と会社を去る、あのシーンだ。

さて、最初に思ったのは・・・。

(あのダンボール箱は会社の支給品だろうか?)ということだ。

全員解雇の前夜の重役会議で悲痛な表情のひとりが、
「・・・というわけで全員解雇は避けることができません。決定です。・・・さて、次の議題です。私物入れのダンボール箱の注文ですが、5000個でよろしいでしょうか?」
「いや、休暇や病欠の社員もいるから、4500個でいいだろう。非常事態だから、たとえダンボール箱の費用といえど、無駄使いはできないし」

と、一括注文されたのだろうか? そのわりには持っている箱の種類はバラバラだったような・・・。しかし、あの人数の箱がオフィスにころがっているとは思えない。

目端の利く連中がさっさとダンボール箱を集めると、一番高値をつけた同僚に売りつける、という 「転んでもディーラー」 の意地を見せる状況だったのだろうか? 買い付けた同僚もそれを転売し、サヤを抜く・・・みたいな?

実情をご存知の方は一報ください。たいへん気になっているので。

もちろん、シティではリーマンの話で何日間も盛り上がった。

「人の不幸は蜜の味」とはいうものの、不幸にもカテゴリーがある。 「白血病の少女」の話をニコニコと聞く人はないし、「安い輸入品に押され、おもちゃ工場が閉鎖。60人が全員解雇」なんてニュースなら、「養う家族もあるだろうに、再就職は大丈夫だろうか・・・」と心配するのが人情だろう。

正直なところ、シティの勤め人の間でもそれほど同情されていない。(リーマンの皆さん、ごめんね) せいぜい 「うちの猫が子猫をたくさん産んだ。困った。引き取り手いないかな」という話を聞かされて 「あら、大変そう。いい人に貰われるといいわね。でも、誰も欲しくなかったらどうするの?」と言うレベルである。

そのうち、日本の某社がリーマンを買収して従業員をキープなんてニュースが流れると、 「ちっ、余計なことを。助けるなよ」と言う人も現れたくらいだ。

株価が急降下するとの予想は当然だから、Short Sellingに走るだろうな、と思ったら、FSAがそれを禁止。で、せっかくのチャンスを奪われたヘッジファンドがFSAを訴えるとか。 さすが、怖いものなしのヘッジファンドだ。日本なら金融庁にたてつく会社なんかないけどね。いいぞー、もっと、やれー。

ううむ、なんだかドラマを見ているようだ。ソープオペラでは短期間にカップルがくっついたり、離れたり、相手が変わったり、結婚したり、と話が急展開するものだが、この数週間は 「今日はどの銀行を誰と誰が欲しがって、最終的にどこに買収されるかしら?」と新聞を見るのが楽しみであった。

クレジット・クランチのニュースが最初に公になったのは、去年の夏。その前から株価や不動産の値段が高騰していたのを日本人の私たちは 「そろそろかな? いつ頃だろう? 懐かしいなあ、あの頃を思い出すねえ」と来るべきものが来るのを待っていたものだ。

あの頃の日本のバブルの崩壊のことなんて、イギリスやアメリカの誰もおぼえてなかったのかしらん?

続く


投稿者 lib : 11:57 PM | コメント (0)

October 01, 2008

ボイラーの修理 その2

career2.gif
イギリスのエンジニア(修理工)は1時間当たり50ポンドから200ポンドをチャージするそうである。転職しようかな・・・。

「それでは来週の火曜日にエンジニアを送ります」とガス会社。
火曜日って、今日は木曜日なんですけど・・・。5日後?

「需要の少ない夏にボイラーの点検を」というキャンペーンを張っていたわりに、ずいぶん時間がかかるじゃないの。これでは 「需要の多い冬」にエンジニアを頼むとどのくらい待たされるのだろうか? 数週間?

――イギリス在住の皆さんへ、ボイラーの点検はお早めに

本当にちゃんと来るだろうかとドキドキしていたが、火曜日にエンジニアはやってきたので、ホッとした。 噂によると予約を入れておいても 「来たり、来なかったり」だそうである。電話を入れて文句を言うと、 「そんな予約は知らない」と言われ、 「頭が怒りのボイラー」になるらしい。

エンジニアのおにいさんはさっさと仕事に取りかかった。 が、ボイラーのパネルがなかなかはずれないらしく、ブツブツ言っている。

(苦しめ、苦しめ、苦しめばいいのじゃー)と思いながらこっそりと見ていた。 
210ポンドも払うのに、エンジニアが簡単にパネルをはずして、
「あ、これが緩んでましたね」
と、あっさりネジを締めて5分で退場なんて許せないではないか。

が、20分も経つとおにいさんの口調が変わってきた。
「何だよ、これ。一体どうなってるんだ。何ではずれないんだよ・・・」
そのうち、SXXX だの FXXX だのといった言葉まで混じってくる。
・・・まずいかも。 直らなかったらどうしよう?

さっきまでの態度を改めた私は神様にお願いする。
(神様、お願いです。どうか、私のボイラーを直してください)
と、祈りが通じたのか、ボイラーのパネルがはずれた。

やっぱり、神頼みは効く。 特に 「病気の回復」や 「恋の成就」に 「受験合格」といったお願いは多くて順番待ちが長いが 「ボイラー修理」のお願いの数は少ないだろうから、処理が早かったらしい。

パネルがなかなかはずれなかったのは、数年前に頼んだ配管工のおやじの仕事が雑で金属部分が妙な角度で曲げられていたらしい。 あのおやじめ、1300ポンドもチャージしておきながら、いい加減な取り付けをしてくれたな・・・。

パネルははずれたものの内部を点検したエンジニアはあっさり言った。
「部品が壊れているので、それを持って明日来ます」
・・・持ってないの?
「大丈夫。明日ちゃんと来ますから」

私は働いているので、 「明日」なんて日はそう簡単には来ない。 「また明日」という日は 「またまた有給休暇の申請とそれに対する許可」というプロセスの後にやっと来るんですけど。

私はシクシクと泣きながら、
「ぜったい、ぜったいに明日も来てね。私のこと、忘れないで」と捨てられそうな女が恋人にすがるような態度でエンジニアのおにいさんに頼んだのであった。

翌日、また貴重な有給休暇を使い、やっとボイラーの修理は完了した。

それから数週間後、ゴゴゴ、ガガガガーという音と共にボイラーは停止。驚いてスイッチを切り、しばらくしてから恐る恐るスタートさせてみると、何もなかったように動き始めた。

・・・どうしたらいいんだろう? もう一度エンジニアを呼んだら、また210ポンド取られるのか? それとも、ちゃんと保証期間があるのだろうか?

でも、また確実に有給休暇を使って、エンジニアを待つんだよな・・・。

PS.その後、もっと安い 「ボイラー保険」の宣伝が新聞に載っていた。 が、この保険に入っていても、エンジニアを呼ぶと一回50ポンドチャージされると小さい文字で書いてあった。恐るべし、イギリスの修理費。

投稿者 lib : 08:24 PM | コメント (0)

September 07, 2008

ボイラーの修理

career2.gif 
ボイラーが壊れた。暖房とお湯が我が家から消えた。

もうこの時点で、イギリス在住の方は同情心から目が涙でウルウルしていることであろう。 のんびりと日本にいる人なら、こう言うだろう 「ボイラーが壊れた? 修理すればいいじゃない」 それはもう、「パンがないなら、お菓子をお食べ」という発言にも等しい。この国での庶民の苦労を知らないのだ。

とりあえず先進国と称されるイギリスである。サミットなんかにも堂々と参加しちゃう国だ。飲み水の確保に数キロ先の井戸まで歩かなければならない土地ではないのだ。それなのに、物の修理に関しては国の格付け ZZZ- (S&P) である。

ボイラーはタイマーで作動する。それによって、セントラルヒーティングが入ったり、タンクの水が温められてお湯が使えるというのが私の家の、そしてほとんどのイギリスの家庭のシステムである。ついでに言うと、タンクの湯は日本人なら一回のお風呂で使い切る。で、次に風呂に入る人は1時間くらい待たされる。

ここ数ヶ月、ときどき時間になってもボイラーに点火しないことがあった。しかし、翌日には大丈夫だったりする。 うまく作動しなくなったので、数年前にこのボイラーを設置した配管工のおじさんに電話を入れ、修理に来てもらった。 と、なぜかそのときに限ってボイラーは問題なく動いている。

「ちゃんと作動してるじゃない。修理できないよ」
「今は動いてるけど、調子が悪いから見てくれる?」
おじさんは形だけボイラーのカバーのねじに工具を当てたが、面倒くさいと思ったらしく、
「壊れてないものを直せないよ」と主張。 結局、 ボイラーの外回りをちょっと眺めただけで「訪問検査費」として70ポンドふんだくって、そのまま帰ってしまった。

納得いかないが反論できないまま、数週間が経った。と、今度は完璧に作動しなくなった。
(今度はやる気のないおやじに頼むのはやめよう)と、大手のガス会社に電話を入れる。

イギリスの会社のコールセンターはインドか北イギリスあたりと相場が決まっている。
日頃、 「ガスボイラーの機械的不調」などという 「特殊な状況」を 「英語で説明する」ことは少ない。 おまけに電話の向こうは 「強烈なインドなまりの英語でマニュアルを読むインド人」 か 「強烈な北なまり英語を話す不親切なイギリス人」である。
さすがの私の頭の中にも 「躊躇」という言葉が浮かんだ。 が、ボイラー不調のままで冬を迎えるわけにはいかない。
「夏の間にボイラー点検」などとお気軽な宣伝を新聞でしているが、果たして私の役に立ってくれるのか?

「ボイラーの修理のためにエンジニアを寄こしてくれ」という簡単なメッセージを伝える前に 「ボイラー故障のための保険」の説明を延々と聞かされる。 なんとかそれを振り切った。 で、ハウマッチ?
「エンジニアの訪問は一回で192ポンドです。税金を入れると210ポンド」

脳内の為替機構が一瞬にして、 1ポンド200円として4万2000円という数字をたたき出した。 ボイラーの修理に4万2000円だとー?
「・・・そんなにするの? 新しくボイラーをつけたほうがいいかしら?」
「新しいボイラーは2000ポンド以上しますよ」

2000ポンド = 40万円以上? それで家庭用かい? 
いっそのことボイラー修理を頼まずに自分で見てみようと思った。しかし、
「イギリス在住の日本人女性、ガス爆発死。修理代をケチったため」なんて、新聞の見出しが目に浮かぶ。

「新しいボイラーは必要ありません。ともかくエンジニアを・・・」
と、ここでまたオペレーターが 「ボイラー故障のための保険」の売込みを始めた。
「エンジニアが直した後は12ヶ月の保証期間があるけど、また、壊れたときには210ポンドかかります。保険に入っていたほうがいいですよ」
「ボイラー修理から12ヶ月以降ね?」
「いいえ、12ヶ月以内でも、210ポンドかかりますよ」
「・・・? 12ヶ月の保証期間はあるのよね?」
「はい」
「でも、12ヶ月以内でもエンジニアを頼むと210ポンドかかるの?」
「はい」
―――それでは保証期間とは呼べないのでは?
「保険はいくらですか?」
「1ヶ月39ポンドです」 
                            続く

投稿者 lib : 06:15 PM | コメント (2)

July 09, 2008

イギリスのバブル その4

career2.gif
(前々回の「イギリスのバブル その3」から続く)

新聞記事ひとつにしても、人間のサガというものを思い知らされることがある。

「女の子は若くてきれいでなくては値打ちがありません。仕事の能力? そんなことには期待してません」みたいなことをおじさんが言うらしい。 (ありがたいことに私の目の前で言った人はいない。なぜかというと・・・なぜだろう?)

で、内心は (ま、男の場合は違うけどね。男は仕事で決まる。顔や若さは関係ないもんね。どんな権力を握るか、どれだけ稼ぐか、がポイントさ)なんて思っているのだろう。

しかし、今回のC氏の記事で目からウロコが落ちた。

なーんだ、結局、ビジネスマンの男も 「顔と若さ」が重要じゃん、という事実である。

「自分のビジネスを設立するために160ミリオンポンドのボーナスを蹴って退職」というネタだけにしては、顔写真が大きすぎる。しかも、私服で歩いているところをパパラッチされた感じだし。

「セレブ・ヘアドレッサーによるスタイル」 だの、「住んでいるのはリラックスしたXXX」だのと同じ無料新聞でも 「ロンドンペーパー」か 「ライト」の芸能人ゴシップ欄のようなノリだ。

「鶏ガラのような爺さん会長」 「脂ぎったオヤジ社長」 「若い凄腕経営者、顔に難ありなのが残念」なんてビジネスマンとは違う。この人たちだと25ビリオンポンドなんてビジネスディールでも、証明写真程度の大きさしか顔が出ない扱いだ。

C氏は数週間後にも新聞に登場した。
彼の辞職によってXXXファンドから投資家が逃げ出し、株価が落ちているという記事だ。 で 「彼は130ミリオンポンドのボーナスを蹴って・・・」とある。

あれ? 160ミリオンじゃなかったっけ?

よく読んでみるとこのボーナスは会社の株でもらえる予定だったとか。だから株価が下がった今、その額も減ったのだろうか。30ミリオンの違いってすごいよね。 本人は蹴ったくらいだから気にしないだろうけど。

「おいしかったね。お勘定は割り勘にしようね。いくら? 30ポンドくらいかな? え? 60ポンド? マネージャーを呼べ!」
なんて30ポンドくらいで頭に血が上る私たちとは別世界の人だ。

私の周りにも自社株が目減りして、がっかりしている人は多い。もちろん、30ミリオンポンドも下がったという友人はいませんが。

さて、ここで謎々です。

「株価が下がってニコニコするのは誰でしょう?」 また 「人員整理の時期にニコニコするのは誰でしょう?」 はたまた 「家庭不和で離婚が増えてニコニコ・・・(以下省略)」

答えは 「弁護士」

イギリスのバブル期に 「ゴールドディガー」こと、 「これっぽっちも道徳心なし、バリバリに金目当て、必殺必中、玉の輿めざし女」の手中に落ちた男たちは、もうすぐ 「金の切れ目が縁の切れ目」という透かし文字が浮き出た便箋を弁護士事務所から受け取ることになる。

利益の追求に純粋なゴールドディガーは、シティ勤めの夫の資産が目減りする前にと弁護士事務所に駆け込んでいるとか。下手なファンドマネージャーより相場の動きには敏感だったりするし。

離婚の理由は 「性格の不一致」 とかになっているんでしょうねえ。まさか 「エマージング・マーケットの株価下落に加え、プライベート・プレースメントの収益減収とプロパティのポートフォリオ悪化のため」 なんて家庭裁判所に提出できないって。

クレジット・クランチでもゴールドディガーは元気いっぱいです。

投稿者 lib : 11:22 PM | コメント (0)

July 03, 2008

オペラ座の夜

career2.gif
久しぶりにオペラに出かけた。

まずその前に、夏の恒例行事、ロイヤル・アカデミーでのサマーエクスビションに寄る。
今年はトレイシー・エミンが出展していて、一日キュレーターなんかもしたらしい。

いいなあ、トレイシー・エミン。顔がピカソしてるとこも好きだ。(すごい失礼)

さて、ずいぶんオペラに行っていなかった。というのも、オペラ友達の一人はド田舎に引っ越してしまい、もうひとりはボーイフレンドができて、私を誘う代わりに彼と出かけるようになったからである。

彼女は 「コベントガーデン 友の会」のメンバーで、シーズンが始まる前に演目のご案内があり、一般客よりも前に予約が取れるという特典を持っている。めぼしいのを選んで私に声をかけてくれていたのだが、最近は彼をお供にしていている。

ま、結構なことである。友達としては喜んであげたい。ただし、彼はあまり嬉しそうではないらしい。長いしね、オペラ。

今回のプリ・シアター・ミールはなんとカレー屋だ。今までもよく、安中華、安イタめし等を食べてから出かけていったが、10ポンドというセットメニューであった。
後で大変なことになるとも知らずに・・・。

久しぶりのロイヤル・オペラ・ハウス。もちろん上の方の安い席だ。
このあたりの席でも37ポンド。なんだか値上がりしてるなあ。原油価格のせいかしらん。

見回すとゲイのカップルがものすごく多い。
女の二人連れは 「ただの友達」という感じだが、男の二人連れは 「いかにも」のカップルだ。
幕が開くまで 「どちらが男役で、どちらが女役か。また、そう思った理由を述べよ」というゲームをして過ごした。

裕福そうなおじさんとサロンのマダムのような奥方が隣に座った。
「この人たち、常連さんよ。よく見かけるもん」と友達。

奥方はとても素人さんには見えない格好である。凝った雰囲気のドレス、どでかい指輪はパコンと蓋が開くような造りで、かのメディチ家秘伝の毒薬が仕込んであるような感じ。鉱山から掘り出したばかりの原石のようなネックレスは総重量が3キロはありそう。極めつけは直径7センチばかりの 「額飾り」

「額飾り」なんか着けて外を出歩いている人、生まれて初めて見た。

肩の凝り、指の凝り、額の凝り、が心配になるような着飾り方である。

「画廊の女主人」「宝石デザイナー」「ダンススクールの経営者」といった芸術方面のお仕事と見受けられる。 「税理士」「パン屋」「なまず養殖業」といった雰囲気ではない。

「ドン・カルロ」が始まった。スペインの王子と父王の後妻となった女の悲劇・・・に集中できない。というのも、脳天を打つような強烈な香水が漂うせいだ。その元は隣のマダム。なんだかデパートの化粧品売り場で深呼吸をしているような気分。

・・・が、そういう私もカレー屋経由でオペラハウスに来た身。
(隣の東洋人の女、滅茶苦茶、カレー臭いしー)とマダムも思っているかもしれない。

香水 vs カレー。 迷惑度としては同等か?

さて、3幕目のこと。胃が鳴った。
しかも、 「クー、グルルー、キュルルルー」という、いかにも 「胃が鳴ってます」という音なら良かったのだが、カレーのせいか、
「バフッ、ボッスーン、パスー」といった、まるで XXX のような音だ。

隣の香水マダムが身を硬くするのがわかった。まずい。もしかして、私が XXX をしたと思っているのでは?
(この東洋人の女。カレー臭いだけでは飽き足らず、XXX まで・・・)

違う、違うのよ! 私は XXX なんかしていません! 舞台の上のソプラノのように叫びたい気分だった。が、誤解を解こうにもオペラ中に私語は禁止。

濡れ衣を晴らせぬわが身の不幸に嘆き悲しむ、オペラ座の夜であった。無念。

投稿者 lib : 12:34 PM | コメント (0)

June 28, 2008

イギリスのバブルその3

career2.gif
シティはビジネスの街。だから不景気風が吹くと精彩を欠く。
まるで曇り空で小雨のぱらつくハワイとか、暖冬で地面が露出しているスキーリゾートといった冴えない風情である。

やっぱり、ハワイなら抜けるような青空に熱い南の風。スキーリゾートなら豊かな積雪の上に降り注ぐパウダースノー。ビジネス街なら札束が下品に飛びかってほしいものだ。

日本でビジネスがいまいちの時はオフィスの細々したものから消えていくそうである。

例えば、リースの植木、自由に飲めていたミネラルウォーターのボトル、新聞とか。
いつものように会社の新聞を読もうとして、それがなくなったことで会社の経営状態に気づいたサラリーマンの心情を思うと涙がこぼれそうである。(嘘)

イギリスでは経費節減なら、人件費と接待費だろうね。

肩で風を切って歩き、1000ポンドものワインを自分たち用に頼んでいた連中も地味でせこい食事風景となるのだろうか?
「あ、スターターはなしでいいや。メインコースだけにするよ。一番安いのはどれかな? 飲み物? いらないよ。近くのオフライセンス (酒屋) でワインを買って持ち込んだから。グラスだけくれる? サービス料払いたくないなあ。ね、料理ができたら呼んでくれる? キッチンまで自分たちで取りに行くよ。だから、チップ置かなくてもいいだろ?」

こんな時期にはシティを離れたらどうするか、と同僚と話すことになる。
「田舎に引っ越して、家庭菜園で野菜を作り自給自足の生活をする」
「それがいい。それがいい。太陽の下で農作業なんて健康的だね」

・・・と思ったのだが、週末に芝生を刈り、庭仕事(の手伝い)を2時間したら、筋肉痛で歩行困難になり、階段の昇り降りですら苦労した。
これでは農業への転職は無理だな。

さて、転職と言えば、最近、気になる男がいる・・・。

ファイナンシャルタイムス風のミニ無料新聞 「シティAM」にヘッジファンドのスターの記事が載っていた。

「160ミリオンポンドのボーナスを蹴って、自分のファンド設立!」というのはC氏だ。彼の所属するXXXファンドと言えば、確か去年共同経営者のボーナスが400ミリオンポンドずつ、という記事を見た。生涯給金ではなくて、去年だけのボーナスだって・・・。

400ミリオンポンドって、イメージが湧かないなあ。 1、2ミリオンくらいだと、 「イギリスで買えるちょっと大きな家」って感じがする。(チェルシーとかケンジントンといった高級住宅地は除く。スペインのマルベラの別荘地も無理ね)

と思っていたら、400ミリオンポンドの豪華客船の記事が出ていた。
ふーん、ボーナスで客船が一艘もらえるのと同じか。

「まいどー、宅急便です。会社からボーナスのお届けです。家に入らないのでここに置いておきます。受け取りのハンコお願いします」
で、家の前には豪華客船が横付けされている。
「今年は豪華客船か。去年はジャンボジェット機だったねえ。景気がいいみたいだね、隣のご主人の仕事」なんて近所の人が噂したりする・・・わけないが。

C氏も経営者が400ミリオンポンドなのに、社員の自分はたった160ミリオンじゃ、嫌だ、と思って (当然だな) 転職することにしたらしい。

さーて、こんな話ならシティにはゴロゴロしているはず。が、なぜにこのC氏は特別なのか?

それは・・・彼がグッドルッキングだからである。おまけに若い!

見出しも大きかったが、顔写真もでかかった。
「おっ・・・」と思ったのはそのせいだ。 もっとも、その後に 「既婚、二児の父」と書いてあってがっかりしたのだが (何か、期待していたか、私?)

続く

投稿者 lib : 03:28 PM | コメント (0)

May 26, 2008

イギリスのバブル その2

career2.gif 
シティの夕暮れ。

お下劣なまでに長い長い車体の白いリムジンが停車する。
と、中から人工的なブロンドをなびかせた巨大な女たちが降りてきた。

雲を突くような巨人に見えたのは高下駄のようなプラットフォームブーツのせいだ。胸を半分以上はみださせたトップにへそ下3センチ(嘘)くらいしかないミニスカートを履いている。幅3ミリもあろうかという太いアイラインは黒々と目を隈取り、テカテカと光るリップグロスはまるで焼肉を食べた直後の油ぎった唇のよう。

あっけにとられているシティの勤め人の中に散らばると、ブロンドのジャイアント女たちはチラシを配り始めた。
その中のひとりと目が合ったのだが、軽く無視された。女にはチラシをくれないらしい。

どうやら、アダルトエンタテーメントのPR。 ポールダンスのクラブだろう。テーブル(ステージ?)の上に消防署にあるような鉄棒が設えてあって、その棒につかまりながらセクシーなダンスをするアレだ。

男たちは興味なさそうな顔をしているものの、 「レストラン新装開店」のチラシと違って、シカトもせずに受け取って、さりげなくポケットに入れている。 
――後でこっそりと見るつもりだな。

ポールダンスクラブは後学のために(何の後学?)一度くらいは行ってみないといけないと思っていたのだが、なかなか機会がない。

誘われたことはあるのだが、そいつは評判の悪い男だったので断った。なんせ、ポールダンスクラブに連れて行った女をヘロヘロに酔っぱらわせたため、その女はテーブルの上に上がり自分も服を脱いで踊ったそうである。(実話。ふたりとも私の同僚)
えーっと、評判が悪いのはその男だったっけ? その女の方だっけ?

「で、殿方たちが好んでお出かけになるポールダンスクラブというのは、どのような場所ざますの?」と男の友人に聞いてみた。
「僕は別に興味はないけど、後輩が見てみたいというので」と前置きをしながら、とある場末のポールダンスクラブに出かけたときの話をしてくれた。

時間は平日の午後(おい、仕事しろよ、仕事)、某会員制のクラブらしい。といっても 「厳密に」は会員制でないようだ。ま、場末の店で会員制って言われたってねえ。

若くてきれいなおねえさんが順番に出てきて一曲ずつ音楽に合わせて「たいへん小さな衣装を身に着けて踊る」のを飲みながら「横目で見る」 一曲ごとにビールのパイントグラスが回ってきて、そこにチップとしてひとりが1ポンドずつ入れることになっている。次のおねえさんが出てくるとまた新しいグラスが回ってくる。
一曲3分として、半時間もいれば10ポンドばかり使う勘定だ。

20-100ポンド(店の格による)も出せば、ご指名のおねえさんが個室で 「あなただけのために」ダンスを踊ってくれるらしい。 「踊り子さんに触れてはいけない」かどうかは、これまた 「店の格」によるとのことである。

朝の4時にダンナがご帰宅。
ポケットにはポールダンスクラブのカード、で夫婦げんかもよくあるらしい。
「接待だったんだー。僕は嫌だったけど、クライアントのお供をしないと首にするってボスに言われたんだよー。本当だってばー」などと言い訳をする姿が見えるようだ。

もっとも、請求書は 「スィートキャットクラブ」なんて店の名前ではなく、「有限会社ジョーンズ・アンド・サンズ」みたいな会社名で出してくれるらしい。

さて、湯水のように使えた接待費にもさようなら。
アダルトエンターティメントでの接待も禁止にした会社も多いらしい。
バブルがはじけた今、ブロンドジャイアント女のおねえさんたちの将来はいかに? 

そういえば、日本のバブルでも 「XXXXしゃぶしゃぶ」なんてありませんでしたっけ?
接待にかこつけて、そっち方面に走る男の心理は万国共通。バブルでの行動も万国共通ってことですね。

PS. ポールダンスはセクシーなエクソサイズの一種として、女性向けのクラスが開かれている。サイズ16のおねえさんに脂肪をプルプルさせながら目の前で踊られると、見ている方が食欲をなくして痩せてしまいそうだ。

投稿者 lib : 04:58 PM | コメント (1)

May 06, 2008

イギリスのバブル その1

career2.gif
「バブル? ああ、シャンパンの泡のことね。ワインを選ぶ前にグラスでいただきましょうか。 グラスで一杯20ポンド? 構うことはありませんわ。 何せ、これは接待。支払いは会社持ちですもの。 おーほほほほほ!」

・・・なんて時代はついに終わってしまった。

「イギリスのバブルはじける」 のニュースが続いている。新聞によると

Northern rock          2000
Citigroup             1000
UBS                 900
Bear Stearns            800
Merrill Lynch            400
Royal Bank of Scotland       300
Dresdner Kleinwort        300
Goldman Sachs           300
Bank of America          200
Credit Suisse            200
Morgan Stanley           200

お馴染みの会社名に続くこれらの数字は解雇の予想人数だ。

ヒュー、ヒュルルルー・・・・ (不況の風がシティを吹きぬける音)

シティでは約35万人が働いているそうだ。 
で、もしかすると2万人から4万人、つまり10%もの人員整理があるかもしれないと言われている。

もちろん、その他の経費も削減される。

某銀行の内部メモによると、

 タクシーではなく、普段は地下鉄で移動する。
 交通ストのときでもタクシーが経費で落とせるのは事前に許可を得たときだけ。
 2時間以内の電車での移動は二等車のみ。
 早朝に空港に着いたときもホテルの利用は禁止。

笑ってしまうのが次だ。

 ランチはひとり52ポンドまで。それ以上は事前に許可を得ること。
 アダルト・エンタテーメントの接待はいっさい禁止。

52ポンドのランチ?
シャンパンのグラス一杯が20ポンド。ミネラルウォーターがボトルで10ポンド。サービス料が17%取られるレストランが多いから、注文できるのはピーナッツかオリーブの皿くらいか? レストランからパンが無料で配られるのを期待したい。

あるいは数人でボトルを一本だけ頼む。この場合、水や食べ物はなし。誰がどのくらい飲むかで、殴りあいに進展する可能性もあるので注意が必要。

ほんの数ヶ月前までは某証券会社では
「ワインを注文するときはボトルが500ポンド以下のものを心がける」なんてルールがあったくらいだ。しかも、ボトルの数については上限なし。

あっぱれ、バブルな時代だったよなー。

日本でも 「金箔入りの酒」なんて流行りませんでした? 今でもあるのかな?

私の会社は接待の席ですら、30ポンドくらいのワインを選んでいるようだ。
て、ことは小売価格が10-15ポンドのレベルのワインだな。マネーマーケットでなければ、シティでもこんなもんだよ。

レストランで 「金に糸目はつけないぜ」 って感じの連中が派手にやっているのを見て、よく私のボスは

「ふん、下品な若造どもだ。あー、やだ、やだ。成金のガキめ。あいつらのナイフとフォークの持ち方を見てみろよ。お里が知れるね」

と毒ついていたが・・・ねえ、もしかして、それって、彼らの収入に対する嫉妬じゃない?                       続く

投稿者 lib : 11:21 AM | コメント (0)

April 17, 2008

私をフットボールにつれてって その2

career2.gif
一度、フットボールの試合を観に行きたいと思っているのだが、なかなかチャンスがない。

フットボールファンではないし、それほど、スポーツ観戦には興味がないのだが、スポーツニュースでよく見る大観衆の興奮ぶりを目の当たりにしてみたい。

やったことがないことはやってみたい。見たことがないものは見てみたい。

もちろん、 「F1レースでルイス・ハミルトンと競り合う」 だの 「プライベートジェットで世界一周、シャンパンとキャビアつき」とかは、不可能だし、
「黒魔術用、生け贄のヤギ、解体実践講座」 とか 「ヤXザの組員の皆様と覚せい剤でトリップ体験」なんてのは、チャンスがあってもお断りするが。

とはいえ、興味本位の観戦だ。
寒い中を震えながら数時間も観戦するほどの熱意はない。血の気の多い連中に囲まれ、乱闘に巻き込まれないように、大柄でボディガート代わりになる男の友人のエスコートも必要。
どうせ行くなら有名なチームの試合がいいな。あまり名前の知られてない、しょぼいチームの試合はイヤ。

というわけで、友人が 
「マンチェスターユナイテッド対アースナルの試合をボックス席で観たい?」という話を持ってきたときには飛びついた。

マンチェスターユナイテッドといえば、その名の通りマンチェスターの勇。
そして、アースナルといえば・・・えーと、確かこれも有名なチームだ (・・・どこのチームだか、よく知りません。どこかにアースナル市というのがあるのか?)

なんてったって、 「ボックス席」というのがいいねえ。

・・・ところで、ボックス席というのは何ですか?

と聞いたところ、観客席の中ほどに設えてあるガラス張りのルームだそうだ。

フットボールの観客は 「シーズンチケット」を持つ会員が中心になる。これが9割とかを占めるので、 「一見さん」なんかの手に入るのは微々たる席数。 

ボックス席も企業が年間契約で借りるらしい。誘ってくれた友人は接待するはずのクライアントがキャンセルしてきたとかで私に声をかけてくれたのだ。
年間契約金を払うのに、そこで観戦するには、ゲームごとにさらに金がかかるという。
フットボール選手に大金が払えるのは、こういう仕組みか。

彼の会社の持つボックス席は20-30人収容でき、ゲームの30分前からホットビュッフェとドリンクがサービスされる。試合が始まるとその外にあるテラスで観戦。外に出なくてもルームの中には大きなスクリーンもある。

スーツ着用の必要はないが、フットボールシャツとスニーカーは禁止というドレスコードだそうだ。 「一般の観客とは違うのよね、僕たち」というスノッブ感覚と思われる。 ふん・・・労働者階級のスポーツのくせに。

一人につき250ポンド、しかも飲み物は別料金というゴージャスな席だ。
試合後1時間までは使えるので、スタジアムを出る観客の混雑が収まってから席を立つ、なんて優雅なこともできる。

ん、まー、素敵。と思ったのだが、前日になってキャンセルしたはずのクライアントがキャンセルをキャンセルするという事態が発生し、残念ながら、今回の試合観戦のチャンスははかなくも消えた。

「今度、連れて行ってあげるよ」とは言ってくれたものの、有名なチームの試合はチケットがなかなか手に入らない上、一番安い席でも50ポンド以上という。汗臭い男たちがボールを蹴りあうのを見るのに50ポンドも払うのか? オペラにだって、もっと安い席はあるぞ。

250ポンドのボックス席でタダ見ができそうだったことを考えるとちょっとがっかり。

まあ、スタジアムの臨場感を正式に味わうのは 「外野席」 (野球と混乱している私)が一番なんでしょうけどね。

というわけで、フットボール観戦は未経験ざます。一体、いつになったら行けるのか?

投稿者 lib : 09:41 AM | コメント (1)

April 09, 2008

恐怖の税務署

career2.gif 
今年の初夢は 「古タオルを干すもう一人の私」 (1月9日のブログ)。洗濯物を干す私。では、それを見ている私は誰? と、それを象徴するような出来事があった。

この時期、税務署から税金関連の書類が送られてくる。そこには 「内容を確認して、もし、間違いがあれば連絡するように」と書いてある。

日本では、 「税務署」 「銀行」 「保険会社」 「役所」からの書類をわざわざ確認することはしない。店で受け取るお釣りやATMから出てくる紙幣だって数えなおさなかった。

が、ここはイギリス。

なーんたって、ミスが多いのだ。自分の身は自分で守らなければ。

えーっと、住所、氏名、生年月日・・・で、所得が違うじゃないの。
なぜか、 (あー、これだけあればいいわね)という額が書いてある。これだけくれるのならともかく、これをベースに追加の税金なんか取られてはたまらない。

書いてある番号に電話したら、珍しく、すんなりとつながった。

「書類を受け取ったのですが、間違いがあるので電話しました」
「それでは、本人かどうかの確認をします。まず、名前からお願いします」
と、オペレーターの質問に次々を答えていくと・・・

「こちらにあるデータと一致しませんね。これ以上、進めることはできません。もう一度、かけなおしてください」と言う。
何か、言い間違えたっけ?

しかたなく、もう一度、かけなおした。今度はしばらく待たされた。
今度も本人確認のため、同じ質問がされた。
で、「データと違います。ここで終了します」とオペレーター。
ちょっと、待ってよー。
「私、間違ったことを言ったかしら? どこが違います?」
「それは申し上げることができません」
ま、それはそうだよね、本人を騙った他人に個人情報を渡すことになるもんね。

でも・・・本人が本人の情報を答えているんですけど。

「えーっと、どこが間違っているのかわかりません。貰った書類の内容を訂正したいんだけど、どうしたらいいのかしら?」
「もう一度、かけなおしてください」
「でも、同じ質問をされても、同じ答えしかできないし。本人なので正しい情報を答えているんですけど」
「でも、こちらで記録されている情報と一致しません」

だから、そっちが持っているデータが間違っているんだよー。私が本人なんだよー。信じてー。

しかたなく、もう一度、かけなおす。今度はもっと待たされた。
で、また同じことの繰り返し。
「かけなおしてください」
「何度、かけなおしても同じです。どうしたら、自分自身の情報にアクセスして間違いを訂正できるの?」
「・・・かけなおしてください」

―――この不条理はカフカの世界か、それとも筒井康隆か・・・。

こんなとき、受話器をたたきつけてはいけない。そんなことをしていては、イギリスでは電話をいくつ持っていても足りないからだ。
それにオペレーターはマニュアル通りに話しているだけだろうし。

私はため息をつきながら、給料明細書やその他の書類を一式コピーし、学生時代にやったように蛍光マーカーペンであちこちに線を引き、ところどころに赤ペンで説明をつけ、税務署に送った。こっそり書類の片隅に 「バカタレ」と日本語で書いてやろうかと思ったくらいだ。

日本で働いているときには年末に経理の人がさっさと調整してくれていた記憶がある。私は自営業の経験はないので、税金関係の書類なんか、いつも人まかせだった。

なんで、こんなことまでやらされるのか、イギリスで働く会社員! ついでに言わせて貰うが、高いぞ、税金!

投稿者 lib : 11:25 PM | コメント (0)

March 12, 2008

催眠療法 その3

career2.gif 
さて、この催眠術CDのメッセージの内容だが、健康的な食べ物を食べましょう。お腹が空いたときだけ食べましょう。お腹がいっぱいになったら、食べるのをやめましょう。適度な運動をしましょう。といったごく一般的なものだ。
痩せた自分をイメージしてみましょう。大好きな人の目に映る自分の姿はどうありたいですか? というのもあった。

何度か聴いたが、全部を通して一気に聞いた覚えがないので、たぶん25分のうちの数分は 「寝ている」のだと思う。そのため、10分くらいの長さに思える。

トリックとしては、ときどき、右側と左側のヘッドフォーンに別のメッセージが出ていることである。同時に話すので、ぼんやりしているとどちらも聞き取れない。
気をつけて聞いてみると、
「これから4週間は体重を量らないこと」なんて、秘密の指示が隠されていた。

・・・って、確か、 「聞き流せ」って言ってたよね?

でも、無理。

なぜって、中学・高校と英語のリスニングで、
「一語ずつ、きっちり聞き取り、意味を理解する」練習をしてきたではないか。

「リピート・アフター・ミー」なんて、懐かしいフレーズを思い出した。
ピー、なんて音がして、その後、しばらく無音状態。で、そこで前のセンテンスを復唱する、ってやりませんでした?
「ピーターは羊飼いの少年です。ピー・・・・」
「メアリーはゾンビの少女です。ピー・・・・」

メッセージの中に知らない英単語が出てきたりすると、
「えっ? えっ? 今の単語の意味、何だったっけ?」とあせったりするのだ。
前回、聞き取れなかった部分が明確に理解できたりすると、うれしかったりもする。
そういえば、300から逆に数えるのはどうなったっけ? と、時々思いだすが。

(これは英語の聞き取りテストではないんだから・・・)と、いくら自分に言い聞かせても、中学・高校で叩き込まれた習慣を簡単に変えることはできない。

なるほど、イギリスの催眠術の大家でも、日本の英語教育の厚い壁の前には無力なのだな・・・って、ダメじゃん、せっかくのダイエットなのに。

しかし、この25分というのが、つらい。

寝る前にCDを聞いてみたら、最後に、
「それではカウントダウンをします。これを聞いたら、目が覚めます。5,4,3・・・。さあ、うーんと伸びをして・・・」
という終わり方なので、目が覚めてしまい、また寝つくまでに時間がかかることがわかった。

朝、まだベッドにいる間に聞くと、目覚めようとする脳と眠らせようとする催眠術で相殺効果が働き、なんだか 「効かない」感じがするし。

一番いいのは、夕方。

しかし、仕事から帰って、夕食の準備をして食事をすませ、お風呂に入って・・・などと寝るまでの貴重な数時間のうち、半時間も取られるのは、正直、つらい。
なんとか短縮できないもとかと工夫をしてみたが、催眠状態にもっていくのに最低それだけの時間は必要なのだろう。

CDを効き始めて2週間、これをくれた友人とご飯を食べた。

「どうだった? CD聞いてる? ダイエットはどう?」
「なんだか、食欲が抑えられてきた気がするんだよね。あ、アタシ、デザートはテラミツね。ところで、禁煙はどう?」
「・・・今は吸ってる。でも、また禁煙するつもり。簡単だよ、あのCDを聞けば、すぐにでも禁煙できるからね。全然、心配してないんだ」
「そうだよね。あのCDで、私もダイエットできる。心配ないよね」

―――まったく心配していないふたりなのであった。

というわけで、このCDはダイエットに効くのか効かないのか、よくわかりません。

ホリディに行くので2週間お休みしますね。

投稿者 lib : 08:29 PM | コメント (0)

March 05, 2008

催眠療法 その2

career2.gif 
大丈夫だろうか、催眠術。

素人の催眠術はかけるまではいいものの、解くことができず、危ないという噂だ。プロの監修なしに家で聴いていて、そのまま 「眠り姫」になってしまったら?

催眠術をかけられて、自制心が効かず、いらない事をペラペラ話してしまうかと不安だ。

泉鏡花の 「外科室」ではないが、
「私は恋人に誠実な女です」などと言いながら、催眠状態で無防備になり、
「なーんて、実は上司と長年の不倫関係にあり。彼氏の親友を誘惑して浮気しちゃったし。シングルバーでときどき遊んだりもしてるわー」と暴露してしまうのではないか。(例です。私ではありません)

それに、 「催眠術ショー」などで、 「はい、あなたはウサギです」と言われ、ピョンピョンと跳ね回ったり、 「今度はヘビさん」と言われて、ニョロニョロしているではないか。

「この音楽を聞いたら、ヘビさんになります」 「このサインを見たら、ウサギさん」という暗示のトリガーが設定されるのも見た。

横断歩道で 「歩行者」サインを見て暗示のトリガーが入り、ピョンピョンしたり、 「通りゃんせ」を聞いて、ニョロニョロしたりすると恥ずかしいではないか。

うーむ、いやだ。ピョンピョンとか、ニョロニョロとか。

そして、言葉の問題もある。日本人の私が英語で催眠術にかかるものだろうか? 

もちろん、これがヒンズー語とか、ルーマニア語だと暗示にかかりようがないことはわかる。
たとえ、その道の権威者に
「%#*」(&^? ^^^@!) *!*!*!」と誘導されても、
「?(?){?}(?)」としか頭に浮かばないだろう。

で、無意識の領域において、母国語ではないが理解はできる英語の暗示がどれだけ働くことができるのだろうか?

いやいやCDを手に取った。うう、25分もある。長いな。
忍耐力がない上に、人の言うことを聞くのが嫌いな私が、25分もじっとして、他人の命令に耳を傾けなければいけないのか。

ベッドに横たわり、CDをかけて、ヘッドフォーンをつける。

本の表紙の男の人は自信ありげ、かつ優しそうな顔だ。バリトンで、いかにも 「私にまかせなさい」といった渋い声。

「リラックスできる場所を選んでください。これを聞きながら運転したり、機械の操作をしてはいけません」 
(と、いうことは、やっぱり途中で眠ってしまうのか?)

「ステレオで聴いている人はこっちを右耳に、こっちを左耳にしてください」
慌てて、ヘッドフォーンの左右を入れ替える。

――右脳にこのメッセージ、左脳にこのメッセージとか、あるのかな?

やがて、環境音楽のような曲が流れてくる。

導入部分では、
「さあ、300から逆に数えていきましょう。300、299、298、297・・・」

まず、ここから悩んでしまう。
日本人の私にとって、300から、逆に 「英語」で数えていくというのは、それなりに集中力を必要とする作業だ。催眠術の最中に 「集中」してはいけない気がする。
で、途中から、 「にひゃく、はちじゅー、きゅー」と日本語に替えたのだが、それも、また、英語での催眠術にしっくりこないようでもある。どうしたらいいのだろう?

こうして、数を数えていると、彼はいろいろなことを話している。ああ、数なんか数えている場合ではない。メッセージを聞かなくっちゃ。でも、数えるのをやめろ、とは言わなかったし。ええっと、幾つまで数えたっけ?

CDの声に身をまかせるどころか、どう判断したものかという混乱が脳の中をグルグルと回っているのがわかる。・・・いいのだろうか、これで?

さらに続く。

投稿者 lib : 07:34 PM | コメント (2)

February 28, 2008

催眠療法 その1

career2.gif 
人を呪わば、穴ふたつ。デブを笑わば・・・。というわけで、日頃、イギリス女のデブぶりをあざ笑っている私だが、その悪口がわが身にはね返ってきている。

「サイズ10のスカートを履くくらいなら、死んだほうがマシ」と言い切ってきたが、つい誘惑に負けて手を出してしまった。もっとも、 「死んだほうがマシ」ってのを見せてもらいましょうかね、と迫られたら困るので、周囲にバレないように、固く口を閉ざしているが。

ふりかえれば、2ヶ月前、クリスマスの頃だ。

イギリス人の男、数人と食事をしていた。
「なんだか太っちゃって。ダイエットしなきゃいけないのよね。あ、アタシ、デザートはチーズケーキをお願いね」
と、いつもの 「言行不一致の美学」を披露していると、その中のひとりが、
「君はいつも体重を気にしてるから、これ、買ってきたんだ。クリスマスプレゼントだよ」と本をくれた。

見れば、
Paul McKenna著 「I Can Make You THIN」という本だ。
「私はあなたを痩せさせることができる!」というタイトル。

正直なところ、 (うっ・・・)と思わなかったと言えば、嘘になる。
この本をくれたのは、 (ゲイじゃないのか?)と疑うほど、女心を理解している男で、まったく悪気はなかったはずだ。

そのとき、他の男3人は心なしか青ざめていた。
(お前、何てことを・・・。女性に向かってダイエット本を薦めるなんて、 「デブをなんとかしろよ」って言ってるのと同じだろ。殺されるぞ、殺される)
デブを指摘された私がヒステリーを起こして彼に飛びかかり、腹わたを食いちぎる光景が脳裏によぎったに違いない。

「痩せなくっちゃ」
「いや、全然太ってないよ」
と、イギリス紳士なら当然のお約束の会話がついに破られたのだ。

が、瞬間のショックを自制すると、好奇心がわいてきた。
「流行のダイエットなの?」
「いいや、この人は催眠術で有名なんだ。いろいろとシリーズがあってね。ダイエット、自信をつける、禁煙とかね。僕も彼のおかげで禁煙できたんだ」

彼の話によると、本を読む必要はない。CDが付いているので、それをリラックスした気分で聞くようにということである。そのCDも、「しっかり注意を払って聴く」のではなく、 「聞き流す」ほうがいいらしい。

ほー、ほー、なるほどね、とありがたく貰って帰った。

しかし、いくつか問題がある。

いまどきの女なら、ダイエットのメソードの5つや6つは空でスラスラ述べることができる。が、どうしたら実行できるか、を知っている人は少ない。
ダイエットの知識は増えるが、体重も増えるという 「ダイエット理論-正比例の法則」があるのだ。これ以上、新しいダイエット法を聞いても・・・。

それに私は人の命令を聞くのが嫌いだ。 「やれ」 と命令されると、反発してしまう。
日本では軍隊式のダイエットが流行っていたらしいが、私には不向き。
ああ、職業軍人でなくて本当によかった。上官の命令にことごとく逆らって、指令系統をメチャメチャにし、部隊ごと全滅させてしまうタイプだと思う。

それに、催眠術って、なんだか、怖くない? 目が覚めなくなったりして。

というわけで、しばらく家に放っておいた。が、気のいい友人は、
「あのCD聴いてみた? 試してみた?」
と顔を合わせるたびに訊ねる。

しかたなく、私も腹をくくってやってみることにした。
せっかくの友情にヒビを入れたくない。たとえ、目が覚めなくなったって、それがどうしたというのだ? (すごく、困るけど・・・)

まあ、普通の書店で売っていて、おまけにベストセラーということだから、そんなに危ないものではない、はずだ。   [続く]

投稿者 lib : 10:17 AM | コメント (0)

February 20, 2008

八丈島に島流し その2

career2.gif
BTは月曜日、2日後に修理に来てくれるとのことである。

もちろん、信じてなどいなかった。 「月曜日に修理に来ます」と聞いて、約束した日に人が来るなんて思うのは、イギリス生活の素人さんである。

「月曜日って、7週目の月曜だったのね」みたいなことは当たり前。
「月曜日といっても、今年の月曜日とは言わなかったしー」くらいの言い訳を聞かされるのは覚悟しなければならない。

ま、とりあえず、修理は頼んだから、とテレビを見ていると、ピンポーンとドアベルが鳴った。
―――誰?
で、ドアを開けると、BTのエンジニアが立っている。

「BTです。電話線が切れたんだって?」
「あわわわわ・・・」とパジャマ姿の私。
―――目の前で起こっていることに対応できなくて、パニックっている。
「ちょうど、近くで修理してたら、連絡が入ったんだよね」
「あわ、あわわわわ」
「あんた、大丈夫?」
「あわ、あわ、あわ」

玄関のドアを開けたら、テクノザウルスが立っていて、丁寧におじきをしながら日本語で挨拶したくらい驚いた。

イギリスに何年も住んでみればわかる。BTに電話をして、30分後にエンジニアが来たら、たとえ 「あわわわわ」 でなくても、誰でも 「うきききき」 だの、 「むぐぐぐぐ」だのと、パニック反応を起こしてしまうだろう。

おまけにこのBTのおじさん、コメディアンのハリー・エンフィールドにそっくりだ。

きつねかなんかに、騙されているのかしらん、私?

「ちょっと、中に入っていい? 家の中に電話線のボックスがあるはずなんだ」
「え? あわわわわ」
この、 「あわわわわ」は別の意味である。

私は週日は働いている。1週間分のゴタゴタが堆積して最高潮に達している土曜日の朝、しかも、他人が来ることを予想していないときに、
「あ、はい。どーぞ」と家の中を見せることに躊躇しないでいられる女がいれば、尊敬するね。

で、私は尊敬に値しない女なので、
「あわわわわ」とあせったのである。
「えーっと、30秒だけ、待ってくれる?」
本当は30分くらいは欲しかったのだが、せっかく来てくれたBTのエンジニアを逃したくなかったので、30秒で家の中を整理した。

このハリーおじさんは、
「あ、しまった。前の工事の場所にはしごを忘れちゃった。はしご、ある? 貸してくれる?」などとボケをかましながらも、半時間ほどで電話線を修理してくれた。

お世話になったので、5ポンドくらいチップとしてあげようかと思ったが、意外とこの手の仕事は稼ぎがいい。私よりも、おじさんのほうが収入が多いかもしれない可能性を考え、買い置きのチョコレートの箱をお礼として進呈した。

「BTに電話したら、30分でエンジニアが来たよ」と言っても、誰も信じない。
「まーた、嘘ばっかり。そんなにすぐ、来るわけないじゃん。ここ、イギリスだよ」

月曜日、私の携帯電話にメッセージが入った。
「こちらはBTです。今日、エンジニアを修理に送る予定です。不自由をおかけして、申し訳ございません」

・・・BTの内部連絡の質って・・・・。

「八丈島に島流し」寸前に 「将軍の恩赦」を受けた気分である。もちろん、助けてくれたのは 「将軍様」ではなくて、 「ハリーおじさん」 だったが。 

・・・ところで、BTに2ヶ月ほど前からブロードバンドを頼んでいるんですが、一体いつエンジニアが来るんですか?

投稿者 lib : 06:39 PM | コメント (2)

February 14, 2008

八丈島に島流し その1

career2.gif 
電話線が切れた。

数週間、ザラザラした音がときどき電話に混じるのには気づいていた。しかし、毎回ではなかったので、そのままにしておく。実は、最初に頭に浮かんだのは 「ねずみの害」である。

家の中にある数ヶ所の電話のひとつが使えなくなったのはずいぶん前のことだ。ねずみキラーのおじさんが来て、床下を見たときに、
「ねずみがかじって、電話線が切れてるよ」と言ったのを思い出す。
(BT-ブリティッシュ・テレコムに連絡しなくっちゃ・・・。でも、面倒だな。他の部屋の電話は大丈夫だし。ま、いいか・・・)

と放っておいたのだ。

で、ある日、突然、他の部屋の電話もプツッと切れた。
・・・・しかし、面倒なことは考えたくなかったので、
「何もなかったことにしよう。明日はきっといい事あるさ」と、その日は寝てしまった。
すると、神のご加護か、翌朝、電話はつながっている。
(日頃の行いがいいからよね)と、自分の都合のいいように信じることにした。
数時間切れる、復活する。半日切れる、復活する。という状態がしばらく続いた。
が、ついに神のご加護を失ったらしく、数日たっても復活することはなかったのである。

「電話線が切れちゃった」と会社で話したら、みんな痛ましそうな顔をした。
「憧れてた人にあっさりふられちゃったのよねー」と言っても、
「あー、またなの。よく、ふられるね。あなたって、性格悪いもんね」などと、相手にされないが、今回は死ぬほど同情された。
「ボイラーが壊れた」 「トイレが水漏れする」 「電気の接触が悪い」など、何か修理が必要なときは、

「よって、八丈島に島流し」という宣告を受けたのと同じ。

これから、辛く、不便で、気が狂いそうなほど長い、長い、長い、日々を覚悟しなければならない。イギリスに住む日本人なら、この気持ちがわかるだろう。

まるで、「部族間の抗争により、村落ごと焼きうちに遭った。家が元通りになるのは一体いつになるやら」というくらいの深刻な出来事であり、遠い目をして自分の不幸に向き合わなければならない。

まず、床にがっくりと膝をつき、 「なぜ、なぜなの? どうして私がこんな目に・・・」と嘆き、涙をこぼしながら、イエローページをめくった。
「電話線が切れたら」の項を読む。まず、 「BTのせいで切れていたら、ただで直すけど、わざわざ修理に行ったのに、お宅の電話のせいだったら、お金をもらうからね」という脅し文句が書いてある。 「それがいやなら、まずチェック」という項目をひとつずつ確認していく。 「プラグがはずれていませんか? バッテリーが切れていませんか? 等々」「どれをやってもダメだったら、BTに電話ください」というところまでたどり着いた。

―――さて、電話線が切れているのに、どうやってBTに電話をすればいいのか?

で、携帯電話の登場だ。だが、ちょっと待てよ。
プレペイドの残金をチェックすると9ポンドしかない。
「あ、BTさん? 電話線が切れたんですが、修理に来てもらえますか? 住所はね・・・」と簡単にいくわけがない。
「ただいま、混み合っております。オペレーターにおつなぎするまで、少々お待ちください」というメッセージが延々と続くだろう。 「グリーンスリーブス」を500回くらい聞かされ、耳のタコがゴルフボールの大きさになるだろう。
オペレーターが出る前に、残金がなくなり、携帯電話の会社からも見放されて、突然、プツッと切れるのは明白だ。

そこで、友人に助けを求めることにする。商談をまとめるのが得意な友人で、ソフトなアプローチながらも、自分のゴールに誘導していくのが上手だ。
私のためにBTと交渉するために生まれてきたような人じゃないの!
「ああ、いいよ」と親切にも引き受けてくれた。
「後で連絡するから」と言うので、1時間ほど待った。
「いやー、オペレーターにつながるのに20分かかったよ」と友人。
―――やっぱりね。
「今日は土曜日だから無理だけど、来週の月曜に修理の人を寄こすって」
ま、そんなもんでしょ。でも、本当に来るのかな?
「たぶん、外の線の問題だから、家で待ってなくてもいいらしいよ」
それなら、いい。会社を休んで、エンジニアを待った挙句、すっぽかされたくない。

しかし、事態は意外な展開を見せた。(大げさだが、次週に続く! 乞う、ご期待!)

投稿者 lib : 08:03 PM | コメント (0)

February 07, 2008

1月の風物詩 その3

career2.gif 
電話線が切れたせいで、1月の風物詩が2月にずれこんでしまった。
ま、旧暦と思っていただきたい。

さて、その他、1月にやってくる Dがつく日というのは、
Debt (借金)のD と Depression (憂鬱)のD。

イギリスのバブルは日本より何年か遅れてやってきた。

不動産の価格が日々上昇し、株価も右肩上がり。
テレビでは 「今を楽しまなくてどうする!」 と堅実な暮らしをする人をバカにするようなクレジットカード会社のコマーシャルがガンガン流れた。

私やイギリスに住む日本人の友人たちが、
「この道は、いつか来たみちー。ああー、そうだよー。お母様の国で見たよねー」 
と、思わず北原白秋先生の歌を口ずさんだほど、そっくりさん。

質実剛健、古きを尊び、伝統を愛し、成金を侮蔑・・・していたはずのイギリス人は一体いずこへー? 

そう言えば、シティで若い女の子がデザイナーブランドのバッグを持っているのをポツポツ見かけるようになった頃が、イギリスバブルの始まりかも。

その昔、イギリス人の女の子はずいぶん地味だと感じたが、この頃は金のかかった、けっこう派手な格好をしている。 (ファッションセンスは、また別問題)
さて、これら流行アイテムはどうやって揃えているんでしょう?

―――そう、悪名高き、ストアカードである。

服を一枚買うたびに、
「ストアカード、いかがですかあ?」と聞かれる、アレだ。
「いいえ、けっこうです」と断っても、
「今日のお買い物が10%引きになりますよ」と、しつこい。

一度、相手があんまり熱心なので、面倒になって申し込んだら、ブティックの店員は目の前でクレジット会社に電話を入れ、他の客にも聞こえるような声で、私の個人情報 (住所とか電話番号とかね)を話し始めたので、思わずカウンターを乗り越えて、店員の首を絞めに行った。

買い物をするたびに、
「ストアカード、いかがですかあ?」で現金を払うこともなく、商品がどんどん手に入る。が、このストアカード、翌月に一括払いをしないと、利息がサラ金のようにつく恐ろしさ。

よく日本のドキュメンタリーでコンピューター処理されたモザイク顔と変換された音声で、「買い物依存症で借金が嵩み、今は風俗で働いてます」とインタビューに答えていたのを思い出す。

―――イギリスでは 「風俗に身を落とす」というのはあまり聞かないが、借金で首が回らなくなった女の子はどうしているのか? 

さて、シティはボーナスシーズンである。
男に人気なのはポルシェを始めとして、ハイパフォーマンスカー。
女は 「豊胸術」が最近の人気らしく、 「ボーナス貰って、 『ジョーダン』になろう!」が合言葉。 (*ジョーダンは人工バカデカバストのCリストタレントです)

が、そう言って、羽振りよくブイブイいわせていた連中も戦々恐々の状態だと聞いた。
アメリカのサブプライムローン問題でシティも揺れているからだ。

嵐の吹きすさぶ今年、シティグループは400人首切りした。そうでなくても、ボーナスに 「ドーナッツ」 を貰ったトレーダーも少なくないとか。
――ドーナッツとは真ん中が丸、つまりゼロ。

ドーナッツを食らったトレーダーなんて、 「旱魃の年の農夫」 「シケで海に出られない漁師」 「外反母趾でハイヒールがはけないダンサー」みたいなもの。
札束が飛び交わないシティに金融街としての意味があるんだろうか? 
(ま、私はもともと安い給料なので、関係ありませんが。)

さーて、今日はどこへも寄らず、家で安いワインでも飲むか・・・って、暗いぜ。

投稿者 lib : 09:55 PM | コメント (0)

January 30, 2008

1月の風物詩 その2

career2.gif 
先週は 「電話線が切れて、ブログ 1回やすみ」というスゴロクの目が出た。
この話はまた今度。

さてさて、1月には非公式に Dの字がつくスペシャルディがいくつかあるらしい。

D Day その1は Divorce (離婚)の頭文字を取った Dだそうだ。
日本なら、 ㋷ の日。 離婚の 「り」の字をとった、「丸り」の日、といったところか。

クリスマスが終わり、新年 (元旦のみ。シャンパンつきだが、田作りや数の子はなし)が明けると、弁護士事務所に駆け込んで、離婚の手続きに入る。
おめでたいはずの新春に不吉な離婚を決意するカップルが毎年山のようにいるというから、怖いじゃありませんか。

それを家庭問題専門の弁護士事務所が 「へえ、いらっしゃい!」ともみ手をしながら待っている。 「春のいちご農家」とか、「冬の温泉宿」と一緒で弁護士事務所の稼ぎ時、繁忙期である。

12月に盛んに行われたオフィスパーティでの浮気行為。クリスマスに招待した気の染まない親戚との会話。また、休暇で長時間いっしょに過ごした結果、相手のアラが目に付いた夫婦がお互いにうんざりし、離婚を決意するピークに達するそうである。

オフィスパーティでの男女間の乱れようは私も目の当たりにした。
面倒事に巻き込まれないよう、酒でみんなの道徳観や羞恥心が吹っ飛ぶ前、10時半ころにさっさとパーティを抜けて帰宅するようにしているのはそのためである。

12月、シティの某ワインバー。
ワインバーの一角をプライベートに占領して飲んでいるグループを見かけた。どこかの会社の飲み会らしい。なーんとなく、不気味な空気が流れているスポットがあったので目をやると、男と女がいちゃついている。
が、そのカップル、女のほうは40代の後半、男は20代の半ば。

―――なんだか、見てはならないものを見てしまったような・・・

まわりの同僚らしき連中も途方に暮れた顔で彼らの 「禁断の痴態」 を見て見ぬふりをしている。

「お似合いのカップル」ではなくて、 「不似合いのカップル」だったなあ、あれ。
ふたりとも酒でどこかが切れちゃった感じ。
(翌日、死ぬほど後悔するんだろうなー)と思った。
で、どちらかが既婚者だったりすると、即席の不倫カップルのできあがり (しかも、微妙に不釣合いだし)。

イギリス人の女友達によると、
「オフィスパーティで日頃は気にもしてない同僚についフラート。で、翌日、ボスや同僚から 『見たぞー』って、笑いものにされるし、その彼も気まずそうに目をそらすから、マジでイヤ。罪悪感からボーイフレンドとの関係もギクシャク」ということらしい。

―――ははは、自業自得だと思います。

クリスマス休暇にダメになるカップルというのは、
1. お互いの親戚 (義理の母親とかだろうね)に我慢ができないためとか、
2. 長い時間を一緒に過ごして、相手が鼻についてくるため、だそうです。

親戚に不満があるというのは日本でもよく聞く話だ。が、日本人は相手の親戚をなるべく立てて、自分は我慢をするほうを選ぶことが多いのに比べて、イギリス人は自我を通してしまうのをよく見る。
で、大喧嘩になっちゃうんだろうね。
「何よ、あなたのお母さんたら、私に嫌味ばかり」
「君のせいだよ。君のお母さんには香水を贈ったのに、僕の母には安いハンドクリームなんて、差別じゃないか」みたいな会話になるんだろうか。

――― 意地っ張りなイギリス人との口論は不毛です。

また、夫婦水入らずのホリディシーズンは離婚への近道らしい。

日本では口もきかないまま何年も過ごす 「家庭内離婚」もいるそうだ。憎悪を含んだ沈黙の日々の中で、家の内壁がドローと淀んでくると思われる。
自分の気持ちに正直に生きるイギリス人がスパスパ離婚するのと、どっちがいいんだろうね? 

投稿者 lib : 11:23 PM | コメント (4)

January 20, 2008

1月の風物詩 その1

career2.gif 
毎朝、同じ時間の通勤電車には、いつもの顔ぶれが、いつもの冬コートを着て、いつものマフラーをして乗り込んでくる。座る位置もほぼ一緒。まるで壁紙のようである。
それが一年に一度、模様替えされるのがクリスマスの後だ。

まず、マフラーや手袋など、小物が変わるのがクリスマス直後。
クリスマスプレゼントに貰ったらしい新顔の小物を身につけて登場する。そのまま、去年と同じ壁紙状態で通勤する人は、友達がいないとか、 「99ペンスのハンカチセット」しかくれないケチな人に囲まれているのかな、と思われる。

コートやハンドバック、ブーツみたいに値の張るものは新年に変わる。
これらは自力で手に入れたアフタークリスマスセールの勝利品らしい。

日本の衣替えは6月1日だが、イギリスのそれは1月1日と見受けられる。

バーゲンの日、朝早くから行列して開店を待ち、ドアが開くと同時になだれ込む群衆をテレビで映しているが、あの必死の形相って、怖いよね。中で待ち構える店員も、今年は誰がドアを開けるかで、もめたりするのではないだろうか。

「うわー、怖いよー。何で、たかが洋服を買うのに朝の4時から並んでるんだよ?」
「お前、開けろよ」
「いやだよ。最前列の奴らは目が血走ってるぜ。ドアを開けた瞬間が恐ろしいよ」
「俺もいやだ。去年は突き飛ばされて、転んだし。労災事故だよな、これ」
なんて、お互いに押し付けあっているかもしれない。

彼らはバーゲンで手に入れた新しいアイテムを着て、意気揚々と通勤。
が、ファッションセンスは去年のままなので、大金をはたいたわりに、変り映えしなかったりする・・・。

ある新聞で、スーパーモデルのケイト・モスがデザインしたシリーズの服を 「読者のみなさん」が試着してみる、という企画があった。

白いプレーンなTシャツ、サンドベージュのベスト、黒いショートパンツを着こなしたケイト・モスは 「クールでリラックスした大人のカジュアル」というスタイル。
が、 「読者のみなさん」は白のシャツとサンドベージュのベストで上半身が膨張して見える。しかも 「サイズ16の平均的イギリス女性」のムチムチな足がショートパンツからぼよーんと出ている様は 「潮干狩りに出かける中年太り婦人」のよう。
ゴム草履と貝掘りセットをバケツつきでお勧めしたくなるほどだ。

なんとも、むごい現実・・・。

というわけで、ローストターキー、ローストポテト、クリスマスプディングと大量のポートワインで変形した身体はスポーツジムに向かうのだった。

来るなー、と思う。ジムの常連は毎年、そう思う。
金の無駄使いだぞー、やめろー、やめておけー。

1月から2月にかけて、スポーツジムは異常に混む。自転車も、ランニングマシーンも、すごい行列。おまけに新入りは機械の使い方に慣れていないため、ますます時間がかかる。せっかくジムに行っても延々と待たされたんじゃ、出だしからつまづく。

そう言えば、日本の電車は4月の始めに特別混むよね。
新入生や社会人の卵はラッシュアワーに慣れていない。で、モタモタする連中が邪魔になって、全体が混乱する。ま、5月連休の頃までには新人さん達も 「電車乗り込み道」を習得し、いつもの秩序が戻ってくるのだが。

スポーツジムの場合は、みんなが 「慣れてくる」のではなく、新メンバーのほとんどが2ヶ月以内に「ドロップアウト」する。また、1月に大量導入されたデブメンバーを見かけなくなるのは、デブが治ったのではなく、来なくなっただけだ。

スポーツジムはメンバー登録をすると、最初の1年は解約できないところが多い。キャンペーンを張って、新メンバーを勧誘するが、全員が継続してジム通いをすれば、施設は目一杯で混雑する。ジムも 「落伍者率 9割5分」を知っているんだろうな。
「よっしゃー、今年こそは!」と決意も新たなメンバーもあっというまに脱落し、残り10ヶ月の会費はつつがなく回収されて、ジムはホクホク。現存メンバーも混雑が解消されて、ほっと一息つくのだった。

今月の教訓 - 新年の抱負に 「今年こそはジムの会員になり、運動する」という目標を立てるのは大きな間違いである。

―――家で縄跳びでもしなさい。安上がりだし。春になってから、おいで。

投稿者 lib : 05:34 PM | コメント (4)

January 09, 2008

初夢

career2.gif 
今年の初夢は、家のサンルームに洗濯ロープがたくさん張られ、古びたタオルや普段着の洗濯物を 「私」が干している。で、それを 「私」が風呂場の窓から眺めているというものであった。

ハッとして目覚める。

いかん、いかん、いかーん!!!

年に一度しかめぐってこない初夢。その年の運勢を左右するかもしれない初夢。
そんな大切な夢で古タオルなんか干している場合ではない。

幸運なことにまだ夜中だった。なんとか仕切りなおしたい。

心を落ち着かせ、 「純金の富士山」を背景に 「プラチナ製の鷹」が 「ダイアモンドでできたナスビ」をくわえて飛んでいるイメージを浮かべ、もう一度、眠りに落ちる。

数年前まで、私の夢の見方はすごく単純だった。
前日に蝶が飛ぶのを見れば、昆虫の夢を見る。前夜のテレビでアフリカの動物のドキュメンタリーを見れば、象の夢を見た。 
「夢を見る」というよりは、 「前日の出来事のおさらい」みたいなもの。

しかし、脳のほうも 「いくらなんでも、芸がなさすぎる」と反省したのか、最近はドラマ性に富んだものが多くなった。
「探偵が犯人を暴くためトリックをしかける」とか 「人妻が愛人と秘密の旅行を計画する」みたいな2時間枠のサスペンス劇場のような筋立てである。

――― せっかく睡眠をとって、 「休もう」としているのに、何のためにわざわざ脳がフルで活動しドラマを作っているのか、疑問ではあるが。

さて、初夢である。
せっかくの努力も空しく、その後は夢を見ることもなく目覚めてしまった。
こんな貧乏臭い初夢でいいのだろうか、2008年・・・。

うーむ、これはひとつ 「夢買い」をしてみようか。

北条政子が妹の 「吉夢」を買って、みごと将軍の奥方におさまったという話を聞いたことがある。妹を騙して運を横取りする根性は汚いが、この際だ、 「洗濯物を干す初夢」よりはマシだろう。

さて、誰から買おうか?

イギリス人に 「初夢」のコンセプトはないから、こっそりと良い夢を聞き出し、ビールのパイントかなんかをパブで奢って、夢を買ってしまおう。
数字が書かれた色とりどりのボールがグルグルと回って、はっきりした数字が6つ見える、なんて夢なら100ポンドくらいあげたっていいし。

「ねえ、ねえ。今年になって、何かいい夢見た?」と同僚に聞いてみる。
「面白い夢を見たよ。カフェでサンドイッチを食べていると、バイキングの一群に襲撃されて、まわりがみんな殺されるという夢」
ダメだ、ダメだ。そんな血なまぐさい夢。新春から縁起でもない。
「それでね、いつの間にか手にマシンガンを持っていて、敵をバシバシやっつけるんだ」
「・・・もしかして、クリスマス休暇に鼻血が出るほどゲームした?」
「そう。よくわかったね」
これはパス。

「最高の夢を見たよ」とニヤつく別の同僚。
「モーリシャスあたりかな? プライベートビーチに寝転んでいるんだ。クラッシュドアイスに注がれたダイキリかなんかを飲みながら」
よし、こいつはいいぞ。で、その続きは?
「でね、ビキニ姿のピチピチギャルがたくさんいて、僕に群がってくるんだよ」

・・・そうか、ピチピチギャルか。ピチピチギャルに用はない。 「ロケーション」は最高だし、 「夢の質」も悪くはないが、これは 「男性用」だな。

と、言ううちに新年も過ぎてしまい、私の初夢も公式に決定してしまったようだ。

その名も 「2008年 洗濯物を干すドッベルゲンガー」である。

かのフロイト大先生やユング先生。はたまたエドガー・ケイシー医師に分析してもらうと、一体どんな意味があるんでしょうね?

投稿者 lib : 07:13 PM | コメント (0)

December 19, 2007

ロンドン案内 その3

career2.gif 
初めてのヨーロッパという友人に楽しんでもらおうと張り切っていた私。しかし、仕事もあるので四六時中いっしょに行動はできない。

最初の週末を使って、交通機関の利用法をしっかり教え込む。トラベルカードが安くなる時間なんかを知らせておくのは当然だが、

「電車が止まったら、こうする」
「つり銭の間違いを防ぐために、ああする」

と、細かく指示している内に、
「あなたって、そんなに念には念を入れた性格だったっけ?」と不思議がられた。

いや、念を入れるつもりはないんですけどね。日本では考えられないようなトラブルがしょっちゅう起こるので、常に 「傾向と対策」を模索するくせが・・・。

逆に日本のホテルの受付で、
「明日、朝の6時に起こしてください」なんて、モーニングコールを頼むと、
「はい、かしこまりました」とあっさり言われ、
(え? こんなに簡単な手続きで大丈夫なんだろうか?)と不安になる。
イギリス暮らしのせいで、「口頭のみで書面にしない」 「一人だけに頼む」 「再確認しない」なんてことができない身体になっているのだ。

「長く住んでいるうちに用意周到になったわね」なんて言われて、
「大ざっぱで先のことなんか考えない、ノホホンとした私を返してー!」と叫びたいくらいだ。

友人をチャイナタウンの 「ウォンxx」に連れて行った。
これは 「シンプソンズ」でローストビーフをおごってくれた友人へのささやかなお礼。 ・・・確かに80ポンドのランチに対して、掛け値なしに 「ささやか」である。
ここは 「うまい」「安い」「早い」に加えて、 「店員の態度がガサツ」という四拍子そろった店だ。

「xxの歩き方」なんかを片手に貧乏旅行をする学生に人気のチャイニーズレストランだが、 「ルールズ」をご指名するような私の友人なら、まず、縁のない店だ。

しかし、私のように、たった一人で見知らぬ外国人の男と相席になりながら、3ポンド80ペンスのヌードルを食べるのがぜーんぜん平気、という女には便利な店だ。
コベントガーデンのオペラハウスに近いので、仕事帰りにオペラに行くとき、時間がかからないここを利用することがある。ま、服装的には浮いてしまうが。

この店で食べる作法は次のようである。

まず、窓に張ってあるメニューで注文するものを決める。
伝票はテーブルに来ないので、値段も覚えておく。席に着いてから、 「メニュー見せて」などと、まどろっこしいことを言わないためだ。これは立ち食いそば屋で 「お品書き見せて」と頼むようなものだ。

ドアを開けると、人数を指で示しながら入店する。
一人なら、入り口に近いエリアで他の人と 「相席」。二人以上なら、店の奥、二階、地下のどれかを指示され、そこでやはり他の客と 「相席」する。

席に着くと、おはしと急須、湯のみが投げ出されるように置かれ、
「何になさいますか?」ではなくて、
「何が欲しいんだよ?」と聞かれるので、あらかじめ決めておいた品を注文する。
二人以上の場合、別々のものを頼むと、一人が食べ終わってからもう一人の注文した料理が来たりするので注意が必要。

ここでは、ワインリストなんかは頼まないほうが賢明だ。(あるのか? この店に?)

実を言うと、私はこの店の 「異国情緒にあふれた場末感」が好き。特に 「ひとり食い」エリアにいる様々な国籍の人 (私も含むが)のしょぼい雰囲気がイカしている。
ちょっと冴えない服装のおじさんなんかと相席になると、
(旅行者にしては貧乏くさいな。出稼ぎかな? 正式な労働許可証なんか持ってない感じだよな)と勝手に決めつけたりする。

友人も 「おいしいわ」とは言わなかったものの、結構めずらしがってくれた。
「いかにも外国に来たって感じね。香港旅行を思い出さない?」
そうそう、そう言えば彼女と一緒に香港に行ったっけ。私だけが腹を下して・・・。

ここは 「香港なロンドン」だが、他にも 「アラブなロンドン」とか 「パキスタンなロンドン」もあるよ。

投稿者 lib : 10:52 PM | コメント (0)

December 13, 2007

ロンドン案内 その2

career2.gif 
日本から遊びに来た友人をミュージカルに連れて行くことになった。

レスタースクエアにある 「当日券 半額チケット売り場」で、彼女が選んだのはサヴォイホテル横のサヴォイシアターで「屋根の上のバイオリン弾き」だった。
55ポンドのチケットが手数料込みで30ポンド。

ふたりとも題名は知っているが、ストーリーは知らない。

「えーと、ロシアの話だよね?」と友人。
「ユダヤ人一家の話じゃなかったっけ?」と私。

――― ロシアに住むユダヤ人一家の話でした。

登場人物は多いのだが、ほとんど 「一人舞台」という感じで主人公がどんどん話を進めていく。主演の俳優は本当にチャーミング。日本でも有名な老俳優がロングランで演じていた覚えがある。

次は紅茶だ。

紅茶にまったく興味がなく、イギリスに住んでいながら、紅茶を飲むのは年にほんの数回という私と違い、友人は大の紅茶好き。

まず、紅茶の殿堂(?)フォートナム・メーソンに連れて行く。
彼女に 「特大サイズ」缶の 「ブレックファストティ」をおみやげにしたことがある。当時、深緑色だった缶のデザインは変わり、あのデカサイズはなくなってしまっていた。

ここでお土産用に10個も20個も、いや30個も40個も買っていく日本人は多い。
そんな客にお土産用に小分けする小さい袋を渡すのを拒否するのを見たことがある。
「ケチ」 「老舗のくせに不親切」 「袋なしでみやげを渡せって言うのかい」と思った。
私だったら、 「あ、そう」と10個なら、1個ずつ10回に分けて買い、そのたびに小袋を貰う、という、いやがらせで対抗してしまいそうだ。
最近はどうなのだろう? 顧客サービスが向上しただろうか? それとも、 「ほーらね、資源を大切にしましょう」と袋をくれないままなのか? ご存知の方はご一報ください。

このあと、コベント・ガーデンの 「ティーハウス」が続いた。
ここでも、私は彼女に 「キワモノ紅茶」を何度かおみやげにしている。
「キャラメルティ」とか、 「サマー・プディング」とかね。でも、紅茶好きには、キワモノより、伝統的なフレーバーのほうがいいらしい。
ま、そうだろうね。コーヒーが好きな私も 「ブルーマウンテン-猿の腰かけ風味」なんか貰ってもうれしくないだろうし。

彼女はこのほかにも普通のスーパーで、「イギリス庶民が飲む日常の紅茶」も数箱お求めになった。

紅茶が好きな人は 「粉モノの乾きモノ」も好きらしい。つまり、小麦粉でできた 「パン」「ケーキ」「ビスケット」。これまた、私には興味がない食物群だ。

友人は「スコーンが食べたい」と言う。はずかしながら、イギリスに10年以上も暮らしながら、スコーンを買ったことがない。
昔、どこかのカフェで一度だけスコーンを食べたが、あまりの 「粉くささ」に口の中がパサパサになって、喉がつまりそうになり、パニックを起こしそうになって以来、
「嫌いな食べ物」のカテゴリーに入れていたのだ。

しかし、遠来の客のために、一肌、脱がなければならない(大げさ)。

(プレーンに、チーズ入り、ドライフルーツのもあるな・・・)と生まれて初めてスコーンの棚の前に立ち、悩むこと数分。
――― 悩んだら、とりあえず、基本、という法則でプレーンを買って渡した。

スコーンと 「クロテッドクリーム」による、 「クリーム・ティ」と体験してもらうために、友人をコッツウォルズに送り込むことにする。

友人の 「イギリスで食べたいもの-リクエスト特集」を聞いていると、 「紅茶に興味なし」 「粉モノの乾きモノを食べない」 「ローストビーフより韓国焼肉を好む」私がなぜイギリスに住んでいるのか、という疑問が湧いてくる。・・・・なぜかしらん?


PS. 全然関係ない話。 マリー・アントワネットの真珠の首飾りが落札最低希望価格に届かず、競売が成立しなかったそうだ。ギロチンにかかって死んだ女性の 「首」飾りなんて、これ以上縁起が悪いものも考えられない。私なら、お金もらっても所有したくないね。

投稿者 lib : 06:23 PM | コメント (0)

December 07, 2007

ロンドン案内 その1

career2.gif 
日本から友達が遊びに来た。
ロンドンで何が見たい、何がしたいというのは、人によって違うので、それに合わせて色々なところへ連れて行くことにしている。

「リバティプリントの小物が欲しい」とか、
「ハロッズのショッピングバッグが買いたい」というのは楽勝だが、
「ロンドン橋が跳ね上がるのを見たい」とか言われると困る。
タワーブリッジとの勘違いは指摘できるとしても、橋が開くのは特別大きな船が通るときに限られている。ロンドンっ子でもめったに見られない瞬間だ。
いくら納税者でも、一市民にすぎない私の一存では・・・。

「ロンドンアイに乗って、矢井田瞳の歌が歌いたい」というのもあった。
「え? 『焼いた瞳』?」
「ヤイコってシンガーなの」と親戚の子。
(焼いた瞳か・・・。「全日本 眼科医 レーザー治療研究会 今月の議題」みたいな名前だな)としばらく思っていた。

さて、友人はロンドンの観光名所を一通り見てから、田舎に行き、B&Bに泊まりたいと言う。

「それから、ローストビーフとヨークシャープディングが食べたい。『ルールズ』がいいな。おごるわよ」とのことである。
「御意 (ぎょい)」と承ったが、生憎、希望日に席が空いていない。
「二番手として、 『シンプソンズ・イン・ストランド』はいかがざましょ?」と聞いたところ、
「よきにはからえ」との答えである。
店に電話をすると、 「Tシャツやジーパンで来ないでくださいね」と言われた。
アメリカ人観光客じゃないから、大丈夫よー。

シンプソンズに私が予約を入れ、彼女が支払いをするという絶妙のコンビネーション。

これは学生のとき、クラスで寿司屋に行き、隣に座った子から、
「あたし、ウニ、イクラ、トロは苦手なの。代わりに食べてね」と言われ、盆と正月がいっぺんに来たような気分になって以来のことである。

ローストビーフは以前、サヴォイでも食べたことがある。
目の前で切り分けてくれるので、カッコいいのだが、私としては心ひそかに
(韓国の焼肉のほうがおいしい・・・)という感想を持った。
料理自慢の友人のもてなしも受けたが、肉質が硬かったり、焼きすぎだったりで、あまりおいしいのにめぐり合ったことはない。

シンプソンズのローストビーフはおいしかった。 (でも、やはりカルビのほうが好き)
焼き加減は無難なところでミディアムを頼む。ミディアムといっても、レストランによって、レアに近いミディアムだったり、ウェルダンのようなミディアムだったりと、ずいぶん違う。 「xxでよろしく」と言っても、どんな状態でサーブされるかはギャンブルみたいなものだ。

「ミディアムなのに、中心がピンク色じゃないね」とシェフの前で堂々と言い合う。
こんなとき、日本語って便利よね。何を言ってるかわからないだろうし。
グレービーはサラサラした液状で、ちょっと新鮮に見えたのは、日頃、安価な 「インスタント」グレービーのトロリとした感じに慣れているせいだろう。

肉にはホースラディッシュ。付け合わせにローストポテトとキャベツがついてきた。
どうせ食べきれないだろうと、スターターはなし。
酒を飲まない彼女はミネラルウォーター。私はグラスワインを頼む。しっかりしたレッドでおいしかった。

お腹はいっぱいだったが、ここまで来て、デザートなしというのも悔しい。
「ギャル曽根、させてもらうわ」と気合を入れる友人。よし、私も受けて立とう。
カスタードソースのかかったハニースポンジケーキを一つだけとって、二人で分ける。
これもおいしかったけど、すごく甘い。
「喉がひりひりするんだけど、これって甘さのせい?」
「やっぱり? 私も喉が痛い」と囁きあう私たち。
ひりつく喉をさすりながら談笑するふたりは 「いやー、満足、満足」と言っているように見えただろう。

ローストビーフは一人前が23ポンド。ワインはグラスで7ポンド。ミネラルウォーター、デザート、コーヒー、紅茶の全部で80ポンドくらいだったと思う。

次のお言葉は、
「ミュージカルが見たい。おごるから」とのことであった。
「御意」と申しつかって、次回に続く。

投稿者 lib : 12:17 AM | コメント (2)

November 14, 2007

オフィスラブ 独身編 その2

career2.gif 
同僚のT嬢はイギリス人で30代のはじめである。 「彼氏いない歴」がもう2年に近い。昔のボーイフレンドは煮え切らない態度にうんざりした彼女のほうからふったのだが、最近、その彼に新しい彼女ができたと聞き、内心おだやかではないらしい。

以前にスピードデート (2006年3月9日のブログ)に同伴したのだが、つきそった私のほうが盛り上がって大騒ぎしてしまい、彼女に恥ずかしい思いをさせた過去がある。あのときはごめんね。

さて、T嬢はかわいい顔をしているので、男の同僚の中にも彼女が気になっているのが数名いるようだ。

O氏は30代の半ば。 「仕事ができる奴」とみんなから評価されている。
「妻とうまくいっていない」と言い張る彼はT嬢に色目を使う。
「彼って、ちょっとセクシーだと思うのよね」と告白するT嬢。
・・・え? そうなの? 

O氏は強引で男っぽく、性格こそ抜け目のないビジネスマンという感じだが、
「りんごのほっぺ」というか 「赤ら顔」というか、「白人特有の広範囲に渡るピンク色のほほ」をしている。金髪白人女のT嬢の目に映る 「セクシーな男」は日本人の私には 「日に焼けた田舎のおじさん」に見える。
ビジネススーツを着てシティで働くよりは、古びたセーターとウールのジャケット姿で羊を追ったり、牛の出産に立会いそうなほっぺたの色だ。

スイスの山並みを背景に立たせたら、 「アルプスの少女 ハイジ」と手に手を取って、頭のてっぺんから出る甲高い声で「ホールレイッヒー」と歌い始めるかもしれない。

どちらにしろ、彼は既婚者なのでT嬢はお誘いにのる気はないらしい。


P氏は40前。がっしりとして、背がすごく高く、 「濃い顔」をしているので、ちょっと 「ジョージ・クルーニ風」だ。
そうです。ジョージ・クルーニ。もう一度、言いましょうか? ジョージ・クルーニ。
「彼ってハンサムだと思わない?」とT嬢。
確かにルックスは悪くないと思う。ゆったりとした話し方も、知らない人にはおっとりと渋い雰囲気を与えるかもしれない。

しかし、彼の話はポイントにたどりつくのに延々と時間がかかり、イライラする。
「あー」とか「うー」と、もたついたり、話の途中でも、しばしば数秒間の沈黙がある。
新しい酸素を含んだ血が頭の中にゆっくりと流れ込んでくるのを待っているような悠長な話し方に、 「起きろー」と肩をつかんで揺さぶりたい衝動にかられる。

それで、つい、
「うどの大木」という言葉を思い出したり、
「大男、総身に知恵が回りかね」なんてフレーズが頭に浮かんだりする。

デートで割り勘、なんて場面を想定してみよう。お勘定が40ポンドなら問題ない。しかし、ふたりで35ポンドだと、彼に計算でき・・・(以下、省略)。


Q氏も30代の後半だ。バツイチの彼はT嬢への思いをはっきりと態度で示している。
パブで私が飲み物を頼んでも忘れてしまうが、T嬢のためなら、すぐにお替りを取りに行く。差別するなよー。
Q氏は彼女の席の横を通る度にうっとりとした視線を投げかけるそうだ。
彼からは何度もデートに誘われているらしいが、T嬢はうんと言わない。
なぜなら・・・、
T嬢は170センチで、いつも7センチくらいのヒールを履いている。つまり、180センチに近い身長だ。一方、Q氏はうーんと小柄。
ま、身長差はさておいても、彼の場合、

―――顔が 「ガマガエル」に似ている。

「彼に見つめられると全身に寒気が走るの」とT嬢。
「無理ないよ。あれだけ、ブxxxだと」と本当のことは言えないので、
「相性が悪いのかしらねえ・・・」と言葉をにごすことにしている。

最近、T嬢は社内恋愛をあきらめて、インターネットでの恋人さがしを始めた。


PS. 日本から友人が遊びに来るので、ブログを数週間お休みします。彼女はヨーロッパに来るのは初めて。一緒に遊びまくる予定です。

投稿者 lib : 10:08 PM | コメント (0)

November 07, 2007

オフィスラブ 独身編 その1

career2.gif 
オフィスラブはイギリスでも盛んなようである。

月曜日から金曜日まで、毎日、顔をつきあわせ、さらに、勤務時間外も一緒に過ごしたいというのは見上げた根性だ。飽きないのかね?

うちの会社でも社内恋愛は楽しいゴシップだ。
これらの情報交換は男の同僚や上司も出入りする給湯室ではなく、レディスを中心に行われる。情報もれを防ぐため、個室のドアを次々と蹴りあけ、人が潜んでいないことがまず確認される。

「営業部の彼と秘書課のあの子が 『C&B』で一緒に飲んでいた」とか。
ここで問題になるのが、 「どこで」飲んでいたか、だ。
私もボスや同僚、男友達と一緒に 「男と女のふたりきり」で飲むことはある。
が、それがシティのパブやワインバーなら、誰に見られても構わないような 「怪しくない仲」か、 「公認の正式なカップル」だと思われる。
シティから少し離れた場所だと、もしかすると 「人目を忍ぶ仲」かもしれない。

「あの二人じゃ、ミスマッチよね」
「もって3ヶ月かな?」
「いや、もっと短いかも・・・」
と、ダメになるまでの期間の予測も同時に行われる。

同僚のA君は30代の前半。涼やかな目元で顔立ちも整い、背も高いグッドルッキングな好青年だ。 「そろそろ結婚して、子供が欲しい」と周囲に洩らしており、妻となるべき女性を社内の同僚から物色しているようである。

B嬢とは数回のデートをした。彼のほうはもう少し深いおつきあいを、と考えたらしいが、20歳になったばかりのB嬢はその気がなかったとか。彼より、かなり年下だしね。
その後は二人の業務連絡に気まずい雰囲気が漂う。

C嬢とはオフィスパーティのあったワインバーの隅の暗がりで 「たいへん親密そうな雰囲気」にあったことが報告されている。が、翌日、すっかり酔いが醒めてしまうと、C嬢に対する気持ちに変化があったらしく、 「やる気まんまん」なC嬢からの再三のデートのお誘いをのらりくらりとかわした挙句、メールで 「現在は忙しいので、ちょっと・・・」と返事を送った。腹を立てたC嬢がわざわざ彼のデスクにやって来て、 
「面と向かってきちんと言えないなんて。あんたなんか、ゲスよ」という趣旨の発言があったらしい。当然ながら、二人の間の空気もとげとげしい。

彼は最近、D嬢を気に入っているようだが、彼女とデートをしたことがあるかどうかは不明。ただし、D嬢は言葉の端々や服装から 「相当な金持ちで、良家の令嬢」であることは明白で、庶民的なA君からのアプローチを 「家柄がつりあわないから」と断るのではないかとの観測が流れている。

E嬢はかわいくて愛想のいい、職場の花的存在だ。
A君は彼女のことも悪く思っていないようだが、彼女はF君と時々ランチをする仲らしい。みんなでパブに行ったとき、F君が彼女を店の外に連れ出して、しばらく二人きりの時間を過ごしたのを私は目撃している。

というわけで、A君の 「花嫁探し」の道は険しいようである。
なんだか 「職場の女、誰でも手当たり次第」のようにも見えるのだが、彼としては真摯な態度で相手を探しているんでしょうねえ。たぶん。

A君はハンサムだが、前頭部の頭髪の毛根が 「溌剌としていない」ことに気づく。
数年以内に 「額部分の面積の拡大」が予想されるため、老婆心ながら、婚約の早期実現を祈るものである。

私のセクションはボスを始めとして年齢層が高い。そのため、色恋沙汰は、
「娘が来年あたりに結婚するかもしれない」とか、 
「息子のガールフレンドは気立ての良い娘さんだ」などと、 「次世代ネタ」だ。

たまに、 「新しい受付嬢はかわいい」 「いや、経理の子の方が」などと意見の交換がされているが、純粋に 「観賞用」のようで、 「実践対象」ではないようだ。
本人たちの 「恋愛能力」はすっかり枯れ切っている空気が濃厚。
もっとも、「若い頃はずいぶん女を泣かせたもんだぜ」みたいな華やかな過去にも、まったく縁がなかったと思われるメンバーなので、何をいまさら、って気もするが。

「いやー、昨日、ワインバーでxx君と**さんがキスしているのを見ちゃったよ。あの二人がつきあっているなんて、知らなかった」
とボスが興奮して話しているのを聞いたことがある。
初めてラブシーンを見た中学生の少年のようで、少し情けなかった。

投稿者 lib : 09:52 PM | コメント (2)

October 31, 2007

ケンブリッジ大学 学生寮

career2.gif 
紅葉の美しいケンブリッジに行った。友人の息子のM君が大学生活を送っているのだ。

シティという 「ビジネスマンのおやじの巣窟」で働く私には、賢そうな若者が青春しているケンブリッジ訪問はいい気分転換になる。

いいねえ、若い人は生き生きとしていて・・・(私のコメントのほうが余程おやじ臭い)

どのレストランも大学生とその親、というグループで一杯。
「ホホホホ、宅の子はデキが良くて、ケンブリッジ大学に行っておりますの。その辺を歩いているアホガキとは違うざます」と日頃は自慢していても、ここでは石を投げればケンブリッジの学生に当たるという土地柄だ。(注:本当に石を投げてはいけません)

M君のカレッジは創立されてから30年足らず。ケンブリッジのカレッジはどこも数百年もの歴史があると思い込んでいたけど。大金持ちがポーンと10ミリオンポンド (現在ではたいした金額ではないけど)を寄付して、このカレッジが誕生。
建物の雰囲気が何かに似ていると思ったら、バービカンセンターだ。なんだか、人を迷子にさせよう、という悪意が感じられる迷路チックな構造だ。同じ建築家の設計ではないだろうな。

さて、M君の学生寮に案内された。ベッドとデスクが置かれたシングルルームで、クロゼットがあり、コンパクトなバスルームがついている。日本なら、1泊1万円 (税込み)の中級ビジネスホテル、みたいな雰囲気だ。寮費は月に300ポンドだって。

しかし・・・さすがは男の大学生の部屋。想像を絶する汚さだ。ちょうど彼の友人ふたりが来ていて、サンドイッチとベークドポテトを食べている最中だったが、よく、食べられるわ、こんなゴミ溜め・・・いや、混乱した部屋で。
足の踏み場もないとはこのことだ。ベッドの上になぜかフライパンがあり、中にはひからびたチーズと変色したケチャップ、煙草の吸殻が。服は床に散乱し、椅子には不気味なシミのついたバスタオルがかかっている。

「その辺に座ってください。遠慮なく」って・・・ごめん、遠慮してもいい?
友人は頭から湯気をたてて、部屋の汚さを罵った。

大学の学生寮を見るのはこれで3ヶ所だと思う。
MITこと、マサチューセッツ工科大学に知り合いが通っていて、中を見せてもらったことがある。ふたり部屋だったが、広々としてきれいなので驚いた。さすがは高い授業料で有名なアメリカの大学。こうやって、資本主義のイロハを学生に叩きこむのね。

一方、私の大学の女子寮はしょぼかった。夏期講習で泊まってぞっとした。
数名の寮母さんも住み込みで、まるっきり男っ気なしの 「女の園」。
同じ「女の園」でも、 「宝塚」と違って、スパンコールや羽飾り、金ラメや舞台メイクがないので華やかさには無縁。古い木造の建物と寮母さんの油っけのないパサついた感じがなんともマッチしていて、いかにもくすんだ場所だった。
「親元を離れた。これで門限もなし。監視もない。よっしゃー、遊ぶぞー」と意気盛んだった私が断固として寮に入ることを拒否したのは当然だ。

部屋の汚さを怒られるのにうんざりしたM君は話題を変える。
「グラマースクールで一緒だったD君ね。休学して療養中なんだよ」
すごい教育ママだったD君の母親を友人は覚えていた。当時、まだ11歳の息子の将来を細かく計画していて、GCSEではどの科目、Aレベルではどの科目を履修し、オックスブリッジ (オックスフォード大とケンブリッジ大のこと)に進学し、弁護士になった後、家業を継ぐ、と、のんびりした友人を圧倒する 「猛烈ママ」だったらしい。
残念ながら、D君はオックスブリッジに合格できず、別の大学に入った。その大学も一流校だったが、親はがっかり。そんな親に罪悪感を持ったのか、それとも親から離れてタガがはずれたのか、D君はドラッグに走って身体をこわし、強制入院。

げに、恐ろしや、親のプレッシャー。

「ふーん、D君、大変そうだね」と友人は言ったものの、また部屋を整頓しろとガミガミ文句を言い出した。
「大学生が部屋の片付けなんか考えないよ。頭の中にはパーティとか、パブとか、ガールフレンドしかないって。それに、あまり叱りつけるとD君みたいになっちゃうよ」とからかった。
「うちの息子に限っては、そんなことはない」と言い切る友人。
なんで、と聞くと、
「ドラッグは金がかかる。ドラッグ漬になるには、さらに金がかかる。金持ちのD君の家と違い、サラリーマンのうちの家庭では、ギリギリの生活費しか息子に仕送りしていないから」とのことであった。

貧乏な学生生活のため、麻薬ジャンキーにならなくてすむM君。親の愛をとくと感じて欲しい。

投稿者 lib : 08:03 PM | コメント (0)

October 24, 2007

白トリュフ

career2.gif 
白トリュフというものを生まれて初めて食べた。

「普通のトリュフ」なら、何度か食べたことはある。
「こちらがトリュフでございます」と、うやうやしくサーブされた皿の上には、顕微鏡がないと見えないくらいの大きさのトリュフがのっている。

「味わう」なんてものではなくて、 「歯の間に、はさまって」おしまいだ。
(ん? あの貴重なトリュフは一体どこに行っちゃったんでしょう? 口の中のどこかにあるはずなんだけど・・・)と行方不明になってしまう。

今回の食事会の主催者はA嬢である。
わざわざイタリアのアルバという所へ白トリュフを買出しに行き、それをリージェントストリートの裏にある某日本食レストランで調理してもらい、みんなで食べよう、という企画だ。
「食べたい。ぜったい食べてみたい。食べさせてー」と食い意地の張った私は、即、参加を希望。

友人と出かけた。レストランの地下は貸切で、日本人を中心として30人(?)ばかりが集まっている。(がっちり、食べさせてもらいます)と熱気にあふれている。

「これが、トリュフと白トリュフ」とA嬢がみんなに見せて回る。
トリュフは黒くて、ライチーを思わせるボコボコした表面でゴルフボールくらいの大きさだ。白トリュフはピンポン玉くらい、やや灰色がかった紙粘土をこねたような感じ。
強烈な香りがする。その大きさの物ひとつの現地価格が60ポンド(ユーロ?)だとか。

「豚を使って捜すんだよね?」と聞いたら、白トリュフは土の中のかなり深いところにあり、訓練された犬が掘り当てたらしい。

そういえば、子供の頃、何度か松茸狩りに行ったのを思い出す。
祖父母の土地に 「マツタケ山」つまり、赤松の林がある山があり、 「晩御飯のおかず」を採りに行った。親戚のおじさんや従兄弟が次々と見つけるのに、私は一本も探せない。見かねたおじさんから、
「はい、右に1歩、前に3歩、進んでごらん。手を前に伸ばして、そこでしゃがむ」
といった指示があり、やっと手にする事ができたのだった。

――私はキノコ採集能力に関しては 「豚」以下で 「犬」以下です。

このディナー。スターターは卵とサラダ(温泉卵だってさ)。 その皿の中へスタッフが白トリュフをスライスしてくれた。待望の白トリュフ、1.5センチ四方の薄いスライスが2枚きた。

さて、そのお味は? 

・・・味はない。香りはすばらしいが、何の味もない。歯ざわりは生のマッシュルームという感じ。

「香りが重要なのだから、いけない非合法の粉薬みたいに、片方の鼻の穴を押さえて、深く息を吸ってみたらどうだろう?」 「食べずに鼻の下にセロテープで貼り付けておくのは?」と意見を出したが、無視された。(当たり前)

メインコースはリゾットとビーフのフィレステーキ。デザートはアイスクリームとポテトのパンケーキ。それぞれにトリュフのスライスが添えられている。
メインコースからレッドワインにして、珍味を堪能。
トリュフ代と食事、ワインでひとり50ポンドくらいを払った。

A嬢にお礼を言って店を出たのが11時前。
「おいしかったけど、量が少なかった」
「ちょっと、お腹すいてる」
「日本なら、ラーメン屋にくりだすところだね」
と酔っ払ったサラリーマンのおやじのような私たち3人の会話。

「あ、あんなところにインドネシアン・レストランが!」

ごめんなさい、A嬢。告白します。
私たちはここで、 「ナシ・ゴーレン」と 「ガドガドサラダ」と 「ラクサ」を食べてしまいました。
「最高級の白トリュフディナーの後でガドガドサラダを食べただとー! あなたたちに白トリュフを食べる資格はない!」とA嬢に怒られるかな? 心配なんですけど。

どうか、粗野な私たちを許して・・・。また、呼んでね。

投稿者 lib : 07:53 PM | コメント (0)

October 18, 2007

ナンパの女王 その2

career2.gif 
ナンパには「甲種」と「乙種」があるのではないか。

「甲種」というのは、美人で清楚な女性が、若くハンサムで性格もよく、お金持ちの男性に一目惚れされる。いわゆる 「見初められる」というやつだ。これは意地悪な親戚筋の横ヤリがなければ、「玉の輿婚」へと進むことになる。
これは「大吉」のナンパだ。

一方、「乙種」は素性のわからないボケ野郎に道端ですれ違いざま声をかけられるもの。運悪くそこに通りかかったために、「浮遊霊」に肩に乗られちゃったような「縁起の悪い」ナンパである。なぜか、私はこれによくひっかかる。

現在までのところ、一番、最低だったのはたぶん、これ。
「あ、君。これ、あげるよ」
と道端で差し出されたのは、何とパック入りの「ゴム製品」だ。
「あ、どうも・・・」と納得いかないままにも冷静に受け取って、その場を去った。
もしかすると、そのにいちゃんは
「キャー、いやーん」と騒ぎながら、走り去る女が見たかったのかもしれない。
新装開店の美容院の宣伝ティッシュペーパーでも受け取るような淡々とした態度の私には不満だったかも。

ま、「ナンパ男」というよりは「変態男」のカテゴリーだな。

「君の足首に魅せられた。どうです、お茶でも」と話しかけてきたおじさんがいた。
足首・・・。足首ねえ。
高級そうなビジネススーツを着たおやじである。ちゃんとした企業でそれなりの役職にも就いていそうな風貌だ。妻子がいて、息子は受験生、みたいな年代だ。

それでいて、「足首フェチ」なのか? しかも、それをうれしそうに堂々と・・・。

「いい足首してるねえ」
「あら、自慢の足首なのよ。うれしいわ。お茶でも飲みましょ」
なんて、展開になる可能性は100億分の1、くらいに思えるが。

ロンドンの道端でのナンパは私的統計で中近東男がダントツに多い。
「いま、何時ですか?」「バス乗り場はどこでしょう?」と話しかけて足を止めさせ、そのまま「お茶でも」と誘うものだ。

先日は少し手の込んだナンパ野郎に出会った。

「あ、君。xxで働いていなかった?」 (xxは会社名ではなくて、業界名)
「ええ、以前、**で働いていたけど・・・」 (**は会社名を入れてしまった。ボケた私)
「僕も**で働いていたんだよ。いやー、懐かしいな。どうだい、その辺でお茶でも」
「ええっと・・・。あなたはどこのセクションで働いていたの?」
「ああ・・・、あちこちね。いろいろ・・・」

ここで、やっと私の頭の中のブザーが鳴った。社内の「あちこち」で働く奴がどこにいる? IT部門なら、 「あちこち」のコンピューターを修理したり、アップデートしたりするかもしれないが、それなら、ITチームと答えるはずだ。

考えてみれば、シティで働くスーツを着た日本人なら業界は限られる。
象の飼育係とか、常磐津の師匠、かまぼこ製造業、なんてのはいないはずで、金融関連の2、3の業種に必ず当てはまるはずだ。
xxと言ったのは、確率が一番高いからだろう。

「ねえ、携帯の番号か、メールアドレスを教えてよ」
さすがに 「携帯もコンピューターも持ってない」とは言えないよな、いまどき。
「家にはガスも電気も来ていません。水は井戸から」みたいに聞こえるし。

――日本だったら、こんなときには「リカちゃん電話」の番号を渡すことになっていた。ナンパ男が貰った電話番号にかけると「わたし、リカちゃん」と小学校5年生の少女が電話に出るという仕掛けだ。おまけに彼女には「ワタル君」というボーイフレンドがすでに存在する。

赤の他人に対しても「八方美人」でいたい私は「いやです」と言うのが嫌いだ。で、
「ちょうど、番号を変えたばかりで覚えてないの。あなたの番号をちょうだい。こちらからかけるから」と言うことが多い。

みんな、どうやって断ってます? しかし、「乙種」につけこまれる私に問題があるな。不徳のいたすところである。

投稿者 lib : 03:26 PM | コメント (0)

October 11, 2007

クリカラモンモン -刺青観察記

career2.gif 
秋になり、道行く人も長袖姿が増えてきた。やれやれ、おかげで見苦しいものをいろいろ見なくてもすむ。

私は刺青が苦手。

古風な日本人としては、刺青には何となく、 「あの系列の人たち」のイメージがつきまとう。

(痛くないのか、不衛生な針から 「肝炎」に伝染することはないのか)と、他人事ながら心配。街中にある 「タトゥーショップ」もオドロオドロしい感じがする。
ヘルズエンジェルズみたいな男が 「昔の男の名前」を右腕に彫っている 「情婦」の左腕に、新しく「自分の名前」を彫らせる、みたいな場末感が満載だ。

若い女の子がときどき 「ワンポイント刺青」をしているのを見かける。肩甲骨のあたりとか、ジーンズとシャツの隙間になるお尻の上、足首とかに3センチ四方くらいの花とかキャラが彫られている。軽いファッション感覚なんだろうね。

電車に乗っているとき、隣に座っているイギリス人の女の丸々とした二の腕に刺青があるのが気になった。何となく、馴染みのあるキャラクターだが、判別できない。
筋金入りの労働者階級の強面のおねえさんという雰囲気で、この手の人を見つめるのは、その筋の人にガンをつけるのと一緒。ジロジロ見るのはご法度だ。

しかし、気になる。

「なーに、見てんだよ。あんた」などと言われないように、そーっと横目でしばらく眺めた結果、刺青はミッキーマウスと飛行機だった。
と、いうか、変形した 「元 ミッキーマウス」と 「元 飛行機」だ。

ティーンエイジャーの頃、粋がって、刺青を入れたのはいいが、当時はサイズ10のほっそりした少女だったのでは? 現在はサイズ24という、どすこい体型。
腕の膨張と共に横にびよーんと引っぱられ、図柄が平べったくなっているので、パッと見た目には何なのかわからなかったのだ。刺青するなら、体重のキープに気をつけたい。

―――彫るなら、太るな。太るなら、彫るな。

と思った。怖そうなおねえさんなので、もちろん口には出さなかったが。

友人が会社の研修で二泊三日でスペインに出かけたという。(いい会社だな)
研修が午後に終わると自由時間となり、ホテルのプールで泳ぐという毎日だったとか。
が、上司のひとりはプールサイドで浮かない顔をしたまま、見ているだけ。すごい暑さなのに長袖のシャツを着たままだ。
「泳げばいいのに」と言うと、
「いや、実は・・・」とシャツをこっそりとめくってみせる。

と、あーら、びっくり。広範囲にびっしりと刺青。 「ワンポイント・ファッション刺青」ではなくて、本格的な刺青だ。日頃のビジネススーツの下にはこんなものが・・・。

「どうしよう・・・。泳ぎたいんだけど、みんな、気にするかな?」
彼はその部門ではヨーロッパ全体の統括者で、お偉いさんだ。
「・・・やめといたほうが、いいんじゃない」と友人はアドバイスしたという。
「そうだよな・・・」と悲しそうにあきらめたらしい。

やっぱり、エリートビジネスマンとしてはまずいよな、全身の倶利伽羅紋紋。

一度、同僚のひとりと一緒に日本へ出張をした。彼は海軍の出身者によくいるように、刺青を入れている。本人は自慢らしく、よく会社で袖をめくって見せていた。
他の同僚の反応は 「刺青なんか見せびらかして、子供っぽい」と冷ややかだったが。
日本に行くことが決まったとき、
「日本では刺青を嫌う人もいるので、いつも長袖を着て、クライアントの目に触れさせないように」と厳重注意をしておいた。
が、あるミーティングで彼が書類を取ろうと手を伸ばしたときに、袖口から刺青がチラリ。私は思わず身体を投げ出して、彼の腕に覆いかぶさり、クライアントに気づかれないようにしたのだった。冷や汗が流れたわい。

彼は何年も前に辞めていったのだが、現在は漁師をしているらしい。(実話)
海の男なら、刺青もいいかもね。

投稿者 lib : 01:38 AM | コメント (2)

October 04, 2007

ナンパの女王 その1

career2.gif 
私は 「ナンパの女王」である。
と、いっても、知らない男にやたらと声をかけるとか、もてて、もてて、ナンパをされまくっているという意味ではない。

「変な奴」にナンパをされる、また、 「変なナンパ」をされることが多い。
「変なナンパ専門、の女王」略して、 「ヘナンパ女王」といえる。 「カメハメハ大王」みたいだが。

何の因果で出会い頭に 「結婚していますか?」と色々な国籍の男から聞かれるのか?

その1 日本人編
中学生のとき、クラスメートに誘われて教会に行ってみた。好奇心旺盛なお年頃だ。
牧師さんだか、神父さんの説教を聞き、賛美歌を歌ったり、お祈り (のまね)をした。
その後、グループに分かれた 「日曜学校」では聖書研究とキリスト教の勉強会。
大学生が数人と私たち中学生が同数くらいで始まった。

と、初対面の大学生のお兄さんのひとりが私に向かって、突然、
「ねえ、君。もう結婚してるの?」と聞く。
「え? いいえ」と私。
――― 源氏物語ではあるまいし、現代の日本では13歳で結婚することは法律に触れます。
「あ、そう。じゃ、大学生なんだね」とひとりで納得。
あまりに唐突な言動に私も友人たちも 「まだ中学生です」と言えなかった。

後日、その大学生が私に会いたがっていると聞いたが、非常識なロリコン男はパスさせてもらう。キリスト教徒に対して、大きな疑問を持たせた出来事だった。

その2 中近東系
半年ばかり、ロンドンの東の郊外に住んでいたことがある。あのあたりは中近東系の住人が多く、独特のナンパスタイルがあるようだ。
中近東出身の男は押しが強いというか、しつこい気がする。しかも、以前に日本のドラマが放映されていたらしく、日本人の女に対する憧れが強いと聞いた。
そのせいか、バスの中や道端でも何度もむちゃくちゃなナンパをされた。

「一緒に食事でもしない? 君の好きなものを何でもおごってあげるよ。次の停留所で降りて、マクドナルドに行かないか?」と誘われたこともある。 
―――なぜ、マクドナルド? ゴードン・ラムジーの店なら成功率も高いと思うが。

ある中近東男からは、バスの隣席に座った途端に手を握られ、
「君は結婚してるの?」と聞かれた。
「はい、はい、結婚してます。さんざん、結婚してますよ。何せ、やまほど結婚しているんですからね」(あー、うるさい。あっちに行け)と答えておく。 
「そう・・・。でも、君は幸福な結婚をしているの?」
(余計なお世話じゃー)と、思わず胸ぐらをつかみそうになった。

「警告! 中近東男は近づかないで下さい。つまらないナンパに腹をたてて、相手を噛むことがあります」と書いたTシャツを着ようかと本気で考えたほどだ。

どうも中近東男のナンパスタイルは好かんわい。アラブの金持ちに求婚された日本人の知り合いがいるが彼女も断ったという。やはり、マクドナルドに誘われたのか?

さて、非常識な日本人、強引な中近東男と続いた後は

その3 イギリス人
パリからロンドンに向かう飛行機の中。隣の席は赤毛のイギリス男。
第一声は 「イギリスに住んでるの?」だったが、数秒後の次の質問は、
「君、結婚してるの?」だった。・・・またですか。それともパスポートコントロール?

この赤毛の男は20代の前半のようだった。
年上の、しかも既婚の女が好きで 「僕のミセス・ロビンソン」を捜しているのかも。
携帯の番号を聞かれた。 「あんたみたいなガキに」と拒否するのも非社交的なので、 
「うっかりして、ほんの少し間違えちゃった」番号を渡しておいた。

しかし、こいつらはいったい何を考えているのだろう。
まず、あたりさわりのない世間話から始まって、それとなく、ボーイフレンドの有無を聞きだし、自分に好意を持っているかどうかをさりげなくさぐる、というのが通常のコースではないだろうか? これでは、まるで消費者アンケートだ。 
「まず最初に、既婚、未婚の欄に丸をつけてください」 みたいな。

まだまだ、修行が足らんわ。顔を洗って出直すように。

投稿者 lib : 10:19 AM | コメント (2)

September 26, 2007

ブログ100回記念

career2.gif 
私のブログもついに100回を迎えました!
これを記念して、在英の方には日本への里帰り便の航空券、また日本にお住まいの方にはロンドンへの往復航空券を 「応募者全員」にお送りします。
私からのささやかなプレゼントです。

ご希望の方は住所、氏名、電話番号を明記の上、お一人あたり、日本円なら120万円、ポンドなら5000ポンドを添えてお申し込みください。経由便エコノミークラスの航空券をもれなく差し上げます、って、詐欺だな、これじゃ。

――― 仕切りなおして、もう一度

国際電話の恐怖

career2.gif 
うちのクライアントは英語に不自由しない人が多い。
ロンドンやニューヨークの元駐在員だったとか、日本語のほうが苦手という帰国子女とか、留学経験があり、ずっと外資系企業で働いているとかだ。文書も95%が英語。

しかし、ごくまれに、英語はダメという人もいる。
先日、私の直通番号にかかってきた電話に同僚が出て 「英語」で答えたら、相手が息を呑むのがわかったらしい。向こうが私の名前を言ったので、同僚は 「英語」で、
「今、席を立っているので、後ほど、こちらからかけさせます」と言ったが、

―――全然、通じない。

「デスクにいません」 「トイレに行っています」 「ここに見当たりません」 「働きもせず、一体、どこにいるんでしょうね」とありとあらゆる言い回しをしてみたが、

―――やはり、通じない。

相手がパニック状態なので、電話を切ることもできず、同僚も汗をかきながら、必死で説明している内にやっと私が帰ってきたのだ。
「あー、助かった」と泣き声のクライアント。
(同僚は 「もしもし」 と 「お元気ですか?」しか言えない無教養な男だ)

以前、日本から電話が入った。この人もあまり英語に自信がなかったらしい。
(ロンドンに電話しろ、って、どうしよう)と悩んだ挙句、話すべきことを全部、紙に書いて準備しておいたようだ。
「こちらはxx会社の東京本社です。そちらに出張中の当社の者が伺っていますでしょうか? 電話をつないでいただきたいのですが。もし、そこにいない場合は部長まで折り返し電話をするようにお伝えください」といった内容だったと思う。
英語だったが日本からの電話だとわかったので、私は日本語に切り替えて、 「もしもし」と話しかけた。が、彼女はそのまま一心不乱に英語の原稿を読み続ける。
「もしもし、もーしもし、もーしもしー!」と叫ぶ私。
と、最後まで読み終えたのか、ふっと小さなため息が聞こえた。で、もう一度、
「・・・もしもし?」と話しかけると、
「ああー、日本人だったんですかー?」とびっくりされた。

―――すみませんね、日本人で。せっかく原稿を書いて用意したのがすっかり無駄になりましたね。

彼女も部長かなんかに、
「鈴木さん。ロンドンに出張中の吉田君に電話をしてみてよ」とか言われ、
「えー、部長、私は英語なんか話せませんよ」
「なーに、言ってるの。毎週、英語のレッスンに行ってるじゃない。じゃ、よろしく」と無理やり頼まれたのだろう。かわいそうに。

―――緊張が伝わってきて、私もドキドキしましたが。

たまにフランスに電話をかけろと頼まれると基本的には断ることにしている。
だって、フランス人の英語なんて電話で聞き取れないもん。それに、フランス人のオペレーターも英語だとわかるとオタオタしてしどろもどろになるから始末が悪い。
「なんで、アシスタントがいるのに、僕がかけるんだ」とぶつぶつ言いながら、ボスが直接電話する。
「まー、フランス語おじょうず、おじょうず」と誉めてあげることにしている。
(ボスはフランス語が話せる。上手かどうかはフランス語の知識がないので判断不能)

これは友人の話だが、電話でスペルの確認をするときに、
「ニューヨークのN、スペインのS、メキシコのM」と言っていたら、相手が 「ちょっと待ってくださいね」とやたらと時間がかかる。で、不思議に思っていたら、N,S,M と書かずに、 「ニューヨークのエヌ、スペインのエス・・・」と聞くままに全部を書きとっていたらしい。

みんな国際電話では苦労をしている。料金は安くなったけどね。

投稿者 lib : 10:13 PM | コメント (0)

September 19, 2007

結婚生活の不満 金持ち妻編

career2.gif 
某金融機関のパーティで恐ろしい話を聞いた。友人が勤めている米系の会社だ。

「ほら、あそこ」と友人が指さすのを見ると、イギリス人女性が談笑している。
「ふたりとも夫はマネーマーケットでバリバリのやり手。特にミセスBのダンナ、去年は20ミリオンポンドのボーナスだったらしいよ」と友人。

20ミリオンポンドって、1ポンドを240円として、よ、よんじゅう、48億円かい?

ということは、あそこにいらっしゃるのは (急に敬語になる私)48億円をお稼ぎになる人の奥方様なのか。天文学的な額の金を稼ぐ人たちがいることは私も知っている。
が、そんな人 (の妻)を目の前で見るのは初めてだ。

と、じろじろ見ていると向こうがこちらの視線に気がつき、友人に向かって手招きをする。いや、別にガンをつけてたわけではなくて、たんにびっくりしていただけですけどね。貧乏人なのでお金持ちが珍しかっただけなんですよ (と、卑屈になる)。

簡単に紹介してもらう。ふたりともディレクター、といっても、中間管理職というあたりか。課長さんとか副部長さんといった役付きと見た。感じのいい人たちで社交的だ。
さて、48億円の妻というのはどんな服をお召しになっているのか?
目利きの友人なら、 「スーツはアルマーニ、バッグはプラダの新作、ただし、フェラガモの靴は去年のスタイルね」と一瞬で値踏み。ファッション雑誌のエディターか、質屋のおやじか、という能力を示す。が、うすらぼんやりした私には、スーツは高級そう、バッグの色は黒、靴は皮製である、ことしかわからない。

今思うと何がきっかけだったのかわからないが、ミセスAが急に、
「夫はまだ子供が欲しくないっていうのよ。間に合わなくなるわ」と言い出した。
女性としての体内時計がカチカチと鳴り、妊娠の可能性の残り時間を告げているのだ。
イギリス人の同僚たちもよく話している。まず 「相手を見つける」というミッションがあり、次に 「結婚を申し込ませる」という策略があり、 「なんとか40歳までに妊娠にこぎつける」というゴールがある。
そのために、日々、涙ぐましい努力を・・・しているようには見えないが。
(同僚の皆さんへ、努力が足りません。もっとがんばりましょう)
ミセスAのダンナは40歳近くで、高給を手にしているのに、 「まだ」子供が欲しくないというのは、モラトリアムな男なのか?

話がまずい方向に進んでいると思ったら、友人が 「あ、ちょっと知り合いが・・・。すぐに戻るね」と逃げた。
私ひとりを置いて逃げるなー。行くなら私も連れていけー。

と、ミセスBが身を乗り出し、実は・・・と話し始める。
「夫ったら、忙しくて、忙しくて。帰りは毎日11時」
「ん、まー、何てことでしょ」とミセスA。
(5時に終わるような仕事で48億円も稼げるほうがおかしい)と思う私。

48億円稼いでくれるなら、私なんぞは夫の顔を3年や4年見なくったって、気にならないと思う。いや、前言撤回、10年くらいでもOK、・・・と本人には言えないので、顔では同情してみせる。

「土曜日は昼過ぎまで寝てるの」
「ひどいわね」
(疲れているんだから、寝かせてやれよ。いいじゃないの、48億円も稼いでるんだから)と私は思う。

「日曜日は翌週の仕事の準備とかで忙しくて、家事も手伝ってくれないの」
「信じられないわね」
(48億円も稼いでいるのに、家事までやらせる気なのか?)と考える。

その後、ますますアルコールが入ったふたりは18歳未満お断りの内容にまで進み、さすがの私ですら、いたたまれない思いにさせられた。

露骨過ぎるぞー、イギリス女。

私を見捨てていった友人が向こうのほうから手招きをしたので、やっとその場を離れたが、このふたりはそのまま延々と結婚生活の不満を話し続けていたようだ。

よく考えると、毎日帰りは11時、土曜日は朝寝ぼう、日曜日は接待ゴルフとかって、典型的日本のサラリーマンのお父さんの生活ではないか。
―――― 言うまでもありませんが、お父さんたちのボーナスは48億円もありません。

結論、48億円も稼がないのに、いつも忙しくて家族サービスをしない夫に文句を言わない日本の妻は偉大だ、ということである。日本のお父さんは妻を大切にしましょう。

投稿者 lib : 08:55 PM | コメント (5)

September 12, 2007

日本で英語教師

career2.gif 
ミセス Wは私の英語の先生だった。
50代後半のイギリス人で「外国人に英語を教える」のが専門、日本人の友人と一緒に文法や作文の家庭教師をしてもらっていたのだ。

何年も英語圏に住んでいれば、とりあえず生活には困らない程度の英語はあやつれるようになる。
主婦なら主婦英語、「買い物」とか、子供の学校の先生との 「教育」に関する会話、近所の奥さんと 「ゴシップに興じる」ときに有効なボキャブラリーが増えるはずだ。
働いていれば、「うちの会社は業界でもたいへんに良い評判をいただいています」みたいな 「つくり話」、あるいは同業者をこきおろす 「中傷」などを中心とした英語力が伸びる。
友人は 「商談で取引先をめちゃくちゃに叩きのめして、有利な立場にたつ」英語がとっても得意である。・・・ま、英語というよりは性格なのかもしれないが。

このミセス Wから数年ぶりに電話が入った。
お嬢さん (オックスフォード大学卒業)が日本に行き、1年間英語の先生をすることになったという。それで、簡単な日本語のフレーズや生活習慣や文化について教えて欲しいとのこと。

というわけで、ミセス Wは一人娘のEちゃんを連れてやってきた。

話には聞いていたが背がすごく高い。183cmって、イギリス人の男でも長身といえる。日本の家のあちこちの鴨居に頭をゴンゴンぶつける姿が目に浮かぶようだ。
しばらく前にイギリス人の英語教師の女性が、プライベートレッスンという言葉につられて男の家に行き、殺された事件があり、犯人の男はまだ逃走中なのを思い出す。
「気をつけてね」と言っておいたが、いくらかわいい顔をしていても183cmの彼女をターゲットにする日本人の男はいないかもしれない・・・。口には出さなかったが。

「私はアイゴの先生です」とEちゃん。
アイゴ? 動物愛護?
「あ、それはね、 『エイゴ』 英語の先生」
Eちゃんはペンを取り出し、持参した 「日本語の基礎」の例文にさらさらと書き込む。アルファベットで書いてはあるが、日本語のローマ字表記では実際の発音がわからないらしい。
「イギリス人って日本語でどう言うの?」
日本語流にイギリスじん、と発音してみせると、 「リ」の部分をDiと書いていた。

そうか、そうきたか。日本人は R や V が苦手なように、英語圏の人に 「らりるれろ」を発音させると何かおかしい。 (試してみて。おもしろいから)
この 「ら行」って、 L と R と D が混ざったような音なんだよね。 

さーて、生活習慣と文化の紹介だ。私はこれが大好き。
ずいぶんと楽しい思いをさせてもらっている。外国暮らしの楽しみのひとつといってもいいくらいだ。

日本について誤情報を持っている人は多い。どうせなら、と、さらなるガセネタを提供。
アメリカのすごーい田舎の人 (まず、日本に行く機会はないはず)に
「CDプレーヤーになってから、誰もウォークマンを聞かない。で、駅前では消費者金融が宣伝のティッシュと一緒にウォークマンを配っているが、みんなティッシュだけもらって、ウォークマンはゴミ箱に捨てている」とかね。
すんなり信じたのでウケたが、消費者金融の説明に苦労したのを覚えている。

ああ、ホラ話とガセネタをつかませる絶好の機会。口がウズウズするー。

「麻薬の所持が見つかると死刑になります。でも、銃殺されるときに目隠しするかどうかは本人が選べますよ」みたいなのが言いたい。すごく言いたい。
が、相手は 「恩師の令嬢」だ。そうもいくまい。

「何か質問は?」とウズウズする心を抑えて聞いてみる。
いろいろな質問を用意してきていたが、
「神道の神社と仏教の寺院の相違点を400字以内で簡潔に述べよ。制限時間は2分」みたいなことをいくつか聞かれた。うーむ、オックスフォード卒なのを忘れていたな。

「これだけはやっちゃダメっていうものは?」と聞かれて、
「人の家に土足で上がらないこと。それくらいかな」と言っておいた。
「なにかまずいことをしても、 『ごめーん、私は外国人だから、知らなかったー』と言っておけば、まず許してもらえるよ」とアドバイスした。

これは私がいつもイギリスで使う言い訳である。 (相手の口封じに、たいへん、よく効く)

投稿者 lib : 10:35 PM | コメント (0)

September 05, 2007

警察ざた (その2)

career2.gif 
ボスと話していると経理のAが私たちの様子をうかがっている。ふたりが、

1. 談笑している (半分は下ネタ)
2. 仕事の話をしている (半分は悪だくみ)
3. 議論している (半分は罵りあい)

の内の何をしているかが知りたかったようだ。3の場合、同僚は誰も近づかない。別にケンカしているのではないのだが、ボスも私も声が大きく、ボキャブラリーに放送禁止用語がひんぱんに登場するのでびびるらしい。遠慮しなくてもいいのにー。

私たちはそのとき、珍しく普通に仕事の話をしていたので、彼は話を切り出した。
「えーと、実はね、このクライアントのことを聞きたいんだ」
差し出されたのは 鈴木花子 (仮名)宛のうちの会社の小切手。額面は小さい。

うちはメイルオーダーサービスみたいに不特定多数を相手にしているのではないから、クライアントの数なんかしれている。取引先は名の知れた会社か、個人客ならほぼ全員の顔を知っていて、ロンドンか東京で食事くらいはしたことがある仲だ。

「知らなーい」と私。
「聞いたことがないな」とボス。
でも、この署名はボスのだ。
「小切手にサインしてるじゃない。忘れたの?」
「覚えがないね。知らないよ、こんな人」
このチャンスにボスの老人ボケを笑ってやろうと思ったら、Aが、
「やっぱりね」と言う。

メインバンクの担当者がうちの会社から振り出された (はずの)この小切手を見て、何かひっかかるものを感じて、確認の電話をしてきたらしい。
このクライアントが口座を持つ日本の銀行の支店もわかっている。
「ちょっと、この銀行に電話してみてくれない?」とA

イギリスから電話をしていることを告げ、簡単に状況を説明して、担当者 (何の担当の人と話せばいいのか、私にもわからなかったが)に代わってもらうように頼んだ。

しばらく待たされてから、若い男の人が出た。で、開口一番、
「当支店では責任が持てません。弁償はできませんからね」と言う。
先制攻撃というのがあるが、 「先制防御」である。
弁償してもらわなくても、うちの会社は 「被害」に遭っていない。詐欺に巻き込まれそうになったが、こちらの銀行の機転で逃れている。電話をしたのは情報をシェアしておこうと思っただけだ。
「いや、そういうことではなくて、この口座の人はトラブルがありそうなのをお知らせしておこうと・・・」
「とにかく、当支店には関係ありません。関係ありません。関係ありません」
「まだ、送金していないんです。別に・・・」
「警察に連絡してくださいよ、警察に。当支店のせいではありません」

だから、おたくを責めてないじゃないのー! 私の話を聞いてー!

何を言っても聞く耳を持たず、 「こちらに責任はありません」の一点張りなので、私もあきらめ、
「わかりました。警察に届けておきます」と電話を切った。

なりふり構わず自分の銀行を守ろうという態度はあっぱれだが、私の話をちゃんと聞いていれば、別に 「守る必要もない」ことに気づいただろうが・・・。

当然、うちの会社は警察に連絡した。このあたりの警察って シティポリスなんだって。ちょっとカッコいいと思った。ま、シティにある警察がシティポリスなのは当たり前なんですけどね。新宿なら新宿警察、八つ墓村なら八つ墓村警察だろうし。

後日、Aから聞いたところによると、小切手が入っている (とあたりをつけた)郵便物を盗み、署名を偽造して振りこませる詐欺だったらしい。額面が大きいと会社も気をつけるので、少額にしてあるという。

これに気づいたうちの会社のメインバンクの担当者もりっぱ。それから、身体をはって責任を否定した日本側の銀行員もりっぱだった・・・と言っておこう。

まだ、犯人は捕まっていない。たぶん、捕まらないだろう。少額だったし、警察も本腰を入れて捜査するとは思えない。

しかし、 鈴木花子 (仮名)って何者なんだろう? ちょっと気になる私だ。

投稿者 lib : 10:55 PM | コメント (2)

August 30, 2007

LIB サマー・エキシビション

career2.gif

「イギリスの夏の文化行事」のひとつ、ロイヤル・アカデミー・オブ・アートでのサマー・エキシビション。去年は行かなかったので、今年は押さえておこうと出かけた。押さえておこうといっても、ただ、鑑賞するだけだけど。

ロイヤル・アカデミーの中庭には金属でできた巨大な怪獣の像、しかも、おもちゃみたいなやつ、がデーンと立っている。こんこんと水なんかも湧いちゃって、なかなか楽しい。こんな非日常を経験させてくれるので美術展は好きだ。

チケットは7ポンド。売り場に並んでいると、イギリス系白人中年婦人がにこやかにアプローチしてきた。
(来た、来た、来た!)と思っていると、やっぱり、
「ねえ、あなた、会員になりませんこと? 年会費さえ払えば何度も美術展に来るのに、とってもお得ですのよ」の口上である。
ナショナルトラストのマナーハウスや庭園で、必ず声をかけてくるのが、これ。

この人たち、 「世界で一番、お品のいいセールスレディ」ではないだろうか?

「年にほんの数10ポンドで、文化遺産の保護者、文化施設のパトロンになれますのよ。会員はあたくしのように上品な有閑マダムが中心ですわ。いかが?」
(後半は私だけに聞こえる声なき声だ)

粗野な外国人の私はいつも、 
「ちょっと考えさせてくださいね」と断るのだが、
「帰りにでもよろしいのよ。今日のチケットから有効になりますしね」
と、これまた、あっさり離れていく。
思わず後姿に、
「奥様、ごきげんよろしゅう」という声をかけたくなるくらいだ。

やれやれ、最初の難関は突破したわい。

さーて、会場だ。
どう移動すれば効率よく、かつ、展示物を見逃さずにすむのか、といつも頭を悩ませる。
博物館や美術館は 「順路」というものをあまり重要視していないらしいな。
大きな部屋の横に小部屋がある。まず、大きな部屋の中を見て、それから小部屋に行き、そこを見てから大部屋に戻り、そのまま素通りして次の大部屋に行くのか。
それとも、まず小部屋を制覇してから、大部屋をゆっくり見て、それから次の大部屋に行くのか?
部屋が混んでいたりして、後にしようと思って進んでいき、そのまま、その部屋のことを忘れて会場を出てしまい、後悔したり・・・。

みなさん、どうしてます?
(それとも、こんなことで悩んでいるのは私だけかい?)

チケットと共に渡された文庫本大のカタログには作品の番号、作者名と値段が書いてある。ちょっと気に入った作品があると、つい、プライスチェックしたくなるのは人情というものだろう。
(ふーん、小さいのにけっこう高いな)とか (これだけ大きな絵なら、このくらいの値段はするだろうな)とか、考える。
金じゃないのだから、大きさで価格が決まるわけではないのだが。

壁面にぎっしりと小さ目の絵が並んでいて、異常に混雑している部屋がある。どうやら、「買えそうな価格の絵」がたくさんあるらしい。
「美術愛好家」なのか、 「投機熱に浮かされた人たち」なのか?

私が気に入ったのは2メートル x 5メートルくらいの大きな絵だ。
2万ポンドという値がついている。絵画として高いのか安いのか見当もつかないが、
(3年くらい所有していると、アーティストがブレークして、10倍も価値が上がったりして・・・)という想像をしてみる。20万ポンドか、・・・いいねえ。

が、値段もともかく、この大きさの絵を家の中に運び込めるか? 置くだけの空間が家にあるのか? という問題がある。もちろん、答えは 「否」だ。
と、金持ち風のカップル (まだ若い)が来て、 「これ、いいね」みたいなことを言っている。かるーく、クレジットカードでも取り出しそうな雰囲気だ。
(私が先に目をつけたのよー)とは思ったものの、貧乏人の私はすごすごと引き下がるしかない。

絵画のかわりに向かいのフォートナムメイソンでケーキを買って帰った。あのアーティストがブレークしないことを祈るばかりだ。

投稿者 lib : 12:40 AM | コメント (0)

August 22, 2007

LIB Thorpe Park

career2.gif

ソープパークという遊園地に行ってきた。・・・というか、連れて行かれた。

「日程は来週の土曜日。雨天決行」と友人からのお達しだ。
(晴れるといいな。でも天気がいいと混むし・・・)と思いながら、待望の (でもないけど)土曜日。朝の雨が上がり、やや暗めの曇り空が広がっている。

「さー、乗るぞー」と盛り上がる友人。
「ローラーコースター、好きだって言ってたよね?」と確認される。
「ローラーコースターの上で生活してもいいくらいに好き!」と豪語していたからだ。

しかし、どこかのアメリカ人が、ローラーコースターに乗ったまま17日間寝泊りして、ギネス世界記録を達成したというニュースを聞いて、そのくだらなさぶりに腰が抜けた。・・・今後は口を慎むことにする。

ちなみにギネスで記録を立てるためには、トイレ、食事、睡眠の時間やその取り方に細かい規定があり、それを順守しなければ正式認定されないそうだ。
ギネス社よ、そんなルールを作っている暇があったら・・・。

「この遊園地ね、絶叫マシーンで有名なんだよ」
絶叫マシーン? 懐かしい響きがする。・・・って最後にローラーコースターに乗ったのはいつだっけ? もしかして、20世紀末だったかも。

私はやっと、自分の無鉄砲さに気づいた。それで他の友達から 「年寄りの冷や水」とか言われていたのか・・・。

駐車場からは、まっすぐ真上に上がり、そのまま真下に降下する釣り針のような形のマシーン、Stealth が見えてきた。
「うわー、ワクワクするねー」と友人。
「うーん、そうねえ・・・。あまり、ワクワクしないなあ。なんだか・・・」と煮え切らない態度に変わった私。

入場料は大人が32ポンド。さらに7ポンドとか9ポンド払えば、待ち時間は短縮。
高い金を払って、長い列に並び、わざわざ恐怖を経験する。人間ってバカだ。

いや、バカなのは何も考えずにここまで来た私かも。

入場券売り場では家族づれもいたが、 「カバお嬢さんのサファリ」だの、 「ミスターモンキーのバナナ乗り」 といったお子様向けのエリアと絶叫マシーンのエリアは別々だ。

「ここまで来て、いまさら怖いなんて言う 『素人さん』はいないよね」と不敵な表情の人々が並んでいる Colossus。
「振りまわされて、めちゃくちゃにされたいの、私」みたいなティーンエイジャーで一杯の Nemesis Inferno。
それぞれの絶叫マシーンには不気味な 「テーマソング」があり、恐怖と興奮をかき立てる。

「まだ引き返せる」という気持ちと 「ここで引き下がったら、 『負け犬』の烙印を押される」との思いに引き裂かれる。

「オーホホホホ。私にはね、怖いものなんて、なーんにもないざますよ!」と、いつもハッタリをかましている私には、
「いやーん、アタシ、こわーい」などと小娘のようなことは口が裂けても言えないし。

(あの直線が3秒、上に登るのが4秒。落下するのが2秒。で、怖い思いは終わる)
と、なんとか気を静めようと分析モードに入るが、
(命綱である安全ベルトが壊れてしまったら、どうしよう? イギリス人に比べて、お尻の小さい私だ。ベルトがあっても座席からすべり落ちてしまうかもしれない)
妄想が妄想を呼ぶ。そして、ふと気がつくと一番前の座席に座らされている・・・。

絶叫マシーンといっても、絶叫の仕方はいろいろだ。
Stealth は出発の瞬間にキャーという叫び声が上がっていたが、2秒以内に時速125kmに達する速さのせいだ。 は、速いのなんのって・・・。で、62.5mの高さまで登るとひねりが入っての急降下。さすがに心臓がバクバクした。
変わっているのが、 Detonatorで、30mの高さから椅子に座ったままで真下にストンと落ちるもの。行列から眺めていても、誰ひとり叫ばないので不思議だったが、5Gで落ちるせいか声が出ない。みんなポカーンとした顔で地上に降りてくる。私もアホ面になっていたはずだ。

その日は5種類ばかりの絶叫マシーンを堪能。でも、もう当分、遊園地はいいや。(結構こわかった、ってことだ) アドレナリンが枯渇したわい。ふう・・・。

投稿者 lib : 11:43 PM | コメント (0)

August 16, 2007

LIB 私をフットボールに連れていって その1

career2.gif

フットボールの試合に行ってみようと考えている。スポーツ観戦にはさほど興味はないが、せっかくイギリスにいるのだから、 「国技」のひとつを一度くらい見ておきたい。

そこで、予習だ。 「オペラファン」ならともかく、 「フットボールファン」と自分の間に 「共通項」は見つからないので、それなりの準備をしてから臨みたい。
この 「準備本能」は日本人の血のなせる業か?

イギリス人の友人に 「フットボール観戦の正式作法」を聞いてみた。
彼は週末に男4人でバーミンガムまで出かけたという。ロンドンでの試合ではなく、わざわざバーミンガムまで出かけるのは、 「近所の寺でお参りするよりも、遠くの寺まで巡礼に出かけるほうが信心深い」 みたいなノリと思われる。

以下は当日のスケジュールだ。

土曜日の朝10時、ユーストン駅に集合。
ロンドンからバーミンガムまでは鉄道会社が2社あるのだが、1社はトラブルのために運休。そこで乗客は全員バージントレインに詰め込まれる。
「不確実な鉄道の旅」と、いかにもイギリスらしいスタートだ。

ギュウギュウ詰めの電車の通路に立つこと3時間。いつもなら2時間のところ、運休した電車の代わりにあちこちで停車して、余計に時間がかかったらしい。
この間、ビールを飲みながら仲間と談笑。・・・ってことは、いつも混んだパブで立ちっぱなしで飲んでおしゃべりしているイギリス男には、パブが電車になっただけ。

1時過ぎにバーミンガムに到着。
試合は5時からだ。当然、その前にパブで一杯。
この 「XXをする前に、まず、一杯」というのはシティでもよく聞く。

「長距離ドライブの前に、まず、ガソリン」

みたいな感じなのだろうか? 酒が弱い人だとそのまま寝てしまうと思うのだが。

さて、スタジアムで他のパブ経由で来たと思われる観客と合流する。

何かの本に 「フットボールファンとは、妻やガールフレンドを捨ておいて、赤の他人の男たちがボールを追いかけるのを必死の形相で応援して、一緒に怒鳴ったり、泣いたり、笑ったりする男たち」という定義が書いてあった。
喜ぶのはいいとして、泣くのはなぜだ? 
ファン心理というよりは酒のせいなのかもしれないな。泣き上戸ってやつ?

友人は狂乱の試合観戦を終え、ロンドン行きの電車に乗りこんだ。
さすがに疲れていたので、10ポンドを上乗せして、ファーストクラスのチケットを買ったらしい。 ところが、イギリス人は金も払わずにファーストクラスにちゃっかり入ることがある。検札が来れば移動。そうでなければそのまま座ってしまう。 (私も時々やるが、必ず検札が来てお金を取られる。検札運の悪い私) 途中で検札の人が中を覗き込んだのだが、車内の状況に恐れをなして、そのまま行ってしまったとか。
ま、フットボール帰りの酔っ払いに検札を要求するのは、猛獣の檻に指をつっこんでみるのと同じ。びびるのも無理ない。

勝利に盛り上がっているファンはビールをケースごと持ち込み、さらに酒盛り。そして、チームソングを歌って大騒ぎ。
イギリス人とカラオケをしたことがある人は知っているだろうが、彼らはものすごーく音痴である。日頃はシャイなので人前で歌うことはないが、酒と興奮でそんな羞恥心はすっかり山の向こうに行ってしまっている。
ああ、その場にいなくてよかった。耳が腐る。

敵チームのファンと一緒になると乱闘になりかねないが、同じチームのサポーターだと、即、擬似友情が発生する。見知らぬ男たちが肩を組み合い、 「歌うフットボール列車」と化したバージントレインはロンドンへと走った。

「で、ビールをどれくらい飲んだの?」と聞いたら、
「6パイントまでは数えたが、その後はもうわからない」
「その6パイントを数えたのは何時?」
「たぶん、3時ごろ。そうだな、全部で10パイントは飲んだかな?」

フットボールを楽しく観るには6リットルものビールを消費する必要があるのか・・・。

フットボール観戦への道は遠い。

投稿者 lib : 12:33 AM | コメント (0)

August 09, 2007

イエローキャブ

career2.gif
日本の雑誌を読んでいたら、イエローキャブの記事があった。
「海外旅行でハメをはずす日本女性は 『イエローキャブ』として、『世界中』に知られ、下げずまれている」というものである。

そこでイギリス人(8名)に 「イエローキャブとは何でしょう?」と聞いたところ、 「アメリカのタクシー」という答えであった。 「蔑称としてのイエローキャブは?」と、さらなる質問には 「知らない」という回答である。
「世界中」って、どこの国のこと?

「旅の恥は掛け捨て」はイギリス人も同様だ。

イビサ島は 「暴飲暴食」と 「不特定多数の異性向け、求愛ダンス」で有名な若者向けリゾートだ。
テレビでここが映されると、地鳴りがしそうなほどの大群集が、なぜか 「両手を挙げたポーズ」で踊り狂っている。数百人の体臭と汗がテレビ画面から匂ってきそうな恐怖に思わずチャンネルを替えてしまう。
また、 「予期しなかった妊娠率の増加」や 「身に覚えがある疾病罹患率の増加」または 「アルコールによる肝障害の増加」などが記録されているようである。

会社の同僚の女の子がふたり、イビサで週末を過ごすと聞いた。
「おや、おや、 『酒池肉林ツアー』ですか。ヒューヒュー(口笛の音)」とからかうと、
「入場料の高い大人向けのクラブに行って、ならず者のようなティーンエイジャーとは別行動をする」と言っていた。が、
「飛行機が死ぬほど遅れて、ロンドンに着いたのが日曜の午前3時」だったらしく、月曜日はヨレヨレ状態で出社。
「は、話しかけないでね。頭が割れそう・・・」

「肉林」はともかくとして、 「酒池」にどっぷりと浸かっていたのは疑問の余地なしである。

ジャマイカに出かける中高年イギリス女性の姿にも 「痛い」ものがある。
彼女たちは現地に住む若くハンサムな黒人青年 (種馬機能つき)と 「恋に落ちる」のである。ホリディの期間中は彼らの衣食住の費用を引き受ける保護者ぶりを発揮。
現地黒人青年 (種馬機能つき)に寄り添うイギリス中年女の背中には、日焼けによるシミとそばかすが浮いている。プッシュアップブラで作った胸の谷間にはそのまわりの皮膚の 「ちりめんじわ」が谷に流れ込む小川を形成している。が、心は恋する乙女。
「人生最後の恋」はホリディで終わらずに相手をイギリスに招待。
愛人に走り彼女を捨てた前夫に
「彼が新しいボーイフレンドなの」と現地黒人青年 (種馬機能つき)を紹介し、溜飲を下げる、ということもままあるらしい。

ここまでくると、 「ろうそくは消える直前に最後のきらめきを見せる」という言葉を思い出す。
(がんばれ、おばちゃん。恋が実るといいね)と無責任な声援を送りたくなる。

上記に比べればイエローキャブのイエローぶりは、せいぜい 「ひよこの黄色」だ。

ま、暴走族と一緒でいずれは 「卒業」する。その後、改心して結婚出産などを経て、半世紀もすれば、かわいいおばあちゃんとして養老院で余生を過ごすかもしれない。
「あたしは若い頃、ロサンジェルスでたっぷり遊んだものよ」
「え、なに? よし子さん」 (耳が遠い)
「みんなに 『イエローキャブ』と言われるのも平気でブイブイいわせたものですよ」
「あら、あたしもそうですよ。ニューヨークのクラブシーンでさんざん・・・」
「あら、あなたもブイブイ?」
「ええ、あたしもブイブイ」
「あの頃は楽しかったわね。ズズー (番茶をすする音)」
「栗ようかん、もう一切れどう? ところで、お孫さん、元気?」
狂乱のイエローキャブ時代も 「おばあちゃんの昔話」として、懐かしげに語られるかもしれない。

一方、海の向こうの養老院でも、ジョン爺さんが
「俺さー、日本人の一夜妻がいたんだぜ。名前はよし子」と自慢し、
怒りっぽいピーター爺さんに
「嘘をつくなよ、この野郎」と殴られて、入れ歯をふっ飛ばされるかもしれない。

旅先でのアバンチュールも結構。しかし、男なら美人局にカモられて、身ぐるみはがされる程度ですむかもしれないが、女ならバーで出会った 「素敵な人」が実は 「連続殺人者」で、後日、ホテルのバスルームでバラバラになって発見される可能性も大。
―――知らない人についていくのはお勧めしません。

投稿者 lib : 12:09 AM | コメント (0)

July 19, 2007

警察ざた (その1)

career2.gif
ある朝、出勤すると社内がザワザワしている。

このざわめきぶりはミセス Tが2ヶ月も早く子供を産んだとき以来だ。
「ゆうべ食べたチャイニーズのテイクアウェイが胃にもたれているわ」と同僚に電話している内に産気づいた。 「エビチリソース」が 「胃」にもたれていたのではなく、「男の未熟児」が 「子宮」にもたれていたらしい、という話で盛り上がったことがある。

さて、今回は?

何事かと思うと泥棒が入ったらしい。

新しく購入した数台のコンピューターが積み上げてあったのが、すべて盗まれたというのだ。前日の午後、運び込まれて置かれていたのが消えている。

泥棒はなんでここに新品のコンピューターがあったことを知っていたのか?

ここで 「内部の犯行」説が浮かび上がってくる。内部といってもうちの社員じゃないけどね。というのも、盗品を売買するには 「蛇の道は蛇」のルートとマーケットがないと無理だろう。素人さんでは換金できないと思う。

「運送会社で働いていれば、ここに搬入されたのを知っている」
「オフィスに来る掃除の人の目つきが悪いのが、日頃から気になっていた」
「コピー機の修理に来たのは、きのうの午前だっけ、午後だっけ? 午後なら、箱があったのを見てるはず」
など、同僚はそれぞれシャーロック・ホームズになって、
「内部の事情に通じていた関係者の犯行」として推理を働かせてる。

・・・あの・・・そろそろ仕事に取りかかったほうがいいのでは? 
始業時間もとっくに過ぎてるし・・・。

しばらくすると警察がやってきた。

通用口のドアのノブに銀色の粉をまぶしているのは 「指紋」を取っているのか?

(テレビで見るのと一緒だ)と、ジロジロ眺める。
うーむ、これでは私も仕事にならないではないか。でも、こんな現場が見られるのは一生に一度かもしれないし。

と、ボスが出勤してきた。
「モーニング! ん? いったい何事なんだ?」
「泥棒が入ったのよ。で、コンピューターを盗んでいったの!」 
(ちょっとだけ、うれしそうに聞こえたかもしれない)
「ええ? あ、ここに置いていたラップトップがない!」

ボスのデスクにあった日本語専用のラップトップもやられていた。日本に出張の折に秋葉原で買ったもの。箱からは出してあったが、新品同様 (購入後、2日目)なので、ついでに盗んでいったらしい。

箱入りの新品はそのまま売りさばいたとして、ラップトップの電源を入れると、わけのわからない文字が浮かび上がってきて、泥棒も動揺したのでは?
「日本語」の盗品コンピューターを扱うマーケットも持っているのか? 
・・・たぶん、ないだろう。

ふん、お気の毒にね。せっかく盗んだのに。

突然の出来事によるオフィスの 「興奮状態」も午後にはすっかりおさまってしまった。

この被害も、
「全部、保険がかかっているから平気」
だそうである。

盗まれた日本語コンピューター、今はいったいどこで何をしているやら。
売り飛ばすこともできずに、どこかの倉庫で新品同様のまま寂しい一生を終えるのだろうか・・・?

投稿者 lib : 02:28 PM | コメント (2)

July 12, 2007

ウィンブルドン

career2.gif 
ウィンブルドンのテニストーナメントが終わった。

チャンピオンになったのは女性では 「おなじみ」ウィリアムスで男性はヘデラーだ。一度くらいは試合を見に行こうと思っているのだが、予約するのが面倒だし、炎天下、あるいは雨の中を何時間も観戦すると思うと腰が引ける。

がんばる人を見るのは好きだが、自分ががんばるのは嫌いだ。

うちの会社の接待のお供でアスコットやニューマーケットの競馬に出かけたことはあるが、テニスでの接待は聞いたことがない。それぞれの会社で 「好み」があるらしく、友人の会社はクリケットのスポンサーになっていて、試合にクライアントを招待するらしい。昔の貴族なら有り余る時間をつぶすのに絶好の機会だったかもしれないが、あんな長い試合に喜んで行く人がどのくらいいるのだろう? 疑問。

ま、ヘンリーレガッタのボートレースにしろ、アスコット競馬にしろ、ウィンブルドンのテニストーナメントにしろ、接待は飲み食いのほうが中心 (特に 「飲み」のほう)だから、試合は二の次かもね。
アスコットに行って、どの馬とジョッキーが勝ったというより、誰それが酔っ払って、みんなに引きずられて帰宅した、みたいな話しか聞かないし。

「で、勝ったのは誰?」
「ええっと、誰だっけ? 試合はあまり見てないんだ、正直なところ・・・。そうだ、アランが酔っ払ってミーナの帽子を払い落としたって、聞いた?」

酒を飲むばかりで 「観戦」なんかしていないのだ。

これでは選手も真面目に試合に臨むのがバカみたいだな。

試合の裏方として選手とトーナメントをサポートする人もいることを聞いた。
「ボールガール」というのは、試合中の「玉拾い」の役だ。男の子もいる。
ネット際にかがんだ姿勢で待機しているのと、壁を背に足を肩の幅に開いて立っている若い子たちだ。
歌舞伎の黒子のように 「見えているのに存在に気がつかない」連中である。

これを「ボールガーリング」という。・・・なんか、バカみたいな英語だな。INGをつけただけかい。
腹を立てて、ドリンクの容器をコートに叩きつけるような選手もいて、そのボトルを拾うこともあるとか。これは 「ボトルガーリング」か?

彼らは地元の中学生と高校生のボランティアで半年間もトレーニングを受ける。テニスのルールから、座り方、立ち方、手の上げ方、選手への接し方などを習うという。その中から何人かが選ばれて、晴れ舞台 (の黒子)としてテニスコートに立てるらしい。

ウィンブルドンの前哨戦ともいえるクィーンズのテニストーナメントでボールガールを務めた子の話では、バイト料は出ないが、控え室では毎日ランチやスナックが用意され、スポンサーのスポーツウエアメーカーから、ポロシャツが2枚、トレーナーが1枚、ショーツが2枚、トレーニングパンツが1枚、ソックスが数足にスニーカーが1足と帽子が支給され、トーナメントが終わればそれら一式を貰える。
クィーンズでは赤を基調としたエレッセのウエアで、もし買えば全部で200ポンド以上はするだろう。

おまけにトーナメント中の一週間は学校に行かなくてもいいのだそうだ。 (ここがポイント)

有名選手を間近に見ることができるのも役得のひとつ。一緒に写真を撮ったり、サインを貰ったり、話しかけることもできる。
時間が空けば、センターコートでトッププレーヤーの試合も見られる。

半年間のトレーニングの甲斐あって、というところだが、トーナメントが進むと、当然、試合数も減ってくる。で、同数のボールガールは必要でなくなる。
セミファイナルやファイナルの試合に出られるのは 「少数の優秀なボールガール」だけ。ここでも 「競争の原理」は働く。接待のシャンペンでヘロヘロになりながら観客席にいる連中を前にコートではボールガールも含めて激しい戦いが行われているのだ。

コートにすら行かずにテレビの前でラーメンなどをすすりながら試合を見ていた私の 「ふぬけぶり」が恥ずかしいほどである。

ま、いいや。私は 「体育系」じゃないし。 

体力の限界に挑戦して戦う、なんて言葉は私の辞書にはありません。

投稿者 lib : 12:05 AM | コメント (0)

July 04, 2007

薄着の季節

career2.gif 
初夏である。

薄着の季節がやってきた。私にとっては道徳的ジレンマに陥る時期でもある。

イギリスの女は私たちよりも大きい。骨格だけでなく 「肉づき」がいい。と、いうか、 「脂肪づき」がいい。肩幅が広くて身体に厚みがあるので、トレンチコートやスーツを着せるとパシッと決まるのだが、この 「脂肪づき」のせいで、ウエストが 「ダルマ」。
選挙に勝った政治家なら、思わず目に黒丸を入れたくなる体型だ。

冬のコートを脱ぎ、ジャケットも必要なくなると 「そのまんまダルマ」として歩き回る。
で、乗り物には突然 「妊娠5ヶ月の腹」をした女たちであふれかえるのだ。

私は思いやりのある性格ではないが、小学校の道徳の時間に 「お年寄りや身体の不自由な人には席を譲りましょう」と習っている。それに加えて、 「小さな子供づれやお腹の大きな女性」のために席を立つと、 「徳を積む」ことができて、パライソ(天国)に行けるかもという打算も働くようになった。

さて・・・。

妊娠7ヶ月くらいなら、間違うことはない。
「どうぞ、座ってね」
「あら、ありがとう」
と、席を譲ることができる。

が、5ヶ月くらいの腹は 「微妙な大きさ」である。
つまり、 「妊婦」なのか、 「デブ」なのか悩むのだ。

席を譲られる。
――ラッキー。でも、どうして?
妊婦だと思われたから。
――なんで?
デブだから。

という論理は明白だ。女としてショックだろうなあ。

私のほうも、
(あ、妊婦かな? 席を譲らなくちゃ)
と腰を浮かせながら、
(ちょっと待てよ、ただのデブだったらどうしよう。めちゃくちゃ、傷つくだろうな、彼女。でも、もし、本当に妊婦だったら、私のことを意地悪な女だと思うだろうし)

・・・しかたない、寝たふりをしよう。

と、寝たふりを強いられたりするのだ。

先日も目の前に 「腹デカ」な女の人が立った。腹だけではなくて、全体にしっかり 「大女」である。顔立ちはちょっとスラブ系で東ヨーロッパの出にも見える。
で、このお腹が、また、微妙な大きさ。
彼女はバッグからフルーツケーキを取り出すとパクパク食べ始めた。と、次はバナナを出し、ほおばる。で、今度はクリスプの袋。

妊婦だから 「ふたり分」食べているのか、たんに、 「大食い」で、だからこそデブなのか?

ああー、私には判断がつかないー!

隣に座っているイギリス人の男は紳士風で、さっと席を譲りそうなタイプだが、新聞のクリケットの記事を食い入るように読んでいて気がつかない。

(おやじ、顔を上げろ。君の判断が知りたい)と念力を送るが全然きかない。
(クリケットがそんなに大事なのか? 目の前の女を見るんだ! 見ろ!)

と、天の救いか、間違いようのないスイカ腹の妊婦が電車に乗り込んできて、私はその人に席を譲ったのだった。

この悩みから解放されるために、バッジかなんかをつけてくれないかなあ。
「妊婦です。席を譲ってくださいね」というメッセージのバッジ。
「ただのデブです。妊婦ではありません。運動がてら立っています」のバッジもあると、さらによろしい。

投稿者 lib : 10:58 PM | コメント (2)

June 28, 2007

ロンドン・コーリング

career2.gif 
「ロンドン コーリング」というハードロックカフェ主催のロックコンサートに行ってきた。場所はハイドパーク。

イベントのお誘いがあるとハイハイと色々なところに出かけるものの、自分からは動かないレイジーな女だが、今回はお気に入りのバンド 「エアロスミス」が久々にイギリス公演をするというので、「自分で」予約した。 (イバっている)

私は 「書籍の人」「窓口の人」「電話の人」なので、インターネット予約は苦手。

チケットはいくつもの事務所で扱っているが・・・聞いたこともないドイツの代理店とかは、ちょっと不安だな。トラブルがあったら、ドイツ語で文句を言わなくっちゃいけないかも。やはり、ここは名の通ったイギリスの大手の事務所にしておこう。

チケットは45ポンド。
チケット代の他に、サービスチャージ10ポンド50だの、取扱料3ポンドだのがついてくる。郵送してくるだけなのに、力いっぱい 「ボラれて」いる気がするなあ。
以前に出かけたバービカンホールでのシェイクスピアは1ポンドしか手数料を取らなかったはず。コンサートが 「終わって」から、公正取引委員会にチクってやる・・・。

さーて、チケットの手配が済んだら、「衣装」の設定だ。
プラットフォームブーツ (ロンドンブーツ)に皮のミニスカート、豹がらシャツにジャラジャラとアクセサリーをつけて、どこかにひっかかると首が絞まってしまう危険もある超長いスカーフを巻いて出かけるとするか・・・。
「ロックチック」の 「正装」としては当然のチョイスだろう。

と、思っていたら、雨が降っている。おまけに寒い。

あっさり、「正装」をあきらめて、セーターにスニーカー、防水ジャケットで 「農作業」を頼まれてもOKというヘビーデューティなカジュアルウエアに変更。
ロックチックでもなく、グルーピーでもない、 「農婦」姿で出かけることとなった。

今度は足だ。コンサートが終わると、数万人が同時にハイドパークを出て、地下鉄やバスに向かうはず。友人の車で出かけ、ハイドパークの近くに駐車しておくことにしよう。

開門は2時だが、ハイドパークに着いたのが6時。前座バンドがいくつもあって、メインバンドは9時の予定らしい。小雨も降っているので、まずパブに入って 「身体を温める」ことにする。このパブがなかなか良くて、ハウスワインのくせにスムーズなレッドだ。
ああ、しまった。2杯も飲むつもりはなかったのに・・・。

ほろ酔いでハイドパークに入ったのが8時。観客数は公称8万人だが、半分くらいかな。
雨のせいで足元はドロドロ。よく見ればみんな揃って 「農作業いつでもOKの姿」である。長靴の観客も多いしね。
ボディガードを兼ねて、身体の大きな男友達を誘ったのが正解だった。人ごみをかき分けるにも役に立ってくれるし、ステージが見えなかったら肩車だって頼めるし。

観客から仕切られた一角はハードロックカフェの関係者用らしい。
最初は 「ふふふ、私たちはね、特別待遇なのよ」みたいな顔をしていたが、
まわりの客から憎まれて「座れよ、ボケー!」と罵られたり、投げこまれる空き瓶による 「ボトル攻撃」が加えられたりして、すっかりおとなしくなってしまった。

あちこちでマリファナの匂いがしている。マリファナは煙草よりも 「5倍」も 「肺がんリスク」が高いそうだ。ま、私は官憲でも医療関係者でもないので、赤の他人の行動に目くじらは立てませんが。・・・ちょっと、煙をこっちに流さないでよ!

ボーカルのスティーブン・タイラーははるか遠く、アリのような大きさだが、ギタリストのジョー・ペリーと共にいつも大きなスクリーンに映されている。残りの3人のメンバー(ひとまとめの扱い)は1時間半のコンサートの内、アップになったのはほんの数分だけ。
人気とバンド内の力関係がよくわかるよな、これで。

スティーブンは来年60歳になるそうだ。服をベロリとめくると 「俺にxxしてくれよ」とエロいメッセージが書いてある。サラリーマンなら定年退職を控えて、残りの住宅ローンの返済計画でもたてているところだが、やっぱりロックミュージシャンは違うねえ・・・。

ヒット曲は観客が大合唱をしていたが、私が英語の歌詞を覚えているわけがない。教会で賛美歌を歌わされるときのように 「口パク」で対応。ちょっと、情けなかったけど。

25ポンドのオフィシャルTシャツが売り切れで、友人は会場の外のダフ屋のようなおっちゃんから10ポンドでブートレックTシャツを買ってくれた。
「今夜はスティーブンのTシャツで寝なさいね」とありがたいお言葉を頂戴したのだった。

投稿者 lib : 12:58 AM | コメント (0)

June 20, 2007

職場の困ったちゃん 女性編

career2.gif
一番困るのが 「感情が激しく揺れ動く人」だろう。
「楽しく盛り上がる」 「落ち込む」 「怒る」といった状態が予測できないサイクルで回るので、どう扱っていいのかわからない。

「グッドモーニング」なんて言うと、
「あらー、元気? かわいい靴を履いてるじゃないの。日本製なの? やっぱりねえ。私にも日本から靴を買ってきて。ランラランララン」(原文のママ)という状態もあるが、

「グッドモーニング」と私。
「・・・・・・」
(聞こえなかったかな?)
「グッドモーニング」 
「・・・・・」
(聞こえなかったんだろうな、ま、いいか。深く考えるのはよそう)

あるいは
「グッドモーニング」
「何がグッドなの? 何かいいことでもあったの? 天気も悪いのに、どうして『グッド』 モーニングなの?」
と、つっかっかってこられることもある。

(更年期障害か? 女性ホルモンのバランスがくずれているんだな)と知らん顔をするのだが、入社したばかりの若い子は自分が怒られたと思い、すっかりびびってしまう。
「いつも、ああだから気にしなくていいわよ」と言ってあげることにしている。

他人に迷惑はかからないが、ちょっとねー、と思う人もいる。

小学生による仮装 「ディスコ・クィーン」みたいな服装をしてくる人がいる。この人はうちの会社にテンプでときどき来るようだ。 「ギョッとするまでの厚化粧」と 「フリルがヒラヒラする安っぽい生地のミニスカート」が特徴だが、

・・・40代後半から50代のはじめ、という年である。

派手なメイクといい、スカートのペラペラ感といい、 
「地方都市の小ホールでマイナーな外タレを待ちうけるグルーピーもどき、ただし年増」
という感じ。が、話してみると、ごく普通の勤め人だ。

先日はミニスカートではなかったが、巨大なチューリップがプリントされたワンピースだった。幼稚園のお遊戯会の衣装のようにも見える。
基本的に12歳以上の女性むけの服は着ない方針だと思われる。ファッションポリシーは 「ロリータ風」なのか。

イギリス人の50歳の女の 「ロリータ・コスプレ」 見たいでしょ?

そうだ、思い出した。
数週間前にビジネストレーニングコースに参加した。このコースはうちの会社のスタッフだけではなく、他の会社の人も出席している。全部で10人ほどの参加者がいた。
この中のひとり、「アートメーク」なのか 「刺青」みたいに

「赤黒い、金太郎まゆげ」をしているのだ。おまけに唇にも 「真っ黒なふちどり」がされている。

・・・・・・なぜ? 

彼女が入ってきた瞬間、全員が息を呑み、トレーニングルームに動揺が走った。が、さすがはイギリス人、すぐに何もなかったようにふるまって私を感心させたが。

「テート・モダン・ミュージアム」で、
「私のテーマは人間の呼吸と宇宙の混沌のコラボレーションなの」みたいなことを言いそうな 「アーティスト」タイプ。
とても 「シティ」で 「ビジネストレーニングコース」に参加する 「会社員」には見えない。
が、話してみると非常にまともな人だった。

今までは、
変わった格好をする人 - 変わった人
と思い込んでいたのだが、
変わった格好をする人 - でも、普通の人 

という存在もあることを思い知らされたのだった。人間って深いわね。

投稿者 lib : 11:59 PM | コメント (0)

June 14, 2007

職場の困ったちゃん 男性編

career2.gif
どの職場にも 「困ったちゃん」が存在する。

私は基本的には愛想のいい女なので、日ごろつきあいのない同僚にも、こちらから積極的に近づいて、まんべんなくおしゃべりするように心がけている。
が、さすがの私も、できれば避けたい、という同僚が何人かいる。

うちの困ったちゃんの筆頭は2005年8月23日のブログ「薫の君」こと 「鼻曲がりちゃん」だろう。この人は学生時代にエルトン・ジョンと同級生だったそうだ。
・・・それがどうしたと言われそうだが。

この人のそばでは自然と 「息を止める」ようになったが、給湯室なんかでコーヒーをいれている時に彼が来るとちょっと困る。
給湯室では同僚に対する礼儀として世間話、つまり天気とか電車の遅れとかガーデニングの話をしなければ失礼だろう。私はヨガの達人ではないから、息を5分間止めたままでにこやかに対応する、というのは無理だ。

彼がその場からいなくなっても、慌てて深呼吸なんかをしてはならない。しばらくは 「残り香」があるので、せっかく息を止めていた努力が無駄になるからだ。
何も考えずにコピー機の前に立ち、(うっ、今まで彼がここにいたんだな・・・)と思い知らされることもある。

どんな感じかというと、枯れた花を入れたままの花びんを1週間そのままにして、中の水を捨てるときの匂いを思い浮かべてもらうといい。
ガールフレンドがいれば、どうにかしろと言うだろうけど、あれではガールフレンドは・・・むずかしいだろうなあ。温厚そうで感じのいいおじさんなのに・・・。

私は他人にアドバイスするときには、はっきりと物を言うことにしている。
寒い日にボスがニットのベストをスーツの下に着てきたときには、
「うわー、爺臭い。奥さん、それ見て止めなかったの? 止めなかった? もしかして奥さんから愛されてないんじゃない?」と 「正直で親切なアドバイス」をした。

でも、「鼻曲がりちゃん」には言えないよね、「息ができないほど臭いんですけど・・・」なんて。

ちなみにボスは 「うるさいな。寒いんだ。放っておいてくれ」とか言っていたが、それ以降、その爺臭いベストを着てこない。
アシスタントとして適切な助言 (爺臭い、と何度もはやし立てること。いじめの形を借りてビジネスマンとしての自覚をうながすこと)が取り入れられて幸いです。

ある同僚は生まれが謎に包まれている 「わけがわからんちゃん」で、おまけに記憶力と識別力にひずみがある。

「僕の母親はハワイにいた日系人」と言っていたが、別の日には 「父親がシンガポールにいた日本人」だったりして、家系図に混乱が見られる。
全然、日系には見えないけどねえ。

それにしても、
―――私のことを 「アキコ」と呼ぶのは止めてください。

昔、アキコという日本人のガールフレンドがいたらしい (本人談)が、2年近くも 「アキコ」と呼ばれ続けている私の身にもなってほしい。何度も訂正しているのだが直らない。
最近は 「アキコ」と呼ばれると聞こえなかったふりをすることにしている。で、
「アキコじゃなかったな、誰だっけ・・・」
と私の名前を思い出そうとする。思い出したあたりでは、私は10メートル先を歩いているので、もう一度聞こえないふりをして相手にしないが。
たぶん、まだ、その女に未練があるのだと思う。知らないけど。

ささやき声の 「聞こえないちゃん」もいる。
声が小さくて、ささやくように話し、自分のジョークに自分で笑うので、

「ボソボソ、ボソボソ、ふふ、ふふふふ (自分のジョークに笑っているらしい)ボソボソ・・・くすくす、ボソボソ・・・」という感じだ。

私は会社の着席式のパーティで彼の隣になったことがある。
前菜からデザートまでの1時間、ずっと、ボソボソ、ふふふ、くすくす、とささやかれて、 
(次回は補聴器を持ってこよう)と思ったものだ。
何を言っているのか聞こえないので、何で笑っているのかさっぱり理解できない。それでもしっかり相づちを打って、ところどころで笑ったみせたのは自分でもプロの技だと思う。
コーヒーがサーブされたら、速攻で席を立った。

仕事はできる人たちなんだけどねえ・・・。困ったもんだ。

投稿者 lib : 12:16 AM | コメント (2)

June 07, 2007

お仕立てシャツ

career2.gif
オーダーメイド Made to measure でシャツを作ってみた。

シティにはビジネスマン向けの紳士服の店がいくつかある。
「スーツができたから取ってきてくれない?」
とボスに頼まれることもある。タダではお使いを引き受けないのだが、私はワイングラス1杯のお駄賃で気軽に雇える 「低賃金労働者」なので、ときどき使い走りをさせられる。(私はシティのワインバー価格でラージグラスの7ポンドをお駄賃として設定している)
紳士服店では女性客が珍しいのか、やたらとチヤホヤしてくれるのもうれしい。

そんな紳士服のオーダーメードの店のひとつに 「女性用のシャツもお任せください」とサンプルがショーウィンドーに飾ってあった。

私はちょっと 「くせのある体型」をしているので、日本製、イギリス製に限らず既製服のシャツが身体に合わない。この店のシャツは49ポンドから99ポンド。オースティンリードの既製品シャツが60ポンドと思えば高くない。ちょっと聞いてみようか。

マネージャーがにこやかにやって来た。イタリア系か、スペイン系の女性だ。
うーむ、アングロサクソン系に囲まれているとラテン系の女の色っぽさが際立つねえ。 
(おやじ風のコメント)
紳士服の店に美人の女性マネージャーを置くとはうまいビジネス戦略だな。

さて、オーダーメードの方法だ。
1.生地を選ぶ。ここで値段が決まる。この店では49ポンドから99ポンドまで数種類。当然だがカッコいい生地は99ポンドである。サンプルの生地を身体に当てて鏡うつりを見てみた。どうせなら白よりはシティ風に 「フラムボヤント」つまり 「伊達男風」 (私は女だが)の派手な色合いがいいよね。
2.サイズを測る。胸囲、肩幅、袖丈、胴回りなどだ。 「もうすぐ、やせる予定なんです」と言ってみたが、その手のたわごとは聞きなれているらしく相手にされなかった。
3.襟の生地を選ぶ。私はここで別の色の生地にした。
4.襟の形を選ぶ。5、6種類の実物大のものを並べてくれる。
5.袖口の生地を選ぶ。ここでは襟と同じものにしてみる。
6.袖口の形を選ぶ。カフリンクスをつけるタイプにした。
7.ボタンを選ぶ。
8.前金の支払いをする。

いつもは仏頂面のおねえさんが働いている安物の服の店にしか行かないのだが、オーダーメイドの店だけあって、客扱いが丁寧だし、好みを尊重しながらも上手にアドバイスしてくれる。
なんだか自分が 「素敵なシャツを着る、素敵な私」という気分になるから不思議だ。

うふふ、スーツも作っちゃおうかしらん。
(商売上手なマネージャーにすっかり手玉に取られている)

2週間かかるということだったが、1週間後にはできたという連絡が店から電話が入った。
1週間と言いながらも、実際は2週間かかるイギリスでは 「前倒し」の連絡はうれしい。

さて、試着だ。
おおっと、自分で選んだとはいえ、マジでフラムボヤント (別名、派手)なシャツだ。
ちょっとうろたえる。シティ以外では着れないだろうな、これ。
首の部分のボタンを2つにしたので襟がもたつく気がするなあ。
襟の形は失敗したかな、と思っているとマネージャーがササッと手を加える。
「こう着こなしてね」
あーら、不思議。ジャケットにすっきりと収まった。さすがはプロ。

会社にもどってボスや同僚に見せ、そこそこの評価を受け、ご満悦であった。
ま、似合わなくても、そうは言える状況ではなかっただろう。相手は私だし。

「これからは私を 『フラムボヤントな女』とお呼び」と、たった一枚の派手シャツを作っただけで有頂天になる私であった。
貧乏人は褒めるとすぐにつけあがるから始末が悪い。(自分のことだが)

いつ、お披露目しようと思いつつも、新しい靴を履いて雨が降ったりするとキィーッとなる性格である。
ビジネスランチで、レッドワイン、トマトソース、コーヒー、チョコレートムース、その他の 「邪悪な色物」がおろしたてのシャツに飛び散るのを想像しないわけにはいかない。
クライアントをテーブルに残したままでレディスに駆け込むのもなあ。

で、いまだに着る機会をつかめずに家のハンガーにかかったままになっている。

・・・早く着なくちゃ。季節が変わってしまう。

投稿者 lib : 09:23 AM | コメント (4)

May 31, 2007

女子トイレ イギリス編

career2.gif
先に忠告しておくが、 「イギリスの女性に憧れを持っている人」は今回お読みにならないほうがいいと思う。「スカトロ系は苦手」という人もパスをお勧めする。

イギリスの女子トイレといっても、場所によって会話が違う。

オペラハウスやラグジュアリーホテルとかメイフェアの店の 「レディス」なら、
「来週のチャリティパーティにお出かけになります?」
「ええ、あたくし楽しみにしておりますのよ。ウィリアム王子がお見えになるしね」
と優雅な会話を耳にする。この手のパーティの参加費は200ポンドくらいするだろう。

場末のショッピングセンターの 「女子便所」では、難民風の人にたどたどしい英語で生活の苦しさをこぼされる。「大変ですねえ、おばあさん」(で、私にどうしろと?)。また、万引きした商品をトイレに持ち込ませないように店員が見張っているので緊張感もある。

イギリスで暮らし始めて 「女子トイレの異変」に気づくまでに時間はかからなかった。
隣の個室に入っていた人が水を流してドアを開ける。で、きっちり2秒後には外のドアから出て行く音がする。

さて、どこがおかしいでしょう?

はい、正解は・・・2秒間では手を洗っている暇がありません。

最初はなんとなく変だな、と思っていたのだが、よく考えると手を洗わずに出ていることがわかった。

ひえー、汚いよう!

私は神経の太い女だが、衛生観念は微妙に繊細なのだ。

チャイナタウンにある某レストラン
ここは従業員と客の兼用トイレ。壁には 「さあ、手を洗いましょう」のポスター。
が、ウエイトレスは洗面台を素通りして出て行った。
(あの手で料理を運んでくるのか・・・)
そう思うとその場で失神してしまいそうだった。保健所に通報してやるー!

パーティ会場のレディス
きれいにドレスアップした女の子たちが次々入ってくる。で、個室から出てきて鏡の前に進み、バッグの中のリップスティックを取り出して、グリグリと塗りつけ、パウダーをはたくと・・・そのまま出て行く。

おい、メイク直しをする暇があったら、手を洗わんかい!

ダンスフロアではさっき手を洗わなかった女の子が若い男にしなだれかかりながら踊っている。女の子の手を取り、うっとりしている男に、
「おにーさん、その子はトイレの後で手を洗っていないのよー」と思わず駆け寄って教えてあげそうになる衝動を押さえるのが大変である。

私的統計によると、10-20%の女の子が手を洗わないようである。誰も見ていないところではもっと高い率かもしれないが。

オフィスパーティの前の会社のトイレ
このごろは誰かが借りているホテルの部屋にみんなで押しかけて、そこのバスルームを使ったり、自分のスポーツジムでシャワーを浴びてからドレスに着替えることが多いのだが、そうでない人は会社のビルの中の狭いレディスでひしめき合いながら準備をする。

で、パーティ用のストッキングをはく前に洗うのである。

足を――
洗面台で――

同僚たちが 「大また開き」で足を洗面台につっこんで洗っているのを見た瞬間、私はチャイナタウンと同様に失神寸前であった。イギリス婦人の気品あるマナーはビクトリア女王の時代で終わってしまったのか? 女王もきっと草葉の陰で泣いている。

・・・と過ぎていった10数年。潔癖症の私も少々のことでは驚かなくなりました。

余談だが、某コンサートホールの個室内の荷物かけはものすごく上のほうについている。利用する女性の平均身長を185cmとして設定したらしい。
小柄な人がこれにバッグをかけるのは 「輪投げ」の技術が必要である。

投稿者 lib : 09:37 AM | コメント (4)

May 24, 2007

日本大使館vs英国大使館

career2.gif 
ロンドンの日本大使館 (パスポートは領事館か?)には世話になった。数年前のことだ。

数週間後に日本への出張を控えたある日、何気なくパスポートを見ていて息が止まった。
「き、切れてる・・・」
パスポートがすでに無効になっていた。どうしよう。

クライアントとのミーティングは延期してもらえるだろうが、すでに航空券は購入してある。ディスカウント・チケット(出張なのにケチな会社)だから変更はできないだろう。

泡を食って必要書類を準備し、大使館 (領事館だってば!)に持っていった。
「いつ新しいパスポートができますか?」
「二週間後です」
「二週間後のいつですか?」
「朝、開館する時点で、できています」と窓口のおねえさんは毅然たる態度で言い切った。

二週間後の朝一番でパスポートを受け取った私は、白雪を頂きにした富士山を背景に、左手には満開の桜、右手には風にはためく日の丸を見た気がしたね。

ここまで感激したのも、日ごろイギリスの役所でひどい目に遭っているからだ。
だーいたい、イギリス人の役人なんか真面目な顔でいろんな約束をするくせに守るほうが珍しいって。おまけに言うことがみんなバラバラでさあ。
クロイドンにある 「某」ルナーハウスで何回、裏切られたことか。

さて、ロンドンの日本大使館、パスポートを出してくれる窓口があるだけではない。上の階にはちゃんと広いホール(宴会場か?)もある。パーティで中を見たことがあるが、
―――ちょっと・・・質素だ。
というのも、これでもかという過剰な装飾の大使館に行ったことがあるからだ。

そう、それは東京にある英国大使館。
ロンドンの日本大使館が慎ましく 「ビル」なのに、東京の英国大使館はどーんと広い敷地を占領していて、でかい態度である。どちらの都市も土地代が高いのにイギリス側には相手国に気を使う、という謙虚さが見えない。

さて、ここにも 「奥の間」が存在する。
一部は 「ビジネス・サポート部門」である。正式な名前は忘れたけど。
日本に進出するイギリス企業にアドバイスしたり、パートナー企業を紹介する機能を持つ。

ボスと行ったミーティングの途中でトイレに立ったら、「もう一度入室するときには身分証明をしてください」と言われた。・・・にも関わらず、トイレから戻ったら、「ハイハイ、どうぞ」とあっさり入れてもらった。厳しいルールの割りにチェックは甘いという、いかにもイギリス的なノリだったのを覚えている。
テロ事件が増えた現在はたぶん違うと思うけど。

しかし、ここの英国大使館ですごいのはホールだ。式典に招待されて行ったら、シャンデリアに肖像画、猫足テーブルにフカフカのカーペットでキンキラな装飾だった。
ベルサイユ宮殿か、ここは。

うーむ、このきらびやかさと仰々しさ、負けてるじゃないの、日本大使館!

「女王の代行」として駐日大使が登場すると、礼服がまるで 「ナポレオン」だったのでびっくりした。勲章だの、金ボタンだの、ふさ飾りだのと仮装行列のような服装である。
当時の駐日大使はもう任を退いて帰国している。ロンドンで時々その顔を見ることもあるのだが、そのたびに、
(あ、ナポレオンのおじさんだ)と国籍の混乱を招く記憶がよみがえる。

大使はフェンシングのような剣をシュッパッと抜いて、栄誉を受けるためにひざまずいた人の両肩をそれで軽く叩いていた。(見ていて、ちょっとこわかった。あの剣は本物か? 間違って首が切れちゃったりしないのか?)

あのわざとらしさは迫力があったなあ。

その国らしさを出すというのなら、日本大使館のホールもあの地味さを逆手に取って、 「わび」と「さび」で勝負するのがいいかもしれない。

ヨーロッパの外交官をレセプションに招くとき、ホールの四隅に 「虚無僧」を立たせる。
で、尺八の四重奏でお迎えするという趣向だ。どうかしら?

でも、招かれた側が 「ナポレオン」で来たりすると、ちょっとね。

「虚無僧」vs 「ナポレオン」か・・・。勝負にならんな。

投稿者 lib : 09:00 AM | コメント (0)

May 17, 2007

キッチンの攻防

career2.gif 
夕方、家の電話が鳴った。この時間にかかってくるのはセールスが多い。電話会社、ブロードバンド、ガス会社等々の勧誘である。
玄関に人が来ても基本的には無視することにしている。ま、そのせいで配達物を受け取りそこなったりすることもあるのだが・・・。電話はそうもいかないし。

「こちらはキッチンXXです。リーズナブルな価格で高品質のキッチンをお客様にお届けします。一度お伺いして、見積もりを出させていただきたいのですが」
キッチンの改装は考えていなかったが、いくらかかるものなのか興味はある。
週末の午前中にアポイントを入れた。

と、友人や同僚に言うと全員に 「えー、大丈夫なの?」と心配された。
「セールスマンがからむから割高になってるよ」
「ものすごく強引なセールスで断れないよ」
「いつまでもしつこく勧められて、うんざりして契約しちゃうよ」
・・・まずかったかしらん。

さて、土曜日だ。
ちっ、人が来るならキッチンを掃除しなければならない。
が、こんなときに限ってクリーナーのおばちゃんは休みである。
えー、私がキッチンを掃除するの? (当たり前だ) 土曜日の朝っぱらから? (アポに同意しただろ) と自分で自分につっこみを入れながら、イヤイヤ掃除する。

約束の時間にぴったり、南アフリカ出身という白人のおばちゃんがやってきた。

私は人を見る目はないのだが、いかにも 「強引」が 「サイズ18」の服を着て歩いているという雰囲気のおばちゃんの押しの強そうな性格はさすがの私にもわかる。
安請け合いしたのをちょっと反省した。

「今日の見積もりはね、今日だけしか有効じゃないの。だから、今日中に契約書にサインしてもらうわね」
「いいな、今日中にカタをつけてもらうぜ」って、まるで借金の取立てのような雰囲気だ。
「今日中に耳をそろえて借金を返さないと、女房と娘を女郎屋に叩き売るぞ!」と脅迫されている気分である。
じゃ、私の立場もはっきりしておきましょうね。で、
「高いものだから、今日中に契約するつもりはないわよ」とあっさり宣言しておく。
カウンターパンチを受けたセールスのおばちゃんはちょっと沈黙したが、とりあえず見積もりを出すことにしたらしい。

「どんな色がいいの?」とおばちゃん。
「無難なところで白かしらね」と私。
「白なんかダメよ。他の色にしなさい」
おい、いったい誰のキッチンだよ?
「でも、白がいいなあ」とねばる。
「うちのカタログに白はないのよ。クリーム色でどう?」

「ここにカウンターのテーブルをつけましょう」とおばちゃん。
「いや、そこはがらんとした空間がいい」と私。
「つけたほうがバランスがいいわ。本当よ。私を信じなさい」と設計図に勝手にかきこむ。
もう一度聞く。いったい誰のキッチンだよ?
「ううん、いらない」と譲らない私。しぶしぶ、かきこみを消すおばちゃん。

おばちゃんは見積もりを出すのに3時間もうちにいた。途中で 「コーヒーちょうだい」と飲み物までねだる始末だ。長く時間をかけることで (いまさら断れないかな・・・)という効果を狙うのだろう。「急がないとストックは品切れ寸前よ」と言ってみたり。
そんな小細工は効かないよ、私には。

「本当は9000ポンドだけど、会社には内緒で6500ポンドまで値引きするわ。もし、今、決められないなら、100ポンドの手付金でストックを押さえておくわよ」
―――9000ポンドの根拠はどこに?
「100ポンドの手つけ金だけでもしてよ。 契約が不成立の場合は返金するから」
―――このオババから、すんなり手つけ金が返るとは思えない。
「する気はないわ。今日中に電話する」
と、なんとか無事に追い返した。後から 「悪いけど、いらないわ」と短いメッセージを送る。余計な言い訳をしないほうがいい。

私はああいう強引なタイプは苦手だし、逆に反発してしまう。でも、気の弱い人ならうまく断れず、設計の内容にも納得できないまま契約してしまうかもしれない。
あの手の会社から見積もりを取るのは、きちんと反論できない人にはお勧めしない。

で、相変わらず、私のキッチンはボロのままだ。土曜の朝から掃除して損したな。

投稿者 lib : 09:08 AM | コメント (0)

May 10, 2007

スリ

career2.gif 
やられた。
会社の帰りにスーパーに寄り、お金を払おうと思うと財布がない。
ちょっと、待ってー、と青い顔になった。
「お取り置きしますよ、このまま」と親切なレジのおにいさん。
あのね、焦っているのは、ここの支払いができないことじゃないのよ。

ものすごく混んでいた帰りのバスだろうか? 

家に帰るとあわててカード会社にキャンセルの電話を入れる。
「最後にカードを見たのは、いつですか?」
ランチタイムのサンドイッチショップだ。その時間と場所を聞かれる。
「最初にカードがなくなったのに気づいたのはいつですか?」
夕方のスーパーマーケットだ。時間を答える。
カードに盗難保険をかけていてよかった。専用電話番号なのですぐにオペレーターにつながって 「グリーンスリーブス」も聞かずにすんだし。

スリに狙われるのは 「いかにもカモになりそうなマヌケ顔の奴」と思っていたのだが、自分が被害に遭ってみると、この持論を撤回しなければならない。
本日をもって宣言するが、スリにやられるのは 「優しそうな顔の人」である。
(どうして気がつかなかったんだろう? 私のバカ、バカ、バカ!)と思ってはいけない。

このように、いけ図々しい自己正当化・・・いや、柔軟性のある考え方を心がけるのは、ストレスの多い外国生活では必要不可欠である。
私はいくらドジを踏んでも、決して自分を責めないことにしている。

さて、 「顔の優しい」私がイギリスでの10数年間で、財布を抜かれたのは2回目だ。最初はビクトリア駅に近いパブでやられた。足元に置いていたので安心していたのだが。

「未遂」は2度ばかり。
一度は地下鉄の中、ふと、気がつくとバッグの口がパックリ。ハッとしたが、財布は無事。
横に立っている若い女の子がなぜか赤い顔をしている。おまけに腕にふわりとスカーフをかけた様子がなんとなく不自然だ。何も盗られなかったし、証拠はないので何も言わなかったが。

2度目の未遂事件もやはりパブだ。ここはロンドンブリッジの近く。
飲み物を注文しようとバーにいると男がハンドバッグに手をかけた (らしい)。このときは一緒にいた友人が気づいて声をかけたので、そいつはゴニョゴニョと言い訳をしながら、どこかに行ってしまった。

現在のところ、すられたのが2回、私が先に気づいたのが1回、友達が止めたのが1回だ。

スリ2、私1、引き分け1 というスコアである。負け越しなのがイヤだけど。

イギリス暮らしが続く限り、このスコアは更新されていくことだろう。

私の 「ものすごく、しっかりした」友達もオックスフォードストリートの店でやられたという。自他とも認めるタフな人間で、私なんか 「東京銘菓 ひよこ」に見えるくらいだが、さすがの彼女もプロのスリにはあっけなくカモられて 「まさか、あの人が?!」とみんなを絶句させたのだった。

武勇伝も聞いた。ある日本人女性がローマに旅行中にジプシーの子供たちに取り囲まれた。
ん? と思うと、ウエストポーチ(日本人ツーリストのお約束)のファースナーが半分開いている。が、ラッキーなことにまだ盗まれていない。
と、頭に来たその人、ジプシーのグループの中の一番年長そうな子供を捕まえると日本語で怒鳴りながら、

――――パッチーンと頬をひっぱたいたそうだ。(危険です。マネをしないようにね)

後ろ暗いところがある子供たちなので、文句を言いながらもさっさと逃げていったという。

先週、メールが回ってきた。
セントラルロンドンのキャッシュマシーンでお金を下ろそうと、暗証番号を打ち込んだ瞬間に、左側から新聞の無料紙が差し出された。右側にも人が立ったのが見えたが、しつこく差し出される新聞を払いのけるのに必死。200ポンドの現金が引き出されたのに気づいたのはふたりがいなくなってからだ。後ろに人が並んでいたのに、新聞の男に気をとられていて、もう一人の女が右からボタン操作をして現金を奪ったのはわからなかったらしい。警察に行くと同じパターンの被害届けがたくさん出ているので、現金の引き出しはなるべく銀行内のATMを利用してくださいと言われたとか。

悪い奴らがいっぱいいる。みなさんも気をつけてね。

投稿者 lib : 08:28 AM | コメント (4)

May 03, 2007

蜷川幸雄ロンドン公演

career2.gif 
蜷川幸雄のロンドン公演を観てきた。シェイクスピアの 「コリオレイナス」である。
演劇にはそれほど興味ないけれど、彼のロンドン公演は楽しみにしていて、これで3、4度目だ。35ポンドの席を手に入れた。

「超マザコンの不幸なローマの英雄とその非業の死」というよくある話である。シェイクスピアの作品でもあまり有名ではない。一応、あらすじや登場人物を予習してから行った。

「ニナガワ」といえばイギリスの演劇界での評価も高いようで、有名な俳優もたくさん見に来ている。 「ショービジネスのチャラチャラしたセレブ」ではなくて 「しぶい演劇人 - 自他とも認める演技派です」みたいな連中だ。
ハリーポッターの映画に出てた人とか、テレビのコメディ番組の常連とかの顔もある。

この日は緊張して早めに着いた。何せ 「恐怖の迷宮」バービカンセンターである。
コベントガーデンのロイヤル・オペラハウスとか、ウォータールーのロイヤル・フェスティバルホールに出かける日は普通の精神状態だが、バービカンセンターは 
(何とか迷子にならないようにしなければ・・・。無事に会場に行き着けるだろうか?)
と、不安で一杯だ。
「ロイヤル」という言葉がついているのといないのでは、ここまで違う。さすがは女王様の威光 (ナビゲーションつき)だな。

開演の1時間以上前に着いたら、中のバーがまだ開いていない。
天気もいいし、テラスのテーブル席でワインを飲みながら時間をつぶすことにする。
あー、いい気分・・・だった、おやじが来て目の前でカレーを食べ始めるまでは。
おまけに私の風上だ。急にお腹が空いたが、もう時間がない。

さて、館内に入ると日本人でいっぱいだ。いつも日本人の割合がドワッと多いウィーンフィル以上である。サントリーホールか、ここは。

しかし、こうして日本人の女の人を見るとみんな本当にほっそりとしてきれい。
日ごろ 「ビア樽のようなイギリス女の軍団」・・・いや、私たちに比べて 「大きな体格で胴回りの肉づきが豊かでいらっしゃるイギリス人女性の皆様」を見慣れた目には
(わー、小さくてかわいい!)と思ってしまう。服装もおしゃれだしね。
「あらー、鈴木さん、お久しぶりー!」とか、「まあ、ミユキちゃんのママ、お元気?」
などと手をふりあう様子もほほえましい。

ただし、日本人女性の弱点として 「トイレが近い」のも露呈した。幕間の休憩での女子トイレの行列は 「食料をもらうために必死の形相で並んだ難民の群れ」状態だった。
私? もちろん並びましたよ。
4-5時間も平気でトイレに行かないイギリス人のほうが不思議だわ。

さて、蜷川氏の舞台。豪華絢爛な衣装と派手な装置がいつも楽しみだ。

今回の衣装は主役が 「武士」で、母親役が 「西太后みたいな中国宮廷風」で、敵役が 「スペースオペラ」で、貴族役が 「キリスト教のモンク」で、民衆が 「コサック、ロシアの農民」だった。
どこの国の話だっけ? え? ローマ帝国?

舞台の大部分が階段になっている。ここですそを引きずるような舞台衣装の俳優が激しい 「殺陣」をするので、ハラハラしてしまった。練習中には相当数の俳優がねんざをしたのではと思われる。カキーンと刀がぶつかる音響効果。わーい、チャンバラだ!

この日のお気に入りは白石加代子。ローマの英雄の母親役は強烈な存在として、どの女優にもおいしい役だろうけど、この人も大迫力ですごかった。
息子でない私ですら思わず 「ママー」と叫んで、ひれふしそうになったもん。

そういえば、何年か前の公演で印象が強かったのは高橋恵子という女優だ。その昔は関根恵子といって 「元祖 魔性の女」と呼ばれていたらしい。地味な衣装の固い役だったにも関わらず、ものすごいフェロモンのオーラを発散していた。私はそれを 「色気玉」と名づけたのだが、直径3メートルもの色気玉が彼女と共に舞台を移動したので度肝を抜かれた。

「色気をふりまくつもりはないんですけど、含有量が多いのであふれ出てしまうんです。うふふふ・・・」みたいな雰囲気だ。

白石加代子といい、高橋恵子といい、女優というのは 「魔物」だと思った。

・・・「魔性の女」に 「魔物」か、かっこいいなあ。うっとり。

あ、そうだ。主役の唐沢寿明と敵役の勝村政信も超かっこよかったです(おまけ)

投稿者 lib : 08:50 AM | コメント (2)

April 26, 2007

狐つきの家 その2

career2.gif 
日曜日、隣のおばあちゃんがやってきた。
「お宅の庭にきつねがいるの。死んでるんだか、死にそうなんだか・・・」

この人が前回に私の家に来たのは、「ねずみ」(2006年12月7日のブログ)の件である。で、今回は 「きつね」か。 「動物シリーズ - 殺りく編」はまだまだ続く。

「庭のどこにいるのか、教えるわ」と家の中に入ってきた。
実はクリーナーのおばちゃんはこの3週間、ラトビアに帰省中である。彼女なしでは家の中の片づけに少し自信がないのだが、80歳を過ぎたおばあちゃんにダメとは言いにくい。

ほら、そこに、と裏庭を指差されてみると、確かに茶色いものが芝生の中にいる。芝生がのびているので草に埋まっている感じだ。きれいに芝刈りされた隣の庭ではなく、私の庭を選んだのは、草の感じが 「より自然に近かった」からだと思われる。
「ヨタヨタって感じで庭に入ってきて、そこに寝転がったままで動かないの」

私の頭に、
「庭に横たわる 『きつねのえり巻き』しかも無料」という 「鬼畜」のような考えが浮かんだ。
が、それに続いて、
「・・・を手に入れるためには、血みどろの解体作業が必要である」という文章がこだまする。しかたない。穴を掘って庭に埋めるか。

「あのね、役所に電話をしたのよ。でも、きつねの死体をひきとってもらうには50ポンドもかかるらしいの」とおばあちゃん。

なんだ、動物愛護よりは費用を心配していたのか。

「でも、公道に出しておけば、無料で回収するって」
きつねの死体を家の前に出しておくのも、何だかなあ。

と、その体の上をハエが飛び回ると、耳がピクピクと動いた。まだ生きてはいるらしい。
フラフラと立ち上がるとほんの数歩だけ移動して、そこに寝転がる。
「あら、生きてるわ!」と慌てるおばあちゃん。
歩き回ったあげくに自分の庭で死なれると50ポンドの費用が・・・と思ったのか、いったん、家に戻り、電話帳を持ってやってきた。

「出すぎたまねだと思わないでね。ちょっと動物保護の協会に電話してもいいかしら?」
はい、はい、何でもして下さい。
「お金はかからないから」
そこが重要なのね、おばあちゃん。

日曜日の午後だ。
死にかけたきつねを無料で引き取るような酔狂な・・・と思っていると、
「傷ついたきつねがいるんですって?」と保護用の檻を持った女の人がやってきた。
電話をしてからたったの20分。

以前に悪ガキが庭に入ったらしく、ガラスは割れなかったが窓に卵が投げつけられていたときに警察に電話をしたが、
「このたびは大変でしたね」という 「慰めの手紙」を受け取っただけだ。税金を返せー!
なのに、野生のきつねのトラブルなら日曜日でもたったの20分で駆けつけてくれるのか? 私はきつねになりたい (嘘だけど)

見るときつねは10メートルも移動していて、塀に鼻づらをくっつけたままで寝ている。

・・・・まさか、だらだらと昼寝しているだけでは?

が、動物保護協会のおねえさんが捕まえようとすると、すごい勢いで逃げていった。

後ろ足を怪我しているらしい。元気がなくてぐったりしていたのはそのせいか。
「あれでは狩りができないわ。何日もつらい思いをするくらいなら、安楽死させたほうがいいわね」と保護協会の人とおばあちゃんが相談している。

おい、足の怪我くらいで殺すなよ。
安楽死に対する考えは日本人とイギリス人ではかなり違う。日曜日なのに動物保護のために働くおねえさんは尊敬するけど、ちょっと違和感もある。
医者とか獣医にならなくてよかった。安楽死といいながらも、生きている人や動物の命を絶つのはちょっとね。

でも、ビジネスで同業のライバル社の 「息の根を止める」策略を練るのには罪悪感はありません。

投稿者 lib : 08:46 AM | コメント (0)

April 19, 2007

セクハラ

career2.gif
セクハラといっても業界によってずいぶん違う解釈なのではないだろうか。

友人のひとりは 「地方公務員」である。オフィスの飲み会に呼ばれたこともあるが、(なぜ招待されたのかは忘れた)同僚の人たちはおっとりした雰囲気だった。古き良きイギリス、ビクトリア時代の道徳観を思わせるお行儀の良い人たちで、セクハラみたいなきわどい話題なんかとんでもない。職場でも飲み会でもお天気とかガーデニングの話しかしないような感じだった。

もうひとりは 「国家公務員」である。ここもまたオフィスの飲み会に呼ばれたことがある。 (どうして、私はやたらと他人の飲み会に行っているんでしょう?)
鋭いジョークが飛び交ってはいたが、口のきき方には気を使っている様子だった。
と、言うのも、ものすごく厳しい規律があるらしい。

たとえば、コピー機の修理に黒人の若い男の人が来ているとする。で、その人のことを 
「あのコピー機の前にいる 『黒人』の」という言い方をしてはいけないそうだ。
「若い」(年齢差別)と 「男の」(性差別)はまだ大丈夫らしいが、時間の問題かもね。

ちなみにその友人の奥さんは黒人なので、彼は人種差別で言っているのではないと思うが、
「性差別と人種差別をしないようにというルールが行き過ぎて、『黒人』で『女性』なら、いくら怠慢で仕事ができなくても、クビにはできない」と苦笑していたのが印象的。
ここまで来るとなんだかねえ。

さて、シティである。
ここはキャピタリズムの権化で男社会なので、何でもあり、だ。

ボスによると彼の若い頃にはシティで働く女性などいなかったそうだ。
「何で女性がいない職場で働く気になったの?」
「他にチョイスがなかった。でも、だんだんシティで働く女性が増えてうれしかった」
ふーん、でも今は私がアシスタントでかわいそうだね。

しかし、女性が多くなっても、シティはいまだにマッチョな習慣が生きている。
ドアは必ず開けてもらえるし、リフトでも先に乗せてくれ、レディファーストできちんと扱われる。パブで女が金を払うことはないし、ワイングラスが空になれば気を使うのは男のほうだ。

が、上記の 「地方公務員」に聞かれると目を回しそうで、 「国家公務員」なら 「諮問委員会」にかけられそうなお下劣さも日常茶飯。シティにある友人の会社では女性の胸の形のコンピューターのマウスパッドを使う奴、ヌードクッションを置いている男なんかもいるそうだ。もっとも、そんな会社で働く女性はまったく気にしないらしいが。

時々、新聞などで、
「セクハラをされたのでノイローゼになり、その結果クビにされた。賠償金を請求する」
という記事を見る。これがシティだと20万ポンド (年俸4600万円、もちろんボーナスは別)くらい稼いでいた女性ディーラーかなんかで、請求額は数ミリオンポンドだ。
(シティで数十万ポンドも稼げるなら、殺しても死なないくらいにハードでタフな女に違いない。そんな女に 「セクハラ」をするような 「向こう見ずな会社」があるのか? それを受けて 「傷ついたりするヤワな神経」を持っている女なのか?)と疑問に思うのだが、まあ、真相はわからない。

私に対して、ボスや同僚はセクハラまがいのジョークを言わない。
これは彼らが 「紳士」だからではない。下品なジョークは日本語、英語に関わらず、私の 「もっとも得意とする分野」で、下手なことを言うと、大の男が顔を赤らめちゃうくらいの事を言い返されるのを知っているからだ。
ふふふ、諸君、いつでもかかってらっしゃい。受けて立つわよ。

と、愚にもつかない事を自慢していると、元同僚のイギリス人の女性からメールが来た。 (たぶん、このメールはシティのあちこちで回覧中だと思う)
「ホリディに行った友達から、つまらない家族写真を送られてうんざりしていませんか? 大切なあなたには素敵な写真を添付しました。楽しんでね」のメッセージについてきたのは

若いイケメンのセミヌード写真が1ダース!

早速、職場の女の子と一緒に鑑賞、品評会を開いた。
ボスからは 「みんなでオンラインショッピングかい? その3番目の男なんかどうだ?」とからかわれ、男の同僚も 「好みの男の写真をスクリーンセーバーに設定してあげるよ」と親切である。
うちの会社がお堅い職場でなくて良かった。

・・・しかし、このイケメン写真。ゲイの雑誌からのコピーのような気がするんですけど。

投稿者 lib : 12:00 AM | コメント (0)

April 12, 2007

スピタルフィールド・マーケット

career2.gif
数年ぶりにスピタルフィールド・マーケットに行った。目的は占いのおばちゃんに見てもらうためである。

リバプールストリート駅のそばのマーケットは会社の近くだが、週末にわざわざシティにやってくることはない。ずいぶん長い間、このおばちゃんに会ってないなと思いながらも、なかなか腰が上がらなかった。

週末は基本的に電車に乗らないことにしている。毎日、通勤しているのだから、週末くらい家でのんびりしたい、というのはまるで 
「日本のサラリーマンのお父さん」のようである。
私が 「間違って女の身体に生まれてしまった、おやじ」と呼ばれているのは満更はずれてはいない。

さて、スピタルフィールド・マーケットである。
おおっと、すっかり様変わりしている。
場末の青物市場、みたいだったのに、いつのまにかトレンディな店がショッピングセンターのように並んでいる。
まずい。存在そのものが骨董品のような私の占いおばちゃんはまだいるのだろうか???

と、奥まで進むと昔なつかしいマーケットのたたずまい。
「おばちゃん、おばちゃん・・・」と捜し求めると、いた、いた。
「久しぶりー!」と頬にキスをしてあいさつすると、名前をウェイティングリストに書いて順番を待つように言われた。

1時間くらいは待ってね、ということだったので、マーケットで時間をつぶすことにする。

ここにある品物は大量生産された既製品を見慣れた目には新鮮に映る。
「私が作りました」という感じで並べられた洋服は切り端も縫い目もけっこうずさんなのだが、パワーがあって良い雰囲気。ここで店を開いている荒削りのアーティストの中から未来のビッグネームが生まれてくれば楽しいかも。

食べ物屋のそばを通るとプーンと強烈なチーズの匂いがする。土がついたままの野菜やオーガニックの豆腐もある。一切れが10cmx10cmくらいで5000キロカロリーあるんじゃないかと思われるブラウニーやカスタードパイにも心ひかれる。
つい誘惑に負けて2ポンドのカスタードパイを買い、口のまわりを粉砂糖とパイ皮だらけにしていると、 「3D」で目に飛び込んできた人がいた。

ピート・ドハティだ。
スーパーモデル、ケイト・モスの麻薬ジャンキーなボーイフレンドである。
まわりの人に聞くと全員が彼の名前と顔を知っているが、誰も彼のバンド、ベビー・シャンブルの音楽を聴いたことがない。私もないけど。

新聞と週刊誌でおなじみの彼。えらの張ったベビーフェイスで、全然、好みのタイプではないのだが、本人を目の前にすると、
(ううむ、ケイト・モスが別れられないのは、これか・・・)という感じだった。
もちろん背が高いせいもあるだろうが、人ごみの中でもパッと光るような存在感があり、びっくりした。カリスマ性があって華やかなのだ。 
(ミュージシャンとして一流かどうかは知らないよ)

何であんな奴とつきあうんだ、とバカにされているケイト・モスにしても、
「負け犬のミュージシャンから離れられないスーパーモデル」という話題でメディアへの露出度は他の真面目なスーパーモデルに比べれば10倍以上である。

「商売上の損得」だけ考えれば、 「正しい男の選択」といえる。

まともな男と幸せな結婚生活をしているスーパーモデルの話なんかじゃ、つまんないもんね。

と1時間をつぶして占いおばちゃんの所へ行った。
このおばちゃんは仕事関係の占いが強いので、大いに期待している。15分から20分くらいのタロットカード占いで20ポンド。マーケットの中なのでガヤガヤと騒がしく、真横を歩く客からも茶々が入ったりして、集中するのは大変だが。

「私はお金持ちになれるでしょうか?」と聞いたら、
「カーキ色のショーツを履いた姿が見えるわ。あなた、砂漠へ行くわよ」と言われた。

―――砂漠で油田でも掘り当てるのだろうか?

誰か、どこかの砂漠で油田の採掘権をお持ちの方、私と組みませんか? 

投稿者 lib : 12:07 AM | コメント (2)

April 05, 2007

ミュージカル

career2.gif 
久しぶりにミュージカルを観に行った。 WICKED という魔女の物語だ。

ミュージカルよりはオペラの方が好きだが、会社の催し物にオペラはない。
35ポンドのチケットで自己負担が15ポンド。いつもこの 「自己負担分」というところにうちの会社のセコさを見るのだが、ま、いいか、わりといい席だったし。

仕事を終えたのが5時半でシティから劇場のあるビクトリア駅まで行かなくてはならない。7時半開演というのはその前に食事ができるか、できないかの微妙な時刻である。確実性をモットーとする日本人の私はとりあえずビクトリアまで行ってから考えることにして、 
「まず、シティで一杯飲んでからね」という同僚と別行動をすることにした。

何をするにも、なぜ 「まず、一杯」なのか、よくわからないのだが、ふふふ、この日に笑ったのは私だ。 (いつものことだが)

サークルラインに乗ったら、信号のトラブルがあったらしく、トロトロ運転でやたらと時間がかかる。これだから、電車では読むものを準備するようにしているのだ。
そういえば、夏の間、
「地下鉄に乗る前に飲み物をご用意ください」
というアナウンスが流れていたな。いったい何時間閉じこめるつもりなのか?

いつもなら20分くらいのところ、1時間近くかかってやっとビクトリア駅にたどり着いた。もうレストランでちゃんとした食事をする時間はなさそうだ。
(ワインでも飲んでから行こうかな)と思っていたのに無理みたい。

しかたなく、駅構内の店で適当なものを買って食べることにする。 
「適当なもの」はマークス・アンド・スペンサーのドライ・ブルーベリー入りホワイトチョコレート。いくらなんでも 「適当の度」を越えているが、これが「プリ・シアター・ミール」になってしまった。地下鉄サークルラインは責任を取って欲しい。

さて、劇場だ。
「ロンドンの地下鉄の不確実性」を考慮せず、シティで飲んでから来るというボケた同僚たちは当然まだ来ていない。とある列の真ん中に私ひとりがポツンと座って待った。周りの席がどんどん埋まっていくのに、隔離された皇族みたいに誰もそばに座らない。
みんなちゃんと来るのだろうか。ちょっと寂しいんですけど。

同僚たちも開演直前になんとか間に合い、あせった顔で席についた。
この機会に 「とりあえず、まず、一杯飲んでから」行動する習慣を考え直すように提案しておきたい。

見渡すと満席で、小さな子供の姿も見える。でも、煙を吐くドラゴンとか巨大なマスクが動くので幼児には少し怖い場面もあるかも。

緑の顔に真っ赤なルージュを塗った黒装束の女に白い帽子と服のきれいな女が内緒話をしているポスターは駅のあちこちで見かけていた。「悪い魔女」と「良い魔女」の恋と友情の物語だ。悪い(とみんなから思われている)魔女役は顔を緑に塗って、ジム・キャリーの映画 「マスク」みたいな感じで登場。この女の子は人気があり、歌うたびに大喝采を受けていた。

昔のイギリスのTVコメディ Young onesをご存知の人は、あれに出ていた長髪ヒッピー男のニールがちょい役で出演しているのも笑える。

ロンドンの劇場はときどき有名人が出演して、その人目当ての観客を動員するようだ。
EQUUS ではハリー・ポッター役の男の子(現在 17歳)がヌードで出演ということで、劇場の周りにティーンエイジャーの女の子のファンが押し寄せたという記事を読んだ。

・・・ちょっと見たくないなあ、ダニエル・ラドクリフのヌード。

最近はオペラでもオールヌードのシーンがあって、
(ヌードになる必然性はあるのか・・・?)と思うし、観客も気が散って音楽に集中できないのではないかと心配する。まあ、これも最近のオペラ歌手が 「普通の体型」をしているからできることで、もし、パバロッティがヌードで・・・いや、話題を変えよう。想像しただけで背筋の産毛が逆立ってしまった。

このミュージカルは有名人が 「ヤングワンズのニール」というレベルなので、実力で勝負というところだな。

いままでにロンドンで観たのは 「オペラ座の怪人」「シカゴ」「リトル・ショップ・オブ・ホラー」「サタデー・ナイト・フィバー」「ロッキー・ホラー・ショー (一番のお気に入りだ。映画も好きだし)」あたりだが、「ウィキッド」も楽しめた。

投稿者 lib : 07:27 AM | コメント (0)

March 29, 2007

怒りのキティちゃん

career2.gif 
キティちゃんから思わぬ襲撃を受けたので報告しておく。

先日のブログのコメントで 「眉毛つきの偽キティも見慣れれば、まー、いいか、笑えるし」と、つい 「容認」とも取れる発言をしたところ、キティちゃんより抗議行動があった。

真夜中、チリリンと鈴の音。

(ん? 鈴の音?)とぼんやりと薄目を開ける。

経験してみないとわからないと思うが、真夜中に部屋の暗がりのどこかから、ひそやかな鈴の音がするというのは相当コワイ。
まるで怪談 「牡丹灯篭」の下駄の音が 「カラン、コロン」と聞こえてくるようなノリである。

と、突然、頭の上にキティちゃんが落ちてきた。

心臓が一瞬止まる。夜中に大声で叫ばなかったのはラッキーだった。

このキティちゃんは90cmx50cmx50cmくらいの結構大きなビニール人形である。日本の友人が 「夏祭りの夜店」で購入してプレゼントしてくれた。
純正のキティで サンxオ製、メイド・イン・ジャパンと書いてある。

大きさからいって 「ドサッ」と落ちてくるところが、ビニール製で軽いので、どちらからというと 「パサッ」という感じだったが。

ベット脇のクロゼットの上に何年も置いてあったのに、なぜ、急に???

それから二日後、また、「チリリン」と鈴の音。
(あ、また来た!)と思う間もなく、キティちゃんの巨大な顔が私の顔の上に乗っている。

もうこうなると 「地縛霊」が部屋に住み着いているような状態である。
まあ、「来る」瞬間に 「金縛り」がないところはキティちゃんの優しい性格の成せる業か。

さらにもう一度、1週間に3度もこれがあった (しかも、全部が真夜中)さすがの私も考える。

―――キティちゃんは何か言いたいことがあるのではないだろうか。

で、上記の 「容認発言」が彼女の神経を逆なでしたのではと思い浮かんだ。

「眉毛つきの偽キティもOKって、一体どういうつもり? 許せないわ。あたしはね、悲しいときも寂しいときも女の子の永遠のお友達、

日本のスーパースター 『ワン・アンド・オンリー・キティ』なのよ!」

ということであろう。他には考えられない。

ごめん、キティちゃん、私が悪かった。

ここに訂正します。私は眉毛つきの偽キティは認めません。
(これでいいかしら、キティちゃん?)

原因不明の心臓発作により死亡。傍らにキティのビニール人形がころがっている。という状態で発見されるのを防ぐため、この場を借りて 「お清め」をしておく。

やっとこれで安心して眠ることができる。

・・・待てよ。

うちのキティに 「鈴」なんかついていたっけ?

家に帰ってから確かめるのが怖いんですけど。

投稿者 lib : 12:36 AM | コメント (2)

March 22, 2007

サクラ咲く

career2.gif 
桜が咲き始めた。

家の近くの駅のそばに桜の木が数本あり、そろそろ薄ピンクの花が見られるようになった。
日差しも明るくなって、日照時間も増え、春らしくなった証拠なのだが、桜を見る気分は複雑である。

というのも、イギリスの桜は日本に比べて華やぎと情緒がないからだ。

まず、数週間もずーーーーと咲いているのが気に食わない。3月の中旬から咲くとして5月でもまだぐずぐずと咲いていたりする。日本の桜のように、ほんの数日だけ満開の姿を見せ、さっと風や雨に散っていく、あの 「いさぎよさ」や 「はかなさ」に欠ける。

これでは木に咲く「ただの春の花」ではないか。安い、安すぎる。

最初から 「葉桜」の木があるのも、物事の順番を無視した行動と言える。

チャイナタウンあたりのバッタ屋 (安物のコピー商品を売る店)でキティちゃんの財布があった、なんて思って、近づいてみるとこれが偽物。われらのキティちゃんが 「眉毛」のあるマヌケな顔をしているのを見て、許せない気分になるのと似ている。

数年前、イギリス人の取引先、ミスター Mと一緒に日本に出張した。
うちの会社のクライアントと日本で一緒にミーティングをしましょうというのが目的だったが、実際はミスターMが 「抜け駆け」しないようにと 「お目付け役」としてボスから送り込まれたのだ。

(彼はビジネスクラスで飛び、私はエコノミーだった。まー、しかたないけど)

彼があるとき、
「ミーティングに行くたびに 『いやー、良い季節に来られましたね。いかがですか、日本の桜は』 『どうです? みごとな桜でしょう。イギリスにもありますか?』とみんなが桜の話ばかりするんだけど、どうしてなんだ?」と聞かれた。

「桜といえば、まさに日本の美なのよ」
「ふん、ふん、それで?」
「で、日本の美といえば桜なの」
「だから?」
「桜といえば、日本の美、日本の美といえば桜。わかる?」
「・・・・全然、わからないけど」
「もちろん富士山もあるけどね。そうそう、秋の紅葉も忘れちゃダメ。これも目で見る日本の美だけではなくて、心の面での日本の美。わかる?」
「????」

彼をますます混乱させてしまった。

日本の桜、あるいは 「大和なでしこ」と言えば、イギリスならイングリッシュ・ローズだろう。故ダイアナ妃なんかがよくそう呼ばれていた気がする。

しかし、日本の土でのバラの栽培はけっこう大変だが、イギリスではまるで 「雑草」のようにそこらじゅうに生えている。まあ、特別なバラならばそれなりに手間もかかるのだろうが、その辺のバラは何もしなくても好き勝手に花をつける。

何を血迷ったのか、12月ごろポンと咲いているバラを見かけることもあって、

(・・・節操のない花だ。季節というものを知らないのか?)と思わずなじってやりたくなる。

自国の花だって、季節感のないこの調子だから、日本の桜のように、この数日に生命のすべてをかけて咲き乱れる、ようなノリは理解できないのだろう。

こんなことなら、ミスターMを日本酒の匂いとカラオケが怒涛のように渦巻く、上野公園の花見に連れて行き、「桜フィーバーの極致」を見せてやればよかったと思っている。

イギリスの郊外電車に乗って線路脇を見ていると 「スギナ」に似た草があった。スギナがあるなら、 「つくし」もあるのだろうと、翌年、目をこらして探したら、確かにつくしも生えていた。しかし、これが巨大で直径1cm、高さは15cmくらいあるつくしだ。
これではおひたしにできない。

これもまた 「眉毛つきのキティ」だな。

投稿者 lib : 08:42 AM | コメント (7)

March 15, 2007

フリーメイソン

career2.gif 
フリーメイソンのパーティに行ってきた。

元同僚から 「友人が今年の会頭を勤めるのでお披露目のパーティにペアで招待されたけど、一緒に行く女性がいないので来てくれない?」と頼まれたのだった。
パーティの 「パートナー代行業務」といえる。

この手のお誘いはときどきある。正式なパーティはパートナー同伴が多いのだが、離婚率の高いイギリス人のこと、連れて行くべき妻がいない人もいる。
でも、イギリス人の女性に頼むと 「どんな関係?」 と面倒な憶測を呼ぶ。
で、 「妻とは別れたし、ちょうどガールフレンドもいないので、文化紹介がてら外国人女性 (私のことだ)を連れてきた」ということにするらしい。

代行してもお金を貰えるわけではないが、タダ酒が飲める上、50ポンド程度の食事も出るので、物見遊山も兼ねてお誘いに乗る。パーティは基本的に好きだし、11月、12月のパーティラッシュシーズンを除けば、仕事がらみでないパーティに出かけるのはいいものだ。

(ついでに言うと、「スピードデート」(2006年3月9日のブログ)の主催者からも、ときどき、「女性の人数が足らないから来て」と頼まれる。これは完璧に 「サクラ」だな。ただし、これもお金は貰えない。ネタにはなるが)

しかし、この招待を受けるときには少しもめた。
「フリーメイソンのパーティなんだけど、来てくれない?」
「ええ? ちょっとまずくない? 私、白人じゃないわよ」
「白人じゃないとまずいってどういうこと?」
「リンチされたりして」
「・・・もしかして、KKK団と間違えてない?」
「あ・・・」
・・・失礼しました。アメリカ南部の白人至上主義、人種差別ハードコア集団、秘密組織のKKK団と混乱してました。

リンチの心配がなくなったので参加することにする。

某地方都市のホールにフリーメイソンのメンバーが集まる。白人の中年男性が中心で奥さん連れのブラックタイ、ロングドレスのフォーマルディナーである。

「あれが友達なんだ。今年の会頭」
見れば彼の友人はなんと黒人のおじさんで奥さんは白人だった。
なーんだ。有色人種の人が会頭じゃないの。心配して損しちゃったよ。
(と、まだイメージはKKK団の呪縛からのがれていなかった)

「こいつさー、フリーメイソンとKKK団をごっちゃにして・・・」と私の無知をばらされそうになったのを何とかごまかした。

こういう会が主催のパーティはやたらと乾杯がある。まず、女王陛下に乾杯 (この国で一番えらい人だから当然か)それから創立者に乾杯、去年の会頭に乾杯、今年の新会頭に乾杯・・・と延々と続く。女王陛下以外は誰も知らないけど、まあいいか。

やはり、地方都市では「イギリス系白人」が多い。
あまり東洋人なんか見たことがないイギリス人のおばちゃんたちに色々と質問をされ、
「今度、お寿司の作り方を教えてね」という依頼をたくさん受けた。

イギリスの一般的な主婦は、米をとがず、水につけおくこともせず、たっぷりの水で、鍋にふたもせず、強火で 「ゆがく」。火が通ったら 「ざるで水切り」しておしまいだ。
そんな人たちに高度なお寿司の調理法など、というか、それ以前に 「米の炊き方」なんかを説明しようと思うと気が遠くなりそうだ。
はいはい、いいわよー、と安請け合いはしたが、実行する気はない。
(一夜の戯れ言だと思って、私のことなんか忘れてね)

メンバーのおじさんたちは何かのビジネスをしている自営業がほとんどで、現代のフリーメイソンは 「中小企業社長の寄り合い友愛会」であることが判明した。
こんなパーティも目的は 「奥さんにロングのパーティドレスを着せる機会を年に一回ぐらいは作らないと機嫌が悪くなるので」開かれているようだ。

目の部分だけ開いたとんがり帽子の白い被り物をして、パジャマのような服を着たKKK団に火あぶりにされたりしなくて本当に良かった。

リンチと火あぶりがないなら、また行きたい。イギリス人のおばちゃんたちにもかわいがられたし。次回までに彼女ができなかったらまた呼んでね。

投稿者 lib : 10:06 AM | コメント (4)

March 08, 2007

消防士

career2.gif 
今日もまたオフィスの非常ベルが鳴る。

ロンドンでは法律で決まっているのか、やたらと避難訓練がある。仕事の途中でもビルから出なくてはならない。

以前はみんな面倒がって、ベルが鳴ってもそのままデスクに残ったりしたものだが、テロ事件が増えてからというもの、きちんと指示に従っている。

うちの会社のビルは地下鉄であったロンドンのテロ事件の現場のひとつに近い。
午前9時ごろに爆発があった頃、同僚のひとりはもう出社していて、爆音と揺れを感じたらしい。それほど衝撃は大きくなかったので爆弾だとは気がつかなかったという。
しばらくして、警察がやって来てビルを出るように言われた。
クライアントと電話中だったので「この電話が終わってからね」と追いやったが、消防士が来て避難勧告すると、すぐに従ったらしい。

そうか、警察官よりも消防士のほうが 「格が上」ということだな。

現場に近かったので2日間はビルに立ち入り禁止 (会社も休みだった)。2週間ばかりは立ち入り禁止の青と白のテープが張られて、警官のガードが立つ中で、会社の身分証明書を見せ、テープの下をくぐって出社。
「おっ、山さん、ご苦労」
そう言いながら、警察のテープで囲まれた現場に入るという経験を一度してみたいと思っていたが、こんなことでかなえられるのはちょっとね・・・。
おまけに、正面玄関は封鎖され、毎回ぐるりと裏口に回らなければならず、面倒だった。

去年、非常ベルに何か問題があったらしく、一度、間違って作動すると1日の間に何度も繰り返して鳴り響き、ビルの外に出なければならなかった。
で、そのたびに消防車が来るのである。
「もしも」を考えれば、非常ベルの装置を切るわけにもいかず、消防署もベルを無視してしまうわけにはいかないのだろう。

しかし、日に何度も呼び出される消防士はいやだろうな。
内心、「ちっ、また、あのビルか。どうせ、ガセネタだろうな。でも、行かないといけないし。一度、ボヤでいいから燃えてくれないかな」などと思われていたのではないか?

ベルが鳴るたびにビルの外に出されるのもたまらない。毎回、消防車が来るのを待ち、消防士によって内部の安全が確認されるまで中に入れないのだ。
で、つい 「パブやワインバー」に 「避難」する連中もいる。一度、何度目かに鳴ったとき、同僚に誘われてワインバーに行ったら、そこのおねえさんが、
「あら、また来たの?」と言っていた。

非常ベルごとに酒を飲んでいるのか、君たちは?

さて、「消防士」というのはイギリスでは「たくましい男」の代表格である。自らの危険も省みず、炎の中に飛び込んで人命救助するヒーローなのだ。また、消火活動を行うためにトレーニングをかかさず、鍛えられた身体をしていると思われているらしい。
で、消防車がやってくると女性はいっせいに彼らに注目する。 

「ねえ、あの3番目の消防士、悪くないわよね?」
「そうかしら? ちょっと背が低いわよ」
「もう少し若いのを揃えればいいのに」
「この消防署、イマイチいいのがいないね」

といってガセネタで呼びつけられた上に、品定めまでされる。

悔しそうな男の同僚にこっそりと聞かれた。
「日本でも消防士はああやって女性に騒がれるの?」
江戸時代の 「火消し」は大人気だったと思うが、 「消防士」はどうなんだろう? 
小さな男の子にはヒーローかもしれないが、日本女性の憧れナンバーワンの職業とは思えない。
「さあ・・・イギリスだけじゃないの」と言うと、
「ふーん、そうなの」とうれしそうだった。

しかし、一日中デスクについて、コンピューターを見ているような運動量のせいで 「丸い体型」をしている同僚と軽やかに階段を駆け上がって行った消防士では 「勝負は明白」。

女の子にもてたいのだったら、スポーツジムに通って筋肉でもつければ? と思ったが、ま、その辺の判断は本人にまかせることにする。

投稿者 lib : 11:50 AM | コメント (2)

March 01, 2007

ランボルギーニ

career2.gif 
シティAMという無料新聞紙がある。

その名の通り、シティで朝、配られている。ほとんどが経済記事で企業のトップの交代とか、株価とかが中心だが、 「成金 サラリーマン」つまり、ちょいとボーナスを貰って懐具合のいいシティの連中むけの商品情報も載っている。

私のようにシティ勤めをしながらも給料の安い女にとっては、たいへん苦々しく思えるページなのだが、時々おもしろい話を見つけることができる。

ランボルギーニの社長のインタビューが載っていた。

私は車にはまったく興味がない。
赤い車として、二階建てバスのダブルデッカーと消防車と赤いポルシェがあったなら、
「乗るときにお金を払うのがバス」で
「はしごとかホースがついているのが消防車」で
「乗るときにお金を払わなくても良くて、はしごもホースもついていないのがポルシェ」
という区別しかつかない。

ポルシェもミニもランドローバーもすべて 「乗用車」であり、違いは 「ドアの数」と 「色」しかわからない。

しかし、さすがの私でもランボルギーニの名前くらいは知っている。
この社長は 「ボーナスが出るとフェラーリを欲しがる男が多いが、ランボルギーニのほうが個性的でクール」みたいな話をしている。

で、その値段だが、10万ポンドから17万ポンドとある。(2300万円から3900万円)
ふーん、車ごときにねえ。ロンドンの移動なんて地下鉄に乗れば、初乗り料金がたったの4ポンドじゃないの。(・・・考えてみると公共交通機関のくせに、めちゃくちゃ高いな。日本のタクシーの初乗り料金のほうが安いってなんなのよ)

さて、この値段はロンドンのワンベッドルームのフラットくらいだと書いてあった。
10万ポンドでロンドンに不動産なんか買えないだろうと考えていて、ふと、ひらめく。
(と、いうことは、私にも買えるじゃないの)
こう見えても家はある。それを売ればランボルギーニが買えるのだ。

BMW、ベンツ、ポルシェ、ジャギュアくらいの車には乗ったことがある。バービー人形とケン人形が乗ったら、残りのスペースはゼロ、というイタリアの小さなスポーツカー(名前は覚えていない)にも乗った。

ただし、すべて助手席だ。助手席に乗せてもらうのと、所有して運転するのでは、
「えびの天ぷらを食べる」のと 「えびの養殖場を経営する」くらいの違いがある。

そうか、ランボルギーニか・・・。

あ、しまった。ミルクを買うのを忘れた、なんて時も、
「スーパーまで車を走らせてくれない? ランボルギーニの新車なんだけど」と言えば、
100人くらいの応募者があるだろうから、ショッピングも楽勝だ。

「お母さん。あのね、ランボルギーニを買っちゃったの」と日本に電話をする様子を想像してみた。どうだ、親戚の誰もランボルギーニなんか持っていないだろ。
しかし、
「そうなの。ランボルギーニを買ったの。よかったわね。それで、ロンドンの天気はどうなの?」
という会話になると思われる。まず第一に、ランボルギーニが何なのか知らないはずだ。

私の小説が出版されたときも、
「お母さん。あのね、小説が出版されることになったの」と電話したら、
「そうなの。小説が出版されるの。よかったわね。それで、ロンドンの天気はどうなの?」
と言われたことを思い出した。(実話)

うーむ、これでは全然、見栄を張れないではないか。

親にすら自慢できないランボルギーニなど、コストパーフォーマンスがいい車とは言えない。

それによく考えると 「ランボルギーニのオーナー」にはなれるものの、その代償として 「家なき子」になるのである。

この車の購入に関しては 「人生における優先順位」に関しての熟慮を要するようだ。

投稿者 lib : 09:12 AM | コメント (2)

February 22, 2007

ちょい詐欺事件 その2

career2.gif 
ピカディリー・サーカスやコベントガーデンあたりで、小さな花のブーケを押しつけられることがある。 一度、電車の中で座席や床にゴミを撒き散らしながら、せっせとこのブーケを作っていた親子を見た。会話からはとてもチャリティには思えなかった。

日本から来た親戚の子と歩いていたときに、さっと差し出されたことがある。 
「ロンドンの歩き方 - 詐欺編」は教えこんでいたので、ふたりで知らん顔をしたが、
「これはね、チャリティなのよ」と追いかけられた。
「あーら、そうなの? じゃ、どうしてIDカードをつけてないの? チャリティの登録番号を見せて証明しなさいよ」と問いつめてやろうと思ったが、
親戚の子に 「ロンドンの広場でチャリティの人に喧嘩を売ってたよ。こわかった」などと私の親に 「通報」されるとまずい。しかたなく、「英語がわかりません」と逃げた。

「ロンドン貸し部屋フェア」という広告が新聞に載った。
ビクトリア駅に近いビルの一室に 「たった今、運び込まれたばかり」といった感じでデスクが置かれ、5-6人のスタッフによって 「一時的に」開かれている。
部屋探しに来ているのはイギリス、あるいはロンドンに 「来たばかりで様子がわからない」旅行者か留学生という雰囲気の連中。
バイトで雇われたが、不動産のことは何も知らない。雇い主の顔も見たことがないのではないかと思われる若いスタッフが対応する。

探している部屋の場所や予算を聞くと、その場でどこかに電話を入れる。
「はい、わかりました」と言い、電話が切られる。
「あなたの希望にあう物件がいくつかありますが、紹介料として100ポンドを内金で払ってください。部屋が決まった時点でその内金は部屋代の一部となります。トラベラーズ・チェックはダメです。現金でお願いします」ということだったそうだ。

友人は怪しいと思ってやめたというが、数日後には 「フェア」の会場はもぬけのカラで 「内金」にもさようなら。部屋なんて元々ないしー、の世界だったのではないか?

先日はシティの道端で呼び止められた。
「きれいな髪ね。どこでヘアカットしてるの?」
「よく言われるの、きれいな髪だって。特に男の人にね。パーティなんかで・・・ペラペラ」
(ご推察通り、ワインバーから出てきたところで、私は酔っ払っていた)
話しかけたおねえさんは私の話をさえぎる (誰でもそうするだろう)
「有名なヘアドレッサーがカット、プロがメイク、それをカメラマンが写真をとるイベントだけど、興味あるかしら? キャンペーン価格でたったの45ポンドなんだけど」
―――この場で現金を払う人だけ予約できるとか。 
「わー、素敵! お金とって来るから、ここで待っててねー。きっとよー」
と言ったきり、帰ってこなかったのは私だ。

何せ、酔っ払っていたからねえ。

「ナイジェリアからの手紙」は有名だ。
「ジョーンズ氏が死去されましたが、遺産を受け取る家族はおられません。当弁護士事務所が調査したところによると、貴殿が遠い親戚関係にあるようです。遺産の200万ポンドを受け取る気があればご連絡ください」
おお、ジョーンズ氏という親戚があったのか、知らなかった。なになに、200万ポンドの遺産だと? 欲しい、欲しい、と返事をする。
この後の展開はたぶん、
「ご親戚の方が見つかって、当弁護士事務所も責務を果たし安心しました。つきましては送付先として貴殿の銀行口座をお知らせください。また、この案件に関しまして、弁護士費用と銀行送料の1500ポンドがかかりますので、お支払いくだされば幸いです。それを受け取り次第、遺産をお送りいたします」といった感じではないだろうか?

200万ポンドのためならと1500ポンドの手数料を払う・・・人がいるのか?
手数料を払った後で、すんなり200万ポンドを受け取った・・・人がいるのか?

しかし、日本の「何百万円、何千万円」とかの詐欺に比べて、イギリスの詐欺はせこいねー。

M資金とか徳川の埋蔵金とか日本陸軍の隠し金塊みたいに派手な詐欺を聞いてみたいものだ。

おもしろい詐欺話があれば、教えてください。(いえいえ、まねをして、ひと稼ぎするつもりはありませんよ・・・)

投稿者 lib : 09:31 AM | コメント (0)

February 15, 2007

ちょい詐欺事件 その1

career2.gif 
日本では「オレオレ詐欺」が天文学的被害額になっているらしい。

イギリスでもときどき 「ちょい詐欺」を見かける。

毎週、金曜日になると会社に送られてくるファックスがあった。
「ショッピング・モニターになりませんか?」
「格安の旅行に興味はありませんか?」
「ミュージカルや映画を半額で観ませんか?」
とチラシ風のものである。

添付されたアンケート用紙をファックスで送り返すか、電話で質問に答えると、服やバッグ、旅行、観劇といったものが、半額とか割引されるという内容だ。
デザイナー・ブランド、ハイストリートのブティック、カリブ海のホテル、最新の映画やロングランのミュージカルの名前が列記されている。

ちょっと見ると、「マーケッティングの会社」が 「消費者動向」を調べているような感じ。
興味があれば、この番号に電話するか、ファックスを送り返してください、という。

で、一番に下に超小さな文字で「通話料は一分間で2ポンド50ペンス」と書いてあるのだ。

この番号につながると、あっという間に通話料が10ポンドなんてことになるのだろう。
ファックスに書いてある特典が本当にあるのかどうかは知らない。

無視していると、「このキャンペーンのファックスを受け取りたくない場合には、当方までお知らせください」というファックスが送られてきた。もちろん、その番号も一分間で2ポンド50ペンスだったが。

先日は「元気にしてる? オランダから帰ってきたよ」というメッセージが私の携帯に入っていた。なじみのない番号からだ。 「ドリンクしようよ」とか 「週末、暇?」なんてのも来た。イギリスとオランダを行き来している友人がいたのを思い出す。
最近、会っていないけど、彼かな?

「電話があったよ。名前はえーと・・・」
なんて状況でも、相手が女友達なら、
「電話した? してない? じゃ、xxさんかもね。そっちにかけてみるわ」
ということができるが、

男友達だと、
「ケビン、電話した? してない? じゃ、マイクかしら?」
「マイクって誰だよ?」
「え? 誰でもないわよ・・・」
みたいな状況を招きかねない。

ボスの携帯には「あなたにひそかに憧れている人がいます」というのが来て、彼はてっきり 「私」がいたずらをしかけているのだと思ったそうだ。
(10年間も働いている自分のアシスタントに対する信頼はいったいどこに?)

どうもこれは詐欺らしい。「誰だろう?」と思ってメッセージを送ったり、電話をかけてしまったりすると、数10ポンドの通話料がかかるという噂だ。

「文句があるなら言ってみろ」と脅すタイプとか 「どうして来ないの? ずっと待ってるのに」と心配させるタイプとか、いろいろなパターンがあるらしい。

道で配られていたスクラッチカードで 1000ポンドの「当たり」が出て、大喜び。
(たぶん、これは全部のカードが「当たり」になっているのだと思う)
数年前、オーペアがモジモジしながら、「ちょっと・・・」と聞く。
公衆電話から、「当たりが出たらかけてください」という番号に電話をしたらしい。 
(オーペアがいたときは、うちの電話はプレミアレートの番号にはつながらないようにしてあった)

「次はああして下さい、それから、こうして下さい」と電話のボタン操作を指示する録音が延々と続き、何ポンドもの通話料を取られたが、「当たったので賞金をください」というところまでたどり着かないというのだ。
「これね、実は詐欺で・・・」と説明すると、がっかりしていた。

当時、チェコ、スロバキア、クロアチアあたりでは中級公務員の月給が200ポンド程度だったらしい。1000ポンドあったら、帰国しちゃおう、という気持ちもあっただろう。
オーペアの週給が50ポンドくらいだったから、たかが数ポンドの損失でもかわいそう。
このスクラッチカードを受け取ったうちのオーペア3人の中でひっかかったのは1人だった。 三分の一か、けっこう確率高いな。

投稿者 lib : 02:01 PM | コメント (0)

February 08, 2007

社内研修

career2.gif 
社内の研修でエクセル(中級)の1日コースに参加した。

ワードとか、パワーポイントなんかのコンピューターのコースの他に、時間管理術とか法令順守とかの一般的なビジネスコース、それから仕事に直接関係する専門的なものと豊富。
けっこう勉強になる。

日本人のクライアントの中にものすごくコンピューターができる人がいて、その人がときどき高度な仕掛けのついたエクセルの表を送ってきて、
(・・・・・?)という状況になることがある。

私はエクセルの入力はめったにしないのだが、日本語のものだと仕事上、関わりがある。
エクセルは一通りできるが、もう少し複雑なテクニックを習うことにする。

「おはよー」と講師がやってきた。
あ、この人、知ってる。
何年も前に別のコンピューターのコースで講師をしたおじさんだ。
人の顔を覚えられない私が、なぜ彼を覚えていたかというと、
「ものすごく強烈なくせのある労働者階級英語」を話すからだ。

東ロンドン、下町のブリックレーンあたりの「公用語」(最近はアジア系の人が多いから、ヒンズー語とかのほうが多数派かも・・・)

最近、これを聞いたのは「ペストコントロール」こと、「ネズミ捕りの専門家」のおじさんだ。(12月7日のブログ参照のこと)

正直、前回も苦労した。10年前の私なら、この手の英語は1%ぐらいしか聞き取れなかったと思う。地方なまりとも違う 「階級」あるいは 「特殊なグループ」なまりである。
これは外国人には厳しい英語だ。

「まろは京都の公家じゃ。はんなりと香をきくのが好き・・・」とか
「あちきは吉原のおいらん、桜太夫でありんす」とか、
「おいらは江戸っ子だい。宵越しの銭は持たねえよ、べらぼうめ!」
で始まる自己紹介を 「外国人向け」の 「日本語検定」の 「聴き取りテスト」に出されるようなものだ。

全身を耳にしてトレーニングに臨んだ。

「じゃ、ここで 『オーム・キー』を押して」
・・・オーム? 鳥の鸚鵡?
そんなキーはどこにあるのか、とモタモタしていると、
「お姉ちゃん、これだよ。 OME キー」

おじさん、それは 「ホーム」HOME キーです。

労働者階級英語は H が落ちるのだった。

「それから、Fフリーを押す」
・・・Fフリー? F free?
「ここ、ここ、お嬢ちゃん」
おじさんの指はF3を指し示す。

そのキーは Fスリー threeだってば。

労働者階級英語を話す人は TH が発音できないのだった。

あー、疲れた。講師のおじさんは 「コンピューターのキーの位置もろくにわからない外国人労働者」の私に親切だったけどね。

翌日、会社の同僚に
「おほほほ、これでエクセルもバッチリよ。これからは 『エクセルの魔女』とあたくしをお呼びなさい」と宣言したのだが、トレーニング中にとったメモは
「ここで同時にコントロールキーを押す」
・・・「何」と同時に?
「この後でF4から選ぶ」
・・・「何」の後で 「何」を選ぶんだっけ?
と、わけがわからない。
講師の英語の聞き取るのに必死で、メモがすっかりおろそかになっていたらしい。

トレーニングの内容は別冊子でもらったので、それで復習したが、
「パワーポイントのコースも行けば? 同じ講師だと思うよ」と同僚から意地悪を言われている。

投稿者 lib : 09:56 AM | コメント (0)

February 01, 2007

ポッシュな人々 成金編

career2.gif 
先週の続きです。

「成金 = 最近になって金持ちになった人」は 「古い家柄の特権階級 = 何代か前に金持ちになった人」から嫌われることになっている。

で、最近の 「成金」の象徴は 「ヘッジファンド・マネージャー」らしい。 

新聞によると、某金融機関のシニアパートナーの 「基本給」は年俸で10ミリオンポンド (22-24億円、ポンドと円の為替レートが2円違うと2億円の差!)だそうだ。 
これに、バーーーーンとボーナスが上乗せされる。
(40ミリオンポンドものボーナスを貰った人の記事を見た。もし、今までに 「殺意」というものを感じたことがない人は、この記事を読んでみてください。)

毎年、毎年、巨額の宝くじが当たっているようなものだ。こんなに貰っていてはきっと財産管理に困るだろうな。
(ヘッジファンド・マネージャーの皆さんへ、もし、使い道に悩んでいる場合にはご相談に応じるつもりです。いつでも声をかけてくださいね。)

ロンドンのウエスト・エンドにあるバークリー・スクエアは 「新 スクエア・マイル」と呼ばれている。 「スクエア・マイル」は本来、金融街 「シティ」の別称。
ウォーターフロント地区のカナリーウォーフに銀行がつぎつぎと本社を構え、 「新興 金融街」を形成していたのだが、いつの間にか、こんなところにも・・・。

伝統ある金融街、シティのビジネスマンが 「カナリーウォーフの成金」連中をねたんでいたが、ここで、 「バークリー・スクエアの 『新』成金」の登場でもって、さらなるバトルが展開されているのである。 
これからの進展が見逃せない。
ロンドンで開かれるオリンピック関連用地の不動産ビジネスで、下町のおやじが由緒正しき 「土地成金」などになれば、 「成金」のバラエティがさらに豊富になり、楽しいと思う。

さて、成金に群がる女性たちのウォッチングも欠かせない。
金持ちの男を捜すプロジェクトは 「バークリー・スクエア」で働く男が行きつけのクラブやスポーツジムを中心に行われるらしい。 

「ゴールド・ディガー」 は離婚話の持ち上がっているポール・マッカートニーの 「将来の前妻」ヘザーを罵倒するのに最近よく使用されている 「玉の輿を狙う女」である。

「結婚とは 男の社会的地位と財布の重さに対する、女の顔と若さの等価交換である」
そうだから、64歳の元ビートルズのポールと39歳で元モデルのヘザーとの 「商取引」に不正はなかったと思うけど・・・。

WAGS(ワグス)といえば、もともとはサッカー選手のワイフ・アンド・ガールフレンド(複)で、夫やボーイフレンドの巨額の収入でデザイナーブランドを買いあさる女たちのこと。

で、このごろはヘッジファンド・マネージャーのWAGSが幅をきかせ、ダブルバレルのポッシュな人々を悩ませているそうだ。

ここでの「悩ませる」というのは
「成金のくせに、私たちよりも金回りがいいのを見せつけて、頭にくる行動と買い物をするので腹が立つ」という意味のことを「上品な言い回し」で表現したものである。

「いくらお金持ちといっても、それは商売で築いた財産。代々の名家ではない(お下品な)家族」というのはジェーン・オースティンの小説で出てきたフレーズ。
作品は200年も前のものだが。
でも、200年前の「成金」なら、もう「成金」じゃないだろうね。

ヘッジファンド・マネージャーの皆様も2-3世代、50年もたてば 「成金」とさげずまれなくてすむので、しばしのお待ちを・・・。

あー、庶民でよかった。

申し込み用紙の書き込みも楽だし、新興勢力の財力に追い立てられる余計なプライドもないしね。 もちろん、成金なんて呼ばれることもなし。

プライベートヨットで開かれるサントロペのパーティなんかに興味はないよーだ。

(本当です。強がりではありません。決して、悔しまぎれの強がりではありません)

(・・・もう一度、念のため申し上げますが、羨ましがっているのではありません・・・)

投稿者 lib : 09:38 AM | コメント (0)

January 25, 2007

ポッシュな人々 名家編

career2.gif 
「タxラー」という雑誌を買った。3ポンド60ペンス。いつも読み捨てる1ポンドの雑誌に比べてドーンとぶ厚くて紙の質も数段にいい。

広告を見ると読者層がよくわかる。
シャネル、プラダ、グッチとお馴染みのブランドの広告が並ぶ。ただし、「なんちゃってモノ」はなく、2500ポンド (55万円)なんてニットワンピースがさらっと載っている。 一般女性誌の 「カタログショッピング」の 「16ポンド99のカーディガン、2枚目は半額」の10倍ではなくて、100倍以上だ。 「本物の宝石」のネックレスなんかもあって、フランス革命で貴族をギロチンにかけた庶民の気持ちがわかる気になってくる。

女性誌の巻末広告は「占い師」が定番だが、ここでは「パーティ業者」とか「離婚専門の弁護士」がメインである。

そのほかにエキゾチックな旅行 (格安チケットではない)
高級エステ (ドラッグストアのお手ごろ価格のクリームではない)
デザイナーブランドもの紹介の間にあるのは・・・・

「読者のみなさん」の「パーティ風景」

場所はポロの試合(サッカーのように庶民的なスポーツではない)。
ロンドンではウィリアム王子やハリー王子も常連のホットなプライベートクラブ (会員以外は入れない)。
あるいは「プライベートジェット」で行く「サントロペ」にある「プライベートヨット」でのお誕生日パーティ。

・・・そう、サントロペ。

これが庶民なら、「パッケージツアー」で行き、「コンドミニアム」に泊まる 「イギリス人のハワイ」であるスペインの「コスタデルソル(太陽海岸)」の「英国風パブ」が舞台だが。

スナップショットの顔ぶれにはショービズの人はほとんどいない。
有名人ではないが、名字がすべてを物語る。ロスチャイルドとか、ギネスとか、アルファイド(ハロッズのオーナー)。フランス人なら名字に de がついている。

XXXさんのお招きでXXXさんのヨットで開かれたパーティに行ったら、XXXさんとXXXさんが来ていました。みたいな文がある。

こ、これはもしかして「社交界マガジン」???

ダブルバレルと呼ばれる名字がつながっている人もいっぱいいる。
数世代前の「名家」と「名家」の婚姻を示す、リーズ=ジョーンズとかスミス=ベイリーみたいな人たちだ。
すごいのになると3つもつながっている。
ウエスト=ブラックネル=シェリングスとか。たぶん、下の名前に加えて洗礼名に堅信礼名もあるだろうから、
ジェイムス トーマス デヴィッド・ウエスト=ブラックネル=シェリングスとかが正式な名前だろう。
ジョン・スミスさんなら1行ですむところ、この人なんか名前の紹介だけで、3行くらいの場所を取る。

日本なら、さしずめ「徳川=水戸=綾小路」だ。下の名前が「ハチ」なんて軽いと、ちょっと座りが悪いなあ。「柿右衛門助清」とか「秀麻呂五郎太」くらいの重みは欲しい。
縦書き文化のつらいところである。

一時期続いた銀行の合併を思いだす。(古い話で申し訳ない)
「太陽神戸X井」とかね。私はひそかに「北海道X殖」も、ここと合併して欲しいと思っていた。
「太陽神戸X井北海道X殖銀行、飯田橋四谷新宿合同支店」なんて、もう日本語を離れて、すっかり漢詩の世界。4行に分けて墨絵の掛け軸に書いてあっても違和感がなさそうである。

もっとも、こんな銀行名を書かされる経理の人は頭にくるだろうな。
50回も書けば、うんざりして辞表をたたきつけることになるかもしれない。
私の望みはかなわず、あっという間にひらがな3文字の銀行が続々と誕生したが。

このトリプルバレルの人たちも名前を書くたびに、かったるい思いをしているのだろうか? 
「お申し込み用紙のここと、ここと、ここにお名前をご記入ください」などと言われると、他の人の3倍も時間がかかる。名家に生まれるのも楽ではない。

投稿者 lib : 09:25 AM | コメント (2)

January 18, 2007

ロンドン塔でスケート

career2.gif 
会社の主催でアイススケートの会が開かれた。場所はロンドン塔の外堀 (水はない)に設えられた屋外スケートリンクである。団体用滑走券は1時間で10ポンドだが、そのうち参加費として5ポンドが個人の負担。一般料金はもっと高いかもしれない。

うちの会社はロンドン塔まで歩いて5分。5時半ごろから参加者は次々と着替えを始めた。
ジーンズにセーターとスポーツジャケットという姿であるが・・・。
女のほうはともかく、男の同僚のカジュアル姿のダサいこと、ダサいこと。
さっきまで 「シティのクールなビジネスマン集団」だったのに、今は 「ド田舎のむさ苦しい青年団」に成り下がっている。やだなあ、こいつらの服装センス。

私はイギリス男の 「ディナージャケット」と 「ビジネススーツ」は世界トップクラス(おしゃれ着はイタリア男やフランス男に負けるだろうからね)と個人的には評価しているのだが、彼らの 「カジュアルウエア」は世界最低グループに入れている。

アイスリンクまで数人の同僚と歩くのに、
「どうしたの? 珍しく静かだね」と言われたのは、
(寝ぼけた服を着た男たちと一緒に歩いているのを見られたくない)という思いがあったせいである。なるべく彼らから離れて足早に歩く。

タワーヒルの駅から地下道に下り、ロンドン塔に出るとスケート場が現れた。
ロンドンの冬の夕暮れ、ナイター施設の照明にアイスリンクはキラキラと輝き、まるで湖のようである。なんてロマンティックなんでしょ!

・・・と思ったのは浅はかで、湖のように見えたのは、実際に 「湖」状態だったからだ。
氷の表面を覆った水に 「さざ波」が立っている。
あの水たまりの上をすべるのか? ここで全員の腰がひける。

アルミのフレームにガラス戸、天井はビニールシートで、風が吹くと 「震度5」という仮設テントに入ったのが6時。早速、同僚はその中にあるバーに群がり、ビールだ、ジントニックだと飲み始める。

こら、スポーツ活動の前に酒を飲むな!

スケート靴を借りに並んだ。イギリス人のスタッフが暇そうにブラブラしているのに、混雑している貸し靴コーナーでは、東ヨーロッパ系らしいアルバイトが走り回っている。
その昔、植民地の労働力をイギリス人は搾取してきた。このごろは東ヨーロッパからの出稼ぎを働かせて、自分たちは遊んでいる。
大英帝国の頃の悪い癖がまだ抜けていないようだな。

さて、いよいよスケートだ。
実はこの日を楽しみにしていた。小学生のとき、スケートは得意だったのだ。
恐る恐る、氷の上に上がる。おおー、こわい。
私が小学校のころなんて、昔も昔、まだ男の人はチョンマゲを結ってたくらい昔の話だから無理もない。

運動神経は悪いくせに、イギリス人には妙に強固なチャレンジ精神がある。 
「スケート、生まれて初めて・・・」 と言いながらも、怖がらずに一生懸命やっている。
「子供の頃、スイスイ滑ってたんだよねー」と威張っていた私の立場はどうなるの?

手すりにしがみつきながら、一周する。まるで、シベリアの永久凍土の氷原を100kmも踏破したみたいで、足の筋肉がカチカチになった。
「ちょっと休憩・・・」とリンクから出る。

シティのビジネス街の高いビルを背景に、片側はテムズ河、一方は首をはねられた受刑者の怨念がドロドロとこもるロンドン塔・・・というユニークなロケーションである。
心細げな女の子を支えながら滑る男の子がいて、銀盤の初々しい恋人たちという雰囲気。
スーツ姿のままで滑っているお兄さんもいた。ころばない自信があるらしい。

いつまでも見学していてもしかたがない。もう少し滑るか、と思った瞬間、女の人が転倒して、後頭部を打つ。どこから現れたのか、赤いユニフォームの係員が彼女を拉致して・・・いや、助け起こしてリンクから連れ去った。
思わずテント内に逃げ戻り、その後の飲み会までこっそりと待機することにする。
なんだか悔しいなあ、思うように滑れなくて。

スケートが終わり、パブのドリンクではいつものきりっとしたビジネススーツ姿ではなく、田舎臭いジャージ姿の男たちに囲まれる。
「きょうはおとなしいじゃん」と言われたが、
(老けた貧乏学生みたいな格好の男たちと一緒に飲んでいるのを見られたら、私の評判にかかわる)といつもより口数も少なく、同僚から距離を置くのに必死な私だった。

投稿者 lib : 09:20 AM | コメント (0)

January 11, 2007

今年の運勢と抱負

career2.gif 
2007年である。「今年の抱負」のつもりで、つい、「今年のホース」と打ち間違えてしまい、年初から、これからの1年に暗雲を見たような気分だ。

海外に住んでいて何が冴えないって、お正月の盛り上がりに欠けることである。
「紅白歌合戦」に続いて 「永平寺の除夜の鐘」と 「年越し蕎麦」を食べながら、正統派のおおみそかを過ごしている親に電話をするのが、時差の関係でイギリス時間の午後3時というのも雰囲気が出ない。

イギリスでは真夜中に 「ビッグベン」の大時計がテレビ中継され、カウントダウンが終わると 「ロンドンアイ」で花火が上がり、車がクラクションを鳴らす。
・・・で、「新年のお祝い」はおしまい。
クリスマスでエネルギーとお金を使い果たしてしまい、厳粛なる年の初めをダレた態度で臨むイギリス人も気に入らない。

私は真空パックのお餅で 「お雑煮」はなんとか確保したものの、「初詣で」も「おせち」も「お年玉」もない新年だ。つまらないなあ、特にお年玉のないのが悲しい。

さて、今年の運勢はどのようなものか。

あちこちのウェブや雑誌でいろいろと調べてみる。
生年月日の数字をすべて足し、偶数年、奇数年に分ける。で、それを7で割って、円周率(嘘)を掛ける・・・みたいなのをやってみた。
占いのツールは普通、水晶玉やタロットカードだが、カシオの電卓というのも渋い。

私の運命数 「あなたは人に気を遣い、自分が犠牲となるのを厭わない人です。恥ずかしがりやなので、異性と口をきくことさえできません。もっと、自分に自信を持ちましょう。そうすれば運が開けます」というのが出て、一緒にいた友人は床に倒れて笑い死にしそうになった。
うーん、私の性格とは若干の相違点が見られるようだ。

やはり西洋占星術が一番好きなので、これを中心にチェックする。
しかし、占い師によってずいぶんと違うことを言っているな。すべてがうまく行くというラッキーなのから、何をやっても空回りで結果は来年まで出ないとか。

別の銀河系の星を見てるんじゃないのか?

今年は恋愛関係がダメらしいが、まったく気にしていない。なんせ数年前に 「恋愛、結婚運が悪い30年周期の中にいます」という運命を見たばかりである。
・・・30年周期って。

ま、これは考えようではめでたいことである。
素敵な人と知り合ったと思っていたら、実はその人の性別が女だったり、すごいハンサムから話しかけられてうっとりしていると、その男から 「マルチ商法の肌がけ布団」を勧められるとかしても、すでに運の悪さは予言されていることなので気にならない。

こんな時期には気に入った人がいればバシバシ声をかけ、次々とデートに出かけて楽しめばいい。どうせ、恋愛はうまく行かない星まわりなのだから、だまされたり、ふられたりしても本人が悪いのではなく 「運命」のせいである。好き勝手しても自分に責任はないという気楽な年と思えばいい。

逆に、「今年こそ、運命の男性に巡り会います。あなたの魅力にひれふした彼は今年中にプロポーズをするでしょう」なんて書いてあったとする。
で、会う男、会う男がとんでもないスカだったり、誰からも相手にされなかったりすると、12月31日の夜8時には、
(結局、おめでたい話は全然なかった。なぜ? なぜ? なぜなの?)とがっくりしてしまうだろう。
(でも、後4時間ほど残っているわ。外に出て、白馬に乗った王子様を待ってみようかしら?)とせつなく考えるかもしれない。

ところで、そのほかの目標はどうしよう?

同僚に、「今年の抱負はねえ・・・」と言いかけると、「ダイエットして、痩せること?」と即答され、(この女、読心術ができるのか・・・?)と一瞬思ったのだが、よく考えると、毎年毎年、同じことを私は言っているのだった。

ここ数年間、体重は一定。2年前からランチタイムにほぼ毎日スポーツジムに通っているのだが、体重は減らない。もしかして、どこかの魔女に 「痩せない呪い」をかけられているのではないだろうな。

それとも、やはり30年周期でダイエット運が悪いのだろうか? 気になるところだ。

投稿者 lib : 09:37 AM | コメント (0)

December 21, 2006

酒とバラの日々

career2.gif 
今年はパーティが多い年だった。ま、イギリスの景気がいいということだな。

私はパーティと聞けば、ウルトラマンのように現場に駆けつけるのだが、これまたウルトラマンのように長居はできないタチである。さすがに3分間とは言わないけど、立食パーティなら1時間、着席式のでも2-3時間で飽きる。

たまのお呼ばれは楽しい。
が、クリスマスのこの時期、1週間に何度もご招待があると、少し苦痛になってくる。
肩のこらない気軽な飲み会ならいいけれど、仕事関係のものなら、やはり出席はマストだし、気も使う。作り笑いのしすぎで顔の筋肉が凝り固まちゃうくらいである。
コートの下からロングドレスの裾を出し、微動ともしないアルカイック・スマイルのまま、終電に乗りこむ不気味な女となるのだ。

パーティが次々と開かれていると、招待客の口から、パーティの「格」、「客層」、「会場の設定」、「ワインの質」、「料理の量と内容」、「サービス」といったものに対する 「比較と評価」が出る。
「ずいぶん安っぽい料理だったわね。どこのケータリング・サービスを使ったのかしら」などと、金を使って人を招待した上に、悪口を言われたりするので恐ろしいことである。

また、これだけパーティの数が増えると、全部には出席できない人も出てくる。

パークレーンにある超有名ジャパニーズ・レストランの 「xOBU」に招待された。映画 「ノッテイングヒルの恋人」のシーンにも出てきた店だ。
「xOBUでパーティ? 行く、行く、絶対に行く!」と喜んで出かけたのだが、会場のプライベートルームはスカスカだった。100人くらい入れば 「盛況」に見えたのだろうが、集まったのはせいぜい30人くらいで、おまけにほとんどが招待側の人だったという情けない状況。
プライベートルームの外のテーブルはびっしり埋まっていて、まるで 「社員食堂」のようなノリ。これだけ人気のある店の名をもっても、人が集まらないとは・・・。

友人もあるパーティに出かけたが、やはり人数が少なくて出席者はおじいさんばかり。
これはかなり格式の高い会の主催だが、最近は活動があまりアクティブではない。
で、現役のビジネスマンは他のパーティへ出るのに忙しすぎて、顔を出せなかったのではないだろうかと言っていた。

先週はうちの会社のパーティがあった。
いつもは200人くらいなのだが、今年は系列の会社も加わって300人以上。シティのにあるG・・ホールで開かれた。高い天井にキンキラのシャンデリアがいくつも下がり、雰囲気のいい会場だ。が、ディナーの前のドリンクが配られたバーエリアは満員電車状態で、
「次は新宿―、新宿―」とアナウンスが聞こえてきそうだった。
いつもなら、ここでみんなに挨拶をして回るところだが、身動きも出来ない。
こんなとき、背の高いイギリス人の間をくぐって無理に歩き回ったりすると、ワイングラスにぶつかって、ドレスが濡れたりする (何度も目撃したことがある)のでじっとしていることにした。

数年ごとにパーティ会場が変更されるのだが、「そろそろ場所を変えましょうか?」というときもあれば、 「誰かが飾ってあった彫像を倒して壊したせいで、『来年からは他の会場をお探しください』とブラックリストに載せられたらしい・・・」という噂も囁かれたりする。(いえ、いえ、うちの会社ではありませんよ・・・)

友人の会社は特殊な業務で 「交渉のプロ集団」ともいえるメンバーだ。ちょっと料理の出方が遅かったりすると、強硬な値引き交渉に突入するという、レストランにとっては恐怖の客のようで、やはり来年から別の店をさがすはめになったりするらしい。

酒の入ったイギリス人はけっこうタチが悪いからな・・・。

私は 「10時半の女」である。
酒もほどほどにして、ダンスの前にこっそりと消える。「帰るわ」と言うと引き止められるので、「レディスに行く」と言って、そのままクロークでコートを受け取り、会場を去る。
12月にブラックキャブなんか捕まらないし、流しのミニキャブは犯罪の温床、レストランと提携して店の前で待っているキャブはぼったくり、なので電車で帰る。

帰りを心配しなくてすむように、近くのホテルに部屋を取る同僚も多いし、帰りが午前2-3時になるのでも良ければ、会社がタクシーを用意してくれる。 しかし、イギリスのオフィスパーティにおける 「男女間の乱れよう」は目も当てられない様である。
余計なことに巻き込まれないように、さっさと帰宅するのが正解だ。
離婚原因の多数が、このあたりに起因すると思われる。オフィスパーティを禁止すれば、イギリスの離婚率が下がることは保障する。
パーティの翌日、思わせぶりな視線を交わすカップルとか、いかにも後悔している、って顔の連中が多いもんな・・・。

皆様、良いお年を。 お正月はホリディを取るので、来年の2週目に戻ります。

投稿者 lib : 08:30 AM | コメント (0)

December 14, 2006

怠け者のクリスマス

career2.gif 
またまた国民的行事のクリスマスがやってきた。

「まだ、何も準備できてなくて・・・毎年、金もかかるし、結構ストレス」 と言う人も少なからずいる。毎年だから面倒なので、うるう年とか、オリンピックみたいに4年に一度くらいの割合でクリスマスが来ればいいのかもしれない。

対策としては、踏み絵をして 「転び バテレン」となり、「もうキリスト教徒じゃないもんね。クリスマスも関係なし」としがらみを避ける方法もあるのだが、イギリスではあまり知られていない。

クリスマスは宗教行事というよりは冠婚葬祭だ。
それも、七五三の年齢の子を持った親みたいなものか。
(子供に何を着せよう? 洋服か、着物か? 貸衣装か、購入するか? 自分たちが買うか、祖父母に買わせるか? どちらの親に頼むか?) と悩みはつきないが、
それ以外の人 (あるいは本気で取り組まない人)は羽織袴の小さな男の子を見て、
「あらー、かわいい」などと言っていれば、それですむ。 できれば、こちら側の立場でいたい。

「クリスマスまでのカウントダウン、1週間前までにすませること、前日しておくこと、当日の料理のための時刻表」 なんてのも、毎年見かける記事だ。
段取りの悪いイギリス人のことだから、スケジュール通りに物事を進めるのはハードワークらしい。

年末になれば、日本でもお正月とおせち料理の準備に追われる。
私は子供の頃、アトピーで皮膚炎が出ていた。
そのため、おせちに使われる栗だの、里芋だの、れんこんといったアクの強いものに触れないように言われて育った。(食べるのは平気だよ) お正月の生花なんかもダメである。

「・・・アトピーのため、家族が忙しそうにお正月の準備をする中、私は手伝うことを許されず、さびしく台所の片隅でみんなの様子を見守るだけでした・・・」というのは大嘘。

アトピー体質と怠惰な性格が美しく融合していた私は、
「アレルギーが出るから、手伝わなくていいよ」と言われて、
ラッキー、と外に遊びに出ていたのだ。
家に帰るとすでに準備は完了。おせちはきれいにお重に詰められて、年越し蕎麦を食べるだけの状態であった。
あの頃はよかったなあ・・・。(しみじみ)

と、いうわけで、お正月やおせちの準備すらしなかった私が、外国まで来て、異教徒のお祭り行事にあれこれ頭を悩ませるわけがない。
発光体つきの人工ツリーを出して埃を払う (15分)、クリスマスカードは名前をサインするだけ (10分)、私に何かくれそうな人だけにプレゼントを贈って、おしまいだ。

プレゼントは男なら酒、女ならチョコレート、子供なら現金と決めている。
相手の好みを上手につかみ、気がきいて喜ばれるものを贈る人もいるが、私はそういったことが苦手なので、余計なことは考えないことにしている。
ときどき、(・・・・・・・・いやがらせか? 喧嘩、売ってるのか?)というものをくれる人もいるので、「無難で無個性が一番」と思っている。

クリスマス・ディナーも時間のかかる大きなターキーではなく、小さめのチキンをローストして、温野菜をつけ、出来合いのクリスマス・プディング (私はこれが嫌い)を買うだけ。読書しながらの2時間でできる。
どうせ、この時期はパーティが多い。で、出されるものはクリスマス・メニュー。

パーティ会場には巨大で豪華なツリーが鎮座しているし、クリスマス・クラッカーもテーブルに用意されている。プロのシェフによるターキー、スタッフィング (私はこれも嫌い)、何種類かのソース、手の込んだデザート。
椅子に座ったまま、クリスマスが満喫できる。
食後にお皿も洗わなくていいし。(満腹でほろ酔いのとき、本当にありがたい)

と、楽勝なのだが、ひとつだけ問題がある。

体重計に乗ったとき、顔が 「ムンクの叫び」になることである。これは私だけではない。スポーツジムでは、それぞれの女が 「私流 ムンクの叫び」を表現している。

サンタはあんなに太っているのに、どうしていつもニコニコとしているのか、疑問である。 
そろそろ 「心臓疾患」とか 「糖尿病」が気になるお年頃のはずだが。

投稿者 lib : 08:48 AM | コメント (2)

December 07, 2006

ペストコントロール

career2.gif 
ねずみで思い出した。先日、家にペストコントロールがやってきた。ねずみ取りの専門家である。

数週間前に隣のおばあちゃんが青い顔をして訪ねてきて、
「ねずみが出たのよ。お宅にはねずみはいない? 私はもう、怖くて、怖くて」とパニックを起こしていた。
「いや、いないみたいだけど・・・」
「ペストコントロールを頼んだら、隣近所にも被害がないか聞け、って言われたから」ということである。

「ペスト」コントロールってすごい名称だよな。たかが、ねずみでしょ?
「うちにねずみがいます」なんて言おうものなら、ドアに赤いペンキで X印をつけられて、白装束の人が来て家中に消毒剤を噴霧され、近所から村八分にされそうなインパクトである。

この数年で何度かねずみが出たことがある。
最初は日本から 「ねずみホイホイ」みたいなものを送ってもらった。
強力な粘着剤が付いている組み立て式の紙の箱で、真ん中に餌を置き、そこにやってくると、あーら不思議、足が箱について離れない、というシロモノだ。
ねずみがかかるとそのままポイという仕組みで、簡単ではあったが、
(私って悪い人。人間って・・・)という罪悪感を伴うものだ。

あっという間にこの仕掛けはねずみに知れ渡り、数年後、再びの出現には効力を失っていた。
で、今度は友人から貰った 「猫いらず」 (クラシックな響きがするな)
毒が効くのに数日かかるので、「この餌は危険」というメッセージがいきわたる前に一族が食べてしまうということらしい。
目も覚めるような青い色で、カクテルの 「ブルーハワイ」を思わせる。

この 「猫いらず」は効いた。が、数日後、こともあろうにクリーナーのおばちゃんの前に、ヨロヨロした瀕死のねずみが現れて、
「#&%*!!!!!」とラトビア語の叫び声を上げさせたのだった。
(この人は私の家に2年くらい通ってくれている。ずっと 「リトアニア」の出身だと思い込んでいたのに、実は 「ラトビア」の人だった。ここにおわびして、訂正する。 おばちゃん、ごめん)
たいせつなクリーナーにもしものことがあっては大変、と私は箒を持ってねずみに立ち向かった。

「窮鼠、猫を噛む」との例え通り、ねずみは箒にガブリと噛みつく。

(へー、ことわざ、本当じゃん)と思ったが、同情せずに、そのまま庭に掃きだしておいた。

尊敬のまなざしでクリーナーのおばちゃんに見つめられた。
「私は危機に強い日本人ですから、ねずみくらい難なく処理できます」と言ったが、どのくらい英語を理解していたかは知らない。

と、今回、隣の家から逃げてきたのか、ねずみが出た。
姿は見ていないが、床下からカリカリと音がする。ちょうど、隣にペストコントロールの人が来ていたので、ついでに見てもらう。ねずみに齧られて、漏電で火事はいやだ。
「いますね」とペストコントロール。
「いると思います。だって、匂いますもん」と思わず、動物的な臭覚を自慢した私だった。

ガス台や戸棚の後ろ、床下、下水溝のギャップ等の数箇所に針金の付いた石鹸のようなものを仕掛けていく。そして、この色がまた、
「ブルーハワイ」なのだった。
これって、ねずみの食欲を増進する色なのだろうか? 
「2週間後にまた来ます」ということである。
無料だったので驚く。たぶん、地方自治体の「衛生課」が払うのだろうね。(どっちにしろ私の税金だ)

そういえば、中学のとき、教室にねずみが出て、すごい騒ぎになったことがあった。
女子はキャーキャー叫んで、逃げ惑う。
(ちっ、小娘どもがねずみごときに・・・)と悠然と席に座っていると、
「お姉さま、助けて!」と言わんばかりにねずみが私の足を駆け上がった。
さすがの私も泡を食ってねずみを払い落とす。

結局、ねずみは捕らえられ、校庭の端で解放されたのだった。

しかし、教室に出たということはそこに巣があったのだろう。校庭のむこうなんて、ねずみにしてみれば10000マイルも先の知らない場所に捨てられたのと同じ。

(親兄弟、友人、フィアンセ、と別れ別れになったのではないだろうか?)と心を痛めたものである。

・・・と言いながらも、2週間後の結果を待っている私だ。
動物愛護で有名なイギリス人ながら、
「隣では5匹もバッチリ処理したぜ」と威張っていたペストコントロールのおじさんがチェックに来るからである。 合掌

投稿者 lib : 09:26 AM | コメント (0)

November 30, 2006

ホストファミリー

career2.gif 
修学旅行でイギリスに来たドイツ人の中学生を一週間、ホームステイさせた。

「・・・というわけで、 『もし』受け入れしてくれるホストファミリーの数が足らなかったら、お願いする 『かも』しれないけど、いいかしら?」と友人に聞かれて、
つい、「いいわよ」と言ってしまったのだ。

ちっ、本当に回ってきたか・・・。

まず、クリーナーのおばちゃんに因果を含めて、家中を丁寧に掃除してもらう。枕、デューベ (かけ布団)、シーツ等を新しく買い求め、水を通しておく。フロントガーデンに植木バサミを持ち出して、チョキチョキとやみくもに庭木を剪定する。 (バックガーデンにまでは手が回らないので見せないことにしよう)

準備で疲れきったところにゲストが到着した。

まず、食事の趣向を聞かなくては
「何が好き?」
「ポテトとピザ」
安上がりだな、子供だし。
食物アレルギーはないと言う。
「お肉は何が好き?」
「?」
非英語圏の人の扱いなら慣れている。耳でわからなくても単語を見ればわかるはず。
ポーク、ビーフ、チキン、ラム、フィッシュと紙に書いていく。いざとなったら、豚、牛、鶏、羊、魚の絵を描くつもりだった。
チキンが好き、ビーフはまあまあで、残りは嫌いだそうだ。そうか、メニューが限られるな。
「ランチに持っていくサンドイッチは何がいい? ハム? チーズ?」
驚いたことに「ハム」が通じなかった。
冷蔵庫に連れて行き、ハムを見せる。あ、そう、嫌いなの。

「中華料理は好き?」
首をふるが驚かない。イギリスなら小学生でもチャイニーズテイクアウェイ(中華料理の持ち帰り、出前)に慣れているが、7人のオーペアから学んだところによると、ヨーロッパの田舎から来た子はチャイニーズを食べた経験がない。私の家にあるお醤油の1リットルのボトルを見て、
(この 「黒い液体」は何だろう? こんなものを食べ物にかけるのか・・・?)と不気味そうに眺めていたのを思い出す。

嫌いなものは仕方がない。が、またこれでメニューがますます限られるというものだ。

チキンソテー、「フライドポテト」、温野菜
ピザと野菜スティック、「ポテトウェッジ」
フライドチキン、「ベイクドポテト」、 サラダ
チキン・マッシュルームパイ、キドニーパイ(嫌いだったようだ)、「マッシュドポテト」
スパゲティ・ボロネーズとサラダ
チキンバーガーと「フライドポテト」
という1週間のメニュー。
(米の飯が食べたいー)と思ったのは当然だ。ランチでお寿司や日本のカレーを会社の近くで食べたものの、やはり、きちんと「マイお茶碗」と「マイお箸」で「白いご飯」と 「お醤油のかかったおかず」をオウチで食べたい。
―――― ついでに言うと、私はポテトが嫌いである。
(何でこんな思いをしてまで・・・)とお皿を洗う手に涙がこぼれる日々であった。(嘘)

平日は先生に引率されてのロンドン観光。
「スケジュールに入っていない場所で、どこかに行きたい?」と聞くと、
「マダムタッソーのろう人形館!」と答える。

ひー、またか。日本から親戚、友人が来るたびにご指名のここ、すでに10回近く行っているが・・・・はい、はい、わかりました。
ちなみに日本では外国からのゲストのために金閣寺、清水寺、日光と東京のはとバスの「吉原おいらんツアー」に何度も行っている。

のんびりと過ごすはずの土曜日。朝早くから「ろう人形館」のあるベーカーストリートに出かける。
ラッキー、10人くらいしか並んでないじゃない。と、思ったのは早計で、建物の中にグルグルと曲がりくねった行列ができていた。窓口にたどり着くまでに1時間半。
「大人が24ポンド99で、子供は22ポンド50です。16歳以下は大人の同伴を必要とします。ところで、5ポンドのプログラムはいかがですか?」
「ロンドンアイ」にも行きたかったようだが、これも5回以上乗ったことがある。さすがにこれは勘弁してもらって、カムデンロックのストリートマーケットに連れて行った。

私自身は 「ホームステイ」をした経験がないので、ホストファミリーがゲストにどのくらい気を使うのか、どれだけお金をかけるべきなのかの見当がつかなったが・・・疲れたぞ。

が、責任は果たした、と信じている。

投稿者 lib : 07:28 AM | コメント (2)

November 23, 2006

007

career2.gif
「007 カジノ・ロワイアル」のプレミアに行ってきた。友人のお招きである。

バービカンセンターは複合文化施設で、住宅のほかにミュージアム、コンサートホール、図書館、映画館、アートギャラリーと盛り沢山に揃っている。
催し物は人の流れに加われば自動的に会場に到着するものだが、ここでは前にいる人がどの施設に向かっているのかわからないので、頼れるのは自分だけ。
内田光子のピアノコンサートに行こうとして、日本人グループの後ろについていくと、アラーキーの写真展に行く人たちだったりするので、油断できない。

とりあえず、駅から「バービカンセンターはこっち」の黄色い線に沿って歩くと、たどり着くことになっている。で、着いたところは・・・図書館。あれっ?
「ははは、迷ってる、迷ってる」と友人がやって来た。
人を笑いモノにしたくせに、友人も迷ってしまい、ふたりでしばらくウロウロする。

ロンドン広しといえど、これほど「大人の迷子」が多い場所はここだけだろう。

やっと会場にたどり着く。
招待客のみのプレミア。モタモタしていたせいで、渡されたシャンペンを半分も飲まないうちに映画が始まった。

新007のダニエル・クレイグ。骨太のスパイを演じていて、予想外によかった。
彼がジェームス・ボンドに配役されたとき、
(ちょっと、役不足じゃない?)と思ったものだが。

映画が終わるとビュフェパーティになった。
「おもしろかった」というのが大勢の意見。
ジェイムス・ボンドはやっぱり「イギリス男の夢」だ。
強靭な肉体、クールな戦略、やたらと女にもてる理想の男。
世界中を飛び回り、銃を撃ちまくったり、仕掛けのついたスポーツカーを運転したり、カジノで大金を賭けたり、すごい美人とシャンペンを飲み、キャビアを食べたりする。

12Aで12歳以下は保護者と一緒に鑑賞するという映倫指定だが、けっこうバイオレント。
007といえば、クリスマス時期にTV放映される映画のひとつ。でも、この映画はクリスマス休暇に祖父母の家に遊びに行った孫が、おじいちゃんのひざの上でお菓子を食べながら見るにはふさわしくない気もするな。
それとも、ゲーム類でこのくらいの暴力沙汰には慣れていて、いまどきの子供には刺激なしか?

ディナージャケットはまったく似合いそうにないイギリス人のおじさんも、ボンドガールには遠く及ばないプロポーションの奥さんと一緒に 「シャンペンとキャビア」ではなくて 「ビールとクリスプ」なんかを口に運びながら、TV放映を見るんだろうな。

まあ、グラマラスな美人でも平気で男を裏切るボンドガールと命の心配をしながらキャビアを食べるより、普通の女とローストターキーを食べるほうがのんびりとクリスマスを過ごせると思う。 

キャビアで思い出した。
友人がハロッズのフードホール(デパ地下のハロッズ版だ)で、男の人がキャビアを買うのに居合わせた。100-200gで200ポンドかなんかを払ったらしい。
びっくりして、思わずカウンターの人にすごいね、と話しかけると、
「お得意さんですよ。毎週のようにお見えになって、キャビアをお求めになります」とのことだった。

1週間で200ポンドなら、キャビア代だけで800ポンド (17-18万円)。
いったい、この人の一ヶ月の食費はいくらなんでしょう? 
どうやって召し上がっているのかも気になる。
朝食時のトーストにベタベタと塗りたくっているのか? 毎夜、美女と共にシャンペンとキャビアを楽しんでいるのか? 

007はともかくとして、実際にはキャビアが好きなイギリス人は少ない。むしろ「生臭い」と言って嫌う人のほうが多い。 このハロッズの上得意は「生臭もの」が好きなイギリス人に違いない。

日本に来れば、おいしくて「生臭いもの」がいっぱいありますよ。

クサヤ、イカの塩辛、ホヤとかね。

シャンペンには合うかどうかは知らないけど・・・。(誰か試してください)

投稿者 lib : 09:17 AM | コメント (0)

November 16, 2006

雑誌の世界

career2.gif 
小説を読むのが一番好きだが、雑誌もおもしろい。雑誌は読者層がはっきり分かれているので、内容がしっかり偏っているのが楽しい。

「プレジXXト」という、おじさん雑誌はひと昔前、やたらと企業経営者を戦国武将にたとえるのが流行っていて、「XX電機の会長は武田信玄タイプ」だの、「XX不動産の社長は意外にも徳川家康型の戦略に強い」とか書いてあった。
社長が織田信長タイプだと、怖いなあ。
「売り上げが上がらない? ならば、切り捨てる」と、さらっと日本刀で袈裟がけに切られちゃったりして、パワーハラストメントの極致を見せてくれそうである。

マージャン雑誌とかヤーさん向けの週刊誌(杯の受け方とか仁義の切り方が載っているという噂だ)もあるらしいが、さすがにそこまで専門化が進むとついていけない。(でも、ちょっと興味がある)

帰国すると本のほかに雑誌を読みまくるが、
キャリアを模索し、サービス残業最前線で過労死寸前、生真面目で働き者のバイブル、「日XキャXXウーマン」と
ペットボトルとつっぱり棒の利用法(100種類)や500円でできる「豪華な」夕食5人分、ならまかせてよ、と専業主婦の味方、「すてXX奥さん」と
お嬢様学校を出てスッチーになり、玉の輿をゲットした有閑マダムの「ジュエリーボックス・ワードローブ・リビングルーム拝見」特集がある「VxxY」などを入手すれば、
日本女性のほぼ70%のトレンドがわかる。

海外にいるがゆえの「浦島太郎化」を防ぐためにはなかなか役に立つ。

ま、ランチタイムに同僚と酒を飲み、風呂の残り湯の再利用もせず、ケリーバッグも持っていない私としては、ハナからカテゴリー外ではあるが。

イギリスでは電車の中で読み捨てにする1ポンド前後の女性誌を駅で買うことが多い。

若い女性向け―― マドンナやジュリア・ロバーツみたいなショービズの話題。
イギリス人しか知らない「Cリスト」のセレブ、風船胸女ジョーダンやビッグ・ブラダースの拒食症ヒステリー女ニッキーのゴシップ。
最近よく見るのが、ハリウッド・セレブやスーパーモデルの着ているデザイナーブランドのコピーをする「なんちゃってモノ(死語か?)」特集。

「パリス・ヒルトンのベルサーチのドレスとシャネルのバッグ。ほら、ネクストの70ポンドのドレスとトップ・ショップの35ポンドのバッグでコピーできます! ね、同じでしょ? 違いがわかります?」
・・・って、わかるよ、違い。悪いけど。
チープシックの賢い女を目指せと言っているのか、セレブを気取る見栄っぱりになるように薦めているのか?

おばさん向け―― 子供の難病、非行に関する読者の投稿はお涙頂戴物語が基本だ。
読者の共感を呼ぶ、結婚生活のトラブルもお約束。
「妻より『やせた』愛人に走った夫」 写真を見ると、妻が百貫デブ(死語)で愛人が九十貫デブ(新語)だった。 この男、妻のいったい何が不満だったのか? 愛人のどこが良かったのか?

でも見出しのエグさだと日本の嫁姑モノの方が勝っていると思う。
「恐怖、親指姑」とか「鬼嫁の溶岩流ごはん」とか見た記憶がある。
・・・SF? 四次元モノ? 妖怪七変化? 

おばさんに人気のダイエット特集と若く見えるメイク法。
「ヘアカットとリップの色を変えるだけで10歳も若返る!」みたいな記事。
カレンさん(35歳)とかの写真が載っているが、
(えーっ! 35歳? 53歳の誤植じゃないの?)と思わせるくらいに、ここに出てくる人は痛々しい。で、メイクを終え、新しい髪形でもやっと40歳くらいの外見にたどりつく。読者参加のコーナーなのだが、もう少しレベルの高いのはいないのか・・・?

老婦人向け―― 巻末の広告に「多機能 車椅子」とか「入浴用 補助椅子」とか「電動式 椅子型 階段昇降機」が載っているのが特徴だ。
この年代では「椅子」がキーワードと思われる。

2ページに渡る記号と数字の羅列があって、まるで暗号特集。そこだけ「月刊 プログラマーの友」というコンピュータープログラマー向けの専門誌かと思った。
よく見てみると編み物の段別の色分けと編み方。 うーん、編み物って複雑怪奇なのね。
これを老眼鏡で確認しながらの作業か・・・。

老後といえば、「ひなたぼっこをしながら、安楽椅子にウールのひざ掛け、その傍らには猫(足元に犬でもいい)。で、のんびりと編み物をする」のが理想だと思っていたが、即、編み物の部分のイメージを削除し、修正したのであった。

このように雑誌は将来設計の一環としても、たいへん役立つものである。

投稿者 lib : 09:13 AM | コメント (0)

November 09, 2006

ケンブリッジ大学の謎

career2.gif
友人の息子、M君がケンブリッジ大学へ進学した。

イギリスでは今でこそ大学へ進学するのは珍しくなくなったが、シティ勤めのお偉いさんでも50代以上の人は大卒でないことが多い。

口の悪い知り合いによると、
「シティの50代のジェントルマンなら、名家のボンボンが多い。で、オックスブリッジ(オックスフォード大とケンブリッジ大をあわせてこう呼ぶ)ならOKだが、それ以外の大学では行っても無駄、と親から進学を認められなかった。オックスブリッジに入れなかった男の子(女の子は花嫁修業『死語』か?)は親のコネのあるシティの会社で丁稚奉公をさせられたんだ」ということである。(ちなみにこの人もオックスフォード卒)

さて、友人はのんびりした性格で教育熱心には見えないが、M君はがんばり屋さんである。面接が中心だが、Aレベルという共通テストでもAの成績がたくさん必要だったらしい。もちろん、学校の推薦も重要だ。

彼は合格してから、イギリス特有の「ギャップイヤー」を使って、1年間、アルバイトをしたり、外国旅行をして、人生経験をつみ、1年遅れの今年の9月になって入学した。

ケンブリッジ大学といってもたくさんのカレッジの集まりだ。それぞれにカラーがあると思うが、彼のカレッジは2ヶ月授業があり、次の2ヶ月は帰省して家庭学習、1年のうち正味6ヶ月だけカレッジで授業を受ける、と変則的だ。大学では全員が寮生活。(部屋はシェアではなくて個人部屋)

この寮ではクリーナーが週に1度、部屋の掃除にやってくる。おまけにコンセルジュが24時間待機していて、郵便物を預かったり、調べ物をしたり、いろいろな用事をしてくれるそうだ。

学生の分際で何という高待遇!

先週、友人は数週間ぶりにケンブリッジを訪ねた。(仮装パーティのために「スクービードゥー」の犬の着ぐるみを持ってくるように頼まれたらしい)。M君は社交的な性格で早速たくさんの友だちを作り、親にクラスメートを紹介した。

「いやー、びっくりした。半数ぐらいの学生がすごい『変人』だった!」と友人。

新入生歓迎パーティが次々と開かれる中、どれにも参加せず、人づき合いもしないで部屋に閉じこもり勉学に励む留学生とか(まさに夏目漱石症候群)
紹介されても、ろくに口もきけず、他人と目を合わせることもできない対人恐怖症の男の子とか。いろいろいたらしい。

世界でもトップクラスの大学で秀才の集まりには違いないが、
「人格崩壊的なのがいっぱいいた」そうだ。

大学での自殺率も高く、特に論文を書く時期にはけっこう多いらしい。で、飛び降り防止のために上の階では窓があかないようになっているとか。

なんだか大変そうだ。

そういえば、私の知り合いのオックスブリッジ卒も極端なのがいるなあ。

ヘッジファンドマネージャーとか、企業案件の弁護士とかで大金を稼ぐ(うらやましい・・・)ピカピカのエリートがいる。かたや、家にこもってむずかしい本を読みまくり、書き物をしたり、研究したり。 ・・・で、卒業してから定職についたことがないタイプ。

後者のほうはちょっとたまらないなあ。まあ、学者なら世間知らずの変人で研究に没頭というのも許されるかもしれないが、オックスブリッジを出て、ひきこもりじゃねえ。
と言って、「働け!」とか「人生をなんと考えているんだ?」と責めても、頭脳明晰な彼らから理路整然と反論されそうで、タチが悪い。

このカレッジの「年間」の学費は1300ポンドで、寮費は1ヶ月300ポンドだそうだ。(ただし、EU外の留学生の学費は別枠でもっと高い) 現在、プライベートの寄宿舎学校の学費が「ひと月」で2000ポンド以上(40-45万円)だから、すごく安い。
どこの大学に進学しようかとお悩みの青少年に、ぜひ、お勧めする。(お勧めはしますが、合格の可能性についてのコメントは控えます)

M君は得意の語学を生かして、外交官志望らしい。3年間、大学で学んだ後は1年間、専攻した言語の国で暮らすことで卒業できる。で、その地への往復航空運賃と途中1回の帰国費用は大学持ち(つまり、税金から払うということね?)。

うーん、これがエリート教育というものか? 卒業したら、ひきこもりにならず社会に貢献してね、と納税者としてお願いしたい。

投稿者 lib : 09:15 AM | コメント (0)

October 26, 2006

クイズナイト

career2.gif
会社のクイズナイトに参加した。

うちの会社には「スポーツ・レジャー担当秘書」が数人いる(本当です)。宴会の幹事みたいな人たちだ。様々な行事の計画、参加者募集、進行を牛耳っている。

たとえば、
ウエストエンドのミュージカルを鑑賞
エセックスでドッグレース観戦
テムズのクルーズボートでダンスパーティ
バーベキューナイト
などである。

クイズナイトは超ダサイ催し物だが、「社員同士の親睦を図る」ために時々参加する。

今回は4人ずつでひとつのチームとなり、「チーム名」までつけての徹底ぶり。なんだか恥ずかしいなあ。

「チームメンバー」と会場のパブに向かおうとすると、別のパブに寄って「プリ・ドリンク」(10月12日のブログを参照のこと)をしようと言う。
5時半に会社を出て、徒歩10分のところにあるパブで6時開始の予定だ。何でわざわざ「プリ・ドリンク」をするんだ、この状況で??? やめてー。

なんとか諦めさせて会場までひきずっていった。すでに会場は混み始めている。
会社の近くのパブを貸しきり、120人が集まっている。参加費はひとり4ポンドで、「ドリンク券」が各4枚渡された。手描きのチケットはかすれたコピーでいい味を出している。

さて、何を飲もう。
大人数で自社の集まりだ。どうせハウスワインの安物しか出されないはず。そんなものをがぶ飲みしたら二日酔いが怖いので、ピムズにする。

安っぽいカクテルソーセージ、油ギトギトのチップス、油ギトギトのサモサ、油ギトギトのオニオンリング、油ギトギトのフライドチキンが各テーブルに運ばれてくる。
いつもなら「こんなものが食えるか!」とちゃぶ台をひっくり返してしまうところだが、今日は会社の親睦会、抑えて、抑えて・・・。

テーブルにメンバーが揃った。
「得意の分野は?」と聞きあう。
「えーと、クラシック音楽と文学」と私。
・・・クイズナイトでこれほど役に立たない分野もない。ここは「ソープオペラ」と「ポップミュージック」と「フットボール」の世界。
「イースト・エンダースのドラマの中で交通事故に遭って役をやめ、その後ポップスターになった女優の最初のヒット曲は何でしょう?」とか
「19XX年のワールドカップで優勝した国はどこでしょう?」
とかの答えを知っている人が偉いのだ。

見ればフランス人チームも参加している。が、外国人の彼らは英語もいまいちだし、質問の内容もピンとこないらしく、すぐにクイズに興味を失い、飲み食いに専念している。

スポーツ関連の問題が続き、私も飽きてきた。ここは男の同僚にまかせ、同じテーブルの女の子と共謀、「フラート・ゲーム」をしかけて、誰かをからかうことにする。
この日は系列会社の人も来ていて、馴染みのない顔も多い。で、少し離れたテーブルのシャイそうな男の人をターゲットにチラチラと視線を向け、にっこりと笑いかける。
しばらくすると、彼もこちらに気づき、うれしいような困ったような表情になった。

他の同僚に「また、やってる。やめなさい」とたしなめられても知らん顔。
彼が(僕に気があるのかな? どうしよう、声をかけようかな・・・)という落ち着きのない態度になったあたりで「ゲーム終了」。その後はシカトする。
(あれ? 勘違いだったかな?)と怪訝そうな顔をしていた。
悪気のないいたずらである(ちょっと悪気あるか・・・)。

「チケット分、全部、飲んじゃったの。チケット余ってたらくれない?」と各テーブルを回る女がいる。うちのテーブルにはもう余ってないよー。

煙草の煙が立ち込める中、油っぽいパブフードを食べて、安酒を飲みながらのクイズナイト。福利厚生の一環ながら、どう考えても健康に悪い一夜を過ごした。

暇つぶしにからかった男の人、この場を借りて、ごめんなさい。(日本語が読めないか・・・)

-----ホリディを取るので、来週はお休みします。

投稿者 lib : 09:26 AM | コメント (0)

October 18, 2006

僧院で黙想

career2.gif 
Retreat(リトリート)というのは 「宗教的修行や黙想のために閉じこもること」 で、キリスト教の僧院(?)に行き、半日ばかり「黙想」した。
参加費 (寄付、喜捨、お布施かな?)が10ポンド。

「日帰り 禅寺体験 イギリス版」といったところか。
私は日本人のくせに正座ができない。20秒で下半身が麻痺して、歩行不能になる。座禅もダメ。 「宗教的沈黙」はクールだが、禅寺で「体育座り」した瞑想じゃ、まるで運動会の練習中に居眠りしている人みたいでマヌケ。お坊さんもいやがること間違いなし。

友人は洗礼を受けている「正式な」キリスト教徒だ。私のような罪深い人間を誘ってくれたのは、やはり良きクリスチャンの模範を見せたかったらしい。彼女が神の教えに従うように、私も好奇心に従い嬉々としてお供した。

郊外の小さな町に向かう。
9時までに集合ということだったが、道を間違って20分の遅刻。
出だしから文字通り「迷える子羊」というダメな二人だ。

着いた所は宗教施設には見えない。お金持ちの豪邸だったのを、遺言で教会に寄付したという感じ。駐車場も庭も広々として天気が良かったこともあり、いい雰囲気である。

遅れたので慌てて中に入ると、20人足らずのイギリス人が牧師さんだか、神父さん(違いがよくわからない)の説教を聴いている。
「・・・というわけで、神は常にあなたの傍にいらっしゃいます。今日は心静かに自分の内なる声に耳を傾けなさい」と説教は終わった。

しまった、遅刻したせいで重要な部分を聞き逃したかもしれない。

スケジュールは、
9時半から1時まで黙想する。
1時からランチ。
1時半から3時まで黙想。
3時に集合して、もう一度説教を聴き、解散。
というものだった。

で、この間、ランチも含めて誰とも口をきいてはいけないことになっている。

「じゃ、話しかけないでね」と敬虔なるクリスチャンの友人はどこかに行ってしまい、異教徒の私は一人残されたのだった。

この20人のメンバー。
「シビアな問題を抱えている」わけありタイプ。
「いまは辛いことに直面しているが、僕は負けないぞ」という感じのビジネスマン。
「少し悩みがあるのでゆっくりと考えてみたい」人。
「のんびりと半日過ごそう」という老夫婦。
「物見遊山」の日本人がひとり。

(ジョン、どうして私を捨てたの? どうして? どうして?)とすすり泣く若い女。
(あのスペインの事業さえ、うまく行っていれば、倒産することはなかったのに・・・)と図書館のテーブルの上で手を組み、むずかしい顔をするビジネスマン。
(孫の顔を見せてくれない性悪の嫁、ジェーン。どうしてくれよう)という女性。
(おや、きれいな花だ。うちの庭にも欲しいね)と顔を見合わせる老夫婦。
———注: (・・・)内は想像です。
(うーん、いい天気だねえ。ベンチで昼寝しようかな。しかし、広い庭だね。不動産価値はどのくらいあるんだろう。70万ポンド、いや、もっとかな?)と私。

ランチはダイニングルームでロールパン、ハム、サラダ、ビスケットにコーヒーや紅茶という典型的なイギリス風のコールドミール。(精進料理ではない。当たり前だ)バターやジャムを取ってもらっても、ニッコリとするだけで「ありがとう」という声も発しない。

私ものんびりと過ごし、意外にも退屈することもなく3時になった。
「すべてを神様におまかせしなさい。ひとりで悩むことはないんですよ」というお説教で終わった。

いやー、癒されたぞ、リトリート。

半日ばかり、口をきかずに庭を歩いただけで、こんなに心が落ち着くものだとは思わなかった。10ポンドで格安だし、異教徒もOKという懐の深さがうれしいじゃないの。

わざわざ「私はクリスチャンではありません」とは言わなかったが・・・、いいよね?

投稿者 lib : 11:44 AM | コメント (0)

October 12, 2006

ビジネスパーティ

career2.gif 
取引先のビジネスパーティに招待された。

レストランをプライベート・ファンクションにしての立食パーティである。100人くらいの「飲み会」だ。友達とワインバーに出かけて、「プライベート・ファンクション (貸切)」の張り紙がしてあって中に入れないと頭に血がのぼるが、この日はゲストである。

イギリス人はパーティの前にプリ・ドリンクをする。パーティ会場へ行く前にパブやワインバーで同僚と飲んでから出かけるのだ。酒の席に呼ばれているのに、なぜ、その前に飲まなければいけないのか不思議。

とりあえず手順としては、

1. 仕事が終わる前にプリ・ドリンクの場所を確認する。
2. 仕事が一段落した男性が数名まずパブに繰り出す。
3. 仕事が一段落した、あるいは一段落してなくても女性がメイク道具を持って、トイレに入る。
4. パウダーを塗る。
5. マスカラを塗る。
6. リップスティックを塗る。(・・・以後省略)
7. 女性もパブに行き、合流する。
8. この時点でパーティーの開始時刻は過ぎている。
9. 早く着いた人が2杯目、遅かった人が1杯目を飲み終えると、誰かが「そろそろ」と言う。
10. パーティ会場へ向かう。

これでパーティに「ファショナブルに遅れた」時間に着く。

慣れない頃はプリ・ドリンクが終わる前にヒールのつま先は痛み、酔っ払った状態でパーティ会場に着いたものだが・・・。

会場に着いたら一回りして知り合いに声をかけ、
「来たよー」と印象づけておく。
日本の宴会のように強制参加ではないが、顔を出す回数が少ないと「非社交的」と陰口を叩かれるからだ。「参加は個人の自由」と言いながらも、態度に裏表があるよなー。

この日のパーティ、
「やあ、ヨーコ、久しぶり!」と大柄なおじさん。
「まあ、お久しぶり!」
(この人、誰だっけ?)と思いながら、両ほほに軽くキスをして挨拶する。これが自然にできるようになるには数年かかった。相手の右ほほから始めないと相手の唇にキスしそうになるので注意が必要だ。
「元気だった?」
「おかげさまで」
(シティにある取引先? 海外のクライアントだったかな? それともボスの知り合いか?)

1. 白人の中年男で、
2. スーツを着ていて、
3. 名前がジョンとか、デビッドとか、マークみたいに一般的な、

人なんか、記憶に残らない。

私の名前を知っているから、知り合いには違いないが、自分では会った覚えがない男にキスができるというのも我ながらすごいと思う。(自慢にならないか・・・)

ま、めちゃくちゃハンサムな人だったりすると、話は別であるが。

こうやって相手がどこの誰だかわからないまま、話しこんだ。その間に「他の誰か」が彼に話しかけ、その人の名前がわかった。が、今度は私を知っているらしい「他の誰か」の名前が思い出せない・・・。

私はボスから「女優」と呼ばれている。
「見知らぬ人に対して、旧知のようにふるまう演技ができる」からだ。
ここ数年間でこの技術は著しい向上を見せている。

そろそろクリスマス・パーティの招待状が舞い込む季節だ。

お気楽な飲み会でもEメールでの招待状はちょっと情緒に欠けるな。
やっぱりきっちり厚地のカードを郵送して欲しい。

投稿者 lib : 08:39 AM | コメント (0)

October 05, 2006

歯医者

career2.gif 
歯のホワイトニングをした。

イギリスでは以前にも2度ほど歯科医の世話になっている。
1度目はシティにあるプライベートクリニック。イケメンの歯医者がいると聞いていたが、残念ながら私の担当にはならなかった。ホストクラブみたいに「ご指名料」が必要だったのかもしれない。10年以上も前のことだ。
数週間の治療で400ポンドくらい払ったのに、しっくりとこない。

その後、帰国して日本の歯医者に見てもらう。
「なるほど、これがイギリスで治療した歯ですね」
「ふあ、はふれす (はい、そうです)・・・」と口を開けたまま答える私。
「やり直しておきましょう」ときっぱり。
ああ、400ポンドの詰め物が排水溝に消えていく・・・。

プライベートでもこのレベルか、と次はNHS(国民健康保険)の歯医者に行った。
当時35ポンド。
診療所の廊下の隅の椅子に座らされる。
で、そこの歯医者は自分の手をうんと伸ばして顔をそらし、X線の撮影をすませたのだった。
ねえ、これって危なくない? 

現在は帰国の度に日本でチェックを受けて虫歯はない。が、なんとなく歯の白さに自信がなく、ホワイトニングに興味を引かれた。ローカルペーパーで宣伝をしている近所の歯科医に出かけることにする。

場所がすぐわかったのは「スマイルクリニック、白い歯をあなたに」と垂れ幕がかかっていたからだ。「祝 甲子園出場!」なみの大きさである。ちょっと、引いた。

受付に行くとおばちゃんが二人、電話の応対にバタバタしている。
電話の半分は予約の受付で、もう半分が国民健康保険の歯医者を探している「歓迎されない患者」を断る電話である。
私の場合は美容歯科だからプライベートでの診察は当然だが、歯が痛い人に向かって、
「金がないなら、診療はできません」って、時代劇の悪徳医者みたいで、なんだか感じ悪いよなー。

「お待たせしました、私があなたの担当医です」と現れたのは人工的に揃った歯並びと、まぶしいばかりの白い歯をした女医さん。うわっ、不自然・・・。

説明を受けた後、599ポンドでホワイトニングをすることにする。

「イー」の形で口を開いたままにする器具を口に入れ、歯に特殊な液が塗られると、光線を1時間当てる。その間、ゴーグルのような眼鏡とヘッドホーンをつける。これはVDV鑑賞用のゴーグルで「フォルティ・タワーズ」という昔のTVコメディの30分物をふたつ見た。
ちょっとしみるが我慢できないほどではない。

厚みが10cmもあるゴーグルをかけ、器具のはめられた口を大びらきにし、青い光線を歯に当てられているのはハタから見たら、相当マヌケな図だ。
599ポンドも払って、こんなことをしている私の人生って・・・。

さて、1時間後、鏡を渡された。
歯はすっきりと明るくなったが・・・白くないじゃん?
歯科医も(あれ?)という表情である。
ホームキットのホワイトニングセットを貰い、朝晩、これから2週間も使用するように指示される。
「レッドワインを飲まないこと。コーヒーもできれば避けてね」
ひえー、そのふたつがないと、私は生きていけないんですけど。

とりあえず、その教えを「なるべく」守った。2週間はホワイトワインを飲み、コーヒーを飲むと、即、歯磨き。しかし、あまり白くならない。・・・どうして?
「何度もやると歯のエナメル質が傷むんだけど・・・」と言いながら、もう一度、光線を当てて、さらに1時間。それでも今ひとつの結果で、女医さんも納得していないようだった。

うーむ、もう一度、日本の歯科医でホワイトニングをするべきか。

アフリカの某、独裁者。世界からの援助金を個人的に利用して、プライベートジェットでロンドンまで歯の治療に来たことがあるという。

彼の行動は二重に間違っていると思う。

投稿者 lib : 09:25 AM | コメント (2)

September 30, 2006

サンドイッチ

career2.gif 
イギリスでサンドイッチといえば、日本のおにぎりであろう。(こじつけ)

昔のおにぎりの中身は梅干、昆布、かつおぶしが基本だったと思い出される。
が、コンビニで海苔がパリッとした感触を楽しむために別包装され、そのパッケージも改良が繰り返されたあたりから、おにぎり革命が始まったようだ。

明太子、ツナマヨ、炊き込みご飯とバリエーションが豊かになり、お米の種類や産地を表示し、水にこだわり、と20-30円の違いで多様なチョイスができる。

さて、イギリスのサンドイッチはこの10年で・・・ほとんど進化してない。
芸のないことである。

稲穂の国から来た私はポテトもパンも嫌いという、本来、この国の食文化に向かない人間だ。パンといっても、イギリスの「食パン」がいやなので、パニーニとか、シバータのホットサンドは食べている。

用事があって郊外へ出かけた。

お腹が空いていたが、駅前にハイストリートが存在せず、改札の前はバス乗り場と駐車場という、商業地開発には無縁、資本主義国にあるまじき都市計画である。
と、駅の売店でサンドイッチを売っているのが見えた。
りんごのほっぺ(死語)で、ドラッグに手を出したこともなければ、クラブ通いもしていない、日曜日は教会に行きます、という雰囲気の田舎娘が立っている。

私が近づくと田舎娘が緊張した。メトロポリタン化していない郊外に行くとこんな反応をときどき見る。
(あ、外人だ。おまけに東洋人。話しかけられたら、どうしよう? ああ、どんどん、こっちに近づいてくる・・・。いやー! やめてー! こないでー!)と顔に書いてある。
大丈夫ですよ、噛んだりしませんよ、と愛想のいい笑顔を浮かべる。
「ハロー」ほらね、英語だって話せますよ。
たかがサンドイッチを買うのにたいした手間と気の使いようである。

地元の「パン屋さん」で作りましたという感じのサンドイッチ。安い! 値段はシティにある強欲なサンドイッチショップの半分以下だ。
飲み物は紅茶を選んだ。めったに紅茶を飲まないが、この手の店でコーヒーを買うとイギリス人好みの超うす味のインスタントで、「コーヒー」ではなくて、お湯の入った「コ」みたいな飲み物になっているからだ。

まず、紅茶を飲み(これは当然マトモである)素朴なサンドイッチを一口・・・。
衝撃が走る。こ、これは・・・。

ひえー、マズーイ!

思わず中を見ると食パンにマーガリンを塗り、ハムがはさんである。昔風で「ごく普通のイギリス家庭の・・・ただし、あまり料理が得意でないお母さんの、サンドイッチ」であった。

あまりのショックに頭の中が10数年前にタイムスリップした。

シティで働き始めて間もなくのこと、レデンホール・マーケットにランチを買いに出かけた。どこにしようかと悩んでいると、一軒のサンドイッチ・バーに長蛇の列。

これだ! とそこに並んだ。
「行列のできるラーメン屋」みたいに「シティのサンドイッチならここだぜ」という店に違いない。で、延々と並んで自分の番になり、カウンターのおねえさん(2人いた)を見ると「超スロー」なサービスぶりだ。おまけに当時の私は巻き舌もケバケバしい「アメリカ英語」で非イギリス系の店員に注文が通じず、横に並んでいたイギリス人のおじさんが見るに見かねて「通訳」までしてくれたのだ。

そこまでして買ったサンドイッチは・・・まずかった。列が長かったのは店員がトロくて時間がかかるせいらしい。

10年前の出来事に思いをはせながら、じっとサンドイッチを見つめる。あまりのまずさにそれ以上食べる気もせず、かといって捨てるにも気が引ける。
あちこちのレストランで食べ歩きをして、「イギリスの食事も、最近はイケてる」と豪語していた私の口には、
「時代の流れに逆行してでも、この味を守ります」と自己主張の強いマーガリンがべったりと残っているのだった。

この、頑固者・・・。

投稿者 lib : 12:28 AM | コメント (1)

September 21, 2006

ウォータールー・アンド・シティ・ライン

career2.gif 
「匠(たくみ)の国」から来た日本人にとって、イギリスの「物が壊れる」「物が直らない」「物を直すのにものすごく時間がかかる」のはカルチャーショックのトップ項目ではないだろうか。

日本から10数時間のフライトを終え、疲れきった身体でフラフラと飛行機から降りて、ヒースロー空港の建物の中に進む。
で、最初に目に飛び込んでくるのが「動く歩道」の「故障中」のサインである。
「あー、またか」という思いと同時に、久々に帰宅して古女房から、「おかえりなさい」と気だるく迎えられているような気分になるものだ。(古女房の部分は想像です)

先週、ウォータールー駅とバンク駅をつなぐ、「ウォータールー・アンド・シティ・ライン」の改修工事が終わった。たった一駅、4分間の路線である。4月から始まった工事の「予定期間」は5ヶ月。9月の「初め」に工事が完了すると公示されていた。

「9月1日、再開通!」ではなくて、「9月の初め頃に、たぶん、できるかも・・・(予定)」みたいな曖昧さは日本人には受け入れがたい。
「9月が予定なら、11月ごろに完成か?」
「ま、今年中に乗れれば、『良し』としようか」と利用客の声。

というのも、数年前、バンク駅の動く歩道の修理には延々と時間がかかったからだ。
トロッコ電車のようにガタンゴトンと動き、ときどき石につまずいたようにガタンと盛り上がるのが少しスムーズになった。(100%ではない)それから、手すりのベルトの速度と歩道の動くスピードが微妙に違うので、ときどき手の位置を調整しないと、手と身体がうーんと離れてしまい、ストレッチ運動を余儀なくされていたのが改善された。(100%ではない)
なんせ「先進国」の「首都」の「ビジネス地区」の「メジャーな駅」に存在するのが間違っているようなシロモノだったのだ。

しかし、数10メートルの動く歩道を直すのに確か1年以上かかったはず。他にどこを直したのか知らないが、あれだけの時間がかかった理由は謎だ。

それで、シティの勤め人の間ではなんとなく、
(9月初旬予定なら、実際の完成は11、12月ごろ)と暗黙の理解があった。

すると・・・。

あーら、びっくり。9月に完成した。1週間遅れだったらしいが、すごい、すごい(イギリスの基準にしては)。
「できるものなら、やってみろ」と馬鹿にしていた2歳児にイナバウワーの演技を見せられたような衝撃である。・・・やれば、できるじゃん。

新聞によると、このウォータールー・シティ・ラインは1日に4万人が利用して、日本円なら2億円の売り上げがあるそうだ。 (ちょっと、眉唾。 イギリス人は「総工費10ミリオンポンド」で「6ヶ月で竣工」して「年間売り上げ予想120ミリオンポンド」みたいな話を平気でするのよね、根拠もなしに)

で、1日開通が遅れれば2億円の損失(?)ということで、この工事を落札した建設会社に1日1億5千万の「工事遅滞罰金」を科したという。

そうか、そういうトリックだったのか。

イギリス人でも競争させたり、罰金があったりすると、いつもは引き出しに隠してある「効率性」とか「段取り」とか「確認作業」とか「残業(引き出しの一番奥にある)」を出してくるらしい。
日本ではこの手のものは無料でついてくるが。

新装再開通のウォータールー・アンド・シティライン、なぜか新しいペンキやコンクリートの匂いはしない。なんだか地下牢から流れてくるようなよどんだ空気である。もしかすると、古い壁に穴を開けたとき、埃とかカビ、あるいは「人柱からの邪気」が出てきたのが浮遊しているのかもしれない。身体に悪そうだが、ずっと息を止めておくわけにもいかないし。

これで喘息になった場合、通勤時に罹患したということで「労災」に認定されるだろうか?

しかし、ローラーコースターのような揺れはなくなった。(100%ではない)
今まで(この激しい横揺れ、いつか脱線するかも)と心配しながら乗っていたのだ。
一度、アナウンスで
「電車に少しトラブルがありますが、とりあえず出発します。事故は起こらないと思いますが、座席に着くか、つり革にしっかりつかまっていて下さい」と言ったきり、びびった乗客に降車する間も与えず、扉が閉まり発車したことがあった。
乗客はちびまる子ちゃんのように斜線が入った真っ青な顔でお互いを見つめあい、恐怖の4分が過ぎて無事、バンク駅に到着すると、へへへ、とほっとした笑いを交わしたのだった。

通勤客をおどすなよ。

投稿者 lib : 09:51 AM | コメント (4)

September 14, 2006

冠婚葬祭 オフィス編

career2.gif 
イギリスのオフィスにも「冠婚葬祭」はある。

が、規則に従って統一の取れた行動を取るのが苦手なイギリス人の集まりだから、「掟」はけっこう緩やかだったりする。
日本のようにマニュアル本で勉強したり、水引の格を考えなくてもいいから気楽。

とりあえず入門編は「誕生日カード」か。
「顔見知りの同僚」レベルなら職場で一枚のカードに寄せ書きする。名前を見てもどの部門の誰だか、よくわからない場合もあるが、まさか、「知らないから書かない」わけにもいかないあたりが、まさに理不尽なしがらみを強要される「冠婚葬祭」のノリ。

(子供じゃあるまいし、今さら、お誕生日おめでとうでもないだろうに・・・)と思うが、カードが回っているのを見たことがない人もいて、
(この人、もしかして嫌われている?)と邪推を呼ぶ。

カードのメッセージはほとんどが「おめでとう」「これからもがんばって」という類のものだが、さすがはイギリス人、気の効いたジョークもありで、それに次々応えるような書き込みもしてあって、なかなか楽しめる。
英語がネイティブではない私にはひねりの効いた一言はなかなか思いつかず、
「お誕生日おめでとうございます」と日本語で書いてお茶を濁すのが悲しい。
内心、(こんなところで妙にがんばって、文法やスペルのミスしてもちょっとね)という自制心も働くし。

「XXが素敵」とか、「取引先のXXがカッコいい」などとミーハーを言っていると、それをネタにカードでからかわれることが多い。
とんでもないデザインのカードにきわどい下品なジョークがてんこ盛りで、とても人様に見せられないシロモノに仕上がっている。

「バースディ・ドリンク」のお知らせがメールで送られてくる。
誕生日のランチタイムで、オフィスのそばのパブかワインバーだ。稼ぎのいい連中はポンとカードをカウンターに預けて、誰にでも奢ってくれる。若い子の場合は参加したメンバーが自分の飲み物代を払う、と様々である。
この日の午後、本人はもちろん使い物にならず、そのセクション全体の仕事の質が低下するのは公然の秘密である。
「来てね」とは言われても、実際に行かなくてもそれはそれ。
だって、全部に参加していると一年中、毎日のように・・・。

21歳、とか30歳、40歳、50歳は「大台の誕生日」だ。
カードも大きめで、その年齢の数字バッジも贈られる。(わざわざ付ける人はいないが)
大台の年や結婚祝い、出産祝い、退職、転職はカードに集金袋(?)がついてきて、有志でお祝い金を入れる。
額は決まっていないので、中身を見て適当に判断する慣習だ。
ま、嫌いな奴ならパスしても構わないらしい。

ご祝儀慣れしている営業職のセクションや管理職を回ってくると20ポンド、10ポンド札、最低でも5ポンドくらいで、カサカサと軽い袋が回る。地味なセクションならじゃらじゃらと小銭の音をさせながら、重い袋が回る。ひとり平均して1-3ポンドと思われる。

結婚祝いに3万、5万という日本に比べれば信じられないほど小額。

お祝いをしてくれるのはうれしいが、気をつけていないとリフト(エレベーター)の中に、
「ジョンは今日で30歳です。おめでとう!」というメッセージと本人の写真をデカデカと貼られたりするので注意が必要だ。
(30歳? どう見ても40歳だ。老けた奴・・・)と社外の人にまでさらしものにされる。

私も年令の入った風船をデスク周りに山ほど飾られて、偶然オフィスに来たクライアントに年がバレてしまい、準備した秘書の子の首を絞めに行ったことがある。

バースディボーイには両ほほにキスをしてあげることにしているのだが、

「お返しにおひとつ・・・」と迫ってくるのがいる。
「いえ、いえ、とんでもございません」とかわし、
「まあ、そうおっしゃらずに」と、さらなる挑戦に、
「きょうの主役は貴殿ですから・・・」

と、「お返しのキス」は受け取らないことにしている。

礼儀上、遠慮しているわけではない。

投稿者 lib : 09:03 AM | コメント (1)

September 07, 2006

夏の思い出

career2.gif 
9月になり、夏が終わろうとしている。

7月は暑かった。
ヨーロッパの夏は「天気が良くて、日が長い」季節であって、決して「ギンギラに照りつけられて、サウナのようにムシムシ」ではなかったものだが・・・。
この数年、30度を超える日がイギリスでも珍しくなくなってきた。

「女はいいよな、ノースリーブとか着られるし。僕たちはいくら暑くてもスーツを着なければならないんだぞ」とボス。
「このくらいの温度で泣き言とは情けない。オタクの先代は暑さをものともせず、アフリカやインド、ジャマイカなんかを無理やり植民地にして暮らしてたじゃない」
そう、いやがらせを言ってやるのだが、
「暑いものは、暑い」
と、軟弱者もいいところである。
大英帝国の衰退、ここに見たり。さぞや、ご先祖様も嘆かれることであろう。

30度なら、日本人の私には平気。
しかし、外に出ているぶんにはそれほど暑いとは思わないが、問題は乗り物の中だ。
イギリスの乗り物はどう見ても「冬仕様」で、暖房は効くようになっているが、窓は小さくて少ししか開かないし、もちろん冷房の設備はない(一部の新型電車にはついているらしいな)。

私は朝夕の通勤時間、日が当たらず少しでも風が入る位置に電車の席を選ぶ。そして、先人の知恵、花鳥風月の文様の入った扇子で涼をとるという原始的な戦術をとる。
日本なら、
「クーラーが効きすぎて、乗り物の中は寒いから、カーディガンを持っていこう」というのも同じく暮らしの知恵である。

「こんなに明るいのにまっすぐ家に帰るのは間違っている」気分にさせるのも、夏のしわざ。
よく考えると、外のテーブルならともかく、ワインバーの中で日が長いも短いも関係ないのだが。
フルボディのレッドワインではヘビィなので、ホワイトにするか、ロゼになるのもこの季節ならでは。

金融街シティでは季節により服装はあまり変化しない。
ビジネススーツというのは生地の厚みは違っても、パッと見目にはかわりばえするものではない。女のスーツも通年ダークカラーで長袖がほとんどだし、男はよほど寒くなければ冬でもコートを着ない人が多い(なぜだ?)

夏のパブ、昼休みでもネクタイを取り、ジャケットを脱いだシャツ姿は少ない。
聞いてみると、
「タイをはずしたりすると、楽になって気が緩み、午後クライアントに会う前にもう一度、身だしなみを整えようという気がなくなる」のだそうだ。

身体の仕組みが違うのか、暑いと言いながらも、上着も脱がず汗も浮かべない姿はちょっと不思議。

シティはデブ度が低い地区である。
それに少々太めでもダークスーツを着ている限りは見苦しい贅肉も目につかない。

が、ショッピングセンターでカジュアルウエアの連中はすごい。
Tシャツやタンクトップで身体の線がモロに・・・。

「臨月の妊婦」のような腹をした「おじさん」。 下着やスカートのベルトで身体のところどころを締めつけられ、その他の部分はボヨヨーンと膨れた「ミシュランのタイヤ男」のような「おばさん」。 チビピタTシャツから、「コブとりじいさん」のコブのようなお肉をプルプルとはみ出させた「おねえさん」。

こうなると、「視覚による暴力行為」といえよう。

お願い、その霜降り肉を人目にさらすのはやめてくれる?

夏のビーチホリディのためにダイエットを計画したが挫折した連中は冬のクリスマスパーティという目標を立てる (私もだが)。しかし、贅肉をジャケットで覆い隠すと、ホッとしてしまい、クリスマスへ向けた減量作戦も危うい様子。

イギリスの食べ物には季節感がなく、「食欲の秋」になりにくいのがせめてもの救いか。

松茸、さんま、柿、栗、と懐かしい日本の秋の味覚を思う9月である。

投稿者 lib : 09:26 AM | コメント (0)

August 31, 2006

ローリング・ストーンズ

career2.gif
ローリング・ストーンズのコンサートに行ってきた。

ファンではないものの、40年も続いている伝説のグループのステージを一度は見たい。でも、ツアーが発表された瞬間にチケットは完売、プレミアがついて値段は10倍、と聞いていたので諦めていた。

と、コンサートの前日、
「ストーンズのチケットがあるけど行かない?」と友人が電話をくれる。
「ストーンズ? おまけにタダ?」
接待用のチケットが回ってきたらしい。ロックコンサートで接待するのか、この国では。

トィッケナム・スタジアムは有名なラグビー場で、ミック・ジャガーの住むリッチモンドから車で5分。
数万人が集まるスタジアムのまわりには、パトカー、騎馬警官隊、医療関係者と万全の体制である。ロックコンサートだし、乱闘のひとつやふたつあるかもね。

しかし・・・。

予想はしていたが、観客の年齢層はめちゃくちゃ高かった。
メンバーは60代に入っている。で、彼らとともに青春時代を過ごした人たちも同じ世代なのは当然である。最多年齢層は50-55歳、と見た。

会場に向かうほとんどが、カジュアルウエアで白髪、ハゲ、中年太りの集合体。
ロックコンサートにつきものの、歌舞伎調派手派手メイク、原色染髪ツンツンヘア、これ見よがし全身ピアス、黒皮豹柄じゃらじゃらメタル、ヘルズ・エンジェルス刺青おやじは・・・いないな。
おお、ロンドンブーツことプラットフォームブーツを履いた日本人らしき女の子。
「ん、まー、すごい靴ねえ。ちょっと、このお嬢ちゃんのブーツ見てよ」と中年婦人グループに取り囲まれている。

本当にロックコンサート? 
実は「チェルシー・フラワーショー」で、花や庭園を愛でる催し物だったりして。

チケットは40―60ポンドからだが、上は300ポンド、450ポンド、600ポンドまである。これは正規の値段だから手数料、交通費、駐車場代を入れたりすると安くはない。よく見るとカジュアルウエアといっても、ラルフ・ローレンだの、バーバリーだ。
お金に余裕がある感じの中年夫婦や管理職風の男のグループで、
「ストーンズって好きだったんだよね、大学の頃」とか話している。

バーには「18歳以下には酒類をお売りできません」の掲示があったが、18歳どころか会場に38歳以下の観客なんか・・・あ、家族づれの中に小学生がいるな。
ティーンエイジャーは、「ふん、結成当時、まだ生まれてなかったくせに・・・」と冷たい視線を受けている。
煙草を吸っている人も少なかったが、「最近、血圧が高くて医者から禁煙させられちゃってさあ・・・」みたいな雰囲気だ。

なんだかロックしてないなあ。

前座バンドの演奏が終わると、観客席では人の波を作ったりして大はしゃぎ。
明日、腰痛になっても知らないよ。
接待用の席だったので場所はよかったが、前の列の客が途中でやたらと席を立って、ビールだ、ワインだ、ジントニックだ、と買ってくるのがわずらわしい。
コンサートに来ているのだか、パブに来ているつもりなのだか。座って音楽を聴きなさい。

「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」から始まって、「サティスファクション」で終わったコンサート。花火に火炎放射、移動舞台にレザー光線、巨大な唇のバルーンとたっぷり楽しませてもらった。
ミック・ジャガーは孫までいる63歳だが、ステージを走り回って観客を扇動する姿は若いというよりも幼稚園児のようなハイパーさ。

何年も前に、ロンドンの小さなクラブに出かけたときは、トイレのドアは蹴破られ、マリファナの匂いが立ち込め、割れたビール瓶が飛び散っていた。流血騒ぎに巻き込まれずに五体無事に帰宅できるのだろうかと心配したものだ。

この日、中年の観客たちはコンサートを堪能した後、自分たちの飲んだビールのプラスティックカップをきちんとゴミ箱に捨て、鼻歌を歌いながらもお行儀よく帰路についたのだった。

ロックンロールは永遠なり・・・。

投稿者 lib : 08:52 AM | コメント (4)

August 24, 2006

一時帰国 その2

career2.gif
日本の物価は高いだろうねとイギリス人から言われるが、ロンドンの方が高いと思う。ヨーロッパの他の都市に駐在する日本人からも、
「ロンドンは何もかも高いですねえ」という声を聞く。

この「高い」というのは、「この程度の品質の商品なのに」とか 「このレベルのサービスなのに」のニュアンスがあるのも見逃せない。

特にパリやブルッセルからのビジネスマンは、ロンドンのレストランで「庶民的レベルの食事」に「女王様価格」がついているのにびっくりする。
・・・日ごろから安い値段でおいしいものを食べているらしいな。

交通費にも驚くようだ。
ロンドンの地下鉄やバスの運賃は1ポンド50ペンスからで400円近い。
こんなに取るくせに 「来たり、来なかったり、すぐ来たり、ひどく待たされたり」 と 「女心と秋の空」みたいに思わせぶりで気まぐれな運行である。

以前はよく、駅と駅との間に電車がじーっと停まったまま、何が起こっているのか知らされずに30分も待たされたものだが、情報開示に積極的なこの頃、
「乗客の皆様にお知らせいたします。現在のところ、どのような理由で電車が停まっているのかについての情報は・・・ありません」
と、情報がないことの情報を流してくれる。

帰国中に見た日本の電車の運行の正確さも美しきカルチャーショック、その2である。

駅員の「指差し確認」は 「殺人的満員電車」に次いでイギリス人にも知られている。テレビなどで見たことがあるらしい。

新幹線をプラットフォームで待っていたときのこと、偶然、駅員さんの傍にいた。
柱には「三種の神器」ともいうべき、赤と緑のランプがついた「信号モニター」と赤い線のついた棒が移動するようになっている 「時刻表」とまるでストップウォッチのような「デジタル時計」。

おおい、イギリスの鉄道会社の人、「ストップウォッチ」だぞ、「ストップウォッチ」。
君たちのように「日時計」あるいは「花時計」ベースで運行していないぞ。

そして、この三つと電車とを行き交う「指差し確認」はひと電車につき、十数回に及んだのだった。(思わず数えてしまった)

今考えれば、日本人のくせに物珍しそうに彼の動作に見入っていた私も不気味だったかもしれない。そのプレッシャーにもめげずに芸術的確認作業をしてくれた駅員さんはりっぱだ。

折り返し地点でもある東京駅は電車が入ると作業員の出番である。
手早くゴミを集め、座席の白い布カバーを取り替えていく。その手際のいいこと。
イギリスの電車に乗り込んでくる清掃員の、
「イヤイヤながらやってます。全くやる気はありません。あー、ヤダヤダ。適当にやって早くオウチに帰ろう」
のメッセージが聞こえてくるようなタラタラした態度とは雲泥の差。

「さあ、乗客のみなさん、どうぞ。快適な旅をお祈りします」と言わんばかりの顔で作業員が降りてきた。

いいなあ、働き者の日本人。ウルウル。

新幹線の車両の中はそこはかとなく消毒液が匂う。
なにもかもが効率的で清潔。
でも、ここまで衛生的だと免疫力が落ちて、かえって病気に罹りやすくなったりして・・・。

新幹線では数列ばかり離れた座席にサラリーマンのグループが陣取った。うなぎ弁当がそれぞれに配られ、ビール缶のプルトップがつぎつぎと開けられる。
出張の帰りなのか、一仕事終えた充実感に満ちた顔つきで開放的な雰囲気だ。

と、ひとりのうなぎが一切れ通路に落ちた。
(誰かが踏んですべったりすると危ないなあ)と見ていると、その手が通路に伸びる。
(よし、よし、公共道徳に則って、ちゃんとゴミ箱に入れようね)と思っていると、彼はなんのためらいもなく、そのうなぎを自分の口に放り込み、私をあ然とさせたのだった。

うーん、さすがは日本経済の屋台骨を支えるサラリーマン。そして、彼らによって日本の免疫力も支えられていくのだな、と、そのサラリーマンの豪快さに感心したのだった。

投稿者 lib : 08:30 AM | コメント (2)

August 17, 2006

一時帰国 その1

career2.gif 
今年は梅雨明けが遅く、帰国直前にも大雨が降ったらしい。機内のスクリーンのニュースで、家が丸ごと、どんぶらこ、どんぶらこ、と流されていく洪水の映像を見ながら、
(もしかして、「自然災害危険地区」として日本は「渡航禁止国」に指定されていたかもしれない。イギリス外務省のホームページをチェックしてくればよかった)と不安になる。

無事、到着した。で、空港には例の「狂牛病進入防止」の赤いじゅうたんが敷いてある。
(こんなもので防げるのか?)と、いつも思うのだが、余計なことを言って、全身に消毒液の噴霧を受けるハメになっても困るので、黙ってその上を歩く。

さて、毎年、この時期に人間ドックを受けるのだが、イギリスに住んでいる私にとっては美しきカルチャーショック。なんせ、ここには、

検査の流れの効率のよさ。
施設や器具の清潔さ。
検査技師、看護士、スタッフの礼儀正しさ。

というイギリスの病院では決してお目にかかれない優れものがあるからだ。

日本に住んでいないので、当然、日本の国民健康保険は適用されない。実費で5万円近く払うが、健康チェックのためのみならず、「日本の効率美、医療編」の鑑賞代と思っている。
すぐに結果が出て、健康アドバイスを受ける。「血小板」の数値が基準値よりも高かった。血が止まりやすいってことか? 自分に切りつけて、止血までの時間を計ってみることはしなかったが。

イギリスでは近所にGP(登録医)がいるが、めったに行かない。なかなか予約が取れないせいもあるが、経験上、役に立ったことがないからだ。

その1
風邪をこじらせてしまい、数週間たっても症状が改善しない。仲のいい友人が肺炎で入院したので、思わず会社を早退してタクシーでGPに駆け込んだ。
・・・医者は「うがい薬」の処方箋をくれた。それも、ごく普通に薬局で売っているもの。
タクシー代返せ。

その2
花粉症か何かのアレルギーになった。涙目、鼻水、全身の皮膚炎をGPに見てもらったら、「目薬」の処方箋をくれた。
目薬って、目薬だけ? もしかして、皮膚炎にもこの目薬をつけるとか?
私は平和的な人間だが、(本当です)このときばかりは医者を表に引きずり出して、ボコボコにしてやろうかと一瞬思ったぞ。
・・・・・
・・・・・
・・・・・
その 100
精密検査のため郊外にある大病院を紹介される。検査の当日、受付の人が、
「ごめんなさい。あなたの名前は間違って別の検査のリストに入っていました。予約を入れ