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March 22, 2008

ほっとした瞬間

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先週は気の休まらない週でした。

前回のブログで書いたように採点物が多かったせいもありますが、それよりも何よりもずっと気にかかることがあったからです。

実は数週間前、Six form(うちの学校は12・13年生がA-levelというコースをやるための学校であるSix form collegeが併設されています)のHeadである同僚Sからメールが届きました。

「17日にあなたの12年生の授業(最初の半分である50分間)を観察します」

観察の主眼点は『Challenging Lesson』。ひとりひとりの生徒の知識と理解を深め、より高いレベルまで教科に関わるスキルを伸ばせるような内容の授業を教師がおこなっているかをモニターするのが目的です。授業観察自体はこの国で教師になってから数え切れないほどされたので慣れているのですが、観察の目的が目的なだけに自分がどれほどレベルの高い授業を生徒にわかりやすくやれるか問われるということもあり、メールを読み終わった後は緊張感が体中に走っていました。

A-levelはほぼ日本の大学のゼミに近いような授業をします。割と小規模なクラスで、討論なども活発に行われます。歴史に関して言えば、史実をそのまま知識として教えることの多いGCSEと比べ、より生徒の史資料(一次史料・二次史料含めて)の理解力・分析力が問われ、それから著名な歴史家たちの学説などもある程度理解・考察する必要があります。そのため、そういう知識・スキルを問うA-levelの試験は短答式ではなく、すべて記述式なのです。

日本で教育を受けた私自身、歴史家の学説にまともに触れたのが大学2年でゼミに入ってからですから、A-levelを教え始めたときはずいぶん高度なことを早いうちにやらせるのだなと思ったものです。

A-levelの試験結果は生徒がどの大学にはいれるかを左右するものですから、教える側も慎重に授業計画をしなくてはなりません。私自身、A-levelを教えるのは今年で3年目ですが、特に今年から教え始めたナチスドイツ史の週二回の授業準備には毎回相当時間をかけています。

そんなわけで、先週一週間はこの月曜日の授業のことで頭がいっぱいで、相当ナーバスになっていたわけです。実際、金曜日の放課後から日曜の夜まで、空いてる時間はすべて準備に当てたわけですが、やはり観察授業となるといつもより気を遣う点も多く、結果的にいつもの3倍は時間をかけることになってしまいました。

そしていよいよ当日。教室に着くとほどなく同僚Sが。彼女は宗教を教える教師でもあるので歴史とは学部が一緒のため、よく顔を合わせる同僚です。とはいえ、今回は私の上司として観察するわけですし、彼女に授業を見られるのも初めてなのですごく不思議でした。

生徒もそろい、授業開始。緊張するかと思いきや、授業が始まってしまえばこちらもリズムに乗ってきて観察されていることもあまり意識せずにできました。生徒もいつもどおり(もしくはそれ以上?)、積極的にディスカッションに参加したり、面白い意見を出してくれたりして好調。計画したよりもひとつひとつのタスクに時間がかかってしまいましたが、結果的には内容の濃い授業をみんなで作り上げたという満足感がありました。

あっという間に50分の観察終了。昼休みに感想・注意点なども含めたFeedbackをもらえるというのでどきどきしながらそのままあと50分授業を進めました。

そして昼休み。同僚Sから授業の感想を貰いました。彼女の授業観察の紙には観察のチェックポイントがならんでいたのですが、そこには「Y」という文字がいっぱい!「Yes」の「Y」で目標到達した部分が多かったという証拠なのでほっとしました。

最後まで授業計画案よりも時間がずれたことが気になっていましたが、そこには全く触れられず、私が生徒一人一人の学力に合った課題を与えたこと(Differentiationと呼ばれます)、授業中のディスカッションの質問も適切で授業に良い流れがあったこと、そしてなによりも生徒が意欲を持って授業に臨んでいたことなどがあげられました。

実はこれは教師4年やっている中で一番嬉しいフィードバックでした。なにしろ、12年生の生徒は16・17歳くらい。下手をしたら私よりもボキャブラリーが多く、(あたりまえですが)流暢に話すので、ネイティブでない私は彼らとのディスカッションをスムーズに進めるだけでもチャレンジであったりするのです。

今日の授業を土台にしてもっと自信と実力をつけたい。久しぶりにすごくポジティブな気分になれた出来事でした。

投稿者 lib : March 22, 2008 09:37 AM

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