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August 24, 2006

一時帰国 その2

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日本の物価は高いだろうねとイギリス人から言われるが、ロンドンの方が高いと思う。ヨーロッパの他の都市に駐在する日本人からも、
「ロンドンは何もかも高いですねえ」という声を聞く。

この「高い」というのは、「この程度の品質の商品なのに」とか 「このレベルのサービスなのに」のニュアンスがあるのも見逃せない。

特にパリやブルッセルからのビジネスマンは、ロンドンのレストランで「庶民的レベルの食事」に「女王様価格」がついているのにびっくりする。
・・・日ごろから安い値段でおいしいものを食べているらしいな。

交通費にも驚くようだ。
ロンドンの地下鉄やバスの運賃は1ポンド50ペンスからで400円近い。
こんなに取るくせに 「来たり、来なかったり、すぐ来たり、ひどく待たされたり」 と 「女心と秋の空」みたいに思わせぶりで気まぐれな運行である。

以前はよく、駅と駅との間に電車がじーっと停まったまま、何が起こっているのか知らされずに30分も待たされたものだが、情報開示に積極的なこの頃、
「乗客の皆様にお知らせいたします。現在のところ、どのような理由で電車が停まっているのかについての情報は・・・ありません」
と、情報がないことの情報を流してくれる。

帰国中に見た日本の電車の運行の正確さも美しきカルチャーショック、その2である。

駅員の「指差し確認」は 「殺人的満員電車」に次いでイギリス人にも知られている。テレビなどで見たことがあるらしい。

新幹線をプラットフォームで待っていたときのこと、偶然、駅員さんの傍にいた。
柱には「三種の神器」ともいうべき、赤と緑のランプがついた「信号モニター」と赤い線のついた棒が移動するようになっている 「時刻表」とまるでストップウォッチのような「デジタル時計」。

おおい、イギリスの鉄道会社の人、「ストップウォッチ」だぞ、「ストップウォッチ」。
君たちのように「日時計」あるいは「花時計」ベースで運行していないぞ。

そして、この三つと電車とを行き交う「指差し確認」はひと電車につき、十数回に及んだのだった。(思わず数えてしまった)

今考えれば、日本人のくせに物珍しそうに彼の動作に見入っていた私も不気味だったかもしれない。そのプレッシャーにもめげずに芸術的確認作業をしてくれた駅員さんはりっぱだ。

折り返し地点でもある東京駅は電車が入ると作業員の出番である。
手早くゴミを集め、座席の白い布カバーを取り替えていく。その手際のいいこと。
イギリスの電車に乗り込んでくる清掃員の、
「イヤイヤながらやってます。全くやる気はありません。あー、ヤダヤダ。適当にやって早くオウチに帰ろう」
のメッセージが聞こえてくるようなタラタラした態度とは雲泥の差。

「さあ、乗客のみなさん、どうぞ。快適な旅をお祈りします」と言わんばかりの顔で作業員が降りてきた。

いいなあ、働き者の日本人。ウルウル。

新幹線の車両の中はそこはかとなく消毒液が匂う。
なにもかもが効率的で清潔。
でも、ここまで衛生的だと免疫力が落ちて、かえって病気に罹りやすくなったりして・・・。

新幹線では数列ばかり離れた座席にサラリーマンのグループが陣取った。うなぎ弁当がそれぞれに配られ、ビール缶のプルトップがつぎつぎと開けられる。
出張の帰りなのか、一仕事終えた充実感に満ちた顔つきで開放的な雰囲気だ。

と、ひとりのうなぎが一切れ通路に落ちた。
(誰かが踏んですべったりすると危ないなあ)と見ていると、その手が通路に伸びる。
(よし、よし、公共道徳に則って、ちゃんとゴミ箱に入れようね)と思っていると、彼はなんのためらいもなく、そのうなぎを自分の口に放り込み、私をあ然とさせたのだった。

うーん、さすがは日本経済の屋台骨を支えるサラリーマン。そして、彼らによって日本の免疫力も支えられていくのだな、と、そのサラリーマンの豪快さに感心したのだった。

投稿者 lib : August 24, 2006 08:30 AM

コメント

洋子さん、面白すぎです。そしてイギリスの物価高に納得の拍手です。私もロンドンのサンドイッチに何度、「日本のコンビニのサンドイッチを見習え~君の半額で10倍は美味しいぞ~」と叫んだことでしょう。まさにちゃぶ台をひっくり返したい気分でした。(^^;)(手元にちゃぶ台なかったからひっくり返さなかったけど)

投稿者 Eiko : August 25, 2006 02:45 AM

大爆笑です、まったくその通りです!!
ロンドンの人たちって人懐っこくて大好きですけど、あのゆるゆるぶりに「長くはいられないな…」とそそくさ帰国しました。日本に帰って、当たり前のことを当たり前にサーブされる喜びに浸っています。勤労万歳!
それにしても困るのは食べ物ですよねえ。“ちゃんと美味しいもの”を食べるには、日本で“間違いなく美味しいもの”を食べる金額を払わなくちゃいけない。確かに美味しいけれど、会計時にいつも「そこまで美味しいか?」と首をひねるはめに。それとホテル。まともなサービスを受けるには1泊3〜4万以上は覚悟しないと、日本のラブホテルにも引けを取らないダメっぷりを見せつけられますよね(笑)
いやぁ日本はいい。日本育ちにはやはり日本がいいヽ(´∀`)ノ

投稿者 nonoco : November 17, 2006 07:11 AM

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