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June 01, 2006
酔っ払い
イギリス人は日本人に比べると酒に強い。
これはアルコールを分解する酵素の含有量の違いだそうだ。 ランチタイムにパブで軽く1、2杯ビールをひっかけても平気な顔をしているのでもわかる。 パイントグラスは半リットル近くあるから、空腹時に1リットル飲んでも大丈夫ということか。
でも、まったく酔わないのかといえば、そうではなくて、大量に飲めばやはり酔っ払いができあがる。 その行動も酔っ払い独特のものである。
元々の性格がパワーアップされ、しつこい同僚は同じ話を何度も繰り返すし、女好きの同僚は近くにいる女の人に、やたらと話かけて、迷惑な顔をされている。
酔っ払って信じられない行動を取るのはどこも同じ。
私の知る限り、一番すごかったのは学生時代の友人。 目が覚めたら部屋の中に黄色と黒のテープがトラトラに巻いてある棒がある。 よく見れば、数メートルもある踏み切りの竹ざおだ。 なぜ、そんなものが部屋にあるのか、まったく記憶にない。
前夜、何者かによって運び込まれていたようだ (何者というのは、たぶん本人)
ちなみに、この人は当時、某、芸術大学の学生で20歳の女性である。 それをどう処理したのかは聞き忘れた。
私が酒を飲み始めたのは数年前からだ。
おかげで誰もが持っている 「酒の上での武勇談」 とか 「若気の至りによる大失敗」 はない。 学生時代から飲んでいたら、どんなことになっていたのかは知らないし、知りたくもない。
きちんと分別のついている現在 (?) みんなと飲んでいる間は大騒ぎをしているのだが、帰り道でひとりになると自己防御機能が働くらしく、降りる駅を乗り過ごしたり、持ち物をなくしたことは一度もない。
実を言うと、親指と人差し指でまぶたを引っ張って電車に乗っている。 乗り合わせたイギリス人はギョッとした顔をするのだが、その時間帯の電車の乗客なら、酒に関しては私と同様の状態になっているので、すぐに見知らぬ東洋人の女の奇妙な行動には無関心になり、トロンと目を閉じていく。 (そんなことをしていると、寝てしまうぞ、いいのか?)
私は人の目を気にするよりは、乗り過ごさないという実務的な利益を取ることにしている。 (反論が多いかもしれない・・・)
酒を飲んだ翌朝にいやだなあと思うのが、記憶にない前夜の行動だ。
たんすの引き出しの中が整頓されていたり、メイク用のおしろいパフやブラシがきれいに洗ってあって、丁寧に並べて乾燥させてあったりする。
・・・いったい誰の仕業? もしかして、私?
当然のことであるが、ちゃんとお風呂に入り、パジャマに着替えて、歯磨きもすませて寝ている。
・・・本来の私は几帳面な性格なのか? 日ごろ抑圧されている、もうひとりの自分が酒によって解放され、黙々と部屋のかたづけをしている図を想像すると、ちょっと怖い。
さて、「帰巣本能」 は誰にでもある。
日本の場合、家に帰って靴を脱いだ瞬間に玄関で眠り込む、というのをよく聞く。 靴を脱ぐという行為が、「外と内」 の境界線を越え、無事に安全地帯に戻ってきたという区切りになるのかもしれない。
イギリス人は水を飲もうと思うのか、トイレに行こうとするのか、とりあえずバスルームまではたどり着くらしい。
朝、目覚めるとバスルームだった、というのが多いと聞いた。
なるほど、イギリスの七不思議のひとつ(本当は、もっとあるけど)
「なにゆえ、イギリスではバスルームにカーペットが敷いてあるのか?」 という疑問の答えがここにあった。
水を使うバスルームにカーペットは合理的でないと思っていたが、酔って帰った夜はこの床で爆睡することを考えれば、その理由が説明できる。
やはり、行動様式に合った家のつくりになっているのだ。 なるほどね。
投稿者 lib : June 1, 2006 08:51 AM