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October 27, 2005
携帯電話 その1
乗り物の中の携帯電話は嫌いだ。
大声で意味のないことをペチャペチャおしゃべりされるのは迷惑だ。しかし、それはせいぜい耳障りなくらいで、それほど罪はない。
いやなのが、プライベートな話題を無理やり聞かされることだ。
若いインテリ風の女性、声は抑えていたが内容が内容なだけに、つい耳を傾けてしまった。どうやら親が病院で死にかけているのだが、見舞いに行くことを拒否しているらしい。
「あの人が私をどれだけ苦しめたのか、知っているでしょ? たとえ親でも会いにいくつもりわないわ。死にそうだからって何なのよ? もう5年も会ってないのよ。今さらどうしようもないわ」
周りの乗客はシーンとしている。
しかし、彼らの思いはわかる。
(親の死に目に会いたくないというほど、いったい何をされたのだ?)
きっと、私が考えていたことと同じだと思う。
そこまでプライベートな話をするなら、全体像をみせてくれないだろうか? 不親切だ。
先日は30歳くらいのサラリーマン。
ボソボソと話す感じから、余り楽しい話ではないらしいが、はじめは気にも留めなかった。
「今は電車の中だ。かけなおすから」
何度もそう言っているが相手が切らせないらしい。
「じゃ、二度とその男と会わないことを約束するんだな!」
そんな声が聞こえたので、彼を囲むシートの3人はいっせいに沈黙。
一人は新聞のパズルを始め、もう一人はいままでパラパラとめくっていた雑誌を熱心に読み始めた。不幸なことに私は読むものがなく、英語のわからない外国人のふりをしてぼんやりとするしかなかった。
「僕たちはお終いだな。もう話すことはない」
そう言いながら、なかなか電話を切らない。
周りの乗客にどれだけ緊張を強いているか、わかっているのだろうか? 早く終わりにしてほしい。
ああ、やっと切ってくれた。
と、携帯が鳴る。
メッセージが入ったらしい。顔をしかめる男。
一瞬、天井を眺めると、自分もメッセージを打ち始めた。
また、携帯が鳴る。男もメッセージを返す。
それが何度も繰り返された。
今度は電話が入った。
「ハロー?」
しばらく、真面目な顔で相手の声を聞いている。
なぜか男の表情が少し緩む。
「じゃ、後でね」
??? 仲直りしたのか?
男が私の駅よりもひとつ手前で降りる。
できることなら、彼についていって、恋の結末をこの目で見届けたかった。
投稿者 lib : October 27, 2005 08:20 AM