July 29, 2008
5歳児に、「日本」について語る その3
軌道を修正して、食生活だ。
「日本人は鯨を食べますが、それが国際的に大きな顰蹙をかっています」
などのControversialな話題は当然避けるとしても、図書館で借りてきた本の中の写真の、朝食風景らしい日本人家族の食卓には、なぜかソーセージと目玉焼きとオレンジジュースがのぼっていた。
なぜ、味噌汁とご飯とアジの開きのトラディショナルな朝食でなく、ソーセージと目玉焼きなのか。
編集者の意図が分からないが、とりあえず
「……こ、このように、日本人もソーセージや卵を食べます…」
と写真を見せながら言うと、先ほどの「10ミニッツ」の子が、
“Just like us?”
とナイスな、合いの手を入れてくれた。
「そう!Just like you! でも、その他に魚も沢山食べます…」
と日本食につなげる。
本には、日本の古い木造の家と高層ビルの立ち並ぶ新宿の写真も載っていたので、それも見せた。
なんだか意図せずに、食、住の「古い日本」と「新しい日本」の対比のような進行になっている。
(子供達が分かってくれたかは怪しいが)
「古い木造住宅」の方は、私でも
「もう少しましな家はなかったのか…」
と思うほど古い「あばら家」で、何人もの子供達から
「そこに人が住んでるの?そこに人が住んでるの?」
と質問された。
「(多分)住んでる、(と思う)よ…」
と自信のない返事をした。
さて。
突然だが、私は昔から
「西洋人の木造住宅についての偏見」
について、不本意に思っていた。
絵本「三匹の子豚」では、木造とわらぶきの家は吹き飛ばされてしまい、レンガの家だけが残る。
(木造の家は怠け者の作る弱い家 by西洋人)
イギリスに来た頃通っていた英語学校のテキストには、
「レンガの家はコストがかかるけど頑丈である。木の家は安いけれど長持ちしません」
という、驚きの一文が載っていた。
(木造の家は貧乏人の安い家 by西洋人)
各地の気候や地形などの自然条件を無視し、レンガの家=最高と決め付ける、これぞ西洋至上主義。
無垢な5歳児達が洗脳される前に、真実を伝える良いチャンスだ。
「日本の伝統的な家は木でできています。なぜなら日本には地震があって、大きい地震が起きた場合、レンガの家ではとっても危ないからです…」(他の理由もあるだろうけどとりあえず)
ここぞとばかり熱弁をふるっていると、子供達が退屈したような顔になってきた。おかしいな。
ここで秘密兵器、ポケモンに登場してもらうことにする。
「という訳で、日本は遠いけれど、イギリスでも日本のものは身近にありまーす」
と、ポケモンの絵を見せた。
子供達の顔が急に輝く。
「ポーキモン!」
と今までおとなしかった子も叫びだす。
「ポーキモンだけじゃありません、じゃ~ん」
とパワーレンジャーを見せると、男の子たち大興奮。すでに戦いポーズをとっている子もいる。
ふっふっふ。まんまと手の内にはまったな。
「女の子の好きなものも持ってきたよ~」
最後にキティちゃんを見せると、
「Hello Kitty~」
女の子たちがとろけそうな顔を見せた。
きゃー、女の子って可愛いー。
普段息子や、息子の友達の野郎どもとばかりと接しているので、この女の子たちの反応に私が萌えた。
と、少し子供達の目を覚ました後に、
「こんにちは」をお辞儀の実演つきで教えたり、数を1から5まで教えた。
ちなみに数の数え方は、以前大人に教えた時に、
1(itchy=痒い)、2( knee=膝)、3( sun=太陽)、4( sheeh!=シー!)、5( go=行く)
と教えたら覚えやすかった。
今回もその方法で行こうかと前夜に息子の前で予行練習をすると、どうも彼が腑に落ちない顔をする。
「日本語を教えるのに、何で英語なの?itchyは英語だよ」
そうか、子供はへたな語呂合わせをしたらかえって混乱するかも。
そのままの音をストレートに受け止めてくれるだろうから、語呂合わせ作戦は無しにした。
子供達は「コニーチワ」ではなくて「こんにちは」と、1,2,3,4,5もスムーズに繰り返してくれた。
いい感じなので「6から10もやる~?」と聞くと、先生だけが大きな声で
“Ye-s!!”子供たちは流石に飽きてきたのか首をふっていた…。とほほ。
時間もいい頃だと思って、お開きにした。
次の日、同じクラスの子のお母さんに会うと、
「家で、日本の話をしていたわよ。数の数え方とか覚えていたわよ~」
と言ってもらえた。
後日先生と話した時も、朝の出席のとき、それぞれ好きな言語で「おはよう」を言うのだが、クラスの大半の子供がお辞儀つきで「コンニチハ」と言うとのこと。うれし~。
私自身の感想としては、子供達が質問をするときに必ず手を挙げるように言われているのが印象的だった。
イギリスで自分が何かのクラスに通ったときには、皆自由に発言していたので、手を挙げて指されなければ口を開いてはいけないのは「日本式」かと思っていたが、最近は変わったのだろうか。
それとも小学校の頃にそのように仕込まれても、年齢が上がるにつけてコントロール不可能になっていくのだろうか。
どなたか詳しい方がいたら教えてください。
私自身も気づかされる事が多く、新鮮な体験をさせてもらったし、今まで日本に興味のなかった息子もこれをきっかけに
「日本もそれほどBoringでもないのかも」
と前よりは興味をもってくれたような気がする。
それにしても、「言葉の通じない人々」と毎日接している先生は本当に大変な仕事だな~と実感。
低学年には低学年なりの、高学年には高学年なりの難しさがあると思うが、いつも笑顔で子供達と接している先生方に頭が下がる思いでした。
投稿者 lib : July 29, 2008 10:49 AM
コメント
ご無沙汰しています。興味深いお話、楽しく読ませていただきました。それにしても、ポケモンにパワーレンジャー、キティちゃんの絵カードとは名案!
私もちょっと前にY2の娘のクラスでStory Weekの週に日本の絵本を読み聞かせする機会がありましたが、皆楽しんでくれたようで、子供たちの反応もなかなか興味深くて、面白い経験でした。
ところで、イギリスの小学校、こと細かい日本ほどではないにしても、レセプションやY1辺りでは、やはりある程度規律正しい習慣を身につけさせるためというか、ちゃんと授業が成り立つようにするためのトレーニングがあるみたいですね。娘のレセプションクラスで、先生が笛を吹いた途端に、子供たちが一斉におしゃべりをやめて「気をつけ」をしたのに面食らったことがあります。
投稿者 AiM : August 3, 2008 01:06 AM
AiMさん、ごぶさたしています&コメントありがとうございます。
AiMさんも子供達に日本の絵本の紹介をされたのですね。日本語の本をAiMさんが英語に訳して読んであげたのですか?
笛で「気をつけ」とは規律に厳しい日本で育った私達でもびっくり!うちの息子も、3歳くらいまでは静止している事ができなくてナーサリーの先生から心配されたものですが、今ではすっかり調教?されて、先生のお話も座って聞く事ができるようになったようです。
投稿者 子育てママ : August 8, 2008 07:56 PM