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May 09, 2011
震災
イギリスに住んでいると、チャリティには食傷気味になってくる。
アフリカの飢餓、南米のストリートチルドレン、パキスタンの洪水、ハイチの地震。 イギリス国内でも、難病、身体障害へのチャリティに次々と募金を求められる。
募金をする、募金を集めるというのは、「クリスチャンとしての義務」 なんでしょうかね。 会社でも、 「XXのため」 の回覧が毎月のように回ってきて、気分は 「冠婚葬祭的社会義務」 である。
健康で不自由のない生活をしている者にとっては、困っている人達の映像を見ている間は、かわいそうだと思い、募金でも 「しなくっちゃ」 という気にはなる。 が、その場が過ぎてしまうと、他人事として忘れてしまうことが多い。
東日本の震災は感じ方がまったく違っていた。
規模がすさまじかったせいもあるが、直接の知り合いに被害がなくても、同じ日本人として、人ごとには思えなかった。 大変なことが起こったと頭で理解するよりは、胃のあたりがずっと重たく痛い感じが続いた。
津波の映像は強烈で、町が破壊されていくさまはまるで映画の中の出来事のよう。 最初の2日、Youtubeで見続けるうちに、気分が悪くなってきて、映像を追いかけることを止めた。
正直なところ、しばらくの間、精神状態はかなり不安定だったのではないか。 朝、通勤電車で震災関連の記事を読みながら、ウッときて、会社に着く頃にはマスカラでパンダ目を形成していることは珍しくなかった。 電車内では目元を赤くして涙をこらえてる人が他にもいて、すぐに日本人だとわかるのだった。
最初は被害にあった人、亡くなった人や家族を亡くした人を思い、気の毒でたまらなかったが、次の段階は、世界から受けた同情にぐっと来た。
イギリスの新聞の一面に出た 「がんばれ日本、がんばれ東北」という日本語はうれしかった。 ウィンブルドンの駅の近くの壁に大きな日の丸が 「落書き」されていて、その右下に英語で 「祈りをこめて」 と書いてあるのを見て、思わず涙をこぼしてしまい、花粉症のふりをして、ティッシュのお世話になった。
コロンビアの孤児院の子供たちがお見舞いの絵を描いて送った とか、バングラデッシュとパキスタンの留学生が避難所でカレーの炊き出しをしたとか、そんな記事を読むたびにホロッとなってしまい、毎日そんな事が続くうちに目の下の皮膚が涙でかぶれた (実話)。 もっとも、バングラデシュの本格的なカレーが東北の人の口にあったかどうかは少し心配だったが。
今回の募金はもしかすると生まれて初めて 「義理」 に基づいたものでなかったかもしれない。
バイオリニストの葉加瀬太郎氏は、ロンドンのあちこちでチャリティコンサートを開き、募金だけでなく、日の丸に寄せ書きを募っていた。 そんなコンサートのひとつに行ったら、イギリスの赤十字の人が 「コインでなくて、お札、お札を募金してくださいね」 と流暢な日本語で叫んでいた。 おかしかったが、確かに効率的である。
大口の寄付も気になった。 ユニクロの社長が10億円を出して、おおっと思ったら、ソフトバンクは100億円・・・日本の銀行の5千万円-1億円というのはケチ臭いな。 もう少し何とかならないの?
震災2週間後に一時帰国した。 実家に用事があって元々決まっていた日程だった。
ほとんど外出もせずに家でずっとテレビを見て過ごした。 避難所に物資を輸送したり芸能人が慰問(?)をしている様子の他に、原子力発電所や放射能について、専門家が出演していた。 原子力発電所の設計建築士、放射能の科学者、放射能による身体への影響を説明する医者、放射能が天気や風によりどの方向へどう流れるかを予測する天候の専門家・・・と日ごろ大学の象牙の塔で黙々と研究をしているような学者も含めて、テレビに出ていた。
政府が嘘をついている、実情を隠しているという非難があるが、政治家は学者ではないので、嘘をつくほどの頭脳や専門知識はないという気もする・・・。
BBCの朝のニュースでロンドン勤務の日本人ビジネスマンが出ていて、「これから大変ですね」と聞かれたときに、「全力で立ち直ります。イギリスだってテロの後、ものすごくがんばったではないですか」 みたいな事を答えていて、思わず、 「そうだ、そうだ」 と同感したのだった。 そういえば、7月7日のロンドン地下鉄テロの後、 「こんな卑劣なテロに負けません!」と答えていたイギリス人が多かったなと思い出した。
がんばります、がんばって下さいという言葉は、深く考えずに挨拶がわりだが、この震災の後のがんばります、がんばって下さいというのは本来の意味で使われている気がする。
災害は愛国精神を高揚させるものだな。 自分でちょっと恥ずかしいけど。
思考の果て。
みなさん、ご無沙汰です。
初めに、、、
今回の東日本大震災の被災者の皆様に心からお見舞いを申し上げます。
私のブログをいったいどんな方が読んでくださっているか。毎回気に留めていることではありますが、今回はいつもより色々と思いをめぐらせ、考えながら記しています。
実は3月の震災後、書き始めては消し、また書き始めては消した記事がいくつかありました。こんなに自分の頭の中が整理できなくなったのは久しぶりです。
震災に関して私自身が感じたこと思ったことは様々で、これからも何か明確な答えが出ることではないし、うまく自分の力で表現できるものでもないんだろうと思っています。あんなに人の気持ちにアンテナを伸ばそうと、もがいたのは初めてだったかもしれません。どう感じ、どう考え、どう行動するのか、、、自分の人間性を大きく試されているようにすら感じていました。
でも、やはり最後にたどり着くのは、当事者の気持ちをいくら私が分かろうとしても、彼らの気持ちに添おうとしても一緒にはなれない。思いを向けることは出来ても、それは結局、私の想像の範囲を出ることはない。だからといって何も考えず、行動しなくて良いはずが無い。そこに正解も何もないない、ただの独りよがりかもしれない。けれど、自分の人間性を信じて考え、行動するしかないのだと。こうやって、毎回、長い思考の最後には、あやうやな、単純そうな、でも決して簡単ではない結論に達します。そしてまた自分の中の「正解」を求めてあれこれと考え始める、、、。この繰り返しです。
3月11日の地震発生以来、4月のイースターの休みに入るまで、私の同僚・生徒たちは毎日のように温かい言葉をかけてくれ、続々と義援金を集めるための活動をしてくれました。本当に胸が熱くなりました。被災地の人々はもちろんのこと、混乱の続く関東圏の人たちに直接届いたらどんなにいいのにと思います。
この人たちの活動を日本にいる人たちに伝えられるのは私以外にいないのだし、伝えずにはいられない気持ちなので、今回のブログは、そのことについて端的に報告させてもらいます。
集まった義援金は学校名義でイギリスの赤十字社に送っています(うちの学校の会計システム上、イギリスベースでしかも小切手で送れる団体じゃないと不可であるため)。
1、Red Nose Dayというイギリスで毎年恒例のチャリティデーにうちの学校で集まった1500ポンドのうち500ポンドが日本への義援金として送られました。
2、同僚Rが自分で作ったProfiterole(ちいさなシュークリームみたいなお菓子)を売って集まった148.50ポンド。
3、同僚R&Aが企画してくれたチャリティフットボールマッチで生徒から約200ポンド。
4、同僚Tが担任クラスの子供たちとチャリティマラソンを企画。なんと、生徒、同僚から500ポンド以上集まりました。
5、私の担任クラスの子がやったケーキセールで約150ポンド。このケーキセールには9年生、10年生の生徒、私の同僚4人が手作りのケーキ、クッキーを提供してくれました。
6、多数の7年生の生徒たちがSponsored silenceで50ポンドくらい集めてくれました。(注:Sponsored silenceというのは例えば、一日一言もしゃべらないかわりに、周りの人にスポンサーになってもらってお金を寄付してもらうこと。おしゃべり好きな子供たちにはつらいことだけど、その努力に対してスポンサーはお金をあげるという仕組み。イギリスの学校ではポピュラーな方法です)これはまだまだ続いています。
7、私の担任クラスの生徒Eが自分の家で自発的にSponsored silenceをして17ポンドくらい集めてくれました。とっても責任感が強くて心優しい子です。
他の7年生のクラスもケーキセールで義援金集めたけど、金額は私が集計したわけではないので不明です。ここに書いた以外でも個人として義援金を送ってくれたひとはたくさんいるし、活動中のものもあります。
ちなみに前も書いたことあると思いますが、私の学校はロンドンの中で一番貧しい区にあります(といってもあくまで先進国イギリスのなかで、です。スラムがあるとかそういうわけではありません)。失業率も高いし、国の教育予算カットでかなり打撃を受けるだろうといわれている(というかすでに受け始めている)地域です。
そんな地域にもかかわらず、そして、日本という場所も今まで知らなかったくらいの子供たちが(中にはいままで私を中国人かベトナム人だと思っていた子もたくさん)、一生懸命身近な問題であると感じて行動してくれました。 私が彼女らが実際に知る唯一の日本人であることもあり、私を通して日本を考えてくれているのがわかりました。私自身が「チャンネル」のような存在になっていることが、無力さばかり感じていた震災直後の私の支えにもなっていました。
今回、こうして金額をリストしたわけですが、誰がいくら集めたからどうということではないのです。関わった全ての人の心に尊さを感じています。各界著名人たちが送る義援金とは比べものにならない額ですが、すごく思いやりの詰まったお金です。これが日本に送られます。簡単なことではなく、長い道のりかもしれませんが、少しでも東日本の、特に地震、津波で甚大な被害があった地域の復興に少しでも役に立ちますように。
イギリスはイースターも終わり、ロイヤルウェディングのあった週末も終わりました。いよいよ新学期です。休みで得た新たなパワーで私自身、ここで終わらずに一個人として考え、被災地のためにできることを続けていきます。