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February 14, 2008

I’m a teacher, GET ME OUT OF HERE!

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ちょっと不思議なタイトルで始めてみました。「俺は教師だ、ここから出してくれー!」とでも訳せばいいでしょうか。

これ、実はFrancis Gilbertという人の書いた本のタイトルなのです。イギリスに住んでいる人は気づいたかもしれませんが思いますが、このタイトル、「I’m a celebrity, get me out of here!」というリアリティTV番組のタイトルとかけています。このTV番組は、芸能人たちがジャングルのなかで様々な課題にチャレンジしながら生活する様子を番組にしたものです。かなり気持ち悪いチャレンジ(生きた虫を食べるとか)をさせられるので耐えられなくなる芸能人もいます。イギリスでは芸能人の意外な一面が見られるのでなかなか人気のある番組です。

さて、本題の「I’m a teacher, GET ME OUT OF HERE!」ですが、Francis Gilbertはこの本の中で、新任教師として働いたロンドンの都市部の学校(Inner-city school)での出来事を綴っています。国で1,2を争う問題校(英語ではOne of the worst schools in the countryと書いてあります)として名高かったというその学校での彼の体験談は衝撃的で、問題行動ばかりの生徒との関わりだけでなく、同僚たちとの関係の難しさなど、学校でおこる出来事を素直な視点から書いており非常に面白いです。彼は「問題校で教壇に立つということ」を「ジャングルで生き残らなくてはならないくらいの大変な状況」だと捉えてこういうタイトルにしたわけですね。

同じくInner-city schoolsで教育実習のときから教えてきた私には彼の体験には共感できる部分もたくさんあります。特に難しい生徒とのやりとり・対応など、似たようなことを目にすることはありますから。

実は今日の職員会議は「Behaviour policy review」でした。日本でいう生徒指導はこちらではPupil managementやBehaviour management(生徒管理、行動管理とでも訳せるでしょうか)と呼ばれます。今日の会議の目的は、このBehaviour managementに関する学校の方針、生徒に守らせるルールについての見直しを話し合おうというものでした。私の勤務校のように都市部の公立ではBehaviour managementが学校経営、そして個々の授業を進める上で大変重要な部分です。こういうと語弊があるかもしれませんが、授業中で生徒を「操る(Control)」ことができなければ、授業自体が満足に進みません。いわゆる日本の「学級崩壊」のような状態になってしまうわけです。

私の勤務校では悲しいことですが向学心の薄い子供たちも多くいます。ボールペン一本すら学校に持ってこない子供もいます。そんな彼女らを前に私は「さぁ、面白いことやるわよ!」と場を盛り上げ、「えらいわね、今日は言われなくても自分の席につけたわね、静かにしていられたわね」とどんなに小さいことでもすかさず褒め、それでも問題行動があったら「いうこと聞いてないと居残りよ」、「親に電話するわよ」と警告を与えたり叱ります。時には怒っている「振り」もします。演じるわけです。褒めて叱って、また褒める、そんなことを毎日繰り返しています。

こちらでは教師はほとんど口をそろえて「教師は演じるのが仕事だ」といいます。私自身も教師としての経験が長くなればなるほど納得する言葉です。どんなに理不尽な状況にあっても、侮辱と取れるようなことを言われても、その場では自分の感情をうまくコントロールし、子供の心理を探りながら冷静に指導できなければ子供はさらに難しい行動を取ったりするものなのです。

ましてや(いい意味でも悪い意味でも)自分本位であること、権利を主張することに長けた社会で育っているティーンエイジャー達、自己主張や要求も激しいです。思い通りにならなければまるで3歳児のようにとことん駄々をこねる子供、感情を爆発させる子もいます。我々教師は、そんな彼女らにも他人へのRespect(敬意・尊重)や配慮、ルールに従うことの大切さを日々教えなければならないので大変です。

私も最初の1,2年は「なぜ、自分の半分の年数しか生きていない子供たちにこのような屈辱的な行動を取られなければいけないのか」と放課後ひっそり泣いたこともありました。そういう時、同僚たちは必ず「Don’t take it personally(生徒の発言・行動を自分への個人攻撃だと考えるな)」と言います。子供たちは集団化すると特に教師を普通の感情のある一人の人間だと見ず、攻撃的になることがあります。それを真に受ければ精神がもたないのです。私は東アジア人・英語がネイティブではないというコンプレックスから来る自信の無さに加わって、最初のころは生徒の言動にいちいち反応して自分を追い込んでいたように思います。

と書き連ねてみると私がどれほどひどい環境にいるのかと心配される方もいらっしゃるでしょう(笑)。でも、ご心配なく!色々な表情を併せ持つのが子供たち。もちろん、フレンドリーで優しく、素直でかわいい一面やすごくユーモアのある面白い一面もあるのです。それが一日、一時間ごとに変化するカメレオンのような存在なのです。そんなエネルギー満点の彼女らと接するのは並々ならぬパワーがいりますが、それでも教師を続けたいと思うのは彼女らが時折見せてくれるかわいらしさや突拍子の無さに魅了されているからかもしれません。


投稿者 lib : February 14, 2008 08:41 PM

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