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January 18, 2007

ロンドン塔でスケート

career2.gif 
会社の主催でアイススケートの会が開かれた。場所はロンドン塔の外堀 (水はない)に設えられた屋外スケートリンクである。団体用滑走券は1時間で10ポンドだが、そのうち参加費として5ポンドが個人の負担。一般料金はもっと高いかもしれない。

うちの会社はロンドン塔まで歩いて5分。5時半ごろから参加者は次々と着替えを始めた。
ジーンズにセーターとスポーツジャケットという姿であるが・・・。
女のほうはともかく、男の同僚のカジュアル姿のダサいこと、ダサいこと。
さっきまで 「シティのクールなビジネスマン集団」だったのに、今は 「ド田舎のむさ苦しい青年団」に成り下がっている。やだなあ、こいつらの服装センス。

私はイギリス男の 「ディナージャケット」と 「ビジネススーツ」は世界トップクラス(おしゃれ着はイタリア男やフランス男に負けるだろうからね)と個人的には評価しているのだが、彼らの 「カジュアルウエア」は世界最低グループに入れている。

アイスリンクまで数人の同僚と歩くのに、
「どうしたの? 珍しく静かだね」と言われたのは、
(寝ぼけた服を着た男たちと一緒に歩いているのを見られたくない)という思いがあったせいである。なるべく彼らから離れて足早に歩く。

タワーヒルの駅から地下道に下り、ロンドン塔に出るとスケート場が現れた。
ロンドンの冬の夕暮れ、ナイター施設の照明にアイスリンクはキラキラと輝き、まるで湖のようである。なんてロマンティックなんでしょ!

・・・と思ったのは浅はかで、湖のように見えたのは、実際に 「湖」状態だったからだ。
氷の表面を覆った水に 「さざ波」が立っている。
あの水たまりの上をすべるのか? ここで全員の腰がひける。

アルミのフレームにガラス戸、天井はビニールシートで、風が吹くと 「震度5」という仮設テントに入ったのが6時。早速、同僚はその中にあるバーに群がり、ビールだ、ジントニックだと飲み始める。

こら、スポーツ活動の前に酒を飲むな!

スケート靴を借りに並んだ。イギリス人のスタッフが暇そうにブラブラしているのに、混雑している貸し靴コーナーでは、東ヨーロッパ系らしいアルバイトが走り回っている。
その昔、植民地の労働力をイギリス人は搾取してきた。このごろは東ヨーロッパからの出稼ぎを働かせて、自分たちは遊んでいる。
大英帝国の頃の悪い癖がまだ抜けていないようだな。

さて、いよいよスケートだ。
実はこの日を楽しみにしていた。小学生のとき、スケートは得意だったのだ。
恐る恐る、氷の上に上がる。おおー、こわい。
私が小学校のころなんて、昔も昔、まだ男の人はチョンマゲを結ってたくらい昔の話だから無理もない。

運動神経は悪いくせに、イギリス人には妙に強固なチャレンジ精神がある。 
「スケート、生まれて初めて・・・」 と言いながらも、怖がらずに一生懸命やっている。
「子供の頃、スイスイ滑ってたんだよねー」と威張っていた私の立場はどうなるの?

手すりにしがみつきながら、一周する。まるで、シベリアの永久凍土の氷原を100kmも踏破したみたいで、足の筋肉がカチカチになった。
「ちょっと休憩・・・」とリンクから出る。

シティのビジネス街の高いビルを背景に、片側はテムズ河、一方は首をはねられた受刑者の怨念がドロドロとこもるロンドン塔・・・というユニークなロケーションである。
心細げな女の子を支えながら滑る男の子がいて、銀盤の初々しい恋人たちという雰囲気。
スーツ姿のままで滑っているお兄さんもいた。ころばない自信があるらしい。

いつまでも見学していてもしかたがない。もう少し滑るか、と思った瞬間、女の人が転倒して、後頭部を打つ。どこから現れたのか、赤いユニフォームの係員が彼女を拉致して・・・いや、助け起こしてリンクから連れ去った。
思わずテント内に逃げ戻り、その後の飲み会までこっそりと待機することにする。
なんだか悔しいなあ、思うように滑れなくて。

スケートが終わり、パブのドリンクではいつものきりっとしたビジネススーツ姿ではなく、田舎臭いジャージ姿の男たちに囲まれる。
「きょうはおとなしいじゃん」と言われたが、
(老けた貧乏学生みたいな格好の男たちと一緒に飲んでいるのを見られたら、私の評判にかかわる)といつもより口数も少なく、同僚から距離を置くのに必死な私だった。

投稿者 lib : January 18, 2007 09:20 AM

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