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July 06, 2009

あれから5年。

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ちょうど5年前の6月半ば。

無事に教育実習も課題も終えて、教職課程(イギリスではPGCEという)はあと1,2週間で終了という段階。

それなのに、、、。

私の就職先はまだ決まっていませんでした。

ビザが切れるのは7月31日。

そう、あと1ヶ月ちょっとで仕事が決まらなければ、大学院での勉強が終わってから、イギリスの教員免許取得のために2年も滞在を延長した意味も虚しく、帰国せざるを得なくなる状況だったのです。

コースの仲間たちが次々と就職を決めていく中、10校くらい面接に呼ばれても採用とはならない私。

まさに崖っぷち。

駄目かもしれない、、、と思い始めていた頃、指導教官だった恩師Rに受けてみなさいと言われた学校に応募する(この学校、のちに実は今住んでるところから結構近いと気付く)ことにしました。

無事、面接に呼ばれ、授業(普通、前々日くらいにトピックを与えられ、面接当日に20-30分ほどの授業をやらされる。もちろん、本当の生徒の前で)も面接も終わって、かなり手ごたえを感じた私。

学校の雰囲気もすごく気に入ったので、期待を膨らませていました。

ところが、何と一緒に面接を受けていたコースメイト(しかも同じTutor group)のSがその学校での就職を決めたのです。

、、、正直、これで私は日本に本帰国だと思いました。

それまで散々経済的に援助を受けていた親からは「就職も出来るというから、滞在延長を認めたのに、、、」と言われ、本当に何も言えず。すでに少しずつ、日本に帰ってからのことを考え始めていた私でした。

ところが、その後再び恩師Rが「東ロンドンの女子校で募集がある。私の去年の教え子がそこで教えている。あなたと相性の良さそうな学校だから受けてみなさい」と声をかけてくれたのです。実は、この学校が今の勤務校。

無事面接に呼ばれ、当日、その学校へ向かった私。受けに来ていたのは私も含めて5人。、、、そのうち一人はアメリカ人で他の人は全員イギリス人だったと思います。

その中の一人は、いかにも自信があって仕事の出来そうな若いイギリス人の女性。言うことも明確。やる気もある。内心、この子が「Strongest candidate」だと思いました(実際、学部主任は彼女を推していたようです)。

がけっぷちの私は、はっきりいって心臓ばくばくで胃もキリキリでしたが、20分の授業に臨みました。その時に与えられたトピックは大航海時代の貿易について。

絵と文の入ったカードを作って、授業では生徒たちがそのカードの情報を使って、「なぜ、世界貿易が発達したのか」を説明するという、Causal explanation(因果説明?)のスキルに焦点を当てたものにしました。

すごく緊張していたものの、生徒はよくついてきてくれたので授業はやり易かったと思います。

そして、昼食。サンドイッチを食べたものの、緊張で味覚がおかしくて、全然味わえなかったのを覚えています。そして、それからはひたすら、自分の面接の番を待つことに。

実は順番が最後だった私。どのくらい一人、スタッフラウンジで呼ばれるのを待っていたのでしょうか。あの時間はかなりつらかったです。

「あなたの番よ」と同僚H(今は退職)に呼ばれ、面接会場の会議室に入りました。

そこには4人の面接官が(っていっても、今思えば教頭Aをはじめ、全員私の同僚だったのですが)。 用意されていた質問は6つくらいだったでしょうか。それに一つ一つ何とか答えていく私。

実は、あの頃は英語が今よりずっと下手で(今でも面接は大の苦手!!!)、なかなか瞬時に自分の言いたいことを言えないことがありました。

さすがに10校以上面接を受けていた私は、ちょっとはコツを掴んでいたものの、この面接では少しでも伝わるように実習校で教えてた時に作った学習指導案と教材などをフォルダーにまとめておいたのです。

いくつめの質問だったか忘れましたが、たしか、授業計画に関する質問をされて、すかさずフォルダーの中身を披露。

崖っぷちだったので、あの時はもう恥ずかしさもためらいもなにもなく、フォルダーの中身を見せて、必死に自分を売り込んだように思います。

ところで、面接の最後の質問は決まって、「もし、オファーを貰ったら、承諾しますか?」というもの。

もちろん、「はい」と即答した私。

面接後はもう、とりあえずやることはやったと開き直り。

でも、、、あのイギリス人の女の子とのことが頭にちらついて自信はありませんでした。事実、学部主任は彼女を推したかったらしいのですが、彼女の契約開始可能な時期が学校側の希望と合わなかったらしいです。私にとってはまさに幸運でしたが。

ところで、教員試験の凄いところはその日の夕方に結果が分かってしまうこと。 普通、面接後に校長や学部主任などが集まって会議で採用者を決めるのです。

その時も結果は6時くらいに電話で知らせるということだったので、当時住んでいた北ロンドンの家で連絡を待っていました。 家にいたのは私とフラットメイトのE。

キッチンで突然鳴り響く携帯。

私の心拍数、一気に上昇。

ぽちっ、と応答ボタンを押す私。 電話してきたのは教頭のAでした。

しゃべりだした彼の声の調子でこれは駄目だと思った私。

そしたら、次の瞬間。

「あなたにこの職をオファーしたいけれど、承諾してもらえますか?」

、、、、。
、、、。


一瞬、頭真っ白になった後、私は思いっきり叫んでいました。

「ぎゃーーーーーーーーーー!」(実際、なんて叫んだか覚えてないのですが)

たぶん、教頭Aは相当驚いていたでしょう。別にオーディション番組で優勝したわけではないんです。教員の職が得られただけで、そんな反応するイギリス人は普通いないですからね。

電話を切った後は、フラットメイトEに抱きついて興奮状態で半泣きになりながら報告。

いや、今考えると恥ずかしいです。

でも、それまでの人生の中で一番、衝撃的で嬉しかった瞬間だったことは間違いありません。大学合格した瞬間なんて比ではなかったのです。まさに人生のTurning point!!!うきゃぁぁぁ~~~って(文字では表せない)感じでした。

なにせ、これ駄目だったら日本行きの航空券買わなきゃいけませんでしたから。

それからの1年間、正直、「なんでこんな無謀なこと(イギリスで教員になること)したんだろう」と泣きまくったことが何度も本気でありました。やりきれなくて、放課後の人のいない教室でロッカー(あ、生徒のじゃなくて自分のですが)を蹴ったことも本気でありました(って、自分がティーンネイジャーのようですね。笑)。

最初の頃、9年生の授業なんて地獄でしたよ。一部の生徒が恐ろしい悪魔にみえたくらいに。

気づいたらあれから5年経っていました。やんちゃな生徒でも私なりの愛情(?)を感じるようになりました。生徒といい信頼関係を築けることが多くなりました(それでもたまに裏切られますし、あまりの理不尽さに怒りで血管切れそうなことありますが)。

でも、難しいこと、嫌なことがある度にあの感動を忘れちゃいけないと自分に言い聞かせています。

実際仕事をする中で、いろんな面で不満があったとしても、私にこの国で自立する機会を与えてくれたこの学校には一生忘れられない恩があります。

そして、恩師のRとP(Pは修士課程の担当教官)、両親をはじめ、当時支えてくれていた人には感謝しても感謝し足りないのです。

2009年。永住権を申請するこの夏は5年間を振り返るいい節目となりました。

永住権取れればいざという時(考えたくないけど、職を失う、とか)の保険になると、それを支えと目標にやってきたのです。

長い道のりだと思ったけど、気づけばあっという間でした。

これからどんな選択を自分がしていくか分かりませんが、でも、とりあえず、これで一息つけるかな、と思っています。

投稿者 lib : July 6, 2009 12:45 PM

コメント

こんにちは。

偶然、こちらのサイトにお邪魔して以来、ブログを毎週拝見させて頂いてる、一度もイギリスには行った事のない30代のOLです。

思い返せば小学生の時に、くまのパディントンを読んで以来ずぅっとイギリスに思いを寄せています。
ある出来事をきっかけにその思いが強くなり、イギリスを訪れてみたいと本気で思い今は節約中の日々です。

いつもお仕事に対する姿勢に尊敬しながら読ませて頂いています。
今回の内容にとても心が打たれたので初めてコメントさせて頂きました。

長い文章になりすみません・・・

大変なお仕事ですが、お体に気をつけて頑張って下さいね(*^_^*)

投稿者 うさこ : July 7, 2009 05:31 AM

うさこさん、
心温まるコメント、ありがとうございます。どこかで私の文章を読んでくれて、何かを感じてくれている人がいると思うと勇気が湧きます。

イギリスにご興味があるとのこと。この国、特に私の住むロンドンは色々な意味で飽きない街だと思います。ちょっと歩けば歴史の詰まった通りや建物があり、さまざまな人種、宗教、民族、文化に出会えます。古いものだけじゃなくて、いつも何か新しいものに出会える可能性を秘めた場所だと思います。

うさこさんの絶え間ない努力が実って、一日も早くイギリスの地を踏まれる日が来ることをお祈りします。頑張ってください!

そして、これからも私のブログを読んで頂けたら幸いです。

投稿者 月子 : July 7, 2009 11:11 PM

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