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March 16, 2009

ベン座の女

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家を買って10年以上経つ。
私の安いサラリーで選べたのは 「郊外」「中古」「小さめ」な物件だ。それでも当時は住宅市場がほぼ底値という状態だったので、環境もサイズも悪くない家を手に入れることができた。

が、古い。イギリスの家は煉瓦建てなので建物は頑丈にできているが、内装は古びている。で、見た目だけはなんとかしようと、ペンキをぺたぺたと塗りまくった。実は日本にいるときからペンキ塗りは得意である。ただ、根気がないのと大ざっぱな性格のため 「下準備をして丁寧に仕上げる」みたいなことは不得意で、壁紙とかは無理。

さて、この中古の家、なんといってもバスルームが破滅状態にあった。時代遅れのデザインの浴槽、シンクとトイレ。剥げかかったダサい壁紙 (イギリスでは、なぜ、バスルームに壁紙を貼るのか?) パイプの横には隙間があり、 「ねずみが出てきて、こんにちは」状態である。

長い一日を終え、お風呂に入ってゆっくりとリラックス。
ふー、と息をつき壁やパイプに目をやるとみごとなまでの崩れっぷりだ。リラックスしていた筋肉に緊張が走る。慌てて目を閉じて、何も見なかったことにする・・・こと10年間。

しかし、ついに見て見ぬ振りをするにも限界がきた。

・・・床が崩れ始めたのだ。

私のバスルームはイギリスの家には珍しく一階(グランドフロア)にある。
数ヶ月前、浴槽の栓を抜いて水を流すとジャーという派手な音がした。・・・はて? パイプ内を流れる水音ではない。庭にホースで水撒きをするように 「水が直接、地面に叩きつけられる音」である。

浴槽の横にあるパネルをはずしてみたら、確かに 「水は大地へと流れ落ちていた」パイプがはずれ、浴槽の水はそのまま床下へざあざあとあふれている。
うわー、どうしよう? で、必要は発明の母、スーパーのビニール袋を使い、はずれているパイプをつないで応急処置をする。

この 「スーパーのビニール袋作戦」は数週間ごとに 「ジャー」という水音で修復を余儀なくされる。

そして、ある日、トイレの便座に座っていると・・・。

便座の下から隙間風が感じられた。 あ・・・地面が見える。

パイプからの水漏れは浴槽からだけではなかったらしい。あちこちの水漏れは床下を伝ってトイレを支える支柱まで腐らせていた。便座は前かがみの微妙な角度のまま、やっとのことで床上に残っている。

こうして数週間、トイレは 「使用中に地面に落ちるかもしれない」という恐怖の時間と化した。 ここで怪我なんかして、救急車を呼ぶことになると、かなり恥ずかしい状況だ。

「ロンドン在住の日本人女性。自宅で怪我。床が抜け、便座ごと地面に転がり落ちた模様。さすがの救急隊員も青ざめる凄惨さ。応急処置のスーパーの袋で自業自得か?」
残りの人生、 「便座の女」 とか 「ころびトイレ女」 とか呼ばれる運命となるのだろうか?

しかたなく、イギリスの某大手業者(オレンジ色のロゴでバーベキューみたいな名前のあの店ね)に見積もりを頼んだ。

と、ものすごく高い。明細書を見ると 「浴槽の取り外し費用 XXXポンド」と古い浴槽を運び出すだけでも日本円で数万円もする。 蛇口ひとつで数万円。 「総ひのき」 のお風呂の値段かと思ったね。

おまけに 「工事に取り掛かるのは3ヵ月後」とか。それまでにはトイレは地面に落ちてると思う。 下手すると私と一緒に・・・。

またまた他の業者を探していると、知り合いの人が紹介してくれた。今度は見積もりが半分近い。しかもすぐに取り掛かってくれるとか。

工事中は友人宅に泊めてもらった。約束通り2週間後にはピカピカのバスルームが完成し、やっとバスタイムがリラックスタイムになった。
ああ、落ちなくて良かった・・・。

投稿者 lib : March 16, 2009 11:56 PM

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