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May 03, 2007
蜷川幸雄ロンドン公演
蜷川幸雄のロンドン公演を観てきた。シェイクスピアの 「コリオレイナス」である。
演劇にはそれほど興味ないけれど、彼のロンドン公演は楽しみにしていて、これで3、4度目だ。35ポンドの席を手に入れた。
「超マザコンの不幸なローマの英雄とその非業の死」というよくある話である。シェイクスピアの作品でもあまり有名ではない。一応、あらすじや登場人物を予習してから行った。
「ニナガワ」といえばイギリスの演劇界での評価も高いようで、有名な俳優もたくさん見に来ている。 「ショービジネスのチャラチャラしたセレブ」ではなくて 「しぶい演劇人 - 自他とも認める演技派です」みたいな連中だ。
ハリーポッターの映画に出てた人とか、テレビのコメディ番組の常連とかの顔もある。
この日は緊張して早めに着いた。何せ 「恐怖の迷宮」バービカンセンターである。
コベントガーデンのロイヤル・オペラハウスとか、ウォータールーのロイヤル・フェスティバルホールに出かける日は普通の精神状態だが、バービカンセンターは
(何とか迷子にならないようにしなければ・・・。無事に会場に行き着けるだろうか?)
と、不安で一杯だ。
「ロイヤル」という言葉がついているのといないのでは、ここまで違う。さすがは女王様の威光 (ナビゲーションつき)だな。
開演の1時間以上前に着いたら、中のバーがまだ開いていない。
天気もいいし、テラスのテーブル席でワインを飲みながら時間をつぶすことにする。
あー、いい気分・・・だった、おやじが来て目の前でカレーを食べ始めるまでは。
おまけに私の風上だ。急にお腹が空いたが、もう時間がない。
さて、館内に入ると日本人でいっぱいだ。いつも日本人の割合がドワッと多いウィーンフィル以上である。サントリーホールか、ここは。
しかし、こうして日本人の女の人を見るとみんな本当にほっそりとしてきれい。
日ごろ 「ビア樽のようなイギリス女の軍団」・・・いや、私たちに比べて 「大きな体格で胴回りの肉づきが豊かでいらっしゃるイギリス人女性の皆様」を見慣れた目には
(わー、小さくてかわいい!)と思ってしまう。服装もおしゃれだしね。
「あらー、鈴木さん、お久しぶりー!」とか、「まあ、ミユキちゃんのママ、お元気?」
などと手をふりあう様子もほほえましい。
ただし、日本人女性の弱点として 「トイレが近い」のも露呈した。幕間の休憩での女子トイレの行列は 「食料をもらうために必死の形相で並んだ難民の群れ」状態だった。
私? もちろん並びましたよ。
4-5時間も平気でトイレに行かないイギリス人のほうが不思議だわ。
さて、蜷川氏の舞台。豪華絢爛な衣装と派手な装置がいつも楽しみだ。
今回の衣装は主役が 「武士」で、母親役が 「西太后みたいな中国宮廷風」で、敵役が 「スペースオペラ」で、貴族役が 「キリスト教のモンク」で、民衆が 「コサック、ロシアの農民」だった。
どこの国の話だっけ? え? ローマ帝国?
舞台の大部分が階段になっている。ここですそを引きずるような舞台衣装の俳優が激しい 「殺陣」をするので、ハラハラしてしまった。練習中には相当数の俳優がねんざをしたのではと思われる。カキーンと刀がぶつかる音響効果。わーい、チャンバラだ!
この日のお気に入りは白石加代子。ローマの英雄の母親役は強烈な存在として、どの女優にもおいしい役だろうけど、この人も大迫力ですごかった。
息子でない私ですら思わず 「ママー」と叫んで、ひれふしそうになったもん。
そういえば、何年か前の公演で印象が強かったのは高橋恵子という女優だ。その昔は関根恵子といって 「元祖 魔性の女」と呼ばれていたらしい。地味な衣装の固い役だったにも関わらず、ものすごいフェロモンのオーラを発散していた。私はそれを 「色気玉」と名づけたのだが、直径3メートルもの色気玉が彼女と共に舞台を移動したので度肝を抜かれた。
「色気をふりまくつもりはないんですけど、含有量が多いのであふれ出てしまうんです。うふふふ・・・」みたいな雰囲気だ。
白石加代子といい、高橋恵子といい、女優というのは 「魔物」だと思った。
・・・「魔性の女」に 「魔物」か、かっこいいなあ。うっとり。
あ、そうだ。主役の唐沢寿明と敵役の勝村政信も超かっこよかったです(おまけ)
投稿者 lib : May 3, 2007 08:50 AM
コメント
こんにちは。いつも楽しく拝見しています。
この舞台、わたしは埼玉で見ましたー。唐沢さんの顔というか頭の小ささと、勝村政信の声の良さが強烈でした。あとお経(?)のBGMとか衣装も良かったです。
それにしてもあの膨大な台詞の英語字幕、どんなだったか、見たかったなあ。やはり超高速だったですか?!
投稿者 yoko : May 31, 2007 01:02 PM
唐沢氏の顔、小さかったですね。あれはCG加工かなんかしてあるんですか? (嘘) 唐沢氏も勝村氏もロンドンのゲイボーイズのハートをつかんだことと思います。
超高速だったのは字幕より唐沢氏のセリフ。時間内に収めるにはあのスピードが必要だったのでしょうか。
字幕には出ない日本語のジョークもあり、日本人だけが笑っていました。よく日本の映画館で少数だけが英語のジョークに笑えて 「優越感」を感じる、あれですね。
投稿者 十貴川 洋子 : June 1, 2007 01:27 PM