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April 27, 2006
パスポートコントロール その2
ビザの裏書が読めないのは私のせいではない。
「何年間も出入国を繰り返し、10人以上の入国審査官がこのビザを認めています」
そう言って、私はパスポートの他のページをパラパラとめくった。
彼の顔に動揺が走る。
他のページに山ほど押されたスタンプをよく見ていなかったらしい。
「それでは、他の10人の入国審査官は、みんな判断を間違っていたのですか?」
「・・・・・・・・そうです」
これではダメだ。
イギリス人が一旦、意地を張るともう進展はない。 自分が間違ったと気づいても、持論を撤回しないからだ。
「それで、私はどうすればいいのですか?」
「クロイドンにあるホームオフィスへ行って、きちんと手続きをやり直して下さい」
はい、はい、はい、はい。 わかりました。 (はい の数がやたらと多いときは、納得していないときだ)
私はパスポートを受け取って、ユーロスターに乗った。 いつまでももめていると、駅の売店で買ったベルギー特産のチェリービールがぬるくなってしまう。
役人といえど、しょせんは万事がいい加減なイギリス人。
私は審査官の話を真に受けて、ホームオフィスまで行き、難民と一緒に長蛇の列に並ぶような小娘ではない。
イギリスに帰ると、新旧のパスポート全ページと永久ビザが出たときの書類一式のコピーを用意した。 君たち公務員の給料のために幾ら税金を払っていると思ってるんだ、と給与明細書も添付しようかと考えたが、それは思いとどまった。
「ユーロスターの入国審査にいたスカタンが、いちゃもんをつけたので、何とかしてくれ」という内容の手紙をホームオフィス宛に書いた。
まあ、文面はそこまで露骨ではなかったけれど。
数日たって、ホームオフィスから会社に電話があった。
上品な英語を話す、感じのいい女性である。
「特別な手続きの必要はありません。 すべて合法的に整っています。 もちろん、ホームオフィスまで来る必要もありません。 担当官の勘違いでしょう」
(末端の職員にも、きちんと職務のイロハを教えとけ、このボケ!) と思ったが、思っただけで言わなかった。 当然だが。
「迅速な対応を頂き、ありがとうございます」と言って電話を切った。
「え? 手紙と電話だけで解決したの? ホームオフィスまで行かないの?」 と残念そうなのは私のボス。
「君が強制送還されたら、18歳くらいのピチピチした、優しい女の子を新しいアシスタントとして雇おうと思っていたのに」
投稿者 lib : April 27, 2006 07:59 AM