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March 27, 2008

お星様きらきら、瞳きらきら。

teacher.gif
イースター明けの今日、兼ねてより楽しみにしていた授業がありました。

実は、EAL(English as an additional language) group、つまり英語が母国語ではない子供を集めた小さなクラスでEAL専門の教師である同僚UとTeam teaching(複数の教師がチームになって一緒におこなう授業)をする約束を数週間前にしていたのです。

移民の多いロンドンでは大抵どこの学校へ行っても必ずEALの子供がいます。学校によってサポートする体制に多少差はあるかと思いますが、普通、In-class supportと言って、専門のアシスタントスタッフが普通授業のなかでEALの子供を個別にサポートするか、Withdrawal sessionといってEALの子供たちだけを集めてEAL teacherが別の場所で授業をするかのどちらかになります。

最近では「Inclusion」というコンセプトが当たり前になってきていて、EALでもビギナーレベルの生徒以外はなるべく普通の授業に参加して他の子供たちと一緒に学ぶほうが英語の伸びが良いとされています。これは現場では是非の問われるところですが。

さて、なぜ歴史教員の私がそのEALの授業に参加することになったのかといいますと、、、。同僚Uが授業で自分が日本の俳句について教えるからその延長で私に日本語、それから日本の書道について子供たちに教えて欲しいと頼んできたのです。

私自身、書道は実は幼少期から小学校の高学年まで習っていたので基礎は知っていますし、自分の運営する部活であるJapanese Clubでも教えたことがありました。道具もそのために日本から3組ほど持ってきていたのがあったので即OKしました。

そして今日の二時限目にその授業はありました。そのEALのクラスは私の教室でいつも授業がおこなわれているので、たまに彼女らの授業の様子を垣間見ることがあります。生徒も全員で6人。私がいつも教える授業は大抵30人クラスですから、本当に小さなグループです。

生徒の国籍と人種は様々。バングラデッシュ人もいればソマリア人、リトアニア人(恥ずかしながらLithuaniaが日本語表記のリトアニアなのだと後から気づきました)の子もいます。

彼女らの英語のレベルは私が少しゆっくりとしゃべれば、ほとんどこちらの言うことは理解でき、簡単なことならば自分たちで知っている単語を使って説明できます。Writingはまた違うのでしょうが。

簡単に日本語の成り立ち、中国との関係、書道の道具や歴史を説明した後、授業で使われた松尾芭蕉の俳句にあった「音」という漢字をお手本として楷書で書いてみることにしました。二年ぶりくらいに向かい合った半紙。筆も久々に握ったので少し違和感がありましたが体は覚えているものですね。持ち方もちゃんと覚えてました。

同僚Uとアシスタントで入っているもう一人の同僚、そしてEALの生徒たち6人が注目する中、なんとか無事に書き上げました。仕上がりはというと、自分の中ではお世辞にも上手いとは言えず。それなのに周りは「Wow!」とかなり感心した様子。かなり複雑な気持ちになりました。

「書道は間違えてもなぞったりして修正してはいけないのよ」と私が言うと

「じゃあ、Xと線を引いて隣に書き直せばいいのかな?」と生徒の一人が(笑)

「書道は何度も何度も新しい紙に書いて失敗せずに美しく書けるまで練習するものなんだよ」と言うと納得。ちなみに漢字がいかに難しいかを知り、さらに私が日本の小学生はひらがな・かたかなに加えて1000字くらいの漢字を何度も何度も練習して書けるようにするんだよと言うとすごく驚いていました。

私も日本語を習っている友人がこちらで何人もいて、漢字を覚える難しさについてはよく耳にするので、自分自身母国語とはいえあれだけの数の漢字を覚えたというのは確かにすごいことだったのだなと思います。まぁ、それだけ当時の私の脳みそも柔軟だったのかもしれませんが。

生徒の一人が「The Sun(太陽)」を書きたいと言ったのですが、今日は一文字書くのが目標だったのでとりあえず、「日」という文字を教えました。もっとチャレンジしたいと言った子には「陽」の漢字を。厳密にはこれだけでは太陽の意味にはならないのですけれど。

それから「Star(星)」という漢字もリクエストされました。そこで私が気づいたこと。

「今まで教えた漢字、『音、日、陽、星』全てに『日』の文字が使われているね」

なるほど、とみんなで納得。日本人なのに私自身、あまり意識してなかったのです。そして、「星」という漢字を見て思ったこと。

「星って『日』という漢字と『生』という漢字が組み合わさって出来てる。もしかして日(太陽)から生まれるのが星って考えたらいいのかな」と。

子供もこのアイディアを気に入った様子。あとでネットを調べても星という漢字の成り立ちを正確に知ることは出来ませんでしたが、この「太陽から生まれる無数の星たち」というイメージが私も好きになりました。

たった一時間ちょっとの授業でしたが、私自身、多くのことを感じ学んだように思います。彼女らと学ぶ感動を共有させてもらったというか。なかなか生徒全員に歴史を面白いと感じてもらえない、そういう授業をなかなか思うとおりにできないと日ごろ感じることもある私。この授業は私に素直な驚きと感動を与えてくれました。

彼女らは英語があまりできないことなど気にしていません。よく、EALの生徒も自分の普通授業の中で教えますが、中には他の生徒に圧倒されて満足に発言したり質問したりすることすらできない子もいるのです。それに比べ、EALのクラスでは生徒の一人ひとりが主役。みんな堂々と、そして活き活きとしているのです。「学びたい!」という気持ちが伝わってくるのです。

彼女らの瞳の中に無数の星がきらきらと輝いていました。

投稿者 lib : March 27, 2008 07:41 PM

コメント

楽しい日本文化(書道)の紹介の模様を、ありがとうございました。読んでいてもウキウキ感が伝わってくるような・・・。興味って大事なものですよね。6人の少人数ということも、プラスでしたよね。私も細い筆ペンで字を書かせているのですが、一本の線を引くのにも、説明し始めたら時間がかかりますよね。中には何も教えなくても自然にお手本を上手に真似る子、何回言っても書き順すら無視する子がいますものね。また次回もあるんでしょうか?

投稿者 dekoboko : March 30, 2008 10:22 PM

Dekobokoさん、

いつもありがとうございます。
この授業はたまたま頼まれてやったものなのですが、機会があればまたやりたいですね。でも、やんちゃな生徒に墨のついた筆を持たせるのは恐ろしいのですが(その後の惨状を想像しただけでもう、、、)。

本当に教えててうきうきする瞬間、最高です。そして子供の瞳もきらきら。そういう瞬間のために教師やってるんですよね。

投稿者 月子 : April 3, 2008 09:06 PM

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