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December 04, 2007

教育方針

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先日新聞を読んでいたら、政府は3歳からのナショナル・カリキュラムを設定し、来年から法律として施行する予定だという。つまり幼稚園などでは、政府の定めた方針に従って子供達に「アカデミックな」教育をしなくてはならなくなるらしい。

イギリスの公立小学校では4歳からレセプションというクラスに入り、実質的に小学生となる。4歳でも読み書き、発音などを教わるのも早いなあと思っていたが、更に年齢引き下げか・・・。

私は教育の専門家でも何でもないので早期教育をしてどんな良い事があるのかよく分からないが、素人の考えとしては、「イギリス政府は、なにをそんなに躍起になっているんだろう」という感想である。

私の息子が3歳だった頃のことを考えると、その頃までは文字通り「静止している」ということが寝ている時以外無かった。
ママ友とピクニックに行き、他のお母さんと子供たちがブランケットを広げてラブリーにお弁当を食べている時でも、息子は決して座らなかった。結果、私は動き回る息子の後をついてまわらなければならず、いつも飲まず食わず(ついでに休憩知らず)だった。

お弁当の時に座らない息子が、お絵かきや絵本読みで座るはずがない。
結果、彼は同じ年頃の子供よりも運動能力は高いが、絵は描けないし言葉の発達もかなり遅れていた。

どの国の、どの育児本にも「本を読み聞かせる事は良い事です」と書いてあるが、本人が嫌がるのだから仕方ない。
その頃、仲良しの日本人ママ友は、「ナーサリーに入ってから、日本語を全然話さなくなってしまって・・・」と心配していた。この娘さんはナーサリーに入る前には本当に上手に日本語をお話していたので、勿体無いとママが思う気持ちはよく理解できたが、うちの息子はもともと英語も日本語もヘタだし、日本語を話さなくても全然気にならなかった。

本読みにしてもお絵かきにしても日本語にしても、親が強制することによって、本人が「嫌なもの」というイメージを持ってしまうことの方が怖いと思っていたので、別に本人がやりたがらない事はしなくていいよ、というスタンスをとっていた。
机に座ってする勉強は大きくなってからいくらでもできるし。

でも「今しかできない」ことは積極的にやらせた。外で遊ぶことは好きだったので、これは積極的に遊ばせた。
冬は寒くて暗くてなかなか外で遊べないイギリスだが、天気の良い日はなるべく外に出た。
外に出る事によって、季節や自然を感じ取って欲しかった。夏は暑い、冬は寒い、そういう当たり前の事を知っている子になってほしかった。

日本は四季の豊かな国なので、私は子供の頃を思うとき、夏を思えばもくもくとした入道雲や、ひまわりの鮮やかな黄色や、スイカの冷たさが心に鮮やかに浮かんでくる。冬を思えば、吐き出す息が白くなるのが面白かったことや、朝、庭の土の上に降りた霜を踏むサクサク、という感覚・・・大人になってわざわざ霜を踏む人はいないから、こういう経験こそ子供時代にしかできない経験だと思う。中学だか高校だかの古典の授業で、「枕草子」の冒頭を習ったとき、「こんな昔の人も自分と同じ感じ方をしていた!」と驚いたこと・・・。

こういった感覚が大人になってから何の役に立つのかは分からないが、私の中ではすごく重要なことの様な気がする。私が今まで出会った中で「強い人だな」と思った人は、皆、子供の頃自然の中で遊んだ経験を生き生きと話すことが共通点なので、知らず知らずの内に息子にも「子供時代に、へとへとになるまで遊んだ思い出を作って欲しい」と思うようになったのかもしれない。幸せな子供時代の記憶があれば、社会で生き抜く強さが身につく筈、と何の根拠もないけど信じているような気がする。

だから手抜き母の私が、息子がもっと小さかった頃に心がけた事と言えば
「ハッピーでいてほしい」という事だけだった。
長い人生、気の進まないこともしなければならないし、嫌な事もあるだろう。
だからこそ、人生の最初の3~4年くらいはストレスフリーで自分の好きな事だけをしてもらい、
「生きるって楽しいことなんだな」
という印象を抱いてくれれば、私の幼児教育方針(?)は成功だったと思っている。

と言うわけで、少し時期がずれて息子がこのカリキュラムの下で生活しなくてはならなかったら、もしかしたら彼なりにプレッシャーを感じていたかもしれない。でも5歳の今は学校で発音や文字を習うのを、楽しんでいるようなので、子供って分からないからもしかしたら3歳から始めてもそれなりに楽しく適応したのかもしれないけど・・・。
で結局何を言いたいかというと、「子供は外で遊ばせましょう」ってことでしょうか(笑)

投稿者 lib : December 4, 2007 10:34 AM

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