January 30, 2006
スピーチ・セラピー その3
スピーチ・セラピストは息子の家庭や外での遊び方、他の子供との係わり合いなどについて聞いてきた。
質問に答えていると、傍らで黙々と遊んでいた息子が、大好きな機関車トーマスのおもちゃを持って来た。
「け?」と言いながら私に見せる。
「ああ、トーマスね。」と言うと彼は満足して戻っていった。
話を続けていると、次にトーマスの友達のジェームスを連れてきた。
また「け?」と言うので「ジェームスだね。」と答えると、また安心して戻って行った。
これを数回繰り返した。息子が一つずつ持ってくるキャラクターの名前を私は次々に答えた。
「すごいわ!名前を全部覚えているのね!私にも息子がいるけど、とても覚えきれないわ!」
私たちのやり取りをじっと見ていたセラピストが褒め称えてくれた。
トーマス名前当てクイズに来たんじゃないんだが。私が褒められてどうする。
しかし、私がトーマスと仲間達の名前を完璧にマスターしているのは当然である。
なぜなら、息子は自分で言葉を言えないにも関わらず、なぜかトーマスのキャラクターの名前は全部覚えていて、絵本を見たり、街でキャラクター製品などを見かけるたびに、私にその名前を当てる事を課すのであった。「け?」と言われたら3秒以内に正解を述べなければならない。
これが難しい。
例えば、赤い機関車はジェームスだけなので簡単だ。
しかし問題は青い機関車たちだ。登場頻度の高い、トーマス、ゴードン、エドワードは皆同じ青。横から見れば大きさや形が違うし、車体についている数字で分かるのだが、平面図で、正面を向いている場合はどうやって見分ければいいのか見当がつかない。
で、当てずっぽうに「エドワード」などと答える。しかし、これが外れていると息子が途端に「キーッ!」と不機嫌になる。
「え?違う?じゃあトーマス?」
「キーッ!」
「ゴ、ゴードン?」
・・・・当たったらしい。満足げに微笑む息子。よくよく見ると、確かにちいーさな字で‘Gordon‘と書いてあったりする。こんな小さな、ヨーグルトのフタなどに印刷されている絵で、どうして分かるんだ。つくづく幼児と言うのはあなどれない。
とにもかくにも、このような厳しい訓練を乗り越えてきた私である。
おもちゃのような立体物(=数字も大きさもわかる)はお茶の子さいさい・・・・。
思わぬところでセラピストに優越感を感じ、鼻息を荒くする私に、息子が次の課題を持って来た。
「パーシー。」
私は余裕で答えた。
(パーシーは同じ緑のヘンリーと間違えやすいので要注意だ。)
セラピストがしばらく考えていたようだった。
「ああ、『Percy(プァースィー)』ね!」
「Percy(プァースィー)・・・・・」
思わず反復してしまった。うう、こんなところで詰めの甘さが露呈するとは。
どんでん返しの敗北である。
だから私が勝負に来たんじゃないんですってば。
投稿者 lib : January 30, 2006 09:40 AM