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September 12, 2007

日本で英語教師

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ミセス Wは私の英語の先生だった。
50代後半のイギリス人で「外国人に英語を教える」のが専門、日本人の友人と一緒に文法や作文の家庭教師をしてもらっていたのだ。

何年も英語圏に住んでいれば、とりあえず生活には困らない程度の英語はあやつれるようになる。
主婦なら主婦英語、「買い物」とか、子供の学校の先生との 「教育」に関する会話、近所の奥さんと 「ゴシップに興じる」ときに有効なボキャブラリーが増えるはずだ。
働いていれば、「うちの会社は業界でもたいへんに良い評判をいただいています」みたいな 「つくり話」、あるいは同業者をこきおろす 「中傷」などを中心とした英語力が伸びる。
友人は 「商談で取引先をめちゃくちゃに叩きのめして、有利な立場にたつ」英語がとっても得意である。・・・ま、英語というよりは性格なのかもしれないが。

このミセス Wから数年ぶりに電話が入った。
お嬢さん (オックスフォード大学卒業)が日本に行き、1年間英語の先生をすることになったという。それで、簡単な日本語のフレーズや生活習慣や文化について教えて欲しいとのこと。

というわけで、ミセス Wは一人娘のEちゃんを連れてやってきた。

話には聞いていたが背がすごく高い。183cmって、イギリス人の男でも長身といえる。日本の家のあちこちの鴨居に頭をゴンゴンぶつける姿が目に浮かぶようだ。
しばらく前にイギリス人の英語教師の女性が、プライベートレッスンという言葉につられて男の家に行き、殺された事件があり、犯人の男はまだ逃走中なのを思い出す。
「気をつけてね」と言っておいたが、いくらかわいい顔をしていても183cmの彼女をターゲットにする日本人の男はいないかもしれない・・・。口には出さなかったが。

「私はアイゴの先生です」とEちゃん。
アイゴ? 動物愛護?
「あ、それはね、 『エイゴ』 英語の先生」
Eちゃんはペンを取り出し、持参した 「日本語の基礎」の例文にさらさらと書き込む。アルファベットで書いてはあるが、日本語のローマ字表記では実際の発音がわからないらしい。
「イギリス人って日本語でどう言うの?」
日本語流にイギリスじん、と発音してみせると、 「リ」の部分をDiと書いていた。

そうか、そうきたか。日本人は R や V が苦手なように、英語圏の人に 「らりるれろ」を発音させると何かおかしい。 (試してみて。おもしろいから)
この 「ら行」って、 L と R と D が混ざったような音なんだよね。 

さーて、生活習慣と文化の紹介だ。私はこれが大好き。
ずいぶんと楽しい思いをさせてもらっている。外国暮らしの楽しみのひとつといってもいいくらいだ。

日本について誤情報を持っている人は多い。どうせなら、と、さらなるガセネタを提供。
アメリカのすごーい田舎の人 (まず、日本に行く機会はないはず)に
「CDプレーヤーになってから、誰もウォークマンを聞かない。で、駅前では消費者金融が宣伝のティッシュと一緒にウォークマンを配っているが、みんなティッシュだけもらって、ウォークマンはゴミ箱に捨てている」とかね。
すんなり信じたのでウケたが、消費者金融の説明に苦労したのを覚えている。

ああ、ホラ話とガセネタをつかませる絶好の機会。口がウズウズするー。

「麻薬の所持が見つかると死刑になります。でも、銃殺されるときに目隠しするかどうかは本人が選べますよ」みたいなのが言いたい。すごく言いたい。
が、相手は 「恩師の令嬢」だ。そうもいくまい。

「何か質問は?」とウズウズする心を抑えて聞いてみる。
いろいろな質問を用意してきていたが、
「神道の神社と仏教の寺院の相違点を400字以内で簡潔に述べよ。制限時間は2分」みたいなことをいくつか聞かれた。うーむ、オックスフォード卒なのを忘れていたな。

「これだけはやっちゃダメっていうものは?」と聞かれて、
「人の家に土足で上がらないこと。それくらいかな」と言っておいた。
「なにかまずいことをしても、 『ごめーん、私は外国人だから、知らなかったー』と言っておけば、まず許してもらえるよ」とアドバイスした。

これは私がいつもイギリスで使う言い訳である。 (相手の口封じに、たいへん、よく効く)

投稿者 lib : September 12, 2007 10:35 PM

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