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February 20, 2008

八丈島に島流し その2

career2.gif
BTは月曜日、2日後に修理に来てくれるとのことである。

もちろん、信じてなどいなかった。 「月曜日に修理に来ます」と聞いて、約束した日に人が来るなんて思うのは、イギリス生活の素人さんである。

「月曜日って、7週目の月曜だったのね」みたいなことは当たり前。
「月曜日といっても、今年の月曜日とは言わなかったしー」くらいの言い訳を聞かされるのは覚悟しなければならない。

ま、とりあえず、修理は頼んだから、とテレビを見ていると、ピンポーンとドアベルが鳴った。
―――誰?
で、ドアを開けると、BTのエンジニアが立っている。

「BTです。電話線が切れたんだって?」
「あわわわわ・・・」とパジャマ姿の私。
―――目の前で起こっていることに対応できなくて、パニックっている。
「ちょうど、近くで修理してたら、連絡が入ったんだよね」
「あわ、あわわわわ」
「あんた、大丈夫?」
「あわ、あわ、あわ」

玄関のドアを開けたら、テクノザウルスが立っていて、丁寧におじきをしながら日本語で挨拶したくらい驚いた。

イギリスに何年も住んでみればわかる。BTに電話をして、30分後にエンジニアが来たら、たとえ 「あわわわわ」 でなくても、誰でも 「うきききき」 だの、 「むぐぐぐぐ」だのと、パニック反応を起こしてしまうだろう。

おまけにこのBTのおじさん、コメディアンのハリー・エンフィールドにそっくりだ。

きつねかなんかに、騙されているのかしらん、私?

「ちょっと、中に入っていい? 家の中に電話線のボックスがあるはずなんだ」
「え? あわわわわ」
この、 「あわわわわ」は別の意味である。

私は週日は働いている。1週間分のゴタゴタが堆積して最高潮に達している土曜日の朝、しかも、他人が来ることを予想していないときに、
「あ、はい。どーぞ」と家の中を見せることに躊躇しないでいられる女がいれば、尊敬するね。

で、私は尊敬に値しない女なので、
「あわわわわ」とあせったのである。
「えーっと、30秒だけ、待ってくれる?」
本当は30分くらいは欲しかったのだが、せっかく来てくれたBTのエンジニアを逃したくなかったので、30秒で家の中を整理した。

このハリーおじさんは、
「あ、しまった。前の工事の場所にはしごを忘れちゃった。はしご、ある? 貸してくれる?」などとボケをかましながらも、半時間ほどで電話線を修理してくれた。

お世話になったので、5ポンドくらいチップとしてあげようかと思ったが、意外とこの手の仕事は稼ぎがいい。私よりも、おじさんのほうが収入が多いかもしれない可能性を考え、買い置きのチョコレートの箱をお礼として進呈した。

「BTに電話したら、30分でエンジニアが来たよ」と言っても、誰も信じない。
「まーた、嘘ばっかり。そんなにすぐ、来るわけないじゃん。ここ、イギリスだよ」

月曜日、私の携帯電話にメッセージが入った。
「こちらはBTです。今日、エンジニアを修理に送る予定です。不自由をおかけして、申し訳ございません」

・・・BTの内部連絡の質って・・・・。

「八丈島に島流し」寸前に 「将軍の恩赦」を受けた気分である。もちろん、助けてくれたのは 「将軍様」ではなくて、 「ハリーおじさん」 だったが。 

・・・ところで、BTに2ヶ月ほど前からブロードバンドを頼んでいるんですが、一体いつエンジニアが来るんですか?

投稿者 lib : February 20, 2008 06:39 PM

コメント

すばらしい!
あり得ないほどのウルトラミラクルでしたね!

頭に血が上って噴火寸前か、腸が煮えくり返って爆発寸前。
そしてその怒りも忘れかけたころに、「ハロー」
とやってくるのが普通だと私も思っておりました。

その神経の図太さ、小心者の私にちょこっとください、と言いたいです。

投稿者 hear me : February 21, 2008 09:38 PM

イギリスで修理工を待つのは、南海の孤島で救援を待つようなものですね。
神に祈り、人生を呪い、期待と諦めの間を行き来する日々。
どうせしばらく電話は通じないんだろうな。インディアンのように煙を焚いて 「のろし」でメッセージを伝える練習をしとこうかなと、思う間もなくの 「速攻修理」 今年一番のびっくりニュースでした。
でかしたぞ、ハリーおじさん!

投稿者 十貴川 洋子 : February 25, 2008 09:56 PM

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