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November 09, 2006
ケンブリッジ大学の謎
友人の息子、M君がケンブリッジ大学へ進学した。
イギリスでは今でこそ大学へ進学するのは珍しくなくなったが、シティ勤めのお偉いさんでも50代以上の人は大卒でないことが多い。
口の悪い知り合いによると、
「シティの50代のジェントルマンなら、名家のボンボンが多い。で、オックスブリッジ(オックスフォード大とケンブリッジ大をあわせてこう呼ぶ)ならOKだが、それ以外の大学では行っても無駄、と親から進学を認められなかった。オックスブリッジに入れなかった男の子(女の子は花嫁修業『死語』か?)は親のコネのあるシティの会社で丁稚奉公をさせられたんだ」ということである。(ちなみにこの人もオックスフォード卒)
さて、友人はのんびりした性格で教育熱心には見えないが、M君はがんばり屋さんである。面接が中心だが、Aレベルという共通テストでもAの成績がたくさん必要だったらしい。もちろん、学校の推薦も重要だ。
彼は合格してから、イギリス特有の「ギャップイヤー」を使って、1年間、アルバイトをしたり、外国旅行をして、人生経験をつみ、1年遅れの今年の9月になって入学した。
ケンブリッジ大学といってもたくさんのカレッジの集まりだ。それぞれにカラーがあると思うが、彼のカレッジは2ヶ月授業があり、次の2ヶ月は帰省して家庭学習、1年のうち正味6ヶ月だけカレッジで授業を受ける、と変則的だ。大学では全員が寮生活。(部屋はシェアではなくて個人部屋)
この寮ではクリーナーが週に1度、部屋の掃除にやってくる。おまけにコンセルジュが24時間待機していて、郵便物を預かったり、調べ物をしたり、いろいろな用事をしてくれるそうだ。
学生の分際で何という高待遇!
先週、友人は数週間ぶりにケンブリッジを訪ねた。(仮装パーティのために「スクービードゥー」の犬の着ぐるみを持ってくるように頼まれたらしい)。M君は社交的な性格で早速たくさんの友だちを作り、親にクラスメートを紹介した。
「いやー、びっくりした。半数ぐらいの学生がすごい『変人』だった!」と友人。
新入生歓迎パーティが次々と開かれる中、どれにも参加せず、人づき合いもしないで部屋に閉じこもり勉学に励む留学生とか(まさに夏目漱石症候群)
紹介されても、ろくに口もきけず、他人と目を合わせることもできない対人恐怖症の男の子とか。いろいろいたらしい。
世界でもトップクラスの大学で秀才の集まりには違いないが、
「人格崩壊的なのがいっぱいいた」そうだ。
大学での自殺率も高く、特に論文を書く時期にはけっこう多いらしい。で、飛び降り防止のために上の階では窓があかないようになっているとか。
なんだか大変そうだ。
そういえば、私の知り合いのオックスブリッジ卒も極端なのがいるなあ。
ヘッジファンドマネージャーとか、企業案件の弁護士とかで大金を稼ぐ(うらやましい・・・)ピカピカのエリートがいる。かたや、家にこもってむずかしい本を読みまくり、書き物をしたり、研究したり。 ・・・で、卒業してから定職についたことがないタイプ。
後者のほうはちょっとたまらないなあ。まあ、学者なら世間知らずの変人で研究に没頭というのも許されるかもしれないが、オックスブリッジを出て、ひきこもりじゃねえ。
と言って、「働け!」とか「人生をなんと考えているんだ?」と責めても、頭脳明晰な彼らから理路整然と反論されそうで、タチが悪い。
このカレッジの「年間」の学費は1300ポンドで、寮費は1ヶ月300ポンドだそうだ。(ただし、EU外の留学生の学費は別枠でもっと高い) 現在、プライベートの寄宿舎学校の学費が「ひと月」で2000ポンド以上(40-45万円)だから、すごく安い。
どこの大学に進学しようかとお悩みの青少年に、ぜひ、お勧めする。(お勧めはしますが、合格の可能性についてのコメントは控えます)
M君は得意の語学を生かして、外交官志望らしい。3年間、大学で学んだ後は1年間、専攻した言語の国で暮らすことで卒業できる。で、その地への往復航空運賃と途中1回の帰国費用は大学持ち(つまり、税金から払うということね?)。
うーん、これがエリート教育というものか? 卒業したら、ひきこもりにならず社会に貢献してね、と納税者としてお願いしたい。
投稿者 lib : November 9, 2006 09:15 AM
コメント
たいへん興味深い内容でした。
ありがとうございました。
投稿者 kamiizumi : July 5, 2009 03:27 PM
ご丁寧なコメントで恐縮です。 ケンブリッジ大学ネタは今後も続きます。ご期待を!
投稿者 十貴川 洋子 : July 8, 2009 02:39 PM