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October 18, 2006

僧院で黙想

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Retreat(リトリート)というのは 「宗教的修行や黙想のために閉じこもること」 で、キリスト教の僧院(?)に行き、半日ばかり「黙想」した。
参加費 (寄付、喜捨、お布施かな?)が10ポンド。

「日帰り 禅寺体験 イギリス版」といったところか。
私は日本人のくせに正座ができない。20秒で下半身が麻痺して、歩行不能になる。座禅もダメ。 「宗教的沈黙」はクールだが、禅寺で「体育座り」した瞑想じゃ、まるで運動会の練習中に居眠りしている人みたいでマヌケ。お坊さんもいやがること間違いなし。

友人は洗礼を受けている「正式な」キリスト教徒だ。私のような罪深い人間を誘ってくれたのは、やはり良きクリスチャンの模範を見せたかったらしい。彼女が神の教えに従うように、私も好奇心に従い嬉々としてお供した。

郊外の小さな町に向かう。
9時までに集合ということだったが、道を間違って20分の遅刻。
出だしから文字通り「迷える子羊」というダメな二人だ。

着いた所は宗教施設には見えない。お金持ちの豪邸だったのを、遺言で教会に寄付したという感じ。駐車場も庭も広々として天気が良かったこともあり、いい雰囲気である。

遅れたので慌てて中に入ると、20人足らずのイギリス人が牧師さんだか、神父さん(違いがよくわからない)の説教を聴いている。
「・・・というわけで、神は常にあなたの傍にいらっしゃいます。今日は心静かに自分の内なる声に耳を傾けなさい」と説教は終わった。

しまった、遅刻したせいで重要な部分を聞き逃したかもしれない。

スケジュールは、
9時半から1時まで黙想する。
1時からランチ。
1時半から3時まで黙想。
3時に集合して、もう一度説教を聴き、解散。
というものだった。

で、この間、ランチも含めて誰とも口をきいてはいけないことになっている。

「じゃ、話しかけないでね」と敬虔なるクリスチャンの友人はどこかに行ってしまい、異教徒の私は一人残されたのだった。

この20人のメンバー。
「シビアな問題を抱えている」わけありタイプ。
「いまは辛いことに直面しているが、僕は負けないぞ」という感じのビジネスマン。
「少し悩みがあるのでゆっくりと考えてみたい」人。
「のんびりと半日過ごそう」という老夫婦。
「物見遊山」の日本人がひとり。

(ジョン、どうして私を捨てたの? どうして? どうして?)とすすり泣く若い女。
(あのスペインの事業さえ、うまく行っていれば、倒産することはなかったのに・・・)と図書館のテーブルの上で手を組み、むずかしい顔をするビジネスマン。
(孫の顔を見せてくれない性悪の嫁、ジェーン。どうしてくれよう)という女性。
(おや、きれいな花だ。うちの庭にも欲しいね)と顔を見合わせる老夫婦。
———注: (・・・)内は想像です。
(うーん、いい天気だねえ。ベンチで昼寝しようかな。しかし、広い庭だね。不動産価値はどのくらいあるんだろう。70万ポンド、いや、もっとかな?)と私。

ランチはダイニングルームでロールパン、ハム、サラダ、ビスケットにコーヒーや紅茶という典型的なイギリス風のコールドミール。(精進料理ではない。当たり前だ)バターやジャムを取ってもらっても、ニッコリとするだけで「ありがとう」という声も発しない。

私ものんびりと過ごし、意外にも退屈することもなく3時になった。
「すべてを神様におまかせしなさい。ひとりで悩むことはないんですよ」というお説教で終わった。

いやー、癒されたぞ、リトリート。

半日ばかり、口をきかずに庭を歩いただけで、こんなに心が落ち着くものだとは思わなかった。10ポンドで格安だし、異教徒もOKという懐の深さがうれしいじゃないの。

わざわざ「私はクリスチャンではありません」とは言わなかったが・・・、いいよね?

投稿者 lib : October 18, 2006 11:44 AM

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