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June 06, 2008

(Please)

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明日は早朝から9年生の歴史旅行の引率でベルギーに向かいます。

彼女らはちょうど今、第一次世界大戦について授業で学んでいる最中です。この旅行では、フランダース地方のtrench(塹壕)跡や、戦没者墓地、博物館を巡ったりします。

旅程表や大型バスの手配、ツアーガイドの手配などは完全に旅行会社にまかせるので楽なのですが、それ以外の準備は私が担当です。

今年は準備期間も一ヶ月しかなかったので、例年のように最初にある程度希望者を募るのではなく、一クラスから5人ほど選びました。来年、GCSEで歴史を選択した子、いつも授業で頑張っている子、最近、すごく伸びた子などを基準に選びました。

その後は、それぞれの生徒から保護者の許可証、Medical form(生徒の健康状態、疾患などを保護者が申告するための書類)を提出させ、旅行費用の生徒負担分である10ポンド(約二千円)を集金し、コピーをとるためにパスポートの回収します。

問題なく提出してくれた生徒はいいのですが、「親が許可をくれない」「パスポートが切れてていけない」「単に行きたくない」など、辞退する子供が10人ほど現れ、さらに困ったことに、その辞退した生徒たちのかわりに旅行に行きたいばかりに「Miss! Can I go? Can I go?」と毎日のように私に会いに来る生徒が続出。

私が担任として持ってるクラスの生徒Tもその一人。毎朝朝礼に来ると「Miss, is there any place left for the trip?」と聞いてきます。他にもうちのクラスに希望者は3人ほどいたのですが、その中でも彼女が一番積極的。

その時点では選ばれた生徒からの参加表明は全部そろってはいないものの、リスト上では空きのない状態。行けるよとは言えません。

しかも、そのTは過去3年間、度々その勝気な性格から喧嘩をしたり、授業中の教師への態度の悪さが問題になったりした生徒。

普段の授業で態度が悪かったりする生徒はもちろんかなりの注意を要する海外旅行へは連れて行けないので、どんなに本人が行きたいといってもどの子にチャンスをあげるのかは慎重に考えなくてはいけません。

ただ、この機会をあげることによって態度が好転したり、授業で頑張りだしたりする子がいるのも事実。Tも最近だいぶ成長して落ち着いてきたことに違いはないのですが。

そんな風に色々考えていた矢先、旅行に参加するはずだったうちのクラスの一人、Kがパスポートの期限が切れていることに気づいたため突如辞退しました。

さぁ、誰がかわりに行くのか。希望者の子供たち数人の目が急に輝きます。「放課後までには決めるからね。遅くとも明日の朝には教えてあげるね」とその場をおさめましたが、内心焦り。そう言った以上、私が決断しなくてはいけませんから。

結局、希望者の生徒たちの普段の態度、今まで参加した旅行の回数の多さなどを考慮した結果、Tにチャンスをあげようと90パーセントくらい心に決めた私。

そして帰り支度をしようと、オフィスの自分の机をふとみると、小さな小さなメモ(というよりも指でちぎられた紙切れ)が置いてありました。

そこに一文。

「Can you call my house if I got a space for Belgium trip?」

そして、その隅に明らかに付け加えて、(Please)と括弧付きで書いてあります。

うちの学校の生徒って「Please」と付けないで教師や友達に物を頼んだりしてよく叱られるのです。書き終わってからPleaseを付けないとまずいと思ったのでしょうね。思わずにんまり笑ってしまいました。

しかも読み終えた瞬間、誰が残していったのか直感で分かりました。Tに違いないと。

案の定、裏を見たら彼女の名前が。

これで10パーセントの私の迷いは消えました。括弧つきのPleaseに手で適当にちぎられた紙切れのメモ。彼女のなんというか、ちょっと中途半端な情熱表現に負けたというか、、、。

その後、電話越しで彼女のとても嬉しそうな声を聞いて、この子は当日も大丈夫かなと思いました。もともと参加したい動機が歴史への興味ではなく、ベルギーでのチョコレートショッピングであることは彼女の言動から明らかでしたが、まぁそれには目を瞑ってあげて。

とにかく、明日出発です。(旅行記は来週のブログで)

投稿者 lib : June 6, 2008 11:25 AM

コメント

「5人だけ選んで」修学旅行に連れて行く、って、日本では考えられない発想ですよね。(不公平とか不平等とか、保護者から文句が出そう)
お国柄の違いが出て面白いなあと思いました。
良い悪いは別として、学生のうちからこういう経験をしているから、イギリスでは自己PRに長けた人が多いのかなあ、と思いました。黙っていても平等に扱ってもらえる日本人は自己PRする必要もないものね。

投稿者 子育てママ : June 9, 2008 10:03 AM

子育てママさん、こんにちは。

この旅行は日本でいういわゆる修学旅行とは違うんだと思います。実際、イギリスで日本のように学年全体を4-5泊で連れて行くという話は聞いたこと無いですね。学校にもよるのでしょうか。

そして、ママさんのおっしゃるとおり、日本人の方にこの話をすると大抵、「それって問題じゃないの?」と聞かれます。

今まで不平等だと保護者から言われたことはないですね。本当は一人59ポンドする旅行で生徒には一人10ポンドしか請求しない(本当はタダであることが前提。あくまでもContributionという形)のでもしかしたら保護者も文句は言えないのかもしれません、、、。

投稿者 月子 : June 13, 2008 09:32 PM

ありゃ、間違えて伝わっちゃったかも。
「日本の学校で」数人だけ連れて行ったら、「連れて行かない子」の保護者から文句言われそう、って意味でした。ごめんなさい。
何はともあれ、お疲れさまでした。
生徒の引率って、すごく気疲れしそうだけど月子先生も楽しまれたようで何よりです。

投稿者 子育てママ : June 16, 2008 04:04 PM

子育てママ様、わざわざ補足をありがとうございます。子育てママ様のおっしゃりたいこと、ちゃんと伝わっていましたよ。

私は逆に子育てママさんのコメントを読んで、「そういえばそういうことが問題になったことはないな、、、」と思い、両国の違いを認識できたわけです。私も日本で同じことしたら保護者から何らかのリアクションがあるかと想像しますね。

引率は疲れますけど、その後の充実感は最高ですよ。私たち教師も色々学べますしね。

投稿者 月子 : July 9, 2008 06:19 PM

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