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February 14, 2008

八丈島に島流し その1

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電話線が切れた。

数週間、ザラザラした音がときどき電話に混じるのには気づいていた。しかし、毎回ではなかったので、そのままにしておく。実は、最初に頭に浮かんだのは 「ねずみの害」である。

家の中にある数ヶ所の電話のひとつが使えなくなったのはずいぶん前のことだ。ねずみキラーのおじさんが来て、床下を見たときに、
「ねずみがかじって、電話線が切れてるよ」と言ったのを思い出す。
(BT-ブリティッシュ・テレコムに連絡しなくっちゃ・・・。でも、面倒だな。他の部屋の電話は大丈夫だし。ま、いいか・・・)

と放っておいたのだ。

で、ある日、突然、他の部屋の電話もプツッと切れた。
・・・・しかし、面倒なことは考えたくなかったので、
「何もなかったことにしよう。明日はきっといい事あるさ」と、その日は寝てしまった。
すると、神のご加護か、翌朝、電話はつながっている。
(日頃の行いがいいからよね)と、自分の都合のいいように信じることにした。
数時間切れる、復活する。半日切れる、復活する。という状態がしばらく続いた。
が、ついに神のご加護を失ったらしく、数日たっても復活することはなかったのである。

「電話線が切れちゃった」と会社で話したら、みんな痛ましそうな顔をした。
「憧れてた人にあっさりふられちゃったのよねー」と言っても、
「あー、またなの。よく、ふられるね。あなたって、性格悪いもんね」などと、相手にされないが、今回は死ぬほど同情された。
「ボイラーが壊れた」 「トイレが水漏れする」 「電気の接触が悪い」など、何か修理が必要なときは、

「よって、八丈島に島流し」という宣告を受けたのと同じ。

これから、辛く、不便で、気が狂いそうなほど長い、長い、長い、日々を覚悟しなければならない。イギリスに住む日本人なら、この気持ちがわかるだろう。

まるで、「部族間の抗争により、村落ごと焼きうちに遭った。家が元通りになるのは一体いつになるやら」というくらいの深刻な出来事であり、遠い目をして自分の不幸に向き合わなければならない。

まず、床にがっくりと膝をつき、 「なぜ、なぜなの? どうして私がこんな目に・・・」と嘆き、涙をこぼしながら、イエローページをめくった。
「電話線が切れたら」の項を読む。まず、 「BTのせいで切れていたら、ただで直すけど、わざわざ修理に行ったのに、お宅の電話のせいだったら、お金をもらうからね」という脅し文句が書いてある。 「それがいやなら、まずチェック」という項目をひとつずつ確認していく。 「プラグがはずれていませんか? バッテリーが切れていませんか? 等々」「どれをやってもダメだったら、BTに電話ください」というところまでたどり着いた。

―――さて、電話線が切れているのに、どうやってBTに電話をすればいいのか?

で、携帯電話の登場だ。だが、ちょっと待てよ。
プレペイドの残金をチェックすると9ポンドしかない。
「あ、BTさん? 電話線が切れたんですが、修理に来てもらえますか? 住所はね・・・」と簡単にいくわけがない。
「ただいま、混み合っております。オペレーターにおつなぎするまで、少々お待ちください」というメッセージが延々と続くだろう。 「グリーンスリーブス」を500回くらい聞かされ、耳のタコがゴルフボールの大きさになるだろう。
オペレーターが出る前に、残金がなくなり、携帯電話の会社からも見放されて、突然、プツッと切れるのは明白だ。

そこで、友人に助けを求めることにする。商談をまとめるのが得意な友人で、ソフトなアプローチながらも、自分のゴールに誘導していくのが上手だ。
私のためにBTと交渉するために生まれてきたような人じゃないの!
「ああ、いいよ」と親切にも引き受けてくれた。
「後で連絡するから」と言うので、1時間ほど待った。
「いやー、オペレーターにつながるのに20分かかったよ」と友人。
―――やっぱりね。
「今日は土曜日だから無理だけど、来週の月曜に修理の人を寄こすって」
ま、そんなもんでしょ。でも、本当に来るのかな?
「たぶん、外の線の問題だから、家で待ってなくてもいいらしいよ」
それなら、いい。会社を休んで、エンジニアを待った挙句、すっぽかされたくない。

しかし、事態は意外な展開を見せた。(大げさだが、次週に続く! 乞う、ご期待!)

投稿者 lib : February 14, 2008 08:03 PM

コメント

在英10年、現在はイギリスの地方都市に住む者です。 十貴川さんのこのブログ、たまたま見つけたんですが、面白くてアーカイブを一気に読みました。 とくにこの「八丈島」の一節は、似たような経験があるだけに、涙流して爆笑しました。

話しは変わりますが、ロンドンから引っ越して早や8年、なにかにつけて(イギリスの)中心はロンドンだと痛感します。当たり前といえばそれまでですが。
ロンドンに戻りたいなぁ。 物価高いけど。

投稿者 UK resident : October 18, 2009 11:45 PM

ニューヨーク旅行の話の後は、 「壮絶、ブリティッシュガスとの4ヶ月の戦い」 について、お送りいたします。 ほら、題名だけで涙が浮かぶでしょ? ロンドンの物価の高さ、笑い事ではないですよね。 先日もタクシーに10分乗ったら、50万円取られました (嘘)。 たまにはロンドンまでお出かけください。 ネルソン提督も鳩と一緒に広場で待っています。

投稿者 十貴川 洋子 : October 21, 2009 01:38 PM

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