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May 13, 2010
グラマラスな総選挙
イギリス総選挙である。
お調子者トニー・ブレア前首相に美味しいところを全部取られ、雲行きが怪しくなったあたりで首相の座を譲られた渋顔のゴードン・ブラウン。なった途端に地下鉄テロは起きるわ、総選挙前には経済危機は起こるわ、で本人は悪くないのに「次は間違いなく保守党に政権交代」と太鼓判を押されての選挙戦である。
年も若く、舞台化粧バリバリ、ボトックス注射でしわ取りをしてそうな保守党のデビッド・キャメロンに対抗して、慣れない笑顔を作るブラウンは見るのが痛々しいほどである。キャメロンの政治能力は不明だが、苦虫顔のブラウンに比べれば、フレッシュなイメージは有利。さっそうと自転車で国会通勤する姿も、ま、良いでしょう。自転車にはボディガードが乗った車が後ろからついてくるので、最初から、その車に乗ったほうが早い気もするが。
労働党、むすっと顔の中年男ブラウンと保守党、ボトックスつるりん顔の若造キャメロン(注:ボトックス使用の裏づけはありません)の一騎打ちと思われたこの選挙。思わぬ伏兵は自由民主主義党のニック・クレイグ。ボトックス必要なしの若さ。利権がない弱小党がゆえのスキャンダルフリーな新鮮さ。テレビ討論で、その議論テクのうまさを披露し、一気に人気に火がついた。クレイグは今まで「この人、誰?」というくらいに知られていなかったのに、急に祖父側は北イギリスの労働者、祖母側はロシア貴族という家系図まで新聞に登場し、ファンがついたようである。
今まで若さでちやほやされていたのに、新人OLの入社で中堅ところに追いやられた気分のキャメロンの恨みは、クレイグに対する攻撃で明らかである。「若造」の座をクレイグに奪われたキャメロンはベテランではないが、それほど若々しくもない中途半端な位置に置かれてしまった。注入するボトックスの量も増えたことであろう。って、ボトックスの証拠はありませんが。
さてキワモノ政党の代表はBNPだろう。移民排除がスローガンで、人種差別バリバリという時代錯誤のユニークさだ。ニュースダネになりやすいので、党首、ニック・グリフィンの飼い犬の名前が「アンネ」と「フランク」だとか、ゴシップが飛び交った。(本人は否定)人種差別発言をしている隠し映像をさんざん公表されているのに、「人種差別はしない。そんな事を言った覚えもない」とシラを切る態度もいかにも一筋縄ではいかない政治家らしくナイスだ。政党にありがちなチャットルームがないのは「党員は教養がない下層階級が多く、コメントは文法ミスとスペルミスばかりで恥ずかしいから」なんて噂もあるくらいだ。(真実味があるところが怖い)
このBNPの女性候補者はイスラム教徒をバカにするべく、ブルカ(あの黒ずくめですっぽり身体を覆うスタイル)にスリットを入れて、網タイツを履き、イスラム教では禁じられているアルコールを手にパーティを楽しんでいる写真をすっぱぬかれたお茶目な女だ。彼女が国会議員になったら、世も末だと思うのだが、BNPの正式な候補者であるらしく、この政党の懐の深さを感じさせる。
ブラウン夫人のサラはこの4年できれいになった。首相就任時に官邸前に並んだサラ夫人は、もっさりした体型にボーっと締りのないメイクとダサいスーツ姿で登場した。それが、元モデルで洗練されたフランス大統領のカーラ夫人と写真を撮られたりするものだから、「・・・イギリスの負け」を思い知らされた。が、チャリティイベントでナオミ・キャンベルとお友達顔で並んだりしていくうちに、体型もすっきり。山出しのおばさんだったのにねぇ・・・公の視線は女を磨くものですね。
キャメロン夫人は「良家のお嬢様」らしい。保守党というくらいだから、難民としてイギリスにやってきて、貧民街育ちで前科持ちから更正した女が妻というのではまずいだろう。親のコネで就職したようなキャリア志向のない、品のいい仕事をしているのも、奥様らしく好感が持てる。選挙中に妊娠までしてしまったのも、宣伝効果を狙ってのことか、それとも「事故」か、気になるところだ。
さて、選挙結果は不安定な連合政権。どの党も過半数が取れず、人気のわりに議席数を失ったクレイグの協力を求めて大騒ぎ。やっと政権は保守党に決まり、キャメロンが女王陛下にご挨拶に出かけた様子である。女王にとってみれば、12,13人目の首相であり、「はい、はい、ご苦労さん。じゃ、がんばってね。で、あなた、誰だっけ?いいわ、どうせ数年で変わるんでしょ?名前を覚えるまでもないわね」なんてものだろう。
地元の駅に候補者が立っているわ、家に政党のパンフレットが配られるわ、シティでは「支持政党のところから取ってください」とクリスプが並べられているわ、とお祭り騒ぎの日々だった。が、こーんなに税金を取られているのに外国人の私には選挙権がない。代わりに地方税を割引してほしい。でも、日本で何回選挙に行ったっけ?もし、ここで選挙権があって、私は投票に行く・・・かな?
投稿者 lib : May 13, 2010 03:34 PM