概要

英国で企業や個人に適用される法律は大きく分けて

(1)EUレベルで制定 され直接適用がなされる法律(EU規則)
(2)EUレベルで制定され国内法と なり適用がなされる法律(EU指令)
(3)英国でEUとは関係なく制定され ている国内制定法
(4)英国の判例法、となります。

・ EU規則は、EUの機能に関わる事項に関して、同じ法律が全ての加盟国で 適用されることが望ましい場合に制定され、製品基準や輸出入に関わる法 律、国境を越えた活動に関わる法律(例:GDPR(個人情報保護法))など が含まれます。規則は直接、英国・EU加盟国で効力が発生します。
・ EU指令もEUの機能に関わる事項に関して制定される法律ですが、各加盟 国の自主性が認められることが重要な事項に関して制定されることが一般 的です。(例:被雇用者の権利に関する法律)。指令に基づいて国内法が制 定されたのち、英国でその効力が発生します。
・ 英国国内の制定法は会社法の多くや不動産に関わる法律など、EUの機能 と深く関わりのない分野に適用される法律ですが、英国の企業活動におい て一番気に留めておかねばならない法律が含まれています。
・ 判例法については、英国においては裁判所が出した判例が法となり、拘束 力を持ちますが、一般には分かりにくいため、重要な判例は制定法として 成文化されることが多いです。ただし、契約に関する法律はその多くがい まだに判例法のままとなっています。

EU規則とEU指令の英国における適用については英国のEU離脱により影 響を受ける可能性がありますので、企業は注意が必要です。

会社関連

会社関連英国において日系企業が子会社を設立する際には、Company Limited by Shares(株式会社)またはUK Establishment(支店)のどちらかが選択され ることが一般的です。

Company Limited by Shares:
・ 独立した法人格があり、第三者との契約などの当事者となることができ ます。
・ 株主の責任は基本的にはその出資額を上限とするため、株主が当該会社の 債務の責任を負うことはありません。
・ Director(取締役)が最低一名必要ですが、国籍や居住地の要件は会社法 上はありません(ただし取締役が英国に一人もいない場合には、税法上のインパクトはあり得ますので、注意が必要です)。
・ Director は基本的には個別に会社を代表する権利を有するために、Director の任命には十分注意することが必要です。
・ Director の義務は制定法であるCompanies Act 2016に記されているものに加え、判例法で規定されてい るものもあります。日本の親会 社の社員が子会社のDirectorを兼任で務めているような場合でも取締役の義務は果たす必要が あるために、Director となった 場合にはその義務を正しく理解 することが重要です。
・ 閉鎖する際にはある程度のコストと時間がかかります。

UK Establishment:
・ 独立した法人格はなく、第三者との契約などの主体者は本体となります。
・ UK Establishmentの債務に対する責任は本体が負うこととなります。
・ 閉鎖する際には非常に短い書類を一通Companies Houseに送るだけで可能となります。

雇用関連

英国における被雇用者の権利は、一般的には

(1)会社と被雇用者の雇用契約
(2)会社が定める従業員ハンドブック
(3)法令で定められている権利
(4) 会社における慣習、に基づいて形作られます。

特に(1)と(2)について雇用関係を結ぶ前にきちんと確認することは、会社 にとっても被雇用者にとっても非常に重要です。

取締役の任命や雇用に際しては、取締役が従業員としての権利を有するの かどうかを明らかにすることも非常に重要です。

英国の会社が従業員を解雇する際には(1)適切な理由、および(2)それぞ れの理由ごとの適切な手続き、に基づいて行われなければ、unfair dismissal (不当解雇)とみなされます。

適切な理由は以下の通りです:
・ 不適切な行為(例:社内規則の複数回に渡る違反、犯罪行為)
・ 能力不足や欠如(例:必要な資格の不足、病気)
・ 整理解雇(例:所属部門の縮小または閉鎖)
・ 法的な制限(例:就業可能なビザの失効)
・ その他の重大な理由

適切な理由が認められるかどうかは事実関係が大きく関係しますので、解 雇の手続きに入る前に事実の調査を行うことが必要となります。

コンプライアンス関連

現在英国の多くの企業では

(1)競争法
(2)贈収賄防止法
(3)個人情報保護 関連 法

については違反の際の罰金額が多額になる可能性があることから、適 切なコンプライアンスのプログラムを設けることが一般的です。

具体的な取り組みとしては以下が挙げられます:
・ 従業員に対するトレーニングの実施とそのログの記録
・ 社内ポリシーの作成と雇用契約の下での順守の義務化
・ 法令上求められるその他の社内文書の作成(例:個人情報保護法において は、社外の個人情報を取得する個人に対する通知の作成)
・ 緊急時の社内・社外の窓口の設置

(協力:Ashurst LLP