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January 26, 2006

狐つきの家

career2.gif  ロンドンから南に下った郊外に住んでいる。

郊外といっても住宅街なのだが、ロンドンの中心に比べると緑が多く、庭の大きさもゆったりとしている。そのせいか野生の生き物も多い。

夕暮れに家路を急ぐと、道を横切るペルシャ猫が一匹。
いや、猫よりは大きいな。 犬か? でも、尻尾がふさふさと・・・。
あの特徴のある尻尾は確か・・・マッコウくじら? 違うな。 
たぬき・・・ではなくて、きつねか? きつねだ。

きつねといえば、ロマンティックなイメージがあった。
たとえば、お使いに行く子ぎつねを心配する母ぎつねの愛「手袋を買いに」の話。あるいは過酷な大自然に生きる「北きつね物語」。

このふたつを合わせると、

子を呼ぶ母きつねの声が、北の大地の冷え切った空気に響く。
――コーン、コーン、コン、コン。
(坊や、早く帰っておいで。吹雪が来るよ!)
―― コン、コーン!
(はい、お母さん。今、帰るよ)

大自然の中で繰り広げられるロマンと親子の愛、のはずだ。

なのに、住宅地を犬猫のようにチョロチョロされると、何だかなあ・・・。おまけに生ごみをあさっている。
これだと、「野生のきつね」というよりは、「野良きつね」ではないか。

鳴き方も、はすっぱで下品な感じだ。
―― ギョン、ギョーン、ギョン!
―― クワッ! ギョン、ギョーン!
犬が風邪で声を嗄らすとこんな風だろうかと思わせる、耳障りな、いがらっぽさがある。

呼び合い通信の内容は、
(アカシア・ロード、3番地に生ごみ発見。昨夜の残りのフライド・チキンと思われる)
(了解。現場に急行する)

てな、感じか。

私の家の庭にもよくきつねがやって来る。
暖かい日には昼寝をしているのだが、このきつね、ノミでもいるのかあちこちの毛がまばらに抜けていて、尻尾なんか向こう側が透けて見えるくらいの情けなさ。
ふさふさの尻尾のないきつねはカンガルーに似ていることを発見した。

これが、毛並みの良いかわいいきつねなら、「コンちゃん」などと勝手に名前をつけて、餌を置いたりしてもいいのだが、しょぼくれて貧相な姿を見ていると、何でこんなのが私の庭にいるのかと気が滅入るばかりだ。
(貧乏臭くて、いやだなあ)というのが正直な気持ちである。

(どこか他の家に行ってくれないかな)と、こっそりパンくずを隣の家の庭に投げ込んでいる。

投稿者 lib : January 26, 2006 08:13 AM

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