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September 02, 2009
アスコット
忘れた頃に最後のアスコットである。
ホリディの予定を立てていたら、大変なことが (本人にとっては)起こったので、しょげていたのだ。
さて、どこまで言ったっけ? そう、期待のランチだ。 プライベートロッジでのランチというのは何だ? 競馬場の中のレストランではなく、真向かいにある建物らしい。 ここは誰かの邸宅という感じ。 もしかすると競馬の期間中だけ貸し出しているのかもしれない。 二階は住居になっているのかしらん?
外から見ても大きな家だが、玄関ホールが私の家の半分近くあった (比べる対象が貧弱だったか?) 両側にウエイター、ウエイトレスがずらっと、そう、ずらっと並んでいる。 もし、これが私の家の玄関なら、ウエイターがずらっとは並べない。ず、くらいだ。 (だから、比べる対象が貧弱だってば)
「トップハットをお預かりしましょう」と友人の帽子が取られた。 そういえば、トップハットを脱げるのはプライベートクラブ内だけとか書いてあったな。 誰のかわからなくなるので (どうせ貸衣装なので) 帽子に名刺をつけて並べられる。
で、私の帽子は・・・脱いではいけないのだった。 女性は食事中もかぶったまま。頭が蒸れそう。
玄関ホールを進むとテラスでその先は庭園というよりは、ゴルフ場と呼んだほうが近い。「いいお庭ですこと・・・」 というよりは、 「すばらしい景観ですね!」 という規模だ。 しかもテラスからは急な坂になっていて、これにシャンペンを加えるとドレスを着たまま転げ落ちる日本人ができる・・・と大変なので、
1. あまり飲まない
2. テラスの端に行かない
上記を注意しなければならない。
60人ばかりのランチで某企業の招待客だ。 私もね。 まあ、私は余ったチケットの補欠人員だが。 10人ずつの丸テーブルが6つ、私は友人とテラス席のひとつに座った。 やったー、いいテーブルと思ったが、なかなか曲者のメンバーだった。
10人のうち、ゲイのカップルが2組。 キャメロン・ディアスそっくりのロシア人ガールフレンドをつれた男、帽子はかぶっているものの 「潮干狩り用」のような帽子をかぶった妻をつれた男。 で、私は唯一の日本人。 キワモノが揃っている。 私の友人はたいへん女心がわかった男で、競馬場でも 「あれはジミー・チュー、あれはマロノ・ブラーニク」 とファッションに詳しいところを披露しており、 (もしかして、ゲ・・・?) と日頃から疑っていた。ここでもまた (もしかして・・・) と思った次第である。
10人中、競馬の経験者は私だけというすごい状況。 「競馬は初めて」 「どの馬がいいんだろうね」 「この表のマークはどうやって見ればいいの?」 という会話である。
やはり、ここは
「あら、フレッドおじ様の馬が出るのね」
「ジョージアナが婚約祝いに買ってもらった馬はいつレースに出るのかしら?」
などと、アスコットなんて通い慣れてます、とイギリス貴族風にやってみたいもんだが、企業の招待客(と余りチケット招待客)はこの程度のレベルであった。
ゲイのカップルは2組ともアメリカ人だった。 アメリカ人と話すのはひさしぶり。 いやー、この超軽いノリが懐かしい。 私がジョークを言うと、イギリス人ならクスッと笑うくらいだが、こいつら笑うのなんのって・・・。ジョークが受けるのは嬉しいが (そんなにおもしろい事言ったっけ?) と、こちらがとまどうような激しい反応だ。
潮干狩りおばちゃんは 「帽子ならいいんでしょ?」と、麦わら帽子に近いものをかぶっている。 シュリンプカクテルにレモンのタネが入らないようにかぶせてあるガーゼをわざわざはずしたり、とんでもない順番のナイフとフォークを使ったりして、とまどっているようだった。 自分だけ接待を受けている人は時々奥さんも食事に連れ出して、場慣れさせてあげたほうがいいかもしれない。見ていてかわいそうだった。
ランチは盛り上がった。 が、盛り上がって2時を過ぎてしまい、女王陛下の馬車による来場を見逃してしまった。 ふと気がつくともう女王は場内で観客に手を振っている。 しまった! ロイヤルアスコットのキモである女王の実物を見ないなんて、何たる失態。 競馬場の真向かいにいて、テレビで女王を拝むなんてバカみたいだ。
女王は機嫌が悪そうな顔をしていた。 きっと (庶民が貴族の趣味に押しかけやがって、まーったく。馬も知らないくせに) とか思っていたのだろう。
この日、スタート直後に騎手を振り落とした馬は1着でゴールし、そのまま制止もきかずに、2周ばかり気持ちよくコースを走り、観客の拍手喝さいをあびたのだった。
アスコットの巻 完
投稿者 lib : September 2, 2009 09:53 AM