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February 28, 2008

催眠療法 その1

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人を呪わば、穴ふたつ。デブを笑わば・・・。というわけで、日頃、イギリス女のデブぶりをあざ笑っている私だが、その悪口がわが身にはね返ってきている。

「サイズ10のスカートを履くくらいなら、死んだほうがマシ」と言い切ってきたが、つい誘惑に負けて手を出してしまった。もっとも、 「死んだほうがマシ」ってのを見せてもらいましょうかね、と迫られたら困るので、周囲にバレないように、固く口を閉ざしているが。

ふりかえれば、2ヶ月前、クリスマスの頃だ。

イギリス人の男、数人と食事をしていた。
「なんだか太っちゃって。ダイエットしなきゃいけないのよね。あ、アタシ、デザートはチーズケーキをお願いね」
と、いつもの 「言行不一致の美学」を披露していると、その中のひとりが、
「君はいつも体重を気にしてるから、これ、買ってきたんだ。クリスマスプレゼントだよ」と本をくれた。

見れば、
Paul McKenna著 「I Can Make You THIN」という本だ。
「私はあなたを痩せさせることができる!」というタイトル。

正直なところ、 (うっ・・・)と思わなかったと言えば、嘘になる。
この本をくれたのは、 (ゲイじゃないのか?)と疑うほど、女心を理解している男で、まったく悪気はなかったはずだ。

そのとき、他の男3人は心なしか青ざめていた。
(お前、何てことを・・・。女性に向かってダイエット本を薦めるなんて、 「デブをなんとかしろよ」って言ってるのと同じだろ。殺されるぞ、殺される)
デブを指摘された私がヒステリーを起こして彼に飛びかかり、腹わたを食いちぎる光景が脳裏によぎったに違いない。

「痩せなくっちゃ」
「いや、全然太ってないよ」
と、イギリス紳士なら当然のお約束の会話がついに破られたのだ。

が、瞬間のショックを自制すると、好奇心がわいてきた。
「流行のダイエットなの?」
「いいや、この人は催眠術で有名なんだ。いろいろとシリーズがあってね。ダイエット、自信をつける、禁煙とかね。僕も彼のおかげで禁煙できたんだ」

彼の話によると、本を読む必要はない。CDが付いているので、それをリラックスした気分で聞くようにということである。そのCDも、「しっかり注意を払って聴く」のではなく、 「聞き流す」ほうがいいらしい。

ほー、ほー、なるほどね、とありがたく貰って帰った。

しかし、いくつか問題がある。

いまどきの女なら、ダイエットのメソードの5つや6つは空でスラスラ述べることができる。が、どうしたら実行できるか、を知っている人は少ない。
ダイエットの知識は増えるが、体重も増えるという 「ダイエット理論-正比例の法則」があるのだ。これ以上、新しいダイエット法を聞いても・・・。

それに私は人の命令を聞くのが嫌いだ。 「やれ」 と命令されると、反発してしまう。
日本では軍隊式のダイエットが流行っていたらしいが、私には不向き。
ああ、職業軍人でなくて本当によかった。上官の命令にことごとく逆らって、指令系統をメチャメチャにし、部隊ごと全滅させてしまうタイプだと思う。

それに、催眠術って、なんだか、怖くない? 目が覚めなくなったりして。

というわけで、しばらく家に放っておいた。が、気のいい友人は、
「あのCD聴いてみた? 試してみた?」
と顔を合わせるたびに訊ねる。

しかたなく、私も腹をくくってやってみることにした。
せっかくの友情にヒビを入れたくない。たとえ、目が覚めなくなったって、それがどうしたというのだ? (すごく、困るけど・・・)

まあ、普通の書店で売っていて、おまけにベストセラーということだから、そんなに危ないものではない、はずだ。   [続く]

投稿者 lib : February 28, 2008 10:17 AM

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