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February 20, 2007
kinn benn
Blog commentにて、ちょいと考える機会を頂戴した。
勤勉さということと、長時間働くこと、というのは相関があるよう
で実は無いはずだ。ドイツ人は勤勉だ、という(ちょっと古い)日
本での通説があるが、ドイツ人が長時間働いているかというと、全
くそんなことはないことは、僕の欧州での長い生活で知っている。
では、なにを持って勤勉と捉えるか。それは例えば作品だと思う。
ドイツが誇るメルシーデス。デザイナーやエンジニア達、そして販
売する人々や経営者の芸の細かい勤勉な仕事なしには、あのような
素敵な車は作れないだろう。そしてレクサス。我らがトヨタの自信
作、助手席にしか乗ったことしかないが、これも素晴らしい車だ。
なかなか他国では難しいかもしれないし、作ったとしてもコスト的
に合わず商売にはならないのではないか。両社共、勤勉な経営陣や
社員がこれらの作品を作っているのだと思う。
勤勉で、かつ長時間働くことを受け入れる日本人の美質・努力や、
それをささえる文化・教育無しには、あの奇跡のような日本の高度
成長はありえなかったであろう。しかし、日本の現在は、もはや高
度成長期ではない。ドイツもしかり、である。
Gパン屋の例を挙げたのは、勤勉のことではなく、過度の狭い競争
意識と、時間に関する(経営者の)無意識さに疑問を持つからであ
る。どう考えても夜中のGパン屋が高い利益率を維持しているとは
思えない。しかしながら、あるGパン屋が24H営業を始めると、
競合他店も当然これを検討するだろうし、実施するかもしれない。
こうしてGパン屋の24H営業という利益率の希薄な店があちこち
に現れる。これが長時間勤務に直接つながることはないのかもしれ
ないが、狭い過当競争に24H営業という精力を費やすよりは、昼
間の利益率向上や、品質・メニューの改善に知恵と時間をかけるこ
とにより、時間のゆとりが得られるのではないだろうか。何処かに
線を引いて、売上げは上がるがこれ以上GPR(荒利益率)を得られな
いなら、経営判断で止めちまうというオプションをなぜ取れないの
だろうか。僕の知っている限りでは、ドイツには24H営業のGパン
屋は存在しておらず、その違いは、経営者が競争力というものを、
ドメスティックな国内に限定して考えているのか、国際的な視野で
考慮しているのか、のあたりにあるのではないだろうか。
毎晩終電まで仕事せざるを得ない日本人が何%いるのか数字は持ち
合わせていないが、相当数になるだろう。知り合いの英国駐在員で
も大変な生活をされている方が多数に上る。Gパン屋の話はドメス
ティックな競争という課題で、僕の問題意識をさほどくすぐるもの
ではないが、問題は国際競争力である。
毎日終電や夜中まで仕事して、タクシーに乗って帰宅するまでの長
時間労働を前提にしないと、日本企業は国際競争の中で通用しない
のだろうか。よくよく考えて、本当にそうなのだろうか。その答え
がYESならば、遺憾ながら日本の経営者達が持つDNAの何処かに、欠
陥といえば言い過ぎであろうが、なにかそのようなものが存在して
いるのではないだろうか。日露戦争でいえば203高地とか、戦国
時代だと長篠の戦での無駄な屍の山を連想してしまう。太平洋戦争
に至っては触れたくもない。
後世から冷静に観察すると、当事の作戦司令部や殿様が、いかに馬
鹿だったと簡単に言えちゃうかもしれないが、当時の当人達は最も
よかれ、という判断だったはずである。現在も前途のように、現場
では長時間労働が行われている。これらの企業の経営者は、良かれ
と思っているか、やむを得ないと思っているか、いずれにしても生
産効率を改善をしようとしてはいないか、又は意思はあるが行動に
時間がかかっているのかどちらかであろう。
あまりのんびり野放しにして良い問題ではないと思う。
日本は少子化が進み、確実に急速に労働リソースが減ることが分かっ
ている。GDPは、0.1%でも良いからとにかく上向きであることが最重
要である。既に国際平均に比して極端に多い労働時間を更に増やし
てGDPを維持するのか、または生産効率を上げることに時間を割くの
か、これは政府云々というよりは、中小企業も含めた日本の経営者
達が多少でもマクロ的・国際的に考えるべきことなのでは無いだろ
うか。
投稿者 lib : February 20, 2007 11:37 PM