Vol.97
味も食材にもアイディア溢れるガストロパブ
「The Princess of Shoreditch (プリンセス オブ ショーディッチ ) 」


「P」のマークが目印の外観


上品な室内装飾のレストラン

内装。螺旋階段がレストランへと続く

ジューシーなポーク・ベリー・ソーセージ

サラダ風に調理されたクスクスに
良く合ったソースは絶品

大黄のソース添えチーズケーキ

甘さ控えめの手作りクリスマスプディング
  近年、パブの料理が美味しいと、巷でもっぱらの評判になっている。値段が張る高級レストランより遥かに良いとの声が多い。パブ、と聞けば「ビールとタバコの匂い、そして騒々しい店内」と誰もが連想するだろうが、最近のパブはちょっと違う。特に「ガストロパブ」といわれる所は、各店のオリジナル性を追求し、日々試行錯誤している様子が見て取れる。毎年ベスト1を決めるコンテストも行われているほどで、その競争は益々白熱する様相を呈しているようだ。そこで、今日は、「ガストロパブ」の料理にすっかりはまってしまっている友人と一緒にオールド・ストリート駅から歩いて3分程の所にある「Princess」で昼食をとることにした。

  この店は、2005年のチャンピオン・シップで惜しくも次点となった店。「店の内装がとても上品で落ち着ける」と友人のアドバイスがあったので、興味が湧き、無性にこの店を訪れてみたくなったのだ。

  大通りから少し入った所にあるこの店の外観は、シンプルだがどこか気品を感じる。名は体を表すではないが、店名とよく合っている印象だ。店の扉を開けると、そこはやっぱりパブ。煙草の臭いが少し鼻を突く。しかし、換気が良いのか室内が煙草の煙で充満しているといった感じではない。私達は2階にあるレストランで食事をしたかったのだが、残念なことに満席。最初からこの状況を予想してわざわざ平日の午後の2時過ぎに訪れたというのに、この盛況ぶりには驚きだ。益々その室内を見てみたいという欲求に駆られた。そこで、店長さんにお願いして2階へ。お客は殆どスーツ姿のビジネスマン。一番広いテーブル席では商談を兼ねてのビジネスランチ中。きっと大切なお客様を連れて来ても恥ずかしくない料理と雰囲気なのだと実感した。

  さて、肝心の私達の食事は1階のパブで。 友人は、ポーク・ベリー・ソーセージ(Pork Belly Sausages£8.95)を、ラム肉が好きな私はラム肉ソースのクスクス(Lamb+Almond in Herb Cous Cous£6.95)を注文。ポーク・ベリー・ソーセージは、たっぷりのマッシュポテトに乗っかった本当に豚のお腹のように大きなソーセージ。ナイフを入れるとジュウっと肉汁が流れ出す。それをマッシュポテトで包みグレイビーソース(肉をローストした時に出る肉汁を使って作るソース)を絡ませて一口。きっとお肉が新鮮なのだろう、癖がなくお肉のしつこい味だけが自己主張しているところがない。ソースも濃過ぎず丁度いい塩加減。見た目よりさっぱりしている。では、クスクスはどうだろう?これには、ふたりとも絶賛!少し甘味のあるトマトソースが、オリーブオイルとハーブ、みじん切りのタマネギと混ぜ合わせたクスクスに良く合っている。 もし、これらの食材を入れず、淡白な味のクスクスだけだったら、ここ迄絶妙な味のハーモニーは生まれなかっただろう。それに、このソースは、クスクスの一般的なソースよりも、とろみがあるところが食べ出したら止まらないもう一つの理由だ。

  デザートには、一番興味があったチーズ・セレクション(チーズの盛り合わせ£6.95)にしたかったのだが、またまた残念なことに完売。そこで、ホワイトチョコレートのチーズケーキとクリスマスプディングを注文(各£4.95)。運ばれて来たデザートを見て気になったのが、チーズケーキに添えられているソース。何やら、フキを刻んだようなものが。尋ねてみると、日本では生薬として知られている「大黄(ダイオウ)」だった。そういえば、ロンドンの八百屋さんでは良く見かける食材。それに、市販のヨーグルトでもこれを使っているものがある。適度な甘味のケーキに良く合った大黄のソース。この意外なアイディアは次回のケーキ作りに頂き!一方のクリスマスプディングは甘さを控えているので、市販の物のように飽きてしまう味ではない。アルコール分を飛ばした後のブランディーの香りと相まって品の良い味のプディングだ。

  この店は、料理の味もサービスも高級レストランに少しも引けを取らない。何といっても、味も食材にもアイディアがいっぱいの料理には脱帽だ。英国を象徴するパブが、こうして食の分野にも力を注いでいる現実は喜ばしい。また、これまで英国料理は美味しくない、といわれ続けた悪いイメージを覆す良い兆しだと思う。英国料理の将来に期待が膨らむ。(茉)

2006年12月取材
The Princess of Shoreditch
76 Paul Street London EC2A 4NE
TEL: 020 7729 9270
WEB: www.theprincessofshoreditch.com
営業時間:
月 - 土
12:00-23:00
12:00-22:30
キッチンOpen:
月 - 金

12:00-15:00/18:30-22:00
12:00-26:00/18:30-22:00
12:00-21:00
料理のタイプ: ガストロパブ
価格の目安
(1人) :
£35〜
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