« ああ、殺人事件。(その3) | メイン | イギリスの税金が高いワケ »

June 03, 2009

私をフットボールに連れてって その3

career2.gif
チェルシー・スタジアムのゲスト席の入り口はホテルのチェックインのような感じだ。
「いいゲームになるといいですね。楽しんでくださいねー」
と、スタッフがフレンドリー、それも不自然なまでの愛想の良さである。ゲストパスを機械に通しリフトに乗り込んだ。着いた階もゲストルームが並んだホテルのよう。

各ドアを見るとそれぞれに有名企業の名前が張ってある。銀行・金融関連、広告業界、通信業、このご時世にまだ接待費が使えるなんて、けっこう景気いいのね・・・。

私が招待された接待用の部屋は20人くらいまでのキャパである。ここにも商業用スマイル満面の黒人のおねえさんがふたり。
「ハーイ、私はジェニファー、彼女はミッシェル。このお部屋の担当です。まずお飲み物を用意しますね」
テーブルにはサラダ、コールドミート、キッシュのようなものが並び、ホットミールはラムチョップ、ローストベジタブルが用意された。どれもおいしかったが、ワインは小売価格10ポンド程度のものと思われる。(産地、銘柄に詳しくなくても小売価格の推測は得意)

この部屋のスタジアム側のドアを開けると、ベランダのようなプライベート観客席に出ることができる。一般席より一段高く、フェンスで区切られているので、皆が総立ちになっても、ゲームを見るのに困らなかった。背の低い私はラッキーである。が、ここはお行儀の良さが要求されるらしく、この席での食事は禁止、飲み物の持ち込みもダメ、で、何とフットボールシャツの着用も許されない。
「一般席のほうがゲーム鑑賞の雰囲気はいいよ」と言っていたのはこのことらしい。

さて、グランドでは100人近くが準備に余念がない。  
ゴールキーパーは軽くディフェンスを、選手たちはレギュラー、補欠、準補欠(たぶん)に分かれて、ランニング、ストレッチ、手足を大きく振り上げての「筋肉質の大柄な男たちによる、幼稚園お遊戯風、巨大スキップ」と足のつけ根からグルリと回しながらの 「ひょっとこ踊り」と ジグザグ歩行は「裸足でのアチチチ火渡り風」 である。結構マヌケな動きなのだが、この人たちは年間数億円も稼ぐ選手たちなので、金のかかったダンスステップには違いない。

ヘッディングでぶつかって脳しんとうをおこしたらしい選手を心配すると、
「彼は1週間あたり13万ポンド稼ぐんだ」と聞き、同情する気がなくなった。
13万ポンドもらえるなら、毎週、脳しんとう起こしたって構わないよね。

選手たちの足さばきは複雑、かつ鮮やかで、どんなに緻密な仕事もこなせそうである。
ウォーミングアップ中も、レース編み(かぎ針)、みじん切り(文化包丁を使ったもの)、設計図の書き込み(住宅に限る)等も、軽い足技でさばいていた。 (嘘)

が、何といっても目を惹いたのが、審判3人組の動き。
黒のシャツに黒のショーツ(って言うんだよね?)に黒のハイソックス。襟だけは目にもまぶしい白だ。
まず、フィールドを軽くランニング、で、選手と同じく巨大スキップ、ひょっとこ踊り、裸足で火渡りの後、彼らが特に力を入れていたのが、 「後ろ走り」である。ゲーム中も注意してみていると、確かに審判は後ろ走りが多い。 重要なポイントであるらしい。そういえばタタタタッとすばやく後ろに走るのはむずかしい。(注:試してみようという人は転んで後頭部を打たないようにしてください)

プログラムを貰った。チェルシーの選手が写っている。
「あ、この人知ってる。ガールズ・アラウドのシンガー、シェリル・コールの旦那だよね。去年、ヘアドレッサーと浮気して離婚寸前までいったけど、よりを戻したっけ。へえ、チェルシーの選手だったんだ? この真ん中の人、最近スペイン人のモデルと別れて、新人女優とつき合い始めた、あの彼だね。名前は知らないけど」
とバリバリにフットボール業界に詳しいところを披露した。

友人が肩を落としながら、
「・・・この右の選手、知ってる?」と指さす。
「さあ? ゴシップ欄に出てこない人はちょっと・・・」と知識に偏りがあることを認めざるを得なかった。 ある選手は彼の母親が 「万引き」して捕まったニュースで顔に見覚えがあった。息子は何億と稼いでいるのに、何故? という事件である。ちなみにこの人はチェルシーのキャプテンだそうである。

この発言から友人は私を招待したのは 「猫に小判」だったと思ったらしいが、すでに時遅しである。 ふふ、今度から人選には注意ね。他の招待客には 「猫にかつぶし」だったけど。

フットボールの試合を見に行った、とオペラ友達に言うと、
「あなたがフットボール? チェルシーの試合にあなたが?」とまるでアラスカでフラダンス研修でもしたように驚かれた。
彼女にプログラムを見せたら、
「あ、シェリル・コールの旦那が表紙だ。この人フットボール選手?」と言った。

PS ちなみにこの試合は3-1でチェルシーの勝ち。リーグだかなんかの順位がなんとかで(よくわかっていない)重要な試合だったそうです。提供は 「猫に小判」でした。

投稿者 lib : June 3, 2009 09:46 AM

コメント

コメントしてください




保存しますか?