« 義理ママとの日本旅行 その9 | メイン | アーセナル V バルセロナ 潜入大作戦 »

March 29, 2010

映画 「秋日和」

career2.gif
「秋日和」 という映画を見に行った (連れて行かれた)。 監督は小津安二郎。 主演は原節子と司葉子。 

映画に興味のない私だが、監督の名前は聞いたことがあるし、原節子といえば・・・原節子といえば、・・・よく考えると、彼女の映画を見るのも初めてだ。 だいたい、映画が始まってから、15分近くたってから、どの人が原節子かわかったくらいである。

郊外の小さな映画館で席は70席 (思わず、数えた)ポップコーンマシーンのない映画館なんて、珍しい。 コーヒーショップのお兄さんまで、
「いやー、小津はいいですよ。 あのカメラワーク、本当にすごいです」
と、映画評論家のようなことを言う。 聞く私のほうに素養がないのが残念だが。

日本人らしき顔が数人見えた以外は、すべてイギリス人。 それも 「文化人と呼んでいただいて、結構ですよ。 こんな外国映画の良さがわかるには、それなりにインテリジェンスが必要ですからね」というタイプである。 

日本映画ということだけで誘ってくれた友人に 「映画の内容知ってる?」と聞かれ、
「えーと、有名な監督による、有名な女優が出る映画。 ストーリーは知らないけど、たぶん大きなイベントはなくて、淡々とした日常の話と思う」 と答え、
「ラブストーリーなの?」 の質問には
「さあ・・・。でも、きっとラブシーンはないと思う」
と、後で考えると、まとはずれでもない予測だった。

適当な席に腰を落ち着けると、前の列に背の高い男が座り、彼の頭でちょうど字幕の部分が隠れてしまった。

・・・ふふふ、いいのよ。 だって、私には字幕は必要ないのよー。

日本に一時帰国すると、会話に看板に新聞に広告、のすべてが100%理解できることに新鮮な気分になるものだ。 (注:女子高校生の会話を除く)

「あら、おじさまったら、意地悪をおっしゃるのね。 わたくし、もう、知りませんことよ」 なんて、日常生活にありえないほど不自然なセリフが棒読みされたりするが、それでも100%わかる。日本映画っていいねえ。 

さて、昭和35年、芸術祭参加作品というタイトルが出た。 何十年前の映画だ? 原節子って、まだ生きていたっけ? 俳優の名前が流れると、意外にも、あちこち俳優の名前に見覚えがある。 が、この映画ではずいぶん若い頃で判別できなかった。

うわー、昭和35年って、こんな感じだったんだ。 オフィスやその応接室、銀座のバー街、「青年たちによるハイキング」のシーンなんて、あまりの 「爽やかさ」 にめまいがしたくらいだ。 映画そっちのけで、昭和ノスタルジーにひたってしまった。 が、寿司屋だけは店の作りもメニューも同じだな。

これが原節子か・・・。 実はあまり美人とは思えなかった。 この映画ではお母さん役だったから、年もそれほど若くはないのだろう。 しかし、優雅。 身のこなしが流れるようにエレガント。 それでいて、かもし出される色気。 日本の堅気の女の色気の最高峰を見せてもらった。

セクシーといえば、最近は肌と体の線をバンバン出して、ストリッパーみたいな振り付けのシンガーが多いが、少し原節子を見習ってみなさい。 (無理か・・・)

男同士の友情、母と娘の愛情というのがテーマだったが、死んだ夫に操を立てる、などと、理解のできない項目もあった。 とりあえず、昭和の風景と原節子の優雅さにうっとりとしているうちに映画は終わった。

ロビーで友人を待っていると、 「文化人風の」男がふたり、つまり、自由業で、金に不自由がなく、商業主義はダサいと思っている感じのイギリス人が話している。 

「日本人の友達が欲しいんだ。誰か知り合いはいないかな?」
「今はいないね。 東京の友人はみんなシンガポールに移動しちゃったからな (マネーマーケットの人たちらしい)」
「日本人の女性と話してみたいな」

私はそーっと、その場を離れた。 「あ、ところであなたは日本人ですか?」なんて、声をかけられたら大変だ。 原節子を見て日本人女性のイメージを浮かべた後で、私と話すのは、お互いに不幸だと思ったからである。

投稿者 lib : March 29, 2010 09:19 AM

コメント

コメントしてください




保存しますか?