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January 31, 2008
Options
以前にも書いたとおり、私は9年生(日本でいう中学3年生.年齢的には2年生)のクラスの担任をしています。
毎週火曜日の放課後は色々な会議があるのですが、今日は学年の主任・担任が集まる学年会議の日でした。私の学校は一昨年あたりから一クラス二担任制を導入したため、学年の8クラスの担任たちが全員集まればかなりの人数の会議になります。
今日参加したのは16名。議題の一つは『GCSEのOptions(選択)』についてでした。GCSEとはGeneral Certificate of Secondary Educationの略で、日本の高等学校教育に該当する課程です。10・11年生の2年間でうちの学校では必修・選択科目両方含めて全部で12科目を勉強し、11年生の夏学期に全国の統一試験を受けるのです。教科ごとに成績が出るのですが、トップのA*(エイスター)から下はGまでとグレードがあり、それにも満たないとU(Unclassified)といってGCSEの資格がもらえません。イギリスのSecondary schoolの良し悪しは合計5教科でA-Cを全校で何パーセントの生徒が取れたかによって判断されることが多いです。私の学校は5つの教科でA-Cを取れるのが60パーセントに満たないというのが現状です。
さて、現在9年生である彼女たちは、SATS( Standard Assessment Tests)という数学・英語・ICT(情報処理)の3教科の統一試験を5月に受けるのに加え、3月末には来年からスタートするこのGCSEの科目を選択しなくてはなりません。私の勤務校の場合、学校が定めた必修科目の数がかなり多いのですが、必修科目以外にも与えられた選択肢の中からどの教科を勉強したいか決めなくてはならないのです。私の担当教科である歴史科も選択科目のひとつになります。
この選択科目の希望を出す日はOptions Dayと呼ばれて9年生にとっては非常に大切なイベントです。また、現在うちの学校ではさまざまな理由で将来的に大学への進学を希望しない生徒たちのためにVocational Course(職業訓練コースとでも訳せるでしょうか)も用意しています。Social care, Media StudiesやHair&Beautyなど、GCSEよりもずっと実践に即した内容の資格コースです。生徒たちはアカデミックな方向に進むのか、ヴォケーショナルな方向に進むのか、将来の方向性を定めなければいけません。
担任や進路指導の専門スタッフが一丸となってこれから9年生たち一人一人に適した進路指導をしなくてはなりません。生徒の中にはとにかく友達と同じ教科を取りたがったり、なかなか自分のやりたいことを見出せずに悩んだりする子も多いので、これから数ヶ月で彼女らに少しでも将来のことを考えさせ、興味とやる気を持って2年間自分が本当にやりとおせる自信のある科目を選べるように促してあげなくてはならないのです。
ただ、生徒のことを考えようと言いながらも現実は一人の生徒が取れる選択科目は限られています。そのせいで選択教科間の生徒獲得競争はなかなか激しいです。何しろいかにまじめで優秀な生徒たちに自分の教科を選択させるかがその教科の成績、そして最終的にはその学科の評価にかかわってくるのですから。実際、毎年Optionsの前になると、遠足や校外学習がたくさんあることをアピールしたり(生徒はこれが大好きなのです)、優秀な子に直接アプローチしたりしている同僚がいます。私も歴史に興味のありそうな生徒に個人的に声をかけたりしてアピールすることはありますが、この「営業」がとても苦手です。
私としてはどんなに優秀であっても「歴史なんてつまんない」と思っている生徒より、たとえ勉強が苦手でも本当に歴史に興味を持ってくれている頑張り屋の生徒に選択してもらいたいのですが。学科主任としてそうとばかりは言っていられないのが現実です。さて、今年は何人の生徒が集まってくれるのでしょうか。
投稿者 lib : January 31, 2008 08:36 PM
コメント
いつも興味深く拝見しています。以前にもコメントさせて頂きましたが、渡英を控えて、子供達の学校探し及びこれに伴う住居探しで、ネット上をさまよっています。ある地域の状況は把握できましたが、その他の地域に居住する場合も、現地のprimaryに入るとした場合、secondaryを視野に入れないといけないと考えています。ご多忙とは存じますが、現地で教鞭をとられている先生のご意見を伺いたいのですが・・・・・。
投稿者 モモミオのパパ : February 5, 2008 02:31 PM
生徒の勧誘のはなし、よくわかります。自分の教える教科の(強化の)ために尽くそう、と考えるべきなのか、それはともかくとして、生徒一人一人のために、その適正や興味を考えてそれを大事にすべきなのか、どっちをとるべきか、なんて考えてしまいませんか。それにしても学科主任で、ホームルームも持っている先生として毎日の仕事の重圧感は相当なものでしょうね。慣れ、があるとしても、決して楽じゃない。ただそれだけにやりがいがある、とも言えるのでしょうね。どうかいいことがいっぱいありますように、祈ってます。
投稿者 dekoboko : February 7, 2008 09:04 PM
>モモミオのパパさん
コメントありがとうございます。お子さんのこれからのことですから色々不安かと思います。どこにお住まいになるのかはわかりませんが、ロンドンは東西南北とだいぶ地域性に差があります。もっと極端に言えば同じ地域でも道を一本隔てると雰囲気が違ったりもします。高級住宅街のすぐ近くにカウンシルフラット(低所得者用の市営住宅)が並んでいたりします。
ただ、概して家族のいる日本人は西や北西部、南西部に多く住んでいるように思います。やはり東ロンドンよりも住環境がいいのが理由でしょう。ロンドンから郊外に出ると東であっても環境のいい場所もありますが、センターに近ければ近いほど荒れた学校があるのも事実です。ほぼワーキングクラスで家庭環境が複雑な子の多い地域にあるような私の勤務校と比べれば、ミドルクラスの家庭の子供たちが多い地域の学校ほうがゆとりのある質の高い教育を与えてくれるというのが悲しい事実です。親の教育への関心もそういう地域のほうが高いように思えます。私の勤務校にも勤勉で学力も高く、利発な子、そして子供に愛情を注ぎ学校をサポートしてくれる立派な保護者もいるのですけれどね、、、。
イギリスに暮らすのが初めてでしたら小学校はやはり日本人を受け入れたことのある学校を選んだほうがモモミオのパパさんも安心なのではないでしょうか。ただロンドンならば外国人を受け入れた経験のある学校が大半かと思いますが。
Secondaryを視野に入れることをお考えのようですが、ロンドンの学校は今めまぐるしく変わっているところもありますので今すぐに決められる必要はないようにも思います。もし現在の状況をお知りになりたければだいたい4年毎に出されるOfstedと呼ばれる学校審査機関のリポート(Googleに入れればすぐに出ます)やBBCなどのメディアが出している情報を参考にされるといいかと思います。ただ、現場で働く側からするとリポートの内容や全国テストの結果がその学校のすべてではないと言いたいところなのですが、、、。
少しでもご参考になれば。できれば実際に日本人で子供を現地校に通わせている方にお話ができればいいですね。
投稿者 月子 : February 8, 2008 07:35 PM