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March 10, 2011
消えたゲート
外国暮らしをしていても、というか、外国暮らしをしているからこそ、家に帰れば、ほっと一息つくものである。 クタクタになるまで働き帰宅する (私には無関係) あるいはほろ酔いで帰宅 (ま、ときどき・・・) しても、愛する我が家が見えてくれば、やれやれと安心するものだ。
が、ある日のこと、会社から帰り、家の前に立ったとき、ふと違和感を覚えた。
何かが違う。 物の位置が移動しているか、色や形態が違うか、余計な物があるか、あるいはなくなっているか・・・・.
余計な物があったのは数年前のこと。 酔っ払って帰宅すると、前庭に For Sale (売り家) の看板が立っている。 一瞬、目を疑ったが、 (今、私は酔っ払っていて、精神状態はノーマルではない。幻覚を見ている可能性がある) とあえて、深く追求せずに家に入り、そのまま寝てしまった。 翌朝、そーっとドアを開けると・・・まだそこに看板はある。 なぜ? 持ち家なのに家主の私の知らぬ間になぜに家が売り出されているの?
そのときは、不動産屋が同じ番地だが別の通りの家と間違えて看板を立てたことが発覚し、無事に看板は撤去されたのだった。
が、今回は、余計な物があるのではなく、なくなっていたのだ。
はっ、ゲートはどこ??? ゲートがない!
ロンドン郊外に住んでいる。 いかにも私のような中級サラリーマン(サラリーウーマンだな)に身分相応な中古、中型、中流向き住宅である。 道路があり、歩道があり、前庭があって、家がある。 で、公の歩道と前庭を仕切るものが、 「ゲート」 そう、今朝までは門扉があったのだ。
腰までの高さ、幅も90センチくらいの小さな金属製のゲートである。 周りの家のゲートも似たようものだ。 昨日まで気にもしなかったが、なくなってみると、何だかスカスカと隙間風が吹いているようなわびしさがある。 公共の場と私的領域との境が取り去られたせいである。
誰かが開けたはずみに、はずれてしまい、その辺に置いてあるのかと前庭を捜すが・・・ない。 悪ガキにいたずらされたのなら、その辺に投げ捨ててあるはず。 で、近所をキョロキョロしながら見回った。 大きなゴミが積み上げてある所や、改装中の家の資材置き場等々にも・・・ない。
盗まれたようである。 ゲートなんかを盗んで、いったい何になるんだ?
友人に聞くと、古びたゲートでも、金属を重さで買い取ってくれる所へ持ち込めば、何がしかのお金になるらしい。 私の家のかわいそうなゲートは、かどわかされた上、今頃は他の金属と一緒に溶かされているのかもしれない。
こんなことになるなら、もう少し気を使ってやればよかった。 帰宅時にはただいま、と声をかけるとか、休日にはほこりを払ってやる、 年に一度くらいはペンキを塗り替えるくらいのことはしてあげればよかったのにと深く反省する。
溶かされるときにゲートは何を思っただろう? 冴えないゲート人生だったな。 今度生まれ変わるときには、公園の噴水の金具なんかがいいな。 犬が散歩に来たり、子供が駆け回るのを見たい。 それとも、ハードに決めて、刑務所の鉄格子なんかもいいかも・・・と未来の自分を夢みながら溶けていったのかもしれない。
しかし、セコイぞ、門扉泥棒とは。 罪を犯すなら、もっとドーンと大きなことをやらんかい! いや、犯罪を推奨しているわけではありませんが。
2週間が経ったが、どうやらゲートは戻ってこないようである。 で、これからどうしよう? 警察に届ける? 保険会社に連絡して、保険金をもらう? と、その前にガーデンセンターの折込チラシでゲートの値段を見てみたら、60ポンド程度であった。 ん、もう、面倒くさいなあ、60ポンドのために警察に通報だの、保険請求だのの手続きなんかするのは。 しかたない、諦めるか・・・。
ゲートちゃんの冥福を祈る。
投稿者 lib : March 10, 2011 12:07 PM