May 24, 2007
日本大使館vs英国大使館
ロンドンの日本大使館 (パスポートは領事館か?)には世話になった。数年前のことだ。
数週間後に日本への出張を控えたある日、何気なくパスポートを見ていて息が止まった。
「き、切れてる・・・」
パスポートがすでに無効になっていた。どうしよう。
クライアントとのミーティングは延期してもらえるだろうが、すでに航空券は購入してある。ディスカウント・チケット(出張なのにケチな会社)だから変更はできないだろう。
泡を食って必要書類を準備し、大使館 (領事館だってば!)に持っていった。
「いつ新しいパスポートができますか?」
「二週間後です」
「二週間後のいつですか?」
「朝、開館する時点で、できています」と窓口のおねえさんは毅然たる態度で言い切った。
二週間後の朝一番でパスポートを受け取った私は、白雪を頂きにした富士山を背景に、左手には満開の桜、右手には風にはためく日の丸を見た気がしたね。
ここまで感激したのも、日ごろイギリスの役所でひどい目に遭っているからだ。
だーいたい、イギリス人の役人なんか真面目な顔でいろんな約束をするくせに守るほうが珍しいって。おまけに言うことがみんなバラバラでさあ。
クロイドンにある 「某」ルナーハウスで何回、裏切られたことか。
さて、ロンドンの日本大使館、パスポートを出してくれる窓口があるだけではない。上の階にはちゃんと広いホール(宴会場か?)もある。パーティで中を見たことがあるが、
―――ちょっと・・・質素だ。
というのも、これでもかという過剰な装飾の大使館に行ったことがあるからだ。
そう、それは東京にある英国大使館。
ロンドンの日本大使館が慎ましく 「ビル」なのに、東京の英国大使館はどーんと広い敷地を占領していて、でかい態度である。どちらの都市も土地代が高いのにイギリス側には相手国に気を使う、という謙虚さが見えない。
さて、ここにも 「奥の間」が存在する。
一部は 「ビジネス・サポート部門」である。正式な名前は忘れたけど。
日本に進出するイギリス企業にアドバイスしたり、パートナー企業を紹介する機能を持つ。
ボスと行ったミーティングの途中でトイレに立ったら、「もう一度入室するときには身分証明をしてください」と言われた。・・・にも関わらず、トイレから戻ったら、「ハイハイ、どうぞ」とあっさり入れてもらった。厳しいルールの割りにチェックは甘いという、いかにもイギリス的なノリだったのを覚えている。
テロ事件が増えた現在はたぶん違うと思うけど。
しかし、ここの英国大使館ですごいのはホールだ。式典に招待されて行ったら、シャンデリアに肖像画、猫足テーブルにフカフカのカーペットでキンキラな装飾だった。
ベルサイユ宮殿か、ここは。
うーむ、このきらびやかさと仰々しさ、負けてるじゃないの、日本大使館!
「女王の代行」として駐日大使が登場すると、礼服がまるで 「ナポレオン」だったのでびっくりした。勲章だの、金ボタンだの、ふさ飾りだのと仮装行列のような服装である。
当時の駐日大使はもう任を退いて帰国している。ロンドンで時々その顔を見ることもあるのだが、そのたびに、
(あ、ナポレオンのおじさんだ)と国籍の混乱を招く記憶がよみがえる。
大使はフェンシングのような剣をシュッパッと抜いて、栄誉を受けるためにひざまずいた人の両肩をそれで軽く叩いていた。(見ていて、ちょっとこわかった。あの剣は本物か? 間違って首が切れちゃったりしないのか?)
あのわざとらしさは迫力があったなあ。
その国らしさを出すというのなら、日本大使館のホールもあの地味さを逆手に取って、 「わび」と「さび」で勝負するのがいいかもしれない。
ヨーロッパの外交官をレセプションに招くとき、ホールの四隅に 「虚無僧」を立たせる。
で、尺八の四重奏でお迎えするという趣向だ。どうかしら?
でも、招かれた側が 「ナポレオン」で来たりすると、ちょっとね。
「虚無僧」vs 「ナポレオン」か・・・。勝負にならんな。
投稿者 lib : May 24, 2007 09:00 AM