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February 22, 2012

ロンドンファッションショー

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私はファッショナブルではない。 

暑さをしのぎ、寒さを防ぐ。 脱ぎ着が楽。 洗濯に手間がかからない。 と小学生の体操服のような機能を信奉している。 会社では地味なスーツ、家ではジャージ、ただし、パーティだけはド派手で下品なドレスが基本だ。 トレンドは追わないが、季節を追わざるをえないのは長袖と半袖を交換する必要があるためである。

そんな私がファッションショーに誘われた・・・。

残念ながら、ロンドンファッションウィーク (LFW) の最前列での鑑賞ではない。 行ったのはファッション 「トレード」 ショー で、PURE LONDON というイベントだ。

1100社 (主催者発表)ものファッションメーカーが、2012年秋冬物の商品を展示。バイヤーを迎えて商談をするそうである。 業界の人のための催しだが、キャットウォークもあると聞き、ファッションに縁遠い私も怖いもの見たさに出かけてみた。

誘われたとき、正直、気後れした。 ファッション業界の人の集まりに、いったい何を着ていけばいいのか? 「何、あの服?」 と後ろ指をさされ、石を投げられたりしないだろうか? 「ダサい女は来るな」 とステレトゥの鋭いヒールを頭に突き立てられたりしないだろうか? 

「商談にしか興味ないから大丈夫だよ」 と友人。 
「何とか自分の製品を売りつけようとして、メーカーはバイヤーと見ればガンガン声をかける。 声をかけられてもバイヤーじゃないといえば、すぐに開放してくれるから」 とのことである。

入場の登録をしてもらった。 最初は友人のアシスタントのふりをしようとしたが、トレードショーなので、名前の他に役職名と会社名が記載された名札をつけさせられる。 友人の会社名を使うわけにも行かず、ファッションに関係のない 「個人」 とした。 ま、声をかけられなくていいか・・・。

展示会場のオリンピアはウエストフィールドショッピングセンターも顔負けの広さ。 店がぎっしりと立ち並んでいるので、全体を見渡すことはできないが、歩いても歩いても歩いても会場の端まで行き着かない。今日だけは、バイヤーもファッションよりも歩く距離を考えているらしく、全員がフラットシューズだ。 

メーカーの展示は仮設店舗としてブティック風に飾られている。 会場のど真ん中に君臨する10畳 (たたみで広さを示すと、わかりやすいでしょ?) クラスの店から、屋台のようなサイズの店やトイレと壁にはさまれた、しけた場所での出店もある。 

大きな店には 「クリエイティブなんです、私」 という雰囲気を漂わしている50代くらいのデザイナー、「商談まとめます、私」 とキリリとした顔つきでコンピューター前に座る実務担当 (30代くらい) とそのメーカーの服を着て、「日払いです、私」 とニッコリと立っているモデル (20歳前後)がセットになって待機している。 

デザイナー、実務担当、モデル、の順に年齢に反比例して背が高くなっていくようだ。 

モデルのおねえさんたちは170センチプラスの身長に15センチのヒールを履いていて、キリンさんのようである。 バイヤーを求めて、目がキョロキョロと忙しく動いているメーカーさんに比べ、キリンさんだけは 「今日だけの仕事だしー」 とのんびりした雰囲気だ。

ファッション業界なので、会場内にデブは皆無である。 普通に道を歩けば、4割 (控えめな数字)がデブ傾向にあるイギリスにおいては異常な光景だ。
 
今年流行のシルバーヘア(つまり白髪。 白髪を隠すための白髪染めでなくて、白髪に染めてある)も目に付く。 白というよりは、銀髪か灰色っぽく仕上げてある。

やっぱり、皆 カッコいいなあ、ファッション業界の人って。 めだってないだろうな、私、・・・悪い意味でだが・・・。 人が集まるところは本来得意なので、ウキウキしてはしゃぐことが多い私だが、もう少し服装に気を配ればよかった、と気弱になり静かにしていた。珍しいことである。

フットメーカーのエリアでは (ずいぶん安物の靴だわ・・・・) と思われるのではないかと不安になり、思わず足早で通り過ぎたりした。

「ええっと、これで20000ポンド」 「残りの予算は・・・・」 「じゃ、これを200ユニット」 「納期は・・・」 いった会話を聞いた。 また、会場の写真を撮った人にスタッフが文句を言っている。 写真からデザインだけ盗まれてコピー商品を作られるのを心配しているのだ。 しばらくもめていたが、結局、カメラから写真を削除させたようだ。 

突然、友人の顔が紅潮した。 

「Kat Von D だ。 ほら、 彼女のデザインの服を売り出してる」
「誰? Kat 誰?」
アメリカ人で有名なタトゥーイスト (刺青? 入墨師、だよね?)らしい。 テレビ番組もやっているとか。 背中、肩、腕、脚はもちろんのこと、顔すらも額から横顔にかけて入墨が入っている。 きれいな顔をしているけど、堅気ではない凄みがあるな・・・。

「彼女と一緒に並んでくれる? 写真が撮りたい」 と友人。

なぜ私が彼女のような 
(1) 小顔で細身の美人
(2) その筋の人よりも入墨の面積が広い人 

の横にいかなければならないのか? ・・・特に (1)がひっかかる。

ラッキーなことに、商談なのかファンなのか、ずっと人に囲まれていたので、友人は彼女に声をかけることができず、しぶしぶ諦めてくれた。 

大手のメーカーの店では、宣伝のためにブランド名入りの大きなバックを配っていた。 そろそろ帰ろうということになり、急にほっとした私は、あちこちの店から図々しくバックをかき集めてから、家路に着いたのであった。

小学校の体操服では太刀打ちできない世界もある・・・・。

投稿者 lib : February 22, 2012 10:42 AM

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