日本では、日本紅茶協会が11月1日を「紅茶の日」定めている。しかし、世界的には5月21日が正式な紅茶の日とされている。国連がそう認めているのだから、日本人は「あ、そうでしたか」と引き下がるしかない。日本の紅茶の日が英語で “National” Tea Dayとされている一方で、国連認定の方はれっきとした “International” Tea Dayだ。

※日本の紅茶の日が11月1日に制定された理由が知りたい方はここをクリック。

イギリスのナショナル・ドリンクは紅茶?

イギリスの国民的ドリンクといったら、パッと頭に浮かぶのはやはり「紅茶」だろう。しかしこの国で最初にお茶が飲まれるようになったのは1650年代と、多くの人が持つ印象ほど昔のことではない。ポルトガルとオランダの貿易商が中国から仕入れた茶葉をヨーロッパに持ち込んだのが1610年ごろなので、イギリス人がお茶を嗜好するようになったのは世界的にもヨーロッパ的にも、かなり遅い方といえる。当時、お茶は万病に効くとされたかなりの高級品。そのため上流階級限定の飲み物だったようだ。

それがわずか1世紀ほどの間にイギリス東インド会社が茶葉を独占輸入するようになったのだから、さすがイギリスといえるだろう。いろいろな意味で…。

しかし、それもティールームなるものが存在するようになる以前のことで、お茶は主に富める者たちの社交場であったコーヒーハウスで提供されていた。

イギリスの植民地となったインドやセイロン(現スリランカ)で茶が栽培されるようになると、次第に中国茶に取って代わるようになった。


正しい紅茶の淹れ方:科学者の見解

紅茶の淹れ方なんて個人の好きにしていいのではと素人(!)は思ってしまうのだが、えてして細かいことにこだわり、議論をしたがるイギリス人。だが、マグやカップに最初に入れるのは「お湯なのかミルクなのか!論争」にこのほど終止符が打たれた。

リーズ大学のマッキー教授によれば、もっとも美味しい状態で紅茶を楽しむには、ティーバッグの入ったカップに先にミルクを入れてから沸騰したお湯を注ぐのが良いらしい。

新たな議論を呼びそうなこの研究結果だが、カップにミルクを最初に入れておくことで、硬水の影響を和らげることができるというのが大きな理由だという。ことは、長い間イギリス人を悩ませてきた水問題に関わっているようだ。少なくとも硬水地域に住む人たちは「ミルク・ファースト・メソッド」に従うべきと同教授は言う。

沸騰した湯の出る蛇口を製造しているINTU社と共同で行われたこの研究により、硬水にはフレーバーの生成を妨げるミネラルが含まれていることが判明した。紅茶独自のフレーバーは、タンニンを主とするいくつかの成分によって生み出される。水にミネラルが多く含まれるほどフレーバーの生成が難しくなり、ぼやけた味の紅茶になってしまうということだ。

しかし、ミルクに含まれるタンパク質がこのミネラルの量を減少させてくれる。

ティーバッグを熱湯に浸し、それを取り出してからミルクを注ぐと、タンニンがフレーバーを生成する前に固まってしまう。しかし、熱湯を注ぐ前にミルクを入れておけば、ミルクのタンパク質が水に含まれるミネラルとタンニンが結合して固まるのを防ぎ、結果的に非常に優れた味の紅茶に仕上がるのだという。

ロンドンを含む硬水地域の水にはカルシウムやマグネシウムなどが多く含まれている。雨水の段階では軟水でも、河川を通り水処理センターに送られる間に不純物を吸収してしまう。これらは無害ではあるが、雨水に近い軟水の方が純粋といえる。

INTUの社長は言う。「美味しい紅茶は私たちに喜びをもたらし、その日1日をパッと明るいものにしてくれる。だがそんな1日の始まりは多くの人にとってそれは夢のまた夢。この研究によって、すべては硬水のせいであることが明らかになったことで、これまで何百万人もの人たちが耐え忍んできた惨めな人生をやっと変えることができるようになり嬉しく思う。」

水道水を軟水に変えて熱湯を出す蛇口を販売する会社にとってはそれがビジネスの成功につながるのだから、さぞ嬉しいだろうとは思うが、実はこの研究結果が出る少し前に、英国規格協会(BSI – British Standard Institution)が、「カップにはミルクを先に入れるべきである − 少なくともポットで紅茶で淹れる場合には」と公式のガイドラインを発表していた。

紅茶を淹れるにあたってBSIが推奨する条件は、ポットは磁器でなければならず、お湯100mlに対し少なくとも2gの茶葉を使い、サーブされる時点で紅茶の温度は85度を超えてはならない…ということだ。そんなこと言われると、あれこれ気になってかえって紅茶を味わえなくなりそうだが。


しかし、一般イギリス国民の見解は?

この結果を受けて、ニュースチャンネル「TalkTV」がオンラインでアンケートをとったところ、「自分はお湯を先に注ぐ」と回答した人が90%を超えた。

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「まず茶葉をインフューズしないといけないんだから、
お湯が先に決まってる。」

「ミルクを先に入れたら、茶葉を煎じるためのお湯の温度が
下がっちゃうじゃない。」

「昔はボーンチャイナのカップで紅茶を飲む人が多かったから、
お湯の熱でヒビが入らないようにミルクを先に入れていたと聞いた。」

「ミルクはお湯を注いだカップからティーバッグを取り除いた後で入れる!」

「ミルクを先に入れたカップにティーバッグを入れたら、
ミルクがティーバッグのメッシュを塞ぐから、
薄い紅茶になってしまって超マズイ。」

「お湯はティーバッグを入れたポットに注ぎ、
カップにはあらかじめミルクを入れておく。これが、常識。」

「ティーバッグを使うならそもそもポットは要らないだろう。
ポットを使わずに済むように発明されたものなんだから。」

「本当の紅茶好きなら、そもそもティーバッグなんて使わないし。」

「ミルクを先に入れる人たちって、バスタブに入ってからお湯を張るのよね。
そういう人を何人も知ってる。」

「鶏と卵の話みたいで、意味のない議論だ。」


街のハイストリートが複数のコーヒーチェーン店でひしめき合っている一方で、ティールームを見つけるのには一苦労する昨今も、紅茶には一家言を持ってしまうイギリス人のようである。